説明

フッ素−硫黄化合物の臭素促進的合成

SF、SFCI、SFBrおよびSFを含むフッ素−硫黄化合物を、臭素促進的に合成する方法を、本明細書において開示する。本明細書に記載の方法は、一般に、より低い温度および圧力を要し、より高い収率をもたらし、より少ない時間を要し、フッ素−硫黄化合物の合成において一般に用いられる腐食性のまたは高価な反応物質および溶媒を用いず、これまでに用いられてきた方法と比べたときに有害な廃棄物を生成しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2008年6月11日出願の米国仮特許出願第61/060642号、2009年2月17日出願の米国仮特許出願第61/153180号および2009年5月8日出願の米国仮特許出願第61/176674号の利益を主張し、これらの開示の全体は、本明細書に参照により組み込まれる。
【0002】
フッ素−硫黄化合物の合成方法が、本明細書において開示される。開示された方法は、過度な温度、電気化学的調製の使用、または毒性、過度な反応性もしくはコストのために望ましくないと一般にみなされる従来用いられてきた溶媒もしくは反応物質の使用を回避しつつ、フッ素−硫黄化合物の合成を促進するために臭素を用いる。
【背景技術】
【0003】
いくつかのフッ素−硫黄化合物は、有益な用途を有する。例えば、四フッ化硫黄(SF)は、毎年メトリックトンの程度で製造されている広く用いられている化合物であり、それは、カルボン酸、アルデヒド、いくつかのアルコールおよびケトンを、これらの対応する脱酸素的フッ素誘導体(すなわち、R−CF、R−CHF、RF、RR’−CF)に変換する際の脱酸素的フッ素化試薬として利用され得る。SFは、エレクトロニクス工業においてエッチング剤としても利用される。そのうえ、SFは、限定するものではないが、塩化五フッ化硫黄(SFCl)、臭化五フッ化硫黄(SFBr)および六フッ化硫黄(SF)等の、他の重要なフッ素化生成物の合成のための前駆体として利用され得る。
【0004】
六フッ化硫黄(SF)は、毎年数千メトリックトン単位で製造される化合物であり、その世界的な使用には、PCBの代替品および電気設備のための不活性な絶縁媒体としての作用、半導体のエッチング、マグネシウムの鋳込成形、保温窓の製造、いくつかのロケット推進システムにおける推力源、工業的な系を通る空気流の追跡、医用画像による眼の網膜円孔に対するタンポン充填が挙げられる。
【0005】
R−CF、R−CHF、RF、RR’−CFおよびRSF等のフッ素−有機の修飾をもつ化合物は、フッ素化された治療上および診断上の薬剤、農薬、除草剤、抗生物質、全フッ素置換の代用血液、殺菌剤、ポリマーの溶媒、ポリマー、潤滑剤、液晶、界面活性剤、高沸点溶剤、安定溶媒、電気伝導ポリマー等を含む様々な用途において用いられてきた。CFの代わりにSF基を利用することにより、多くの利益がもたらされる。特に、SF基は、CFより高い電気陰性度を有する。そのうえ、SFを含有する化合物は、非常に高い化学的および熱的な安定性、疎水性および疎油性、親油性、高密度、火薬中における衝撃感度の低減、低沸点、低分極率ならびに低表面張力を含む、それらの顕著な化学的特性によりさらに区別され得る。
【0006】
SF誘導体がこれらの利益を提供する一方で、それらは合成しづらかった。そのような化合物を得ることの困難さは、SF基部分をもついくつかの有機または無機の誘導体を合成し得るために用いられる主要な化学試薬である、十分で入手可能な量のSFClまたはSFBrを得ることの困難さに部分的に関係している。SFClは、特に、(六フッ化硫黄)SFのSF基保有誘導体を生成するために有益な反応物質であり、SFのSF基をもつ誘導体を臭化五フッ化硫黄(SFBr)に変換することにより十フッ化二硫黄(S10)に還元され得る。SFClは、SFの合成においても用いられ得る。SFClが、発熱性の経路(例えば、米国特許第4390511号)によるSFの製造において特に用いられることができ、これにより、不均化が、以下の反応
SFCl→1/2SF+1/2SF+1/2Cl
に従って生じることは興味深いことである。この方法において、毒性が高いと思われる化合物であり、硫黄のフッ素との反応によるSF生成の副生成物であるS10を含まないSFが得られる。したがって、SFClの使用を用いて、高純度のSFを生成することができる。
【0007】
まとめると、様々な方法が、SFの製造方法として示されており、米国特許第2883267号、第2912307号、第3054661号、第3345277号、第3399036号、第3373000号、第4390511号、第5639435号および日本国特許第7625497号が挙げられる。これらの方法は、しばしば、電気化学的調製、高い反応の温度および圧力を用いる、ならびに/またはF、SFCl、IF、SF、ClFおよびHFが挙げられ得る高反応性および/もしくは高価な反応物質を利用する。
【0008】
SFBrは、SFの誘導体としても知られているSF基保有化学物質を効率的に製造するための反応物質として示されている有益な化合物でもある。
【0009】
フッ素−硫黄化合物の現在利用可能な製造方法には、いくつかの問題がある。これらの問題には、一般に、過度な温度、電気化学的調製、高価および/もしくは危険な反応物質の使用、多数の逐次的ステップもしくは長い反応時間の必要、低いもしくは変わりやすい収率、ならびに/または毒性の副生成物の生成が挙げられる。したがって、フッ素−硫黄化合物の合成において改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4390511号明細書
【特許文献2】米国特許第2883267号明細書
【特許文献3】米国特許第2912307号明細書
【特許文献4】米国特許第3054661号明細書
【特許文献5】米国特許第3345277号明細書
【特許文献6】米国特許第3399036号明細書
【特許文献7】米国特許第3373000号明細書
【特許文献8】米国特許第5639435号明細書
【特許文献9】日本国特許第7625497号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
フッ素−硫黄化合物、より具体的にはSF、SFCl、SFBrおよびSFの合成方法が、本明細書において開示される。本明細書において開示される方法は、これまでに用いられてきた方法と比べたときに、一般に、より低い温度および圧力を要し、高い収率をもたらし、いくつかの場合においてより少ない時間を要し、フッ素−硫黄化合物の合成において一般に用いられる高反応性の酸化剤または高価な反応物質および溶媒を用いず、有害な廃棄物を生成しない。
【0012】
本明細書において開示される一実施形態は、Br、金属フッ化物反応物質および硫黄反応物質を混合することにより、約10%より高いフッ素−硫黄化合物の収率をもたらす反応を開始することを含む、フッ素−硫黄化合物、または生成されたフッ素−硫黄化合物を用いて作製される化合物の製造方法を含む。別の実施形態において、その混合は、Clをさらに含む。別の実施形態において、その反応は、約10から約400℃の温度で進行する。別の実施形態において、S10またはBrF、BrF、BrF、CsBrF、CsBrF、アセトニトリル、ジオキサン、ClF、ClF、NOF、HF、F、(HF)・アミン、IFまたはこれらの組合せのいずれかが、反応に加えられることはない。
【0013】
本明細書において開示される実施形態は、SF、または生成されたSFを用いて作製される化合物の製造方法も含む。ある実施形態において、その方法は、硫黄反応物質、金属フッ化物反応物質およびBr反応物質を混合することにより、約10%より高い収率でSFを生成する反応を開始することを含む。SF、または生成されたSFを用いて作製される化合物を製造する別の実施形態において、その反応は、約10から約400℃の温度で進行する。
【0014】
SF、または生成されたSFを用いて作製される化合物の製造の別の実施形態において、硫黄反応物質はSであり、金属フッ化物はKFであり、その混合は、約4KF対約2Br対約1Sの化学量論比で行われ、その反応は、約10から約400℃の温度で進行する。
【0015】
SF、または生成されたSFを用いて作製される化合物の製造の別の実施形態において、金属フッ化物は、アルカリ土類金属フッ化物、アルカリ金属フッ化物、CsF、RbF、KF、BaF、SrFもしくはこれらの組合せである、および/または硫黄反応物質は、S、SCl、SCl、SBr、SBrもしくはこれらの組合せである。
【0016】
SF、または生成されたSFを用いて作製される化合物の製造のさらなる実施形態において、その方法は、硫黄反応物質、金属フッ化物反応物質、Cl反応物質およびBr試薬を混合することにより、約10%より高い収率でSFを生成する反応を開始することを含む。SF4、または生成されたSFを用いて作製される化合物の製造の別の実施形態において、その反応は、約10から約400℃の温度で進行する。
【0017】
SF、または生成されたSFを用いて作製される化合物の製造の別の実施形態において、硫黄反応物質はSであり、金属フッ化物はKFであり、その混合は、約4KF対約1Br対約1S対約2Clの化学量論比で行われる、または硫黄反応物質はSClであり、金属フッ化物はKFであり、その混合は、約4KF対約1Br対約1SCl対約1Clの化学量論比で行われ、その反応は、約10から約400℃の温度で進行する。
【0018】
SF4、または生成されたSFを用いて作製される化合物の製造の別の実施形態において、金属フッ化物は、アルカリ土類金属フッ化物、アルカリ金属フッ化物、CsF、RbF、KF、BaF、NaF、SrFもしくはこれらの組合せである、および/または硫黄反応物質は、S、SCl、SCl、SBr、SBrもしくはこれらの組合せである。
【0019】
本明細書において開示される実施形態は、SFCl、または生成されたSFClを用いて作製される化合物の製造方法も含む。ある実施形態において、その方法は、Cl反応物質、硫黄反応物質、金属フッ化物反応物質およびBr試薬を混合することにより、約50%より高い収率でSFClを生成する反応を開始することを含む。SFCl、または生成されたSFClを用いて作製される化合物の製造の別の実施形態において、その反応は、約10から約200℃の温度で進行する。
【0020】
SFCl、または生成されたSFClを用いて作製される化合物の製造の別の実施形態において、硫黄反応物質はSであり、金属フッ化物はKFであり、その混合は、約5KF対約1Br対約1S対約3Clの化学量論比で行われる、または硫黄反応物質はSFであり、金属フッ化物はKFであり、その混合は、約1KF対約1Br対約1SF対約1Clの化学量論比で行われる、または硫黄反応物質はSClであり、金属フッ化物はKFであり、その混合は、約5KF対約1Br対約1SCl対約2Clの化学量論比で行われ、その反応は、約10から約200℃の温度で進行する。
【0021】
SFCl、または生成されたSFClを用いて作製される化合物の製造の別の実施形態において、金属フッ化物は、アルカリ土類金属フッ化物、アルカリ金属フッ化物、CsF、RbF、KF、BaF、SrFもしくはこれらの混合物である、および/または硫黄反応物質は、S、SCl、SCl、SFもしくはこれらの組合せである。
【0022】
本明細書において開示される実施形態は、SFBr、または生成されたSFBrを用いて作製される化合物の製造方法も含む。ある実施形態において、その方法は、Br反応物質、硫黄反応物質および金属フッ化物反応物質を混合することにより、約50%より高い収率でSFBrを生成する反応を開始することを含む。SFBr、または生成されたSFBrを用いて作製される化合物の製造の別の実施形態において、S10またはBrF、BrF、BrF、CsBrF、CsBrFまたはこれらの混合物のいずれかが、反応に加えられることはない。SFBr、または生成されたSFBrを用いて作製される化合物の製造の別の実施形態において、その反応は、約10から約140℃の温度で進行する。
【0023】
SFBr、または生成されたSFBrを用いて作製される化合物の製造の別の実施形態において、硫黄反応物質はSFであり、金属フッ化物はAgFであり、その混合は、約1AgF対約1Br対約1SFの化学量論比で行われる、または硫黄反応物質はSFであり、金属フッ化物はAgFであり、その混合は、約2AgF対約3Br対約4SFの化学量論比で行われ、その反応は、約10から約140℃の温度で進行する。
【0024】
SFBr、または生成されたSFBrを用いて作製される化合物の製造の別の実施形態において、金属フッ化物は、アルカリ土類金属フッ化物、アルカリ金属フッ化物、AgF、AgF、AuF、MnF、PbF、CeFまたはこれらの混合物である。
【0025】
本明細書において開示される実施形態は、SF、または生成されたSFを用いて作製される化合物の製造方法も含む。ある実施形態において、その方法は、Br反応物質、SF反応物質および金属フッ化物反応物質を混合することにより、約50%より高い収率でSFを生成する反応を開始することを含む。SF、または生成されたSFを用いて作製される化合物の製造の別の実施形態において、その反応は、約10から約400℃の温度で進行する。
【0026】
SF、または生成されたSFを用いて作製される化合物の製造の別の実施形態において、硫黄反応物質はSFであり、金属フッ化物はCoFであり、その混合は、約2CoF対約1Br対約1SFの化学量論比で行われ、その反応は、約10から約400℃の温度で進行する。
【0027】
SF、または生成されたSFを用いて作製される化合物の製造の別の実施形態において、金属フッ化物は、アルカリ土類金属フッ化物、アルカリ金属フッ化物、CoF、MnF、PbF、CeF4またはこれらの混合物からなる群から選択される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
Brの存在下におけるフッ素−硫黄化合物の合成方法が、本明細書において開示される。特定の例示的な実施形態において、フッ素−硫黄化合物は、SF、SFCl、SFBrおよびSFである。本明細書において開示される方法は、容易に入手可能で比較的安価な反応物質を混合することを含む。これまでに用いられた方法と比べたときに、本明細書において開示される方法は、一般に、より低い温度および圧力を要する、高い収率をもたらす、より少ない時間を要する、フッ素−硫黄化合物の合成においてしばしば利用される過度に反応性のまたは高価な反応物質および溶媒を用いない、有害な廃棄物を生成しない、または様々な組合せにおける上述の1つもしくは複数である。
【0029】
SFを合成する開示された方法は、Cl存在下および不存在下の両方においてBrを利用する一方で、SFClを合成する開示された方法は、Cl存在下においてBrを利用する。SFおよびSFClを合成する開示された方法は、過度な温度および圧力がない場合において、特定の実施形態においては、アセトニトリル、ジオキサン、ClF、ClF、NOF、HF、F、(HF)・アミンおよび/またはIFの不存在下において、Brを利用することができる。SFBrを合成する開示された方法は、Brを利用し、高い反応の温度および圧力がない場合において、特定の実施形態においては、S10、BrF、BrF、CsBrFおよび/またはCsBrFの不存在下において行われ得る。SFを合成する開示された方法は、Brを利用し、電気化学的な調製、高い反応の温度および/または圧力がない場合において、特定の実施形態においては、F、SFCl、IF、SF、ClFおよび/またはHFの不存在下において行われ得る。
【0030】
本明細書において用いられるように、「金属フッ化物(MF)」は、限定されるものではないが、アルカリ土類フッ化物およびアルカリ金属フッ化物を含む様々な1価または多価のMFを包含し、特に、限定されるものではないが、CoF、CeF、MnF、PbF、CsF、RbF、KF、BaF、SrF、AgF、AgFおよびAuFが挙げられ得る。
【0031】
本明細書において用いられるように、「約」の用語は、値が、この値を測定するために用いられている装置または方法についての誤差の標準偏差を含むことを示すために用いられる。
【0032】
ある実施形態例において、SFの合成を説明する。SFについてのある合成反応例は、以下のように反応Iで進行し得る。
I.4KF+S+2Br→SF+4KBr
反応Iにおいて、SF生成反応は、約10から約27℃の環境温度において、または約80℃以下の穏和な高温において、またはSFのSおよびSFへの不均化を促進する温度(約400から約500℃)を下回る、より高い温度においてでさえ、自己反応圧力もしくは高反応圧力で進行し得る。したがって、記載の方法は、過度な温度もしくは圧力を要しない、または限定されるものではないがアセトニトリル、ジオキサン、HF、F、Cl、(HF)・アミンおよびIF等の、SFの合成において一般に用いられる、異常に反応性のもしくは高価な反応物質もしくは溶媒の使用を要しない。
【0033】
記載の反応Iは、数時間から数日の時間枠内で、約57から約96%以上の範囲の収率をもたらすことができる。使用される試薬が低コストであることにより、反応をより低い収率をもたらすように変更することも、商業的に有利であることができる。ある実施形態において、10%以上の収率がもたらされ得る。
【0034】
この反応は、望ましくない副生成物を作り出さないまたは残さない。容易に除去および処分され得る、またはSFもしくは他の無関係な化学反応の次の製造運転に再生利用され得るBr、MFおよび臭化硫黄のみが作り出される。そのうえ、開示された反応は、SF以外の気体をほとんど生成せず、SF最終生成物の精製を簡単な工程にする。特に、低沸点成分(SF4)または過剰な未使用のBrは、温度を低下させ冷却トラップに移送することにより分離され得る。
【0035】
この記載の反応Iは、Cl不存在下でBrを用いるSFの合成方法を提供する。この反応におけるClの不存在は、SFが所望のSF最終生成物である場合において、SFClの形成を防止する。
【0036】
別の実施形態例において、S、Br、またはSおよびBrの両方のいずれかは、SFの製造において、臭化硫黄(例えばSBr、SBr)により置き換えられ得る。ある実施形態において、特に反応Iに関して、約1.00:2.00を超える、SのBrに対するモル比が用いられ得る。別の実施形態において、約1.00:0.44から約1.00:5.33の範囲の比も用いられ得る。別の実施形態例において、SFおよびSFClの製造において特に有用なMFには、限定されるものではないが、CsF、RbF、KF、BaF、SrFまたはこれらの組合せが挙げられる。
【0037】
Brを溶媒および/または反応性溶媒として利用する、SFClおよび場合によってSFの製造方法(Clの存在下で)を、本明細書においてさらに説明する。反応物質としてのSの場合において、SFが所望の生成物であるときに、約4当量をわずかに上回るMFが用いられ得る。SFClが所望の生成物であるときに、約5当量をわずかに上回るMFが用いられ得る。SFがSFClを製造するための反応物質として用いられる場合において、等しいまたはわずかにより多い量のMFを利用して、SFClを効率的に生成することができる。反応の中における最小量のClは、反応自体の化学量論により容易に測定され得る。本実施形態例において、KFがMFとして用いられるが、様々な他の1価または多価のMFが用いられ得る。
【0038】
上述のようなCl存在下におけるSFおよびSFClのための合成反応例は、以下のように反応II−IVで進行する。
II.4KF+S+2Cl+(Br)→SF+4KCl+(Br
III.5KF+S+3Cl+(Br)→SFCl+5KCl+(Br
IV.KF+SF+Cl+(Br)→SFCl+KCl+(Br
上記の反応II−IVにおいて、SFClおよびSFの生成反応は、約10から約27℃の環境温度において、または約115℃以下の穏和な高温において、またはSFClの分解を促進する(約200から約400℃)、もしくはSFをSおよびSFに不均化させる(約400から約500℃)温度を下回る、より高い温度においてでさえ、自己反応圧力もしくは高反応圧力で進行し得る。したがって、記載の方法は、過度な温度もしくは圧力を要しない、または限定されるものではないがアセトニトリル、ジオキサン、ClF、ClF、NOF、HF、F、(HF)・アミンおよびIF等の、SFおよびSFClの合成において一般に用いられる、異常に反応性のもしくは高価な反応物質もしくは溶媒の使用を要しない。
【0039】
上述の反応IIIは、数時間から数週の時間枠内で、約88から約95%以上の収率をもたらすことができ、理論的に100%に近付くことができる。使用される試薬が低コストであることにより、反応をより低い収率をもたらすように変更することも、商業的に有利であることができる。ある実施形態において、50%以上の収率がもたらされ得る。10%の低さの収率のような他のより低い収率も、本明細書において開示される実施形態の範囲内である。
【0040】
この反応は、望ましくない副生成物を作り出さないまたは残さない。Brを、反応生成物から容易に分離することができ、次いで、SFClおよびすべての過剰なClを、反応容器をおよそ−80℃に冷却しSFClおよびすべての過剰なClを減圧で凝縮することにより収集することができる。Clを、硫黄元素の下で貯蔵することにより混合物から除去することができ、回収された塩化硫黄を、SFまたはSFClのいずれかの新しい製造バッチのために用いることができる。その手順における塩素の一つの機能は、硫黄を、主な硫黄化学種として塩化硫黄(例えばSCl、SCl)に酸化することであり、この化学種は、フッ化物により塩素をフッ素に交換する。このように、塩化硫黄を廃棄物として処分する必要がない。まとめると、回収されたClと、回収された塩化硫黄およびBrとは、以下の反応において概説されるように、ほぼ定量的な様式で用いられ得る。
V.4KF+SCl+Cl+(Br)→SF+4KCl+(Br
VI.5KF+SCl+2Cl+(Br)→SFCl+5KCl+(Br
SF製造反応において、少量のSFClが副生成物として形成され得る。それぞれの反応において、Brの機能は、Brが、溶媒、反応性溶媒として作用することを可能にし、またはClが混合によりBr+ClからBrClを形成し、改善された反応環境を提供することであり得る。興味深いことに、Brの添加なしに、KF+SF+Clは、強い加熱(約75から約150℃、または約220から約300℃)により可変的な量(約5から約80%)のSFClのみを生成することがこれまでに示されている。(Bekker他、Isw.Akad.Nauk U.S.S.R.、Bull.Ser.Chim. 2575、1970;U.Jonethal,R.Kuschel、K.Seppelt、J.Fl.Chem. 88、3、1998)。このように、本方法において利用されるBrは、過度な温度(エネルギー入力)の必要を緩和し、収率および収率の一貫性の両方とともに、製造全体の容易さも改善する。そのうえ、Brを利用しない他の方法(約175℃において過剰なCsF+S+3Cl)が、有意な量のSFClを生成しないので、SFClを製造するための硫黄源としてSFの代わりにSを用いる場合において、Brの使用は、SFおよび過度な温度の両方の必要を緩和する。
【0041】
本明細書に記載の方法は、SFClおよびSFの製造における溶媒または反応性溶媒としてBrの使用を用い、Brの使用は、フッ素および塩素の両方の、SFClおよびSFの最終生成物の生成への移行を同様に促進する。
【0042】
あるいは、SFCl生成反応において、SおよびClは、必要に応じて塩化硫黄(例えばSCl、SCl)またはSFにより置き換えられ得る。本明細書に記載のSFClおよびSFの生成反応の両方において、存在するBrが不十分な場合に、反応は、極めてゆっくりである、または全く進行しない。さらに、反応物質としてClを利用するSFClおよびSFの生成反応の両方において、約1:1より大きいBrのSに対するモル比が用いられ得る。約1:2から約2:1の比も用いられ得る。SFClおよびSFの製造において特に有用なMFには、限定されるものではないが、CsF、RbF、KF、BaF、SrFおよびこれらの組合せが挙げられる。
【0043】
本明細書において開示される別の実施形態例において、SFBrの合成が説明される。SFおよびBrが反応物質である場合において、金属一フッ化物(AgF)約1当量超が用いられ得る、または約2当量が金属二フッ化物(AgF)の場合に用いられ得る。SFBrについての合成反応例は、以下のように進行することができる。
VII.AgF+SF+Br→SFBr+AgBr
VIII.2AgF+4SF+3Br→4SFBr+2AgBr
これらの反応は、環境温度(約10から約27℃)において、またはSFBrが分解し始める温度(約140から約150℃)以下の温度において、閉鎖された反応容器中で生成した自己圧力で進行され得る。限定されるものではないがS10、BrF、BrF、CsBrFおよびCsBrF等の、SFBrを合成するために一般に用いられる高反応性および/または高価な反応物質は必要でない。
【0044】
記載の反応は、数時間から数日の時間枠内で、約75%の収率をもたらすことができ、理論的に100%に近付くことができる。使用される試薬が低コストであることにより、反応をより低い収率をもたらすように変更することも、商業的に有利であることができる。ある実施形態において、50%以上の収率がもたらされ得る。10%の低さの収率のような他のより低い収率も、本明細書において開示される実施形態の範囲内である。
【0045】
この反応は、望ましくない副生成物を作り出さないまたは残さない。SFBrおよびすべての過剰なBrを、反応容器をおよそ−78℃に冷却しSF5Brを凝縮することにより収集することができる。そのBrは、限定されるものではないが、SFBrの製造を含む次の反応に容易に再生利用され得る一方で、AgBrは、限定されるものではないが、金属フッ化物(限定されるものではないが、AgFまたはAgF)を再形成することによるSFBrの反応を含む次の反応において容易に再利用され得る。
【0046】
ある実施形態例において、本SFBr製造方法は、反応物質として、SF、MF、例えば限定されるものではないがAgFまたはAgF、およびBrのみを用いることができる。SFBrの製造において特に有用なMFには、限定されるものではないが、CeF、MnF、PbF、AgF、AgF、AuFまたはこれらの混合物が挙げられる。さらに、SFBrを製造するための、本明細書に記載の方法は、現在用いられている非効率的な多段階の製造手順を除去する。
【0047】
本明細書に開示される別の実施形態例において、SFの合成が説明される。SFおよびBrが反応物質である場合において、CoF等の、フッ素約1当量を移動させることが可能なMF約2当量超が用いられ得る。SFのための合成反応例は、以下のように進行することができる。
IX.2CoF+SF+(Br)→SF+2CoF+(Br
上記の反応IXは、環境温度において、またはSFが分解し始める温度(約400から約500℃)以下で理論的に、閉鎖された反応容器中で生成した自己圧力で進行され得る。電気化学的な調製、高温および高圧、ならびにSFを合成するために一般に用いられる高反応性および/または高価な反応物質(限定されるものではないが、F、SFCl、IF、SF、ClFおよびHF)は回避され得る。
【0048】
使用される試薬が低コストであることにより、反応をより低い収率をもたらすように変更することも、商業的に有利であることができる。ある実施形態において、50%以上の収率がもたらされ得る。10%の低さの収率のような他のより低い収率も、本明細書において開示される実施形態の範囲内である。
【0049】
記載の反応IXにおいて、そのBrは、限定されるものではないが、さらなるSFの製造を含む次の反応に容易に再生利用され得る一方で、CoFは、容易に、CoFに再フッ素化され、次のSFの反応および他の反応において再利用され得る。
【0050】
ある実施形態例において、本SF製造方法は、反応物質として、SF、MF、例えば限定されるものではないがCeF4、MnF3、PbF4、AgF、AgF、AuFおよびこれらの混合物のみを用いることができる。さらに、SFを製造するための、本明細書に記載の方法は、現在用いられている非効率的な多段階の製造手順を除去する。
【0051】
SF、SFCl、SFBrおよびSFを製造するための、本明細書に記載の反応は、当技術分野において一般に用いられる温度を下回る温度で行われ得る。ある実施形態例において、反応は、室温(環境温度)(約10から約27℃)においてまたはこの付近で行われる。他の実施形態において、温度は、約10℃から約27℃(環境の)、または約27℃から約115℃である。より高い温度、例えば、約250℃から約500℃以下(SF、SFClおよびSFBrが分解する温度以下)が理論的に用いられ得る。さらに、より低い温度、例えば、Brが固化する温度である約−10℃以上が用いられ得る。しかし、許容できるものの、これらのより極端な反応温度は必要とされない。
【0052】
SF、SFCl、SFBrおよびSFを製造するための、本明細書に記載の反応は、当技術分野において一般に用いられる圧力を下回る圧力で行われ得る。ある実施形態例において、反応は、大気圧を上回るだけで、約10atm以下にすぎないと推定される自己圧力で行われる。他の実施形態において、より高温で、圧力は、約10atmから約40atmであると推定される。わずかにより高い圧力も用いられ得る。例えば、約100atm以下が用いられ得ることが推定される。さらに、より低い圧力、例えば、約0.5atmまたは約0.01atmまたは約0.001atm以上が用いられ得る。しかし、許容できるものの、これらのより極端な圧力は必要とされない。
【0053】
さらに、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の、SF、SFCl、SFBrおよびSFを製造するための反応は、固相の反応物質の反応表面積を増大させる1つまたは複数の物理的な構成の中で行われ得る。例えば、固相の反応物質は、噴霧乾燥、微細分散され、または表面積を増大させる一般に用いられる方法を受けることができる。いくつかの実施形態例において、SF、SFCl、SFBrおよびSFを製造するための反応物質は、反応を助けるために、物理的または機械的にかき混ぜられ得る。例えば、反転、粉砕/磨砕、ボールミル、攪拌、回転等が用いられ得る。このような機械的かき混ぜ法は、有効なMFの反応表面積を遮蔽し、所望の反応の進行を遅らせることがある、MFBrまたはMFClの形成を最少化することができる。
【0054】
本明細書に記載の方法は、理論的に、100%近い収率でSF、SFCl、SFBrおよびSFを生成することができる。ある実施形態例において、収率は、約57%から約96%の間である。別の実施形態において、収率は約95%である。別の実施形態において、収率は約75%である。
【0055】
当業者により理解されるように、使用される反応物質および所望の最終生成物に応じて、反応等の条件、反応が実質的に完結する時間は変化する。実質的に完結とは、特定の反応が、完了の約10%以内、完了の約5%以内、または完了の約1%以下以内であることを意味する。反応時間は、約数時間の短さから、約数日または数週の長さであることができる。いくつかの実施形態において、反応は、約30日未満、約17日未満、約14日未満、約6日未満、約4日未満、約3日未満、約2日未満または約1日未満以内に実質的に完結する。他の実施形態において、反応は、約8時間未満、約4時間未満または約3時間未満以内に実質的に完結する。
【0056】
本明細書に記載の反応は、当業者により変更され得る。したがって、反応物質および試薬を添加および混合する順序を変えること、反応物質の相対的なモル比を調節することの他に、特定の反応結果をより正確に制御するために反応の時間、温度および圧力を変えること、ならびに所望の最終生成物の容易さおよび生成を最大化することは、本明細書の範囲内である。
【0057】
以下の例は、開示される方法および工程の実施形態を示すために含まれる。次の実施例において開示される技術は、本開示の実施において良好に機能することを発明者により見出された技術を表し、したがって、その実施のための好ましい態様であるとみなされ得ることが、当業者により認識されるべきである。しかし、当業者は、本開示の観点から、多くの変更が、開示された具体的な実施形態においてなされてなお、同様または類似の結果を得ることができることを認識すべきである。
【0058】
(実施例)
【実施例1】
【0059】
SFの形成
無水の微細結晶粒のKF粉末(約5.09g)を、ステンレス鋼の100mlのホークボンベ管反応器中で、約150℃から約200℃で、約1時間、高真空(約0.05から約0.1torr)において乾燥した。反応器を、環境温度に冷却させ、開放し、微細結晶粒のS粉末(約0.69g)を添加した。次いで、Cl(約3.13g)およびBr(約1.5g)を、凝縮により反応器容器に添加して、約1.0:2.0:4.1:0.44のS:Cl:KF:Brのモル比を得た。容器を、終夜、環境温度に保ち、SFClおよびSFは、気相の赤外(IR)スペクトルからほとんど検出されなかった。IR分光法は、4020 Galaxy型のFTIR分光光度計(Mattson Instruments、米国、53711 ウィスコンシン州、マディソン)を用いて行われた。IRスペクトルにおける変化は、約4日を超えた後に認められなかった。さらにBr(約5.5g)を、凝縮により反応器容器に添加して、約1:2.0:4.1:2.0のS:Cl:KF:Brの新しいモル比を得た。環境温度において約4日後に、非常に強いSF特有のスペクトル信号が観測され(例えば、約876cm−1および約730cm−1を中心とする吸収帯群)、これは、非常に弱いSFClのIRスペクトル信号(例えば、約909cm−1、約855cm−1および約602cm−1を中心とする吸収帯群)を伴っていた。その反応は、IRスペクトルにより示されるように、SFへの高程度の変換を示した。この実施例は、1.)Brのモル比を増加させることが、SFの形成を促進すると思われ、2.)SFは、反応
4KF+S+2Cl+(Br)→SF+4KCl+(Br
において環境温度で約4日以内に効率よく合成され得ることを例示している。
【実施例2】
【0060】
高温におけるSFの形成
無水の微細結晶粒のKF粉末(約10.50g)を、ステンレス鋼の100mlのホークボンベ管反応器中で、約150℃から200℃で、約1時間、高真空において乾燥した。反応器を、環境温度に冷却させ、開放し、微細結晶粒のS粉末(約1.37g)を添加した。次いで、Cl(約6.1g)およびBr(約14.3g)を、凝縮により反応器容器に添加して、約1.00:2.00:4.23:2.09のS:Cl:KF:Brのモル比を得た。次いで、容器を、65−70℃の温度に30日間保った。初めに、SFの他にいくらかのSFClが、反応器ボンベ管の気相成分のIRスペクトルにおいて検出されたが、それはやがて消失し、30日後において、SFClは検出されず、SFのみが検出された(IR分光法を行った。)。反応器容器ボンベ管を、−78℃に冷却し、生成物を、液体窒素冷却した冷却トラップ中を通して2時間ポンプ吸入した。粗生成物(4.6g)を、硫黄(20g)下で反応器容器ボンベ管中に20時間貯蔵して、存在し得る過剰の塩素を除去した。硫黄処理容器を−78℃に冷却後、生成物を、前のように冷却トラップ(液体窒素)中に収集した。黄色の色合いを、Hgでの処理により除去した。回収されたSF最終生成物の最終的な質量は、約88%(硫黄に基づく)の計算された収率について約4.08gであった。最終的なSF生成物は、無色の液体(冷却時)として見え、IRスペクトルにおいてSFの特徴的な吸収帯を示した。この実施例は、1.)温度を上昇させることは、SFの形成を促進すると思われ、2.)SFClを含まないSFは、反応
4KF+S+2Cl+(Br)→SF+4KCl+(Br
において効率よく合成され得ることを例示している。
【実施例3】
【0061】
Cl不存在下におけるSFの代替的な形成
無水の微細結晶粒のKF(約24.2g)を、ステンレス鋼の300mlのホークボンベ管反応器中で、約150℃から約200℃で、約1時間、高真空において乾燥した。反応器を、環境温度に冷却させ、開放し、微細結晶粒のS粉末(約3.24g)を添加した。次いで、約2を超えるSのBrに対するモル比を示すBr(約86.4g)を、凝縮により反応器容器に添加して、約1.00:4.10:5.30のS:KF:Brの最終的なモル比を得た。環境温度において約3日後に、強いSFのIRスペクトル信号を観測し、反応は、SFへの高程度の変換を示した。環境温度においてさらに3日後に、著しい変化はIRスペクトルにおいて認められなかった。
【0062】
最終的なSF生成物を、以下のように単離した。すなわち、反応容器を、ドライアイス浴(約−78℃)で冷却し、液体窒素冷却トラップ(約−196℃)を経て真空ポンプに接続した。約1.5時間後に、明褐色の、おそらく臭素で汚染された粗生成物約11.5グラムを得た。残留汚染物質(例えば、Br、臭化硫黄)を除去するために、粗生成物を、Hg約10グラムを含有する大きなガラス圧力容器中に凝縮させて、痕跡量の任意の変色汚染物質(すなわち、例えば、Br)を除去した。約0℃における短い振盪の後に、生成物を、冷却トラップ中に凝縮させ、無色の液体として得た。回収された最終生成物の最終的な質量は、約96%(硫黄に基づく)の計算された収率について約10.5gであった。最終生成物のIRスペクトルは、SOF(例えば、約1340cm−1および約808cm−1および約750cm−1を中心とする吸収帯群)により少しの汚染を伴う、実質的に純粋なSF試料を示した。この実施例は、SFは、反応
4KF+S+2Br→SF+4KBr
において、環境温度で約3日以内にCl不存在下で効率よく合成され得ることを例示している。
【実施例4】
【0063】
粗い結晶粒のKFおよびボールミルによるかき混ぜを用いた、SFの代替的な形成
無水の粗い結晶粒のKF(約28.1g)を、19、1/2インチの316グレードステンレス鋼ボールを含有した、ステンレス鋼の300mlのホークボンベ管反応器中で、約150℃から約200℃で、約1時間、高真空において乾燥した。反応器を、環境温度に冷却させ、開放し、微細結晶粒のS粉末(約3.8g)を添加した。次いで、臭素(約63.1g)を、反応器容器に添加して、約1.00:4.10:3.30のS:KF:Brの最終的なモル比を得た。環境温度において約4日間、反応容器を回転させた後に、SFの強いIRスペクトル信号を観測し、反応は、SFへの高程度の変換を示した。
【0064】
最終的なSF生成物を、以下のように単離した。すなわち、反応容器を、約−78℃に冷却し、冷却トラップ(約−196℃)を経て真空ポンプに接続した。約5時間後に、明褐色の、おそらく臭素で汚染された粗生成物約9.8グラムを得た。低温真空の移送を行って、非常に明るい褐色の液体を得た。回収されたSF最終生成物の最終的な質量は、約57%(硫黄に基づく)の計算された収率について約7.3gと推定された。最終生成物のIRスペクトルは、SOFによる少しの汚染を伴う、実質的に純粋なSF試料を示した。この実施例は、SFは、反応
4KF+S+2Br→SF+4KBr
において、粗い結晶粒のKFおよびボールミルのかき混ぜを用い、環境温度で約4日以内にCl不存在下で、効率よく合成され得ることを例示している。
【実施例5】
【0065】
高温におけるSFの代替的な形成
無水の微細結晶粒のKF(約17.1g)を、ステンレス鋼の300mlのホークボンベ管反応器中で、約150℃から約200℃で、約1時間、高真空下において乾燥した。反応器を、環境温度に冷却させ、開放し、微細結晶粒のS粉末(約2.3g)を添加した。次いで、Br(約36.3g)を、反応器容器に添加して、約1.00:4.10:3.20のS:KF:Brの最終的なモル比を得た。反応器容器を、約60℃に約3時間加熱し、SF生成物の形成を、IR分光法により監視した。反応器容器を、約−78℃に冷却し、SF生成物を液体窒素冷却トラップ中にポンプ吸入した。粗SF生成物の質量は、約50%の化学収率を示した。SF生成物を反応容器中に再凝縮した後に、これを、約72℃でさらに約2時間、および約80から約86℃でさらに約4時間加熱した。SF生成物の単離を、反応容器を約−78℃に冷却し、高真空下で約1.5時間、液体窒素冷却トラップ中にポンプ吸入することにより達成した。脱臭素を、約0℃でHg約20gを含有する大きなカリウス管の中における短い振盪により行った。精製SF約6.7グラムを、IR分光法により判断されるように、少量のSOFを含有して回収した。最終的な計算された収率は、約86%(硫黄に基づく)であった。この実施例は、SFが、反応
4KF+S+2Br→SF+4KBr
において、穏やかな高温で約9時間以内に、効率よく合成され得ることを例示している。
【実施例6】
【0066】
Brを制限しながらのSFの代替的な形成
無水の微細結晶粒のKF(約24.12g)を、ステンレス鋼の300mlのホークボンベ管反応器中で、約150℃から約200℃で、約1時間、高真空において乾燥した。反応器を、環境温度に冷却させ、開放し、微細結晶粒のS粉末(約3.16g)を添加した。次いで、Br(約31.1g)を、反応器容器に添加して、約1.00:4.21:1.97のS:KF:Brの最終的なモル比を得た。次いで、反応容器を液体窒素で冷却し排気した。反応容器を、環境温度で約6日間保ち、次いで、約80℃で約8時間加熱した。反応容器を約−78℃に冷却し、揮発性材料を、移送が見かけ上終わるまで、液体窒素冷却された冷却トラップ中にポンプ吸入した。冷却トラップの内容物を、第2の冷却トラップに移送し、第1の冷却トラップ中に褐色の残留物を残した。移送された材料を、Hg約10グラムを含有した大きなガラス圧力容器中に凝縮させて、痕跡量のBrを除去した。無色の生成物約7.31gを、液体窒素冷却された冷却トラップ中に再度凝縮させた。回収された最終生成物は、約70%(Brに基づく)の計算された収率について、約7.31gの質量の無色の生成物として現れた。最終生成物のIRスペクトルは、実質的に純粋なSF試料を示した。この実施例は、反応
4KF+S+2Br→SF+4KBr
において、必要とされる化学量論量より多くの臭素を用いるのが有利であることを例示している。
【実施例7】
【0067】
SFClの形成
無水の微細結晶粒のCsF(約10.95g)を、ステンレス鋼の300mlのホークボンベ管反応器中で、約100℃で、高真空下において乾燥し、これに対して、SF(約9.17g)、Cl(約3.20g)および臭素(約36.8g)を、液体窒素温度(約−196℃)における真空凝縮により連続的に添加して、約1.00:0.85:0.53:2.71のSF:CsF:Cl:Brのモル比を得た。その容器を、環境温度で約5日間取り置き、気相成分のIRスペクトルは、非常に強い吸収帯、すなわちSFClに対応する吸収帯群を示した。この実施例は、SFClが、反応
CsF+SF+Cl+(Br)→SFCl+CsCl+(Br
において、Cl、BrおよびSFを用いて環境温度で約5日以内に、効率よく合成され得ることを例示している。
【実施例8】
【0068】
別の金属フッ化物を用いたSFClの代替的な形成
KF(約5.0g)を、ステンレス鋼の100mlのホークボンベ管反応器中で、約150℃から約200℃で、約1時間、高真空において乾燥した。Br(約9.71g)、Cl(約3.54g)およびSF(約4.71g)を、凝縮によりボンベ管反応器に添加して、約1.00:1.14:1.98:1.39のSF:Cl:KF:Brのモル比を得た。反応は、IRスペクトルから測定されるように、環境温度において約2日後にほぼ完結したと思われる(すなわち、SFに対して強いSFClのIRスペクトル信号が観測された。)。次いで、反応物質を、約115℃で約2日間加熱し、気相のIRスペクトルは、SFに対応する非常に小さい信号を示した。この実施例は、SFClが、反応
KF+SF+Cl+(Br)→SFCl+KCl+(Br
において、Cl、BrおよびSFを用いて環境温度または穏やかな高温で約2から約4日以内に、効率よく合成され得ることを例示している。
【実施例9】
【0069】
SFの代わりにSを用いたSFClの代替的な形成
KF(約15.60g)を、ステンレス鋼の300mlのホークボンベ管反応器に添加し、約150℃から約200℃で、約1時間、高真空において乾燥した。ボンベ反応器を開放し、微細結晶粒のS粉末(約1.50g)を添加した。反応器を再密封後、Cl(約9.03g)およびBr(約8.59g)を、凝縮により添加して、約1.00:2.71:5.71:1.15のS:Cl:KF:Brのモル比を得た。その圧力反応器を、環境温度に終夜保ち、SFClおよびSFの両方をIRスペクトルから検出した。IRスペクトルにおける変化は、約3日後において認められなかった。さらにClを添加(約1.20g)し、モル比を約1.00:3.26:5.72:1.15のS:Cl:KF:Brにした。反応を、IR分光法により時おり監視した。環境温度でさらに約2週間後に、反応は、IR分光法により判断されるように、実質的に完結した。この実施例は、1.)他のSF生成反応に比べて、ClおよびKFのモル比を増加させることは、この反応において、SFよりSFClの生成を促進し、2.)SFClは、反応、5KF+S+3Cl+(Br)→SFCl+5KClにおいて、環境温度で数週以内に、効率よく合成され得ることを例示している。
【実施例10】
【0070】
SFClの形成
KF(約10.55g)を、ステンレス鋼の100mlのホークボンベ管反応器中で高真空下において乾燥し、約150℃から約200℃で、約1時間乾燥した。反応器を開放し、微細結晶粒のS粉末(約1.13g)を添加した。反応器を再密封後、Cl(約8.15g)およびBr(約7.99g)を、凝縮により添加して、約1.00:3.25:5.15:1.41のS:Cl:KF:Brの化学量論比を得た(反応「A」)。第2の類似の反応を、微細結晶粒のS粉末約1.58gと、同じモル比の他の成分とを利用して調製した(反応「B」)。反応「A」および「B」の容器を、環境温度で約3日間置き、SFおよびSFClの生成の成功が、IR分光法により認められた。その後、SFおよびSFClを、IR分光法により2から約3日ごとに監視し、約13日目までに、反応が完了しておらず、SFおよびSFClの生成が著しく遅延していることが明らかになった。次いで、両方の反応容器の揮発性成分を凝縮させ、KF約7.94グラムを含有した第3の容器中で合わせた。環境温度でさらに約4日後に、IR分光法は、すべての残留SFが、消費されていると思われ、見かけ上唯一の生成物としてSFClが残存していることを示した。
【0071】
最終生成物を、以下の方法で単離した。1.)反応容器を、約−78℃に冷却し、冷却トラップ(約−196℃)を経て真空ポンプに接続した。約6時間後に、明るい黄色がかった粗生成物約15.5グラムを得た。残留汚染物質(例えば、Cl、Br、塩化硫黄)を除去するために、粗生成物を、S約3グラム下において、圧力反応器中に終夜保った。生成物を、この容器の外にポンプ吸入し、約−78℃に冷却し、冷却トラップ(約−196℃)を経てポンプに接続し、次いで少量の水銀を含有した大きな冷却トラップ中に凝縮させて、痕跡量の任意の変色汚染物質(例えば、Br、塩化硫黄)を除去した。生成物を、無色の液体として得た。回収された最終生成物の最終的な質量は、約95%(硫黄に基づく)の計算された収率について約13.10gであった。最終生成物のIRスペクトルは、純粋なSFCl試料を示した。
【0072】
この実施例は、1.)さらなるKFが、SFCl生成反応を再び起こし、これを完了またはほぼ完了させるために必要なことがある、2.)SFClの生成が、反応で利用しやすいKFの減少により、たぶん、KFの露出された表面における非反応性KClの蓄積により遅延されることがあり、これは、未使用のKFの添加、反応容器のかき混ぜ、または反応時間中にわたってKFの反応性の表面積を増加させることができる他の方法により修正され得る、3.)反応、5KF+S+3Cl+(Br)→SFCl+5KCl+(Br)から、環境温度で約2から約3週以内に、完結した、または実質的に完結したSFClの生成に達し、実質的に純粋なSFClを生成することが可能であることを例示している。
【実施例11】
【0073】
SFClの形成
KF(約10.58g)を、ステンレス鋼の300mlのホークボンベ管圧力反応器中において、約150℃から約200℃で、約1時間、高真空下で乾燥した。反応器を開放し、S(約1.1g)を添加した。反応器を再密封後、Cl(約9.0g)を、凝縮により添加して、約1.00:3.70:5.30のS:Cl:KFの化学量論比を得た。反応容器を、環境温度で取り置き、SFまたはSFClのいずれの生成も、約30日後におけるIR分光法により検出されなかった。次いで、Br(約7.54g)を、凝縮により添加して、約1.00:3.70:5.30:1.37のS:Cl:KF:Brの新しい化学量論比を得た。環境温度で約3日後において、SFおよびSFClの両方の生成が、IR分光法により認められた。この実施例は、1.)SFおよびSFClの生成に要するすべての化学的要素が、約30日間継続して反応容器中に存在したが、SFまたはSFClの生成が、環境温度でBrの不存在下において認められなかった、2.)反応の必要成分(S、Cl、KF)が30日間未反応のままであった後に、数日以内の次のBr添加が、環境温度におけるSFおよびSFClの効率的な形成を促進した、3.)Brが、反応物質KF、SおよびClからSFおよびSFClを効率よく環境温度で生成するために必要と思われることを例示している。
【実施例12】
【0074】
SFBrの形成
AgF(約11.02g)を、約150から約200℃で、高真空下で乾燥した。Br(約35.5g)およびSF(約7.3g)を、300mlのホークボンベ管圧力反応器に凝縮により添加して、約1.00:1.28:3.30のSF:AgF:Brのモル比を得た。次いで、反応容器を、約100℃の沸騰水浴中に置き、次に、約2、約6.5、約15および約79時間で、IR分光法により監視した。IRスペクトルは、SFBrの漸進的蓄積(例えば、約891cm−1および約854cm−1および約594cm−1を中心とする吸収帯群)、および時間とともにSFBrのSFに対するIRスペクトル信号の比が増加することを観測したことにより例証されるように、SFの減少を示した。
【0075】
最終生成物を、以下の方法で単離した。すなわち、反応容器を、約−78℃に冷却し、冷却トラップ(約−196℃)を経て真空ポンプに接続した。約3時間後に、明るい黄色がかった粗生成物約9.3グラムを冷却トラップ中に得た。生成物を、冷却トラップから、少量の水銀を含有したカリウス管に真空移送して、痕跡量の任意の変色汚染物質(例えばBr)を除去した。生成物を、薄麦わら色の液体として得た。回収された最終生成物の最終的な質量は、約75.4%(SFに基づく)の計算された収率について約8.55gであった。最終生成物のIRスペクトルは、実質的に純粋なSFBr試料を示した。この実施例は、1.)SFBrは、反応
AgF+SF+Br→SFBr+AgBr
において、100℃で約79時間以内に、効率よく合成され得ることを例示している。
【実施例13】
【0076】
代替金属フッ化物を用いたSFBrの形成
AgF(約2.33g)を、100mlのホークボンベ管圧力反応器中において、約150から約200℃で、高真空下において乾燥した。Br(約12.95g)およびSF(約3.14g)を、凝縮により反応器に添加して、約1.00:0.55:2.78のSF:AgF:Brのモル比を得た。次いで、反応容器を100℃で置き、次に約52時間でIR分光法により監視した。IRスペクトルは、SFBrを示す非常に強い吸収帯または吸収帯群、SFおよびSOFに対応する非常に弱い吸収帯または吸収帯群、ならびにSFに対応する中程度の強度の吸収帯または吸収帯群(例えば、約947cm−1を中心とする中程度の強度の吸収帯)を示した。この実施例は、1.)SFBrは、反応
2AgF+4SF+3Br→4SFBr+2AgBr
において、約100℃で約52時間以内に、効率よく合成され得ることを例示している。
【実施例14】
【0077】
SFの形成
CoF(約4.2g)を、100mlのホークボンベ管圧力反応器中において、約150から約200℃で、高真空下において乾燥した。Br(約22.0g)およびSF(約4.63g)を、凝縮により圧力容器に添加して、約1.00:0.84:3.21のSF:CoF:Brのモル比を得た。次いで、反応容器を約100℃で置き、次に約52時間でIR分光法により監視した。IRスペクトルは、SFを示す強い吸収帯または吸収帯群、SFに対応する中程度の強度の吸収帯または吸収帯群、およびSOFに対応する弱い吸収帯または吸収帯群を示した。SFBrの兆候は、IRスペクトルから明らかでなかった。この実施例は、1.)SFは、反応
2CoF+SF+(Br)→SF+2CoF+(Br
において、約100℃で約52時間以内に、効率よく合成され得ることを示している。
【実施例15】
【0078】
比較例
代替的なMFが、SF4の製造における反応物質としてKFと有効に置き換わることができるかを決定するために、無水の微細結晶粒のNaF(約16.94g)を、ステンレス鋼のホークボンベ管圧力反応器中で、約150℃から約200℃で、約1時間、高真空において乾燥した。反応器を、環境温度にゆっくりと冷却させ、開放し、硫黄(約2.17g)を添加した。次いで、Br(約29.5g)を反応器容器に添加して、約1.00:5.90:2.70のS:NaF:Brの最終的なモル比を得た。環境温度で約2日後において、反応容器から除去された気相成分のIR分光法により測定されるように、SFは現れなかった。次いで、反応容器を、約80℃に約18時間加熱し、気相成分のIRスペクトルにより、反応生成物(SF、SOF)が存在しないことが再びわかった。次に、反応容器を、約155℃に約18時間加熱し、気相成分のIRスペクトルは、非常に少量のSOFと、SFが含まれていないこととを示し、SFの痕跡のみの形成が示唆され、SFの痕跡は、反応容器中に導入された極少量の水により明らかに加水分解されていた。
【実施例16】
【0079】
比較例
代替的なMFが、SFからのSFCl製造における反応物質としてKFと有効に置き換わることができるかを決定するために、100mlのステンレス鋼のホークボンベ管反応器に、NaF(約10.19g)を充填し、上述のように高真空下で乾燥した後に、次いで、反応器に、塩素(約4.77g)、臭素(約11.57g)およびSF(約14.61g)を真空凝縮により連続的に充填した。SF:NaF:Cl:Brのモル比は、約1.00:1.79:1.10:1.50に等しかった。反応は、環境温度で約11日間、かき混ぜることなく行われ、この時間の後、反応は、IRスペクトルから明らかにならなかった。反応容器を、約115から約125℃でさらに約9日間加熱しても、IR分光法により示されるように、SFClの形成につながらなかった。
【実施例17】
【0080】
比較例
CuF(約4.59g)を、約150から約200℃で、約1時間、高真空において乾燥した。Br(約18.9g)およびSF(約3.21g)を、凝縮により圧力反応器に添加して、約1.00:1.54:3.72のSF:CuF:Brのモル比を得た。次いで、反応容器を約100℃で置き、次に約52時間でIR分光法により監視した。IRスペクトルは、反応が起きていないことを示した。
【実施例18】
【0081】
比較例
TlF(約4.23g)を、約150から約200℃で、約1時間、高真空下において乾燥した。Br(約7.6g)およびSF(約1.38g)を、凝縮により圧力反応器に添加して、約1.00:1.49:3.86のSF:TlF:Brのモル比を得た。次いで、反応容器を約100℃で置き、次に約52時間でIR分光法により監視した。IRスペクトルは、反応が起きていないことを示した。
【0082】
別に示されなければ、明細書および特許請求の範囲の中で用いられる、成分の量、分子量等の特性および反応条件等を表すすべての数は、「約」の用語によりすべての場合において変更され得るものと理解されるべきである。したがって、逆に示されなければ、明細書および添付の特許請求の範囲の中に記された数のパラメータは、本発明により得ようとする所望の特性に応じて変化することができる近似値である。最低でも、特許請求の範囲と同等の原理の応用を制限する試みとしてではなく、それぞれの数のパラメータは、少なくとも、報告された有効数字の個数の観点から、四捨五入の技法を適用することにより解釈されるべきである。本発明の広い範囲を記す数の範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、具体的な実施例において記された数値は、できるだけ正確に報告されている。しかし、任意の数値は、これらのそれぞれの試験測定において見出される標準偏差に必然的に起因する特定の誤差を固有に含有する。
【0083】
本発明を記述する文脈において(特に以下の特許請求の範囲の文脈において)用いられる「a」、「an」、「the」および類似の指示対象の用語は、本明細書において別に示されなければ、または文脈により明らかに否定されなければ、単数および複数の両方を含むものと解釈されるべきである。本明細書における数値範囲の詳述は、その範囲内に含まれるそれぞれの別個の値を個別的に指す省略表現法として働くことを単に意図したものである。本明細書において別に示されなければ、それぞれの個別の値は、これが明細書において個別的に列挙されているかのように、明細書中に組み込まれる。本明細書に記載のすべての方法は、本明細書において別に示されなければ、または文脈により明らかに否定されなければ、任意の適切な順序で行われ得る。任意およびすべての実施例の使用、または本明細書において与えられる例示的な言葉(例えば、「等」)は、単に、本発明をより良好に明らかにすることを意図したものであり、別に特許請求された本発明の範囲に限定を生じるものではない。本明細書における言葉は、本発明の実施に本質的な、任意の特許請求されていない要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0084】
本明細書において開示される、本発明の代替的な要素または実施形態の群は、限定と解釈されるべきではない。それぞれの群の構成要素は、個別に、またはその群の他の構成要素もしくは本明細書において見出される他の要素と任意に組み合わせて、言及または特許請求され得る。群の1つまたは複数の構成要素は、便宜上および/または特許性の理由で群に含まれ、または削除され得ることが予想される。任意のこのような包含または削除が行われた場合において、本明細書は、このように変更された群を含有し、添付の特許請求の範囲において用いられるすべてのマーカッシュの群の記述された説明を満たすものとみなされる。
【0085】
本発明の特定の実施形態は本明細書に記載され、本発明を実施するために発明者が知っている最良の形態を含む。当然、これらの記載された実施形態に対する変形は、前述の記載を読むことにより当業者に明白になる。発明者は、熟練工が適切な変形を用いることを期待し、発明者は、本発明が本明細書の具体的な記載と異なって実施されることを意図している。したがって、本発明は、適用可能な法律により許容される、本明細書に添付された特許請求の範囲に列挙される主題のすべての変更および同等のことを含む。そのうえ、上述の要素の、これらのすべての可能な変形での任意の組合せは、本明細書において別に示されなければ、または文脈により明らかに否定されなければ、本発明により包含される。
【0086】
さらに、多数の特許および刊行物が、本明細書の中で参照されている。上記に引用した参照文献および刊行物は、これら全体で、個別的に参照により本明細書に組み込まれる。
【0087】
締めくくりに、本明細書において開示される、本発明の実施形態は、本発明の原理の実例となると理解されるべきである。使用され得る他の変更は、本発明の範囲内である。したがって、限定でなく例として、本発明の代替的な構成は、本明細書における教示に従って利用され得る。したがって、本発明は、正確に、示され記載された通りのことに限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Br、金属フッ化物反応物質および硫黄反応物質を混合することにより、約10%より高いフッ素−硫黄化合物の収率をもたらす反応を開始することを含む、前記フッ素−硫黄化合物、または前記生成されたフッ素−硫黄化合物を用いて作製される化合物を製造する方法。
【請求項2】
前記混合が、Clをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応の前記製造が、約10から約400℃の温度で進行する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
10またはBrF、BrF、BrF、CsBrF、CsBrF、アセトニトリル、ジオキサン、ClF、ClF、NOF、HF、F、(HF)・アミン、IFまたはこれらの組合せのいずれかが、前記反応に加えられることがない、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
硫黄反応物質、金属フッ化物反応物質およびBr反応物質を混合することにより、約10%より高い収率でSFを生成する反応を開始することを含む、SF4、または前記生成されたSFを用いて作製される化合物を製造する方法。
【請求項6】
前記反応が、約10から約400℃の温度で進行する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記硫黄反応物質がSであり、前記金属フッ化物がKFであり、前記混合が、約4KF対約2Br対約1Sの化学量論比で行われ、前記反応が約10から約400℃の温度で進行する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記金属フッ化物が、アルカリ土類金属フッ化物、アルカリ金属フッ化物、CsF、RbF、KF、BaF、SrFもしくはこれらの組合せである、および/または前記硫黄反応物質が、S、SCl、SCl、SBr、SBrもしくはこれらの組合せである、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
硫黄反応物質、金属フッ化物反応物質、Cl反応物質およびBr試薬を混合することにより、約10%より高い収率でSFを生成する反応を開始することを含む、SF、または前記生成されたSFを用いて作製される化合物を製造する方法。
【請求項10】
前記反応が、約10から約400℃の温度で進行する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記硫黄反応物質がSであり、前記金属フッ化物がKFであり、前記混合が、約4KF対約1Br対約1S対約2Clの化学量論比で行われる、または前記硫黄反応物質がSClであり、前記金属フッ化物がKFであり、前記混合が、約4KF対約1Br対約1SCl対約1Clの化学量論比で行われ、前記反応が、約10から約400℃の温度で進行する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記金属フッ化物が、アルカリ土類金属フッ化物、アルカリ金属フッ化物、CsF、RbF、KF、BaF、NaF、SrFもしくはこれらの組合せである、および/または前記硫黄反応物質が、S、SCl、SCl、SBr、SBrもしくはこれらの組合せである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
Cl反応物質、硫黄反応物質、金属フッ化物反応物質およびBr試薬を混合することにより、約50%より高い収率でSFClを生成する反応を開始することを含む、前記SFCl、または前記生成されたSFClを用いて作製される化合物を製造する方法。
【請求項14】
前記反応が、約10から約200℃の温度で進行する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記硫黄反応物質がSであり、前記金属フッ化物がKFであり、前記混合が、約5KF対約1Br対約1S対約3Clの化学量論比で行われる、または前記硫黄反応物質がSFであり、前記金属フッ化物がKFであり、前記混合が、約1KF対約1Br対約1SF対約1Clの化学量論比で行われる、または前記硫黄反応物質がSClであり、前記金属フッ化物がKFであり、前記混合が、約5KF対約1Br対約1SCl対約2Clの化学量論比で行われ、前記反応が、約10から約200℃の温度で進行する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記金属フッ化物が、アルカリ土類金属フッ化物、アルカリ金属フッ化物、CsF、RbF、KF、BaF、SrFもしくはこれらの混合物である、および/または前記硫黄反応物質が、S、SCl、SCl、SFもしくはこれらの組合せである、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
Br反応物質、硫黄反応物質および金属フッ化物反応物質を混合することにより、約50%より高い収率でSFBrを生成する反応を開始することを含む、SFBr、または前記生成されたSFBrを用いて作製される化合物を製造する方法。
【請求項18】
10またはBrF、BrF、BrF、CsBrF、CsBrFまたはこれらの混合物のいずれかが、前記反応に加えられることがない、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記反応が、約10から約140℃の温度で進行する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記硫黄反応物質がSFであり、前記金属フッ化物がAgFであり、前記混合が、約1AgF対約1Br対約1SFの化学量論比で行われる、または前記硫黄反応物質がSFであり、前記金属フッ化物がAgFであり、前記混合が、約2AgF対約3Br対約4SFの化学量論比で行われ、前記反応が、約10から約140℃の温度で進行する、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
金属フッ化物が、アルカリ土類金属フッ化物、アルカリ金属フッ化物、AgF、AgF、AuF、MnF、PbF、CeFまたはこれらの混合物である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
Br反応物質、SF反応物質および金属フッ化物反応物質を混合することにより、約50%より高い収率でSFを生成する反応を開始することを含む、SF、または前記生成されたSFを用いて作製される化合物を製造する方法。
【請求項23】
前記反応が、約10から約400℃の温度で進行する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記硫黄反応物質がSFであり、前記金属フッ化物がCoFであり、前記混合が、約2CoF対約1Br対約1SFの化学量論比で行われ、前記反応が、約10から約400℃の温度で進行する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記金属フッ化物が、アルカリ土類金属フッ化物、アルカリ金属フッ化物、CoF、MnF、PbF、CeF4またはこれらの混合物からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。

【公表番号】特表2011−524327(P2011−524327A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513708(P2011−513708)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/047116
【国際公開番号】WO2009/152385
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(510326522)アバントバイオ・コーポレイシヨン (1)