説明

フタロシアニン化合物を含有する緑色顔料分散体

【課題】ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン化合物のもつ光学特性(緑色の色みの良さや高い光の透過性)を効果的に発揮させ、さらにその微粒子の分散体中での2次凝集を抑制して、カラーフィルタの良好な緑(G)画素の色材として特に適した顔料分散体を提供する。
【解決手段】特定の構造を有するポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン化合物からなる顔料微粒子を媒体中に含有するポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料分散体であって、所定の測定方法で測定し算定されたコントラストの値が40,000以上であることを特徴とする顔料分散体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタに用いられる緑色の色材として特に適した顔料分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイの大画面化及び高精細化の技術開発が進み、その用途はノートパソコン用ディスプレイからデスクトップパソコン用モニター、さらにはテレビモニターにまで大幅に拡大されてきている。かかる状況にあって、液晶ディスプレイ等に使用するカラーフィルタとして、高い色純度をもつものが求められている。特に高品位の画像表示を可能にする高精細ディスプレイにおいて、この要求特性を満足することが重要になる。カラーフィルタを通過した光がその各画素の色に着色され、それらの色の光を合成してカラー画像を形成する。したがって、これを可能にする所定のRGBの三色で極めて純度の高い画素をもつカラーフィルタが望まれる。
【0003】
なかでも緑(G)画素用の着色顔料として、これまで、銅フタロシアニン化合物からなるピグメントグリーン36(C.I.Pigment Green36)(以下、単にPG36ということがある。)が主に用いられてきたが、やや色味の良さと透過度に劣り、これを改善する色材の開発が進められてきた。これらの点を克服しうる顔料として、最近、ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニンからなるピグメントグリーン58(C.I.Pigment Green58)(以下、単にPG58ということがある。)が開発され、これをカラーフィルタ用の色材として用いることが提案されている(特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−122478号公報
【特許文献2】特開2007−284590号公報
【特許文献3】特開2006−284691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし本発明らが追試を行った結果によれば、PG58は従来のPG36に対して凝集力が強いため分散体としたときに良好な分散状態を実現し維持することが困難であることが分かってきた。そのため、上述したようなPG58がもつ特性によりカラーフィルタの画素としたときの色味の良さや高い透過性が得られたとしても、その他のコントラストや均質性等といった点で劣る場合がある。
本発明は上記の点に鑑み、ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン化合物のもつ光学特性を効果的に発揮させ、さらにその微粒子の分散体中での2次凝集を抑制して、カラーフィルタの良好な緑(G)画素の色材として特に適した顔料分散体及びこれを用いたレジスト組成物の提供を目的とする。また、上記のポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン化合物の顔料分散体の製造に適した製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は下記の手段によって解決された。
(1)下記一般式(1)で表される化合物からなる顔料微粒子を媒体中に含有する顔料分散体であって、下記コントラストの値が40,000以上であることを特徴とする顔料分散体。
【化1】

(式中、X〜X16のうちの任意の8〜16か所はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表し、残りは水素原子を表す。X〜X16のうちのフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子で表されるものは、すべて同一の原子であってもよいし異なった原子であってもよい。Yはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は酸素原子を表し、mは0〜2の整数を表す。)
[コントラストの値:ガラス基板上に厚みが2μmになるように顔料濃度15質量%の分散体を塗布したサンプルを2枚の偏光板の間に置き、3波長冷陰極管光源からの偏光軸が平行のときの透過光量(Ta)と垂直のときとの透過光量(Tb)とを測定し、前記平行透過光量(Ta)を垂直透過光量(Tb)で除した値(Ta/Tb)。]
(2)前記顔料微粒子の一次粒子の平均粒径が10nm以上50nm以下でありかつ粒度分布20%以下であり、該一次粒子が凝集してできた二次粒子が平均粒径10nm以上70nm以下かつ粒度分布30%以下であることを特徴とする(1)に記載の顔料分散体。
(3)前記一般式(1)で表される化合物を良溶媒に溶解した溶液と、前記顔料の貧溶媒とを混合し、その混合液中で生成させた顔料微粒子を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の顔料分散体。
(4)前記顔料微粒子を生成させた混合液を一度濃縮し、再度分散させて調製することを特徴とする(3)に記載の顔料分散体。
(5)カラーフィルタ用の色材である(1)〜(4)のいずれか1項に記載の顔料分散体。
(6)(5)に記載の顔料分散体を含有することを特徴とするカラーフィルタ用着色レジスト組成物。
(7)下記一般式(1)で表される顔料化合物を良溶媒に溶解した顔料溶液と、前記顔料に対して貧溶媒となる溶媒とを混合し、その混合液中に顔料微粒子を生成させ、前記顔料化合物の分散体を調製する工程と、得られた顔料分散体を一度濃縮し、再度分散させる工程とを有することを特徴とする、顔料分散体の製造方法。
【化2】

(式中、X〜X16のうちの任意の8〜16か所はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表し、残りは水素原子を表す。X〜X16のうちのフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子で表されるものは、すべて同一の原子であってもよいし異なった原子であってもよい。Yはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は酸素原子を表し、mは0〜2の整数を表す。)
【発明の効果】
【0007】
本発明の顔料分散体およびこれを用いたレジスト組成物は、ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン化合物の微粒子を用いた分散体としてこれまでにない高いコントラストの値を有し、さらに分散体中での2次凝集が抑制され、しかも、該分散体ないしレジスト組成物を用いることにより、該化合物がもつ良好な緑色の色味と光の透過性を実現して、必要によりむらが無く高品位のカラーフィルタにおける緑(G)画素を作製することができるという優れた作用効果を奏する。また、本発明の製造方法によれば、上記のポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン化合物の顔料分散体を好適に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】二次粒子の平均粒径を測定する動的光散乱測定装置の構成を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の顔料分散体はコントラストの値40000以上という高いコントラストの値を示す。上述のように新たに開発された緑色顔料であるPG58は凝集力が強いため、その粒径を小さくしたときなど、分散させることが難しいことがある。そして、その二次凝集体が大きくなればその分散液を用いて実現されるコントラストの値は低くなり、カラーフィルタの画素における性能も低下する。これを強力な分散機等でいわば無理やり分散させても、やはり二次凝集体が複数の粒径分布をもつ多分散状態になるなどして良好な分散状態を保つことは難しい。そのように多分散状態になり、たとえば時間が経つとともに局所的にチキソトロピー性を発現するようになると、その分散液を用いて着色膜を作製した場合、塗布むらが生じてしまうこととなる。
本発明の好ましい実施形態においては、ビルドアップ法で作製した単分散かつ微小なポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン化合物からなる微粒子を用いることにより、上記のような該化合物に特有の問題点を克服し、分散しやすく、経時によって塗布むらの出にくい安定な分散体を作製することが可能である。その分散体を、製法等によらず最も的確に特定して表すのが本発明における上記コントラストの値であり、本発明の分散体はこのコントラストの値を有することを特徴とする。なお、本発明において分散体のコントラストの値は下記の測定方法で測定した値をいう。
【0010】
[コントラストの測定方法]
顔料濃度15質量%の顔料分散体をガラス基板上に厚みが2μmになるように塗布し、サンプルを作製する。バックライトユニットとして3波長冷陰極管光源(東芝ライテック(株)社製 商品名:FWL18EX−N(商品名))に拡散板を設置したものを用い、2枚の偏光板((株)サンリツ社製の偏光板 商品名:HLC2−2518(商品名))の間にこのサンプルを置き、偏光軸が平行のときと、垂直のときとの透過光量を測定し、その比によりコントラストを求める(「1990年第7回色彩光学コンファレンス、512色表示10.4”サイズTFT−LCD用カラーフィルタ、植木、小関、福永、山中」等参照。)。
【0011】
[色差の測定方法]
色度の測定には色彩輝度計((株)トプコン社製BM−5)を用いる。2枚の偏光板、サンプル、色彩輝度計の設置位置は、バックライトから13mmの位置に偏光板を、40mm〜60mmの位置に直径11mm長さ20mmの円筒を設置し、この中を透過した光を、65mmの位置に設置した測定サンプルに照射し、透過した光を、100mmの位置に設置した偏光板を通して、400mmの位置に設置した色彩輝度計で測定する。色彩輝度計の測定角は2°に設定する。バックライトの光量は、サンプルを設置しない状態で、2枚の偏光板をパラレルニコルに設置したときの輝度が1280cd/mになるように設定する。
【0012】
(一般式(1)で表される化合物について)
本発明の分散体を前記一般式(1)で表される化合物からなる微粒子を有する。該化合物はポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン化合物にあたり、従来の銅フタロシアニン系の顔料と比較して着色力が高い。そのため、カラーフィルタの画素を形成するときなどの緑色感光性樹脂組成物中の顔料濃度を減らすことができ好ましく、また特に色純度、色濃度、および透明性の点で優れている。
【0013】
〜X16は、芳香環に置換されたハロゲン原子として、その8〜16個のフッ素、塩素、臭素、またはヨウ素原子を有し、残りは水素原子であるが、臭素原子を8個以上、かつ塩素を1個以上有することが好ましい。中でも臭素原子を12個以上、かつ塩素原子を2個以上有するものは、透明性の高い緑色を有し、カラーフィルタ用の緑色着色剤に適している。本発明に用いるフタロシアニンは、例えば特開2003−16182号公報に記載の方法により製造することができる。
【0014】
また、色純度の高いカラーフィルタを作製するために、本発明の分散体に黄色顔料をさらに含有させることが好ましい。該黄色顔料としては、アゾ顔料、イソインドリン顔料、キノフタロン顔料、金属アゾ錯体顔料などが好ましく、これらの黄色顔料は、単独で用いることもでき、2種以上を混合して用いることもできる。これらの中でもキノフタロン系顔料及び金属アゾ錯体顔料から選択される少なくとも一種が好ましく、具体的には、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等が挙げられ、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150が特に好ましい。
【0015】
本発明の分散体は更にその他の顔料を併用してもよく、該顔料の具体例として、特開2005−17716号公報[0038]〜[0040]に記載の色材や、特開2005−361447号公報[0068]〜[0072]に記載の顔料や、特開2005−17521号公報[0080]〜[0088]に記載の着色剤を好適に用いることができる。
【0016】
本発明において一般式(1)で表される化合物からなる顔料微粒子の含有量は特に限定されないが、後述する再沈法により生成させた直後であれば0.1〜10質量%であることが実際的である。一方、分散媒体を切り替えてカラーフィルタの画素形成用の分散体とするときには5〜30質量%とすることが好ましく、8〜20質量%とすることがより好ましい。カラーフィルタ用の色材としての分散体中の全固形分に対する顔料の含有量としては30〜60質量%の範囲内であることが好ましく、33〜60質量%の範囲内であることが更に好ましく、35〜50質量%の範囲内であることが特に好ましい。顔料の含有量が前記範囲内であることにより、良好な色度と高い色純度とを有するグリーン(G)の画素を作製することができる。
【0017】
(顔料微粒子)
本発明の分散体に含有される一般式(1)で表される化合物からなる顔料微粒子の一次粒子の平均粒径は10nm以上50nm以下であることが好ましく、該一次粒子が凝集してできた二次粒子が平均粒径10nm以上70nm以下かつ粒度分布30%以下であることがさらに好ましい。上記のとおり特定の顔料種の微粒子において二次粒子の平均粒径を上記の範囲とすることにより、高透過率の分散体を作製でき、その結果コントラストを高めることができる。また、その二次次粒子の粒度分布を上記上限値以下とすることにより、少ない分散剤量で二次粒子の表面を被覆でき、低粘度かつ高安定性の分散体を作製できる。さらに、その顔料微粒子の一次粒子の平均粒径を上記の範囲とすることにより、つまり一次粒子をナノメートルオーダーの微細なものとすることにより、上記二次粒子径を微小にすることができる。以下に、一次粒子の粒径に関する測定及び二次粒子の粒径に関する測定の詳細を示す。
【0018】
○ 一次粒子の粒径に関する測定について
上記一次粒子の平均粒径とは、特に断らない限り電子顕微鏡(日本電子社製、JEM−1200EX(商品名))で観察撮影した写真画像を用い、粒子の投影像を同面積の円としたときの円相当直径により評価する。このようにして200個の粒子において円相当直径を算定しその数平均を一次粒子の平均粒径とする。本発明の分散体においては、一般式(1)で表される化合物からなる微粒子の一次粒子の平均粒径が上記の範囲であることが好ましく、10nm〜50nmであることがより好ましく、10nm〜20nmであることが特に好ましい。
【0019】
上記一次粒子の粒度分布は50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、20%以下であることが特に好ましい。この範囲外の粒度分布では二次粒子の粒度分布が大きくなり、分散体が高粘度化・安定性悪化する。
【0020】
○ 二次粒子の粒径に関する測定について
本発明において、二次粒子の粒径に関する測定は特に断らない限り、顔料濃度15重量%の分散体をマッハツェンダー型干渉計と低コヒーレンス光源とを有する動的光散乱測定装置を用いて測定する。具体的には、前記低コヒーレンス光源から発せられた光を二つに分割する手段と、前記分割された光の一方は参照光とされ、他方が粒子を含有する媒体を介して散乱光とされ、前記両光を結合する手段とを有する動的光散乱測定装置により測定することが好ましい。
【0021】
図1は、マッハツェンダー型の干渉計を用いた本発明の動的光散乱測定装置の一実施態様を概略的に示す装置構成図である。この動的光散乱測定装置10の光源には、低コヒーレンス光源(SLD;Super Luminescent Diode)1を用いている。F,F,F,F,F,F,Fは光ファイバ(光伝播路)である。3は光カプラー(光分岐機構)である。6a,6b,6cはコリメーターレンズ(光伝播経路におけるファイバ中と空気中との接合器)である。7は位相変調器(変調器)である。2はサーキュレーター(光ファイバFから来た光を光ファイバFに抜き、光ファイバFから入った光を光ファイバFへ導く。光路変換機)である。12は対物レンズ(集光機)である。Sは媒体s中に粒子sを含有する散乱媒体試料である。4は光カプラー(光結合機構)である。5はバランス検出器(検出器)である。CはBNCケーブル(電気ケーブル)である。8はA/Dボード(電気信号読取部)である。9はPC(データ処理、解析部)である。
【0022】
本実施態様において採用されるSLD光源1の光の波長は特に限定されないが、例えば0.125〜2μmであることが好ましく、0.250〜1.5μmであることがより好ましい。F〜Fは光ファイバに代え例えば空間伝播にする手法を用いてもよい。光カプラー3の分岐比は測定対象に応じて変えることが可能である。コリメーターレンズ6a,6b,変調器7からなる変調部17は空間に出して変調を行っても、ファイバ中で変調させる機構としてもよい。あるいは、変調部17を他方の光路において採用されるサーキュレーター2,光ファイバF,対物レンズ12からなる構造にして、試料(散乱媒体)Sを振動可能なミラーに替えて変調をかけることも可能である。対物レンズ12は測定系に応じて変更することが可能である。粒径が大きければ対物レンズを用いなくてよい。光ファイバFから光ファイバFの間に減衰器を介在させて光量を調整するということも必要により考慮される。A/Dボード8,PC9はスペクトルアナライザ等でも代用可能である。サーキュレーター2としては1:1のカプラーを使うことができ、入射光路と出射光路を分ける等の対応も可能である。
【0023】
低コヒーレンス光源1の光は、光ファイバFを伝搬後、光カプラー3に入射され、光カプラー3で2つの光に分割される。分割された一方の光は、光ファイバFを通してコリメーターレンズ6aで平行光線にされ、位相変調器7を通り、コリメーターレンズ6bにより光ファイバFに入り、光ファイバFを通って光カプラー−4に到達する。この光を「参照光」という。光カプラー3から光カプラー4までの片道の光路長をdrefとすると、参照光の光路は光路長drefとなる。
【0024】
光カプラー3で分割された他方の光は、光ファイバFを通り、サーキュレーター2により光ファイバFを通り、コリメータ6cで平行光線にされ、集光器12によって試料セル中の散乱媒体Sに入射される。散乱媒質からの後方散乱光は、再び集光器12、コリメーターレンズ6c、光ファイバFを通って、サーキュレーター2により光ファイバFを通り、光カプラー4に入射される。この光を「散乱光」という。光カプラー3から散乱媒体S内で散乱が起きた箇所までの光路長d1(散乱媒体のどこまでかは測定する条件や対象によって定義すればよく、例えば集光位置までに定めることができる。)と、散乱媒体S内で散乱が起きた箇所から光カプラー4までの光路長d2との合計をdscaと定義すると、散乱光の光路は光路長dsca=d1+d2となる。
【0025】
光カプラー4に入射された前記参照光と散乱光は、光ファイバFを通って、受光ダイオード(PD;Photo Detector)5に入射され、この電気変換信号がBNCケーブルCを通り、A/Dボード8を介してパソコン9上で光の干渉強度のパワースペクトルを出力する。このスペクトルを「ヘテロダインスペクトル」という。これに対して、参照光の光路を遮断して、散乱光のみの強度を検出して得られるパワースペクトルを「ホモダインスペクトル」という。これら一連の測定及び計算に係る低コヒーレンス光源のコヒーレンス関数、干渉光強度のパワースペクトル、散乱光スペクトル等の詳細については、特開2005−121600号公報を参照することができる。
【0026】
本発明の測定装置及び測定方法の実施形態は、前記実施形態に限定されるものではない。例えば、光ファイバを用いた干渉計以外で、空間伝播型の干渉計を用いることもできる。その他、種々の変更を施すことが可能である。
【0027】
本発明の分散体において二次粒子の平均粒径は上記の範囲であることが好ましく、10〜70nmであることがより好ましく、10〜30nmであることが特に好ましい。本発明の分散体においては、さらに二次粒子の粒度分布が0〜30%であることが好ましく、0〜20%であることがより好ましい。
【0028】
本発明において顔料微粒子は1種の顔料からなるものでも2種以上の顔料からなるものであってもよい。また、顔料微粒子が顔料以外の剤を含有していてもよく、例えば後述する分散剤等を顔料微粒集中に取り込んで顔料複合微粒子となっていてもよい。再沈法によればこのような分子レベルでの微粒子形成を可能とするため好ましい。なお、本発明において一般式(1)で表される化合物からなる微粒子というとき、本発明の作用効果を奏する範囲で上述のようにその他の顔料や剤を微粒子中に含有していてもよいことを意味する。
【0029】
<顔料分散剤>
本発明の分散体は、アミノ基を含有する顔料分散剤を併用することが好ましく、これにより分散性能が高く、少量で効果を発揮させることができる。つまり、本発明に係るハロゲン化金属フタロシアニンとアミノ基を含有する顔料分散剤とを併用することで、分散体中の顔料及び顔料分散剤の量を減らすことができ、それにより塗布液の設計の自由度が増す。さらに、顔料濃度が低くなると、画像のキレ(パターンの直線性)及びカバーフィルムの密着性が改善される。前記アミノ基を含有する顔料分散剤としては、下記一般式(2)又は(3)で表される化合物が好ましい。
【0030】
【化3】

【0031】
式中、Aは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基若しくはアラルキル基、又は色素残基を表し、Z、Z、及びZはそれぞれ独立して、単結合、−NR10−、−O−、−S−、−CO2−、−CONH−、−SO2NH−を表す。また、R10は水素原子又はアルキル基を表し、R及びRはそれぞれ独立してエ−テル結合を有していてもよいアルキレン基を表し、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基若しくはアラルキル基を表し、RとR、RとRはそれぞれ互いに結合して窒素原子を含む5乃至6員の飽和環を形成していてもよく、この飽和環はさらに酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択される原子を含んでいてもよい。
【0032】
式中、Aは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基若しくはアラルキル基、又は色素残基を表す。前記アルキル基は、無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数が1〜20のアルキル基が好ましい。また前記置換基としては、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アルキロイルオキシ基、等が好ましく挙げられる。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基、オクタデシル基、2−(2’−メトキシエトキシ)エトキシ基、等が挙げられる。
【0033】
また、前記アラルキル基は、無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数が7〜15のアラルキル基が好ましい。前記置換基としては、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アルキロイルオキシ基、等が好ましく挙げられる。具体的には、例えば、ベンジル基等が挙げられる。また、前記色素残基は、色素を構成する分子から水素原子を1個取り除いた残りの部分からなる基をいい、例えば下記式(A1)で表される色素残基等が挙げられる。
【0034】
【化4】

【0035】
式(A1)中、#はフェニル基から水素原子が1個取り除かれていることを表す。中でもAとしては、総炭素数1〜10の置換基を有していてもよいアルキル基若しくはアラルキル基又は色素残基であることが好ましく、色素残基であることがより好ましく、アゾ色素残基であることが特に好ましい。
【0036】
、Z、及びZにおいてR10で表されるアルキル基としては、総炭素数が1〜8のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、n−ブチル基等を挙げることができる。中でも、Z、Z、及びZとして、−NR10−、−O−又は−CONH−であることが好ましく、−NH−又は−CONH−であることがより好ましい。
【0037】
また、R及びRとしては例えば、エチレン基、プロピレン基、エチレンオキシエチレン基等が好適に挙げられる。中でも、総炭素数が1〜10のエ−テル結合を有していてもよいアルキレン基が好ましく、総炭素数が1〜6のアルキレン基がより好ましい。
【0038】
〜Rにおいて、アルキル基としては総炭素数が1〜8のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−オクチル基等が好ましく挙げられる。また、アラルキル基としては、総炭素数が7〜12のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基等が好ましく挙げられる。前記置換基としては、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アルキロイルオキシ基、等が好ましく挙げられる。中でも、R〜Rは、総炭素数が1〜6のアルキル基であることが好ましく、RとR、RとRがそれぞれ互いに結合して窒素原子を含む5乃至6員の飽和環(例えば、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環等)を形成することもまた好ましく、総炭素数が1〜3のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)であることがより好ましい。
【0039】
上記のうち、一般式(2)で表される化合物としては、Aがアゾ色素残基であって、Z、Z、及びZが−CONH−であって、R及びRが総炭素数1〜4のアルキレン基であって、R〜Rが総炭素数1〜4のアルキル基であることが特に好ましい。
また、一般式(3)で表される化合物としては、Aがアゾ色素残基であって、Z、Z、及びZが−NH−であって、R及びRが炭素数1〜4のアルキレン基であって、R〜Rが総炭素数1〜4のアルキル基であることが特に好ましい。その具体例を以下に示す。
【0040】
【化5】

【0041】
本発明の分散体において顔料分散剤の含有量としては特に限定されないが、顔料に対して含有量が5質量%以上30質量%以下の範囲内であることが好ましい。顔料分散剤の含有量が前記範囲内であることにより、直線性に優れたパターンを形成することができる。また、本発明の分散体において上記組み合わせて用いることが好ましい分散剤は、後述する再沈法により微粒子を生成させる際に共存させることが好ましく、さらに、良溶媒もしくは貧溶媒に含有させておくことがより好ましく、良溶媒側に含有させておくことが特に好ましい。
【0042】
<再沈法>
本発明分散体に含まれる一般式(1)で表される化合物からなる顔料微粒子は、良溶媒(第1溶媒)に該顔料を溶解させた溶液を貧溶媒(第2溶媒)と接触させて、顔料の微粒子を生成させたものであることが好ましい。このとき顔料を溶解させる良溶媒と貧溶媒との相溶性は、良溶媒の貧溶媒に対する溶解量が30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。良溶媒の貧溶媒に対する溶解量に特に上限はないが、任意の割合で混じり合うことが実際的である。
【0043】
○良溶媒
良溶媒としては、特に限定されないが、有機酸(例えば、ギ酸、ジクロロ酢酸、メタンスルホン酸等)、有機塩基(例えば、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、テトラブチルアンモニウムヒドロキサイド、ナトリウムメトキシド等)、水系溶媒(例えば、水、または塩酸、水酸化ナトリウム水溶液)、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール等)、ケトン系溶媒(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エーテル系溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、スルホキシド系溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンスルホキシド、スルホラン等)、エステル系溶媒(例えば、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、乳酸エチル等)、アミド系溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン等)、芳香族炭化水素系溶媒(例えば、トルエン、キシレン等)、脂肪族炭化水素系溶媒(例えば、オクタン等)、ニトリル系溶媒(例えば、アセトニトリル等)、ハロゲン系溶媒(例えば、四塩化炭素、ジクロロメタン等)、イオン性液体(例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート等)、二硫化炭素溶媒、またはこれらの混合物などが好適に挙げられる。
【0044】
これらの中でも、有機酸、有機塩基、水系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、スルホキシド系溶媒、エステル系溶媒、アミド系溶媒、またはこれらの混合物がより好ましく、有機酸、有機塩基、スルホキシド系溶媒、アミド系溶媒、またはこれらの混合物が特に好ましい。なかでも、スルホキシド系溶媒が好ましく、より具体的には、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキド、ヘキサメチレンスルホキシド、スルホランなどが挙げられ、ジメチルスルホキシドが特に好ましい。
【0045】
良溶媒に添加する無機塩基として、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどの無機塩基を用いることが可能である。使用する塩基の量は特に限定されないが、無機塩基の場合、顔料に対して1.0〜30モル当量であることが好ましく、1.0〜25モル当量であることがより好ましく、1.0〜20モル当量であることが特に好ましい。有機塩基の場合、顔料に対して1.0〜100モル当量であることが好ましく、5.0〜100モル当量であることがより好ましく、20〜100モル当量であることが特に好ましい。
【0046】
有機塩基(塩基性基を有する有機化合物)としては、アルキルアミン、アリールアミン、アラルキルアミン、ピラゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピリダジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、トリアジン誘導体などが挙げられ、好ましくはアルキルアミン、アリールアミン、イミダゾール誘導体が挙げられる。また塩基性基と複素環基とで構成される有機化合物を添加することも好ましい。
【0047】
酸性で溶解するときに用いられる酸として、前記有機酸以外に、硫酸、塩酸、燐酸などの無機酸を用いることも可能である。使用する酸の量は特に限定されないが、塩基に比べて過剰量用いられる場合が多く、顔料に対して3〜500モル当量であることが好ましく、10〜500モル当量であることがより好ましく、30〜200モル当量であることが特に好ましい。
【0048】
良溶媒に一般式(1)で表される化合物を溶解した顔料溶液は、その粘度が0.5〜100.0mPa・sとなるように調整することが好ましく、1.0〜50.0mPa・sとなるようにすることがより好ましい。
【0049】
上記に挙げた以外にも特開2007−9096号公報や特開平7−331182号公報等に記載の顔料誘導体を挙げることができる。ここで言う顔料誘導体とは、親物質としての有機顔料から誘導され、その親構造を化学修飾することで製造される顔料誘導体型の化合物、あるいは化学修飾された顔料前駆体の顔料化反応により得られる顔料誘導体型の化合物を指す。市販品としては、例えば、EFKA社製「EFKA6745(フタロシアニン誘導体))」、ルーブリゾール社製「ソルスパース5000(フタロシアニン誘導体)」等を挙げることができる(いずれも商品名)。顔料誘導体を用いる場合、その使用量としては、顔料に対し0.5〜30質量%の範囲にあることが好ましく、3〜20質量%の範囲にあることがより好ましく、5〜15質量%の範囲にあることが特に好ましい。
【0050】
○貧溶媒
貧溶媒は特に限定されないが、貧溶媒に対する顔料の溶解度は、0.02質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましい。該顔料の貧溶媒への溶解度にとくに下限はないが、通常用いられるものを考慮すると0.0001質量%以上が実際的である。
【0051】
貧溶媒としては、特に限定されないが、水系溶媒(例えば、水、または塩酸、水酸化ナトリウム水溶液)、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール等)、ケトン系溶媒(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エーテル系溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、スルホキシド系溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンスルホキシド、スルホラン等)、エステル系溶媒(例えば、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、乳酸エチル等)、アミド系溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン等)、芳香族炭化水素系溶媒(例えば、トルエン、キシレン等)、脂肪族炭化水素系溶媒(例えば、オクタン等)、ニトリル系溶媒(例えば、アセトニトリル等)、ハロゲン系溶媒(例えば、四塩化炭素、ジクロロメタン等)、イオン性液体(例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート等)、二硫化炭素溶媒、またはこれらの混合物などが好適に挙げられる。
これらの中でも、水系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、スルホキシド系溶媒、エステル系溶媒、アミド系溶媒、ニトリル系溶媒、またはこれらの混合物がより好ましく、水性媒体、アルコール系溶媒、またはこれらの混合物が特に好ましい。
【0052】
水性媒体とは、水単独または水と水に可溶な有機溶媒や無機塩の溶解液をいう、例えば、水、塩酸、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などが挙げられる。
アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノールなどが挙げられる。
【0053】
良溶媒の具体例として列挙したものと貧溶媒として列挙したものとで共通するものもあるが、良溶媒及び貧溶媒として同じものを組み合わせることはなく、前記顔料との関係で良溶媒に対する溶解度が貧溶媒に対する溶解度より十分高ければよく、顔料に関しては、例えば、その溶解度差が0.2質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。良溶媒と貧溶媒に対する溶解度の差に特に上限はないが、通常用いられる顔料を考慮すると50質量%以下であることが実際的である。
【0054】
貧溶媒の状態は特に限定されず、常圧から亜臨界、超臨界条件の範囲を選択できる。常圧での温度は−30〜100℃が好ましく、−10〜60℃がより好ましく、0〜30℃が特に好ましい。顔料溶液の粘度は0.5〜100.0mPa・sであることが好ましく1.0〜50.0mPa・sであることがより好ましい。
【0055】
○析出
顔料微粒子を析出させるときの調製条件に特に制限はなく、常圧から亜臨界、超臨界条件の範囲を選択できる。常圧での温度は−10〜150℃が好ましく、−5〜130℃がより好ましく、0〜100℃が特に好ましい。
【0056】
顔料溶液と貧溶媒とを混合する際、両者のどちらを添加して混合してもよいが、顔料溶液を貧溶媒に噴流して混合することが好ましく、その際に貧溶媒が撹拌された状態であることが好ましい。撹拌速度は100〜10000rpmが好ましく150〜8000rpmがより好ましく、200〜6000rpmが特に好ましい。添加にはポンプ等を用いることもできるし、用いなくてもよい。また、液中添加でも液外添加でもよいが、液中添加がより好ましい。さらに供給管を介してポンプで液中に連続供給することが好ましい。供給管の内径は0.1〜200mmが好ましく0.2〜100mmがより好ましい。供給管から液中に供給される速度としては1〜10000ml/minが好ましく、5〜5000ml/minがより好ましい。
【0057】
顔料溶液と貧溶媒との混合に当り、レイノルズ数を調節することにより、析出生成させる顔料ナノ粒子の粒子径を制御することができる。ここでレイノルズ数は流体の流れの状態を表す無次元数であり次式で表される。
Re=ρUL/μ ・・・ 数式(1)
数式(1)中、Reはレイノルズ数を表し、ρは顔料溶液の密度[kg/m]を表し、Uは顔料溶液と貧溶媒とが出会う時の相対速度[m/s]を表し、Lは顔料溶液と貧溶媒とが出会う部分の流路もしくは供給口の等価直径[m]を表し、μは顔料溶液の粘性係数[Pa・s]を表す。
【0058】
等価直径Lとは、任意断面形状の配管の開口径や流路に対し等価な円管を想定するとき、その等価円管の直径をいう。等価直径Lは、配管の断面積をA、配管のぬれぶち長さ(周長)または流路の外周をpとすると下記数式(2)で表される。
L=4A/p ・・・ 数式(2)
配管を通じて顔料溶液を貧溶媒に注入して粒子を形成することが好ましく、配管に円管を用いた場合には等価直径は円管の直径と一致する。例えば、液体供給口の開口径を変化させて等価直径を調節することができる。等価直径Lの値は特に限定されないが、例えば、上述した供給口の好ましい内径と同義である。
【0059】
顔料溶液と貧溶媒とが出会う時の相対速度Uは、両者が出会う部分の面に対して垂直方向の相対速度で定義される。すなわち、例えば静止している貧溶媒中に顔料溶液を注入して混合する場合は、供給口から注入する速度が相対速度Uに等しくなる。相対速度Uの値は特に限定されないが、例えば、0.5〜100m/sとすることが好ましく、1.0〜50m/sとすることがより好ましい。
【0060】
顔料溶液の密度ρは、選択される材料の種類により定められる値であるが、例えば、0.8〜2.0kg/mであることが実際的である。また、顔料溶液の粘性係数μについても用いられる材料や環境温度等により定められる値であるが、その好ましい範囲は、上述した顔料溶液の好ましい粘度と同義である。
【0061】
レイノルズ数(Re)の値は、小さいほど層流を形成しやすく、大きいほど乱流を形成しやすい。例えば、レイノルズ数を60以上で調節して顔料ナノ粒子の粒子径を制御して得ることができ、100以上とすることが好ましく、150以上とすることがより好ましい。レイノズル数に特に上限はないが、例えば、100000以下の範囲で調節して制御することで良好な顔料ナノ粒子を制御して得ることができ好ましい。あるいは、得られるナノ粒子の平均粒径が60nm以下となるようにレイノルズ数を高めた条件としてもよい。このとき、上記の範囲内においては、通常レイノルズ数を高めることで、より粒径の小さな顔料ナノ粒子を制御して得ることができる。
【0062】
顔料溶液と貧溶媒との混合比は体積比で1/50〜2/3が好ましく、1/40〜1/2がより好ましく、1/20〜3/8が特に好ましい。有機微粒子を析出させた場合の液中の粒子濃度は特に制限されないが、溶媒1000mlに対して有機粒子が10〜40000mgの範囲であることが好ましく、より好ましくは20〜30000mgの範囲であり、特に好ましくは50〜25000mgの範囲である。また、微粒子を生成させる際の調製スケールは、特に限定されないが、貧溶媒の混合量が10〜2000Lの調製スケールであることが好ましく、50〜1000Lの調製スケールであることがより好ましい。
なお、再沈法についてはこれまで知られている手法を適宜適用することができ、例えば、特開2007−262378号公報、特開2004−43776号公報、特開2003−113341号公報等を参照することができる。
【0063】
<濃縮・再分散>
本発明において分散体は再沈法の直後においては、貧溶媒(第2溶媒)として典型的には水を多量に含有しており、また顔料を溶解させる良溶媒(第1溶媒)も相当量含有しているため、これを第3の溶媒を添加するあるいはこれに切り替えることが好ましい。第3溶媒の添加ないし切り替えの時機は顔料微粒子の析出後であれば特に限定されないが、微粒子を析出させた混合液に添加してもよいし、混合液の溶媒分の一部、を除去してから加えてもよいし、あるいは全部を予め除去(濃縮)してから添加してもよい。すなわち、第3溶媒を置換用溶媒として用い、微粒子を析出させた分散液中の良溶媒及び貧溶媒からなる溶媒分を第3溶媒で置換することができる。あるいは、良溶媒および貧溶媒を完全に除去(濃縮)し、顔料粒子粉末として取り出してから、第3溶媒を加えることもできる。
【0064】
また、所望の成分組成を有する顔料分散組成物とするときに、1度目の溶媒分の除去工程(第1除去)を経た後、第3溶媒を添加して溶媒置換し、2度目の溶媒分の除去工程(第2除去)により溶媒分を除去し粉末化してもよい。そして、その後顔料分散剤及び/又は溶媒を添加して所望の顔料分散組成物とすることができる。あるいは良溶媒および貧溶媒を完全に除去(濃縮)し、顔料粒子粉末として取り出してから、第3溶媒及び/又は顔料分散剤を添加して、所望の顔料分散組成物とすることができる。
顔料微粒子析出後の混合液からの溶媒分の除去工程としては、特に限定されないが、例えば、フィルタなどによりろ過する方法、遠心分離によって顔料微粒子を沈降させて濃縮する方法などが挙げられる。フィルタろ過の装置は、例えば、減圧あるいは加圧ろ過のような装置を用いることができる。好ましいフィルタとしては、ろ紙、ナノフィルタ、ウルトラフィルタなどを挙げることができる。
【0065】
遠心分離機は顔料微粒子を沈降させることができればどのような装置を用いてもよい。例えば、汎用の装置の他にもスキミング機能(回転中に上澄み層を吸引し、系外に排出する機能)付きのものや、連続的に固形物を排出する連続遠心分離機などが挙げられる。遠心分離条件は、遠心力(重力加速度の何倍の遠心加速度がかかるかを表す値)で50〜10000が好ましく、100〜8000がより好ましく、150〜6000が特に好ましい。遠心分離時の温度は、分散液の溶剤種によるが、−10〜80℃が好ましく、−5〜70℃がより好ましく、0〜60℃が特に好ましい。
また、溶媒分の除去工程として、真空凍結乾燥により溶媒を昇華させて濃縮する方法、加熱ないし減圧による溶媒を乾燥させて濃縮する方法、それらを組合せた方法などを用いることもできる。
【0066】
<再分散溶剤>
前記第3溶媒としては、エーテル類、ケトン類、アルコール類、エステル類、アミド類等を好適に用いることができる。具体的には、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノール、乳酸エチル、乳酸メチル、カプロラクタム等を挙げることができる。これらの溶剤は1種単独でも、2種以上を組合せて用いてもよい。第3溶媒の含有量としては、分散性の観点から、10質量%以上95質量%以下であることが好ましい。
【0067】
本発明においては、再沈法で得た分散体に対し、このようにして溶媒を切り替えた分散体に所定の剤を添加し、カラーフィルタの緑(G)画素の作製に特に適したレジスト組成物とすることができる。以下に、レジスト組成物の成分として好ましい各剤について説明する。
【0068】
<バインダー>
本発明においてはバインダーとしてアルカリ可溶性バインダーを用いることが好ましい。これにより、前記緑色感光性樹脂組成物によって形成される感光性樹脂層をアルカリ水溶液で現像可能に構成することができる。
【0069】
アルカリ可溶性バインダー(以下、単に「バインダー」ということがある。)としては、側鎖にカルボン酸基やカルボン酸塩基などの極性基を有するポリマーが好ましい。その例としては、特開昭59−44615号公報、特公昭54−34327号公報、特公昭58−12577号公報、特公昭54−25957号公報、特開昭59−53836号公報及び特開昭59−71048号公報に記載されているようなメタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等を挙げることができる。また側鎖にカルボン酸基を有するセルロース誘導体も挙げることができ、またこの他にも、水酸基を有するポリマーに環状酸無水物を付加したものも好ましく使用することができる。また、特に好ましい例として、米国特許第4139391号明細書に記載のベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体や、ベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸と他のモノマーとの多元共重合体を挙げることができる。これらの極性基を有するバインダーポリマーは、単独で用いてもよく、或いは通常の膜形成性のポリマーと併用する組成物の状態で使用してもよく、緑色感光性樹脂組成物の全固形分に対する含有量は20〜50質量%が一般的であり、25〜45質量%が好ましい。
【0070】
<光重合性化合物>
本発明においては光重合性化合物として例えば、分子中に重合性基を2つ以上有するモノマーやオリゴマーが好適な例として挙げられる。モノマー又はオリゴマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有し、光の照射によって付加重合するモノマー又はオリゴマーであることが好ましい。そのようなモノマー及びオリゴマーとしては、分子中に少なくとも2つの付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上の化合物を挙げることができる。その例としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリス(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンやグリセリン等の多官能アルコールにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加した後(メタ)アクリレート化したもの等の多官能アクリレートや多官能メタクリレートを挙げることができる。
【0071】
更に特公昭48−41708号公報、特公昭50−6034号公報及び特開昭51−37193号公報に記載されているウレタンアクリレート類;特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報及び特公昭52−30490号公報に記載されているポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレー卜やメタクリレートを挙げることができる。 これらの中で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジぺンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジぺンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0072】
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合性化合物B」も好適な
ものとして挙げることができる。これらのモノマー又はオリゴマーは、単独でも、2種類以上を組合せて用いてもよく、緑色感光性樹脂組成物の全固形分に対する含有量は5〜50質量%が一般的であり、10〜40質量%が好ましい。
【0073】
<光重合開始剤>
本発明に用いる光重合開始剤としては、米国特許第2367660号明細書に開示されているビシナルポリケタルドニル化合物、米国特許第2448828号明細書に記載されているアシロインエーテル化合物、米国特許第2722512号明細書に記載のα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許第3046127号明細書及び同第2951758号明細書に記載の多核キノン化合物、米国特許第3549367号明細書に記載のトリアリールイミダゾール二量体とp−アミノケトンの組み合わせ、特公昭51−48516号公報に記載のベンゾチアゾール化合物とトリハロメチル−s−トリアジン化合物、米国特許第4239850号明細書に記載されているトリハロメチル−トリアジン化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されているトリハロメチルオキサジアゾール化合物等を挙げることができる。特に、トリハロメチル−s−トリアジン、トリハロメチルオキサジアゾール及びトリアリールイミダゾール二量体が好ましい。また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合始剤C」も好適なものとしてあげることができる。
【0074】
これらの光重合開始剤は、単独でも、2種類以上を組合せて用いてもよいが、特に2種類以上を用いることが好ましい。少なくとも2種の光重合開始剤を用いると、表示特性、特に表示のムラをより少なくできる。緑色感光性樹脂組成物の全固形分に対する光重合開始剤の含有量は、0.5〜20質量%が一般的であり、1〜15質量%が好ましい。
【0075】
<その他の添加剤>
本発明においては、分散体において上記成分に加えて、溶剤、界面活性剤、熱重合防止剤及び紫外線吸収剤などの添加剤を更に含有することができる。界面活性剤、熱重合防止剤及び紫外線吸収剤などの添加剤としては、特開2006−23696号公報の段落番号[0010]〜[0021]に記載の着色感光性樹脂組成物を構成する成分を本発明においても好適に用いることができる。
【0076】
<カラーフィルタ>
本発明の分散剤を用いてカラーフィルタ等を作製するとき、その材料や加工における感光性転写材料、スリット状ノズル、カラーフィルタ基板、緑色感光性樹脂組成物層形成工程、塗布法、転写法、支持体、露光、現像工程、その他の工程は定法ないしそこで適用されるものを好適に採用することができ、例えば特開2008−122478号公報、特開2007−284590号公報、特開2006−284691号公報等に記載のものを用いることができる。
【0077】
本発明の分散体を用いて作製した緑(G)画素を有するカラーフィルタは、コントラストに優れることが好ましい。本発明においてコントラストとは、特に断らない限り、後述する実施例において採用された測定方法により測定された値をいう。カラーフィルタのコントラストが高いということは液晶と組み合わせたときの明暗のディスクリミネーションが大きくできるということを意味しており、液晶ディスプレイがCRTに置き換わるためには非常に重要な性能である。
【0078】
カラーフィルタは、テレビ用として用いる場合は、F10光源による、レッド(R)、グリーン(G)、及びブルー(B)のそれぞれ全ての単色の色度が、下表に記載の値(以下、本発明において「目標色度」という。)との差(ΔE)で5以内の範囲であることが好ましく、更に3以内であることがより好ましく、2以内であることが特に好ましい。
【0079】
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
x y Y
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
R 0.656 0.336 21.4
G 0.293 0.634 52.1
B 0.146 0.088 6.90
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0080】
本発明において色度は、顕微分光光度計(オリンパス光学社製;OSP100又は200)により測定し、F10光源視野2度の結果として計算して、xyz表色系のxyY値で表す。また、目標色度との差は、La表色系の色差で表す。
【0081】
カラーフィルタを備えた液晶表示装置はコントラストが高く、黒のしまり等の描写力に優れ、とくにVA方式であることが好ましい。ノートパソコン用ディスプレイやテレビモニター等の大画面の液晶表示装置等としても好適に用いることができる。また、上記カラーフィルタはCCDデバイスに用いることができ、優れた性能を発揮する。
【0082】
<表示装置>
本発明の分散体を用いて作製したカラーフィルタを搭載した表示装置は、特に限定するものではなく、液晶表示装置、プラズマディスプレイ表示装置、EL表示装置、CRT表示装置などの表示装置などが挙げられる。表示装置の定義や各表示装置の説明は例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、(株)工業調査会 1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。なかでも、液晶表示装置は特に好ましい。液晶表示装置については例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、(株)工業調査会 1994年発行)」に記載されている。
【実施例】
【0083】
(実施例1)
前記各実施例および各比較例で用いる顔料分散剤Aおよび顔料誘導体Aは下記式で表される。(nは1〜5の整数)
【0084】
【化6】

【0085】
<有機顔料ナノ粒子分散液の調製>
ジメチルスルホキシド(和光純薬社製)1000gに、顔料C.I.ピグメントグリーン58(平均組成 ZnPcBr13Cl3)50gを分散させ、ここにナトリウムメトキシド28%メタノール溶液52.3gを滴下して顔料溶液Aを調製した。この顔料溶液Aを、ビスコメイトVM−10A−L(商品名、CBCマテリアルズ社製)を用いて粘度を測定した結果、顔料溶液の液温が24.5℃の時の粘度が14.3mPa・sであった。これとは別に貧溶媒として、1mol/l塩酸(和光純薬社製)160gを含有した水1000mlを用意した。
ここで、10℃に温度コントロールし、GK−0222−10型ラモンドスターラー(商品名、藤沢薬品工業社製)により500rpmで攪拌した貧溶媒1000mlに、顔料溶液AをNP−KX−500型大容量無脈流ポンプ(商品名、日本精密化学社製)を用いて、流路径1.1mmの送液配管から流速400ml/minで100ml注入することにより、有機顔料粒子を形成し、有機顔料ナノ粒子分散液Aを調製した。
【0086】
<有機顔料分散物の調製>
上記の手順で調製した、有機顔料ナノ粒子分散液Aを(株)コクサン社製H−112型遠心濾過機および敷島カンバス(株)社製P89C型ロ布を用いて5000rpmで90分濃縮した。得られたペーストを水で塩が除去できるまで水洗した後、有機顔料ナノ粒子濃縮ペーストAを回収した。
この有機顔料ナノ粒子濃縮ペーストAをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで3倍に希釈し、(株)コクサン社製H−112型遠心濾過機および敷島カンバス(株)社製P89C型ロ布を用いて14000rpmで90分濃縮した。この操作を含水率が1%以下となるまで繰り返し行い、有機顔料ナノ粒子濃縮ペーストA(ナノ粒子濃度21.2%)を得た。
有機顔料ナノ粒子濃縮ペーストAを用い、下記組成の有機顔料分散組成物Aを調製した。
有機顔料ナノ粒子濃縮ペーストA 66.0g
顔料分散剤A 5.4g
顔料誘導体A 3.9g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 34.7g
上記組成の有機顔料分散組成物をモーターミルM−50(アイガー・ジャパン社製)で、直径0.5mmのジルコニアビーズを用い、2000rpmで1時間、次いで直径0.1mmのジルコニアビーズを用い、2000rpmで4時間分散し、有機顔料分散組成物Aを得た。
【0087】
(実施例2)
有機顔料ナノ粒子分散液の調製において、実施例1と同様にし、有機顔料ナノ粒子分散液Bを調製した。この調製した有機顔料ナノ粒子分散液B(ナノ顔料濃度約0.5質量%)に、500mlのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加えて25℃で10分間、500rpmで攪拌した後1日静置し、ナノ顔料をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート相に抽出し、有機顔料ナノ粒子濃縮ペーストBとした。
有機顔料ナノ粒子濃縮ペーストBを用い、下記組成の有機顔料分散組成物Bを調製した。
有機顔料ナノ粒子濃縮ペーストB 60.6g
顔料分散剤A 5.4g
顔料誘導体A 3.9g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 30.1g
上記組成の有機顔料分散組成物をモーターミルM−50(アイガー・ジャパン社製)で、直径0.5mmのジルコニアビーズを用い、2000rpmで1時間、次いで直径0.1mmのジルコニアビーズを用い、2000rpmで4時間分散し、有機顔料分散組成物Bを得た。
【0088】
(比較例1)
顔料C.I.ピグメントグリーン58(平均組成 ZnPcBr13Cl3)100g、粉砕した塩化ナトリウム700g、ジエチレングリコール160g、キシレン9gを双腕型ニーダーに仕込み、100℃で4時間混練した。混練後80℃の水10000gに取り出し、1時間攪拌後、濾過し、80℃の湯洗浄を行い、90℃で乾燥させ、ハンマーミルで粉砕し顔料粉体Cを得た。
顔料粉体Cを用い、下記組成の有機顔料分散組成物Cを調製した。
顔料粉体C 11.1g
顔料分散剤A 5.4g
顔料誘導体A 3.9g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 79.6g
上記組成の有機顔料分散組成物をモーターミルM−50(アイガー・ジャパン社製)で、直径0.5mmのジルコニアビーズを用い、2000rpmで1時間、次いで直径0.1mmのジルコニアビーズを用い、2000rpmで4時間分散し、有機顔料分散組成物Cを得た。
【0089】
(比較例2)
顔料C.I.ピグメントグリーン58(FASTGEN Green A110、商品名、DIC(株))を用い、下記組成の有機顔料分散組成物Dを調製した。
FASTGEN Green A110 11.1g
顔料分散剤A 5.4g
顔料誘導体A 3.9g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 79.6g
上記組成の有機顔料分散組成物をモーターミルM−50(アイガー・ジャパン社製)で、直径0.5mmのジルコニアビーズを用い、2000rpmで1時間、次いで直径0.1mmのジルコニアビーズを用い、2000rpmで4時間分散し、有機顔料分散組成物Dを得た。
【0090】
(参考例)
ジメチルスルホキシド100mlに、ナトリウムメトキシド28%メタノール3.3ml、顔料(ピグメントグリーン58)6g、ポリビニルピロリドン6g、顔料誘導体Aを0.6g添加した顔料溶液Eを調製した。これとは別に、貧溶媒として、1mol/l塩酸4.3mlを含有した水1000mlを用意した。
ここで、1℃に温度コントロールし、藤沢薬品工業社製GK−0222−10型ラモンドスターラーにより500rpmで攪拌した貧溶媒の水1000mlに、顔料溶液Dを日本精密化学社製NP−KX−500型大容量無脈流ポンプを用いて流速50ml/minで200ml注入することにより、ナノ顔料粒子を形成し有機顔料ナノ粒子分散液Eを調製した。この有機顔料ナノ粒子分散液Eを、日機装社製ナノトラックUPA−EX150を用いて、粒径、単分散度を測定したところ、数平均粒径32nm、Mv/Mn1.35であった。
調製した有機顔料ナノ粒子分散液E(ナノ顔料濃度約0.5 質量%)に、500mlのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加えて25℃で10分間、500rpmで攪拌した後1日静置し、ナノ顔料をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート相に抽出し、濃縮抽出液とした。
ナノ顔料を抽出した濃縮抽出液を、住友電工ファインポリマ社製FP−010型フィルタを用いて、ろ過することにより、ペースト状の有機顔料ナノ粒子濃縮ペーストE(ナノ顔料濃度35質量%)を得た。
前記ペーストを用い、下記組成の顔料分散組成物Eを調製した。
有機顔料ナノ粒子濃縮ペーストE 39.4g
顔料誘導体A 0.6g
顔料分散剤A 15.8g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 44.2g
上記組成の有機顔料分散組成物をモーターミルM−50(アイガー・ジャパン社製)で、直径0.5mmのジルコニアビーズを用い、2000rpmで1時間、次いで直径0.1mmのジルコニアビーズを用い、2000rpmで4時間分散し、有機顔料分散組成物Eを得た。
【0091】
[コントラスト測定]
得られた有機顔料分散組成物試料を、それぞれガラス基板上に厚みが2μmになるように塗布し、サンプルを作製した。バックライトユニットとして3波長冷陰極管光源(東芝ライテック(株)社製FWL18EX−N)に拡散板を設置したものを用い、2枚の偏光板((株)サンリツ社製の偏光板HLC2−2518)の間にこのサンプルを置き、偏光軸が平行のときと、垂直のときとの透過光量を測定し、その比をコントラストとした(「1990年第7回色彩光学コンファレンス、512色表示10.4”サイズTFT−LCD用カラーフィルタ、植木、小関、福永、山中」等参照。)。色度の測定には色彩輝度計((株)トプコン社製BM−5)を用いた。2枚の偏光板、サンプル、色彩輝度計の設置位置は、バックライトから13mmの位置に偏光板を、40mm〜60mmの位置に直径11mm長さ20mmの円筒を設置し、この中を透過した光を、65mmの位置に設置した測定サンプルに照射し、透過した光を、100mmの位置に設置した偏光板を通して、400mmの位置に設置した色彩輝度計で測定した。色彩輝度計の測定角は2°に設定した。バックライトの光量は、サンプルを設置しない状態で、2枚の偏光板をパラレルニコルに設置したときの輝度が1280cd/m2になるように設定した。
【0092】
[塗布むら評価]
感光性樹脂組成物を塗布した基板において、ランダムに10点選び、色評価を色度計(商品名:MCPD−1000、大塚電子(株)製)にて行った。各点の色差(ΔEab値)を求め、最も大きい数値に関し、下記基準に従って評価した。ΔEab値の小さい方が、塗布性が良好であることを示す。
<判定基準>
○:ΔEab値<5
△:5≦Eab値≦10
×:10<ΔEab値
各実施例および各比較例の顔料分散組成物の評価結果を表1に示す。
【0093】
【表1】

表1から明らかなように、本発明ではコントラストに優れており、さらに膜厚の均一性・色ムラ・濃度ムラのない膜を好適に形成することができた。これに対し、各比較例では十分な性能が得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物からなる顔料微粒子を媒体中に含有する顔料分散体であって、下記コントラストの値が40,000以上であることを特徴とする顔料分散体。
【化1】

(式中、X〜X16のうちの任意の8〜16か所はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表し、残りは水素原子を表す。X〜X16のうちのフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子で表されるものは、すべて同一の原子であってもよいし異なった原子であってもよい。Yはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は酸素原子を表し、mは0〜2の整数を表す。)
[コントラストの値:ガラス基板上に厚みが2μmになるように顔料濃度15質量%の分散体を塗布したサンプルを2枚の偏光板の間に置き、3波長冷陰極管光源からの偏光軸が平行のときの透過光量(Ta)と垂直のときとの透過光量(Tb)とを測定し、前記平行透過光量(Ta)を垂直透過光量(Tb)で除した値(Ta/Tb)。]
【請求項2】
前記顔料微粒子の一次粒子の平均粒径が10nm以上50nm以下でありかつ粒度分布20%以下であり、該一次粒子が凝集してできた二次粒子が平均粒径10nm以上70nm以下かつ粒度分布30%以下であることを特徴とする請求項1に記載の顔料分散体。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される化合物を良溶媒に溶解した溶液と、前記顔料の貧溶媒とを混合し、その混合液中で生成させた顔料微粒子を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の顔料分散体。
【請求項4】
前記顔料微粒子を生成させた混合液を一度濃縮し、再度分散させて調製することを特徴とする請求項3に記載の顔料分散体。
【請求項5】
カラーフィルタ用の色材である請求項1〜4のいずれか1項に記載の顔料分散体。
【請求項6】
請求項5に記載の顔料分散体を含有することを特徴とするカラーフィルタ用着色レジスト組成物。
【請求項7】
下記一般式(1)で表される顔料化合物を良溶媒に溶解した顔料溶液と、前記顔料に対して貧溶媒となる溶媒とを混合し、その混合液中に顔料微粒子を生成させ、前記顔料化合物の分散体を調製する工程と、得られた顔料分散体を一度濃縮し、再度分散させる工程とを有することを特徴とする、顔料分散体の製造方法。
【化2】

(式中、X〜X16のうちの任意の8〜16か所はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表し、残りは水素原子を表す。X〜X16のうちのフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子で表されるものは、すべて同一の原子であってもよいし異なった原子であってもよい。Yはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は酸素原子を表し、mは0〜2の整数を表す。)

【図1】
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【公開番号】特開2011−68837(P2011−68837A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223219(P2009−223219)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 ナノテクノロジープログラム「ナノテク・先端部材実用化研究開発」/「有機顔料ナノ結晶の新規製造プロセスの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】