説明

フタラジノン誘導体

【課題】新規フタラジノン化合物の提供。
【解決手段】式(I)の化合物:


(式中、AとBは一緒になって、場合によっては置換されていてもよい縮合芳香環を表し、XはNRXまたはCRXRYとすることができ、RXまたはRYはH、場合によっては置換されていてもよいC1-20アルキル、C5-20アリール、C3-20ヘテロシクリル、アミド、チオアミド、エステル、アシルおよびスルホニル基等からなる群から選択される)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フタラジノン誘導体およびそれの医薬としての使用に関する。詳細には本発明は、ポリ(ADP-リボース)シンターゼおよびポリADP-リボシルトランスフェラーゼとも称され、一般にはPARPと称される酵素ポリ(ADPリボース)ポリメラーゼの活性を阻害する上でのその化合物の使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
DNA一本鎖または二本鎖の切断を認識し、それに急速に結合する能力により、哺乳動物酵素PARP(113-kDaの多領域タンパク質)が、DNA損傷の信号伝達において示唆されている(D′Amours et al, Biochem. J. 342: 249-268(1999))。
【0003】
いくつかの所見から、遺伝子増幅、細胞分裂、分化、アポトーシス、DNA塩基除去修復ならびにテロメア長さおよび染色体安定性に対する効果などの多様なDNA関係機能にPARPが関与しているという結論が得られている(d′Adda di Fagagna et al, Nature Gen., 23(1): 76-80(1999))。
【0004】
PARPがDNA修復および他のプロセスを調節する機序に関する研究によって、細胞核内でのポリ(ADP-リボース)鎖形成におけるそれの重要性が確認されている(Althaus, F. R. and Richter, C., ADP Ribosylation of Proteins: Enzymology and Biological Significance, Springer-Verlag, Berlin(1987))。DNA-結合活性化PARPはNADを利用して、トポイソメラーゼ、ヒストン類およびPARP自体などの多様な核標的タンパク質上でポリ(ADP-リボース)を合成する(Rhun et al, Biochem. Biophys. Res. Commun., 245, 1-10(1998))。
【0005】
ポリ(ADP-リボシル)化も、悪性トランスフォーメーションに関連していた。例えば、SV40-トランスフォーム線維芽細胞の単離核ではPARP活性は相対的に高く、一方で白血病細胞および結腸癌細胞のいずれも同等の正常な白血球および結腸粘膜より高い酵素活性を示す(Miwa et al, Arch. Biochem. Biophys. 181: 313-321 (1977); Burzio et al, Proc. Soc. Exp. Bioi. Med. 149: 933-938 (1975); and Hirai et al, Cancer Res. 43: 3441-3446 (1983))。
【0006】
多くの低分子量PARP阻害薬を用いて、DNA修復におけるポリ(ADP-リボシル)化の機能的役割が解明されている。アルキル化剤で処理した細胞では、PARPの阻害によって、DNA鎖切断および細胞死に顕著な増加が生じる(Durkacz et al, Nature 283: 593-596 (1980); Berger, N. A., Radiation Research, 101: 4-14 (1985))。
【0007】
その後、そのような阻害薬が、致死的となり得る損傷の修復を抑制することで、放射線応答の効果を促進することが明らかになっている(Ben-Hur et al, British Journal of Cancer, 49 (Suppl. VI): 34-42 (1984); Schlicker et al, Int. J. Radiat. Bioi., 75: 91-100 (1999))。PARP阻害薬が、低酸素性腫瘍細胞の放射線増感において有効であることが報告されている(米国特許第5032617号;米国特許第5215738号および米国特許第5041653号)。
【0008】
さらに、PARPノックアウト(PARP-/-)動物は、アルキル化剤およびγ線照射に応答してゲノム不安定性を示す(Wang et al, Genes Dev., 9: 509-520 (1995); Menissier de Murcia et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94: 7303-7307 (1997))。
【0009】
PARPに関する役割は、ある種の血管疾患、敗血症ショック、虚血性損傷および神経毒性においても示されている(Cantoni et al, Biochim. Biophys. Acta, 1014: 1-7 (1989); Szabo, et al, J. Clin. lnvest., 100: 723-735 (1997))。後にPARPによって認識されるDNAにおける鎖切断を生じる酸素ラジカルDNA損傷は、PARP阻害薬試験によって示されるそのような疾患状態に対する主要な寄与因子である(Cosi et al, J. Neurosci. Res., 39: 38-46 (1994); Said et al, Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 93: 4688-4692 (1996))。より最近ではPARPは、出血性ショックの病因において何らかの役割を果たすことが示されている(Liaudet et al, Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 97(3): 10203-10208 (2000))。
【0010】
哺乳動物細胞の効率的レトロウィルス感染が、PARP活性の阻害によって遮断されることも明らかになっている。組換えレトロウィルスベクター感染のそのような阻害は、各種の異なる細胞型で起こることが明らかになっている(Gaken et al, J. Virology, 70(6): 3992-4000 (1996))。そこでPARPの阻害薬が、抗ウィルス療法および癌治療での使用に向けて開発されている(WO 91/18591)。
【0011】
さらにPARP阻害は、ヒト線維芽細胞における加齢特性の開始を遅延させるものと推定されている(Rattan and Clark, Biochem. Biophys. Res. Comm., 201(2): 665-672 (1994))。それは、PARPがテロメア機能の制御において果たす役割に関係する可能性がある(d′Adda di Fagagna et al, Nature Gen., 23(1): 76-80 (1999))。
【0012】
本発明者らの一部は、PARP阻害剤として作用するあるクラスの1(2H)-フタラジノン化合物について以前に記述した(国際公開第02/36576号)。この化合物は次の一般式を有する。
【0013】
【化1】

(式中、AとBは一緒になって、場合によっては置換されていてもよい縮合芳香環を表し、RCは-L-RLである)多数の例が次式のものである。
【0014】
【化2】

(式中、Rは1個または複数の任意選択の置換基を表す)
【特許文献1】国際公開第02/36576号
【発明の開示】
【0015】
本発明者らは、今回、Rがある性質のものである化合物が、驚くべきレベルのPARP活性阻害を示し、かつ/または放射線治療および様々な化学療法に対して驚くべきレベルの腫瘍細胞の増強を示すことを発見した。
【0016】
したがって、本発明の第1の態様は、式(I)の化合物、ならびにその異性体、塩、溶媒和化合物、化学的保護体およびプロドラッグを提供する。
【0017】
【化3】

(式中、
AとBは一緒になって、場合によっては置換されていてもよい縮合芳香環を表し、
Xは、NRXまたはCRXRYとすることができ、
X=NRXである場合にはnは1または2であり、X=CRXRYである場合にはnは1であり、
RXは、H、場合によっては置換されていてもよいC1-20アルキル、C5-20アリール、C3-20ヘテロシクリル、アミド、チオアミド、エステル、アシルおよびスルホニル基からなる群から選択され、
RYは、H、ヒドロキシ、アミノから選択され、
あるいはRXとRYは一緒になって、スピロ-C3-7シクロアルキルまたはヘテロシクリル基を形成することができ、
RC1およびRC2はともに水素であり、またはXがCRXRYであるときには、RC1、RC2、RXおよびRYは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、場合によっては置換されていてもよい縮合芳香環を形成することができ、
R1は、Hおよびハロから選択される)
したがって、XがCRXRYである場合にはnは1であり、本化合物は式(Ia)となる。
【0018】
【化4】

XがNRXであり、かつnが1である場合には、本化合物は式(Ib)となる。
【0019】
【化5】

XがNRXであり、かつnが2である場合には、本化合物は式(Ic)となる。
【0020】
【化6】

本発明の第2の態様は、第1の態様の化合物および薬剤として許容される担体または希釈剤を含む薬剤組成物を提供する。
【0021】
本発明の第3の態様は、ヒトまたは動物の体を治療する方法に使用される第1の態様の化合物を提供する。
【0022】
本発明の第4の態様は、PARPの活性を阻害する医薬品の調製における本発明の第1の態様で定義される化合物の使用を提供する。
【0023】
本発明の別の態様は、血管疾患;敗血症ショック;虚血性傷害;神経毒性;出血性ショック;ウイルス感染;またはPARPの活性を阻害することによって寛解される疾患を治療する医薬品の調製における本発明の第1の態様で定義される化合物の使用を提供する。
【0024】
本発明のさらに別の態様は、癌治療における補助剤として使用される医薬品、あるいは電離放射線または化学療法剤による治療のための腫瘍細胞の増強に使用される医薬品の調製における本発明の第1の態様で定義される化合物の使用を提供する。
【0025】
本発明のさらに別の態様は、治療を必要とする対象に治療有効量の第1の態様で定義された化合物を、好ましくは薬剤組成物の形で投与するステップを含む、PARPを阻害することによって寛解される疾患の治療を提供し、また、治療を必要とする対象に治療有効量の第1の態様で定義された化合物を、好ましくは薬剤組成物の形で、電離放射線または化学療法剤と組み合わせて同時にまたは連続して投与するステップを含む癌の治療を提供する。
【0026】
本発明の別の態様においては、本化合物は、相同組換え(HR)によるDNA DSB修復活性を欠く癌の治療用医薬品の調製に使用することができ、または前記患者に治療有効量の前記化合物を投与するステップを含む、HRによるDNA DSB修復活性を欠く癌の患者の治療に使用することができる。
【0027】
HRによるDNA DSB修復経路は、連続DNAヘリックスを形成する機序と同じ機序によって、DNAの二本鎖切断(DSB)を修復する(K.K. Khanna and S.P. Jackson, Nat. Genet. 27(3): 247-254 (2001))。HRによるDNA DSB修復経路の成分としては、ATM(NM_000051)、RAD51(NM_002875)、RAD51L1(NM_002877)、RAD51C(NM_002876)、RAD51L3(NM_002878)、DMC1(NM_007068)、XRCC2(NM_005431)、XRCC3(NM_005432)、RAD52(NM_002879)、RAD54L(NM_003579)、RAD54B(NM_012415)、BRCA1(NM_007295)、BRCA2(NM_000059)、RAD50(NM_005732)、MRE11A(NM_005590)およびNBS1(NM_002485)が挙げられるが、これらだけに限定されない。HRによるDNA DSB修復経路に関与する他のタンパク質としては、EMSYなどの制御因子が挙げられる(Hughes-Davies, et al., Cell, 115, pp523-535)。HR成分は、Wood, et al., Science, 291, 1284-1289 (2001)にも記載されている。
【0028】
HRによるDNA DSB修復を欠く癌は、この経路によるDNA DSB修復能力が正常細胞よりも低下または阻害された1個または複数の癌細胞を含むことがあり、あるいは癌細胞からなることがある。すなわち、HRによるDNA DSB修復経路の活性が1個または複数の癌細胞において低下または消失することがある。
【0029】
HRによるDNA DSB修復経路の1個または複数の成分の活性は、HRによるDNA DSB修復を欠く癌に罹った個体の1個または複数の癌細胞においては消失することがある。HRによるDNA DSB修復経路の成分は、当分野では特徴が十分明らかであり(例えば、Wood, et al., Science, 291, 1284-1289 (2001)参照)、上記成分などが挙げられる。
【0030】
一部の好ましい実施形態においては、癌細胞は、BRCA1および/またはBRCA2を欠いた表現型を有することができ、すなわち、BRCA1および/またはBRCA2活性が癌細胞において低下または消失している。この表現型の癌細胞は、例えば、コードする核酸における突然変異または多型によって、あるいは制御因子をコードする遺伝子、例えばBRCA2制御因子をコードするEMSY遺伝子における増幅、突然変異または多型によって、BRCA1および/またはBRCA2を欠くことがあり、すなわち、BRCA1および/またはBRCA2の発現および/または活性が癌細胞において低下または消失することがある(Hughes-Davies, et al., Cell, 115, 523-535)。
【0031】
BRCA1およびBRCA2は、異型接合性キャリアの腫瘍においてその野生型対立遺伝子が頻繁に失われる公知の腫瘍抑制因子である(Jasin M., Oncogene, 21(58), 8981-93 (2002); Tutt, et al., Trends Mol Med., 8(12), 571-6, (2002))。BRCA1および/またはBRCA2突然変異と乳癌との関連性は、当分野では十分明らかである(Radice, P.J., Exp Clin Cancer Res., 21(3 Suppl), 9-12 (2002))。BRCA2結合因子をコードするEMSY遺伝子の増幅が、乳房および卵巣癌に関連があることも知られている。
【0032】
BRCA1および/またはBRCA2における突然変異のキャリアは、卵巣癌、前立腺癌および膵臓癌のリスクも高い。
【0033】
一部の好ましい実施形態においては、個体は、BRCA1および/またはBRCA2またはそれらの制御因子における突然変異、多型などの1種類もしくは複数の変化に関して異型接合性である。BRCA1およびBRCA2における変化の検出は、当分野では周知であり、例えば欧州特許第699 754号、欧州特許第705 903号、Neuhausen, S.L. and Ostrander, E.A., Genet. Test, 1, 75-83 (1992); Chappnis, P.O. and Foulkes, W.D., Cancer Treat Res, 107, 29-59 (2002); Janatova M., et al., Neoplasma, 50(4), 246-50 (2003); Jancarkova, N., Ceska Gynekol., 68(1), 11-6 (2003))に記載されている。BRCA2結合因子EMSYの増幅の測定は、Hughes-Davies, et al., Cell, 115, 523-535)に記載されている。
【0034】
癌に関連する突然変異および多型は、変異体核酸配列の存在を検出することによって核酸レベルで、または変異体(すなわち、突然変異体または対立遺伝子の変異体)ポリペプチドの存在を検出することによってタンパク質レベルで検出することができる。
【0035】
定義
「芳香環」という用語は、本明細書では、環式芳香族構造、すなわち、非局在π-電子軌道を有する環式構造を指す従来の意味で使用される。
【0036】
主核(main core)に縮合した芳香環、すなわち-A-B-によって形成される芳香環は、さらに縮合芳香環を有する(例えば、ナフチルまたはアントラセニル基を生じる)ことができる。芳香環は、炭素原子のみしか含まなくてもよいし、炭素原子と、窒素、酸素および硫黄原子を含めて、ただしこれらだけに限定されない1個または複数のヘテロ原子とを含んでいてもよい。芳香環は、好ましくは、5または6環原子を有する。
【0037】
芳香環は、場合によっては置換されていてもよい。置換基自体がアリール基を含む場合には、このアリール基は、それが結合しているアリール基の一部とはみなされない。例えば、ビフェニル基は、本明細書では、フェニル基で置換されたフェニル基(単一の芳香環を含むアリール基)とみなされる。同様に、ベンジルフェニル基は、ベンジル基で置換されたフェニル基(単一の芳香環を含むアリール基)とみなされる。
【0038】
好ましい実施形態の一群においては、芳香族基は、5または6個の環原子を有する単一の芳香環を含む。この環原子は、炭素、窒素、酸素および硫黄から選択され、環は場合によっては置換されていてもよい。これらの基の例としては、ベンゼン、ピラジン、ピロール、チアゾール、イソオキサゾールおよびオキサゾールが挙げられるが、これらだけに限定されない。2-ピロンも芳香環とみなすことができるが、さほど好ましくはない。
【0039】
芳香環が6個の原子を有する場合には、好ましくは、環原子の少なくとも4個、さらには5個または全部が炭素である。他の環原子は、窒素、酸素および硫黄から選択され、窒素および酸素が好ましい。適切な基としては、ヘテロ原子を含まない環(ベンゼン)、1個の窒素環原子を含む環(ピリジン)、2個の窒素環原子を含む環(ピラジン、ピリミジンおよびピリダジン)、1個の酸素環原子を含む環(ピロン)、1個の酸素および1個の窒素環原子を含む環(オキサジン)などが挙げられる。
【0040】
芳香環が5個の環原子を有する場合には、好ましくは、環原子の少なくとも3個は炭素である。残りの環原子は、窒素、酸素および硫黄から選択される。適切な環としては、1個の窒素環原子を含む環(ピロール)、2個の窒素環原子を含む環(イミダゾール、ピラゾール)、1個の酸素環原子を含む環(フラン)、1個の硫黄環原子を含む環(チオフェン)、1個の窒素および1個の硫黄環原子を含む環(イソチアゾール、チアゾール)、1個の窒素および1個の酸素環原子を含む環(イソオキサゾールまたはオキサゾール)などが挙げられる。
【0041】
芳香環は、任意の利用可能な環位置において1個または複数の置換基を有することができる。これらの置換基は、ハロ、ニトロ、ヒドロキシ、エーテル、チオール、チオエーテル、アミノ、C1-7アルキル、C3-20ヘテロシクリルおよびC5-20アリールから選択される。芳香環は、一緒になって環を形成する1個または複数の置換基を有することもできる。特に、これらは、式-(CH2)m-または-O-(CH2)p-O-とすることができる。ここで、mは2、3、4または5であり、pは1、2または3である。
【0042】
アルキル:本明細書において使用される「アルキル」という用語は、脂肪族でも脂環式でもよく、飽和でも不飽和(例えば、部分不飽和、完全不飽和)でもよい(別段の記載がないかぎり)1〜20個の炭素原子を有する炭化水素化合物の炭素原子から水素原子を除去して得られる一価の部分に関係する。したがって、「アルキル」という用語は、以下に考察するサブクラスのアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキエニル(cycloalkyenyl)、シクロアルキニルなどを含む。
【0043】
アルキル基の場合、接頭部(例えば、C1-4、C1-7、C1-20、C2-7、C3-7など)は、炭素原子数または炭素原子数の範囲を示す。例えば、本明細書において使用される「C1-4アルキル」という用語は、1から4個の炭素原子を有するアルキル基に関係する。アルキル基の群の例としては、C1-4アルキル(「低級アルキル」)、C1-7アルキルおよびC1-20アルキルが挙げられる。第1の接頭部は、他の制約に応じて変わり得ることに留意されたい。例えば、不飽和アルキル基の場合には、第1の接頭部は少なくとも2個でなければならず、環式アルキル基の場合には、第1の接頭部は少なくとも3個でなければならない。
【0044】
(非置換)飽和アルキル基の例としては、メチル(C1)、エチル(C2)、プロピル(C3)、ブチル(C4)、ペンチル(C5)、ヘキシル(C6)、ヘプチル(C7)、オクチル(C8)、ノニル(C9)、デシル(C10)、ウンデシル(C11)、ドデシル(C12)、トリデシル(C13)、テトラデシル(C14)、ペンタデシル(C15)およびエイコデシル(C20)が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0045】
(非置換)飽和線状アルキル基の例としては、メチル(C1)、エチル(C2)、n-プロピル(C3)、n-ブチル(C4)、n-ペンチル(アミル)(C5)、n-ヘキシル(C6)およびn-ヘプチル(C7)が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0046】
(非置換)飽和分枝アルキル基の例としては、イソ-プロピル(C3)、イソ-ブチル(C4)、sec-ブチル(C4)、tert-ブチル(C4)、イソ-ペンチル(C5)およびネオ-ペンチル(C5)が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0047】
アルケニル: 本明細書において使用される「アルケニル」という用語は、1個または複数の炭素-炭素二重結合を有するアルキル基に関係する。アルケニル基の群の例としては、C2-4アルケニル、C2-7アルケニル、C2-20アルケニルが挙げられる。
【0048】
(非置換)不飽和アルケニル基としては、エテニル(ビニル、-CH=CH2)、1-プロペニル(-CH=CH-CH3)、2-プロペニル(アリル、-CH-CH=CH2)、イソプロペニル(1-メチルビニル、-C(CH3)=CH2)、ブテニル(C4)、ペンテニル(C5)、ヘキセニル(C6)などが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0049】
アルキニル: 本明細書において使用される「アルキニル」という用語は、1個または複数の炭素-炭素三重結合を有するアルキル基に関係する。アルキニル基の群の例としては、C2-4アルキニル、C2-7アルキニル、C2-20アルキニルが挙げられる。
【0050】
(非置換)不飽和アルキニル基としては、エチニル(ethynyl)(エチニル(ethinyl)、-C≡CH)および2-プロピニル(プロパルギル、-CH2-C≡CH)などが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0051】
シクロアルキル: 本明細書において使用される「シクロアルキル」という用語は、シクリル基でもあるアルキル基、すなわち、炭素環式化合物の炭素環の脂環式環原子から水素原子を除去して得られる一価の部分に関連する。この炭素環式環は、飽和でも不飽和(例えば、部分不飽和、完全不飽和)でもよく、一価の部分は、3〜20個の環原子を含めて(別段の記載がないかぎり)3〜20個の炭素原子を有する。したがって、「シクロアルキル」という用語は、サブクラスのシクロアルケニルおよびシクロアルキニルを含む。各環は3〜7個の環原子を有することが好ましい。シクロアルキル基の群の例としては、C3-20シクロアルキル、C3-15シクロアルキル、C3-10シクロアルキル、C3-7シクロアルキルが挙げられる。
【0052】
シクロアルキル基の例としては、
飽和単環式炭化水素化合物:
シクロプロパン(C3)、シクロブタン(C4)、シクロペンタン(C5)、シクロヘキサン(C6)、シクロヘプタン(C7)、メチルシクロプロパン(C4)、ジメチルシクロプロパン(C5)、メチルシクロブタン(C5)、ジメチルシクロブタン(C6)、メチルシクロペンタン(C6)、ジメチルシクロペンタン(C7)、メチルシクロヘキサン(C7)、ジメチルシクロヘキサン(C8)、メンタン(C10);
不飽和単環式炭化水素化合物:
シクロプロペン(C3)、シクロブテン(C4)、シクロペンテン(C5)、シクロヘキセン(C6)、メチルシクロプロペン(C4)、ジメチルシクロプロペン(C5)、メチルシクロブテン(C5)、ジメチルシクロブテン(C6)、メチルシクロペンテン(C6)、ジメチルシクロペンテン(C7)、メチルシクロヘキセン(C7)、ジメチルシクロヘキセン(C8);
飽和多環式炭化水素化合物:
ツジャン(C10)、カラン(C10)、ピナン(C10)、ボルナン(C10)、ノルカラン(C7)、ノルピナン(C7)、ノルボルナン(C7)、アダマンタン(C10)、デカリン(デカヒドロナフタレン)(C10);
不飽和多環式炭化水素化合物:
カンフェン(C10)、リモネン(C10)、ピネン(C10);
芳香環を有する多環式炭化水素化合物:
インデン(C9)、インダン(例えば、2,3-ジヒドロ-1H-インデン)(C9)、テトラリン(1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン)(C10)、アセナフテン(C12)、フルオレン(C13)、フェナレン(C13)、アセフェナントレン(C15)、アセアントレン(C16)、コラントレン(C20)
に由来するものが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0053】
ヘテロシクリル: 本明細書において使用される「ヘテロシクリル」という用語は、複素環式化合物の環原子から水素原子を除去して得られる一価の部分に関係する。この一価の部分は、(別段の記載がないかぎり)3〜20個の環原子を有し、そのうち1〜10個は環ヘテロ原子である。各環は3〜7個の環原子を有し、そのうち1から4個は環ヘテロ原子であることが好ましい。
【0054】
この場合、接頭部(例えば、C3-20、C3-7、C5-6など)は、炭素原子でもヘテロ原子でも、環原子数または環原子数の範囲を示す。例えば、本明細書において使用される「C5-6ヘテロシクリル」という用語は、5または6環原子を有するヘテロシクリル基に関係する。ヘテロシクリル基の群の例としては、C3-20ヘテロシクリル、C5-20ヘテロシクリル、C3-15ヘテロシクリル、C5-15ヘテロシクリル、C3-12ヘテロシクリル、C5-12ヘテロシクリル、C3-10ヘテロシクリル、C5-10ヘテロシクリル、C3-7ヘテロシクリル、C5-7ヘテロシクリルおよびC5-6ヘテロシクリルが挙げられる。
【0055】
単環式ヘテロシクリル基の例としては、
N1:アジリジン(C3)、アゼチジン(C4)、ピロリジン(テトラヒドロピロール)(C5)、ピロリン(例えば、3-ピロリン、2,5-ジヒドロピロール)(C5)、2H-ピロールまたは3H-ピロール(イソピロール、イソアゾール)(C5)、ピペリジン(C6)、ジヒドロピリジン(C6)、テトラヒドロピリジン(C6)、アゼピン(C7);
O1:オキシラン(C3)、オキセタン(C4)、オキソラン(テトラヒドロフラン)(C5)、オキソール (ジヒドロフラン)(C5)、オキサン(テトラヒドロピラン)(C6)、ジヒドロピラン(C6)、ピラン(C6)、オキセピン(C7);
S1:チイラン(C3)、チエタン(C4)、チオラン(テトラヒドロチオフェン)(C5)、チアン(テトラヒドロチオピラン)(C6)、チエパン(C7);
O2:ジオキソラン(C5)、ジオキサン(C6)およびジオキセパン(C7);
O3:トリオキサン(C6);
N2:イミダゾリジン(C5)、ピラゾリジン(ジアゾリジン)(C5)、イミダゾリン(C5)、ピラゾリン(ジヒドロピラゾール)(C5)、ピペラジン(C6);
N1O1:テトラヒドロオキサゾール(C5)、ジヒドロオキサゾール(C5)、テトラヒドロイソオキサゾール(C5)、ジヒドロイソオキサゾール(C5)、モルホリン(C6)、テトラヒドロオキサジン(C6)、ジヒドロオキサジン(C6)、オキサジン(C6);
N1S1:チアゾリン(C5)、チアゾリジン(C5)、チオモルホリン(C6);
N2O1:オキサジアジン(C6);
O1S1:オキサチオール(C5)およびオキサチアン(チオキサン)(C6);ならびに
N1O1S1:オキサチアジン(C6)
に由来するものなどが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0056】
置換(非芳香族)単環式ヘテロシクリル基の例としては、環式サッカライド、例えば、アラビノフラノース、リキソフラノース、リボフラノース、キシロフランセなどのフラノース(C5)、およびアロピラノース、アルトロピラノース、グルコピラノース、マンノピラノース、グロピラノース、イドピラノース、ガラクトピラノース、タロピラノースなどのピラノース(C6)に由来するものが挙げられる。
【0057】
スピロ-C3-7シクロアルキルまたはヘテロシクリル:本明細書において使用される「スピロC3-7シクロアルキルまたはヘテロシクリル」という用語は、両方の環に共通な単一原子によって別の環に連結されたC3-7シクロアルキルまたはC3-7ヘテロシクリル環を指す。
【0058】
C5-20アリール:本明細書において使用される「C5-20アリール」という用語は、C5-20芳香族化合物の芳香環原子から水素原子を除去することによって得られる一価の部分に関係し、前記化合物は1個の環または2個以上の(例えば、縮合)環を有し、5〜20個の環原子を有し、前記環の少なくとも1個は芳香環である。各環は5〜7個の環原子を有することが好ましい。
【0059】
環原子は、「カルボアリール基」におけるようにすべて炭素原子とすることができる。この場合には、この基は、好都合には「C5-20カルボアリール」基と称される。
【0060】
環ヘテロ原子を持たないC5-20アリール基(すなわち、C5-20カルボアリール基)の例としては、ベンゼン(すなわち、フェニル)(C6)、ナフタレン(C10)、アントラセン(C14)、フェナントレン(C14)およびピレン(C16)が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0061】
あるいは、環原子としては、「ヘテロアリール基」におけるように酸素、窒素および硫黄を含めて、ただしこれらだけに限定されない1個または複数のヘテロ原子が挙げられる。この場合には、この基は、好都合には「C5-20ヘテロアリール」基と称される。ここで、「C5-20」は、炭素原子でもヘテロ原子でもよい環原子を示す。各環は5〜7個の環原子を有し、そのうち0〜4個は環ヘテロ原子であることが好ましい。
【0062】
C5-20ヘテロアリール基の例としては、フラン(オキソール)、チオフェン(チオール)、ピロール(アゾール)、イミダゾール(1,3-ジアゾール)、ピラゾール(1,2-ジアゾール)、トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、テトラゾールおよびオキサトリアゾールに由来するC5ヘテロアリール基;ならびにイソキサジン、ピリジン(アジン)、ピリダジン(1,2-ジアジン)、ピリミジン(1,3-ジアジン;例えば、シトシン、チミン、ウラシル)、ピラジン(1,4-ジアジン)およびトリアジンに由来するC6ヘテロアリール基が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0063】
ヘテロアリール基は、炭素または複素環原子を介して結合することができる。
【0064】
縮合環を含むC5-20ヘテロアリール基の例としては、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドールに由来するC9ヘテロアリール基;キノリン、イソキノリン、ベンゾジアジン、ピリドピリジンに由来するC10ヘテロアリール基;アクリジンおよびキサンテンに由来するC14ヘテロアリール基が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0065】
上記アルキル、ヘテロシクリルおよびアリール基は、単体であっても他の置換基の一部であっても、それ自体および追加の下記置換基から選択される1個または複数の基でそれ自体が場合によっては置換されていてもよい。
【0066】
ハロ:-F、-Cl、-Brおよび-I。
【0067】
ヒドロキシ:-OH。
【0068】
エーテル:-OR。ここで、Rは、エーテル置換基、例えば、C1-7アルキル基(C1-7アルコキシ基とも呼ばれる)、C3-20ヘテロシクリル基(C3-20ヘテロシクリルオキシ基とも呼ばれる)、またはC5-20アリール基(C5-20アリールオキシ基とも呼ばれる)であり、好ましくはC1-7アルキル基である。
【0069】
ニトロ:-NO2
【0070】
シアノ(ニトリル、カルボニトリル):-CN。
【0071】
アシル(ケト):-C(=O)R。ここで、Rはアシル置換基、例えば、H、C1-7アルキル基(C1-7アルキルアシルまたはC1-7アルカノイルとも呼ばれる)、C3-20ヘテロシクリル基(C3-20ヘテロシクリルアシルとも呼ばれる)、またはC5-20アリール基(C5-20アリールアシルとも呼ばれる)であり、好ましくはC1-7アルキル基である。アシル基の例としては、-C(=O)CH3(アセチル)、-C(=O)CH2CH3(プロピオニル)、-C(=O)C(CH3)3(ブチリル)および-C(=O)Ph(ベンゾイル、フェノン)が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0072】
カルボキシ(カルボン酸):-COOH。
【0073】
エステル(カルボキシレート、カルボン酸エステル、オキシカルボニル):-C(=O)OR。ここで、Rは、エステル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である。エステル基の例としては、-C(=O)OCH3、-C(=O)OCH2CH3、-C(=O)OC(CH3)3および-C(=O)OPhが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0074】
アミド(カルバモイル、カルバミル、アミノカルボニル、カルボキサミド):-C(=O)NR1R2。ここで、R1およびR2は、アミノ基に対して定義されるように、独立にアミノ置換基である。アミド基の例としては、-C(=O)NH2、-C(=O)NHCH3、-C(=O)N(CH3)2、-C(=O)NHCH2CH3および-C(=O)N(CH2CH3)2、ならびに例えば、ピペリジノカルボニル、モルホリノカルボニル、チオモルホリノカルボニルおよびピペラジニルカルボニルにおけるように、R1とR2が、それらが結合している窒素原子と一緒になって、複素環式構造を形成しているアミド基が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0075】
アミノ:-NR1R2。ここで、R1およびR2は独立にアミノ置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基(C1-7アルキルアミノまたはジ-C1-7アルキルアミノとも呼ばれる)、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基であり、好ましくはHまたはC1-7アルキル基であり、あるいは「環式」アミノ基の場合には、R1とR2は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、4〜8個の環原子を有する複素環式環を形成している。アミノ基の例としては、-NH2、-NHCH3、-NHCH(CH3)2、-N(CH3)2、-N(CH2CH3)2および-NHPhが挙げられるが、これらだけに限定されない。環式アミノ基の例としては、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジノ、ピペラジニル、パーヒドロジアゼピニル、モルホリノおよびチオモルホリノが挙げられるが、これらだけに限定されない。環状アミノ基は、本明細書に定義する置換基、例えば、カルボキシ、カルボキシレートおよびアミドのいずれかによってその環上で置換されていてもよい。
【0076】
アシルアミド(アシルアミノ):-NR1C(=O)R2。ここで、R1はアミド置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基であり、好ましくはHまたはC1-7アルキル基であり、最も好ましくはHである。R2はアシル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である。アシルアミド基の例としては、-NHC(=O)CH3、-NHC(=O)CH2CH3および-NHC(=O)Phが挙げられるが、これらだけに限定されない。R1とR2は、例えば、スクシンイミジル、マレイミジルおよびフタルイミジル(phthalimidyl)におけるように一緒になって、環式構造を形成することができる。
【0077】
【化7】

ウレイド:-N(R1)CONR2R3。ここで、R2およびR3は独立に、アミノ基に対して定義されたアミノ置換基であり、R1はウレイド置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基であり、好ましくは水素またはC1-7アルキル基である。ウレイド基の例としては、-NHCONH2、-NHCONHMe、-NHCONHEt、-NHCONMe2、-NHCONEt2、-NMeCONH2、-NMeCONHMe、-NMeCONHEt、-NMeCONMe2、-NMeCONEt2および-NHC(=O)NHPhが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0078】
アシルオキシ(リバースエステル(reverse ester)):-OC(=O)R。ここで、Rはアシルオキシ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である。アシルオキシ基の例としては、-OC(=O)CH3(アセトキシ)、-OC(=O)CH2CH3、-OC(=O)C(CH3)3、-OC(=O)Ph、-OC(=O)C6H4Fおよび-OC(=O)CH2Phが挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0079】
チオール:-SH。
【0080】
チオエーテル(スルフィド):-SR。ここで、Rはチオエーテル置換基であり、例えば、C1-7アルキル基(C1-7アルキルチオ基とも呼ばれる)、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である。C1-7アルキルチオ基の例としては、-SCH3および-SCH2CH3が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0081】
スルホキシド(スルフィニル):-S(=O)R。ここで、Rはスルホキシド置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である。スルホキシド基の例としては、-S(=O)CH3および-S(=O)CH2CH3が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0082】
スルホニル(スルホン):-S(=O)2R。ここで、Rはスルホン置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基またはC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である。スルホン基の例としては、-S(=O)2CH3(メタンスルホニル、メシル)、-S(=O)2CF3、-S(=O)2CH2CH3および4-メチルフェニルスルホニル(トシル)が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0083】
チオアミド(チオカルバミル):-C(=S)NR1R2。ここで、R1およびR2は独立に、アミノ基に対して定義されたアミノ置換基である。アミド基の例としては、-C(=S)NH2、-C(=S)NHCH3、-C(=S)N(CH3)2および-C(=S)NHCH2CH3が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0084】
スルホンアミノ:-NR1S(=O)2R。ここで、R1は、アミノ基に対して定義されたアミノ置換基であり、Rはスルホンアミノ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である。スルホンアミノ基の例としては、-NHS(=O)2CH3、-NHS(=O)2Phおよび-N(CH3)S(=O)2C6H5が挙げられるが、これらだけに限定されない。
【0085】
上述したように、上記置換基を形成する基、例えば、C1-7アルキル、C3-20ヘテロシクリルおよびC5-20アリール自体を置換することもできる。したがって、上記定義は、置換されている置換基も包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0086】
以下の好ましい実施形態(preference)を本発明の各態様に適宜適用することができる。
【0087】
本発明においては、-A-B-で表される縮合芳香環は、好ましくは炭素環原子のみからなり、したがって、ベンゼン、ナフタレンとすることができ、より好ましくはベンゼンである。上述したように、これらの環は置換されていてもよいが、一部の実施形態においては置換されていないことが好ましい。
【0088】
-A-B-で表される縮合芳香環が置換基を有する場合には、カルボニル基に対してメタ位にある、中央の環にそれ自体が結合している原子に結合していることが好ましい。したがって、縮合芳香環がベンゼン環である場合には、好ましい置換位置は、次式において*で示される。
【0089】
【化8】

この位置は、通常、フタラジノン部分の5位と呼ばれる。
【0090】
R1は好ましくはH、ClおよびFから選択され、より好ましくはFである。
【0091】
RC1とRC2はともに水素であることが好ましい。
【0092】
nが2であるときには、XはNRXである。これらの実施形態においては、RXは、好ましくは、H;場合によっては置換されていてもよいC1-20アルキル;場合によっては置換されていてもよいC5-20アリール;エステル置換基が好ましくはC1-20アルキルである、場合によっては置換されていてもよいエステル基;場合によっては置換されていてもよいアシル基;場合によっては置換されていてもよいアミド基;場合によっては置換されていてもよいチオアミド基;および場合によっては置換されていてもよいスルホニル基からなる群から選択される。RXは、より好ましくは、H;場合によっては置換されていてもよいC1-20アルキル;場合によっては置換されていてもよいC5-20アリール;およびエステル置換基が好ましくはC1-20アルキルである、場合によっては置換されていてもよいエステル基からなる群から選択される。
【0093】
nが1であるときには、XはNRXまたはCRXCRYとすることができる。
【0094】
XがNRXである実施形態においては、RXは、好ましくは、H;場合によっては置換されていてもよいC1-20アルキル;場合によっては置換されていてもよいC5-20アリール;場合によっては置換されていてもよいアシル;場合によっては置換されていてもよいスルホニル;場合によっては置換されていてもよいアミド;および場合によっては置換されていてもよいチオアミド基からなる群から選択される。
【0095】
XがCRXRYである実施形態においては、RYは好ましくはHである。RXは、好ましくは、H;場合によっては置換されていてもよいC1-20アルキル;場合によっては置換されていてもよいC5-20アリール;場合によっては置換されていてもよいC3-20ヘテロシクリル;アシル置換基が好ましくはC5-20アリールおよびC3-20ヘテロシクリル(例えば、ピペラジニル)から選択される、場合によっては置換されていてもよいアシル;アミノ基が好ましくはHおよびC1-20アルキルから選択され、またはアミノ基が窒素原子と一緒になってC5-20複素環式基を形成する、場合によっては置換されていてもよいアミド;ならびにエステル置換基が好ましくはC1-20アルキル基から選択される、場合によっては置換されていてもよいエステル基からなる群から選択される。
【0096】
特に好ましい化合物としては、1、2、3、4、10、21、74、97、152、153、163、167、169、173、185、232、233、250、251、252、260および263が挙げられる。
【0097】
上記好ましい態様は、適宜、互いに組み合わせることができる。
【0098】
含まれる他の形態
上記のものには、公知のイオン型、塩型、溶媒和物型およびこれら置換基の保護型が含まれる。例えば、カルボン酸(−COOH)についての言及は、アニオン(カルボキシレート)型(−COO)、それの塩もしくは溶媒和物、ならびに従来の保護型をも含むものである。同様に、アミノ基についての言及は、プロトン化型(−NHR)、アミノ基の塩もしくは溶媒和物(例:塩酸塩)ならびにアミノ基の従来の保護型を含むものである。同様に、ヒドロキシル基についての言及は、アニオン型(−O)、それの塩または溶媒和物、ならびにヒドロキシル基の従来の保護型をも含むものである。
【0099】
異性体、塩、溶媒和物、保護型およびプロドラッグ
ある種の化合物は、1以上の特定の幾何型、光学型、エナンチオマー型、ジアステレオマー型、エピマー型、立体異性体型、互変異、立体配座型またはアノマー型で存在する場合があり、それにはシスおよびトランス型;E型およびZ型;c、tおよびr型;エンドおよびエキソ型;R、Sおよびメソ型;DおよびL型;dおよびl型;(+)および(−)型;ケト、エノールおよびエノレート型;シンおよびアンチ型;シンクリナルおよびアンチクリナル型;αおよびβ型;アキシャルおよびエカトリアル型;ボート、チェア、ねじれ、包接および半チェア型;ならびにこれらの組み合わせなど(以下総称して「異性体」(または「異性体型」))があるが、これらに限定されるものではない。
【0100】
化合物が結晶型である場合、それは多くの多形型で存在することができる。
【0101】
留意すべき点として、互変異体について下記で説明するものを除き、構造(または構成)異性体(すなわち、空間的な原子の位置によってのみではなく、原子間の連結において異なる異性体)は、特に本明細書で使用される場合の「異性体」という用語から除外される。例えばメトキシ基−OCHについての言及は、それの構造異性体であるヒドロキシメチル基−CHOHについて言及しているものと解釈すべきではない。同様に、オルトクロロフェニルについての言及は、それの構造異性体であるメタクロロフェニルについての言及と解釈すべきではない。しかしながら、ある種の構造についての言及が、その種類の範囲に含まれる構造異性体をも含む場合がある(例えば、C1−7アルキルには、n−プロピルおよびイソプロピルが含まれ;ブチルにはn−、イソ、sec−およびtert−ブチルが含まれ;メトキシフェニルにはオルト−、メタ−およびパラ−メトキシフェニルが含まれる)。
【0102】
上記の除外は、ケト/エノール、イミン/エナミン、アミド/イミノアルコール、アミジン/アミジン、ニトロソ/オキシム、チオケトン/エネチオール、N−ニトロソ/ヒドロキシアゾ、およびニトロ/アシニトロという互変異体ペアの場合のように、ケト、エノールおよびエノレート型という互変異型に関するものではない。
【0103】
本発明に特に関連するものとしては、以下に示したような互変異体ペアがある。
【0104】
【化9】

留意すべき点として、1以上の同位体置換を有する化合物は特に「異性体」という用語に含まれる。例えば、HはH、H(D)およびH(T)などの同位体型であることができる。Cは12C、13Cおよび14Cなどの同位体型であることができる。Oは16Oおよび18Oなどの同位体型であることができる等である。
【0105】
別段の断りがない限り、特定の化合物についての言及は、それの(全体または部分的)ラセミ体その他の混合物を含むそのような全ての異性体を含む。そのような異性体の製造方法(例:不斉合成)および分離方法(例:分別結晶およびクロマトグラフィー手段)は、当業界で公知であるか、あるいは本明細書に記載の方法または公知の方法を公知の手法で適合させることで容易に得られるものである。
【0106】
別段の断りがない限り、特定の化合物についての言及は、例えば以下に記載のようなそれのイオン、塩、溶媒和物および保護体、ならびにそれの異なる多形体をも含む。
【0107】
例えば製薬上許容される塩などの活性化合物の相当する塩を製造、精製および/または取り扱うことが簡便または望ましい場合がある。製薬上許容される塩の例は、バージらの報告に記載されている(Berge et al., "Pharmaceutically Acceptable Salts," J. Pharm. Sci., Vol. 66, pp. 1-19 (1977))。
【0108】
例えば、化合物が陰イオン性である場合、または陰イオン性であることができる官能基(例:−COOHは−COOであることができる)を有する場合、好適な陽イオンと塩を形成することができる。好適な無機陽イオンの例としては、NaおよびKなどのアルカリ金属イオン、Ca2+およびMg2+などのアルカリ土類陽イオン、Al3+などの他の陽イオンなどがあるが、これらに限定されるものではない。好適な有機陽イオンの例としては、アンモニウムイオン(すなわち、NH)および置換アンモニウムイオン(例:NH、NH、NHR、NR)などがあるが、これらに限定されるものではない。一部の好適な置換アンモニウムイオンの例としては、エチルアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミンおよびトロメタミン、ならびにリジンおよびアルギニンなどのアミノ酸から誘導されるものがある。一般的な4級アンモニウム塩の例としては、N(CHがある。
【0109】
化合物が陽イオン性である場合、あるいは陽イオン性となり得る官能基(例えば、−NHは−NHであることができる)を有する場合、好適な陰イオンと塩を形成することができる。好適な無機陰イオンの例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸および亜リン酸という無機酸から誘導されるものなどがあるが、これらに限定されるものではない。好適な有機陰イオンの例としては、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸(gycolic)、ステアリン酸、パルミチン酸、乳酸、リンゴ酸、パモ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、安息香酸、ケイ皮酸、ピルビン酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、吉草酸およびグルコン酸という有機酸から誘導されるものなどがあるが、これらに限定されるものではない。好適なポリマー陰イオンの例としては、タンニン酸、カルボキシメチルセルロースというポリマー酸から誘導されるものなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0110】
活性化合物の相当する溶媒和物を製造、精製および/または取り扱うことが簡便または望ましい場合がある。本明細書においては「溶媒和物」という用語は、溶質(例:活性化合物、活性化合物の塩)と溶媒の錯体を指す従来の意味で用いられる。溶媒が水である場合、溶媒和物は簡便には、例えば1水和物、2水和物、3水和物などの水和物と称することができる。
【0111】
化学的に保護された形で活性化合物を製造、精製および/または取り扱うことが簡便または望ましい場合がある。本明細書で使用される「化学的に保護された形」という用語は、1以上の反応性官能基が望ましくない化学反応から保護されている、すなわち被保護基または保護基(被マスク基またはマスク基あるいは被ブロック基またはブロック基とも称される)の形である化合物に関係するものである。反応性官能基を保護することで、他の未保護の反応性官能基が関与する反応を、被保護基に影響を与えることなく実施することができる。保護基は、分子の残りの部分に実質的な影響を与えることなく、通常は後段階で脱離させることができる。例えば、グリーンらの著作を参照する("Protective Groups in Organic Synthesis” (T. Green and P. Wuts; 3rd Eddition; John Wiley and Sons, 1991)。
【0112】
例えばヒドロキシ基は、エーテル(−OR)またはエステル(−OC(=O)R)として、例えばt−ブチルエーテル;ベンジル、ベンズヒドリル(ジフェニルメチル)またはトリチル(トリフェニルメチル)エーテル;トリメチルシリルまたはt−ブチルジメチルシリルエーテル;またはアセチルエステル(−OC(=O)CH、−OAc)として保護することができる。
【0113】
例えばアルデヒド基またはケトン基は、カルボニル基(>C=O)が例えば1級アルコールとの反応によってジエーテル(>C(OR))に変換されるアセタールまたはケタールとしてそれぞれ保護することができる。アルデヒド基またはケトン基は、酸存在下で大過剰の水を用いる加水分解によって容易に再生される。
【0114】
例えばアミン基は、例えばアミドまたはウレタンとして、例えばメチルアミド(−NHCO−CH);ベンジルオキシアミド(−NHCO−OCH、−NH−Cbz);t−ブトキシアミド(−NHCO−OC(CH、−NH−Boc);2−ビフェニル−2−プロポキシアミド(−NHCO−OC(CH、−NH−Bpoc)、9−フルオレニルメトキシアミド(−NH−Fmoc)、6−ニトロベラトリルオキシアミド(−NH−Nvoc)、2−トリメチルシリルエチルオキシアミド(−NH−Teoc)、2,2,2−トリクロロエチルオキシアミド(−NH−Troc)、アリルオキシアミド(−NH−Alloc)、2(−フェニルスルホニル)エチルオキシアミド(−NH−Psec)として、または好適な場合にはN−オキサイド(>NO・)として保護することができる。
【0115】
例えばカルボン酸基は、エステルとして、例えばC1−7アルキルエステル(例:メチルエステル、t−ブチルエステル);C1−7ハロアルキルエステル(例:C1−7トリハロアルキルエステル);トリC1−7アルキルシリル−C1−7アルキルエステル;またはC5−20アリール−C1−7アルキルエステル(例:ベンジルエステル、ニトロベンジルエステル)として;またはアミドとして、例えばメチルアミドとして保護することができる。
【0116】
例えばチオール基は、チオエーテル(−SR)として、例えばベンジルチオエーテル;アセトアミドメチルエーテル(−S−CHNHC(=O)CH)として保護することができる。
【0117】
プロドラッグの形で活性化合物を製造、精製および/または取り扱うことが簡便または望ましい場合がある。本明細書で使用される「プロドラッグ」という用語は、代謝された場合に(例えばin vivoで)、所望の活性化合物を生じる化合物に関係するものである。代表的には、プロドラッグは不活性であるか、あるいは活性化合物と比較して活性が低いが、有利な取り扱い、管理または代謝特性を提供することができる。
【0118】
例えば一部のプロドラッグは、活性化合物のエステル(例:生理的に許容される代謝的に不安定なエステル)である。代謝の際、エステル基(−C(=O)OR)が開裂して活性薬剤が得られる。そのようなエステルは、例えば適宜に親化合物に存在する他の反応性基を事前に保護した親化合物におけるいずれかのカルボン酸基(−C(=O)OH)のエステル化と、それに続く必要に応じた脱保護によって形成することができる。そのような代謝的に不安定なエステルの例としては、RがC1−7アルキル(例−Me、−Et);C1−7アミノアルキル(例:アミノエチル;2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル;2−(4−モルホリノ)エチル);およびアシルオキシ−C1−7アルキル(例:アシルオキシメチル;アシルオキシエチル;例:ピバロイルオキシメチル;アセトキシメチル;1−アセトキシエチル;1−(1−メトキシ−1−メチル)エチルカルボニルオキシエチル;1−(ベンゾイルオキシ)エチル;イソプロポキシカルボニルオキシメチル;1−イソプロポキシ−カルボニルオキシエチル;シクロヘキシル−カルボニルオキシメチル;1−シクロヘキシル−カルボニルオキシエチル;シクロヘキシルオキシ−カルボニルオキシメチル;1−シクロヘキシルオキシカルボニルオキシエチル;(4−テトラヒドロピラニルオキシ)カルボニルオキシメチル;1−(4−テトラヒドロピラニルオキシ)カルボニルオキシエチル;(4−テトラヒドロピラニル)カルボニルオキシメチル;および1−(4−テトラヒドロピラニル)カルボニルオキシエチル)であるものなどがある。
【0119】
別の好適なプロドラッグ型には、リン酸塩およびグリコール酸塩などがある。詳細にはヒドロキシ基(−OH)は、亜リン酸クロロジベンジルとの反応と、次に水素化を行ってホスホネート基−O−P(=O)(OH)を形成することでホスホネートプロドラッグとすることができる。そのような基は、代謝時にホスホターゼ酵素によって除去されて、ヒドロキシ基を有する活性薬剤を生じることができる。
【0120】
さらに、一部のプロドラッグは、酵素的に活性化させて活性化合物を得ることができるか、あるいはさらなる化学反応によって活性化合物を与える化合物を得ることができる。例えばプロドラッグは、糖誘導体その他の配糖体抱合体であることができるか、あるいはアミノ酸エステル誘導体であることができる。
【0121】
略語
簡便のため、多くの化学部分を公知の略称を用いて表す。それには、メチル(Me)、エチル(Et)、n−プロピル(nPr)、イソプロピル(iPr)、n−ブチル(nBu)、tert−ブチル(tBu)、n−ヘキシル(nHex)、シクロヘキシル(cHex)、フェニル(Ph)、ビフェニル(biPh)、ベンジル(Bn)、ナフチル(naph)、メトキシ(MeO)、エトキシ(EtO)、ベンゾイル(Bz)およびアセチル(Ac)などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0122】
簡便のため、多くの化合物を公知の略称を用いて表す。それには例えば、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、イソプロパノール(i−PrOH)、メチルエチルケトン(MEK)、エーテルもしくはジエチルエーテル(EtO)、酢酸(AcOH)、塩化メチレン(メチレンクロライド、DCM)、トリフルオロ酢酸(TFA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)およびジメチルスルホキシド(DMSO)などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0123】
合成
以下の合成経路においては、便宜上、A-B縮合環を縮合ベンゼン環として示す。A-B環がベンゼン以外である化合物は、適切な別の出発材料を用いて、以下に示す方法と類似した方法によって合成することができる。
【0124】
本発明の化合物は、式1の化合物
【0125】
【化10】

(ここで、R1は、上記定義の通り)と式2の化合物
【0126】
【化11】

(ここで、n、RC1、RC2およびXは、上記定義の通り)とを、カップリング試薬系、例えば、2-(1H-ベンゾトリアゾル-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート、2-(1H-ベンゾトリアゾル-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェートまたは(ジメチルアミノプロピル)エチルカルボジイミド塩酸塩/ヒドロキシベンゾトリアゾールの存在下で、塩基、例えばジイソプロピルエチルアミンの存在下で、溶媒、例えばジメチルアセトアミドまたはジクロロメタン中、0℃から使用溶媒の沸点までの範囲の温度で反応させることによって合成することができる。
【0127】
あるいは、本発明の化合物は、周知の方法によって式1の化合物を活性種、例えば酸塩化物、N-ヒドロキシコハク酸イミドエステルなどの活性エステルに転化し、その活性種を式2の化合物と反応させることによって合成することができる。
【0128】
式1の化合物は、式3の化合物
【0129】
【化12】

(ここで、R1は、上記定義の通り)または式4の化合物
【0130】
【化13】

(ここで、R1は、上記定義の通り)または式3の化合物と式4の化合物の混合物を、ヒドラジン源、例えばヒドラジン水和物と、場合によっては塩基、例えばトリエチルアミンの存在下で、場合によっては溶媒、例えば工業用変性アルコールの存在下で、0℃から使用溶媒の沸点までの範囲の温度で反応させることによって合成することができる。
【0131】
式3の化合物、式4の化合物またはそれらの混合物は、式5の化合物
【0132】
【化14】

(ここで、R1は、上記定義の通り)を、ニトリル成分を加水分解することができる試薬、例えば水酸化ナトリウムと、溶媒、例えば水の存在下で、0℃から使用溶媒の沸点までの範囲の温度で反応させることによって合成することができる。
【0133】
式5の化合物は、式6の化合物、
【0134】
【化15】

(ここで、R1は、上記定義の通り)を、式7の化合物
【0135】
【化16】

と、塩基、例えばナトリウムメトキシドの存在下で、溶媒、例えばメタノール中、場合によっては水捕捉剤、例えばプロピオン酸エチルの存在下で、0℃から使用溶媒の沸点までの範囲の温度で反応させることによって合成することができる。
【0136】
式1の化合物は、式8の化合物
【0137】
【化17】

(R1は、上記定義の通り)を、ニトリル成分を加水分解することができる試薬、例えば、水酸化ナトリウムと、溶媒、例えば水の存在下で、0℃から使用溶媒の沸点までの範囲の温度で反応させ、続いて得られた中間体をヒドラジン源、例えばヒドラジン水和物と、0℃から使用溶媒の沸点までの範囲の温度で反応させることによって合成することもできる。
【0138】
式8の化合物は、式9の化合物
【0139】
【化18】

(ここで、RaはC1-4アルキル基である)を、式6の化合物と、塩基、例えばトリエチルアミンまたはリチウムヘキサメチルジシラジドの存在下で、溶媒、例えばテトラヒドロフランの存在下で、-80℃から使用溶媒の沸点までの範囲の温度で反応させることによって合成することができる。
【0140】
式9の化合物は、国際公開第02/26576号に記載の方法と類似の方法によって合成することができる。
【0141】
式1の化合物は、すべての式のニトリル成分が、カルボン酸を生成することができる別の成分、例えばエステルまたはカルボキサミド成分で置換された、上記方法と類似の方法によって合成することもできる。
【0142】
式2の化合物は市販されており、または化学文献に報告された方法によって合成することができる。
【0143】
XがCRXRYであり、RXまたはRYの一方がアミド成分であり、したがって式10で表すことができる本発明の化合物
【0144】
【化19】

(ここで、n、RC1、RC2、R1およびRXは上で定義したとおりであり、RN1およびRN2は各々個々にH、場合によっては置換されていてもよいC1-20アルキル、C5-20アリール、C3-20ヘテロシクリルからなる群から選択され、または場合によっては置換されていてもよいC3-7シクロアルキルもしくはヘテロシクリル基を一緒になって形成することができる)は、式11の化合物
【0145】
【化20】

(ここで、n、RC1、RC2、R1およびRXは、上記定義の通り)を、式HNRN1RN2の化合物(ここで、RN1およびRN2は、上記定義の通り)と、カップリング試薬系、例えば2-(1H-ベンゾトリアゾル-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート、2-(1H-ベンゾトリアゾル-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェートまたは(ジメチルアミノプロピル)エチルカルボジイミド塩酸塩/ヒドロキシベンゾトリアゾールの存在下で、塩基、例えばジイソプロピルエチルアミンの存在下で、溶媒、例えばジメチルアセトアミドまたはジクロロメタン中で、0℃から使用溶媒の沸点までの範囲の温度で反応させることによって合成することができる。
【0146】
あるいは、式10の化合物は、周知の方法によって式11の化合物を活性種、例えば、酸塩化物、N-ヒドロキシコハク酸イミドエステルなどの活性エステルに転化し、その活性種を式HNRN1RN2の化合物と反応させることによって合成することができる。
【0147】
式11の化合物は、式11の化合物の保護体、例えば、式12の化合物
【0148】
【化21】

(ここで、n、RC1、RC2、R1およびRXは、上で定義したとおりであり、R01はC1-4アルキル基である)を周知の方法、例えば、塩基触媒による加水分解によって、水酸化物源、例えばナトリウムまたは水酸化リチウムの存在下で、溶媒、例えば水および/またはテトラヒドロフランの存在下で、0℃から使用溶媒の沸点までの範囲の温度で脱保護することによって合成することができる。
【0149】
式12の化合物は、先に記述した方法によって式1の化合物から合成することができる。
【0150】
式HNRN1RN2の化合物は市販されており、または化学文献に報告された方法によって合成することができる。
【0151】
XがNHであり、したがって式13
【0152】
【化22】

(ここで、n、RC1、RC2およびR1は、上記定義の通り)で表すことができる本発明の化合物は、式13の化合物の保護体、例えば、式14の化合物
【0153】
【化23】

(ここで、n、RC1、RC2およびR1は、上記定義の通り)を、周知の方法、例えば、酸触媒による切断によって、酸、例えばトリフルオロ酢酸または塩酸の存在下で、溶媒、例えばジクロロメタンまたはエタノールおよび/または水の存在下で、0℃から使用溶媒の沸点までの範囲の温度で脱保護することによって合成することができる。
【0154】
式14の化合物は、先に記述した方法によって式1の化合物から合成することができる。
【0155】
XがNRXであり、RXがアシル成分であり、したがって式15
【0156】
【化24】

(ここで、n、RC1、RC2およびR1は、上で定義したとおりであり、RC3は、場合によっては置換されていてもよいC1-20アルキル、C5-20アリールおよびC3-20ヘテロシクリルからなる群から選択される)で表すことができる本発明の化合物は、式13の化合物を式RC3COX(ここで、RC3は上で定義したとおりであり、Xは適切な脱離基、例えば、クロロなどのハロゲンである)の化合物と、場合によっては塩基、例えばピリジン、トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンの存在下で、場合によっては溶媒、例えばジクロロメタンの存在下で、0℃から使用溶媒の沸点までの範囲の温度で反応させることによって合成することができる。
【0157】
式RC3COXの化合物は市販されており、または化学文献に報告された方法によって合成することができる。
【0158】
式15の化合物は、式13の化合物を式RC3CO2H(ここで、RC3は、上記定義の通り)の化合物と、カップリング試薬系、例えば、2-(1H-ベンゾトリアゾル-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート、2-(1H-ベンゾトリアゾル-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェートまたは(ジメチルアミノプロピル)エチルカルボジイミド塩酸塩/ヒドロキシベンゾトリアゾールの存在下で、塩基、例えばジイソプロピルエチルアミンの存在下で、溶媒、例えばジメチルアセトアミドまたはジクロロメタン中で、0℃から使用溶媒の沸点までの範囲の温度で反応させることによって合成することもできる。
【0159】
式RC3CO2Hの化合物は市販されており、または化学文献に報告された方法によって合成することができる。
【0160】
XがNRXであり、RXがアミドまたはチオアミド成分であり、したがって式16
【0161】
【化25】

(ここで、n、RC1、RC2およびR1は、上で定義したとおりであり、YはOまたはSであり、RN3は、場合によっては置換されていてもよいC1-20アルキル、C5-20アリールおよびC3-20ヘテロシクリルからなる群から選択される)で表すことができる本発明の化合物は、式13の化合物を式RN3NCY(ここで、YおよびRN3は、上記定義の通り)の化合物と、溶媒、例えばジクロロメタンの存在下で、0℃から使用溶媒の沸点までの範囲の温度で反応させることによって合成することができる。
【0162】
式RN3NCYの化合物は市販されており、または化学文献に報告された方法によって合成することができる。
【0163】
XがNRXであり、RXがスルホニル成分であり、したがって式17
【0164】
【化26】

(ここで、n、RC1、RC2およびR1は、上で定義したとおりであり、RS1は、場合によっては置換されていてもよいC1-20アルキル、C5-20アリールおよびC3-20ヘテロシクリルからなる群から選択される)で表すことができる本発明の化合物は、式13の化合物を式RS1SO2Clの化合物(ここで、RS1は、上記定義の通り)と、場合によっては塩基、例えばピリジン、トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンの存在下で、溶媒、例えばジクロロメタンの存在下で、0℃から使用溶媒の沸点までの範囲の温度で反応させることによって合成することができる。
【0165】
式RS1SO2Clの化合物は市販されており、または化学文献に報告された方法によって合成することができる。
【0166】
XがNRXであり、RXが、場合によっては置換されていてもよいC1-20アルキルまたはC3-20ヘテロシクリルからなる群から選択され、したがって式18
【0167】
【化27】

(ここで、n、RC1、RC2およびR1は、上で定義したとおりであり、RC4およびRC5は各々個々にH、場合によっては置換されていてもよいC1-20アルキル、C5-20アリール、C3-20ヘテロシクリルからなる群から選択され、あるいはRC4とRC5は一緒になって、場合によっては置換されていてもよいC3-7シクロアルキルまたはヘテロシクリル基を形成することができる)で表すことができる本発明の化合物は、式13の化合物を式RC4CORC5(ここで、RC4およびRC5は、上記定義の通り)の化合物と、還元剤、例えばシアノ水素化ホウ素ナトリウムまたはトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムの存在下で、溶媒、例えばメタノールの存在下で、場合によっては酸触媒、例えば酢酸の存在下で、0℃から使用溶媒の沸点までの範囲の温度で反応させることによって合成することができる。
【0168】
式RC4CORC5の化合物は市販されており、または化学文献に報告された方法によって合成することができる。
【0169】
用途
本発明は、活性化合物、具体的にはPARPの活性を阻害する活性を有する化合物を提供する。
【0170】
本明細書で使用される「活性」という用語は、PARP活性を阻害することができる化合物に関係するものであり、具体的には固有の活性を有する化合物(薬剤)とそのような化合物のプロドラッグの両方を含み、プロドラッグ自体は固有の活性をほとんど示さない場合がある。
【0171】
特定の化合物が提供するPARP阻害を評価するのに簡便に用いることができる一つのアッセイを、下記の例で説明する。
【0172】
本発明はさらに、細胞におけるPARPの活性を阻害する方法であって、その細胞を、好ましくは製薬上許容される組成物の形での有効量の活性化合物と接触させる段階を有する方法を提供する。そのような方法は、in vitroまたはin vivoで行うことができる。
【0173】
例えば、細胞のサンプルをin vitroで増殖させ、活性化合物をその細胞と接触させ、その細胞に対する化合物の効果を観察することができる。「効果」の例として、一定時間で行われたDNA修復の量を求めることができる。活性化合物が細胞に対して影響を与えることが認められる場合には、同じ細胞種の細胞を有する患者の治療方法におけるその化合物の効力に関する予後または診断マーカーとして、それを用いることができる。
【0174】
状態の治療という文脈において本明細書で使用される「治療」という用語は、ヒトに関するものか動物に関するものか(例:獣医用途)を問わず、例えば状態進行の阻害などの何らかの望ましい治療効果が得られる治療および療法に関係するものであり、その効果には進行速度の低下、進行速度の停止、状態の改善および状態の治癒などがある。予防手段(すなわち予防)としての治療も含まれる。
【0175】
本明細書で使用される「補助手段」という用語は、公知の治療手段と組み合わせた活性化合物の使用に関係するものである。そのような手段には、各種癌の治療で用いられる薬剤の細胞傷害性投与および/または電離放射線などがある。具体的には、該活性化合物は、癌の化学療法の多くの活性を増強することが知られている。このような活性化合物としては、トポイソメラーゼのクラスの毒(例えば、トポテカン、イリノテカン、ルビテカン)、癌の治療に使用されている既知のアルキル化剤(例えば、DTIC、テモゾラミド)および白金系薬剤(例えば、カルボプラチン、シスプラチン)が挙げられる。
【0176】
活性化合物は、PARPを阻害するために細胞培養添加剤として用いて、例えばin vitroで公知の化学療法剤または電離放射線処置に対して細胞を増感させることもできる。
【0177】
活性化合物はin vitroアッセイの一部として用いて、例えば候補宿主において対象とする化合物での治療が有効であるか否かを決定することもできる。
【0178】
投与
活性化合物または活性化合物を含む医薬組成物は、全身投与/末梢投与であるか所望の作用部位とは無関係に、簡便な投与経路によって被験者に投与することができ、それには経口(例:経口摂取により);局所(例えば経皮、経鼻、眼球、口腔および舌下など);肺(例:例えばエアロゾルを用いた、例えば口もしくは鼻を介した吸入または通気療法);直腸;膣;例えば皮下、皮内、筋肉、静脈、動脈、心臓内、硬膜内、脊髄内、嚢内、被膜下、眼窩内、腹腔内、気管内、表皮下、関節内、クモ膜下および胸骨内などの注射による非経口;例えば皮下または筋肉でのデポー剤埋込物によるものなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0179】
被験体は、真核生物、動物、脊椎動物、哺乳動物、齧歯類(例:モルモット、ハムスター、ラット、マウス)、ネズミ類(例:マウス)、犬類(例:イヌ)、ネコ類(例:ネコ)、ウマ類(例:ウマ)、霊長類、類人猿(例:サルまたは類人猿)、サル類(例:マーモセット、ヒヒ)、類人猿(例:ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、テナガザル)またはヒトであることができる。
【0180】
製剤
活性化合物を単独で投与することは可能であるが、それを1以上の製薬上許容される担体、補助剤、賦形剤、希釈剤、充填剤、緩衝剤、安定剤、保存剤、潤滑剤その他の当業者には公知の材料ならびに適宜に他の治療薬もしくは予防薬とともに、上記で定義の少なくとも1種類の活性化合物を含む医薬組成物(例えば、製剤)として提供することが好ましい。
【0181】
そこで本発明はさらに、上記で定義の医薬組成物、ならびに本明細書に記載の1以上の製薬上許容される担体、賦形剤、希釈剤、緩衝剤、補助剤、安定剤その他の材料と上記で定義の少なくとも1以上の活性化合物を混合する段階を有する医薬組成物の製造方法を提供する。
【0182】
本明細書で使用される「製薬上許容される」という用語は、妥当な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応その他の問題または合併症を起こさず、妥当な利益/リスク比を与えて、被験者(例:ヒト)の組織と接触しての使用に好適である化合物、材料、組成物および/または製剤に関係するものである。各担体、賦形剤なども、製剤の他の成分と適合性であるという意味において「許容できる」ものでなければならない。
【0183】
好適な担体、希釈剤、賦形剤などは標準的な薬学のテキストに記載されている。例えば、”Handbook of Pharmaceutical Additives”, 2nd. Edition (eds. M. Ash and I. Ash), 2001 (Synapse Information Resources, Inc., Endicott, New York, USA), “Remington’s Pharmaceutical Sciences”, 20th edition, pub. Lippincott, Williams and Wilkinsons, 2000; 及び “Handbook of Pharmaceutical Excipients”, 2nd eddtion, 1994 を参照のこと。
【0184】
製剤は簡便には単位製剤で提供することができ、製薬業界で公知の方法によって製造することができる。そのような方法には、1以上の補助成分を構成する担体と活性化合物を組み合わせる段階がある。概して製剤は、液体担体または微粉砕固体担体またはその両方を活性化合物と均一かつ十分に組み合わせ、次に必要に応じて生成物を成形することで製造される。
【0185】
製剤は、液体、液剤、懸濁液、乳濁液、エリキシル剤、シロップ、錠剤、ロゼンジ剤、粒剤、粉剤、カプセル、カシェ剤、丸薬、アンプル、坐剤、ペッサリー、軟膏、ゲル、ペースト、クリーム、噴霧剤、ミスト、泡剤、ローション、オイル、ボラス、舐剤またはエアロゾルの形とすることができる。
【0186】
経口投与(例えば、経口摂取)に好適な製剤は、カプセル、カシェ剤または錠剤などの、それぞれが所定量の活性化合物を含む個別の単位として;粉剤または粒剤として;水系もしくは非水系液体中の液剤または懸濁液として;あるいは水中油型乳濁液または油中水型乳濁液として;ボラスとして;舐剤として;あるいはペーストとして提供することができる。
【0187】
錠剤は、適宜に1以上の補助成分とともに、例えば圧縮または成形などの従来の手段によって製造することができる。圧縮錠は、1以上の結合剤(例:ポビドン、ゼラチン、アカシア、ソルビトール、トラガカント、ヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤または希釈剤(例:乳糖、微結晶セルロース、リン酸水素カルシウム);潤滑剤(例:ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ);崩壊剤(例:デンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム);界面活性または分散剤または湿展剤(例:ラウリル硫酸ナトリウム);ならびに保存剤(例:p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸プロピル、ソルビン酸)と混合されていても良い粉末または顆粒などの自由流動性の活性化合物を、好適な機械で圧縮することで製造することができる。成形錠は、不活性液体希釈剤で濡らした粉末化合物の混合物を好適な機械で成形することで製造することができる。錠剤には適宜にコーティングまたは刻み目を施すことができ、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースを各種割合で用いて活性化合物を緩やかにまたは制御し放出して、所望の放出プロファイルを得るように製剤することができる。錠剤には適宜に、腸溶コーティングを施して、胃以外の腸部分で放出されるようにすることができる。
【0188】
局所投与に好適な製剤(例:経皮、経鼻、眼球、口腔および舌下)は、軟膏、クリーム、懸濁液、ローション、粉剤、液剤、ペースト、ゲル、噴霧剤、エアロゾルまたはオイルとして製剤することができる。別法として製剤は、活性化合物および適宜に1種類以上の賦形剤もしくは希釈剤を含浸させた帯具または粘着性膏薬などの貼付剤または包帯を含むことができる。
【0189】
口での局所投与に好適な製剤には、香味を付けた基剤、通常はショ糖およびアカシアもしくはトラガカント中に活性化合物を含むロゼンジ剤;ゼラチンおよびグリセリンまたはショ糖およびアカシアなどの不活性基剤中に活性化合物を含むパステル剤;ならびに好適な液体担体中に活性化合物を含む含嗽薬などがある。
【0190】
眼球への局所投与に好適な製剤には、活性化合物を好適な担体、特には活性化合物用の水系溶媒に溶解または懸濁させた点眼剤も含まれる。
【0191】
担体が固体である鼻投与に好適な製剤には、鼻での吸気を行うことで、すなわち鼻の近くに保持された粉剤容器から鼻道を通って急速な吸入によって投与される、粒径が例えば約20〜約500ミクロンの範囲の粗粉剤などがある。担体が例えば鼻噴霧剤、鼻滴剤としての投与またはネブライザーによるエアロゾル投与用の液体である好適な製剤には、活性化合物の水系または油系溶液などがある。
【0192】
吸入による投与に好適な製剤には、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素その他の好適なガスなどの好適な推進剤を用いた加圧パックからのエアロゾル噴霧剤として提供されるものなどがある。
【0193】
皮膚を介した局所投与用製剤には、軟膏、クリームおよび乳濁液などがある。軟膏で製剤する場合、活性化合物は適宜にパラフィン系または水混和性軟膏基剤とともに用いることができる。別法として活性化合物は、水中油型クリーム基剤を用いてクリームに製剤することができる。所望に応じて、クリーム基剤の水相には、例えば少なくとも約30重量%の多価アルコール、すなわちプロピレングリコール、ブタン−1,3−ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセリンおよびポリエチレングリコールならびにそれらの混合物などの2以上のヒドロキシル基を有するアルコールを含有させることができる。局所製剤は望ましくは、皮膚その他の罹患領域からの活性化合物の吸収または浸透を促進する化合物を含むことができる。そのような皮膚浸透促進剤の例としては、ジメチルスルホキシドおよび関連類縁物などがある。
【0194】
局所乳濁液として製剤する場合、油相は場合により、乳化剤(別途にエマルジェント(emulgent)とも称される)のみを含むことができるか、あるいは脂肪またはオイルあるいは脂肪とオイルの両方と少なくとも1種類の乳化剤との混合物を含むことができる。好ましくは、親水性乳化剤を、安定剤として作用する親油性乳化剤とともに含有させる。オイルと脂肪の両方を含有させることも好ましい。同時に、安定剤と組み合わせたまたはそれを含まない乳化剤はいわゆる乳化ロウを形成し、オイルおよび/または脂肪を組み合わせたロウは、クリーム製剤の油系分散相を形成するいわゆる乳化軟膏基剤を形成する。
【0195】
好適なエマルジェントおよび乳化安定剤には、Tween60、Span80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリルおよびラウリル硫酸ナトリウムなどがある。医薬乳濁液製剤で使用される可能性の高いほとんどのオイルでの活性化合物の溶解度は非常に低い場合があることから、製剤に好適なオイルまたは脂肪の選択は所望の見た目上の特性達成に基づいたものとする。そこでクリームは好ましくは、好適な粘稠度を有することでチューブその他の容器からの漏出が回避される非グリース性で汚れていない洗浄可能な製品でなければならない。ジイソアジピン酸エステル、ステアリン酸イソセチル、ココナッツ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸2−エチルヘキシルまたはクロダモル(Crodamol)CAPと称される分岐エステルの混合物などの直鎖または分岐の一塩基または二塩基アルキルエステルを用いることができ、最後の3つが好ましいエステルである。これらは、必要な特性に応じて、単独でまたは組み合わせて用いることができる。別の形態として、白色軟パラフィンおよび/または液体パラフィンその他の鉱油などの高融点脂質を用いることができる。
【0196】
直腸投与に好適な製剤は、例えばカカオバターまたはサリチル酸誘導体(例えばエステル)などを含む好適な基剤での坐剤として提供することができる。
【0197】
膣投与に好適な製剤は、活性化合物以外に、当業界で適切であることが知られているような担体を含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡または噴霧剤製剤として提供することができる。
【0198】
非経口投与(例えば、皮膚、皮下、筋肉、静脈および経皮などの注射)に好適な製剤には、酸化防止剤、緩衝剤、保存剤、安定剤、静菌剤および製剤を所期の被投与者の血液と等張とする溶質を含むことができる水系および非水系の等張性で発熱物質を含まない無菌注射液;および懸濁剤および増粘剤を含むことができる水系および非水系無菌懸濁液、ならびに化合物を血液成分または1以上の臓器に指向させるよう設計されたリポソームその他の微粒子系などがある。そのような製剤での使用に好適な等張性媒体の例には、塩化ナトリウム注射液、リンゲル=S液または乳酸加リンゲル=S注射液などがある。代表的には、溶液中の活性化合物の濃度は、約1ng/mL〜約10μg/mLであり、例えば約10ng/mL〜約1μg/mLである。この製剤は、例えばアンプルおよびバイアルなどの単位用量または多用量密封容器に入れて提供することができ、使用直前に例えば注射用水などの無菌液体担体を加えるのみで良い冷凍乾燥(凍結乾燥)条件で保存することができる。即時注射溶液および懸濁液を、無菌の粉剤、粒剤および錠剤から調製することができる。製剤は、活性化合物を血液成分または1以上の臓器に指向させるよう設計されたリポソームその他の微粒子系の形とすることができる。
【0199】
用量
活性化合物および活性化合物を含む組成物の適切な用量は患者ごとに変動し得ることは明らかであろう。至適用量の決定には通常、本発明の治療のリスクまたは有害な副作用に対する治療効果レベルのバランスを取る作業が関与する。選択される用量レベルは、これらに限定されるものではない、特定の化合物の活性、投与経路、投与時刻、化合物の排泄速度、治療期間、併用される他の薬剤、化合物および/または材料、ならびに患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康および病歴などの多様な要素によって決まる。化合物の量および投与経路は最終的には、医師の裁量に委ねられる。ただし一般に用量は、実質的に有害または有毒な副作用を起こすことなく、所望の効果を達成する作用部位での局所濃度を与えるようなものとする。
【0200】
in vivoでの投与は、治療期間を通じて1回投与、連続投与または間歇投与(例:適切な間隔で分割用量にて)で行うことができる。投与の最も有効な手段および用量を決定する方法は当業者には公知であり、治療法に用いられる製剤、治療法の目的、治療される標的細胞、ならびに治療を受ける被験者によって変動する。治療担当医が選択する用量レベルおよびパターンで、単回投与または複数回投与を行うことができる。
【0201】
概して活性化合物の好適な用量は、約100μg〜約250mg/被験者kg/日の範囲である。活性化合物が塩、エステル、プロドラッグなどである場合、投与される量は親化合物に基づいて計算されることから、使用される実際の重量はそれに比例して多くなる。
【0202】
合成データ
一般的実験方法
分取用HPLC
サンプルは、Waters 600 LC pump、Waters Xterra C18 column (5 μm, 19 mm * 50 mm) および Micromass ZQ mass spectrometer(陽イオンエレクトロスプレーイオン化モードで運転)を使用してWaters mass-directed purification systemにより精製した。移動相A(水中0.1%ギ酸)および移動相B(アセトニトリル中0.1%ギ酸)を勾配をつけて用いた(5%Bから100%Bへ7分間、3分間保持、流速20 ml/min)。
【0203】
分析用HPLC-MS
分析用HPLCをSpectra System P4000 pump および Hones Genesis C18 column (4 μm, 50 mm × 4.6 mm)を用いて行った。移動相A(水中0.1%ギ酸)および移動相B(アセトニトリル)を勾配をつけて用いた(5%Bを1分間、5分間後に98%Bに到達、3分間保持、流速2 ml/min)。検出はTSP UV 6000LP detector(254 nm UVおよびレンジ210-600 nm PDAにて)により行った。マススペクトルメーターはFinnigan LCQ(陽イオンエレクトロスプレーモードで運転)であった。
【0204】
NMR
1H NMR および13C NMR は、Bruker DPX 300 spectometer を用いてそれぞれ300 MHzおよび75 MHz にて記録した。化学シフトは内部標準のテトラメチルシランを参照したδスケールにおけるppmで読み取った。別段の記載が無い限り、全てのサンプルはDMSO-d6中に溶解した。
【0205】
鍵中間体の合成
a. 3-(4-オキソ-3,4-ジヒドロフタラジン-1-イルメチル)安息香酸(A)
【0206】
【化28】

メタノール中27%ナトリウムメトキシド溶液(400g,2mol)およびメタノール(150ml)の混合物を、周囲温度から30℃の間で15分間かけて滴下により、フタリド(67g, 0.5mol)、3-ホルミルベンゾニトリル(65.5g, 0.5mol)およびエチルプロピオネート(250ml)の混合物を攪拌したものに添加し、混合物を周囲温度で40分間、環流温度で1時間攪拌し、次いで静置して周囲温度に冷却した。得られた赤色固体をろ過により集め、酢酸エチル(2×50ml)で洗浄し、水(1800ml)に溶解させた。該溶液に酢酸(60ml)を添加して酸性化し、得られた赤色固体をろ過により集め、水(2×200ml)で洗浄し、減圧乾燥して暗赤色固体として3-(1,3-ジオキソインダン-2-イル)ベンゾニトリル(83.2g)を得た。融点179-182℃, m/z (M+H)+ 248。これを更なる精製を行わずに以下に使用した。
【0207】
3-(1,3-ジオキソインダン-2-イル)ベンゾニトリル(74.18g, 0.3mol)を水酸化ナトリウム(36g, 0.9mol)の水(580ml)中の溶液に少量ずつ添加し、得られた暗赤色の懸濁液を環流温度で5時間攪拌し、次いで周囲温度まで冷却し、酢酸エチル(3×300ml)で洗浄した。該溶液を、濃塩酸(110ml)を滴下により添加することで酸性化し、混合物を周囲温度で1時間攪拌し、得られた固体をろ過により集め、水(2×200ml)で洗浄し、減圧乾燥して3-(1,3-ジオキソインダン-2-イル)安息香酸, (M+H)+ 267, および2-[2-(3-カルボフェニル)アセチル]安息香酸, (M+H)+ 285,の1:1混合物(69.32g)を得た。これを更なる精製を行わずに以下に使用した。
【0208】
前のステップで得られた混合物(52.8g)をトリエチルアミン(37.55g、0.372mol)の工業用変性アルコール(500ml)溶液に添加し、得られた不透明溶液をろ過助剤のパッドを通してろ過して、透明溶液を得た。ヒドラジン一水和物(9.3g、0.186mol)を周囲温度で一括添加し、その撹拌混合物を還流させながら1時間加熱し、次いで減圧濃縮して約250mlとし、酢酸ナトリウム(41g、0.5mol)の水(500ml)溶液に添加した。この混合物に濃塩酸を滴下してpH7とし、次いで周囲温度で3時間撹拌した。得られた固体をろ過によって収集し、水(50ml)で洗浄し、減圧乾燥して白色固体(15.62g)を得た。この混合ろ液および洗液に塩酸を添加してpH6に酸性化し、次いでその混合物を周囲温度で3時間撹拌した。得られた固体をろ過によって収集し、水(50ml)で洗浄し、減圧乾燥してオフホワイト固体(17.57g)の第2の生成物(crop)を得た。第2の生成物から得られる混合ろ液および洗液をpH6に再調節し、前と同じように処理して淡橙色固体(6.66g)の第3の生成物を得た。これら3種類の生成物を混合して本質的に純粋な3-(4-オキソ-3,4-ジヒドロフタラジン-1-イルメチル)安息香酸(A)を得た。(M+H)+ 281、δH 4.4 (2H, s)、7.2-7.4 (1H, m)、7.5-7.6 (1H, m)、7.7-8.0 (5H, m)、8.1-8.2 (1H, m)、12.6 (1H, s)
b. 2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)安息香酸(B)
【0209】
【化29】

亜リン酸ジメチル(22.0g、0.2mol)をナトリウムメトキシド(43.0g)のメタノール(100ml)溶液に0℃で滴下した。次いで、温度を5℃未満に維持しながら、2-カルボキシベンズアルデヒド(21.0g、0.1mol)をメタノール(40ml)スラリーとしてその反応混合物に分割添加した。得られた淡黄色溶液を20℃に1時間加温した。メタンスルホン酸(21.2g、0.22mol)をその反応物に滴下し、得られた白色懸濁液を減圧蒸発させた。その白色残渣を水でクエンチし、クロロホルム(3×100ml)で抽出した。この混合有機抽出物を水(2×100ml)で洗浄し、MgSO4を用いて脱水し、減圧蒸発させて白色固体の(3-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソベンゾフラン-1-イル)ホスホン酸ジメチルエステル(32.0g、95%、95%純度)を得た。次いで、これをさらに精製せずに次の段階に使用した。
【0210】
(3-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソベンゾフラン-1-イル)ホスホン酸ジメチルエステル(35.0g、0.14mol)のテトラヒドロフラン(200ml)溶液と2-フルオロ-5-ホルミルベンゾニトリル(20.9g、0.14mol)のテトラヒドロフラン(130ml)溶液の混合物に、温度を15℃未満に維持しながらトリエチルアミン(14ml、0.14mol)を25分間滴下した。その反応混合物を1時間かけて徐々に20℃に加温し減圧濃縮した。その白色残渣を水(250ml)に30分間スラリー化し、ろ過し、水、へキサンおよびエーテルで洗浄し、乾燥して、E異性体とZ異性体の50:50混合物の2-フルオロ-5-(3-オキソ-3H-イソベンゾフラン-1-イリデンメチル)ベンゾニトリル(37.2g、96%)を得た。
m/z [M+1]+ 266(98%純度)
2-フルオロ-5-(3-オキソ-3H-イソベンゾフラン-1-イリデンメチル)ベンゾニトリルの水(200ml)懸濁液に、水酸化ナトリウム水溶液(26.1gの50ml水溶液)を添加し、その反応混合物を窒素下で90℃に30分間加熱した。その反応混合物を少し冷却して70℃とし、ヒドラジン水和物(100ml)を添加し、70℃で18時間撹拌した。その反応物を室温に冷却し、2M HClを用いてpH4に酸性化した。その混合物を10分間撹拌し、ろ過した。得られた固体を水、へキサン、エーテル、酢酸エチルで洗浄し、乾燥させて淡桃色粉末の2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロフタラジン-1-イルメチル)安息香酸(30.0g、77%)を得た。 m/z [M+1]+ 299 (96%純度)、δH 4.4 (2H, s)、7.2-7.3 (1H, m)、7.5-7.6 (1H, m)、7.8-8.0 (4H, m)、8.2-8.3 (1H, m)、12.6 (1H, s)。
【0211】
c. 1-[3-(4-オキソ-3,4-ジヒドロフタラジン-1-イルメチル)ベンゾイル]ピペリジン-4-カルボン酸(C)
【0212】
【化30】

3-(4-オキソ-3,4-ジヒドロフタラジン-1-イルメチル)安息香酸(A)(7.0g、0.25mol)、エチルイソニペコタート(5ml、0.32mol)、2-(1H-ベンゾトリアゾル-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)(12.3g、0.32mol)およびN,N,-ジイソプロピルエチルアミン(10.0ml、0.55mol)をジメチルアセトアミド(40ml)に添加し、18時間撹拌した。この反応混合物に水(100ml)を添加し、生成物をジクロロメタン(4×50ml)で抽出した。混合有機層を水(3×100ml)で洗浄し、MgSO4を用いて脱水し、ろ過し、減圧蒸発させてオイルを得た。このオイルのテトラヒドロフラン(100ml)溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液(20ml)を添加し、その反応物を18時間撹拌した。反応物を濃縮し、酢酸エチル(2×30ml)で洗浄し、2M HClを用いてpH2に酸性化した。水層をジクロロメタン(2×100ml)で抽出し、次いで抽出物をMgSO4を用いて脱水し、ろ過し、蒸発させて、黄色固体の1-[3-(4-オキソ-3,4-ジヒドロフタラジン-1-イルメチル)ベンゾイル]ピペリジン-4-カルボン酸(C)(7.0g、65%)を得た。m/z [M+1]+ 392(96%純度)、δH 1.3-1.8(5H, m)、2.8-3.1(4H, m)、4.4(2H, s)、7.2-7.3(1H, m)、7.3-7.4(1H, m)、7.7-8.0(5H, m)、8.2-8.3(1H, m)、12.6(1H, s)。
【0213】
d. 1-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロフタラジン-1-イルメチル)ベンゾイル]ピペリジン-4-カルボン酸(D)
【0214】
【化31】

2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロフタラジン-1-イルメチル)安息香酸(B)(3.1g、0.14mol)、エチルイソニペコタート(1.7ml、0.11mol)、2-(1H-ベンゾトリアゾル-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)(5.1g、0.13mol)およびN,N,-ジイソプロピルエチルアミン(10.0ml、0.55mol)をジメチルアセトアミド(15ml)に添加し、18時間撹拌した。この反応混合物に水(100ml)を添加し、生成物をジクロロメタン(4×50ml)で抽出した。混合有機層をろ過し、水(3×100ml)で洗浄し、MgSO4を用いて脱水し、ろ過し、減圧蒸発させて橙色オイルを得た。このオイルをフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル)によって精製して、1-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロフタラジン-1-イルメチル)ベンゾイル]ピペリジン-4-カルボン酸のメチルエステル(1.5g、33%、96%純度)を得た。このメチルエステルのテトラヒドロフラン:水(2:1、40ml)溶液に水酸化ナトリウム(0.3g、0.075mol)を添加し、その反応物を18時間撹拌した。反応物を濃縮し、酢酸エチル(2×20ml)で洗浄し、2M HClを用いてpH2に酸性化した。水層をジクロロメタン(2×20ml)で抽出し、混合抽出物をMgSO4を用いて脱水し、蒸発させて、黄色固体(0.6g、65%)、m/z [M+1]+ 392(96%純度)の1-[3-(4-オキソ-3,4-ジヒドロフタラジン-1-イルメチル)ベンゾイル]ピペリジン-4-カルボン酸(D)を得た。
【実施例1】
【0215】
鍵化合物の合成
a. 4-[3-(ピペラジン-1-カルボニル)ベンジル]-2H-フタラジン-1-オン(1)の合成
【0216】
【化32】

3-(4-オキソ-3,4-ジヒドロフタラジン-1-イルメチル)安息香酸(A)(5.0g、0.17mol)、tert-ブチル 1-ピペラジンカルボキシレート(3.9g、0.21mol)、2-(1H-ベンゾトリアゾル-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)(8.6g、0.22mol)およびN,N,-ジイソプロピルエチルアミン(6.7ml、0.38mol)をジメチルアセトアミド(40ml)に添加し、18時間撹拌した。水(100ml)を添加し、反応混合物を100℃に1時間加熱した。その懸濁液を室温に冷却し、ろ過し、乾燥させて白色固体を得た。この固体を6M HClとエタノール(2:1、50ml)の溶液に溶解し、1時間撹拌した。この反応物を濃縮し、アンモニアを用いてpH9に塩基性化し、その生成物をジクロロメタン(2×50ml)で抽出した。混合有機層を水(2×50ml)で洗浄し、MgSO4を用いて脱水し、減圧蒸発させて、黄色結晶性固体の4-[3-(ピペラジン-1-カルボニル)ベンジル]-2H-フタラジン-1-オン(1)(4.0g、77%)を得た。m/z [M+1]+ 349(97%純度)、δH 2.6-3.8 (8H, m)、4.4 (2H, s)、7.2-7.5 (4H, m)、7.7-8.0 (3H, m)、8.2-8.3 (1H, m)、12.6 (1H, s)。
【0217】
b. 4-[4-フルオロ-3-(ピペラジン-1-カルボニル)ベンジル]-2H-フタラジン-1-オン(2)の合成
【0218】
【化33】

上記(a)に記載の方法に従い、2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロフタラジン-1-イルメチル)安息香酸(B)を用いて合成を行い、白色結晶性固体の4-[4-フルオロ-3-(ピペラジン-1-カルボニル)ベンジル]-2H-フタラジン-1-オン(2)(4.8g、76%)を得た。m/z [M+1]+ 367(97%純度)、δH 2.6-3.8 (8H, m)、4.4 (2H, s)、7.2-7.5 (3H, m)、7.7-8.0 (3H, m)、8.2-8.3 (1H, m)、12.6 (1H, s)。
【0219】
c. 4-[3-([1,4]ジアゼパン-1-カルボニル)ベンジル]-2H-フタラジン-1-オン(3)の合成
【0220】
【化34】

上記(a)に記載の方法に従い、3-(4-オキソ-3,4-ジヒドロフタラジン-1-イルメチル)安息香酸(A)およびtert-ブチル 1-ホモピペラジンカルボキシレートを用いて合成を行い、灰色結晶性固体の4-[3-([1,4]ジアゼパン-1-カルボニル)ベンジル]-2H-フタラジン-1-オン(3)(5.3g、97%)を得た。m/z [M+1]+ 363(97%純度);δH 2.6-3.8 (10H, m)、4.4 (2H, s)、7.2-7.5 (4H, m)、7.7-8.0 (3H, m)、8.2-8.3 (1H, m)、12.6 (1H, s)。
【0221】
d. 4-[3-([1,4]ジアゼパン-1-カルボニル)-4-フルオロベンジル]-2H-フタラジン-1-オン(4)の合成
【0222】
【化35】

上記(a)に記載の方法に従い、2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロフタラジン-1-イルメチル)安息香酸(B)およびtert-ブチル 1-ホモピペラジンカルボキシレートを用いて合成を行い、黄色結晶性固体の4-[3-([1,4]ジアゼパン-1-カルボニル)ベンジル]-2H-フタラジン-1-オン(4)(5.3g、68%)を得た。m/z [M+1]+ 381 (97%純度);δH 2.6-3.8 (10H, m)、4.4 (2H, s)、7.2-7.5 (3H, m)、7.7-8.0 (3H, m)、8.2-8.3 (1H, m)、12.6 (1H, s)。
【実施例2】
【0223】
a. 4-{3-[4-(6-クロロベンゾチアゾル-2-イル)-1,4-ジアゼパン-1-イルカルボニル]ベンジル}-1(2H)-フタラジノン
【0224】
【化36】

2-(1H-ベンゾトリアゾル-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(150mg、0.47mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(102mg、0.8mmol)および6-クロロ-2-(1,4-ジアゼパン-1-イル)-1,3-ベンゾチアゾール(115mg、0.43mmol)を3-(4-オキソ-3,4-ジヒドロフタラジン-1-イルメチル)安息香酸(A)(100mg、0.36mmol)の無水ジメチルアセトアミド(1ml)撹拌溶液に周囲温度で連続添加し、その混合物を周囲温度で1時間撹拌し、周囲温度で16時間静置し、次いで撹拌冷水(10ml)に滴下した。30分後、得られた固体をろ過によって収集し、水(2×1ml)およびへキサン(1ml)で洗浄し、減圧乾燥し、分取用HPLCを用いて精製して、灰色固体の所望の化合物(5)(166mg)を得た。HPLC純度90%;HPLC保持時間4.21分;m/z (M+H)+ 530。
【0225】
b. 上記(a)に記載の方法と類似の方法で、ただし適切な代替アミン出発材料を用いて以下の化合物を合成した。
【0226】
【表1】



【実施例3】
【0227】
a. 4-{3-[4-(4-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イルカルボニル]ベンジル}-1(2H)-フタラジノン(22)
【0228】
【化37】

2-(1H-ベンゾトリアゾル-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(150mg、0.47mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(102mg、0.8mmol)および1-(4-フルオロフェニル)ピペラジン(65mg、0.47mmol)を3-(4-オキソ-3,4-ジヒドロフタラジン-1-イルメチル)安息香酸(A)(100mg、0.36mmol)の無水ジメチルアセトアミド(1ml)撹拌溶液に周囲温度で連続添加した。その混合物を周囲温度で4時間撹拌し、周囲温度で16時間静置し、次いで撹拌冷水(10ml)に滴下した。30分後、得られた固体をろ過によって収集し、水(2×1ml)およびへキサン(1ml)で洗浄し、減圧乾燥し、分取用HPLCを用いて精製して、クリーム色の固体の4-{3-[4-(4-フルオロフェニル)ピペラジン-1-イルカルボニル]ベンジル}-1(2H)-フタラジノン(22)(76mg)を得た。m/z (M+H)+.443;HPLC純度90%;HPLC保持時間4.00分。
【0229】
b. 上記(a)に記載の方法と類似の方法で、ただし適切な代替アミン出発材料を用いて以下の化合物を合成した。
【0230】
【表2】


【実施例4】
【0231】
1-[3-(4-オキソ-3,4-ジヒドロ-フタラジン-1-イルメチル)-ベンゾイル]-ピペリジン-4-カルボン酸(C)(0.24mmol)を、適切なアミン(0.2mmol)のジメチルアセトアミド(2ml)溶液に添加した。次いで、2-(1H-ベンゾトリアゾル-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(0.3mmol)およびヒューニッヒ塩基(0.4mmol)を添加し、その反応物を室温で16時間撹拌した。次いで、その反応混合物を分取用HPLCによって精製した。
【0232】
合成された化合物を以下に示す。
【0233】
【表3】





【実施例5】
【0234】
1-[2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロフタラジン-1-イルメチル)ベンゾイル]-ピペリジン-4-カルボン酸(D)(0.24mmol)を、適切なアミン(0.2mmol)のジメチルアセトアミド(2ml)溶液に添加した。次いで、2-(1H-ベンゾトリアゾル-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(0.3mmol)およびヒューニッヒ塩基(0.4mmol)を添加し、その反応物を室温で16時間撹拌した。次いで、その反応混合物を分取用HPLCによって精製した。
【0235】
合成された化合物を以下に示す。
【0236】
【表4】

【実施例6】
【0237】
適切な塩化スルホニル(0.24mmol)を、4-[3-(ピペラジン-1-カルボニル)ベンジル]-2H-フタラジン-1-オン(1)(0.2mmol)のジクロロメタン(2ml)溶液に添加した。次いで、ヒューニッヒ塩基(0.4mmol)を添加し、その反応物を室温で16時間撹拌した。次いで、その反応混合物を分取用HPLCによって精製した。
【0238】
合成された化合物を以下に示す。
【0239】
【表5】

【実施例7】
【0240】
適切な塩化スルホニル(0.24mmol)を、4-[3-([1,4]ジアゼパン-1-カルボニル)ベンジル]-2H-フタラジン-1-オン(3)(0.2mmol)のジクロロメタン(2ml)溶液に添加した。次いで、ヒューニッヒ塩基(0.4mmol)を添加し、その反応物を室温で16時間撹拌した。次いで、その反応混合物を分取用HPLCによって精製した。
【0241】
合成された化合物を以下に示す。
【0242】
【表6】

【実施例8】
【0243】
適切な酸塩化物(0.24mmol)を、4-[3-(ピペラジン-1-カルボニル)ベンジル]-2H-フタラジン-1-オン(1)(0.2mmol)のジクロロメタン(2ml)溶液に添加した。次いで、ヒューニッヒ塩基(0.4mmol)を添加し、その反応物を室温で16時間撹拌した。次いで、その反応混合物を分取用HPLCによって精製した。
【0244】
合成された化合物を以下に示す。
【0245】
【表7】







【実施例9】
【0246】
適切な酸塩化物(0.24mmol)を、4-[4-フルオロ-3-(ピペラジン-1-カルボニル)ベンジル]-2H-フタラジン-1-オン(2)(0.2mmol)のジクロロメタン(2ml)溶液に添加した。次いで、ヒューニッヒ塩基(0.4mmol)を添加し、その反応物を室温で16時間撹拌した。次いで、その反応混合物を分取用HPLCによって精製した。
【0247】
合成された化合物を以下に示す。
【0248】
【表8】

【実施例10】
【0249】
適切な酸塩化物(0.24mmol)を、4-[3-([1,4]ジアゼパン-1-カルボニル)ベンジル]-2H-フタラジン-1-オン(3)(0.2mmol)のジクロロメタン(2ml)溶液に添加した。次いで、ヒューニッヒ塩基(0.4mmol)を添加し、その反応物を室温で16時間撹拌した。次いで、その反応混合物を分取用HPLCによって精製した。
【0250】
合成された化合物を以下に示す。
【0251】
【表9】

【実施例11】
【0252】
適切な酸塩化物(0.24mmol)を、4-[3-([1,4]ジアゼパン-1-カルボニル)-4-フルオロベンジル]-2H-フタラジン-1-オン(4)(0.2mmol)のジクロロメタン(2ml)溶液に添加した。次いで、ヒューニッヒ塩基(0.4mmol)を添加し、その反応物を室温で16時間撹拌した。次いで、その反応混合物を分取用HPLCによって精製した。
【0253】
合成された化合物を以下に示す。
【0254】
【表10】

【実施例12】
【0255】
適切なイソシアナート(0.24mmol)を、4-[3-(ピペラジン-1-カルボニル)ベンジル]-2H-フタラジン-1-オン(1)(0.2mmol)のジクロロメタン(2ml)溶液に添加した。この反応物を室温で16時間撹拌した。次いで、その反応混合物を分取用HPLCによって精製した。
【0256】
合成された化合物を以下に示す。
【0257】
【表11】



【実施例13】
【0258】
適切なイソチオシアナート(0.24mmol)を、4-[3-(ピペラジン-1-カルボニル)ベンジル]-2H-フタラジン-1-オン(1)(0.2mmol)のジクロロメタン(2ml)溶液に添加した。この反応物を室温で16時間撹拌した。次いで、その反応混合物を分取用HPLCによって精製した。
【0259】
合成された化合物を以下に示す。
【0260】
【表12】


【実施例14】
【0261】
3-(4-オキソ-3,4-ジヒドロフタラジン-1-イルメチル)安息香酸(A)(0.24mmol)を、適切なアミン(0.2mmol)のジメチルアセトアミド(2ml)溶液に添加した。次いで、2-(1H-ベンゾトリアゾル-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(0.3mmol)およびヒューニッヒ塩基(0.4mmol)を添加し、その反応物を室温で16時間撹拌した。次いで、その反応混合物を分取用HPLCによって精製した。
【0262】
合成された化合物を以下に示す。
【0263】
【表13】


【実施例15】
【0264】
2-フルオロ-5-(4-オキソ-3,4-ジヒドロフタラジン-1-イルメチル)安息香酸(B)(0.24mmol)を、適切なアミン(0.2mmol)のジメチルアセトアミド(2ml)溶液に添加した。次いで、2-(1H-ベンゾトリアゾル-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(0.3mmol)およびヒューニッヒ塩基(0.4mmol)を添加し、その反応物を室温で16時間撹拌した。次いで、その反応混合物を分取用HPLCによって精製した。
【0265】
合成された化合物を以下に示す。
【0266】
【表14】


【実施例16】
【0267】
適切なアルデヒド(0.2mmol)および4-[3-(ピペラジン-1-カルボニル)ベンジル]-2H-フタラジン-1-オン(1)(0.24mmol)をジクロロメタン(2ml)に溶解した。次いで、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(0.28mmol)および氷酢酸(6.0mmol)を添加し、室温で16時間撹拌した。次いで、その反応混合物を分取用HPLCによって精製した。
【0268】
合成された化合物を以下に示す。
【0269】
【表15】

【実施例17】
【0270】
適切なアルデヒド(0.2mmol)および4-[4-フルオロ-3-(ピペラジン-1-カルボニル)ベンジル]-2H-フタラジン-1-オン(2)(0.24mmol)をジクロロメタン(2ml)に溶解した。次いで、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(0.28mmol)および氷酢酸(6.0mmol)を添加し、室温で16時間撹拌した。次いで、その反応混合物を分取用HPLCによって精製した。
【0271】
合成された化合物を以下に示す。
【0272】
【表16】

【実施例18】
【0273】
適切なアルデヒド(0.2mmol)および4-[3-([1,4]ジアゼパン-1-カルボニル)ベンジル]-2H-フタラジン-1-オン(3)(0.24mmol)をジクロロメタン(2ml)に溶解した。次いで、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(0.28mmol)および氷酢酸(6.0mmol)を添加し、室温で16時間撹拌した。次いで、その反応混合物を分取用HPLCによって精製した。
【0274】
合成された化合物を以下に示す。
【0275】
【表17】

【実施例19】
【0276】
適切なアルデヒド(0.2mmol)および4-[3-([1,4]ジアゼパン-1-カルボニル)-4-フルオロベンジル]-2H-フタラジン-1-オン(4)(0.24mmol)をジクロロメタン(2ml)に溶解した。次いで、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(0.28mmol)および氷酢酸(6.0mmol)を添加し、室温で16時間撹拌した。次いで、その反応混合物を分取用HPLCによって精製した。
【0277】
合成された化合物を以下に示す。
【0278】
【表18】

【実施例20】
【0279】
化合物の抑制作用を評価するために、以下のアッセイによってIC50値を求めた。
【0280】
HeLa細胞核抽出物から単離された哺乳動物のPARPを、96ウェルFlashPlates(商標)(NEN、UK)中でZ-緩衝剤(25mM Hepes(Sigma);12.5mM MgCl2(Sigma);50mM KCl(Sigma);1 mM DTT(Sigma);10%グリセリン(Sigma) 0.001%NP-40(Sigma);pH7.4)とともにインキュベートし、様々な濃度の前記阻害剤を添加した。すべての化合物をDMSOに希釈して、最終アッセイ濃度を10〜0.01μMとした。DMSOの最終濃度は1%/ウェルであった。ウェル当たりの全アッセイ体積は40μlであった。
【0281】
30℃で10分間インキュベーションした後に、NAD(5μM)、3H-NADおよび30量体二重鎖DNAオリゴを含有する反応混合物10μlを添加して反応を開始した。%酵素活性を計算するために、指定の正および負反応ウェルを化合物ウェル(未知試料(unknown))と組み合わせた。次いで、プレートを2分間振とうし、30℃で45分間インキュベートした。
【0282】
インキュベーション後、30%酢酸50μlを各ウェルに添加することによって反応をクエンチした。次いで、プレートを室温で1時間振とうした。
【0283】
プレートをTopCount NXT(商標)(Packard、UK)に移し、シンチレーションをカウントした。記録された値は、各ウェルを30秒カウントした後のカウント/分(cpm)である。
【0284】
次いで、各化合物の%酵素活性を以下の式によって計算する。
【0285】
%阻害=100−[100×(未知試料のcpm−平均負cpm)/(平均正cpm−平均負cpm)]
IC50値(酵素活性の50%が阻害される濃度)を計算した。IC50値は異なる濃度の範囲、通常は10μM〜0.001μMにわたって求められる。かかるIC50値を、化合物の効力が増加したことを確認するための比較値として用いる。
【0286】
試験したすべての化合物は、IC50が0.1μM未満であった。
【0287】
以下の化合物のIC50は0.01μM未満である:2、3、4、5 9、10、13、14、15、16、17、18、19、20、21、25、27、28、29、31、33、34、35、37、40、41、44、46、47、48、49、51、53、73、74、75、76、77、78、79、80、83、84、85、97、98、99、101、103、105、106、107、111、112、113、114、117、118、119、120、121、122、130、131、132、133、138、139、140、143、149、153、155、156、157、159、160、161、175、176、177、178、179、181、182、186、188、190、191、195、197、198、200、201、202、203、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、216、217、218、219、221、222、223、225、226、227、228、229、232、237、240、243、245、246、256。
【0288】
以下の化合物および上記化合物のIC50は0.02μM未満である:1、6、7、8、11、12、22、23、24、26、32、36、38、39、42、43、45、50、54、55、56、58、59、81、82、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、100、104、108、109、110、115、116、123、126、127、128、134、135、137、141、145、146、147、150、151、152、154、158、162、163、174、180、185、187、189、192、193、194、196、199、204、215、220、224、230、233、234、235、239、241、242、244、250、251、258、259および261。
【0289】
化合物の増強ファクター(Potentiation Factor)(PF50)は、対照細胞増殖のIC50を細胞増殖+PARP阻害剤のIC50で割った比として計算される。対照と化合物で処理された細胞の両方の増殖阻害曲線は、アルキル化剤メタンスルホン酸メチル(MMS)の存在下である。試験化合物は0.2マイクロモルの固定濃度で使用された。MMSの濃度は0〜10μg/mlであった。
【0290】
細胞増殖をスルホローダミンB(SRB)アッセイによって評価した(Skehan, P., et al., (1990) New colorimetric cytotoxicity assay for anticancer-drug screening. J. Natl. Cancer Inst. 82, 1107-1112)。2,000個のHeLa細胞を平底96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルに体積100μlで蒔き、37℃で6時間インキュベートした。細胞を培地のみで置換し、または最終濃度0.5、1もしくは5μMのPARP阻害剤を含有する培地で置換した。細胞をさらに1時間増殖させ、その後一連の濃度(一般に0、1、2、3、5、7および10μg/ml)のMMSを未処理細胞またはPARP阻害剤処理細胞に添加した。PARP阻害剤のみで処理された細胞を使用して、PARP阻害剤による増殖阻害を評価した。
【0291】
細胞をさらに16時間放置し、その後培地を交換し、細胞を37℃でさらに72時間増殖させた。次いで、培地を取り出し、細胞を氷冷10%(w/v)トリクロロ酢酸100μlで固定した。プレートを4℃で20分間インキュベートし、次いで水で4回洗浄した。次いで、各ウェルの細胞を0.4%(w/v)SRBの1%酢酸溶液100μlで20分間染色した後、1%酢酸で4回洗浄した。次いで、プレートを室温で2時間乾燥させた。10mM Tris Base 100μlを各ウェルに添加して、染色細胞からの色素を溶解した。プレートを軽く振とうし、室温で30分間放置した後に、Microquantマイクロタイタープレートリーダーを用いて564nMにおける光学濃度を測定した。
【0292】
試験したすべての化合物は、200nMにおけるPF50が少なくとも2.0であった。
【実施例21】
【0293】
材料及び方法
PARPの小分子阻害剤:
化合物(4)をDMSOに10mMで溶解し、暗所に-20℃で保存した。
細胞系
VC8細胞およびマウスBrca2 BACが補充された誘導体は、M. Kraakman-van der Zwet, et al., Mol Cell Biol 22, 669-79 (2002))に記載されている。Brca2機能を欠いたES細胞は以前に記述されている(Tutt, et al., EMBO Rep 3, 255-60 (2002))。Brca1機能を欠いたES細胞の構築は他の場所に記載するつもりであるが、以前に確認されている(Foray, et al., Embo J, 22, 2860-71 (2003))。
クローン原性アッセイ
PARP阻害剤(化合物4)に対する細胞の感受性を測定するために、指数増殖にある細胞培養物をトリプシン処理し、6ウェルプレート中のマイトマイシンC不活化マウス胚性繊維芽細胞上に様々な密度で蒔き、18時間後に試験化合物で適宜処理した。連続暴露の場合には、4日ごとに新しい培地および阻害剤を細胞に補充した。10〜14日後に細胞をPBSで洗浄し、メタノール中に固定し、クリスタルバイオレットで染色した。約50個を超える細胞を含むコロニーをカウントした。実験を3つ組で少なくとも3回実施した。
結果
BRCA1およびBRCA2を欠く細胞の生存度の低下
化合物4を使用して、Brca1またはBrca2を欠く細胞のPARP活性阻害に対する感受性を調べた。クローン原性アッセイによれば、Brca1とBrca2の両方を欠く細胞系は、化合物4に対する感受性が、その他の点では同質遺伝子的な細胞よりも極めて高かった(図1A、1B)。Brca1を欠く細胞では化合物4のSF50(細胞の50%が生存する投与量)は1.5×10-8Mであったのに対して、対応する野生型細胞のSF50は7×10-6Mであった(図1A)。これは、Brca1突然変異細胞の感受性が野生型細胞よりも467倍増加したことを示している。
【0294】
Brca2を欠く細胞では化合物4のSF50は1.2×10-8Mであったのに対して、対応する野生型細胞のSF50は1.8×10-5Mであった(図1B)。これは、Brca2突然変異細胞の感受性が野生型細胞よりも1,500倍増加したことを示している。Brca2を欠くチャイニーズハムスター卵巣細胞(VC8)でも、Brca2を補充した誘導体(VC8-BAC)と比較して類似の結果が得られた(図2)。Brca2を欠くVC8系では化合物4のSF50は5×10-8Mであったのに対して、対応する対照VC8-BACのSF50は3×10-5Mであった(図2)。これは、Brca2突然変異細胞の感受性が野生型細胞よりも600倍増加したことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0295】
【図1】本発明の化合物(4)に暴露された細胞のクローン原性生存曲線(clonogenic survival curve)を示すグラフである。図1Aは、化合物4に連続暴露されたBrca1野生型(11CO: 四角印)、異型接合(Cre6: 三角印)および欠損(Cre10: 丸印)ES細胞である。エラーバーは平均値の標準誤差である。図1Bは、化合物4に連続暴露されたBrca2野生型(D3: 四角印)、異型接合(Cre6: 三角印)および欠損(Cre24: 丸印)ES細胞である。エラーバーは平均値の標準誤差である。
【図2】BRCA2機能を欠く別の細胞系における本発明の化合物(4)の効果をBRCA2が補充された系と比較して分析したグラフである。示したデータは、様々な濃度の化合物4に連続暴露されたBrca2欠損(V-C8: 四角印)および補充(V-C8 BAC+:三角印)細胞のクローン原性生存(clonogenic survival)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物、ならびにその異性体、塩および溶媒和化合物:
【化1】

(式中、
AとBは一緒になって、場合によっては置換されていてもよい縮合芳香環を表し、
Xは、NRXまたはCRXRYとすることができ、
X=NRXである場合にはnは1または2であり、X=CRXRYである場合にはnは1であり、
RXは、H、場合によっては置換されていてもよいC1-20アルキル、C5-20アリール、C3-20ヘテロシクリル、アミド、チオアミド、エステル、アシルおよびスルホニル基からなる群から選択され、
RYは、H、ヒドロキシ、アミノから選択され、
あるいはRXとRYは一緒になって、スピロ-C3-7シクロアルキルまたはヘテロシクリル基を形成することができ、
RC1およびRC2はともに水素であり、またはXがCRXRYであるときには、RC1、RC2、RXおよびRYは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、場合によっては置換されていてもよい縮合芳香環を形成することができ、
R1は、Hおよびハロから選択される)。
【請求項2】
-A-B-で表される前記縮合芳香環が炭素環原子のみからなる、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
-A-B-で表される前記縮合芳香環がベンゼンである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
R1が、H、ClおよびFから選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
RC1およびRC2がともに水素である、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
nが2であり、XがNRXであり、RXが、H;場合によっては置換されていてもよいC1-20アルキル;場合によっては置換されていてもよいC5-20アリール;場合によっては置換されていてもよいエステル基;場合によっては置換されていてもよいアシル基;場合によっては置換されていてもよいアミド基;場合によっては置換されていてもよいチオアミド基;および場合によっては置換されていてもよいスルホニル基からなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
nが1であり、XがNRXであり、RXが、H;場合によっては置換されていてもよいC1-20アルキル;場合によっては置換されていてもよいC5-20アリール;場合によっては置換されていてもよいアシル;場合によっては置換されていてもよいスルホニル;場合によっては置換されていてもよいアミド;および場合によっては置換されていてもよいチオアミド基からなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
nが1であり、XがCRXRYであり、RYがHであり、RXが、H;場合によっては置換されていてもよいC1-20アルキル;場合によっては置換されていてもよいC5-20アリール;場合によっては置換されていてもよいC3-20ヘテロシクリル;場合によっては置換されていてもよいアシル;場合によっては置換されていてもよいアミド;および場合によっては置換されていてもよいエステル基からなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物および薬剤として許容される担体または希釈剤を含む薬剤組成物。
【請求項10】
ヒトまたは動物の体の治療方法に使用される、請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
PARPの活性を阻害する医薬品の調製における、請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項12】
血管疾患;敗血症ショック;虚血性傷害;神経毒性;出血性ショック;ウイルス感染;またはPARPの活性を阻害することによって寛解される疾患を治療するための医薬品の調製における、請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項13】
癌治療において補助剤として使用するための、あるいは電離放射線または化学療法剤による治療のための腫瘍細胞の増強のための、医薬品の製造における、請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項14】
個体における癌の治療に使用される医薬品の製造における、請求項1から8に記載の化合物の使用であって、前記癌は、HRによるDNA DSB修復経路が欠損している使用。
【請求項15】
前記癌が、HRによるDNA DSB修復能力が正常細胞よりも低下または阻害された1個または複数の癌細胞を含む、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記癌細胞がBRCA1またはBRCA2を欠いた表現型を有する、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記癌細胞がBRCA1またはBRCA2を欠いている、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記個体が、HRによるDNA DSB修復経路の成分をコードする遺伝子における突然変異に関して異型接合性である、請求項14から17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
前記個体が、BRCA1および/またはBRCA2における突然変異に関して異型接合性である、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記癌が乳癌、卵巣癌、膵臓癌または前立腺癌である、請求項14から19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
前記治療が、電離放射線または化学療法剤の投与をさらに含む、請求項14から20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
式1で表される化合物:
【化2】

(式中、
AとBは一緒になって、場合によっては置換されていてもよい縮合芳香環を表し、
R1は、Hおよびハロから選択される)。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−79056(P2009−79056A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260806(P2008−260806)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【分割の表示】特願2007−226723(P2007−226723)の分割
【原出願日】平成16年3月12日(2004.3.12)
【出願人】(503160629)クドス ファーマシューティカルズ リミテッド (23)
【出願人】(503406022)メイブリッジ リミテッド (5)
【Fターム(参考)】