説明

フタル酸ジエステルを含有する塩化ビニル系樹脂用可塑剤

【課題】
耐寒性及び耐熱性が優れ、かつ柔軟性が良好な塩化ビニル系樹脂用可塑剤を提供することを目的とする。
【解決手段】
(1)1−オクテン、一酸化炭素と水素とのヒドロホルミル化反応による炭素数9のアルデヒドを製造する工程及び(2)炭素数9のアルデヒドを水素添加してアルコールに還元する工程を具備する製造工程により製造された脂肪族飽和アルコールとフタル酸若しくはその無水物とをエステル化反応して得られるフタル酸ジエステルを塩化ビニル系樹脂用可塑剤として使用すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フタル酸ジエステルを含有する塩化ビニル系樹脂用可塑剤に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂は、柔軟性をはじめとする種々の性能を付与するとともに、押出やカレンダー加工等の成形加工時の加工温度を低下させ、加工を容易にする目的で可塑剤が添加されて塩化ビニル系樹脂組成物として用いられるのが通常である。
【0003】
このような塩化ビニル系樹脂組成物に用いられる可塑剤に求められる性能としては、該組成物を原料として成型加工品とした場合の、柔軟性、耐寒性、耐熱性、電気特性等種々ある。このような塩化ビニル系樹脂組成物に用いられる代表的な可塑剤としては、フタル酸エステルやアジピン酸エステル等の二塩基酸の高級アルキルエステルがあり、中でもフタル酸ジ−2−エチルヘキシル(以下、「DOP」という。)やフタル酸ジイソノニル(以下、「DINP」という。)は、柔軟性など諸物性のバランスが良いことから、広く使用されているが、耐寒性及び耐熱性への要求が更に高い場合には対応は困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記の問題点を解決できる、耐寒性及び耐熱性が優れ、かつ柔軟性が良好な塩化ビニル系樹脂用可塑剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、かかる現状に鑑み、上記課題を解決すべく鋭意検討を行なった結果、特定の脂肪族飽和アルコールとフタル酸若しくはその無水物をエステル化反応して得られるフタル酸ジエステルが、耐寒性及び耐熱性が優れ、かつ柔軟性が良好な塩化ビニル系樹脂用可塑剤であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、以下の塩化ビニル系樹脂用可塑剤を提供するものである。
【0007】
[項1]
フタル酸若しくはその無水物と、炭素数9の脂肪族飽和アルコールとをエステル化反応して得られるフタル酸ジエステルであって、
前記脂肪族飽和アルコールが、(1)1−オクテン、一酸化炭素と水素とのヒドロホルミル化反応による炭素数9のアルデヒドを製造する工程及び(2)炭素数9のアルデヒドを水素添加してアルコールに還元する工程を具備する製造工程により製造された脂肪族飽和アルコールであることを特徴とするフタル酸ジエステルを含有する塩化ビニル系樹脂用可塑剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明の塩化ビニル系樹脂用可塑剤は、耐寒性及び耐熱性が優れ、かつ柔軟性が良好な塩化ビニル系樹脂用可塑剤として使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<塩化ビニル系樹脂用可塑剤>
本発明に係るフタル酸若しくはその無水物と、特定の炭素数9の脂肪族飽和アルコールとをエステル化反応して得られるフタル酸ジエステル(以下、「本エステル」という。)は、所定の酸成分とアルコール成分とを常法に従って、好ましくは窒素等の不活性化ガス雰囲気下において、無触媒又は触媒の存在下でエステル化することにより得られるものである。
【0010】
[炭素数9の脂肪族飽和アルコール]
本発明で用いる炭素数9の脂肪族飽和アルコールは、(1)1−オクテン、一酸化炭素と水素とのヒドロホルミル化反応による炭素数9のアルデヒドを製造する工程及び(2)炭素数9のアルデヒドを水素添加してアルコールに還元する工程を具備する製造工程により製造される。
【0011】
(1)の工程であるヒドロホルミル化反応は、例えば、コバルト触媒又はロジウム触媒の存在下、1−オクテン、一酸化炭素及び水素を反応することにより炭素数9のアルデヒドを製造することができる。
【0012】
(2)の工程である水素添加は、例えば、ニッケル触媒又はパラジウム触媒等の貴金属触媒の存在下、炭素数9のアルデヒドを水素加圧化で、水素添加することによりアルコールに還元することができる。
【0013】
上記の工程で得られる炭素数9の脂肪族飽和アルコールの具体例としては、リネボール9(商品名、シェルケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0014】
リネボール9は、約70%以上のn−ノナノールと約30%以下の2−メチルオクタノールの混合物である。
【0015】
[エステル化反応]
上記アルコールとフタル酸若しくはその無水物とをエステル化反応を行うに際し、該アルコールは、例えば、フタル酸若しくはその無水物1当量に対して2.00当量〜5.00当量、好ましくは2.01当量〜3.00当量程、特に、2.02当量〜2.50当量を使用することが好ましい。
【0016】
エステル化反応に用いる触媒としては、鉱酸、有機酸、ルイス酸類又はアルカリ金属類等が例示される。より具体的には、鉱酸として、硫酸、塩酸、燐酸が例示され、有機酸としては、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等が例示され、ルイス酸としては、アルミニウム誘導体、スズ誘導体、チタン誘導体、鉛誘導体、亜鉛誘導体が例示され、アルカリ金属類としてはナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が例示され、これらの1種又は2種以上を併用することが可能である。
【0017】
中でも、p−トルエンスルホン酸、炭素数3〜8のテトラアルキルチタネート、酸化チタン、水酸化チタン、炭素数1〜4のナトリウムアルコキシド、水酸化ナトリウム、炭素数3〜12の脂肪酸スズ、酸化スズ、水酸化スズ、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化鉛、水酸化鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムが特に好ましい。その使用量は、例えば、エステル合成原料である酸成分およびアルコール成分の総重量に対して0.01重量%〜5.0重量%、好ましくは0.02重量%〜4.0重量%、特に0.03重量%〜3.0重量%を使用することが好ましい。
【0018】
エステル化温度としては、100℃〜230℃が例示され、通常、3時間〜30時間で反応は完結する。
【0019】
エステル化においては、反応により生成する水の留出を促進するために、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサンなどの水同伴剤を使用することが可能である。
【0020】
又、エステル化反応時に原料、生成エステル及び有機溶媒(水同伴剤)の酸化劣化により酸化物、過酸化物、カルボニル化合物などの含酸素有機化合物を生成すると耐熱性、耐候性等に悪影響を与えるため、系内を窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下又は不活性ガス気流下で、常圧ないし減圧下にて反応を行うことが望ましい。エステル化反応終了後、過剰の原料を減圧下または常圧下にて留去する。
【0021】
上記エステル化方法により得られた本エステルは、引き続き、必要に応じて液液抽出、減圧蒸留、吸着精製等により精製してもよい。
【0022】
吸着精製に用いる吸着剤としては、活性炭、活性白土、活性アルミナ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、シリカアルミナ、ゼオライト、マグネシア、カルシア、珪藻土などが例示される。
【0023】
上記方法で得られたエステルは、可塑剤として塩化ビニル系樹脂に配合して樹脂組成物とすることができる。
【0024】
[塩化ビニル系樹脂]
本発明で用いられる塩化ビニル系樹脂とは、塩化ビニルあるいは塩化ビニリデンの単独重合体及び塩化ビニルあるいは塩化ビニリデンの共重合体であり、その製造方法は、従来公知の重合方法で行われ、汎用塩化ビニル樹脂の場合、油溶性重合触媒の存在下に懸濁重合する方法が挙げられ、また、塩化ビニルペースト樹脂では水性媒体中で水溶性重合触媒の存在下に乳化重合する方法が挙げられる。これらの塩化ビニル系樹脂の重合度は、通常700から5000であり、好ましくは800〜3500、さらに好ましくは900〜3000である。この重合度が低すぎると耐熱性等が低下し、高すぎると成形加工性が低下する傾向がある。
【0025】
共重合体の場合、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン等の炭素数2〜30のα−オレフィン類、アクリル酸およびそのエステル類、メタクリル酸およびそのエステル類、マレイン酸およびそのエステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アルキルビニルエーテル等のビニル化合物、ジアリルフタレート等の多官能性モノマー及びこれらの混合物と塩化ビニルモノマーとの共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のエチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩素化ポリエチレン、ブチルゴム、架橋アクリルゴム、ポリウレタン、ブタジエン−スチレン−メチルメタクリレート共重合体(MBS)、ブタジエン−アクリロニトリル−(α−メチル)スチレン共重合体(ABS)、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート及びこれらの混合物へ塩化ビニルモノマーをグラフトしたグラフト共重合体等が挙げられる。
【0026】
[塩化ビニル系樹脂組成物]
塩化ビニル系樹脂組成物における本エステルの含有量としては、その用途に応じて適宜選択されるが、通常、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、1〜100重量部であり、好ましくは5〜50重量部である。1重量部未満では所定の可塑化効果が得られにくく、100重量部を越えて配合した場合には、成形品表面へのブリードが激しく、いずれの場合も好ましくない。但し、上記の塩化ビニル系樹脂組成物に対して充填剤などを添加する場合は、充填剤自身が吸油するために上記の範囲を超えて当該可塑剤を配合することができる。例えば、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、充填剤として炭酸カルシウムを100重量部配合した場合には、当該可塑剤を1〜500重量部程度配合することができる。
【0027】
塩化ビニル系樹脂組成物は、本エステルと共に他の公知のエステルを併用することができる。又、必要に応じて着色剤、加工助剤、充填剤、酸化防止剤(老化防止剤)紫外線吸収剤或いは帯電防止剤等の添加剤を配合することができる。
【0028】
本エステルと併用することができる公知のエステルとしては、例えば、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジウンデシル(DUP)等のフタル酸エステル類、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)等のアジピン酸エステル類、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル(TOTM)、トリメリット酸トリイソデシル(TITM)等のトリメリット酸エステル類、リン酸トリ−2−エチルヘキシル(TOP)、リン酸トリクレジル(TCP)等のリン酸エステル類が挙げられる。上記可塑剤の使用量は、可塑剤全体量の5重量%以内が好ましい。
【0029】
着色剤としては、カーボンブラック、硫化鉛、ホワイトカーボン、チタン白、リトポン、べにがら、硫化アンチモン、クロム黄、クロム緑、コバルト青、モリブデン橙などが例示される。又、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する着色剤の配合量は1〜100重量部程度である。
【0030】
加工助剤としては、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、ステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、ブチルステアエレート、ステアリン酸カルシウムなどが例示される。又、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する加工助剤の配合量は0.1〜20重量部程度である。
【0031】
充填剤としては、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、珪藻土、フェライト、などの金属酸化物、ガラス、炭素、金属などの繊維及び粉末、ガラス球、グラファイト、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウムなどが例示される。又、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する充填剤の配合量は1〜100重量部程度である。
【0032】
酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート]メタン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのフェノール系化合物、アルキルジスルフィド、チオジプロピオン酸エステル、ベンゾチアゾールなどの硫黄系化合物、トリスノニルフェニルフォスファイト、ジフェニルイソデシルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイトなどのリン酸系化合物、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアリールジチオリン酸亜鉛などの有機金属系化合物などが例示される。又、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する酸化防止剤の配合量は0.2〜20重量部程度である。
【0033】
紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレートなどのサリシレート系化合物、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、1−ジオクチルアミノメチルベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物の他、シアノアクリレート系化合物などが例示される。又、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する紫外線吸収剤の配合量は0.1〜10重量部程度である。
【0034】
帯電防止剤としては、アルキルスルフォネート型、アルキルエーテルカルボン酸型又はジアルキルスルホサクシネート型のアニオン性帯電防止剤、ポリエチレングリコール誘導体、ソルビタン誘導体、ジエタノールアミン誘導体などのノニオン性帯電防止剤、アルキルアミドアミン型、アルキルジメチルベンジル型などの第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム型の有機酸塩又は塩酸塩などのカチオン性帯電防止剤、アルキルベタイン型、アルキルイミダゾリン型などの両性帯電防止剤などが例示される。又、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する帯電防止剤の配合量は0.1〜10重量部程度である。
【0035】
塩化ビニル系樹脂組成物は、本エステル、塩化ビニル系樹脂及び必要に応じて各種添加剤を例えばモルタルミキサー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、リボンブレンダー等の攪拌機により攪拌配合を行い、塩化ビニル系樹脂組成物の混合粉とすることができる。
【0036】
一方、本エステル、塩化ビニル系樹脂及び必要に応じて各種添加剤を、例えばコニカル二軸押出機、パラレル二軸押出機、単軸押出機、コニーダー型混練機、ロール混練機等の混練機により溶融成形することによりペレット状の塩化ビニル系樹脂組成物を得ることもできる。
【0037】
更に、本エステル、塩化ビニル系ペースト樹脂及び必要に応じて各種添加剤を、例えばコニカル二軸押出機、パラレル二軸押出機、単軸押出機、コニーダー型混練機、ロール混練機等の混練機により溶融成形することによりペースト状の塩化ビニル系樹脂組成物を得ることもできる。
【0038】
[塩化ビニル系樹脂成形体]
前記方法で得た塩化ビニル系樹脂組成物の配合粉あるいはペレットを、押出成形、射出成形、カレンダ成形、プレス成形、ブロー成形等の従来公知の方法を用いて溶融成形加工することにより、所望の形状に成形できる。
【0039】
一方、塩化ビニルペースト樹脂組成物は、スプレッド成形、ディッピング成形、グラビア成形、スクリーン加工等の従来公知の方法を用いて成形加工することにより、所望の形状に成形できる。
【0040】
成形体の形状としては、特に限定されないが、例えば、ロッド状、シート状、フィルム状、板状、円筒状、円形、楕円形等あるいは玩具、装飾品等特殊な形状のもの、例えば星形、多角形形状が例示される。
【0041】
かくして得られた成形体は、水道管などのパイプ類、自動車アンダーボディコート、各種レザー類、農業用透明フィルム、食品包装用フィルム、電線被覆、各種発泡製品、一般透明ホース、冷蔵庫用ガスケット、パッキン類、壁紙、床材、ブーツ、玩具、字消し等に有用である。
【実施例】
【0042】
以下に実施例を示し、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。尚、実施例や比較例中の化合物の略号、及び各特性の測定は以下の通りである。
【0043】
(1)塩化ビニルプレスシートの作製
塩化ビニル樹脂(ストレート、重合度1050、商品名「Zest1000Z」、新第一塩ビ社製)100重量部に、安定剤としてカルシウムステアレート(ナカライテスク社製)及びジンクステアレート(ナカライテスク社製)を各々0.3及び0.2重量部を配合し、モルタルミキサーで攪拌混合した後、可塑剤50重量部を加え、均一になるまでハンドリング混合し塩化ビニル樹脂組成物とした。この樹脂組成物を5×12インチの二本ロールを用いて160〜166℃で4分間溶融混練し、続いて162〜168℃×10分間プレス成形を行い、厚さ約1mmのプレスシートを作製した。
【0044】
(2)エステルの物性評価
製造例で得られたエステルは下記の方法で分析を行った。
エステル価:JIS K−0070(1992)に準拠して測定した。
酸価:JIS K−0070(1992)に準拠して測定した。
色相:JIS K−4101(Hazen)(1995)に準拠して測定した。
【0045】
[樹脂の物性評価]
(3)引張試験:JIS K−6723(1995)に準拠し、プレスシートの100%モジュラス、破断強度、破断伸びを測定する。100%モジュラスの値が小さいほど柔軟性が良好であることを示す。
【0046】
(4)耐寒性試験:クラッシュベルグ試験機を用いて、JIS K−6773(1999)に準拠して測定する。絶対値の大きいほど耐寒性が高い。
【0047】
(5)耐熱性試験:揮発減量及びシート着色の評価による。
a)揮発減量:ギヤーオーブン中、プレスシートを170℃で60分、120分加熱した後の重量変化を測定する。数値が少ないほど、耐熱性が高い。
b)シート着色 :ギヤーオーブン中、プレスシートを170℃で30分、60分間加熱した後の着色度の強弱を目視により4段階で評価する。
◎:着色なし、○:若干着色する、△:着色する、×:着色が強い。
【0048】
[製造例1]
温度計、デカンター、攪拌羽、還流冷却管を備えた2L四ツ口フラスコに、フタル酸二無水物493g(3.3モル)、脂肪族飽和アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)1112g(7.7モル)、キシレン140g、及びエステル化触媒としてp−トルエンスルホン酸3.7gを加え、反応温度を130℃としてエステル化反応を実施した。減圧下キシレン、アルコールを還流させて生成水を系外へ除去しながら、反応溶液の酸価が0.5mgKOH/gになるまで反応を行った。反応終了後、未反応アルコールを減圧下で系外へ留去した後、常法に従って中和、水洗、脱水して目的とするフタル酸ジエステル1223gを得た。
得られたDL9Pは、エステル価:267mgKOH/g、酸価:0.01mgKOH/g、色相:10であった。
【0049】
[実施例1]
製造例1で得られたフタル酸ジエステルを用いて、塩化ビニルプレスシートを作製し、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を測定した。得られた結果を表1に示した。
【0050】
[比較例1]
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(新日本理化社製:サンソサイザーDOP)を用いて、塩化ビニルプレスシートを作製し、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を測定した。得られた結果を表1に示した。
【0051】
[比較例2]
フタル酸ジイソノニル(新日本理化社製:サンソサイザーDINP)を用いて、塩化ビニルプレスシートを作製し、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を測定した。得られた結果を表1に示した。
【0052】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のフタル酸ジエステルは、耐寒性及び耐熱性が優れ、かつ柔軟性が良好な塩化ビニル系樹脂用可塑剤として使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フタル酸若しくはその無水物と、炭素数9の脂肪族飽和アルコールとをエステル化反応して得られるフタル酸ジエステルであって、
前記脂肪族飽和アルコールが、(1)1−オクテン、一酸化炭素と水素とのヒドロホルミル化反応による炭素数9のアルデヒドを製造する工程及び(2)炭素数9のアルデヒドを水素添加してアルコールに還元する工程を具備する製造工程により製造された脂肪族飽和アルコールであることを特徴とするフタル酸ジエステルを含有する塩化ビニル系樹脂用可塑剤。

【公開番号】特開2012−7184(P2012−7184A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2011−223682(P2011−223682)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000191250)新日本理化株式会社 (90)
【Fターム(参考)】