フックブラケットの取付部構造
【課題】 アルミニウム合金押出材からなるバンパーリインフォース9にタイダウン用のフックブラケット1を固定する場合において、下向きの荷重を支え、かつフックブラケット1に衝突荷重が掛かったときにバンパーリインフォース9が潰れてエネルギー吸収が行われるようにする。
【解決手段】 バンパーリインフォースの前壁9a及び後壁9bにフックブラケットの軸部2が嵌入する穴11,12を形成し、軸部を後方側から両穴に嵌入し、フックブラケットの左右に突出するつば3〜6を、前記穴の周縁に背面側から当接させる。バンパーリインフォースの前方側上方のコーナー部と後壁側を斜めに連結する補強板21を設置し、後方側の延長部21cと前方側の延長部21eを前記穴に嵌入する。前壁にフックブラケットと補強板を溶接し、後壁にフックブラケットを溶接する。後壁側の溶接部15の接合強度は、衝突時に優先的に破断する程度に弱く設定する。
【解決手段】 バンパーリインフォースの前壁9a及び後壁9bにフックブラケットの軸部2が嵌入する穴11,12を形成し、軸部を後方側から両穴に嵌入し、フックブラケットの左右に突出するつば3〜6を、前記穴の周縁に背面側から当接させる。バンパーリインフォースの前方側上方のコーナー部と後壁側を斜めに連結する補強板21を設置し、後方側の延長部21cと前方側の延長部21eを前記穴に嵌入する。前壁にフックブラケットと補強板を溶接し、後壁にフックブラケットを溶接する。後壁側の溶接部15の接合強度は、衝突時に優先的に破断する程度に弱く設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンパーリインフォースに取り付けたフックブラケットの取付部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に取り付けられたフックは自動車を牽引するときや船舶に乗せたときの固定用に使用され、前方及び/又は下方に向け大きい引張荷重が掛かるため、下記特許文献1〜3に記載されているように、一般に高い剛性を持つサイドメンバー又はサブフレームに固定されている。しかし、サイドメンバー及びサブフレーム近傍は各種艤装品が配置されて設計の自由度が少なく、また、車体の下方に延出するフックはデザイン的にも劣るとの考えから、フックを別の場所に設置したいという要望がある。
これに対し、例えば下記特許文献4では、バンパーリインフォースを前後方向に貫通するフックブラケットを、バンパーリインフォースとバンパーステイの結合部に固定し、下記特許文献5,6では、バンパーリインフォースを前後方向に貫通するようにフックを、バンパーリインフォースとバンパーステイの結合部に固定している。
【0003】
一方、車体の軽量化のため、矩形断面のアルミニウム合金押出材がバンパーリインフォースとして用られるようになると、矩形断面の高い剛性を利用して、バンパーリインフォースにフックブラケットを固定し、該バンパーリインフォースによりフックに掛かる引張荷重を支持する方式が提案された。例えば下記特許文献7では、バンパーリインフォースの前後壁に開けた穴に雌ねじを形成し、フックブラケットの外周に雄ネジを形成し、両者を螺合して固定し、下記特許文献8では、フック取り付けナットを固定したフックブラケットをバンパーリインフォースの前壁の背面にボルト止めで固定している。なお、下記特許文献7、8の方式において、フックはフックブラケットに対して着脱自在で、牽引時にのみフックをフックブラケットに螺合して装着する。
【0004】
【特許文献1】特開2003−40141号公報
【特許文献2】特開2001−301666号公報
【特許文献3】特開2000−142486号公報
【特許文献4】特開2004−90709号公報
【特許文献5】特開2003−2136号公報
【特許文献6】特開2002−53066号公報
【特許文献7】特開2000−296742号公報
【特許文献8】特開2001−63498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献7に記載されたフックブラケットの取付部構造の場合、フックブラケットがバンパーリインフォースの前後壁に固定されていることから、衝突時に前記取付部構造の箇所に衝突荷重が掛かってもバンパーリインフォースが圧壊せず、エネルギー吸収が不十分となり、かつ衝突荷重がフックブラケットを介して直接バンパーステイに伝達されるという不具合がある。一方、前記特許文献8に記載された取付部構造の場合、フックブラケットがバンパーリインフォースの前壁にのみ固定されていることから、矩形断面の持つ高い剛性をフックブラケットの支持に十分活用できず、特にタイダウンを行うときの引張荷重によりフックブラケット及びフックが下方に傾斜し、フックがバンパーフェイシャの開口の縁に接触して傷つける可能性があり、またブラケット構造が複雑(多くの部品が必要)である。
【0006】
本発明はこのような従来のフックブラケットの取付部構造の問題点に鑑みてなされたもので、矩形断面のアルミニウム合金押出材からなるバンパーリインフォースにフックブラケットを固定する場合において、衝突時にフックブラケットの箇所に衝突荷重が掛かった場合でもバンパーリインフォースが圧壊してエネルギー吸収が行われ、かつ矩形断面の持つ高い剛性をフックブラケットの支持に十分活用できるようにし、さらにそれを簡単な構造で実現できるフックブラケットの取付部構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、矩形断面を有するアルミニウム合金押出材からなるバンパーリインフォースと雌ねじが軸方向に形成されたフックブラケットの取付部構造において、バンパーリインフォースの前壁及び後壁にフックブラケットを嵌入する穴が形成され、フックブラケットの前端近傍につばが形成され、フックブラケットが後方側から前記両穴に嵌入し、前記つばが前壁の穴の周縁に背面側から当接し、さらに、フックブラケットが前壁の穴の周縁に溶接固定されていることを特徴とする。本発明において、フックブラケットの前端近傍のつばの代わりに、又は該前端近傍のつばに加えて、フックブラケットの後端につばを形成し、そのつばを後壁の穴の周縁に背面側から当接させてもよい。
【0008】
この取付部構造によれば、衝突時にフックブラケットの箇所に大きい衝突荷重が掛かってバンパーリインフォースが圧壊(前壁が後退)した場合、その圧壊に合わせてフックブラケットが後壁の穴から後方へ抜け出し、圧壊が阻害されることなく進行する。また、衝突荷重がフックブラケットを介して直接バンパーステイに伝達されることもない。一方、牽引時には、前方への引張荷重に対してはフックブラケットがバンパーリインフォースの前壁又は/及び後壁に支持され、タイダウン時の下向きの引張荷重に対しては、フックブラケットがバンパーリインフォースの前後両壁の穴の縁に支持される。なお、フックブラケットとバンパーリインフォースの前壁を溶接固定したことにより、取付部構造が維持される。例えばごく軽衝突時(バンパーリインフォースの変形を伴わない程度の衝突)にフックブラケットがバンパーリインフォースから外れるなど、取付部構造が壊されるのが防止される。また、フックブラケットの後端に形成されたつばは、牽引時又はタイダウン時の荷重が該フックブラケットとバンパーリインフォースに掛かったとき、バンパーリインフォースの前壁が前方側に弾性変形し、それに伴ってフックブラケットの後端がバンパーリインフォースの後壁から前方側に抜け出すのを防止する機能を有する。
【0009】
前記取付部構造において、前記フックブラケットは例えばアルミニウム合金押出材からなる。前記バンパーリインフォースの車幅方向両端に車体側に後退する傾斜部が形成され、該傾斜部に前記フックブラケットが取り付けられる場合、アルミニウム合金押出材からなるフックブラケットのつばは、該フックブラケットの左右に配置されることになる。
前記フックブラケットはバンパーリインフォースの後壁の穴の周縁に溶接固定されることが望ましく、その場合、後壁側の接合強度は前壁側より小さくなるように設定される。後壁に溶接固定することにより、バンパーリインフォースに対するフックブラケットの固定がより確実となり、また、フックブラケットの後端に形成したつばの代わりに(つばとの併用も可)、牽引時又はタイダウン時にフックブラケットの後端がバンパーリインフォースの後壁から前方側に抜け出すのを防止することができる。ここで後壁側の接合強度を小さく設定したのは、衝突時にフックブラケットの箇所に所定以上の衝突荷重が掛かったとき、後壁側の溶接部が優先的に破断してフックブラケットとバンパーリインフォースの後壁との固定が解除され、バンパーリインフォースが圧壊(前壁が後退)し得るようにするためである。
【0010】
本発明の取付部構造において、前記バンパーリインフォースの内部に、前方側上方のコーナー部と後壁側を斜めに連結する補強板を設置することができる。その場合、補強板の後端部はフックブラケットの上で後壁の穴に嵌入している必要がある。この補強板はバンパーリインフォース内でトラス状に配置されているので、タイダウン時の下向きの引張荷重を受けたとき、バンパーリインフォースが矩形断面から菱形断面に変形するのを防止し、フックブラケット及びフックが下向きに傾斜して、フックがバンパーフェイシャの開口の縁に接触するのを防止できる。また、補強板の後端部がフックブラケットの上で後壁の穴に嵌入していることにより、衝突時にフックブラケットの箇所に大きい衝突荷重が掛かった場合に、バンパーリインフォースの圧壊(前壁の後退)に伴って、補強板が前記後壁の穴を押し広げて後退し、前記バンパーリインフォースの圧壊を阻害しない。
【0011】
また、前記補強板は、下記の具体的形態を備えていることが望ましい。
(1)バンパーリインフォースの前方側上方のコーナー部から前壁に沿いフックブラケットの上面に達する鉛直部を有する。これにより、バンパーリインフォース内への補強板の配置が容易となり、かつバンパーリインフォース内において補強板の配置が安定する。
(2)前記鉛直部の下端からさらに前方に延びる嵌入部を有し、その嵌入部はフックブラケットの上でバンパーリインフォースの前壁の穴に嵌入し、その前端がフックブラケットとともに前記前壁の穴の周縁に溶接固定される。
(3)補強板の後端に上向きのつばが形成され、そのつばが前記後壁の穴の周縁に背面側から当接している。このつばは、前記取付部構造の組み付け時に、補強板の位置決めに役立つ。
【0012】
本発明において、フックブラケットを配置する位置は、衝突時にバンパーリインフォースが圧壊(前壁が後退)したとき、その圧壊に合わせてフックブラケットが後壁の穴から後方へ抜け出すのを妨げる部材が後方側に存在しない位置にする必要がある。例えば、バンパーリインフォースのバンパーステイ(サイドメンバの前端に直接固定される場合は該サイドメンバ)への取付部の内側、すなわち後方へ抜け出すフックブラケットがバンパーステイの取付用フランジや軸部に当たらずに、該バンパーステイの中空軸部の内部に入り得る位置に設定されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、矩形断面を有するアルミニウム合金押出材からなるバンパーリインフォースと雌ねじが軸方向に形成されたフックブラケットの取付部構造において、衝突時にフックブラケットの箇所に衝突荷重が掛かった場合に、バンパーリインフォースが圧壊(前壁が後退)してエネルギー吸収が行われ、かつ矩形断面の持つ高い剛性をフックブラケットの支持に活用することができる。また、その機能を簡単な構造で実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図1〜図11を参照して、本発明に係るフックブラケットの取付部構造について具体的に説明する。
図1に示すフックブラケット1は、アルミニウム合金押出材を押出方向に垂直な面内で所定長さに切断したものであり、軸方向に沿って均一な幅及び厚みを有する軸部2と、前方側の左右一対のつば3,4及び後方側の左右一対のつば5,6からなる。軸部2の中心には軸方向に穴が形成され、そこに後述するフックの雄ネジが螺合する雌ねじ7が形成されている。前方側のつば3,4は、軸部2の前端近傍において軸方向に垂直な面に対し傾斜した面に沿って形成され、後方側のつば5,6は軸部の後端において同じく傾斜した面に沿って形成されている。つば3〜6の傾斜は、図2に示すように、バンパーリインフォース9の端部傾斜部の傾斜と一致する。
【0015】
バンパーリインフォース9は、前壁9a、後壁9b、上壁9c及び下壁9dからなる口形の矩形断面を有するアルミニウム合金押出材を所定長さに切断し、車幅方向両端部を車体側に屈曲成形したもので、この端部傾斜部(この例では左側の傾斜部)に、前記フックブラケット1が軸部2の軸方向を車体前後方向に向け、かつつば3〜6を左右方向に向けて設置される。
フックブラケット1の設置箇所には、バンパーリインフォース9の前壁9aと後壁9bに、フックブラケット1が嵌入する矩形の穴11,12が形成されている。穴11,12は前壁9aと後壁9bの面に垂直に開けられ、図2,3に示されるように、穴11は上下左右の幅ともフックブラケット1の軸部2がちょうど嵌入し得る大きさ(すなわち軸部2の断面サイズよりやや大きめ)に開けられ、穴12は上下の幅が前記軸部2がちょうど嵌入し得る大きさ、左右の幅が前方のつば3,4が通過できるように大きめに開けられ、その分つば6が長く形成されている。
【0016】
フックブラケット1は、穴11,12に後方側から嵌入し、バンパーリインフォース9の前壁9a側では、つば3,4は穴11の左右の周縁に背面側から当接し、つば5,6は穴12の左右の周縁に背面側から当接し、軸部2はつば3,4の前方側において穴11内に支持され、さらにその先が前壁6aから突出し(突出部2a)、後壁9b側では、つば5,6の前方側において穴12内に支持され、さらに後端が後壁9bから突出している(突出部2b)。
また、図3〜5に示すように、前壁9aの前面において、軸部2の突出部2aの上下面が穴11の周縁で前壁9aに溶接固定され(溶接部13,14)、後壁9bの背面において、軸部2の突出部2bの下面が穴12の周縁で後壁9bに溶接固定されている(溶接部15)。ただし、後壁9b側の溶接部15の接合強度は、該溶接部15が衝突時に優先的に破断するように、前壁9a側の溶接部13,14の接合強度より相当程度弱く設定されている。具体的には、溶接線長を短くする、又はのど厚の面積(溶接部の面積)を小さくするなどにより、バンパーステイの圧壊強度(サイドメンバの前端に直接固定される場合は該サイドメンバの圧壊強度)より小さい破断荷重になるように調整する。
バンパーリインフォース9に対するフックブラケット1の取付位置は、図2に示すように、バンパーステイ16への取付部の内側に設定されている。この取付位置は、バンパーリインフォース9が中空のバンパーステイ16に支持されて剛性が高い。また、衝突時に後退したフックブラケット1がバンパーステイ16内に収まるため安全でもある。
【0017】
図6に示すように、フックブラケット1に対して、先端に雄ネジが形成された牽引用のフック17が着脱自在であり、フックブラケット1を車両の牽引に利用したり、船舶等に乗せたときのタイダウンに利用する場合、フック17をバンパーフェイシャ18に形成された穴19を通して差し入れ、フックブラケット1に螺合固定する。
一方、衝突時(フック17は固定されていない)、フックブラケット1に所定以上の衝突荷重が掛かると、直ちに後壁9b側の溶接部15が破断し、これによりバンパーリインフォース9の圧壊が許容され(前壁9aが後退可能となり)、その圧壊に伴ってフックブラケット1が後壁9bの穴12から抜け出してバンパーステイ16の中空内部に後退し、バンパーリインフォース9の圧壊が阻害されることなく進行する。
【0018】
なお、上記の例では、フックブラケットがアルミニウム合金押出材からなり、該フックブラケットをバンパーリインフォースの傾斜部に取り付けるようにしたため、つばが必然的に軸部の左右に配置されているが、このフックブラケットが例えば鋳造材であったり、バンパーリインフォースが傾斜部を有さないタイプである場合、つばの配置は軸部の左右に限定されない。
【0019】
ところで、タイダウン時にはフック17に斜め下方の荷重が掛かり、この荷重により、図6に仮想線にて示すように、バンパーリインフォース9がその剛性に応じて矩形状から平行四辺形状に変形し、フックブラケット1が傾斜し、フック17が傾斜する。そこで、もしバンパーフェイシャ18の穴19の大きさを、例えばデザイン上の制約から余り大きく設定できない場合、タイダウン時にフック17が穴19の縁に当たって、バンパーフェイシャ18を傷つけるおそれがある。
図8〜11に示す取付部構造は、図7に示す補強板21を付加することにより、タイダウン時のフック17の傾斜が大きくならないようにしたものである。なお、図8〜11において、図2〜5に示す取付部構造と実質的に同じ部材及び箇所には同じ番号を付与している。
【0020】
補強板21はアルミニウム合金押出材からなり、図7に示すように、傾斜したトラス構成部21aと、トラス構成部21aの前端と鋭角につながった鉛直部21b、トラス構成部21aの後端が後方に延長した嵌入部21c、さらにその先に形成された上向きのつば21d、及び鉛直部21bの下端が前方に延長した嵌入部21eからなり、全体がほぼ均一な厚さを有する。幅方向の一端は押出方向に垂直な面内で切断され、他端は前記垂直な面に対し傾斜した面内で切断され、嵌入部21e側の幅(前方側の幅)が狭く、嵌入部21c側の幅(後方側の幅)が広く、平面視略台形をなしている。図8に示すように、押出方向に垂直な面に対し傾斜した面内で切断された側(傾斜側面21f)を車幅方向外側に位置させる。なお、前記垂直な面に対する前記傾斜した面の傾斜角度は、軸部2の軸方向に垂直な面に対するつば3〜6の傾斜角度と同じに設定されている。
【0021】
図8,9に示すように、バンパーリインフォース9の前壁9aと後壁9bに、フックブラケット1及び補強板21が嵌入する矩形の穴11,12が形成されている。穴11は、上下の幅がフックブラケット1の軸部2と補強板21の嵌入部21eがちょうど嵌入し得る幅(すなわち軸部2の上下方向幅と嵌入部21eの厚さを加えたものよりやや大きめ)、左右の幅がフックブラケット1の軸部2がちょうど嵌入し得る幅に形成されている。なお、補強板21の嵌入部21eの幅は軸部2の幅(傾斜したつば3,4の方向に沿った幅)にほぼ一致させている。穴12は、上下の幅がフックブラケット1の軸部2と補強板21の嵌入部21cがちょうど嵌入し得る幅(すなわち軸部2の上下方向幅と嵌入部21cの厚さを加えたものよりやや大きめ)、左右の幅がつば3,4が通過できるように大きめに開けられている。
【0022】
図8,9に示すように、補強板21は穴11,12に後方側から嵌入し、その下方位置にフックブラケット1が嵌入する。補強板21は、車幅方向外側に位置する傾斜側面21fが車体前後方向を向くように、バンパーリインフォース9内に配置され、フックブラケット1は、先に図2,3を用いて説明したと同様の形態でバンパーリインフォース9内に配置される。このとき、補強板21のトラス構成部21aの上端、すなわち前記トラス構成部21aと鉛直部21bの交わるコーナーが、バンパーリインフォース9の前方側上方のコーナー部内面に当接する。鉛直部21bはバンパーリインフォース9の前壁9aの背面に沿ってその下端がフックブラケット1の軸部2に達し、嵌入部21eは軸部2の上で穴11に嵌入し、該穴11の外側にわずか突出している。また、トラス構成部21aの下端は穴12に臨み、嵌入部21cがフックブラケット1の軸部2の上で穴12に嵌入している。つば21dが穴12の周縁(上側)に背面側から当接している。
【0023】
また、図9〜11に示すように、前壁9aの前面において、軸部2の突出部2aの上面と嵌入部21eの突出端が前壁9aに一緒に溶接固定され(溶接部23)、突出部2aの下面と前壁6aが溶接固定され(溶接部14)、後壁9bの背面において、軸部2の突出部2bの下面が後壁9bに溶接固定されている(溶接部15)。この場合も、後壁9b側の溶接部15の接合強度は、前壁9a側の溶接部23,14の接合強度より、相当程度弱く設定されている。
【0024】
この取付部構造では、補強板21のトラス構成部21aが、バンパーリインフォース9内において、該バンパーリインフォース9の前方側上方のコーナー部と後壁9b側を斜めに連結し、そこに一種のトラス構造が構成されて強化されている。そのため、タイダウン時の下向きの引張荷重を受けたとき、バンパーリインフォース9が矩形断面から菱形断面に変形するのが防止され、フックブラケット1及びフック17が下向きに余り傾斜せず、フック17がバンパーフェイシャ18の開口19の縁に接触するのが防止できる。
また、衝突時にフックブラケット1に所定以上の衝突荷重が掛かったとき、後壁9b側の溶接部15が破断し、続いてバンパーリインフォース9が圧壊すると、補強板21には後退する前壁9bを介して後方へ圧縮荷重が掛かり、その圧縮荷重により、トラス構成部21aが後壁9bの穴12を押し広げながら後退する。従って、この補強板21によりバンパーリインフォース9の圧壊が阻害されることはない。なお、嵌入部21cが穴12内に嵌入しているため、トラス構成部21aは前記嵌入部21cに誘導されたかたちで穴12内に入り込みやすい。
そのほか、この取付部構造は、図2,3で説明した取付部構造が備える全ての作用効果を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るフックブラケットの背面図(a)及び平面図(b)である。
【図2】本発明に係るフックブラケットの取付部構造を示す平面図(一部断面)である。
【図3】図2のA−A部断面図である。
【図4】図2の要部背面図である。
【図5】図2の要部正面図である。
【図6】本発明に係るフックブラケットの取付部構造に対しフックを取り付けたときの様子を説明する断面図である。
【図7】本発明に係る補強板の平面図(a)及び側面図である。
【図8】本発明に係る別のフックブラケットの取付部構造を示す平面図(一部断面)である。
【図9】図8のB−B部断面図である。
【図10】図8の要部背面図である。
【図11】図8の要部正面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 フックブラケット
2 軸部
3〜6 つば
9 バンパーリインフォース
11,12 穴
13〜15,23 溶接部
16 バンパーステイ
17 フック
18 バンパーフェイシャ
19 穴
21 補強板
21a トラス構成部
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンパーリインフォースに取り付けたフックブラケットの取付部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に取り付けられたフックは自動車を牽引するときや船舶に乗せたときの固定用に使用され、前方及び/又は下方に向け大きい引張荷重が掛かるため、下記特許文献1〜3に記載されているように、一般に高い剛性を持つサイドメンバー又はサブフレームに固定されている。しかし、サイドメンバー及びサブフレーム近傍は各種艤装品が配置されて設計の自由度が少なく、また、車体の下方に延出するフックはデザイン的にも劣るとの考えから、フックを別の場所に設置したいという要望がある。
これに対し、例えば下記特許文献4では、バンパーリインフォースを前後方向に貫通するフックブラケットを、バンパーリインフォースとバンパーステイの結合部に固定し、下記特許文献5,6では、バンパーリインフォースを前後方向に貫通するようにフックを、バンパーリインフォースとバンパーステイの結合部に固定している。
【0003】
一方、車体の軽量化のため、矩形断面のアルミニウム合金押出材がバンパーリインフォースとして用られるようになると、矩形断面の高い剛性を利用して、バンパーリインフォースにフックブラケットを固定し、該バンパーリインフォースによりフックに掛かる引張荷重を支持する方式が提案された。例えば下記特許文献7では、バンパーリインフォースの前後壁に開けた穴に雌ねじを形成し、フックブラケットの外周に雄ネジを形成し、両者を螺合して固定し、下記特許文献8では、フック取り付けナットを固定したフックブラケットをバンパーリインフォースの前壁の背面にボルト止めで固定している。なお、下記特許文献7、8の方式において、フックはフックブラケットに対して着脱自在で、牽引時にのみフックをフックブラケットに螺合して装着する。
【0004】
【特許文献1】特開2003−40141号公報
【特許文献2】特開2001−301666号公報
【特許文献3】特開2000−142486号公報
【特許文献4】特開2004−90709号公報
【特許文献5】特開2003−2136号公報
【特許文献6】特開2002−53066号公報
【特許文献7】特開2000−296742号公報
【特許文献8】特開2001−63498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献7に記載されたフックブラケットの取付部構造の場合、フックブラケットがバンパーリインフォースの前後壁に固定されていることから、衝突時に前記取付部構造の箇所に衝突荷重が掛かってもバンパーリインフォースが圧壊せず、エネルギー吸収が不十分となり、かつ衝突荷重がフックブラケットを介して直接バンパーステイに伝達されるという不具合がある。一方、前記特許文献8に記載された取付部構造の場合、フックブラケットがバンパーリインフォースの前壁にのみ固定されていることから、矩形断面の持つ高い剛性をフックブラケットの支持に十分活用できず、特にタイダウンを行うときの引張荷重によりフックブラケット及びフックが下方に傾斜し、フックがバンパーフェイシャの開口の縁に接触して傷つける可能性があり、またブラケット構造が複雑(多くの部品が必要)である。
【0006】
本発明はこのような従来のフックブラケットの取付部構造の問題点に鑑みてなされたもので、矩形断面のアルミニウム合金押出材からなるバンパーリインフォースにフックブラケットを固定する場合において、衝突時にフックブラケットの箇所に衝突荷重が掛かった場合でもバンパーリインフォースが圧壊してエネルギー吸収が行われ、かつ矩形断面の持つ高い剛性をフックブラケットの支持に十分活用できるようにし、さらにそれを簡単な構造で実現できるフックブラケットの取付部構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、矩形断面を有するアルミニウム合金押出材からなるバンパーリインフォースと雌ねじが軸方向に形成されたフックブラケットの取付部構造において、バンパーリインフォースの前壁及び後壁にフックブラケットを嵌入する穴が形成され、フックブラケットの前端近傍につばが形成され、フックブラケットが後方側から前記両穴に嵌入し、前記つばが前壁の穴の周縁に背面側から当接し、さらに、フックブラケットが前壁の穴の周縁に溶接固定されていることを特徴とする。本発明において、フックブラケットの前端近傍のつばの代わりに、又は該前端近傍のつばに加えて、フックブラケットの後端につばを形成し、そのつばを後壁の穴の周縁に背面側から当接させてもよい。
【0008】
この取付部構造によれば、衝突時にフックブラケットの箇所に大きい衝突荷重が掛かってバンパーリインフォースが圧壊(前壁が後退)した場合、その圧壊に合わせてフックブラケットが後壁の穴から後方へ抜け出し、圧壊が阻害されることなく進行する。また、衝突荷重がフックブラケットを介して直接バンパーステイに伝達されることもない。一方、牽引時には、前方への引張荷重に対してはフックブラケットがバンパーリインフォースの前壁又は/及び後壁に支持され、タイダウン時の下向きの引張荷重に対しては、フックブラケットがバンパーリインフォースの前後両壁の穴の縁に支持される。なお、フックブラケットとバンパーリインフォースの前壁を溶接固定したことにより、取付部構造が維持される。例えばごく軽衝突時(バンパーリインフォースの変形を伴わない程度の衝突)にフックブラケットがバンパーリインフォースから外れるなど、取付部構造が壊されるのが防止される。また、フックブラケットの後端に形成されたつばは、牽引時又はタイダウン時の荷重が該フックブラケットとバンパーリインフォースに掛かったとき、バンパーリインフォースの前壁が前方側に弾性変形し、それに伴ってフックブラケットの後端がバンパーリインフォースの後壁から前方側に抜け出すのを防止する機能を有する。
【0009】
前記取付部構造において、前記フックブラケットは例えばアルミニウム合金押出材からなる。前記バンパーリインフォースの車幅方向両端に車体側に後退する傾斜部が形成され、該傾斜部に前記フックブラケットが取り付けられる場合、アルミニウム合金押出材からなるフックブラケットのつばは、該フックブラケットの左右に配置されることになる。
前記フックブラケットはバンパーリインフォースの後壁の穴の周縁に溶接固定されることが望ましく、その場合、後壁側の接合強度は前壁側より小さくなるように設定される。後壁に溶接固定することにより、バンパーリインフォースに対するフックブラケットの固定がより確実となり、また、フックブラケットの後端に形成したつばの代わりに(つばとの併用も可)、牽引時又はタイダウン時にフックブラケットの後端がバンパーリインフォースの後壁から前方側に抜け出すのを防止することができる。ここで後壁側の接合強度を小さく設定したのは、衝突時にフックブラケットの箇所に所定以上の衝突荷重が掛かったとき、後壁側の溶接部が優先的に破断してフックブラケットとバンパーリインフォースの後壁との固定が解除され、バンパーリインフォースが圧壊(前壁が後退)し得るようにするためである。
【0010】
本発明の取付部構造において、前記バンパーリインフォースの内部に、前方側上方のコーナー部と後壁側を斜めに連結する補強板を設置することができる。その場合、補強板の後端部はフックブラケットの上で後壁の穴に嵌入している必要がある。この補強板はバンパーリインフォース内でトラス状に配置されているので、タイダウン時の下向きの引張荷重を受けたとき、バンパーリインフォースが矩形断面から菱形断面に変形するのを防止し、フックブラケット及びフックが下向きに傾斜して、フックがバンパーフェイシャの開口の縁に接触するのを防止できる。また、補強板の後端部がフックブラケットの上で後壁の穴に嵌入していることにより、衝突時にフックブラケットの箇所に大きい衝突荷重が掛かった場合に、バンパーリインフォースの圧壊(前壁の後退)に伴って、補強板が前記後壁の穴を押し広げて後退し、前記バンパーリインフォースの圧壊を阻害しない。
【0011】
また、前記補強板は、下記の具体的形態を備えていることが望ましい。
(1)バンパーリインフォースの前方側上方のコーナー部から前壁に沿いフックブラケットの上面に達する鉛直部を有する。これにより、バンパーリインフォース内への補強板の配置が容易となり、かつバンパーリインフォース内において補強板の配置が安定する。
(2)前記鉛直部の下端からさらに前方に延びる嵌入部を有し、その嵌入部はフックブラケットの上でバンパーリインフォースの前壁の穴に嵌入し、その前端がフックブラケットとともに前記前壁の穴の周縁に溶接固定される。
(3)補強板の後端に上向きのつばが形成され、そのつばが前記後壁の穴の周縁に背面側から当接している。このつばは、前記取付部構造の組み付け時に、補強板の位置決めに役立つ。
【0012】
本発明において、フックブラケットを配置する位置は、衝突時にバンパーリインフォースが圧壊(前壁が後退)したとき、その圧壊に合わせてフックブラケットが後壁の穴から後方へ抜け出すのを妨げる部材が後方側に存在しない位置にする必要がある。例えば、バンパーリインフォースのバンパーステイ(サイドメンバの前端に直接固定される場合は該サイドメンバ)への取付部の内側、すなわち後方へ抜け出すフックブラケットがバンパーステイの取付用フランジや軸部に当たらずに、該バンパーステイの中空軸部の内部に入り得る位置に設定されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、矩形断面を有するアルミニウム合金押出材からなるバンパーリインフォースと雌ねじが軸方向に形成されたフックブラケットの取付部構造において、衝突時にフックブラケットの箇所に衝突荷重が掛かった場合に、バンパーリインフォースが圧壊(前壁が後退)してエネルギー吸収が行われ、かつ矩形断面の持つ高い剛性をフックブラケットの支持に活用することができる。また、その機能を簡単な構造で実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図1〜図11を参照して、本発明に係るフックブラケットの取付部構造について具体的に説明する。
図1に示すフックブラケット1は、アルミニウム合金押出材を押出方向に垂直な面内で所定長さに切断したものであり、軸方向に沿って均一な幅及び厚みを有する軸部2と、前方側の左右一対のつば3,4及び後方側の左右一対のつば5,6からなる。軸部2の中心には軸方向に穴が形成され、そこに後述するフックの雄ネジが螺合する雌ねじ7が形成されている。前方側のつば3,4は、軸部2の前端近傍において軸方向に垂直な面に対し傾斜した面に沿って形成され、後方側のつば5,6は軸部の後端において同じく傾斜した面に沿って形成されている。つば3〜6の傾斜は、図2に示すように、バンパーリインフォース9の端部傾斜部の傾斜と一致する。
【0015】
バンパーリインフォース9は、前壁9a、後壁9b、上壁9c及び下壁9dからなる口形の矩形断面を有するアルミニウム合金押出材を所定長さに切断し、車幅方向両端部を車体側に屈曲成形したもので、この端部傾斜部(この例では左側の傾斜部)に、前記フックブラケット1が軸部2の軸方向を車体前後方向に向け、かつつば3〜6を左右方向に向けて設置される。
フックブラケット1の設置箇所には、バンパーリインフォース9の前壁9aと後壁9bに、フックブラケット1が嵌入する矩形の穴11,12が形成されている。穴11,12は前壁9aと後壁9bの面に垂直に開けられ、図2,3に示されるように、穴11は上下左右の幅ともフックブラケット1の軸部2がちょうど嵌入し得る大きさ(すなわち軸部2の断面サイズよりやや大きめ)に開けられ、穴12は上下の幅が前記軸部2がちょうど嵌入し得る大きさ、左右の幅が前方のつば3,4が通過できるように大きめに開けられ、その分つば6が長く形成されている。
【0016】
フックブラケット1は、穴11,12に後方側から嵌入し、バンパーリインフォース9の前壁9a側では、つば3,4は穴11の左右の周縁に背面側から当接し、つば5,6は穴12の左右の周縁に背面側から当接し、軸部2はつば3,4の前方側において穴11内に支持され、さらにその先が前壁6aから突出し(突出部2a)、後壁9b側では、つば5,6の前方側において穴12内に支持され、さらに後端が後壁9bから突出している(突出部2b)。
また、図3〜5に示すように、前壁9aの前面において、軸部2の突出部2aの上下面が穴11の周縁で前壁9aに溶接固定され(溶接部13,14)、後壁9bの背面において、軸部2の突出部2bの下面が穴12の周縁で後壁9bに溶接固定されている(溶接部15)。ただし、後壁9b側の溶接部15の接合強度は、該溶接部15が衝突時に優先的に破断するように、前壁9a側の溶接部13,14の接合強度より相当程度弱く設定されている。具体的には、溶接線長を短くする、又はのど厚の面積(溶接部の面積)を小さくするなどにより、バンパーステイの圧壊強度(サイドメンバの前端に直接固定される場合は該サイドメンバの圧壊強度)より小さい破断荷重になるように調整する。
バンパーリインフォース9に対するフックブラケット1の取付位置は、図2に示すように、バンパーステイ16への取付部の内側に設定されている。この取付位置は、バンパーリインフォース9が中空のバンパーステイ16に支持されて剛性が高い。また、衝突時に後退したフックブラケット1がバンパーステイ16内に収まるため安全でもある。
【0017】
図6に示すように、フックブラケット1に対して、先端に雄ネジが形成された牽引用のフック17が着脱自在であり、フックブラケット1を車両の牽引に利用したり、船舶等に乗せたときのタイダウンに利用する場合、フック17をバンパーフェイシャ18に形成された穴19を通して差し入れ、フックブラケット1に螺合固定する。
一方、衝突時(フック17は固定されていない)、フックブラケット1に所定以上の衝突荷重が掛かると、直ちに後壁9b側の溶接部15が破断し、これによりバンパーリインフォース9の圧壊が許容され(前壁9aが後退可能となり)、その圧壊に伴ってフックブラケット1が後壁9bの穴12から抜け出してバンパーステイ16の中空内部に後退し、バンパーリインフォース9の圧壊が阻害されることなく進行する。
【0018】
なお、上記の例では、フックブラケットがアルミニウム合金押出材からなり、該フックブラケットをバンパーリインフォースの傾斜部に取り付けるようにしたため、つばが必然的に軸部の左右に配置されているが、このフックブラケットが例えば鋳造材であったり、バンパーリインフォースが傾斜部を有さないタイプである場合、つばの配置は軸部の左右に限定されない。
【0019】
ところで、タイダウン時にはフック17に斜め下方の荷重が掛かり、この荷重により、図6に仮想線にて示すように、バンパーリインフォース9がその剛性に応じて矩形状から平行四辺形状に変形し、フックブラケット1が傾斜し、フック17が傾斜する。そこで、もしバンパーフェイシャ18の穴19の大きさを、例えばデザイン上の制約から余り大きく設定できない場合、タイダウン時にフック17が穴19の縁に当たって、バンパーフェイシャ18を傷つけるおそれがある。
図8〜11に示す取付部構造は、図7に示す補強板21を付加することにより、タイダウン時のフック17の傾斜が大きくならないようにしたものである。なお、図8〜11において、図2〜5に示す取付部構造と実質的に同じ部材及び箇所には同じ番号を付与している。
【0020】
補強板21はアルミニウム合金押出材からなり、図7に示すように、傾斜したトラス構成部21aと、トラス構成部21aの前端と鋭角につながった鉛直部21b、トラス構成部21aの後端が後方に延長した嵌入部21c、さらにその先に形成された上向きのつば21d、及び鉛直部21bの下端が前方に延長した嵌入部21eからなり、全体がほぼ均一な厚さを有する。幅方向の一端は押出方向に垂直な面内で切断され、他端は前記垂直な面に対し傾斜した面内で切断され、嵌入部21e側の幅(前方側の幅)が狭く、嵌入部21c側の幅(後方側の幅)が広く、平面視略台形をなしている。図8に示すように、押出方向に垂直な面に対し傾斜した面内で切断された側(傾斜側面21f)を車幅方向外側に位置させる。なお、前記垂直な面に対する前記傾斜した面の傾斜角度は、軸部2の軸方向に垂直な面に対するつば3〜6の傾斜角度と同じに設定されている。
【0021】
図8,9に示すように、バンパーリインフォース9の前壁9aと後壁9bに、フックブラケット1及び補強板21が嵌入する矩形の穴11,12が形成されている。穴11は、上下の幅がフックブラケット1の軸部2と補強板21の嵌入部21eがちょうど嵌入し得る幅(すなわち軸部2の上下方向幅と嵌入部21eの厚さを加えたものよりやや大きめ)、左右の幅がフックブラケット1の軸部2がちょうど嵌入し得る幅に形成されている。なお、補強板21の嵌入部21eの幅は軸部2の幅(傾斜したつば3,4の方向に沿った幅)にほぼ一致させている。穴12は、上下の幅がフックブラケット1の軸部2と補強板21の嵌入部21cがちょうど嵌入し得る幅(すなわち軸部2の上下方向幅と嵌入部21cの厚さを加えたものよりやや大きめ)、左右の幅がつば3,4が通過できるように大きめに開けられている。
【0022】
図8,9に示すように、補強板21は穴11,12に後方側から嵌入し、その下方位置にフックブラケット1が嵌入する。補強板21は、車幅方向外側に位置する傾斜側面21fが車体前後方向を向くように、バンパーリインフォース9内に配置され、フックブラケット1は、先に図2,3を用いて説明したと同様の形態でバンパーリインフォース9内に配置される。このとき、補強板21のトラス構成部21aの上端、すなわち前記トラス構成部21aと鉛直部21bの交わるコーナーが、バンパーリインフォース9の前方側上方のコーナー部内面に当接する。鉛直部21bはバンパーリインフォース9の前壁9aの背面に沿ってその下端がフックブラケット1の軸部2に達し、嵌入部21eは軸部2の上で穴11に嵌入し、該穴11の外側にわずか突出している。また、トラス構成部21aの下端は穴12に臨み、嵌入部21cがフックブラケット1の軸部2の上で穴12に嵌入している。つば21dが穴12の周縁(上側)に背面側から当接している。
【0023】
また、図9〜11に示すように、前壁9aの前面において、軸部2の突出部2aの上面と嵌入部21eの突出端が前壁9aに一緒に溶接固定され(溶接部23)、突出部2aの下面と前壁6aが溶接固定され(溶接部14)、後壁9bの背面において、軸部2の突出部2bの下面が後壁9bに溶接固定されている(溶接部15)。この場合も、後壁9b側の溶接部15の接合強度は、前壁9a側の溶接部23,14の接合強度より、相当程度弱く設定されている。
【0024】
この取付部構造では、補強板21のトラス構成部21aが、バンパーリインフォース9内において、該バンパーリインフォース9の前方側上方のコーナー部と後壁9b側を斜めに連結し、そこに一種のトラス構造が構成されて強化されている。そのため、タイダウン時の下向きの引張荷重を受けたとき、バンパーリインフォース9が矩形断面から菱形断面に変形するのが防止され、フックブラケット1及びフック17が下向きに余り傾斜せず、フック17がバンパーフェイシャ18の開口19の縁に接触するのが防止できる。
また、衝突時にフックブラケット1に所定以上の衝突荷重が掛かったとき、後壁9b側の溶接部15が破断し、続いてバンパーリインフォース9が圧壊すると、補強板21には後退する前壁9bを介して後方へ圧縮荷重が掛かり、その圧縮荷重により、トラス構成部21aが後壁9bの穴12を押し広げながら後退する。従って、この補強板21によりバンパーリインフォース9の圧壊が阻害されることはない。なお、嵌入部21cが穴12内に嵌入しているため、トラス構成部21aは前記嵌入部21cに誘導されたかたちで穴12内に入り込みやすい。
そのほか、この取付部構造は、図2,3で説明した取付部構造が備える全ての作用効果を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るフックブラケットの背面図(a)及び平面図(b)である。
【図2】本発明に係るフックブラケットの取付部構造を示す平面図(一部断面)である。
【図3】図2のA−A部断面図である。
【図4】図2の要部背面図である。
【図5】図2の要部正面図である。
【図6】本発明に係るフックブラケットの取付部構造に対しフックを取り付けたときの様子を説明する断面図である。
【図7】本発明に係る補強板の平面図(a)及び側面図である。
【図8】本発明に係る別のフックブラケットの取付部構造を示す平面図(一部断面)である。
【図9】図8のB−B部断面図である。
【図10】図8の要部背面図である。
【図11】図8の要部正面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 フックブラケット
2 軸部
3〜6 つば
9 バンパーリインフォース
11,12 穴
13〜15,23 溶接部
16 バンパーステイ
17 フック
18 バンパーフェイシャ
19 穴
21 補強板
21a トラス構成部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形断面を有するアルミニウム合金押出材からなるバンパーリインフォースと雌ねじが軸方向に形成されたフックブラケットの取付部構造において、前記バンパーリインフォースの前壁及び後壁に前記フックブラケットが嵌入する穴が形成され、前記フックブラケットの前端近傍につばが形成され、前記フックブラケットが後方側から前記両穴に嵌入し、前記つばが前記前壁の穴の周縁に背面側から当接し、さらに、前記フックブラケットが前記前壁の穴の周縁に溶接固定されていることを特徴とするフックブラケットの取付部構造。
【請求項2】
前記フックブラケットの後端につばが形成され、そのつばが前記後壁の穴の周縁に背面側から当接していることを特徴とする請求項1に記載されたフックブラケットの取付部構造。
【請求項3】
矩形断面を有するアルミニウム合金押出材からなるバンパーリインフォースと雌ねじが軸方向に形成されたフックブラケットの取付部構造において、前記バンパーリインフォースの前壁及び後壁に前記フックブラケットが嵌入する穴が形成され、前記フックブラケットの後端につばが形成され、前記フックブラケットが後方側から前記両穴に嵌入し、前記つばが前記後壁の穴の周縁に背面側から当接し、さらに、前記フックブラケットが前記前壁の穴の周縁に溶接固定されていることを特徴とするフックブラケットの取付部構造。
【請求項4】
前記バンパーリインフォースの車幅方向両端に車体側に屈曲した傾斜部が形成され、該傾斜部に前記フックブラケットが取り付けられ、前記フックブラケットがアルミニウム合金押出材からなり、前記つばが前記フックブラケットの左右に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載されたフックブラケットの取付部構造。
【請求項5】
前記フックブラケットが前記後壁の穴の周縁に溶接固定され、その接合強度は前壁側より小さく設定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載されたフックブラケットの取付部構造。
【請求項6】
前記バンパーリインフォースの内部に、該バンパーリインフォースの前方側上方のコーナー部と後壁側を斜めに連結する補強板が設置され、該補強板の後端部は前記フックブラケットの上で前記後壁の穴に嵌入していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載されたフックブラケットの取付部構造。
【請求項7】
前記補強板は、前記コーナー部から前壁に沿い前記フックブラケットの上面に達する鉛直部を有することを特徴とする請求項6に記載されたフックブラケットの取付部構造。
【請求項8】
前記補強板は、前記鉛直部の下端からさらに前方に延びる嵌入部を有し、該嵌入部は前記フックブラケットの上で前記前壁の穴に嵌入し、その前端が前記フックブラケットとともに前記前壁の穴の周縁に溶接固定されていることを特徴とする請求項7に記載されたフックブラケットの取付部構造。
【請求項9】
前記補強板は、その後端に上向きのつばが形成され、そのつばが前記後壁の穴の周縁に背面側から当接していることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載されたフックブラケットの取付部構造。
【請求項10】
前記フックブラケットの位置が、前記バンパーリインフォースのバンパーステイへの取付部の内側に設定されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載されたフックブラケットの取付部構造。
【請求項1】
矩形断面を有するアルミニウム合金押出材からなるバンパーリインフォースと雌ねじが軸方向に形成されたフックブラケットの取付部構造において、前記バンパーリインフォースの前壁及び後壁に前記フックブラケットが嵌入する穴が形成され、前記フックブラケットの前端近傍につばが形成され、前記フックブラケットが後方側から前記両穴に嵌入し、前記つばが前記前壁の穴の周縁に背面側から当接し、さらに、前記フックブラケットが前記前壁の穴の周縁に溶接固定されていることを特徴とするフックブラケットの取付部構造。
【請求項2】
前記フックブラケットの後端につばが形成され、そのつばが前記後壁の穴の周縁に背面側から当接していることを特徴とする請求項1に記載されたフックブラケットの取付部構造。
【請求項3】
矩形断面を有するアルミニウム合金押出材からなるバンパーリインフォースと雌ねじが軸方向に形成されたフックブラケットの取付部構造において、前記バンパーリインフォースの前壁及び後壁に前記フックブラケットが嵌入する穴が形成され、前記フックブラケットの後端につばが形成され、前記フックブラケットが後方側から前記両穴に嵌入し、前記つばが前記後壁の穴の周縁に背面側から当接し、さらに、前記フックブラケットが前記前壁の穴の周縁に溶接固定されていることを特徴とするフックブラケットの取付部構造。
【請求項4】
前記バンパーリインフォースの車幅方向両端に車体側に屈曲した傾斜部が形成され、該傾斜部に前記フックブラケットが取り付けられ、前記フックブラケットがアルミニウム合金押出材からなり、前記つばが前記フックブラケットの左右に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載されたフックブラケットの取付部構造。
【請求項5】
前記フックブラケットが前記後壁の穴の周縁に溶接固定され、その接合強度は前壁側より小さく設定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載されたフックブラケットの取付部構造。
【請求項6】
前記バンパーリインフォースの内部に、該バンパーリインフォースの前方側上方のコーナー部と後壁側を斜めに連結する補強板が設置され、該補強板の後端部は前記フックブラケットの上で前記後壁の穴に嵌入していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載されたフックブラケットの取付部構造。
【請求項7】
前記補強板は、前記コーナー部から前壁に沿い前記フックブラケットの上面に達する鉛直部を有することを特徴とする請求項6に記載されたフックブラケットの取付部構造。
【請求項8】
前記補強板は、前記鉛直部の下端からさらに前方に延びる嵌入部を有し、該嵌入部は前記フックブラケットの上で前記前壁の穴に嵌入し、その前端が前記フックブラケットとともに前記前壁の穴の周縁に溶接固定されていることを特徴とする請求項7に記載されたフックブラケットの取付部構造。
【請求項9】
前記補強板は、その後端に上向きのつばが形成され、そのつばが前記後壁の穴の周縁に背面側から当接していることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載されたフックブラケットの取付部構造。
【請求項10】
前記フックブラケットの位置が、前記バンパーリインフォースのバンパーステイへの取付部の内側に設定されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載されたフックブラケットの取付部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−36158(P2006−36158A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−223084(P2004−223084)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
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