説明

フッ化スルフリル検知管、フッ化スルフリル検出装置、フッ化スルフリル検出方法

【要 約】
【課題】フッ化スルフリルを安全・確実に検出する技術を提供する。
【解決手段】
検知管本体11の内部に、アルカリ性物質とpH指示薬と水分を配置する。検知管11の内部にフッ化スルフリルを含有する試料ガスが流れると、アルカリ性物質の存在下でフッ化スルフリルが加水分解をし、生成されたフッ酸によって検知管本体11の内部がpH変化する。pH変化によってpH指示薬が変色すると、変色した部分の長さにより、試料ガス中のフッ化スルフリルの濃度が分かる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検知管の技術分野に係り、特に、フッ化スルフリルを検出する検知管に関する。
【背景技術】
【0002】
輸入・輸出が多い現在に有って、輸入品と共に産出国(生産国)由来の動物(虫)が付着してくる場合がある。
具体的な事例を挙げると、戦後軍需物質と共に「アメリカシロヒトリ」が国内に侵入し、国内繁殖が認められている。このほかには、米に害を与える「ゾウムシ」、柑橘類に打撃を与える「ミバエ」、松を枯死される「マツノザイセンチュウ」、また住宅で問題になる「シロアリ」等々、非常に多くの害虫が国内に入り込んでいる。
【0003】
このような害虫の被害を防止するために植物防疫法が制定されており、くん蒸による害虫駆除が行されている。
現在、使用されているくん蒸剤は数多く存在するが、シロアリ駆除等々でフッ化スルフリル(スルフリルフルオリド、Pyrolysis sulphuryl fluoride:以下「SF」と略す。販売元:ダウケミカル(株)、商品名:バイケーン(ダウ・アグロサイエンス・エル・エル・シーの登録商標である))が多く使用されるようになった。
【0004】
またくん蒸では、その効果を確認するため、投薬後濃度を測定しなければならない。測定器としては複数社から販売されているが(JMS社等)、検知管としては一社(DRAGER社) からHF発生管と、分解して生成したHFを測定するHF検出管の二本構成のSF 用検知管が販売されている。
【0005】
このHF発生管では、管内に酸素ガスと反応して高温になる熱源物質が配置されており、試料ガスを吸引してHF検出管の内部に試料ガスを導入したときに、試料ガス中の酸素が熱源物質と反応し、発生した熱でSFが分解され、HF(フッ化水素)が発生する。
【0006】
HF検出管の内部には、キナリザリン(quinalizarin CASNo.:81-61-8)がpH指示薬として配置されており、発生したHFとpH指示薬が化学反応し、HF検出管は、吸引した試料ガス中のSF量に応じた長さだけ桃色に変色する。
【0007】
HF + zircon/quinalizarin→Pink reaction product
SFのアルカリとの反応については、下記文献に記載されている。
【非特許文献1】”RED Sulfuryl Fluoride. September 1993”,US Environmental Protection Agency ,p17
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記のような熱分解反応を用いる場合、検知管(HF発生管)を高温にする必要があるため、やけどの危険があるばかりでなく、検知管をラミネートしているチューブが燃焼したり、爆発危険区域では着火源となる恐れもある。
また、熱分解反応が、温度、湿度(測定雰囲気)に大きく影響を受けるため、測定精度が不安定なほか、検知管を開封したら30 〜 60 秒以内に測定を開始しなければならないという制約もある。
【0009】
本発明は、上記従来技術の課題を解決し、取り扱いが安全で、安定な測定を行うことができるSF用検知管を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、少なくとも一部が透明な検知管本体と、前記検知管本体の内部には、アルカリ性物質とpH指示薬が配置され、前記検知管本体内に導入した試料ガス中に含有されるフッ化スルフリルが前記アルカリ性物質と反応し、前記検知管本体内のpH変化によって前記pH指示薬が変色するように構成されたフッ化スルフリル検知管である。
また、本発明は、前記アルカリ性物質には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又は水酸化リチウムの化合物のうち、少なくともいずれか一種の化合物が含有されたフッ化スルフリル検知管である。
また、本発明は、前記アルカリ性物質と前記pH指示薬を吸着した多孔質で粒子状の主担体を有するフッ化スルフリル検知管である。
また、本発明は、前記主担体は、アルミナ粒子、シリカゲル粒子、珪藻土粒子のうちの一種類以上の粒子を含有するフッ化スルフリル検知管である。
また、前記アルカリ性物質と前記pH指示薬が配置された前記検知管本体内の位置に水が含有されたフッ化スルフリル検知管である。
また、本発明は、前記検知管本体内で、前記試料ガスが流れる経路の前記アルカリ性物質と前記pH指示薬が配置された領域よりも上流側に二酸化炭素除去剤が配置されたフッ化スルフリル検知管である。
また、本発明は、前記二酸化炭素除去剤は、一粒当たりの表面積が前記主担体よりも小さい副担体と、前記副担体に吸着され、二酸化炭素と反応する反応物質とを有するフッ化スルフリル検知管である。
また、本発明は、前記副担体は、ガラス粒子、珪砂のうちのいずれか一種以上の粒子を含有するフッ化スルフリル検知管である。
また、本発明は、前記反応物質として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又は水酸化リチウムの化合物のうち、少なくともいずれか一種の化合物が前記副担体に吸着されたフッ化スルフリル検知管である。
また、本発明は、補助管と、前記補助管内に配置された二酸化炭素除去剤とを有し、前記補助管内に導入した試料ガス中に含有される二酸化炭素を、前記補助管内を流れる試料ガスから除去する二酸化炭素除去管と、前記二酸化炭素除去管と上記いずれかのフッ化スルフリル検知管とを接続し、前記二酸化炭素除去管内を流れた試料ガスを前記フッ化スルフリル検知管に導入させる接続管を有し、前記二酸化炭素除去管内を流れた試料ガス中のフッ化スルフリルを、前記フッ化スルフリル検知管によって測定するフッ化スルフリル検知装置である。
また、本発明は、前記二酸化炭素除去剤は、前記主担体よりも表面積が小さい副担体と、前記副担体に吸着され、二酸化炭素と反応する反応物質とを有するフッ化スルフリル検知装置である。
また、本発明は、前記反応物質として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又は水酸化リチウムの化合物のうち、少なくともいずれか一種の化合物が前記副担体に吸着されたフッ化スルフリル検知管である。
また、本発明は、試料ガスをアルカリ性物質とpH指示薬が吸着された主担体の間を流し、前記試料ガス中に含有される水分又は前記主担体に吸着された水分のいずれか一方又は両方の水分と前記試料ガス中に含有されるフッ化スルフリルと反応させ、酸性物質を生成して前記主担体表面のpHを酸性方向に移動させ、前記フッ化スルフリルの量に応じた量の前記pH指示薬を変色させるフッ化スルフリル検出方法である。
また、本発明は、前記主担体の間を流す前に、前記試料ガスを、二酸化炭素除去剤が吸着され、一粒当たりの表面積が前記主担体よりも小さい副担体の間を流すフッ化スルフリル検出方法である。
【0011】
本発明は上記のように構成されており、フッ化スルフリルが、検知管本体内にある水分や試料ガスに含有される水分と反応し、検知管本体内のpHを酸性方向に移動させる。この反応は主担体表面で発生する。
試料ガス中に二酸化炭素のような酸性ガスが含まれていると、酸性ガスによっても主担体表面のpHが酸性方向に移動する。
【0012】
試料ガス中のフッ化スルフリルの濃度が小さく、試料ガスに二酸化炭素ガスが含まれていると、二酸化炭素ガスによって主担体表面のpHが酸性方向に移動する量を無視することができず、フッ化スルフリルの濃度と二酸化炭素ガスの濃度を加算した濃度をフッ化スルフリルの濃度としてしまう。
【0013】
そこで一粒当たりの表面積が主担体よりも狭い副担体に二酸化炭素除去剤を吸着させておき、試料ガスを、アルカリ性物質とpH指示薬が吸着された主担体の間を通す前に副担体の間を通し、二酸化炭素を除去すると、主担体の変色量により、フッ化スルフリルの濃度を正確に測定することができる。
【0014】
二酸化炭素除去剤に、主担体に吸着させたアルカリ性物質と同じ物質を用いることができ、副担体の一粒当たりの面積を主担体よりも小さいものを用いることで、副担体ではフッ化スルフリルが加水分解しないようにすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の反応原理は加水分解反応であるので、高熱を発生させる必要がなく、安全である。高熱を必要としないので、可燃物がある環境でも着火源となることはない。検知管本体の温度は高熱にならないので、検知管本体を樹脂フィルムで巻き回しても、発煙したり、フィルムが溶融することはない。
【0016】
また、検知管を、HF発生管とHF検出管に分けなくてもよい。
また、反応原理が湿度、温度に対して過敏ではないので、測定の安定性が高い。従って、検知管の端部を切断してから測定を終了させるまでの時間を長くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
SFの分解反応には、上記のような熱分解反応の他、次のような加水分解反応が知られている。
【0018】
SO22(sulphuryl fluoride)+H2O → HSO3F+HF(酸性物質)
この加水分解は、SFの販売元から発行されているMSDS にも掲載されているが、加水分解速度は非常にゆっくりである。
【0019】
水をアルカリ性にした場合、SFの加水分解反応は急激に進行することが知られているが、フッ化スルフリル検知管の内部にアルカリ性物質を封入し、フッ化スルフリル検知管の入り口側からSF含有ガスを導入した場合、アルカリ性物質に付随して一緒に封入された水や、又は試料ガスに含まれる水によって、フッ化スルフリルが加水分解反応し、HFとHSO3Fが発生すると両方とも酸性物質であるから中和反応によってアルカリ性物質が消費され、pHが中性側又は酸性側にシフトし、その部分の反応速度が遅くなり、生成した酸性物質の発生位置がフッ化スルフリル検知管の入り口側から出口方向に移動する。
【0020】
即ち、加水分解により生成される酸性物質をアルカリ性物質と中和反応し、pH指示薬を変色させることで、SFを検知することが出来る。
この場合、フッ化スルフリル検知管内部に水を十分に配置し、アルカリ性物質の含有量を均一にしておけば、HFの発生によってpHがシフトする位置が移動した場合に、その移動距離は、試料ガス中に含まれるSFガスの濃度に依存する。
【0021】
従って、フッ化スルフリル検知管内部に、水とアルカリ性物質とpH指示薬を封入しておき、その内部に試料ガスを流すと、下記(1)式、
【0022】
SO22+H2O+アルカリ性物質 → HSO3F+HF+アルカリ性物質……(1)
の化学反応により、フッ化スルフリル検知管の試料ガス流入口側からpHが変化し、内部に導入されたSFの量に応じた長さだけpH指示薬が変色する。
【0023】
SFの量と変色部分の長さとを対応づけておき、一定量の体積の試料ガスを導入すると、変色部分の長さから試料ガス中のSF濃度を求めることができる。
アルカリ性物質とpH指示薬が溶解された水溶液に、アルミナ等の微粒子であって、多孔質の主担体を浸漬させて乾燥させると、アルカリ性物質、pH指示薬が担持される。この場合、測定に必要な水分を担持していれば、フッ化スルフリル検知管内に水分を注入する必要はない。
【0024】
また、フッ化スルフリル検知管内に水分が存在していなくとも、試料ガス中に水分が含まれている場合は、その水分によりSFは加水分解されるため、フッ化スルフリル検知管内には水分が含まれている必要性はない。
【実施例】
【0025】
図1(a)は、本発明の第一例、第二例のフッ化スルフリル検知管10、20の外観図、同図(b)は、第一例の断面図である。
同図(a)、(b)を参照し、第一例のフッ化スルフリル検知管10は、ガラスチューブから成る検知管本体11を有している。検知管本体11の内部には、検知管本体11の中央に位置し、内径が一定値である部分から成る変色領域に検知剤12が充填されている。
【0026】
検知管本体11内部の検知剤12の両側位置には、テフロン(登録商標)繊維等から成り、通気性を有する栓体13が配置されており、検知剤12が検知管本体11の内部で移動しないようにされている。符号14は、セラミック粉末であり、検知剤12と栓体13とが接触しないように、検知剤12と栓体13の間に配置されている。
【0027】
検知剤12は、アルカリ性物質(ここではKOHを用いた。)とpH指示薬(ここではチタンエローを用いた。)を水に溶解させ、その水溶液中に多孔質の粉体(ここではアルミナの粉末粒子を用いた)を浸漬し、水分含有率が10wt%以上になるように乾燥して得られる。
【0028】
検知管本体11の両端を栓13よりも端の位置で切断して両端に開口を形成し、一方の開口を入り口側、他方の開口を出口側として、入り口側から検知管本体11の内部にSFを含有する試料ガスを導入すると、導入された試料ガス中のSFガスと、検知剤12中の水分及びアルカリ性物質とが上記(1)式の化学反応をし、変色領域内の検知剤12が、入り口側から出口側に向かって変色する。
【0029】
変色領域の内径は一定値であり、アルカリ性物質は均一な濃度で配置されているから、変色した部分の長さは検知管本体11に導入されたSFの量に比例している。したがって、予め変色部分の長さとSFガスの量とを対応づけておき、試料ガスを一定量導入し、変色した部分の長さを測定すれば、試料ガス中のSFの濃度を求めることができる。
【0030】
このフッ化スルフリル検知管10には、検知管本体11には目盛18が設けられており、変色した領域と変色していない領域の境界にある目盛18の数字を読むことで、長さがわかるようになっている(目盛の数値の小さい方が入口側)。
【0031】
上記実施例で用いたアルカリ性物質は水酸化カリウムであったが、水酸化カリウムと同様のアルカリ性を有するアルカリ性物質であれば用いることができる。たとえば、水酸化ナトリウムや水酸化リチウム、ヒドラジン、アンモニア、アミンが使用可能である。
【0032】
上記実施例では、pH指示薬にチタンエロー(SFガスを検知するとピンク色が黄色に変色する)が用いられたが、それに限定されるものではなく、酸性物質の生成によるpHの酸性側への移動を検知できればよい。たとえばアリザニンエローを検知剤12に含有させると、SFガスの反応により、薄い紫色が黄色に変色する。
【0033】
ヒドラジンの場合、SFとの反応生成物が酸性であり、検知管内部のSFと反応した部分はアルカリ性から酸性に変質するため、アルカリ又は中性から酸性にpHが変化したときに変色するクリスタルバイオレット等のpH指示薬を用いることができる。
【0034】
なお、上記実施例では、アルカリ性物質と水と指示薬を付着させる主担体に粉体粒子を用いたが、粉体粒子ではなく、繊維状物質を用いることができる。主担体はアルミナ粒子に限定されるものではなく、SFやHFと反応しない物質で構成されている不活性な多孔質粒子(シリカゲルの粒子や珪藻土の粒子等)を広く用いることができる。
【0035】
試料ガス中に酸性ガスが含まれている場合、主担体に吸着されているアルカリ性物質と反応し、フッ化スルフリルと同様に検知管本体11内のpHを酸性方向に移動させる。
【0036】
上記実施例では、試料ガス中の酸性ガスの濃度が、試料ガス中のフッ化スルフリルの濃度に比べて大幅に小さく、酸性ガスとアルカリ性物質の反応を無視できる場合であった。
【0037】
それに対し、低濃度のフッ化スルフリルを検出するために、低濃度のフッ化スルフリルでもpH指示薬が反応するように検知剤が構成されている場合や、試料ガス中の酸性ガスの濃度が、フッ化スルフリルの濃度に対して大きい場合は、酸性ガスとアルカリ性物質の反応を無視することができない。
【0038】
二酸化炭素ガスは酸性ガスであり、空気中に350ppm〜500ppm含有されている。空気にフッ化スルフリルが含有された試料ガスを測定する場合、フッ化スルフリルが1%以上含有されていて、高濃度のフッ化スルフリルを検出するように検知剤が構成されていれば、二酸化炭素ガスの存在を無視することができる。
【0039】
しかし、空気に10ppm〜100ppm程度のフッ化スルフリルが含有された試料ガス中のフッ化スルフリルを検出する場合は、低濃度のフッ化スルフリルを検出するように検知剤が構成されるため、フッ化スルフリルと同程度の濃度の二酸化炭素によってもpH指示薬が変色してしまう。
【0040】
図4は、横軸がフッ化スルフリル濃度、縦軸が低濃度用のフッ化スルフリル検知管の変色長であり、符号Pは、500ppmの二酸化炭素ガスを含む試料ガスが二酸化炭素除去剤中を通過せずに、低濃度用のフッ化スルフリル検知管に導入された場合の変色長であり、13mmであった。
【0041】
符号Qの折線は、二酸化炭素濃度がゼロの場合のフッ化スルフリル濃度と変色長の関係である。二酸化炭素濃度が500ppm含まれる場合のフッ化スルフリル濃度と変色長の関係は、折線Qの変色長に13mm加算した値になる。
【0042】
このように、低濃度用のフッ化スルフリル検知管は二酸化炭素の影響を受けるため、下記実施例のように、二酸化炭素ガスを除去した試料ガス中のフッ化スルフリルを検知することが望ましい。
【0043】
図1(c)に示した第二例のフッ化スルフリル検知管20は、検知剤12と検知管本体11の、試料ガスの入口側との間(ここでは、検知剤12とセラミック粉末14の間)に二酸化炭素除去剤15が配置されている。他の部分は第一例のフッ化スルフリル検知管10と同じ構造であり、同じ部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0044】
二酸化炭素除去剤15は、一粒当たり、主担体よりも表面積が小さな副担体と、副担体に吸着され、二酸化炭素と反応する反応物質とで構成されている。反応物質は、フッ化スルフリルを検知するために主担体に吸着させたアルカリ性物質と同じ化学物質を用いることができる。
【0045】
主担体は、アルミナ粒子、シリカゲル粒子、珪藻土粒子等の表面積の大きな粒子をもちいるが、副担体は、フッ化スルフリルを反応物質と反応させないようにするため、ガラスを粉砕したガラス粒子や珪砂の粒子など、表面積の小さな粒子を用いる。
【0046】
上記フッ化スルフリル検知管20では、検知管本体11の入口側の端部と出口側の端部を切断し、入口側から試料ガスを導入すると、試料ガスは二酸化炭素除去剤の間を通って二酸化炭素が除去された後、検知剤12に到達するから、フッ化スルフリルの測定に二酸化炭素の影響が無くなる。
二酸化炭素除去剤は、フッ化スルフリル検知管の検知管本体とは別の管に配置し、二酸化炭素除去管を構成してもよい。
【0047】
図2(a)は、そのような二酸化炭素除去管30の外観であり、同図(b)は断面図である。
ガラスで構成された補助管31の内部に、上記と同じ構成の二酸化炭素除去剤35が配置され、補助管31内部の両端にテフロン(登録商標)繊維等から成り、通気性を有する栓体33が配置されており、二酸化炭素除去剤35が補助管31の内部に維持されるように構成されている。
【0048】
試料ガスが、この二酸化炭素除去管30の内部を通過すると、二酸化炭素が除去され、フッ化スルフリルは除去されないので、二酸化炭素除去管30を通過した試料ガスを、上記第一例のフッ化スルフリル検知管10内に導入し、フッ化スルフリルを測定することができる。
【0049】
図3の符号40は、第三例の本発明のフッ化スルフリル検知装置である。
このフッ化スルフリル検知装置40は、第一例のフッ化スルフリル検知管10と二酸化炭素除去管30と、接続管41を有している。
【0050】
ここでは、フッ化スルフリル検知管10の両端部と二酸化炭素除去管30の両端部は切断されており、二酸化炭素除去管30の出口側の端部とフッ化スルフリル検知管10の入口側の端部は接続管41で接続されている。
【0051】
二酸化炭素除去管30の内部を通過した試料ガスは、接続管41の内部を通り、フッ化スルフリル検知管10の入口側から内部に導入される。フッ化スルフリル検知管10内部を入口側から出口側に通過すると二酸化炭素の影響が無くフッ化スルフリルの濃度に応じて検知剤が変色し、目盛18によって試料ガス中のフッ化スルフリルの濃度が分かるようにされている。
第一例のフッ化スルフリル検知管10ではなく、第二例のフッ化スルフリル検知管20を二酸化炭素除去管30に接続してもよい。
【0052】
次に、主担体として用いることができる粒子と副担体として用いることができる粒子について説明する。
KOHを吸着させたアルミナ粒子と、KOHを吸着させた珪砂粒子のフッ化スルフリルと二酸化炭素の反応を下記表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
このように、珪砂粒子ではフッ化スルフリルは除去されないので二酸化炭素除去剤の副担体として用いることができ、アルミナは、フッ化スルフリルと反応するので主担体として用いることができることが分かる。珪砂の直径は、250μm〜350μmであり、比表面積は0.05m2/g〜0.15m2/gである。
【0055】
下記に、高濃度用フッ化スルフリル検知管と、低濃度用フッ化スルフリル検知管と、二酸化炭素除去管の作成方法の実施例を記載しておく。
【0056】
<高濃度用フッ化スルフリル検知管>
メタノール溶剤300mlの中にチタンイエロー0.8gを加えて溶解させた。また、水400mlに水酸化カリウム200gを加えて溶解させた。これらの溶液を60〜100メッシュの粒径のアルミナ2000gに添加し、80℃の湯浴中で溶剤を完全に真空除去してフッ化スルフリルに対する検知剤を製造した。この検知剤を内径が3.5〜3.6mmのガラス管から成る検知管本体に封入して、高濃度のフッ化スルフリルを検出できるフッ化スルフリル検知管を作成した。
【0057】
<低濃度用フッ化スルフリル検知管>
水900ml中にアリザリンイエローR(Alizarin yellow R)を0.4g及び水酸化カリウム7gを加えて溶解させた。これを、60〜10メッシュの粒径のアルミナ2000gに添加し、80℃の湯浴中で溶剤を完全に真空除去してフッ化スルフリルに対する検知剤を製造した。この検知剤を内径が2.5〜2.6mmのガラス管から成る検知管本体に封入して、低濃度のフッ化スルフリルを検出できるフッ化スルフリル検知管を作成した。
【0058】
<二酸化炭素除去管>
水150ml中に水酸化カリウム300gを加えて溶解させた。これを、40〜60メッシュの粒径の珪砂1700gに添加し、250℃のマントルヒーター中で水分を完全に蒸発させて二酸化炭素の除去剤を製造した。この検知剤を内径が2.9〜3.0mmのガラス管から成る補助管に封入して、二酸化炭素除去管を作成した。
【0059】
<検知管本体と補助管>
なお、検知管本体11は、ガラス製に限定されるものではなく、SFやHFと反応せず、少なくとも一部が透明であって内部に配置されたpH 指示薬の変色を確認でき、細長く形成され、両端を切断できるものであればよい。また、補助管31もガラス製に限定されるものではなく、SFと反応せず、細長く形成され、両端を切断できるものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】(a):本発明の第一例と第二例のフッ化スルフリル検知管の外観図 (b):第一例のフッ化スルフリル検知管の内部を説明するための断面図 (c):第二例のフッ化スルフリル検知管の内部を説明するための断面図
【図2】(a):二酸化炭素除去管の外観図 (b):その断面図
【図3】フッ化スルフリル検知装置の外観図
【図4】フッ化スルフリル濃度及び二酸化炭素濃度と検知剤の変色長関係を示すグラフ
【符号の説明】
【0061】
10、20……フッ化スルフリル検知管
11……検知管本体
12……検知剤
15、35……二酸化炭素除去剤
30……二酸化炭素除去管
31……補助管
40……フッ化スルフリル検知装置
41……接続管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が透明な検知管本体と、
前記検知管本体の内部には、アルカリ性物質とpH指示薬が配置され、前記検知管本体内に導入した試料ガス中に含有されるフッ化スルフリルが前記アルカリ性物質と反応し、前記検知管本体内のpH変化によって前記pH指示薬が変色するように構成されたフッ化スルフリル検知管。
【請求項2】
前記アルカリ性物質には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又は水酸化リチウムの化合物のうち、少なくともいずれか一種の化合物が含有された請求項1記載のフッ化スルフリル検知管。
【請求項3】
前記アルカリ性物質と前記pH指示薬を吸着した多孔質で粒子状の主担体を有する請求項1又は2のいずれか1項記載のフッ化スルフリル検知管。
【請求項4】
前記主担体は、アルミナ粒子、シリカゲル粒子、珪藻土粒子のうちの一種類以上の粒子を含有する請求項3記載のフッ化スルフリル検知管。
【請求項5】
前記アルカリ性物質と前記pH指示薬が配置された前記検知管本体内の位置に水が含有された請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のフッ化スルフリル検知管。
【請求項6】
前記検知管本体内で、前記試料ガスが流れる経路の前記アルカリ性物質と前記pH指示薬が配置された領域よりも上流側に二酸化炭素除去剤が配置された請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載のフッ化スルフリル検知管。
【請求項7】
前記二酸化炭素除去剤は、一粒当たりの表面積が前記主担体よりも小さい副担体と、前記副担体に吸着され、二酸化炭素と反応する反応物質とを有する請求項6記載のフッ化スルフリル検知管。
【請求項8】
前記副担体は、ガラス粒子、珪砂のうちのいずれか一種以上の粒子を含有する請求項7記載のフッ化スルフリル検知管。
【請求項9】
前記反応物質として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又は水酸化リチウムの化合物のうち、少なくともいずれか一種の化合物が前記副担体に吸着された請求項7乃至9のいずれか1項記載のフッ化スルフリル検知管。
【請求項10】
補助管と、
前記補助管内に配置された二酸化炭素除去剤とを有し、前記補助管内に導入した試料ガス中に含有される二酸化炭素を、前記補助管内を流れる試料ガスから除去する二酸化炭素除去管と、
前記二酸化炭素除去管と請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載のフッ化スルフリル検知管とを接続し、前記二酸化炭素除去管内を流れた試料ガスを前記フッ化スルフリル検知管に導入させる接続管を有し、
前記二酸化炭素除去管内を流れた試料ガス中のフッ化スルフリルを、前記フッ化スルフリル検知管によって測定するフッ化スルフリル検知装置。
【請求項11】
前記二酸化炭素除去剤は、前記主担体よりも表面積が小さい副担体と、前記副担体に吸着され、二酸化炭素と反応する反応物質とを有する請求項10記載のフッ化スルフリル検知装置。
【請求項12】
前記反応物質として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又は水酸化リチウムの化合物のうち、少なくともいずれか一種の化合物が前記副担体に吸着された請求項11記載のフッ化スルフリル検知管。
【請求項13】
試料ガスをアルカリ性物質とpH指示薬が吸着された主担体の間を流し、前記試料ガス中に含有される水分又は前記主担体に吸着された水分のいずれか一方又は両方の水分と前記試料ガス中に含有されるフッ化スルフリルと反応させ、酸性物質を生成して前記主担体表面のpHを酸性方向に移動させ、前記フッ化スルフリルの量に応じた量の前記pH指示薬を変色させるフッ化スルフリル検出方法。
【請求項14】
前記主担体の間を流す前に、前記試料ガスを、二酸化炭素除去剤が吸着され、一粒当たりの表面積が前記主担体よりも小さい副担体の間を流す請求項13記載のフッ化スルフリル検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−71895(P2010−71895A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241661(P2008−241661)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(390010364)光明理化学工業株式会社 (18)
【Fターム(参考)】