説明

フッ化第一スズとクエン酸亜鉛および低レベルの水を含む歯磨き剤

有効な量のポリリン酸塩とイオン性有効成分とを含む低水分の相を有する歯磨き剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本態様は歯磨き剤組成物に関する。特に本態様は、有効な量のポリリン酸塩とイオン性有効成分とを含む低水分の相を有する歯磨き剤組成物に関する。イオン性有効成分は、フッ化物イオンと、第一スズイオンや亜鉛イオンの供給源のような金属イオンを含んでいてもよい。
【背景技術】
【0002】
[0002]ポリリン酸塩とイオン性有効成分は、口腔の衛生を増進するために歯磨き剤において用いられてきた。ポリリン酸塩は、歯石の形成を抑制するのを促進する抗歯石剤として知られている。第一スズ(stannous)イオンや亜鉛イオンのような金属イオンは、有効な抗微生物剤であることが知られている。これらの金属イオンは、歯肉炎と歯垢を防ぐ効果を与え、また口臭を改善するとともに敏感さを低減させることができる。フッ化第一スズは、虫歯を防ぐためのフッ化物の供給源として1950年代から歯科医療において用いられてきた。同様に、クエン酸亜鉛は、抗歯垢性、抗歯肉炎性および抗歯石性の効能を有することが示されている。さらに、亜鉛は抗悪臭剤としての効能を有することも示されている。
【0003】
[0003]これらの有効成分は、以前は歯磨き剤において用いられていたが、幾つかの理由から、これらの有効成分を安定した単一の相の中で一緒に用いることは問題があることが証明された。そのような技術的な問題の一つは、第一スズイオンの生物学的利用能を保ち、そして第一スズイオンの供給源の化学的安定性を最大限にすることである。特定のポリリン酸塩は、水分の多い系の中で不安定である。水系中でのそのようなポリリン酸塩は、高いpHにおいて存在するのでなければ加水分解を受け易く、そのことは第一スズの高い有効性とは適合しない。フッ化第一スズは水性環境中で第一スズイオンを沈殿させる傾向があり、それによって口腔保護組成物中での第一スズイオンの効能が低下する。加えて、ポリリン酸塩は周囲温度において口腔組成物中でイオン性フッ化物と反応し、それによってモノフルオロリン酸塩イオンを生成し、そして組成物のpHを変化させる。この反応によって口腔組成物の効能は損なわれ、そしてその組成物が口腔の表面に安定したイオン性フッ化物とポリリン酸塩を供給する能力も損なわれる。
【0004】
[0004]そのような効能のある歯磨き剤組成物を提供する他の試みは、組成物中に存在する水の量を減少させることであった。水の量を減少させることによって理論的には、フッ化物、ポリリン酸塩およびその他のイオン性有効成分と関連する安定性の問題が低減するか解消するであろう。しかし、水のレベルを低減させ、そして場合によっては除去された水の幾分かまたは全てを湿潤剤で置き換えることによって、組成物において許容できる流動性と増粘特性を得ることについての問題が生じる。高度に極性の溶剤である水が除去されると、カルボキシメチルセルロース(CMC)のような慣用の増粘剤は不適当にゲル化する傾向がある。歯磨き剤組成物中の水の含有量を低減させる試みは、例えば欧州特許0638307号(B1)、米国特許4647451号および米国特許5670137号に記載された歯磨き剤において行われている。それらの公知の配合物は、時間をかけて漸進的な増粘を示すことが示されているが、このことが、流動性が一様な状態に達する期間を長びかせ、あるいは歯磨き剤がそのような状態になるのを防ぎもする。理想的には、消費者に受け入れられるためには、歯磨き剤配合物は二週間以内に一様な状態に達する必要がある。もし配合物が決まって次第に粘度を増大させるのであれば、配合物を取り出すことが困難になり、そのことはおそらく消費者の不満を招くだろう。
【0005】
[0005]米国特許6696045号は、ポリリン酸塩とイオン性有効成分を含む単一の低水分の相を有する歯磨き剤組成物を開示している。約21個のリン酸塩基からなる長鎖を有するガラスHポリリン酸塩とフッ化ナトリウムまたはフッ化第一スズを含む組成物が開示されていて、フッ化ナトリウムは場合によりクエン酸亜鉛と組み合わされ、フッ化第一スズは場合により乳酸亜鉛と組み合わされるが、しかし、フッ化第一スズと、短鎖のポリリン酸塩と組み合わせた低水分の組成物中の亜鉛の塩とを、低水分の単一相の系の中でいかにして化合させるかについて、何も開示していない。
【0006】
[0006]米国特許5578293号は、ポリリン酸塩とイオン性有効成分を含む高水分の相を有する歯磨き剤組成物を開示していて、これには第一スズイオンも含まれている。
【0007】
[0007]米国特許5487906号も、ポリリン酸塩とイオン性有効成分を含む高水分の相を有する歯磨き剤組成物を開示していて、これには第一スズイオンも含まれている。
【0008】
[0008]これらの有効成分を効能のある量で含む歯磨き剤組成物を提供する他の試みとしては、二つに仕切られた包装の使用があり、この場合、反応性成分は歯磨きを行うときまで物理的に分離されている(例えば、国際公開(WO)98/22079号「ポリリン酸塩とフッ化物を含む歯磨き剤組成物」を参照されたい)。しかし、このような二区画の包装品は典型的に、歯磨き剤を収容しそして取り出すために長年にわたって使用されてきた従来のラミネートチューブよりもかなり高価になる。それらはまた、消費者の使用の容易さの点で、およびそれぞれの消費者が使用する際にほぼ同じ量の各々の組成物を均一に取り出すことに関して、問題を含んでいるだろう。従って、通常のラミネートの搾り出し式チューブに包装することができる単一相の組成物を提供することが、依然として望ましい。
【0009】
[0009]公知の組成物、方法および装置の特定の利点と不利な点についての本明細書での記述は、本態様の範囲をそれら公知のものが除外するもの(あるいは場合により、包含するもの)に限定することを意図するものではない。実際に、特定の態様は、上述した不利な点を伴うことなく、一つ以上の公知の化合物、方法または装置を含むかもしれない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許0638307号(B1)
【特許文献2】米国特許4647451号
【特許文献3】米国特許5670137号
【特許文献4】米国特許6696045号
【特許文献5】米国特許5578293号
【特許文献6】米国特許5487906号
【特許文献7】国際公開(WO)98/22079号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
[0010]低水分の単一相の系の中でポリリン酸塩と組み合わせて第一スズイオン、フッ化物イオンおよび亜鉛イオンの供給源を効果的に結合することができて、水中で不安定な有効成分および/または単一相において互いに反応性のある有効成分を効果的に放出する歯磨き剤組成物を提供する必要性が、当分野において存在する。また、改善された流動性の特徴、特に組成物が時間をかけて次第に増粘するのを効果的に低下させるかまたは解消するような安定した流動性を有し、ひいては組成物の貯蔵寿命の期間にわたって有効に取り出すことのできる、低水分で単一相の歯磨き剤組成物を提供する必要性が、当分野において存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[0011]第一の態様として、ここで記述される態様は、単一相において、経口許容性のあるビヒクル(基剤)、フッ化物イオンの供給源、第一スズイオンの供給源、亜鉛イオンの供給源、および3個以下のリンの原子を有する無機ポリリン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種のポリリン酸塩を含む歯磨き剤組成物を提供し、ここでこの歯磨き剤組成物は、組成物の重量に基づいて約10%未満の総含水量を有する。
【0013】
[0012]第二の態様として、ここで記述される態様は、単一相において、経口許容性のあるビヒクルを含む歯磨き剤組成物を提供し、そのビヒクルは、架橋ポリビニルピロリドンとガムを組み合わせて含むポリマー系を有する増粘剤を含み、ここでこの歯磨き剤組成物は、組成物の重量に基づいて約10%未満の総含水量を有する。
【0014】
[0013]第三の態様として、ここで記述される態様は、細菌による歯垢の蓄積を処理および防止するための方法および/または浸食または脱ミネラル化(鉱物質除去)を防止するための方法を提供し、この方法は、上述した歯磨き剤組成物を口腔に投与することを含む。
【0015】
[0014]第四の態様として、ここで記述される態様は、歯磨き剤組成物を製造するための方法を提供し、この方法は、第一スズイオンの供給源を用意すること;第一スズイオンの供給源を、この第一スズイオンをキレート化するのに適した水性緩衝剤系と混合し、それによって予備混合物を形成すること;および、その予備混合物を、歯磨き剤組成物の少なくとも1種の有効成分および経口許容性のあるビヒクルと組み合わせること;を含む。
【0016】
[0015]本明細書において論証されるであろうが、好ましい態様は、第一スズイオンを、フッ化物イオン(例えばフッ化第一スズとして)、亜鉛イオン(例えばクエン酸亜鉛として)、およびポリリン酸塩(例えばピロリン酸四ナトリウムまたはトリポリリン酸ナトリウムの形で)と組み合わせることによって、多様な治療上の利益をもたらす歯磨き剤を提供することができる。特定の緩衝剤系を使用することにより、亜鉛イオンとポリリン酸塩の存在下で第一スズイオンを安定させることができて、そして歯を磨くために用いられるときに効果的な抗微生物作用を発揮させるために、単一相の低水分組成物中で第一スズイオンの有効性を維持することができる。
【0017】
[0016]また、本発明の好ましい態様は、安定した第一スズイオンの供給源とポリリン酸塩(例えばピロリン酸四ナトリウムおよび/またはトリポリリン酸ナトリウム)を有する歯磨き剤配合物を単一のチューブにおいて提供することができる。
【0018】
[0017]また、本発明の好ましい態様は、単一のチューブにおいて、フッ化第一スズ、クエン酸亜鉛およびポリリン酸塩、特に3個以下のリンの原子を有するポリリン酸塩(例えばピロリン酸四ナトリウムおよびトリポリリン酸ナトリウム)を単一相の系において組み合わせた低水分の歯磨き剤系であって、口腔の表面に生体有用性のスズ、亜鉛、フッ化物およびポリリン酸塩を供給する歯磨き剤系を提供することができる。
【0019】
[0018]また、本発明の好ましい態様は、時間をかけて次第に増粘する傾向を示すのではなく、迅速に(例えば製造してから数日以内に)増粘して安定した粘度に達するような、安定した流動性を有する、低水分で単一相の歯磨き剤系を提供するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
[0019]
【図1】図1は、実施例における配合Bの歯磨き剤組成物についてのブルックフィールド粘度と時間(日)の間の関係を示すグラフである。
【0021】
[0020]
【図2】図2は、比較の歯磨き剤組成物についてのブルックフィールド粘度と時間(日)の間の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[0021]ここで示される本発明についての説明を検討するにあたっては、以下の定義と非限定的な指針が考慮されるべきである。ここで用いられている(「背景」や「要約」のような)見出しや小見出しは、本発明の開示の中のテーマについての一般的な構成を対象としているにすぎないことが意図されていて、本発明の開示あるいはその何らかの態様を限定することを意図しているのではない。特に、「背景」において開示された主題は、本発明の範囲内の技術についての見地を含んでいるかもしれず、そしてそれは先行技術についての記述を構成していないかもしれない。「要約」において開示された主題は、本発明の全範囲あるいはその何らかの実施態様についての余す所のない開示または完全な開示ではない。(例えば「有効成分」あるいは「担体成分」であるとして)特定の効用を有するものであるとしている本明細書の項目の中の物質についての分類または検討は、便宜上なされたものであり、その物質が何らかの所定の組成物において用いられるときに、それが必ずここでのその分類に従って機能するか、あるいはその分類だけに従って機能するはずであると推定されるべきではない。
【0023】
[0022]ここで言及される全ての刊行物、特許出願および発行された特許は、それらの全体が参考文献として本明細書に取り込まれる。ここで記載される文献の引用文については、それらの文献がここで開示される本発明の先行技術であること、あるいは本発明の特許性に何らかの関連があることを承認するものとしてはみなされない。導入部分で挙げられた文献の内容についてのいかなる説明も、それらの文献の著者によってなされた主張についての概括的な要約を提供することを意図しているにすぎず、それらの文献の内容の的確さについて承認するものとしてはみなされない。
【0024】
[0023]本発明の実施態様を示している説明と特定の実施例は、例証の目的だけのためのものであることが意図されていて、本発明の範囲を限定することは意図されていない。さらに、一定の特徴を有する複数の実施態様についての記述は、追加の特徴を有する他の実施態様を排除するか、あるいは一定の特徴の異なる組み合わせを組み入れた他の実施態様を排除することを意図していない。特定の実施例は、本発明の組成物を製造しそして方法を用いるやり方について例証する目的で提供されているのであって、明確に示されない限り、本発明の所定の実施態様が実際になされたものであるか、あるいは試験されたものであること(あるいは、実際にはなされていないか、試験されていないこと)を表明することは意図していない。
【0025】
[0024]ここで用いられている「好ましい」および「好ましくは」という用語は、一定の状況の下で一定の利益をもたらす本発明の実施態様に関連するものである。しかしながら、同様の状況あるいは別の状況の下で、他の実施態様も好ましいものであるかもしれない。さらに、一つ以上の好ましい実施態様についての記述は、他の実施態様が有用ではないことを意味しているのではなく、他の実施態様を本発明の範囲から除外することを意図してはいない。
【0026】
[0025]ここで用いられている「含む(comprising)」は、「からなる」および「実質的に〜からなる」を包含している。ここで用いられている「含む(include)」という用語およびその変形は、非限定的であることを意図していて、従って、一覧において種目を列挙していることは、本発明の物質、組成物、装置および方法において同様に有用であるかもしれないその他の類似の種目を排除するものではない。
【0027】
[0026]ここで用いられている「約」という用語は、本発明の組成物または方法のパラメーターについての値に適用された場合、その値の計算値または測定値が、組成物または方法の化学的または物理的な特質に実質的な影響を及ぼすことなく、幾分かのわずかな不正確さを許容することを示す。何らかの理由により、「約」によってもたらされる不正確さが、この通常の意味によっても当分野で理解されない場合は、ここで用いられている「約」は、5%までの値の変位が可能であることを示している。
【0028】
[0027]ここで用いられている全てのパーセントは、特に明示しない限り、歯磨き剤組成物の全体の重量によるものである。ここで用いられている比率は、特に明示しない限り、それぞれの成分の重量比である。全ての測定は、特に明示しない限り、25℃において行われたものである。
【0029】
[0028]全体を通して、範囲は、その範囲内の各々の値および全ての値を記載するための簡略な表現として用いられている。範囲内のいかなる値も、その範囲の末端として選択することができる。
【0030】
[0029]ここで、「有効な量」とは、肯定的な利益(好ましくは口腔衛生上の利益)を顕著にもたらすのに十分であるが、しかし重大な副作用が避けられるほどに十分に低い、すなわち、当業者の妥当な判断の範囲内で危険率に比べて合理的な利益をもたらすのに十分な、化合物または組成物の量を意味する。
【0031】
[0030]歯磨き剤組成物は、通常に投与する際に、特定の治療剤を全身的に投与する目的で意図的に飲み込まれるのではなく、口腔を活性にする目的で歯の表面および/または口腔組織の実質的に全体と接触するのに十分な時間にわたって口腔内に保持される生成物である。本発明の歯磨き剤組成物は、練り歯磨きまたは歯磨き粉の形態とすることができる。ここで用いられている「歯磨き粉」という用語は、特に明示しない限り、ペースト配合物またはゲル配合物を意味する。この歯磨き剤組成物は、ペーストをゲルが取り巻いていて、深い縞のある形態、表面に縞のある形態、多層の形態、あるいはこれらの任意の組み合わせのような、いかなる所望の形態であってもよい。
【0032】
[0031]ここで用いられている「水性担体」という語句は、本態様の組成物において用いるために安全で有効なあらゆる物質を意味する。そのような物質としては、増粘剤、湿潤剤、イオン性有効成分、緩衝剤、抗歯石剤、研磨物質、過酸化物の供給源、アルカリ金属の重炭酸塩、界面活性剤、二酸化チタン、着色剤、香味料、甘味料、抗微生物剤、薬草剤、減感剤、汚れ低減剤、およびこれらの混合物がある。
【0033】
[0032]ここに記述される態様は、低含水量で経口許容性のあるビヒクル(基剤)を含む相、フッ化物イオンの供給源、第一スズイオンの供給源、亜鉛イオンの供給源、および少なくとも1種のポリリン酸塩を含む歯磨き剤組成物に関するものである。ポリリン酸塩は、3個以下のリンの原子を有する無機ポリリン酸塩であってもよい。この歯磨き剤組成物は、組成物の重量に基づいて約10%未満の総含水量を有していてもよい。この歯磨き剤組成物は好ましくは、組成物の重量に基づいて約6%未満の総含水量を有する。
【0034】
[0033]ビヒクルは、架橋ポリビニルピロリドンとガムのうちの少なくとも1種を含むポリマー系を有する増粘剤を含んでいてもよい。増粘剤は、架橋ポリビニルピロリドンとガムを組み合わせて含んでいてもよい。ガムはキサンタンガムを含んでいてもよい。ガムは組成物の0.1〜0.5重量%の割合、好ましくは組成物の0.2〜0.3重量%の割合で含まれていてもよい。
【0035】
[0034]架橋ポリビニルピロリドンは、N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマーを含んでいてもよい。架橋ポリビニルピロリドンは、組成物の0.05〜15重量%の割合、好ましくは組成物の0.75〜1.25重量%の割合で含まれていてもよい。
【0036】
[0035]少なくとも1種のポリリン酸塩は、ピロリン酸塩またはトリポリリン酸塩のアルカリ金属塩からなる群から選択することができて、好ましくは、少なくとも1種のポリリン酸塩は、ピロリン酸四ナトリウムまたはトリポリリン酸ナトリウムからなる群から選択される。少なくとも1種のポリリン酸塩は、ピロリン酸四ナトリウムとトリポリリン酸ナトリウムの混合物を含んでいてもよく、そして好ましくは、ピロリン酸四ナトリウムとトリポリリン酸ナトリウムの混合物はピロリン酸四ナトリウムとトリポリリン酸ナトリウムをおよそ2:3の重量比で含んでいる。少なくとも1種のポリリン酸塩は、組成物の1〜10重量%の割合、好ましくは組成物の3〜7重量%の割合で含まれていてもよい。
【0037】
[0036]好ましくは、フッ化物イオンの供給源と第一スズイオンの供給源はフッ化第一スズを含む。好ましくは、亜鉛イオンの供給源は有機酸の亜鉛塩を含み、より好ましくはクエン酸亜鉛を含む。また、亜鉛イオンの供給源は、例えば酸化亜鉛、酒石酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、その他同種類のものを含む任意の亜鉛化合物を含んでいてもよい。
【0038】
[0037]この歯磨き剤組成物において、増粘剤はさらに、セルロースと、酸化エチレンと酸化プロピレンの合成ブロックコポリマーのうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。組成物はさらに、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の湿潤剤を含んでいてもよい。
【0039】
[0038]好ましくは、この組成物はさらに、第一スズイオンの供給源のための水性緩衝剤系を含む。緩衝剤系は好ましくは、組成物中の第一スズイオンをキレート化するように適合される。緩衝剤系は、有機酸またはそのアルカリ金属塩のうちの少なくとも1種を含んでいてもよく、有機酸は好ましくはクエン酸である。緩衝剤系は、クエン酸とクエン酸三ナトリウムの混合物を含んでいてもよい。緩衝剤系は、組成物の1〜5重量%の割合で含まれていてもよい。緩衝剤系は、第一スズイオンの供給源の(重量基準での)量よりも多い量(重量基準での量)で存在していてもよい。
【0040】
[0039]ここで記述される緩衝剤系を使用することにより、不溶性のスズ化合物の沈殿が低減するか、あるいは解消すると考えられる。作用についてのいかなる理論にも拘束されるつもりはないが、水性緩衝剤系、例えばクエン酸塩緩衝剤系(これは、第一スズイオンをキレート化するための、第一スズ塩に対する予備混合物として用いてもよい)は、低水分の歯磨き剤組成物において、亜鉛イオンとポリリン酸塩の存在下で、不溶性のスズ化合物の沈殿を低減または解消することができる、と発明者らは考えている。
【0041】
[0040]同様に、本発明はまた、歯磨き剤組成物を製造するための方法を提供し、この方法は、第一スズイオンの供給源を用意することと、第一スズイオンの供給源を、この第一スズイオンをキレート化するのに適した水性緩衝剤系と混合し、それによって予備混合物を形成すること、および、その予備混合物を、歯磨き剤組成物の少なくとも1種の有効成分および経口許容性のあるビヒクルと組み合わせることを含む。
【0042】
[0041]本発明はまた、単一相において、経口許容性のあるビヒクルを含む歯磨き剤組成物を提供し、そのビヒクルは、架橋ポリビニルピロリドンとガムを組み合わせて含むポリマー系を有する増粘剤を含み、ここでこの歯磨き剤組成物は、組成物の重量に基づいて約10%未満の総含水量を有する。
【0043】
[0042]作用についてのいかなる理論にも拘束されるつもりはないが、架橋ポリビニルピロリドンとガム(例えばキサンタンガム)を組み合わせて用いる特定の増粘剤系は、単一相の低水分歯磨き剤組成物が、実質的に一定でなおかつ長い貯蔵寿命にわたって歯磨き剤組成物を容易に取り出すことができるほど十分に低い粘度を得ることを可能にする、と発明者らは考えている。いかなる理論にも拘束はされないが、架橋ポリビニルピロリドンとガム(例えばキサンタンガム)の組み合わせは、ポリビニルピロリドンポリマー増粘剤が低水分の系の中で容易に水和することを可能にし、それにより、歯磨き剤組成物を製造する間にポリマーの実質的に完全な初期の水和が行われることが可能になる、と発明者らは考えている。このことにより、ポリマーのその後の水和が最少化し、最初に製造した後にポリマーが時間をかけて連続的かつ次第に水和する傾向が強くなり、それにより、組成物中の他の原料の供給源から水が除去されて、その結果、次第に増粘するのであろう。
【0044】
[0043]本明細書は、本発明を特に示して明確に権利主張している特許請求の範囲で終わりとなるが、本発明は、好ましい実施態様についての以下の説明によって、さらに良く理解されると思量する。
【0045】
ポリリン酸塩の供給源
[0044]本態様はポリリン酸塩の供給源を含んでいてもよい。ポリリン酸塩は、歯石の形成を抑制するのを促進することで知られている。しかし、約4よりも大きい平均の鎖の長さを有するポリリン酸塩は、口腔組成物のpHを変化させることに加えて、周囲温度において口腔組成物中のイオン性フッ化物と反応して、モノフルオロリン酸塩イオンを生成することも知られている。この反応は、口腔組成物の効能、および組成物が口腔の表面に安定したイオン性フッ化物とポリリン酸塩を供給する能力をそこなうかもしれない。また、安定したポリリン酸塩を供給するためには、口腔組成物の総含水量とpHを、ポリリン酸塩の加水分解が低減するように制御するべきである、ということも知られている。
【0046】
[0045]一般に、ポリリン酸塩は、幾分かの環状の誘導体が存在するかもしれないが、主として線状に配置された2以上のリン酸塩の分子からなるものと理解されている。本発明の歯磨き剤組成物において用いられる、好ましい無機ポリリン酸塩(これは好ましくはアルカリ金属塩である)は、3個以下のリンの原子を有していて、これは例えば、ピロリン酸四ナトリウムのようなピロリン酸塩またはトリポリリン酸ナトリウムのようなポリリン酸塩である。これらのポリリン酸塩は単独で用いてもよく、あるいはそれらを任意に組み合わせて用いてもよい。
【0047】
[0046]ポリリン酸塩の供給源の有効な量は、歯磨き剤組成物の全体の重量に基づいて、約0.1%〜約30%、好ましくは約1%〜約26%、より好ましくは約4%〜約20%、そして最も好ましくは約5%〜約13%であってよい。典型的な範囲は、歯磨き剤組成物の全体の重量に基づいて約1%〜約10%、より典型的には、歯磨き剤組成物の全体の重量に基づいて約3%〜約7%である。
【0048】
水性担体
[0047]本組成物を調製する際に、1種以上の水性担体を組成物に添加するのが望ましい。そのような物質は当分野で周知であり、調製される組成物のために望ましい物理的性質や審美的性質に基づいて当業者によって容易に選択される。典型的には、水性担体は、歯磨き剤組成物の重量に基づいて、約40%〜約99%の割合で含まれ、好ましくは約70%〜約98%、そしてより好ましくは約90%〜約95%の割合で含まれる。
【0049】
総含水量
[0048]商業的に適切な口腔組成物の調製において用いられる水は、イオン含有量が低く、そして有機不純物を含んでいないことが好ましい。この歯磨き剤組成物において、水は一般的に、組成物の重量に基づいて約10%未満、好ましくは約0%〜約6%の割合で含まれるだろう。ポリリン酸塩およびフッ化物や第一スズのような有効成分は、この組成物においてそのような低レベルの水には溶解しない。しかし、これらの成分は、この組成物において他の低極性溶媒には溶解して、非イオン分子構造を形成するだろう。いずれの場合にも、それらの有効成分は、貯蔵されている間、組成物中で安定した状態を維持する。フッ化物イオンと第一スズイオンは、もし存在する場合、ブラシで歯磨きを行う際に唾液および/または水と接触するときに、それらの塩の形態または非イオン溶液の形態から放出されるだろう。従って、例えば二つに仕切られた包装を使用することによって、組成物のイオン性有効成分を含有する部分から組成物のポリリン酸塩を含有する部分を物理的に分離する必要はない。さらに、本組成物においては様々な供給源からのフッ化物イオンを有効に用いることができて、米国特許6190644号の「ポリリン酸塩とモノフルオロリン酸ナトリウムを含有する歯磨き剤組成物」に先行して記載されている組成物中のポリリン酸塩と最も適合するフッ化物イオンの供給源としてモノフルオロリン酸ナトリウムを優先して使用するようなことはない。
【0050】
[0049]水の量には、独立して添加される水の量に加えて、シリカ、界面活性剤溶液および/または着色剤溶液のような他の物質とともに導入される水の量が含まれる。
結合剤系
[0050]本発明の歯磨き剤組成物は好ましくは、架橋ポリビニルピロリドンをガムと組み合わせて含む結合剤系を有している。結合剤系はさらに、多糖類、カルボマー(carbomers)、ポロキサマー、改質セルロース、およびこれらの混合物、および少なくとも1種の湿潤剤からなる群から選択される少なくとも1種の追加の増粘剤を含んでいてもよい。増粘剤は、組成物の重量に基づいて、約0.05%〜約3%の割合で含まれ、そして好ましくは約0.1%〜1.5%の割合で含まれる。これらの結合剤系は、低水分組成物に望ましい粘ちゅう度(コンシステンシー)とゲル化を与える。水に望ましい流動性を与えるゲル化物質と湿潤剤は、それらのゲル化結合特性を活性化するための水が存在しないときは、一般に不十分な流動性を与える、ということがこれまで知られていた。このことは、グリセリン湿潤剤については特に当てはまると考えられる。この結合剤系は、追加の無機増粘剤をさらに含んでいてもよい。
【0051】
増粘剤
[0051]ここで用いるのに適した、ガムを含めた多糖類としては、カラギーナン、ゲランガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、およびこれらの混合物がある。カラギーナンは海藻由来の多糖類であり、練り歯磨きにおける結合剤または増粘剤として用いられることが知られている(例えば、米国特許6187293号(B1)および米国特許6162418号を参照されたい)。海藻の種類および/または硫酸化の程度と位置によって区別することのできる幾つかのタイプのカラギーナンが存在する。本発明において用いるのに適したものは、カッパカラギーナン、改質カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、改質イオタカラギーナン、およびこれらの混合物である。ここで用いるのに適したカラギーナンとしては、FMC Companyから「Viscarin」という一連の名称で市販されているものがあり、それにはViscarin TP 329、Viscarin TP 388、およびViscarin TP 389がある(これらには限定されない)。
【0052】
[0052]ゲランガムは、ここで用いるのに適した別の多糖類である。それは、シュードモナス・カナダモ(pseudomonas elodea)によって好気性発酵された多糖類である。これはまた、約0.1%〜約3%、好ましくは約0.4%〜約1.8%(w/w)のレベルで存在するとき、許容できる低水分の基剤を形成することができる。
【0053】
[0053]ローカストビーンガムとキサンタンガムも、ここで用いるのに適した多糖類である。増粘剤としてのローカストビーンガムまたはキサンタンガムは、組成物中の水分が10%未満であるときに、安定した許容できる歯磨き剤の基剤を形成することができる。
【0054】
[0054]ここでの低水分の基剤においては、ポロキサマーも増粘剤として適している。ポロキサマーは酸化エチレンと酸化プロピレンの合成ブロックコポリマーである。それは幾つかのタイプにおいて利用できる。ここでは、ポロキサマー407が好ましい。それは部分的に水に溶解することができる。温度が65℃よりも高いとき、それはグリセリンに溶解することができる。例えば、BASF CORPORATION(米国、ニュージャージー州)からのPOLOXAMER 407(登録商標)を利用することができる。
【0055】
[0055]低水分の基剤、特に無水基剤においては、カルボマーも増粘剤として適している。
[0056]低水分の基剤においては、ヒドロキシエチルセルロースのような改質セルロースも良好な増粘剤である。本組成物においては水分のレベルが限定されているので、グリセリン、プロピレングリコールおよびPEGのような他の低極性溶媒中でのこの増粘剤の溶解性と水和性を増大させるために、疎水性の鎖(C12−C20)を有する改質ヒドロキシエチルセルロースが好ましい。
【0056】
湿潤剤
[0057]湿潤剤は、練り歯磨き組成物が空気に触れたときに硬化することから守るのに役立ち、また特定の湿潤剤は、練り歯磨き組成物に望ましい甘味を与えることもできる。本発明において用いるのに適した湿潤剤としては、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、キシリトール、およびその他の食用に適する多価アルコールがある。好ましいのは、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびこれらの混合物であり、特にこれらの混合物が好ましい。湿潤剤は一般に、組成物の重量に基づいて、約0.1%〜70%の割合で含まれ、好ましくは約1%〜約60%、そしてより好ましくは約15%〜55%の割合で含まれる。
【0057】
[0058]湿潤剤は、低水分の基剤の粘度にかなりの影響を及ぼすと考えられる。例えば、組成物において増粘剤として多糖類を用いた場合、グリセリンまたはポリエチレングリコールのレベルが増大するとき、基剤の粘度は増大するだろう。それとは反対に、組成物においてプロピレングリコールのレベルが増大するとき、基剤の粘度は低下するだろう。
【0058】
無機増粘剤
[0059]結合剤系はさらに、コロイドマグネシウムアルミニウムシリケートまたは微細シリカのような追加の無機増粘剤を含んでいてもよく、それによって口当たり(texture)がさらに改善される。追加の無機増粘剤は、もし存在する場合、歯磨き剤組成物の重量に基づいて、約0.1%〜約15%の量、より好ましくは約0.1%〜約5%の量で用いることができる。
【0059】
イオン性有効成分
[0060]本発明の歯磨き剤組成物は好ましくは、フッ化物イオンの供給源、第一スズイオンの供給源、亜鉛イオンの供給源、およびこれらの混合物からなる群から選択される有効な量のイオン性有効成分を含む。
【0060】
フッ化物イオンの供給源
[0061]ここでのフッ化物イオンの供給源は、遊離したフッ化物イオンを与えることのできる可溶性フッ化物の供給源である。可溶性のフッ化物イオンの供給源としては、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、フッ化インジウム、フッ化亜鉛、およびモノフルオロリン酸ナトリウムがある。フッ化ナトリウムとフッ化第一スズは、好ましい可溶性のフッ化物イオンの供給源である。米国特許2946725号(Norris他、1960年7月26日発行)および米国特許3678154号(Widder他、1972年7月18日発行)は、そのようなフッ化物イオンの供給源やその他のものを開示している。
【0061】
[0062]本組成物におけるフッ化物イオンの供給源は好ましくは、消費者が組成物を実際の歯磨きで使用する前に貯蔵されている間は、組成物中に固体の分散体として存在する。本組成物中の水分のレベルは非常に低いので、貯蔵されている間にフッ化物の供給源は組成物中に溶解できない。従って、貯蔵されている間のフッ化物イオンとポリリン酸塩(または、存在する場合はシリカ)との間の明白な相互作用はないので、貯蔵されている間は安定した組成物が提供される。ブラシで歯磨きを行う際に組成物が唾液および/または水と接触するときに、フッ化物の供給源が分散して、有効なイオンが口腔に放出されるのが望ましいだろう。
【0062】
[0063]本組成物は、遊離したフッ化物イオンを約50ppmないし約3500ppm、そして好ましくは約500ppmないし約3000ppmの量で与えることのできる可溶性フッ化物イオンの供給源を含むだろう。望ましい量のフッ化物イオンを放出させるために、フッ化物イオンの供給源は、歯磨き剤組成物の全体の中に、歯磨き剤組成物の総重量に基づいて、約0.1%〜約5%の量、好ましくは約0.2%〜約1%の量、そしてより好ましくは約0.3%〜約0.6%の量で存在していてもよい。
【0063】
金属イオンの供給源
[0064]本発明は、第一スズイオン、亜鉛イオン、またはこれらの混合物を与える金属イオンの供給源を含んでいてもよい。金属イオンの供給源は、第一スズまたは亜鉛のイオンと無機または有機対イオンとの、可溶性の化合物またはわずかに可溶性の化合物とすることができる。例としては、フルオリド(フッ化物)、クロリド(塩化物)、クロロフルオリド、アセテート、ヘキサフルオロジルコネート、スルフェート、タルトレート、グルコネート、シトレート、マレート、グリシネート、ピロホスフェート、メタホスフェート、オキサレート、ホスフェート、カーボネートの塩、および第一スズおよび亜鉛の酸化物がある。
【0064】
[0065]第一スズイオンと亜鉛イオンは、歯肉炎、歯垢および敏感さの低減、および呼気の改善に役立つことが見いだされた。本組成物におけるこれらの金属イオンの効能は、ポリリン酸塩によっては減じられない。
【0065】
[0066]第一スズイオンと亜鉛イオンは、歯磨き剤組成物の中に有効な量で存在する金属イオンの供給源から得られる。有効な量とは、少なくとも約1000ppmの金属イオン、好ましくは約2000ppm〜約15000ppmと定義される。より好ましくは、金属イオンは約3000ppm〜約13000ppmの量、そしてより好ましくは約4000ppm〜約10000ppmの量で存在する。これは、歯の表面へ放出するために組成物中に存在する金属イオン(第一スズと亜鉛およびこれらの混合物)の総量である。
【0066】
[0067]本組成物における金属イオンの供給源は、消費者が組成物を実際の歯磨きで使用する前に貯蔵されている間は、組成物中で完全にはイオン化されないことが好ましい。本組成物中の水分のレベルは非常に低いので、貯蔵されている間に金属イオンの供給源は組成物中に溶解できない。しかし、塩化第一スズやフッ化第一スズのような特定の塩は、グリセリンまたはプロピレングリコールに溶解することができる。これらの湿潤剤は両方とも、そのような第一スズ塩に対して極めて安定した保護を与えることができて、また第一スズの水溶液よりも良好な味覚性をも与えることができる。ブラシで歯磨きを行う際に組成物が唾液および/または水と接触するときに、第一スズイオンの供給源が完全にイオン化されて、有効なイオンが口腔に放出されるだろう。
【0067】
[0068]第一スズ塩、特にフッ化第一スズと塩化第一スズを含む歯磨き剤は、米国特許5004597号(Majeti他)に記載されている。第一スズ塩の歯磨き剤についての他の記載は、米国特許5578293号に見いだされる。好ましい第一スズ塩は、フッ化第一スズおよび塩化第一スズ二水和物である。他の適当な第一スズ塩としては、酢酸第一スズ、酒石酸第一スズおよびクエン酸ナトリウム第一スズがある。適当な亜鉛イオンの供給源の例は、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、クエン酸亜鉛、乳酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、リンゴ酸亜鉛、酒石酸亜鉛、炭酸亜鉛、リン酸亜鉛、および米国特許4022880号に挙げられているその他の塩である。
【0068】
[0069]全てを含めた金属イオンの供給源は、最終の組成物の重量に基づいて、約0.25%〜約11%の量で存在するだろう。好ましくは、金属イオンの供給源は、約0.4%〜約7%の量、より好ましくは約0.45%〜約5%の量で存在する。
【0069】
緩衝剤
[0070]ここで記述される組成物は、先に説明した予備混合物において用いられる第一スズイオンのためのキレート化緩衝剤の他にも緩衝剤を含んでいてもよい。ここで用いられる緩衝剤とは、組成物のpHを約pH3.0〜約pH10の範囲に調整するために用いることのできる薬剤を指す。第一スズを含む歯磨き剤の相は、典型的には約3.0〜約5.5、好ましくは約3.25〜約5、そしてより好ましくは約3.4〜約4.5のスラリーのpHを有するだろう。ポリリン酸塩を含む歯磨き剤の相は、典型的には約4.0〜約10、好ましくは約4.5〜約8、そしてより好ましくは約5.0〜約7.0のスラリーのpHを有するだろう。第一スズとポリリン酸塩の両者を単一相に含む歯磨き剤は、典型的には約4〜約7、好ましくは約4.5〜約6、そしてより好ましくは約5〜約5.5のpHを有するだろう。
【0070】
[0071]緩衝剤としては、アルカリ金属水酸化物、水酸化アンモニウム、有機アンモニウム化合物、炭酸塩、セスキカーボネート(セスキ炭酸塩)、ホウ酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、イミダゾール、およびこれらの混合物がある。具体的な緩衝剤としては、リン酸一ナトリウム、リン酸三ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカリ金属炭酸塩、炭酸ナトリウム、イミダゾール、ピロリン酸塩、クエン酸、およびクエン酸ナトリウムがある。緩衝剤は、本組成物の重量に基づいて、約0.1%〜約30%、好ましくは約0.1%〜約10%、そしてより好ましくは約0.3%〜約3%のレベルで用いられる。組成物中に第一スズが存在するとき、好ましい緩衝剤は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化アンモニウムである。
【0071】
抗歯石剤
[0072]ここで記述される組成物は、抗歯石剤として、歯石の形成に関係するリン酸カルシウム鉱物質の沈積を低減させるのに有効なものとして知られるポリリン酸塩物質を用いてもよい。そのような薬剤としては、ピロリン酸塩およびトリポリリン酸塩がある。この組成物においては、合成アニオンポリマー(これには、ポリアクリル酸エステル、および例えば米国特許4627977号(Gaffar他)に記載されている無水マレイン酸またはマレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマー(例えばGANTREZ(登録商標))、さらには例えば、ポリアミノプロパンスルホン酸(AMPS)がある)、クエン酸亜鉛三水和物、ジホスホネート(例えばEHDP、AHP)、ポリペプチド(例えばポリアスパラギン酸およびポリグルタミン酸)、およびこれらの混合物を用いてもよい。
【0072】
研磨物質
[0073]この練り歯磨き組成物には研磨物質も含まれていてもよい。本発明の組成物において用いるために考えられる研磨物質は、歯の象牙質を過度にすり減らすことのない任意の物質とすることができる。典型的な研磨物質としては、ゲルおよび沈殿物を含めたシリカ、アルミナ、オルトリン酸塩を含めたリン酸塩、ポリメタリン酸塩、およびピロリン酸塩、およびこれらの混合物がある。具体的な例としては、オルトリン酸二カルシウム二水和物、ピロリン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ポリメタリン酸カルシウム、不溶性ポリメタリン酸ナトリウム、水和アルミナ、ベータピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、および尿素とホルムアルデヒドの粒状縮合物のような樹脂研磨物質、および米国特許3070510号(Cooley他、1962年12月25日発行)に開示されているようなその他のものがある。研磨剤の混合物を用いてもよい。歯磨き剤組成物または特定の相が約4以上の平均の鎖の長さを有するポリリン酸塩を含む場合は、カルシウムを含有する研磨剤およびアルミナは好ましい研磨剤ではない。最も好ましい研磨剤はシリカである。
【0073】
[0074]様々なタイプのシリカの歯科用研磨剤は、歯のほうろう質または象牙質を過度にすり減らすことなく、格別な歯の清掃特性と磨き特性による無類の有益性を有するために、好ましい。ここでのシリカの研磨物質およびその他の研磨剤は一般に、約0.1〜約30ミクロン、そして好ましくは約5〜約15ミクロンの範囲の平均の粒子サイズを有する。研磨剤は沈降シリカとするか、または米国特許3538230号(Pader他、1970年3月2日発行)および米国特許3862307号(DiGiulio、1975年1月21日発行)に記載されているシリカキセロゲルのようなシリカゲルとすることができる。好ましいものは、W.R.Grace & Company, Davison Chemical Divisionによって「SYLOID(登録商標)」の商品名で市販されているシリカキセロゲルである。同様に好ましいものは、例えばJ.M.Huber Corporationによって「ZEODENT(登録商標)」の商品名で市販されている沈降シリカ物質、特に「Zeodent 119」の名称を有するシリカである。本発明の練り歯磨きにおいて有用なシリカの歯科用研磨剤のタイプは、米国特許4340583号(Wason、1982年7月29日発行)においてさらに詳細に記載されている。シリカの研磨剤は、米国特許5589160号(Rice)、5603920号、5651958号、5658553号、および5716601号にも記載されている。ここで記述される練り歯磨き組成物における研磨剤は一般に、組成物の重量に基づいて約6%〜約70%のレベルで存在する。好ましくは、練り歯磨きは、歯磨き剤組成物の重量に基づいて、約10%〜約50%の研磨剤を含む。
【0074】
過酸化物の供給源
[0075]本発明は、組成物中に過酸化物の供給源を含んでいてもよい。過酸化物の供給源は、過酸化水素、過酸化カルシウム、過酸化尿素、およびこれらの混合物からなる群から選択される。好ましい過酸化物の供給源は過酸化カルシウムである。過酸化物の供給源は過酸化物の原料以外の成分を含んでいてもよいが、過酸化物の原料の量は以下の量で示される。本組成物は過酸化物の供給源を、歯磨き剤組成物の重量に基づいて、約0.01%〜約10%、好ましくは約0.1%〜約5%、より好ましくは約0.2%〜約3%、そして最も好ましくは約0.3%〜約0.8%含んでいてもよい。
【0075】
アルカリ金属の重炭酸塩
[0076]本組成物はアルカリ金属の重炭酸塩も含んでいてもよい。アルカリ金属の重炭酸塩は水に可溶性であり、安定でない限りは、水性系の中で二酸化炭素を放出する傾向がある。重炭酸ナトリウム(重曹としても知られる)は好ましいアルカリ金属重炭酸塩である。アルカリ金属の重炭酸塩は緩衝剤としても機能する。本組成物はアルカリ金属の重炭酸塩を、歯磨き剤組成物の重量に基づいて、約0.5%〜約50%、好ましくは約0.5%〜約30%、より好ましくは約2%〜約20%、そして最も好ましくは約5%〜約18%含んでいてもよい。
【0076】
追加の水性担体
[0077]本組成物は界面活性剤も含んでいてもよく、これは一般に発泡剤とも呼ばれる。適当な界面活性剤は、適度に安定であって広いpH範囲にわたって泡立つものである。界面活性剤は、陰イオン性のもの、非イオン性のもの、両性のもの、双性イオン性のもの、陽イオン性のもの、またはこれらの混合物であってよい。ここで有用な陰イオン界面活性剤としては、アルキル基に8〜20個の炭素原子を有する硫酸アルキルの水溶性の塩(例えばアルキル硫酸ナトリウム)、および8〜20個の炭素原子を有する脂肪酸のスルホン化モノグリセリドの水溶性の塩がある。ラウリル硫酸ナトリウムおよびココナツモノグリセリドスルホン酸ナトリウムは、このタイプの陰イオン界面活性剤の例である。その他の適当な陰イオン界面活性剤は、サルコシン酸塩(例えばラウロイルサルコシン酸ナトリウム)、タウリン酸塩、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ラウロイルイセチオン酸ナトリウム、ラウレスカルボン酸ナトリウム、およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである。陰イオン界面活性剤の混合物も用いることができる。多くの適当な陰イオン界面活性剤が、米国特許3959458号(Agricola他、1976年5月25日発行)によって開示されている。
【0077】
[0078]本組成物において用いることのできる非イオン界面活性剤は、酸化アルキレンの群(本質的に親水性である)と本質的に脂肪族化合物またはアルキル芳香族化合物であろう有機疎水性化合物との縮合によって生成される化合物として、概括的に定義することができる。適当な非イオン界面活性剤の例としては、ポロキサマー(PLURONIC(登録商標)の商品名で販売されている)、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(TWEENS(登録商標)の商品名で販売されている)、ポリオキシル40(Polyoxyl 40)水素化ヒマシ油、脂肪アルコールエトキシレート、アルキルフェノール類のポリ酸化エチレン縮合物、酸化プロピレンとエチレンジアミンの反応生成物と酸化エチレンとの縮合によって得られる生成物、脂肪族アルコールの酸化エチレン縮合物、長鎖第三酸化アミン、長鎖第三酸化ホスフィン、長鎖ジアルキルスルホキシド、およびこれらの物質の混合物がある。本発明において有用な両性界面活性剤は、脂肪族第二および第三アミンの誘導体として概括的に説明することができて、この場合、脂肪族基は直鎖または枝分れのものとすることができて、脂肪族置換基のうちの一つは約8〜約18個の炭素原子を含み、その一つは陰イオン水溶性の群、例えばカルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、またはホスホン酸塩を含む。その他の適当な両性界面活性剤は、ベタイン、特にコカミドプロピルベタイン(cocamidopropyl betaine)である。両性界面活性剤の混合物を用いることもできる。これらの適当な非イオン界面活性剤および両性界面活性剤の多くは、米国特許4051234号(Gieske他)によって開示されている。本組成物は典型的に、1種以上の界面活性剤をそれぞれ、組成物の重量に基づいて、約0.25%〜約12%、好ましくは約0.5%〜約8%、そして最も好ましくは約1%〜約6%のレベルで含んでいる。
【0078】
[0079]本組成物に二酸化チタンを添加してもよい。二酸化チタンは組成物に不透明さを付与する白い粉末である。二酸化チタンは一般に、組成物の重量に基づいて、約0.25%〜約5%の割合で含まれる。
【0079】
[0080]本組成物に着色剤を添加してもよい。着色剤は水溶液の形であってもよく、好ましくは水溶液中の1%の着色剤である。着色剤の溶液は一般に、組成物の重量に基づいて、約0.01%〜約5%の割合で含まれる。
【0080】
[0081]本組成物に香味料を添加してもよい。適当な風味化合物としては、ウィンターグリーン油(冬緑油)、ハッカ油、オランダハッカ油、チョウジ油、メントール、アネトール、サリチル酸メチル、オイカリプトール、カシア、1−メチルアセテート、セージ、オイゲノール、パセリ油、キサノン、アルファ−イリソン、マヨラナ、レモン、オレンジ、プロペニルグエトール、シナモン、バニリン、エチルバニリン、ヘリオトロピン、4−cis−ヘプテナール、ジアセチル、メチル−para−tert−ブチルフェニルアセテート、およびこれらの混合物がある。冷却剤も香味料の一部であってもよい。本組成物において好ましい冷却剤は、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミド(商業上は「WS−3」として知られている)のようなパラメンタンカルボキシアミド剤、およびそれらの混合物である。香味料は一般に、組成物の重量に基づいて、約0.001%〜約5%のレベルで組成物中に用いられる。
【0081】
[0082]本組成物に甘味料を添加してもよい。これらには、サッカリン、ブドウ糖、スクロース、ラクトース、キシリトール、マルトース、レブロース、アスパルテーム、シクラミン酸ナトリウム、D−トリプトファン、ジヒドロカルコン、アセスルファーム、およびこれらの混合物が含まれる。本発明には様々な着色剤も含まれていてもよい。甘味料と着色剤は一般に、組成物の重量に基づいて、約0.005%〜約5%のレベルで練り歯磨き中に用いられる。
【0082】
[0083]本発明には抗微生物剤のようなその他の薬剤も含まれていてもよい。そのような薬剤に含まれるものは、水不溶性の非陽イオン抗微生物剤であり、例えば、ハロゲン化ジフェニルエーテル、フェノールとその同族体を含めたフェノール化合物、モノおよびポリアルキルハロフェノールおよび芳香族ハロフェノール、レソルシノールおよびその誘導体、ビスフェノール化合物およびハロゲン化サリチルアニリド、安息香酸エステル、およびハロゲン化カルバニリド、ポリフェノール、およびハーバル(herbals)である。水溶性の抗微生物剤としては、特に、第四アンモニウム塩およびビスクアニド塩がある。モノリン酸トリクロサンは好ましい追加の水溶性抗微生物剤である。第四アンモニウム剤としては、第四窒素の位置の一つまたは二つの置換基が約8〜約20の炭素鎖の長さ(典型的にはアルキル基)を有するもの、典型的には約10〜約18個の炭素原子を有するものであって、残りの置換基(典型的にはアルキル基またはベンジル基)がそれよりも少ない数の炭素原子、例えば約1〜約7個の炭素原子を有するもの(典型的にはメチル基またはエチル基)が含まれる。ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルピリジニウムクロリド、ドミフェンブロミド、N−テトラデシル−4−エチルピリジニウムクロリド、ドデシルジメチル(2−フェノキシエチル)アンモニウムブロミド、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロリド、セチルピリジニウムクロリド、四級化5−アミノ−1,3−ビス(2−エチル−ヘキシル)−5−メチルヘキサヒドロピリミジン、ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド、およびメチルベンゼトニウムクロリドは、典型的な第四アンモニウム抗細菌剤の例である。その他の化合物は、米国特許4206215号(Bailey、1980年6月3日発行)に開示されているビス[4−(R−アミノ)−1−ピリジニウム]アルカンである。
【0083】
[0084]ビスグリシン酸銅(銅ビスグリシネート)、グリシン酸銅(銅グリシネート)、クエン酸亜鉛、および乳酸亜鉛のような、その他の抗微生物剤も含まれていてもよい。同様に有用なものは酵素であり、これにはエンドグリコシダーゼ、パパイン、デキストラナーゼ、ミュータン分解酵素、およびこれらの混合物が含まれる。このような薬剤は、米国特許2946725号(Norris他、1960年7月26日発行)および米国特許4051234号(Gieske他、1977年9月27日発行)に開示されている。具体的な抗微生物剤としては、クロルヘキシジン、トリクロサン、モノリン酸トリクロサン、およびチモールのようなフレーバーオイルがある。トリクロサンは本組成物に含有させるのに好ましい抗微生物剤である。トリクロサンおよびこのタイプのその他の薬剤は、米国特許5015466号(Parran,Jr.他、1991年5月14日発行)および米国特許4894220号(Nabi他、1990年1月16日発行)に開示されている。水不溶性の抗微生物剤、水溶性の薬剤、および酵素は、第一および第二の歯磨き剤組成物のいずれに含まれていてもよい。第四アンモニウム剤、第一スズ塩、および置換グアニジンは、第二の歯磨き剤組成物の中に存在するのが好ましい。これらの薬剤は、歯磨き剤組成物の重量に基づいて、約0.01%〜約1.5%のレベルで存在していてもよい。
【0084】
[0085]ゴールデンスレッド(golden thread)抽出物、スイカズラ抽出物、およびこれらの混合物(これらには限定されない)を含めた薬草剤も、本組成物中に約0.01%〜約0.05%のレベルで存在していてもよい。このような薬草剤は抗細菌作用を与えると考えられる。さらに、ポリフェノール類が約0.01%〜約2%のレベルで含まれていてもよい。好ましいポリフェノールは茶のポリフェノールである。
【0085】
[0086]有効な量の減感剤も本組成物中に含まれていてもよい。減感剤としては、II族金属またはアルミニウムの塩化物、硝酸塩、硫酸塩または酢酸塩を伴うアルカリ金属塩、または細管をふさぐための重合性モノマー、アルカリ金属または硝酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム(ammonium oxylate)、クエン酸、およびクエン酸ナトリウムから選択されるものが含まれる。好ましい塩は硝酸カリウム、クエン酸カリウム、およびこれらの混合物である。このような減感剤は米国特許5718885号にに開示されている。
【0086】
[0087]第一スズを含む組成物のために、プラスドン(Plasdone)S−630またはアルミニウム水和物のような汚れ低減剤を、組成物にさらに添加してもよい。プラスドンは、ビニルピロリドンを重合させることによって合成することのできるポリビニルピロリドン(PVP)である。商業上は、それは10000〜700000の範囲の平均分子量を有する一連の生成物として製造されてきた。ここでは、低分子量および中程度の分子量(約10000〜約100000)を有するものが好ましい。汚れを効果的に除去するためには、PVPのレベルは好ましくは約0.5%〜約10%、より好ましくは約1.0%〜約7.0%、そしてさらに好ましくは約1.5%〜約5.0%とする。
【0087】
[0088]歯磨き剤組成物は、ペースト、ゲル、または任意の形態あるいはこれらの組み合わせとすることができる。本発明のさらなる態様としては、一つの相としてのこの低水分の組成物と、歯磨き剤製品の安定性、性能および/または審美性をさらに高めるための追加の歯磨き剤成分を含む少なくとも一つの他の分離した相とを含む二相または多相の組成物がある。例えば、二相組成物は、ポリリン酸塩とイオン性有効成分を有するこの低水分組成物を含む第一の相と、漂白剤(好ましくは過酸化物の供給源)または改善された清掃作用、白化作用、汚れ防止作用および良好な口の感触を与えるための歯の表面の状態調節剤のような追加の有効薬剤を含む別の第二の相とを含んでいてもよい。歯の状態調節剤の例はポリシロキサン類および改質ポリシロキサン類であり、これには、ポリジメチルシロキサン(PDMS)のようなジオルガノポリシロキサン、C12〜C20アルキルジメチコーンコポリオールのようなアルキルおよびアルコキシジメチコーンコポリオール、およびアミノアルキルシリコーンが含まれる。これらのシロキサンポリマーは、例えば米国特許5759523号、6024891号、6123950号、6019962号、6139823号に記載されていて、これらの特許は全てThe Procter & Gamble Companyに譲渡されている。
【0088】
[0089]歯磨き剤組成物のためのディスペンサー(取り出し容器)は、チューブ、ポンプ、あるいは練り歯磨きを取り出すのに適したその他のいかなる容器であってもよい。二相の口腔組成物においては、各々の口腔組成物はディスペンサーの物理的に分離された区画に収容され、そして並列に取り出されるだろう。
【0089】
使用方法
[0090]本態様を実施するにあたって、使用者は、例えば白化、息の新鮮化、虫歯の予防、痛みの緩和、歯茎の健康、歯石の制御、浸食の制御などの所望の効果を得るために、人間または動物の歯の表面の所望の領域にこの歯磨き剤組成物を適用するだけでよい。歯の表面の浸食を制御するための歯磨き剤の使用あるいは脱ミネラル化(鉱物質除去)を防止するための歯磨き剤の使用は公知であり、例えば米国特許6685920号に記載されていて、その開示の全体がここに参考文献として取り込まれる。歯磨き剤組成物が歯に適用されるときに最良の利益が達成されると考えられるが、この組成物は、歯肉の組織または粘膜の組織のような、他の口腔表面に適用されてもよい。歯磨き剤組成物は直接か間接的かのいずれかで歯および/または口腔の表面に接触してもよいが、しかし歯磨き剤組成物は直接に適用されるのが好ましい。歯磨き剤組成物はいかなる手段で適用されてもよいが、しかしブラシを用いるか、あるいは歯磨き剤のスラリーを用いてすすぐことによって適用するのが好ましい。
【0090】
[0091]本発明の口腔組成物の製造は、このような組成物を製造するための様々な標準的な方法のいかなるものによっても達成されるだろう。歯磨き剤を製造するために、湿潤剤(例えばグリセリン、グリセロール、ソルビトールおよびプロピレングリコールのうちの1種以上のもの)、増粘剤、およびトリクロサンのような抗細菌剤を含むビヒクル(基剤)を調製してもよく、そして陰イオン界面活性剤と両性界面活性剤の混合物とビヒクルが添加され、次いで、この予備混合物を研磨剤およびフッ化物の塩と配合する。最後に、香味剤が添加され、そしてpHが6.8〜7.0の間に調整される。
【0091】
[0092]以下の実施例は好ましい態様をさらに例示するものであるが、しかし本発明はこれらに限定はされないことが理解されよう。
【実施例】
【0092】
実施例1
[0093]表1に示される配合を有する歯磨き剤組成物が調製された。
【0093】
【表1】

【0094】
[0094]各々の配合物は、0.454重量%のフッ化第一スズ、2重量%のクエン酸亜鉛、および2重量%のピロリン酸四ナトリウムと3重量%のトリポリリン酸ナトリウム(すなわち、ピロリン酸四ナトリウムとトリポリリン酸ナトリウムが2:3の重量比)を含むポリリン酸塩の抗歯石制御系を含む。
【0095】
[0095]配合Aと配合Bに従う組成物は、クエン酸とアルカリ金属のクエン酸塩(特にクエン酸三ナトリウム)の混合物を含むクエン酸塩緩衝剤系を含んでいた。配合Aと配合Bは最初、クエン酸とクエン酸ナトリウムの水溶液中にフッ化第一スズを溶解することによって予備混合物として調製された。予備混合物中のクエン酸塩イオンは第一スズイオンをキレート化し、それによって最終の組成物における第一スズ塩の沈殿を防止または抑制するとともに、歯磨き剤組成物中に不溶性で不活性なスズ化合物が形成される機会を低下させた。次いで、予備混合物は、歯磨き剤組成物の残りの有効成分およびビヒクルと混合された。
【0096】
実施例2
[0096]配合Aと配合Cに従う歯磨き剤組成物は、第一スズ塩の安定性を判定するために促進老化の調査に供された。歯磨き剤組成物は4週間にわたって105°Fの温度に供された。可溶性のスズ(これは利用できる第一スズイオンを表す)の初期の量と最終の量が、試験の始めと終わりにおいて測定された。結果を表2に示す。
【0097】
【表2】

【0098】
[0097]配合Aの組成物について、可溶性のスズの初期の量は0.33重量%で、これは試験の終わりにおいて0.31重量%に低下し、これは第一スズの利用可能性の小さな低下(約7%)であり、市販用の歯磨き剤において許容できるものである、ということを表2は示している。
【0099】
[0098]表2はまた、配合Cの組成物について、可溶性のスズの初期の量は0.24重量%で、これは試験の終わりにおいて0.16重量%に低下し、これは第一スズの利用可能性の大きな低下(33%)であり、市販用の歯磨き剤において好ましくないであろう、ということを示している。
【0100】
[0099]従って、配合Aにおけるクエン酸塩緩衝剤系は、亜鉛イオンが存在するときに第一スズイオンを安定させる。
実施例3
[00100]上述した老化の調査によって、配合Aと配合Cの組成物における他の有効成分の安定性も調査された。その結果を表3に示す。
【0101】
【表3】

【0102】
[00101]上述したように、配合Cについて可溶性のスズは4週間後にかなり減少したが、この可溶性のスズの含有量はその後の12週間後まではさほど低下しなかった。配合Aと配合Cの両者についての12週間の促進老化試験の後に、イオン性フッ化物、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム(これはオルトリン酸ナトリウムに次第に転換する)および可溶性の亜鉛の量は、許容できるレベルのままであった。
【0103】
実施例4
[00102]第一スズ塩と亜鉛の塩を含む配合物の抗細菌性の効能を測定するために、配合Cの組成物が、模造の口腔における生体外での抗細菌性試験に供された。この配合物の抗細菌性の効能は、抗細菌性成分として0.3%のトリクロサンを含む市販用の歯磨き剤と同等であった。
【0104】
実施例5
[00103]配合Bの配合物は、架橋ポリビニルピロリドンとガム(特にキサンタンガム)の混合物を含んでいた。より詳細には、この組成物は1重量%のポリプラスドン(Polyplasdone)XL−10と0.25重量%のキサンタンガムを含んでいた。
【0105】
[00104]この配合物は、次第に漸進的に増粘することによって生じる粘度の何らかの変化を測定するための流動性試験に供された。特に、この組成物はブルックフィールド粘度の測定に供された。組成物の粘度は、RV Tバー・スピンドルセットを利用するブルックフィールドヘリパススタンドに付設されたブルックフィールド粘度計・モデルRVTまたはRVTDVを用いて測定された。粘度のプロフィールは線形1200記録計(Brookfield Engineering Laboratories、Stoughton、マサチューセッツ州)に記録された。組成物のブルックフィールド粘度は、14日間にわたって周囲条件において計測された。結果を図1に示す。ブルックフィールド粘度は試験の期間を通して初期の値からかなり(約75%)増加したが、しかし試験の期間を通して許容可能な粘度が維持され、粘度はわずか数日後に許容可能な安定した状態の値に達したことがわかるだろう。この製品は、歯磨き剤組成物の期待される貯蔵寿命を通して、容器から容易に取り出すことができるだろう。
【0106】
[00105]増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)と架橋ポリビニルピロリドンの混合物を含む比較の組成物のブルックフィールド粘度が測定された。具体的には、CMCは0.7重量%のCMC7MFと0.8重量%のCMC2000Sであり、架橋ポリビニルピロリドンは1重量%のポリプラスドンXL−10であった。他の全ての成分は配合Bについてのものと同じであった。この組成物は14日間にわたる同様の流動性試験に供された。結果を図2に示す。ブルックフィールド粘度が試験の期間を通してかなり(約400%)増加したことがわかるだろう。この製品は次第に増粘するという問題を有していて、粘度は、容器から歯磨き剤組成物を容易に取り出すには高すぎる値に急速に達した。粘度は、試験を行なう間に安定した状態には達しなかった。
【0107】
[00106]従って、本発明の好ましい態様に従って用いられる増粘組成物は、流動性が安定した状態に達することが可能であり、歯磨き剤組成物のいかなる漸進的な増粘も低減または解消する、ということがわかるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経口許容性のあるビヒクル、
フッ化物イオンの供給源、
第一スズイオンの供給源、
亜鉛イオンの供給源、および
3個以下のリンの原子を有する無機ポリリン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種のポリリン酸塩、
を単一相に含む歯磨き剤組成物であって、
ここでこの歯磨き剤組成物は、組成物の重量に基づいて約10%未満の総含水量を有する、前記歯磨き剤組成物。
【請求項2】
ビヒクルは、架橋ポリビニルピロリドンとガムのうちの少なくとも一つを含むポリマー系を含む増粘剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
増粘剤は架橋ポリビニルピロリドンとガムを組み合わせて含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも1種のポリリン酸塩は、ピロリン酸塩のアルカリ金属塩、トリポリリン酸塩のアルカリ金属塩、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも1種のポリリン酸塩は、ピロリン酸四ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1種のポリリン酸塩は、ピロリン酸四ナトリウムとトリポリリン酸ナトリウムとの混合物を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ピロリン酸四ナトリウムとトリポリリン酸ナトリウムとの混合物は、ピロリン酸四ナトリウムとトリポリリン酸ナトリウムとをおよそ2:3の重量比で含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1種のポリリン酸塩は、組成物の1〜10重量%の割合で含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも1種のポリリン酸塩は、組成物の3〜7重量%の割合で含まれる、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
フッ化物イオンの供給源と第一スズイオンの供給源はフッ化第一スズを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
亜鉛イオンの供給源は有機酸の亜鉛塩を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
亜鉛イオンの供給源はクエン酸亜鉛を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
第一スズイオンの供給源のための水性緩衝剤系をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
緩衝剤系は、組成物中の第一スズイオンをキレート化するように適合される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
緩衝剤系は、有機酸またはそのアルカリ金属塩のうちの少なくとも1種を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
有機酸はクエン酸である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
緩衝剤系はクエン酸とクエン酸三ナトリウムの混合物を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
緩衝剤系は組成物の0.1〜10重量%の割合で含まれる、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
緩衝剤系は、第一スズイオンの供給源の(重量基準での)量よりも多い量(重量基準での量)で存在する、請求項15に記載の組成物。
【請求項20】
経口許容性のあるビヒクルを単一相に含む歯磨き剤組成物であって、そのビヒクルは、架橋ポリビニルピロリドンとガムを組み合わせて含むポリマー系増粘剤を含み、ここでこの歯磨き剤組成物は、組成物の重量に基づいて約10%未満の総含水量を有する、前記歯磨き剤組成物。
【請求項21】
歯磨き剤組成物は、組成物の重量に基づいて約6%未満の総含水量を有する、請求項1または請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
ガムはキサンタンガムを含む、請求項2または請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
ガムは組成物の0.1〜0.5重量%の割合で含まれる、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
ガムは組成物の0.2〜0.3重量%の割合で含まれる、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
架橋ポリビニルピロリドンはN−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマーを含む、請求項2または請求項20に記載の組成物。
【請求項26】
架橋ポリビニルピロリドンは組成物の0.05〜15重量%の割合で含まれる、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
架橋ポリビニルピロリドンは組成物の0.75〜1.25重量%の割合で含まれる、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
増粘剤はさらに、セルロースと、酸化エチレンと酸化プロピレンの合成ブロックコポリマーのうちの少なくとも1種を含む、請求項1または請求項20に記載の組成物。
【請求項29】
グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の湿潤剤をさらに含む、請求項1または請求項20に記載の組成物。
【請求項30】
細菌による歯垢の蓄積を処理および防止するための方法または歯の浸食を防止するための方法であって、請求項1に記載の歯磨き剤組成物を口腔に投与することを含む方法。
【請求項31】
歯磨き剤組成物を製造するための方法であって、
第一スズイオンの供給源を用意すること;
第一スズイオンの供給源を、この第一スズイオンをキレート化するのに適した水性緩衝剤系と混合し、それによって予備混合物を形成すること;および
その予備混合物を、歯磨き剤組成物の少なくとも1種の有効成分および経口許容性のあるビヒクルと組み合わせること;
を含む方法。
【請求項32】
第一スズイオンの供給源はフッ化第一スズを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
緩衝剤系は、有機酸またはそのアルカリ金属塩のうちの少なくとも1種を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
有機酸はクエン酸である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
緩衝剤系はクエン酸とクエン酸三ナトリウムの混合物を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
緩衝剤系は組成物の1〜5重量%の割合で含まれる、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
緩衝剤系は、第一スズイオンの供給源の(重量基準での)量よりも多い量(重量基準での量)で存在する、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
少なくとも1種の有効成分は、亜鉛イオンの供給源と、3個以下のリンの原子を有する無機ポリリン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種のポリリン酸塩とを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
経口許容性のあるビヒクルは、架橋ポリビニルピロリドンとガムを組み合わせて含むポリマー系を有する増粘剤を含み、ここで歯磨き剤組成物は、組成物の重量に基づいて約10%未満の総含水量を有する、請求項31に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−509404(P2013−509404A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536771(P2012−536771)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/062452
【国際公開番号】WO2011/053291
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(590002611)コルゲート・パーモリブ・カンパニー (147)
【氏名又は名称原語表記】COLGATE−PALMOLIVE COMPANY
【Fターム(参考)】