説明

フッ素イオンを含有する廃水処理方法

【課題】排水中に含まれるフッ素イオンを吸着除去できる方法を提供する。
【解決手段】半導体製造工場より排出されるフッ素イオンを含有するpH4.0以下の排水に、水酸化マグネシウムを700〜1000℃で焼成して得られかつBET表面積40〜200m/gを有する酸化マグネシウムを添加し、10〜25℃の温度で処理し、凝集剤を加えて固液分離することによりフッ素イオンを除去する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工場より排出されるpH4.0以下の排水中に含まれるフッ素イオンの含有量を低減する方法に関する。更に詳しくは、該排水中に含有する有害フッ素イオン(以下単に“フッ素”と称することがある)の含有量を排水基準以下、更には、土壌環境基準以下に低減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工場では、シリコンウエハーのエッチング剤として多量のフッ酸が使用されている。このフッ酸は、水等で洗浄されるために排水のpHが4.0以下と低く且つ高濃度のフッ素が含まれている。
そして、環境庁発令の排水基準によれば検液中のフッ素濃度は8mg/L以下、また、土壌環境基準によれば同0.8mg/L以下に定められている。
フッ素含有排水中のフッ素を除去する方法としては、フッ素含有水にカルシウム塩を加えて難溶性のフッ化カルシウムを生成させる方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、フッ素含有排水にマグネシア形成可能なマグネシウム化合物を焼成してい形成されたマグネシア系吸着剤(マグネシアを主成分として、カオリン、酸化第二鉄、酸化カルシウム、およびアルミナの中から選ばれる金属酸化物の少なくとも1種の混合物)を加えてフッ素を吸着除去する方法が提案されている(特許文献2参照)。
しかしながら、特許文献1に記載されたフッ素含有排水にカルシウム塩を加えてフッ化カルシウムを生成させる方法は、フッ化カルシウムの溶解度が0.0016g/100g(18℃)と大きく土壌環境基準をクリアすることができない。また、特許文献2に記載されたマグネシア系吸着剤はマグネシアと前記金属との混合物であるためにフッ素を除去する性能が不十分である。
【特許文献1】特開平10−57969号公報
【特許文献2】特開昭57−197082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記従来技術の問題点を解決し、半導体製造工場より排出されるフッ素イオンを含有する低pH排水中のフッ素イオンを効率的に除去する処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、半導体製造工場より排出されるフッ素イオンを含有する低pH排水中のフッ素イオンを効率的に除去する方法を鋭意研究した。その結果、特定の酸化マグネシウムが大きいフッ素吸着能を有することを見出し本発明を完成した。
【0006】
また、かかる酸化マグネシウムを高濃度のフッ素イオンを含有する該排水に添加することにより、処理後液中のフッ素濃度を排水基準の8mg/L以下、さらには土壌環境基準の0.8mg/L以下とすることとが可能であることを見出した。またさらには、フッ素イオンを吸着した水酸化マグネシウムが、再溶出試験においてフッ素イオンを溶出しないことをも見出し本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明によれば下記に説明する、半導体製造工場より排出されるフッ素イオンを含有するpH4.0以下の排水中のフッ素イオン濃度を低減する方法が提供される。
(1)フッ素イオンを含有するpH4.0以下の排水に、水酸化マグネシウムを700〜1,000℃で焼成して得られかつBET比表面積40〜200m/gを有する酸化マグネシウムを添加し、10〜25℃の温度で処理し、凝集剤を加えて固液分離することを特徴とする前記排水中のフッ素イオンを除去する方法。
(2)フッ素イオンを含有するpH4.0以下の排水が、半導体製造工場より排出される排水である前記(1)記載のフッ素イオンを除去する方法。
(3)フッ素イオンを含有するpH4.0以下の排水中のフッ素イオン濃度が、20〜300mg/Lである前記(1)記載のフッ素イオンを除去する方法。
(4)酸化マグネシウムが、水酸化マグネシウムを750〜850℃で焼成して得られかつBET比表面積50〜170m/gを有するものである前記(1)記載のフッ素イオンを除去する方法。
(5)該酸化マグネシウムは、水酸化マグネシウムを800〜900℃で焼成して得られかつBET比表面積100〜170m/gを有する前記(1)記載のフッ素イオンを除去する方法。
(6)該排水と該酸化マグネシウムとの接触時間は、5分〜3時間、好ましくは15分〜1時間である前記(1)記載のフッ素イオンを除去する方法。
(7)該排水と該酸化マグネシウムとの接触時液温が10〜25℃である前記(1)記載のフッ素イオンを除去する方法。
(8)形成した水酸化マグネシウム粒子を含有する処理された排水のpHが9.5〜11.0である前記(1)記載のフッ素イオンを除去する方法。
(9)該排水100重量部当り、該酸化マグネシウムを0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部添加する前記(1)記載のフッ素イオンを除去する方法。
(10)該凝集剤を、該酸化マグネシウム1重量部当り0.01〜0.5重量部、好ましくは2〜5重量部添加せしめる前記(1)記載のフッ素イオンを除去する方法。
【0008】
本発明方法によるフッ素イオンの除去方法によれば、次の如き利点および特徴が得られる。
(a)分離されたフッ素イオン含有水酸化マグネシウム粒子は、環境庁告示46号溶出試験において、フッ素イオンを再溶出しない。
(b)分離されたフッ素イオンを含有水酸化マグネシウム粒子は、粉末X線回折法による測定に基づいて水酸化マグネシウムの結晶パターンが認められる。
(c)処理後排水中のフッ素イオン濃度が8mg/L以下である。
(d)処理後土壌環境基準において排水中のフッ素イオン濃度が0.8mg/L以下である。
(e)処理剤(酸化マグネシウム)は処理後排水中のフッ素イオン濃度を8mg/L以下とできる吸着容量が最大3ミリモル/gである。
(f)処理剤(酸化マグネシウム)は処理後排水中のフッ素イオン濃度を0.8mg/L以下とできる吸着容量が最大1.6ミリモル/gである。
【発明の効果】
【0009】
本発明方法によれば、半導体製造工場より排出されるフッ素イオンを含有するpH4.0以下の排水中に、特定の酸化マグネシウムを添加し、水酸化マグネシウム粒子を形成させることにより、処理後排水中のフッ素イオン濃度を排水基準、更には、土壌環境基準以下とすることが容易に可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の、半導体製造工場より排出されるフッ素を含有するpH4.0以下の排水中のフッ素イオン濃度の低減方法の実施形態は、該排水に特定の酸化マグネシウムを添加し、攪拌放置によりフッ素含有水酸化マグネシウム粒子を形成させ、該水酸化マグネシウムを分離することを特徴とする。即ち、酸化マグネシウムを水中に投入すると以下に示す水和反応により水酸化マグネシウムが生成する。
酸化マグネシウムの水和反応:MgO+HO→Mg(OH)
この反応時に、吸着機構は不明であるがフッ素イオンを吸着除去できることを見出した。
【0011】
本発明においては、処理すべき排水中のフッ素イオン濃度が20〜300mg/Lである。半導体製造工場から排出される排水中のフッ素イオン濃度は、我々の知る範囲において最小20mg/L、最大300mg/Lであることによる。
【0012】
本発明において、該酸化マグネシウムは水酸化マグネシウムを700〜1,000℃、好ましくは800〜900℃で焼成して得られかつBET比表面積40〜200m/g、好ましくは100〜170m/gのものである。水酸化マグネシウムの焼成は、一般的にロータリーキルンを用いるが700℃未満、或いは1,000℃を越える温度で焼成すると目標とするBET比表面積を有する酸化マグネシウムを得ることが困難となる。
【0013】
一方、該酸化マグネシウムのBET比表面積が40m/g未満では活性が低いために、水中での水和(水酸化マグネシウムへの移行)に長時間を有すると共に、フッ素イオン吸着容量が小さいので不利である。上限については特に制限するものではないが、200m/gを越える比表面積を有する酸化マグネシウムを得ることは困難である。
【0014】
本発明において、該排水と該酸化マグネシウムとの接触時間は、5分〜3時間、好ましくは15分〜1時間である。接触時間を5分未満とすると、酸化マグネシウムの水酸化マグネシウムへの移行量が少なく、フッ素吸着容量が小さいので不利である。上限については特に制限するものではないが、3時間を越えるとすると処理時間が長く不利である。
【0015】
本発明において、該排水と該酸化マグネシウムとの接触時液温は10〜25℃である。液温が10℃未満のときは、酸化マグネシウムの水酸化マグネシウムへの移行に長時間を要するので不利である。上限については特に制限するものではないが、冬期においては液温が低いために25℃を越える温度とするのに熱エネルギーを要するので経済的に不利である。
【0016】
本発明において、フッ素イオンを含有した水酸化マグネシウム粒子を分離した排水のpHは9.5〜11.0であるが、この排水に硫酸等の鉱酸を添加することにより容易に排水基準のpH5.6〜8.6とすることが可能である。
【0017】
本発明において、酸化マグネシウム添加量は該排水100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部である。上限については特に制限するものではないが、前記範囲の添加で該排水中のフッ素濃度を土壌環境基準値以下とすることが可能であることによる。
【0018】
本発明において、処理後のフッ素イオンを含有した水酸化マグネシウム粒子を排水中からの固液分離を容易にするために凝集剤を添加する。
該凝集剤としては、市販の無機系凝集剤および市販の高分子凝集剤共に有効であり、添加量は該酸化マグネシウム1重量部に対して0.01〜5重量部、好ましくは2〜5重量部とするのが有利である。
【0019】
本発明において、分離されたフッ素イオン含有水酸化マグネシウム粒子は、環境庁告示46号溶出試験のフッ素イオン溶出基準に適合する。この結果により、酸化マグネシウムの水和により生成する水酸化マグネシウムのフッ素イオン吸着機構がフッ化マグネシウムを形成することによるものではないと推測される(フッ化マグネシウムの溶解度は、フッ化カルシウムの溶解度よりはるかに高いことによる)。
【0020】
本発明において、分離されたフッ素イオンを含有水酸化マグネシウム粒子は、粉末X線回折法による測定に基づいて水酸化マグネシウムの結晶パターンが認められる。
【0021】
本発明の好適な実施形態によれば、フッ素イオン含有排水中のフッ素イオン濃度を排水基準値の8ppm以下、更には、土壌環境基準値の0.8ppm以下とすることが可能である。また、これらを達成するときの該酸化マグネシウムのフッ素イオン吸着容量は、それぞれ、3ミリモル/g以上および1.6ミリモル/g以上である。
【実施例】
【0022】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
尚、該排水中の各種イオン濃度の測定は、フッ素イオンはJIS K 0102 34.1、塩素イオンおよび硝酸イオンはイオンクロマトグラフィー、その他(アルミニウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ナトリウムイオン、硫酸イオン)はICPでそれぞれ分析した。
X線回折は理学電気(株)製RINP2200Vを用いてCu−Kαにて測定した。
【0023】
実施例1
表1に示すイオンを含む半導体製造工場より排出された排水200mLに、協和化学工業(株)製酸化マグネシウム「キョーワマグ30:BET表面積=48m/g」を1g(0.5重量部)添加し、30分間マグネティックスタラーを用いて攪拌した(攪拌中の液温は23.3℃であった)。後、固液分離した上澄み液のフッ素イオン濃度は6.72mg/Lで排水基準に適合していた。また、液のpHは9.92であった。
【0024】
尚、本条件における該酸化マグネシウムのフッ素イオン吸着容量は0.92ミリモル/gであった。
【0025】
【表1】

【0026】
実施例2
表1に示すイオンを含む半導体製造工場より排出された排水200mLに、協和化学工業(株)製酸化マグネシウム「キョーワマグ30:BET表面積=48m/g」を0.65g(0.33重量部)添加し、10時間マグネティックスタラーを用いて攪拌した(攪拌中の液温は23.1℃であった)。後、固液分離した上澄み液のフッ素イオン濃度は0.4mg/Lで土壌環境基準に適合していた。また、液のpHは10.35であった。
尚、本条件における該酸化マグネシウムのフッ素イオン吸着容量は1.51ミリモル/gであった。
【0027】
実施例3
表1に示すイオンを含む半導体製造工場より排出された排水200mLに、協和化学工業(株)製酸化マグネシウム「キョーワマグ100:BET表面積=85m/g」を0.5g(0.25重量部)添加し、30分間マグネティックスタラーを用いて攪拌した(攪拌中の液温は23.4℃であった)。後、固液分離した上澄み液のフッ素イオン濃度は1.95mg/Lで排水基準に適合していた。また、液のpHは10.32であった。
尚、本条件における該酸化マグネシウムのフッ素イオン吸着容量は1.94ミリモル/gであった。
【0028】
実施例4
実施例3において、該酸化マグネシウム添加量を0.7g(0.35重量部)とした以外は実施例3と同様とした。その結果、固液分離した上澄み液のフッ素イオン濃度は0.2mg/Lで土壌環境基準に適合していた。また、液のpHは10.30であった。
尚、本条件における該酸化マグネシウムのフッ素イオン吸着容量は1.41ミリモル/gであった。
【0029】
実施例5
表1に示すイオンを含む半導体製造工場より排出された排水200mLに、協和化学工業(株)製酸化マグネシウム「キョーワマグ150:BET表面積=146m/g」を0.3g(0.15重量部)添加し、30分間マグネティックスタラーを用いて攪拌した(攪拌中の液温は23.5℃であった)。後、固液分離した上澄み液のフッ素イオン濃度は3.1mg/Lで排水基準に適合していた。また、液のpHは10.49であった。
尚、本条件における該酸化マグネシウムのフッ素イオン吸着容量は3.2ミリモル/gであった。
【0030】
実施例6
実施例5において、該酸化マグネシウム添加量を0.6g(0.3重量部)とした以外は実施例5と同様とした。その結果、固液分離した上澄み液のフッ素イオン濃度は0.22mg/Lで土壌環境基準に適合していた。また、液のpHは10.45であった。
尚、本条件における該酸化マグネシウムのフッ素イオン吸着容量は1.64ミリモル/gであった。
【0031】
実施例7
表1に示すイオンを含む半導体製造工場より排出された排水200mLを液温10〜12℃に調整し、協和化学工業(株)製酸化マグネシウム「キョーワマグ150:BET表面積=146m/g」を1.0g(0.5重量部)添加し、30分間マグネティックスタラーを用いて攪拌した(この間終始液温を10〜12℃に調整した)。後、固液分離した上澄み液のフッ素イオン濃度は0.31mg/Lで土壌環境基準に適合していた。また、液のpHは10.40であった。
尚、本条件における該酸化マグネシウムのフッ素イオン吸着容量は0.99ミリモル/gであった。
【0032】
実施例8
表1に示すイオンを含む半導体製造工場より排出された排水3000mLに、協和化学工業(株)製酸化マグネシウム「キョーワマグ150:BET表面積=146m/g」を9.0g(0.3重量部)添加し、ケミスタラーを用いて1時間攪拌した。後、ミクニエコシステム(株)製凝集剤スカイクリーンSを0.3g(該水酸化マグネシウム1重量部に対して3.3重量部)添加したところ沈降性の良いフロックが形成され20秒の攪拌で完全に固液分離できた。その後、攪拌を停止し、固液分離した上澄み液に硫酸を加えてpH7.5に調整した液中のフッ素イオン濃度は0.3mg/Lであり土壌環境基準に合格していた。尚、本条件における該酸化マグネシウムのフッ素イオン吸着容量は1.64ミリモル/gであった。
また、固液分離した固体を乾燥したところ収量は12.8gであり、酸化マグネシウム9gを水和して得られる理論水酸化マグネシウム量13.0gにほぼ一致視している。さらに、この乾燥物のX線回折図は図1に示すように水酸化マグネシウムの結晶パターンを示した。
【0033】
実施例9
実施例8で、固液分離により得られた固形物を用いて、フッ素イオン含有水酸化マグネシウム粒子(フッ素イオンを吸着した水酸化マグネシウム粒子)を環境庁告示46号溶出試験に準じて実施した結果、溶出フッ素イオン濃度は0.1mg/L未満であり、土壌環境基準に合格していた。
【0034】
実施例10
表2に示すイオンを含む半導体製造工場より排出された排水200mLに、協和化学工業(株)製酸化マグネシウム「キョーワマグ150:BET表面積=146m/g」を2.5g(1.25重量部)添加し、30分間マグネティックスタラーを用いて攪拌した(攪拌中の液温は23.8℃であった)。その後、固液分離した上澄み液のフッ素イオン濃度は0.25mg/Lで排水基準に適合していた。また、液のpHは10.38であった。
尚、本条件における該酸化マグネシウムのフッ素イオン吸着容量は1.24ミリモル/gであった。
【0035】
【表2】

【0036】
比較例1
フッ素イオン濃度98.2mg/Lに調整したpH8.20のモデル排水(フッ化ナトリウム水溶液)200mLに、協和化学工業(株)製酸化マグネシウム(キョーワマグ150:BET表面積=146m/g)を1g(0.5重量部)添加し、マグネティックスタラーを用いて30分間攪拌した(攪拌中の液温は22.2℃であった)。後、固液分離した上澄み液中のFイオン濃度は25.5mg/Lで排水基準に不適合であった。また、液のpHは11.85であった。
尚、本条件における該酸化マグネシウムのフッ素イオン吸着容量は0.77ミリモル/gであった。
【0037】
比較例2
比較例1において、マグネティックスタラーでの攪拌時間を24時間とした以外は比較例1と同様に処理した。その結果、フッ素イオン濃度は11.3mg/Lで排水基準に不適合であった。
尚、本条件における該酸化マグネシウムのフッ素イオン吸着容量は0.92ミリモル/gであった。
【0038】
実施例1〜10より、半導体製造工場から排出されるフッ素イオン含有排水中に酸化マグネシウムを投入し、再水和により水酸化マグネシウム粒子を生成させることにより、フッ素イオンを含有した水酸化マグネシウム粒子が得られ、排水中のフッ素イオンを効率的に除去できることが分かる。更に、排水基準のフッ素濃度8mg/L以下とすることが可能な最大吸着容量は3ミリモル/g以上、土壌環境基準の0.8mg/L以下とすることが可能な最大吸着容量が1.6ミリモル/g以上であることも分かる。
この吸着容量より、該排水中のフッ素イオン濃度が如何なるものであっても添加する酸化マグネシウム量を計算でもとめることができる。
更に、フッ素イオン吸着した水酸化マグネシウムは、溶出試験においてフッ素イオンを溶出しないため廃棄物処理が容易で低コストで実施できることが分かる。
また、比較例1〜2により該酸化マグネシウムは、低pH排水でなければフッ素イオンを効率的に除去できないこともわかる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例8で形成された水酸化マグネシウム粒子のX線回折図を示すものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素イオンを含有するpH4.0以下の排水に、水酸化マグネシウムを700〜1,000℃で焼成して得られかつBET比表面積40〜200m/gを有する酸化マグネシウムを添加し、10〜25℃の温度で処理し、凝集剤を加えて固液分離することを特徴とする前記排水中のフッ素イオンを除去する方法。
【請求項2】
フッ素イオンを含有するpH4.0以下の排水が、半導体製造工場より排出される排水である請求項1記載のフッ素イオンを除去する方法。
【請求項3】
フッ素イオンを含有するpH4.0以下の排水中のフッ素イオン濃度が、20〜300mg/Lである請求項1記載のフッ素イオンを除去する方法。
【請求項4】
酸化マグネシウムが、水酸化マグネシウムを750〜850℃で焼成して得られかつBET比表面積50〜170m/gを有するものである請求項1記載のフッ素イオンを除去する方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−136424(P2007−136424A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−337214(P2005−337214)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000162489)協和化学工業株式会社 (66)
【Fターム(参考)】