説明

フッ化ビニリデンおよびトリフルオロエチレンを含むポリマー

本発明は、フッ化ビニリデン(VDF)およびトリフルオロエチレン(TrFE)に由来する繰り返し単位を含む新規なポリマーであって、VDF繰り返し単位1kg当たり少なくとも60ミリモルの量で、式:−CFHおよび/または−CFCHの末端基を含むポリマー[ポリマー(F)]、その製造方法、ならびに、電気/電子デバイスにおける、強誘電性材料、圧電性材料、誘電性材料または焦電性材料としてのそれらの使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された可撓性を有する、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンとの新規コポリマー、これらの製造方法、および、電気/電子デバイスにおける、圧電性材料、強誘電性材料、誘電性材料または焦電性材料としてのこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンとのコポリマーは、それらの強誘電性、圧電性、焦電性および誘電性挙動/特性により、電気/電子デバイス(例えば、トランスデューサ、センサ、アクチュエータ、強誘電性メモリ、キャパシタ)における使用のために用いられ、開発中されており、圧電性挙動が特に利用されていることがよく知られている。
【0003】
よく知られているように、圧電性という用語は、材料が電気エネルギーを機械エネルギーと交換する能力およびその逆の能力を意味し、電気機械的応答は、変形または圧力の振動中の寸法変化と本質的に関係があると考えられている。圧電性効果は、可逆的であり、直接の圧電性効果を示す(応力がかけられると電気を生成する)材料が、逆の圧電性効果も示す(電場が印可されると応力および/または歪みを生成する)。
【0004】
強誘電性は材料の特性であり、これによって材料は、その方向を外部電場の印可によって等価状態間で切り替えることができる、自発的な電気分極を示す。
【0005】
焦電性は、加熱または冷却時に電位を発生する、ある種の材料の能力である。実際には、温度の変化の結果として、正および負の電荷が電荷移動によって反対端に移行し(すなわち材料が分極した状態になり)、それ故に、電位が生成する。
【0006】
フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンとのコポリマーにおける圧電性、焦電性、強誘電性は、水素およびフッ素原子が単位格子当たり最大の双極子モーメントを与えるように配置されている特定の結晶晶癖、いわゆるベータ相と関係があると一般に理解される。
【0007】
フッ化ビニリデン(VDF)およびトリフルオロエチレン(TrFE)コポリマーは、典型的には、押出、射出成形、圧縮成形および溶剤キャスティングのような周知の加工方法によって、半結晶性であり、本質的に非配向および非延伸である、熱可塑性フィルムもしくはシートまたは管状構成製品を造形または成形することができる、半結晶性コポリマーとして提供される。
【0008】
良好な圧電性、焦電性、強誘電性および誘電特性に加えて、前記コポリマーは、それらが大きい表面積を有する薄膜に容易に成形でき且つそれらを大量生産できるようにする、セラミック材料を超える幾つかの好ましい特性を有する。
【0009】
前記VDF−TrFEコポリマーは、当該技術分野でよく知られており、とりわけ、(特許文献1)(PRIES SEYMOUR(米国))1988年10月18日、(特許文献2)(THOMSON CSF(仏国))1987年11月24日、(特許文献3)(呉羽化学工業株式会社(日本))1988年11月15日、(特許文献4)(ダイキン工業株式会社(日本))1979年10月30日に記載されている。
【0010】
しかし、先行技術のVDF−TrFEコポリマーは、不十分な弾性挙動に悩まされている。実際に、圧電性デバイスの作動時に、圧電性材料は、一連の歪みおよび変形を受ける。したがって、材料の固有の可撓性または変形能(または言い換えればそれらの弾性挙動)は、長寿命の作動にとって重要なパラメータである。
【0011】
反対に、圧電性、焦電性または強誘電性効果の最適化には、上述した結晶相ベータ画分を最大化することが求められる。結晶化度が低いと材料の脆性挙動に関連があるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4,778,867号明細書
【特許文献2】米国特許第4,708,989号明細書
【特許文献3】米国特許第4,784,915号明細書
【特許文献4】米国特許第4,173,033号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように、当技術分野では、傑出した圧電性、強誘電性、焦電性、および/または誘電特性を維持しながら、このような拮抗する要件を満たすことができ、かつ、高められた可撓性および変形能を提供する、VDF−TrFEコポリマー材料、およびこれらの製造方法が依然として必要とされている。
本明細書に記載する本発明は、これらの要求を満たす材料および方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、したがって、フッ化ビニリデン(VDF)およびトリフルオロエチレン(TrFE)に由来する繰り返し単位を含む新規なポリマーであって、VDF繰り返し単位1kg当たり少なくとも60ミリモルの量で、式:−CFHおよび/または−CFCHの末端基を含むポリマー[ポリマー(F)]を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実施例1で得られたVDF−TrFEコポリマー75/25(モル比)のDSCスキャン結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本出願人は意外にも、VDF−TrFEポリマーの主鎖が、下記のスキーム:
【化1】

に示すように、ラジカル重合中の分子内連鎖移動(バック−バイティング)に典型的に由来する、式:−CFHおよび/または−CFCHの末端基で停止された短鎖分岐によって中断されると、ポリマーが、著しく改善された可撓性および変形能を有利に示す一方で、先行技術のポリマーの典型的な強誘電性、圧電性、焦電性および誘電性挙動を保持し、とりわけ圧電係数を変化なしに保持することを見いだした。
【0017】
本発明のポリマー(F)は、一般に、10〜50モル%、好ましくは15〜40モル%のTrFEに由来する繰り返し単位を含む。
【0018】
本発明のポリマー(F)は、VDFおよびTrFE以外の1種または2種以上のフルオロモノマー、とりわけヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)などに由来する繰り返し単位をさらに含んでもよい。
【0019】
それにもかかわらず、VDFおよびTrFEに由来する繰り返し単位から本質的になるポリマー(F)が、本発明の第1実施形態によれば好ましい。
【0020】
本発明の第1実施形態のポリマー(F)は、典型的には、
− 10〜50モル%、好ましくは15〜40モル%のTrFEに由来する繰り返し単位と;
− 50〜90モル%、好ましくは60〜85モル%のVDFに由来する繰り返し単位と
から本質的になる。
【0021】
本発明のさらなる実施形態によれば、ポリマー(F)は、VDF、TrFEおよびCTFEに由来する繰り返し単位から本質的になる。
【0022】
本発明の第2実施形態のポリマー(F)は、典型的には、
− 15〜40モル%、好ましくは20〜35モル%、より好ましくは20〜25モル%のTrFEに由来する繰り返し単位と;
− 55〜76モル%、好ましくは62〜74モル%、より好ましくは65〜72モル%のVDFに由来する繰り返し単位と;
− 5〜16モル%、好ましくは6〜12モル%、より好ましくは8〜10モル%のCTFEに由来する繰り返し単位と
から本質的になる。
【0023】
本発明のポリマー(F)は、必要とされる可撓性特性を示すように、、上述したとおり、VDF繰り返し単位1kg当たり少なくとも60ミリモルの式:−CFHおよび/または−CFCHの末端基を含むことが不可欠である。
【0024】
ポリマー(F)がVDF繰り返し単位1kg当たり60ミリモル未満の前記末端基を含むとき、その構造は剛性であり、かつ脆く、ポリマーは、十分な可撓性および変形能を賦与されない。
【0025】
本発明の第1実施形態によれば、ポリマー(F)は、好ましくはVDF繰り返し単位の1g当たり少なくとも70ミリモル、より好ましくはVDF繰り返し単位の1g当たり少なくとも80ミリモル、さらにより好ましくはVDF繰り返し単位の1g当たり少なくとも90ミリモルの式:−CFHおよび/または−CFCHの末端基を含む。
【0026】
ポリマー(F)のメルトフローインデックス(MFI)は、最終部品(例えばフィルムまたはシート)を得るために選択する加工技術との関連で、当業者によって選択されるであろう。
【0027】
それにもかかわらず、ポリマー(F)は、有利には、0.5〜500g/10分、好ましくは1〜200g/10分、より好ましくは2〜10g/10分のASTM D 1238(230℃/5kg)に準拠して測定されるMFIを有すると一般に理解される。
【0028】
本発明はまた、上述下ポリマー(F)の製造方法にも関する。
【0029】
本発明の方法は、有利には、VDFと、TrFEと、場合により1種以上のコモノマーとを、水性媒体中、ラジカル開始剤の存在下、かつ、非官能性末端基を有する少なくとも1種のパーフルオロポリエーテルオイルと少なくとも1種のフッ素化界面活性剤[界面活性剤(FS)]とのマイクロエマルジョンの存在下で、重合させる工程を含む。
【0030】
本出願人は、マイクロエマルジョン重合法が、限定されたトリフルオロエチレン(TrFE)分圧および全圧で、好適な重合速度を達成することを可能にすることから、このマイクロエマルジョン重合法が本発明の製品を製造するために特に好適であることを見いだした。TrFEは、テトラフルオロエチレン(TFE)と類似の爆燃/爆発挙動を有することが認められているため、重合圧力を限定する条件は、安全管理の点で重要な利点となるであろう。
【0031】
また、この低下させた重合圧力により、上述した分子内連鎖移動(バック−バイティング)現象をかなり増加させることが可能になり、その結果、式:−CFHおよび/または−CFCHの末端基の量は、特に、高い重合温度で最大化される。
【0032】
重合圧力は、したがって、15〜35バール、好ましくは18〜35バール、より好ましくは20〜35バールの範囲内である。
【0033】
当業者は、とりわけ、使用するラジカル開始剤を考慮して、重合温度を選択するであろう。重合温度は、一般に、80〜120℃、好ましくは95〜120℃の範囲で選択される。
【0034】
ラジカル開始剤の選択は、特に限定されないが、本発明による方法に好適なものは、重合開始能力および/または重合加速能力を有する化合物から選択されることが理解される。
【0035】
当業者は、本発明の方法に好適である多数の開始剤に精通しているであろう。
【0036】
有機ラジカル開始剤を使用することができ、有機ラジカル開始剤には、下記のもの:
アセチルシクロヘキサンスルホニルペルオキシド;ジアセチルペルオキシジカーボネート;ジエチルペルオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネートなどのジアルキルペルオキシジカーボネート;過ネオデカン酸tert-ブチル;2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル;過ピバル酸tert-ブチル;ジオクタノイルペルオキシド;ジラウロイルペルオキシド;2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル);tert-ブチルアゾ−2−シアノブタン;シベンゾイルペルオキシド;過2−エチルヘキサン酸tert-ブチル;過マレイン酸tert-ブチル;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル);ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン;tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート;過酢酸tert-ブチル;2,2’−ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン;ジクミルペルオキシド;ジ−tert-アミルペルオキシド;ジ−tert-ブチルペルオキシド(DTBP);p−メンタンヒドロペルオキシド;ピナンヒドロペルオキシド;クメンヒドロペルオキシド;およびtert-ブチルヒドロペルオキシド、が含まれるが、これらだけに限定されない。他の好適な開始剤には、クロロカーボンベースのアシルペルオキシドおよびフルオロカーボンベースのアシルペルオキシド〔例えば、トリクロロアセチルペルオキシド、ビス(パーフルオロ−2−プロポキシプロピオニル)ペルオキシド、[CFCFCFOCF(CF)COO]、パーフルオロプロピオニルペルオキシド、(CFCFCFCOO)、(CFCFCOO)、{(CFCFCF)−[CF(CF)CFO]−CF(CF)−COO}(式中、m=0〜8である)、[ClCF(CFCOO]、および[HCF(CFCOO](式中、n=0〜8である)など〕;安定なヒンダードパーフルオロアルカンラジカルなどのハロゲン化フリーラジカル開始剤〔例えば、パーフルオロアゾイソプロパン、[(CFCFN=]、RαN=NRα(式中、Rαは、1〜8個の炭素原子を有する線状または分岐のパーフルオロカーボン基である)などのパーフルオロアルキルアゾ化合物;ヘキサフルオロプロピレン三量体ラジカル、[(CFCF](CFCF)C・ラジカルおよびパーフルオロアルカンなど〕が含まれる。
【0037】
酸化還元カップルを形成する少なくとも2つの成分を含む酸化還元系、例えば、ジメチルアニリン−ベンゾイルペルオキシド、ジエチルアニリン−ベンゾイルペルオキシドおよびジフェニルアミン−ベンゾイルペルオキシドなども、重合を開始させるために使用することができる。
【0038】
また、無機ラジカル開始剤も使用することができ、無機ラジカル開始剤には下記のもの:過硫酸ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムなどの過硫酸塩、過マンガン酸カリウムなどの過マンガン酸塩が含まれるが、これらだけに限定されない。
【0039】
有機ラジカル開始剤(上述したものなど)が好ましい。これらのうち、50℃より高い自己加速分解温度(SADT)を有するペルオキシド類、例えば、ジ−tert-ブチルペルオキシド(DTBP)、ジtert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチル(2−エチル−ヘキシル)ペルオキシカーボネート、tert-ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエートなどが特に好ましい。
【0040】
ラジカル開始剤は、有利には、重合媒体の0.001〜20重量%の範囲の濃度で含ませる。
【0041】
重合は、連鎖移動剤の存在下で実施することができる。連鎖移動剤は、フッ素化モノマーの重合において公知のもの、例えば、3〜10個の炭素原子を有する、ケトン、エステル、エーテルまたは脂肪族アルコール(例えは、アセトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、イソプロピルアルコールなど);1〜6個の炭素原子を有し、任意に水素を有していてもよい、クロロ(フルオロ)カーボン(例えば、クロロホルム、トリクロロフルオロメタンなど);アルキルが1〜5個の炭素原子を有するビス(アルキル)カーボネート(例えば、ビス(エチル)カーボネート、ビス(イソブチル)カーボネートなど)などから選択される。連鎖移動剤は、開始時に、重合中に連続的にあるいは不連続量で(段階的に)、重合媒体に供給することができる。連続または段階的供給が好ましい。
【0042】
上述したマイクロエマルジョン重合法は、例えば、米国特許第4,990,283号明細書(AUSIMONT SPA(イタリア国))1991年2月5日、米国特許第5,498,680号明細書(AUSIMONT SPA)1996年3月12日、米国特許第6,103,843号明細書(AUSIMONT SPA)2000年8月15日に記載されている。
【0043】
PFPEオイルの非官能性末端基は、一般に、フッ素とは異なる1個以上のハロゲン原子または水素原子を任意に含んでいてよい、1〜3個の炭素原子を有するフルオロ(ハロ)アルキル、例えば、CF−、C−、C−、ClCFCF(CF)−、CFCFClCF−、ClCFCF−、ClCF−から選択される。
【0044】
本発明の方法に使用する非官能性末端基を有するパーフルオロポリエーテル(PFPE)オイルは、1個以上のオキシアルキレン単位〔例えば、−CF(CFO−(式中、zは1、2または3に等しい整数である)、−CRCFCFO−(式中、RおよびRは、互いに等しいかまたは異なり、H、Clまたは1〜4個の炭素原子のパーフルオロアルキル、−CFCF(CF)O−、−CF(CF)CFO−、−CFYO−(式中、YはFまたはCFに等しい)から選択される)など〕を繰り返し単位の配列として含む。
【0045】
一般に、PFPEオイルは、有利には400〜3000、好ましくは600〜1500の数平均分子量を有する。
【0046】
好ましいPFPEオイルは、繰り返し単位の配列として下記の部類のもの:
a)(CO)m’(CFYO)n’〔式中、単位(CO)および(CFYO)は、鎖に沿って統計的に分布したパーフルオロオキシアルキレン単位であり;m’>0、n’≧0であり、かつ、m’/n’は、n’が0とは異なる場合には5〜40の範囲であり;YはFまたはCFである;前記単位は、場合により、式:−O−R’−O−(式中、R’は二価のフルオロアルキレン基、例えばC〜Cパーフルオロアルキレン基である)の配列によって互いに結合していてもよい〕;
b)−(CO)p’(CFYO)q’−(CO)t’
(式中、p’>0、q’>0、t’≧0であり、q’/q’+p’+t’≦1/10であり、t’/p’は0.2〜6であり;Y=FまたはCFである);
c)CRCFCFO(式中、RおよびRは、互いに等しいかまたは異なり、F、H、Clまたはパーフルオロアルキルから選択される)、前記単位は、式−O−R’−O−によって下記の通り:
(OCRCFCF−O−R’−O−(CRCFCFO)
(式中、R’は、二価のフルオロアルキレン基、例えばC〜Cパーフルオロアルキレン基であり、pおよびqは0〜200の整数であり、p+qは≧1である)
に互いに結合していてもよい;
d)CF(CF)CF
前記単位は、下記の通り:
(OCFCF(CF))O−CF(R’CF−O−(CF(CF)CFO)
(式中、R’は、上述した意味を有し、xは0または1であり、aおよびbは整数であり、a+bは≧1である)
にフルオロポリオキシアルキレン鎖内で互いに連結されている;
e)(CO)a’(CFYO)b’
(式中、a’およびb’は整数>0であり、a’/b’は5〜0.3、好ましくは2.7〜0.5の範囲であり、YはFまたはCFである)
を含むオイルである。
【0047】
好ましいPFPEオイルは、パーフルオロオキシアルキレン単位がランダムに分布した、一般式:
O(CF−CF(CF)O)m’(CFYO)n’R’’
〔式中、RおよびR’’は、互いに等しいかまたは異なり、フッ素とは異なる1個以上のハロゲン原子または水素原子を任意に含んでいてもよい、1〜3個の炭素原子を有するフルオロ(ハロ)アルキル(例えば、CF−、C−、C−、ClCFCF(CF)−、CFCFClCF−、ClCFCF−、ClCF−)であり、m’およびn’は、PFPEオイルの数平均分子量が400〜3000、好ましくは600〜1500の範囲内となる整数であり;YはFまたはCFである〕
のオイルである。
【0048】
界面活性剤(FS)は、有利には、式:
f§(X(M
〔式中、Rf§は、1個以上のカテナリーまたは非カテナリー酸素原子を任意に含んでいてよいC〜C16の(パー)フルオロアルキル鎖、または(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖であり、Xは−COO、−POまたは−SOであり、Mは、H、NH、アルカリ金属イオンから選択され、jは1または2であることができる〕
に従う。
【0049】
界面活性剤(FS)の非限定的な例として、パーフルオロカルボン酸アンモニウムおよび/またはパーフルオロカルボン酸ナトリウム、および/または、1個以上のカルボン酸末端基を有する(パー)フルオロポリオキシアルキレンが挙げることができる。
【0050】
より好ましくは、フッ素化界面活性剤[界面活性剤(FS)]は、
− CF(CFn1COOM’(式中、nは4〜10、好ましくは5〜7の範囲の整数であり、より好ましくは6に等しく;M’は、H、NH、Na、LiまたはK、好ましくはNHを表す);
− T−(CO)n0(CFXO)m0CFCOOM’’(式中、Tは、Clまたはkが1〜3の整数であり、F原子がCl原子で任意に置換されていてもよい、式C2k+1Oのパーフルオロアルコキシド基を表し;nは1〜6の範囲の整数であり;mは0〜6の範囲の整数であり;M’’は、H、NH、Na、LiまたはKを表し;XはFまたはCFを表す);
− F−(CF−CFn2−CH−CH−ROM’’’(式中、Rは、PまたはS、好ましくはSであり、M’’’は、H、NH、Na、LiまたはK、好ましくはHを表し;nは、2〜5の範囲の整数、好ましくはn=3である);
− A−Rbf−Bの二官能性フッ素化界面活性剤(式中、AおよびBは、互いに等しいかまたは異なり、−(O)CFX’’−COOMであり;Mは、H、NH、Na、LiまたはKを表し、好ましくはMはNHを表し;X’’=FまたはCFであり;pは0または1に等しい整数であり;Rbfは、A−Rbf−Bの数平均分子量が300〜1,800の範囲となるような二価のパーフルオロアルキル鎖または(パー)フルオロポリエーテル鎖である);
− ならびにこれらの混合物
から選択される。
【0051】
好ましい界面活性剤(FS)は、本明細書で上述した、式:T(CO)n0(CFXO)m0CFCOOM’’に従う界面活性剤である。
【0052】
本発明は、電気/電子デバイスにおける、強誘電性材料、圧電性材料、誘電性材料または焦電性材料としての、上述したポリマー(F)の使用にも関する。
【0053】
前記デバイスの非限定的な例は、とりわけ、トランスデューサ、センサ、アクチュエータ、強誘電性メモリ、キャパシタである。
【0054】
ポリマー(F)は、一般に、実質的に二次元の部品(例えばフィルムまたはシート)の形態で、前記デバイス中に組み込まれる。
【0055】
前記フィルムまたはシートは、押出、射出成形、圧縮成形および溶剤キャスティングなどの、標準的な技術に従って製造することができる。
【0056】
前記二次元物品には、特に、強誘電性、圧電性、誘電性または焦電性挙動を高めるために、後加工処理、例えばアニーリング、延伸、二軸延伸などをさらに施すことができる。
【0057】
二次元物品は、とりわけ、高いポーリング電場にかけることができる。この高いポーリング電場は、高電圧およびデータ取得コンピュータ制御システム、分極、保磁場で測定される残留分極および最大変位電流によってリアルタイムで、調整のための分極サイクルによって得られる。この方法の実施形態は、それらの開示が参照により本明細書に援用される、ISNER−BROM、P.ら、「Intrinsic Piezoelectric Characterization of PVDF copolymers:determination of elastic constants」、Ferroelectrics、vol.171(1995)、271〜279ページに、BAUER、F.ら、「Very high pressure behaviour of precisely−poled PVDF」、Ferroelectrics、vol.171(1995)、95〜102ページに、ならびに米国特許第4,611,260号明細書(DEUTSCH FRANZ FORSCH INST(仏国))1986年9月9日、および米国特許第4,684,337号明細書(DEUTSCH FRANZ FORSCH INST(仏国))1987年8月4日に記載されている。
【0058】
本発明を、その目的が例示的であるにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図しない以下の実施例と関連させて、より詳細に説明する。
【実施例】
【0059】
[実施例1]−VDF−TrFEコポリマー75/25(モル比)の製造
邪魔板、および550rpmで作動する攪拌機を備えた5リットルのAISI 316スチール垂直オートクレーブに、3.5Lの脱塩水を導入した。温度が120℃の設定点に達したとき、米国特許第7,122,608号明細書(SOLVAY SOLEXIS SPA(イタリア国))2006年10月17日に記載されている通りの35gのナトリウムベースのマイクロエマルジョンを、7.35絶対バールのVDFと一緒に反応器に導入した。次いで、VDF−TrFE(75/25モル%)のガス混合物を、30絶対バールの圧力に達するまで供給した。
【0060】
気相は、重合を開始させる前に、GC分析によって次の組成(モル%)を有していたことが分かった:82.5%のVDF、17.5%のTrFE。
【0061】
こうして、27ccの純ジ−tert-ブチルペルオキシド(DTBP)を、反応を開始させるために供給した。重合圧力を、上述したVDF−TrFE混合物を連続的に供給することによって維持した。混合物の目標量の2%を供給した後、温度を105℃に下げ;1150gのモノマー混合物を供給した時点で供給を中断し、T=105℃を維持して圧力を15絶対バールにまで低下するに任せた。次いで、反応器をガス抜きし、冷却し、ラテックスを排出させ、凍結によって凝固させ、脱塩水で洗浄し、100℃で乾燥させた。
【0062】
得られたコポリマーは、3.5g/10分のMFI(230℃/5kg)、144.5℃の第2溶融温度(DSCによるTm2)、109.6℃のキュリー(Curie)温度(Tキュリー2)、および123.7℃の結晶化温度(Txx)を有することが分かった。図1は、このポリマーのDSCスキャン(第2溶融)を描写し、図中、x軸は℃単位の温度を表し、y軸はW/g単位の正規化熱流量を表し;スキャンは、キュリー転移(Curie transaction)(109.6℃での)に関連する第1ピーク(A)とポリマー溶融(144.5℃での)に関連する第2ピーク(B)を示す。キュリー温度より上で、結晶相の転移が強誘電相から実質的に常誘電相へと起こることはよく知られている。
【0063】
このコポリマーの他の関連特性を本明細書で下記の表1にまとめる。
【0064】
鎖の末端は、PIANCA、M.ら、「End groups in fluoropolymers」、Journal of Fluorine Chemistry、vol.95(1999)、71〜84ページに記載されている方法に従って測定した。関連する鎖の末端の濃度を、ポリマー1kg当たりのミリモルとしておよびVDF1kg当たりのミリモルとしての両方で表す。
【0065】
[実施例2]−VDF−TrFEコポリマー70/30(モル比)の製造
実施例1と同じ手順を繰り返したが、下記を用いた:
− 初期VDF圧力は4.7絶対バールであった;
− VDF/TrFE混合物の組成は70/30モル/モルであった;
− 供給した混合物の総量は1200gであった。
【0066】
気相は、重合を開始させる前に、GC分析によって次の組成(モル%)を有することが分かった:76.5%のVDF、23.5%のTrFE。
【0067】
得られたコポリマーは、2.4g/10分のMFI(230℃/5kg)、147.5℃の第2溶融温度(DSCによるTm2)、94.6℃のキュリー温度(Tキュリー2)、および125.1℃の結晶化温度(Txx)を有することが分かった。このコポリマーの他の関連特性を、下記の表1にまとめる。
【0068】
[実施例3]−VDF−TrFEコポリマー75/25(モル比)の製造
実施例1と同じ手順を繰り返したが、下記を用いた:
− 30ccのDTBPを27ccの代わりに供給した;
− 1ccのCFC A123(連鎖移動剤)を、モノマー混合物の1%が消費された時点で供給した。
【0069】
気相は、重合を開始させる前に、GC分析によって次の組成(モル%)を有することが分かった:82.5%のVDF、17.5%のTrFE。
【0070】
得られたコポリマーは、5.9g/10分のMFI(230℃/5kg)、144.3℃の第2溶融温度(DSCによるTm2)、110℃のキュリー温度(Tキュリー2)、および122.7℃の結晶化温度(Txx)を有することが分かった。このコポリマーの他の関連特性を、下記の表1にまとめる。
【0071】
[実施例4]−VDF−TrFEコポリマー75/25(モル比)の製造
実施例1と同じ手順を繰り返したが、下記を用いた:
− 24ccのDTBPを27ccの代わりに供給した。
気相は、重合を開始させる前に、GC分析によって次の組成(モル%)を有することが分かった:82.5%のVDF、17.5%のTrFE。
【0072】
得られたコポリマーは、1.7g/10分のMFI(230℃/5kg)、144.9℃の第2溶融温度(DSCによるTm2)、109.8℃のキュリー温度(Tキュリー2)、および122.8℃の結晶化温度(Txx)を有することが分かった。このコポリマーの他の関連特性を、下記の表1にまとめる。
【0073】
[実施例5]−VDF−TrFEコポリマー83/17(モル比)の製造
実施例1と同じ手順を繰り返したが、下記を用いた:
− 32.5mlのマイクロエマルジョンを最初に導入した;
− 初期VDF圧力は10.6絶対バールであった;
− VDF/TrFE混合物の組成は83/17モル/モルであった;
− 反応を30mlのDTBPで開始させた;
− 8mlのCFCA 123を、混合物の1%が反応した時点で供給した;
− 供給した混合物の総量は1150gであった。
【0074】
気相は、重合を開始させる前に、GC分析によって次の組成(モル%)を有することが分かった:89.5%のVDF、10.5%のTrFE。
【0075】
得られたコポリマーは、29.2g/10分のMFI(230℃/5kg)、138.6℃の第2溶融温度(DSCによるTm2)、138.6℃のキュリー温度(Tキュリー2)、および118.5℃の結晶化温度(Txx)を有することが分かった。このコポリマーの他の関連特性を、下記の表1にまとめる。
【0076】
[比較例6]−懸濁重合によるVDF−TrFEコポリマー70/30(モル比)の製造
880rpmで作動する攪拌機を備えた4リットルのAISI 316スチール垂直オートクレーブに、1406gの脱塩水を導入した。温度が14℃に達したとき、664gのVDF、358gのTrFEを、713gのCa(OH)溶液(40,25DN/Kg)、26.5gのBermocoll(登録商標)E230Gの溶液(20g/Kg)、3.11gのクロロギ酸エチルおよび8.3gのジエチレンカーボネートと組み合わせて導入した。次いで、温度を40℃にすると、80絶対バールの圧力に達した。反応を、圧力が44バールに低下するまで続行させた。反応器を55℃に冷却し;圧力が29絶対バールに低下したらすぐに、温度を60℃にした。圧力を8絶対バールに低下するに任せ、反応器を室温に冷却し、排出させた。920gのポリマーを含有するスラリーを得て、脱塩水で洗浄し、100℃で16時間乾燥させた。
【0077】
得られたコポリマーは、2.1g/10分のMFI(230℃/5kg)、151.3℃の第2溶融温度(DSCによるTm2)、110.4℃のキュリー温度(Tキュリー2)、および139.1℃の結晶化温度(Txx)を有することが分かった。このコポリマーの他の関連特性を、下記の表1にまとめる。
【0078】
[比較例7]−懸濁重合によるVDF−TrFEコポリマー75/25(モル比)の製造
比較例6と同じ手順を繰り返したが、
− 765gのVDFおよび255gのTrFEを最初に導入した。
【0079】
900gのポリマーを含有するスラリーを得て、脱塩水で洗浄し、100℃で16時間乾燥させた。
【0080】
得られたコポリマーは、1.5g/10分のMFI(230℃/5kg)、150℃の第2溶融温度(DSCによるTm2)、124.6℃のキュリー温度(Tキュリー2)、および128℃の結晶化温度(Txx)を有することが分かった。このコポリマーの他の関連特性を、下記の表1にまとめる。
【0081】
[比較例8]−無機開始剤でのマイクロエマルジョン重合によるVDF−TrFEコポリマー75/25(モル比)の製造
実施例1に記載した手順と類似の手順を繰り返したが、32.5gのマイクロエマルジョン、7.35絶対バールのVDF、および33mlの酢酸エチルを供給する前に、温度を80℃に設定した。次いで、混合物VDF−TrFE(75/25モル/モル)を、50絶対バールの全圧になるまで供給した。
【0082】
気相は、重合を開始させる前に、GC分析によって次の組成(モル%)を有することが分かった:82.5%のVDF、17.5%のTrFE。
【0083】
30mlのペルオキソ二硫酸アンモニウムの溶液(0.037M)を、重合を開始させるために供給した。
【0084】
1150gのVDF−TrFEを、50絶対バールの圧力を維持するために連続的に供給し;次いで、重合を中断させ、ラテックスを実施例1に詳述した通りに処理した。
【0085】
得られたコポリマーは、4.2g/10分のMFI(230℃/5kg)、148℃の第2溶融温度(DSCによるTm2)、109.9℃のキュリー温度(Tキュリー2)、および123.9℃の結晶化温度(Txx)を有することが分かった。このコポリマーの他の関連特性を、下記の表1にまとめる。
【0086】
【表1】

【0087】
GPCからの数平均分子量ならびに(a)および(b)型の鎖の末端の数の比較から、これらの末端が、ポリマー主鎖の末端に由来せず、むしろバックバイティングに由来し、従って、ポリマー主鎖中の短鎖分岐に関連することを容易に理解することができる。
【0088】
[実施例9] VDF−TrFE−CTFEコポリマー71.4/21.6/7(モル比)の製造
実施例1と同じ手順を繰り返したが、
− 初期VDF圧力は7バール(絶対)であり、初期圧力CTFEは0.4バール(絶対)であった;
− 連続的に供給するモノマー混合物VDF/TrFE/CTFEの組成は、71.4/21.6/7モル/モルであった;
− 反応を20mlのDTBPで開始させた;
− 温度を、最初は120℃に設定し、次に、モノマーの2%が反応した後、105℃に維持した。
【0089】
気相は、重合を開始させる前に、GC分析によって次の組成(モル%)を有することが分かった:80.7%のVDF、11.8%のTrFE、7.5%のCTFE。
【0090】
587gのVDF−TrFE−CTFEモノマー混合物を、30絶対バールの圧力を維持するために連続的に供給し;次いで、重合を中断させ、ラテックスを、実施例1に詳述した通りに処理した。
【0091】
得られたコポリマーは、2.9g/10分のMFI(230℃/5kg)、122.1℃の第2溶融温度(DSCによるTm2)、44.6℃のキュリー温度(Tキュリー2)を有することが分かった。
【0092】
[実施例10] VDF−TrFE−CTFEコポリマー70/23/7(モル比)の製造
実施例9を、
− 初期VDF圧力が6.8バール(絶対)であった;
− VDF−TrFE−CTFE70/23/7のモノマー混合物を、設定点圧力を維持するために使用した
ことを除いて繰り返した。
【0093】
気相は、重合を開始させる前に、GC分析によって次の組成(モル%)を有することが分かった:78.2%のVDF、13.6%のTrFE、8.2%のCTFE。
【0094】
得られたコポリマーは、6.95g/10分のMFI(230℃/5kg)、122℃の第2溶融温度(DSCによるTm2)、43.7℃のキュリー温度(Tキュリー2)を有することが分かった。
【0095】
[実施例11] VDF−TrFE−CTFEコポリマー67/25/8(モル比)の製造
実施例9を、
− 初期VDF圧力が6.45バール(絶対)であり、初期CTFE圧力が0.45バール(絶対)であった;
− VDF−TrFE−CTFE67/25/8のモノマー混合物を、設定点圧力を維持するために使用した;
− 18mlのDTBPを、重合を開始させるために導入した
ことを除いて繰り返した。
【0096】
気相は、重合を開始させる前に、GC分析によって次の組成(モル%)を有することが分かった:74.9%のVDF、17.3%のTrFE、7.8%のCTFE。
【0097】
得られたコポリマーは、4.4g/10分のMFI(230℃/5kg)、118.7℃の第2溶融温度(DSCによるTm2)、26.6℃のキュリー温度(Tキュリー2)を有することが分かった。
【0098】
【表2】

【0099】
[機械的特性の測定]
実施例1、実施例2、比較例6、比較例8、実施例9、実施例10および実施例11のコポリマーを、220〜230℃の温度プロフィールで作動する二軸スクリュー押出機でペレット化した。
【0100】
ペレットを、圧縮成形して300μmの厚さを有するフィルムとし;機械的特性をかかるフィルムについて評価した。データを表3にまとめる。
【0101】
【表3】

【0102】
表3のデータから明らかとなるように、本発明のコポリマーは、比較例8および6の相当するポリマーより、降伏点伸びおよび破断点伸びがより高い値であることによって示されているとおり、より可撓性であることが分かった。。
【0103】
[偏光フィルムに関する機械的特性の測定]
上述したとおりのペレットを、メチルエチルケトンに溶解させ、この溶液をガラス基材上にキャストし、引き続き溶剤を蒸発させることによってフィルムを形成させた。100℃で14時間乾燥させた後、約30μmの厚さを有するフィルムを得た。次いで、フィルムをキュリー温度より高い温度に加熱し、空気中、室温で急冷した。132〜133℃でのアニーリングを約1時間続行させた。機械的特性の結果を表4にまとめる。
【0104】
【表4】

【0105】
[圧電特性の測定]
上述したアニーリングしたフィルムを、圧電性キャラクタリゼーションにかけた。白金および金の電極を表面上にスパッタリングした。分極ヒステリシス測定を、圧電性回路を用いて実施した。
【0106】
実施例1、実施例2、対照例6のコポリマーについての測定は、5μC/cmより高い残留分極(ゼロ電圧での分極)を示し、これらのフィルム30μmについての電気絶縁破壊は300〜400V/μmの範囲にあることが分かった。残留分極および電気絶縁破壊の両方とも、強誘電−圧電−焦電性用途向けに満足できるものと考えられた。
【0107】
これらのデータは、既に示したように、改善された可撓性と修正された結晶化挙動とを有する本発明のコポリマーが、それらの圧電特性の点で悪影響を受けないことを裏付けている。特に、これらの材料は、先行技術のポリマーに対して、実質的に変わらない圧電係数を有しながら、VDF−TrFEコポリマーに典型的な傑出した圧電性挙動を有することが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化ビニリデン(VDF)およびトリフルオロエチレン(TrFE)に由来する繰り返し単位を含むポリマーであって、VDF繰り返し単位1kg当たり少なくとも60ミリモルの量で、式:−CFHおよび/または−CFCHの末端基を含む、ポリマー[ポリマー(F)]。
【請求項2】
10〜40モル%、好ましくは15〜30モル%のTrFEに由来する繰り返し単位を含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
− 10〜50モル%、好ましくは15〜40モル%のTrFEに由来する繰り返し単位と;
− 50〜90モル%、好ましくは60〜85モル%のVDFに由来する繰り返し単位と
から本質的になる、請求項2に記載のポリマー。
【請求項4】
− 15〜40モル%、好ましくは20〜35モル%、より好ましくは20〜25モル%のTrFEに由来する繰り返し単位と;
− 55〜76モル%、好ましくは62〜74モル%、より好ましくは65〜72モル%のVDFに由来する繰り返し単位と;
− 5〜16モル%、好ましくは6〜12モル%、より好ましくは8〜10モル%のクロロトリフルオロエチレン(CTFE)に由来する繰り返し単位と
から本質的になる、請求項2に記載のポリマー。
【請求項5】
VDF繰り返し単位1kg当たり少なくとも70ミリモル、より好ましくはVDF繰り返し単位1kg当たり少なくとも80ミリモル、さらにより好ましくはVDF繰り返し単位1kg当たり少なくとも90ミリモルの、式:−CFHおよび/または−CFCHの末端基を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項6】
有利には0.5〜500g/10分の、好ましくは1〜200g/10分の、より好ましくは2〜10g/10分の、ASTM D 1238(230℃/5kg)に準拠して測定されるMFIを有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項7】
VDFと、TrFEと、場合により少なくとも1種のコモノマーとを、水性媒体中、ラジカル開始剤の存在下、かつ、非官能性末端基を有する少なくとも1種のパーフルオロポリエーテル(PFPE)オイルと少なくとも1種のフッ素化界面活性剤[界面活性剤(FS)]とのマイクロエマルジョンの存在下、15〜35バールの重合圧力で、重合させる工程を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリマー(F)の製造方法。
【請求項8】
前記PFPEオイルが、パーフルオロオキシアルキレン単位がランダに分布した、一般式:
O(CF−CF(CF)O)m’(CFYO)n’R’’
〔式中、RおよびR’’は、互いに等しいかまたは異なり、フッ素とは異なる1個以上のハロゲン原子または水素原子を任意に含んでいてもよい、1〜3個の炭素原子を有するフルオロ(ハロ)アルキル(例えば、CF−、C−、C−、ClCFCF(CF)−、CFCFClCF−、ClCFCF−、ClCF−)であり、m’およびn’は、PFPEオイルの数平均分子量が400〜3000、好ましくは600〜1500の範囲内となるような整数であり;YはFまたはCFである〕
のオイルから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記フッ素化界面活性剤[界面活性剤(FS)]が、
− CF(CFn1COOM’(式中、nは、4〜10、好ましくは5〜7の範囲の整数であり、より好ましくは6に等しく;M’は、H、NH、Na、LiまたはK、好ましくはNHを表す);
− T−(CO)n0(CFXO)m0CFCOOM’’(式中、Tは、Cl、または、kが1〜3の整数であり、F原子がCl原子で任意に置換されていてもよい、式:C2k+1Oのパーフルオロアルコキシド基を表し;nは1〜6の範囲の整数であり;mは0〜6の範囲の整数であり;M’’は、H、NH、Na、LiまたはKを表し;XはFまたはCFを表す);
− F−(CF−CFn2−CH−CH−ROM’’’(式中、Rは、PまたはS、好ましくはSであり、M’’’は、H、NH、Na、LiまたはK、好ましくはHを表し;nは、2〜5の範囲の整数、好ましくはn=3である);
− A−Rbf−Bの二官能性フッ素化界面活性剤(式中、AおよびBは、互いに等しいかまたは異なり、−(O)CFX’’−COOMであり;Mは、H、NH、Na、LiまたはKを表し、好ましくはMはNHを表し;X’’=FまたはCFであり;pは0または1に等しい整数であり;Rbfは、A−Rbf−Bの数平均分子量が300〜1,800の範囲となるような、二価のパーフルオロアルキル鎖または(パー)フルオロポリエーテル鎖である);
− ならびにこれらの混合物
から選択される、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記ラジカル開始剤が、下記:
アセチルシクロヘキサンスルホニルペルオキシド;ジアセチルペルオキシジカーボネート;ジアルキルペルオキシジカーボネート;過ネオデカン酸tert-ブチル;2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル;過ピバル酸tert-ブチル;ジオクタノイルペルオキシド;ジラウロイルペルオキシド;2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル);tert-ブチルアゾ−2−シアノブタン;シベンゾイルペルオキシド;過2−エチルヘキサン酸tert-ブチル;過マレイン酸tert-ブチル;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル);ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン;tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート;過酢酸tert-ブチル;2,2’−ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン;ジクミルペルオキシド;ジ−tert-アミルペルオキシド;ジ−tert-ブチルペルオキシド;p−メンタンヒドロペルオキシド;ピナンヒドロペルオキシド;クメンヒドロペルオキシド;tert-ブチルヒドロペルオキシド;クロロカーボンベースのアシルペルオキシドおよびフルオロカーボンベースのアシルペルオキシド〔例えば、トリクロロアセチルペルオキシド、ビス(パーフルオロ−2−プロポキシプロピオニル)ペルオキシド、[CFCFCFOCF(CF)COO]、パーフルオロプロピオニルペルオキシド、(CFCFCFCOO)、(CFCFCOO)、{(CFCFCF)−[CF(CF)CFO]−CF(CF)−COO}(式中、m=0〜8である)、[ClCF(CFCOO]、および[HCF(CFCOO](式中、n=0〜8である)など〕;パーフルオロアルキルアゾ化合物〔例えば、パーフルオロアゾイソプロパン、[(CFCFN=]、RαN=NRα(式中、Rαは、1〜8個の炭素原子を有する線状または分岐のパーフルオロカーボン基である)など〕;安定なヒンダードパーフルオロアルカンラジカル〔例えば、ヘキサフルオロプロピレン三量体ラジカル、[(CFCF](CFCF)Cラジカルおよびパーフルオロアルカンなど〕
から選択される、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
電気/電子デバイスにおける、強誘電性材料、圧電性材料、誘電性材料または焦電性材料としての、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリマーの使用。

【図1】
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【公表番号】特表2011−522096(P2011−522096A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512066(P2011−512066)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056384
【国際公開番号】WO2009/147030
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(508305960)ソルヴェイ・ソレクシス・エッセ・ピ・ア (53)
【Fターム(参考)】