説明

フッ素ゴム−金属積層ガスケット素材

【課題】ステンレス鋼板とフッ素ゴムとの複合体よりなるゴム-金属積層ガスケット素材を形成するに際し、有害な塗布型クロメート処理などを金属に施さなくとも耐水性、耐LLC性、耐熱性に優れ、例えばエンジンシリンダーヘッドガスケットの実使用環境下を考慮した耐水試験方法および耐熱試験方法においても、接着剥がれの生じないフッ素ゴム-金属積層ガスケット素材を提供する。
【解決手段】ステンレス鋼板上に、有機金属化合物およびシリカを含有する表面処理剤層、シリカ含有樹脂系加硫接着剤層およびフッ素ゴム層、好ましくはさらに粘着防止層を順次積層してなるフッ素ゴム-金属積層ガスケット素材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素ゴム-金属積層ガスケット素材に関する。更に詳しくは、エンジンシリンダーヘッドガスケットなどとして好適に用いられるフッ素ゴム-金属積層ガスケット素材に関する。
【背景技術】
【0002】
耐水性、耐LLC(ロングライフクーラント)性および耐熱性が必要とされるエンジン用シリンダーヘッドガスケット素材の金属材料としては、主にステンレス鋼が用いられているが、ステンレス鋼に直接加硫接着剤を適用し、ゴムと接着させても耐液接着耐久性が悪く、このゴム金属積層板について水、LLC等に浸漬試験を実施すると、接着剥離を生ずるようになる。
【0003】
このための対策として、本出願人は先に加硫接着剤を塗布する前処理として、ステンレス鋼上に塗布型クロメート処理を施し、水、LLC等に対する耐性を向上させることを提案している。しかしながら、塗布型クロメート処理では、Cr6+イオンが含まれるため、環境対策上からみて好ましくない。
【特許文献1】特開2000−006307号公報
【特許文献2】特開平11−221875号公報
【0004】
これに対して、フェノール系樹脂をベースとする各種加硫接着剤用下塗り剤も市販されているが、ステンレス鋼との接着においては、十分なる接着性、耐水性を示さない。
【0005】
そこで本出願人はさらに、ゴム-金属積層ガスケット素材を製造するに際し、金属とゴムとの接着剤としてアルコキシシランをベースとする種々の加硫接着剤組成物を提案している。これらの加硫接着剤組成物は、予め化学的または物理的表面処理している金属表面との接着に特に適しているが、無処理の金属表面に適用した場合には、例えば塗布型クロメート処理を施したステンレス鋼の場合程の密着性を得ることはできない。
【特許文献3】特開平7−34054号公報
【特許文献4】特開平7−216309号公報
【特許文献5】特開平8−209102号公報
【特許文献6】特開平9−3432号公報
【特許文献7】特開平9−40916号公報
【特許文献8】特開平9−132758号公報
【特許文献9】特開平10−7990号公報
【特許文献10】特開平10−8021号公報
【特許文献11】特開平11−1672号公報
【特許文献12】特開2001−226642号公報
【0006】
さらに、本出願人は、金属板上に(A)シラン系下塗り剤、(B)ノボラック型エポキシ樹脂、フェノール樹脂および第3アミン化合物を含有する上塗り接着剤および(C)フッ素ゴムを順次積層したゴム金属積層ガスケットを提案している。このようにして構成されるフッ素ゴム金属積層ガスケットは、加熱された水、エチレングリコールまたはその水溶液、アルコール等に対してはすぐれた耐液性を示すものの、長期にわたる各種耐液性や耐熱性については、なお改良の余地がみられた。
【特許文献13】特開2004−76911号公報
【0007】
また、ガスケットの実使用環境においては、同時に異種金属が同一液に接触している場合が多く、このような場合ゴム-金属積層ガスケット素材と異種金属間に電位が発生し、接着剥れが促進されてしまうが、このような環境下においても接着剥れの発生しないクロムフリーステンレス鋼とフッ素ゴムとの積層体が望まれている。また、エンジンシリンダーヘッドガスケットとして使用する場合には、高温環境下に曝される可能性が高く、耐熱接着性も同時に要求される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ステンレス鋼板とフッ素ゴムとの複合体よりなるゴム-金属積層ガスケット素材を形成するに際し、有害な塗布型クロメート処理などを金属に施さなくとも耐水性、耐LLC性、耐熱性に優れ、例えばエンジンシリンダーヘッドガスケットの実使用環境下を考慮した耐水試験方法および耐熱試験方法においても、接着剥がれの生じないフッ素ゴム-金属積層ガスケット素材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる本発明の目的は、ステンレス鋼板上に、有機金属化合物およびシリカを含有する表面処理剤層、シリカ含有樹脂系加硫接着剤層およびフッ素ゴム層、好ましくはさらに粘着防止層を順次積層してなるフッ素ゴム-金属積層ガスケット素材によって達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかるフッ素ゴム-金属積層ガスケット素材は、ステンレス鋼板、有機金属化合物およびシリカを含有する表面処理剤層、シリカ含有樹脂系加硫接着剤層およびフッ素ゴム層よりなる積層構造を有することにより、水、LLC液に対して優れた耐久耐液性を示すばかりではなく、すぐれた耐熱性をも有している。フッ素ゴムを積層させることにより、ニトリルゴム積層物よりは耐熱性は良好となるが、耐水性は悪化するため、加硫接着剤層へのシリカの添加が必要となる。水、LLC液に対する耐久耐液性は、ガスケットと異種金属とが同一液に接触している場合にも有効に発揮され、異種金属間に発生する電位によって接着剥がれを生ずることもないといったすぐれた接着性を示す。
【0011】
ステンレス鋼とフッ素ゴムとを積層させた複合体を、水やLLCのような電解質に接触させて使用する場合、同一液にアルミニウムや鉄などの腐食し易い金属が存在すると、複合体との間に電位が発生し、それらの金属が腐食反応(アノード反応)を起すと同時に、複合体のステンレス鋼表面にカソード反応が起り、これによって接着剥れが発生するという現象を発見した。
【0012】
このような現象の顕著な例として、アルミニウム製エンジンシリンダーのヘッドガスケットとして、フッ素ゴム-ステンレス鋼積層ガスケットを使用すると、同じような温度条件で水、LLC溶液等の電解質に浸漬試験したものと比べ、短時間でブリスターや接着剥れが発生することが確認されるが、本発明に係るガスケット素材は、実使用環境下において、電解質中で異種金属と同時に使用されても、接着剥れを発生させないという効果を奏するものである。同時に、エンジンシリンダーヘッドガスケットとして必要な耐熱性および耐LLC性を兼ね備えている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
ステンレス鋼板としては、SUS301、SUS301H、SUS304、SUS430等が用いられる。その板厚は、ガスケット用途であるので、一般に約0.1〜2mm程度のものが用いられる。これらのステンレス鋼板上には、まず有機金属化合物およびシリカを含有する表面処理剤が塗布される。
【0014】
有機金属化合物としては、例えばトリイソプロポキシアルミニウム、モノ-sec-ブトキシジプロポキシアルミニウム、トリ-sec-ブトキシアルミニウム、トリ(2-エチルヘキシル)アルミニウム、ジイソプロポキシアルミニウムモノ(メチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシアルミニウムモノ(エチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシアルミニウムモノ(プロピルアセトアセテート)、ジイソプロポキシアルミニウムモノ(ブチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシアルミニウムモノ(ヘキシルアセトアセテート)、ジn-プロポキシアルミニウムモノ(メチルアセトアセテート)、ジn-プロポキシアルミニウムモノ(エチルアセトアセテート)、ジn-プロポキシアルミニウムモノ(プロピルアセトアセテート)、ジn-プロポキシアルミニウムモノ(ブチルアセトアセテート)、ジn-プロポキシアルミニウムモノ(ヘキシルアセトアセテート)、ジブトキシアルミニウムモノ(メチルアセトアセテート)、ジブトキシアルミニウムモノ(エチルアセトアセテート)、ジブトキシアルミニウムモノ(プロピルアセトアセテート)、ジブトキシアルミニウムモノ(ブチルアセトアセテート)、ジブトキシアルミニウムモノ(ヘキシルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(プロピルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(ブチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(ヘキシルアセトアセテート)、アルミニウム-モノアセチルアセトネート-ビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、ジイソプロポキシアルミニウムモノ(アセチルアセトネート)などの有機アルミニウム化合物、テトラi-プロポキシチタン、テトラn-プロポキシチタン、テトラn-ブトキシチタン、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、ジイソプロポキシチタンビス(メチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシチタンビス(プロピルアセトアセテート)、ジイソプロポキシチタンビス(ブチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシチタンビス(ヘキシルアセトアセテート)、ジn-プロポキシチタンビス(メチルアセトアセテート)、ジn-プロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、ジn-プロポキシチタンビス(プロピルアセトアセテート)、ジn-プロポキシチタンビス(ブチルアセトアセテート)、ジn-プロポキシチタンビス(ヘキシルアセトアセテート)、ジn-ブトキシチタンビス(メチルアセトアセテート)、ジn-ブトキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、ジn-ブトキシチタンビス(プロピルアセトアセテート)、ジn-ブトキシチタンビス(ブチルアセトアセテート)、ジn-ブトキシチタンビス(ヘキシルアセトアセテート)、1,3-プロパンジオキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセトネート)、ジn-プロポキシチタンビス(アセチルアセトネート)、ジn-ブトキシチタンビス(アセチルアセトネート)、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンテトラエチルアセトアセテート、チタンテトラプロピルアセトアセテート、チタンテトラブチルアセトアセテートなどの有機チタン化合物、テトラi-プロポキシジルコニウム、テトラn-プロポキシジルコニウム、テトラn-ブトキシジルコニウム、ジイソプロポキシジルコニウムビス(メチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシジルコニウムビス(エチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシジルコニウムビス(プロピルアセトアセテート)、ジイソプロポキシジルコニウムビス(ブチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシジルコニウムビス(ヘキシルアセトアセテート)、ジn-プロポキシジルコニウムビス(メチルアセトアセテート)、ジn-プロポキシジルコニウムビス(エチルアセトアセテート)、ジn-プロポキシジルコニウムビス(プロピルアセトアセテート)、ジn-プロポキシジルコニウムビス(ブチルアセトアセテート)、ジn-プロポキシジルコニウムビス(ヘキシルアセトアセテート)、ジn-ブトキシジルコニウムビス(メチルアセトアセテート)、ジn-ブトキシジルコニウムビス(エチルアセトアセテート)、ジn-ブトキシジルコニウムビス(プロピルアセトアセテート)、ジn-ブトキシジルコニウムビス(ブチルアセトアセテート)、ジn-ブトキシジルコニウムビス(ヘキシルアセトアセテート)、1,3-プロパンジオキシジルコニウムビス(エチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシジルコニウムビス(アセチルアセトネート)、ジn-プロポキシジルコニウムビス(アセチルアセトネート)、ジn-ブトキシジルコニウムビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラエチルアセトアセテート、ジルコニウムテトラプロピルアセトアセテート、ジルコニウムテトラブチルアセトアセテートなどの有機ジルコニウム化合物、テトラi-プロポキシ錫、テトラn-プロポキシ錫、テトラn-ブトキシ錫、ジイソプロポキシ錫ビス(メチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシ錫ビス(エチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシ錫ビス(プロピルアセトアセテート)、ジイソプロポキシ錫ビス(ブチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシ錫ビス(ヘキシルアセトアセテート)、ジn-プロポキシ錫ビス(メチルアセトアセテート)、ジn-プロポキシ錫ビス(エチルアセトアセテート)、ジn-プロポキシ錫ビス(プロピルアセトアセテート)、ジn-プロポキシ錫ビス(ブチルアセトアセテート)、ジn-プロポキシ錫ビス(ヘキシルアセトアセテート)、ジn-ブトキシ錫ビス(メチルアセトアセテート)、ジn-ブトキシ錫ビス(エチルアセトアセテート)、ジn-ブトキシ錫ビス(プロピルアセトアセテート)、ジn-ブトキシ錫ビス(ブチルアセトアセテート)、ジn-ブトキシ錫ビス(ヘキシルアセトアセテート)、1,3-プロパンジオキシ錫ビス(エチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシ錫ビス(アセチルアセトネート)、ジn-プロポキシ錫ビス(アセチルアセトネート)、ジn-ブトキシ錫ビス(アセチルアセトネート)、錫テトラアセチルアセトネート、錫テトラエチルアセトアセテート、錫テトラプロピルアセトアセテート、錫テトラブチルアセトアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジラウレートなどの有機錫化合物などがあげられ、好ましくは、下記2つの一般式


R:CH3、C2H5、n-C3H7 、i-C3H7、n-C4H9、i-C4H9、i-C8H17などの低
級アルキル基
R´:CH3基またはOR
M1:Ti、Zr、Sn
M2:Al
n:0〜3の整数
m:0〜2の整数
で表される少くとも1個のアルコキシル基または少くとも1個のキレート環およびアルコキシル基を有する有機金属化合物、あるいは少くとも1個のキレート環を有する化合物と金属アルコキシドとの混合物が用いられる。有機金属化合物の中では、好ましくは有機チタン化合物が用いられ、有機金属化合物は1種または2種以上の混合物としても用いられる。
【0015】
シリカ(酸化けい素)としては、SiO2含有量が85%以上の乾式または湿式シリカを有機溶剤または水中にて分散させたもの、好ましくは高純度の無水シリカの微粒子を有機溶剤または水中にて分散させ、コロイド状としたいわゆるコロイダルシリカが用いられる。コロイダルシリカとしては、平均粒径が1〜50nm、好ましくは10〜30nmのものであって、メタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの有機溶剤に分散されているものが用いられ、例えば市販品であるメタノールシリカゾル(日産化学工業製品:メタノール中に固形分濃度30重量%で分散したもの)、スノーテックスMEK-ST(同社製品;メチルエチルケトン中に固形分濃度30重量%で分散したもの)、スノーテックスMIBK-ST(同社製品;メチルイソブチルケトン中に固形分濃度30重量%で分散したもの)などが用いられる。
【0016】
有機金属化合物とシリカとは、特にガスケット用途には固形分比率で70:30〜40:60の重量比で用いられる。ここで、有機金属化合物の固形分量は、これを135℃で1時間蒸発乾固させたときの蒸発残分量であり、実際に表面処理したとき、基板上に残る有機金属化合物量の指標となる量である。また、これら全体の固形分濃度が約0.01〜5重量%になるような有機溶剤溶液として調製される。シリカが60%よりも多い割合で用いられると、耐熱性の低下が起こり、高温空気加熱後の屈曲試験によって接着剥がれが生ずるようになる。一方、シリカが30%よりも少ない割合で用いられると、水、LLCなどに対する耐液耐久性が悪化するようになる。有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、エチレングリコールのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノブチルエーテル、モノエチルエーテルアセテートなどの多価アルコールまたはその誘導体が用いられる。
【0017】
以上の各成分を必須成分とする表面処理剤は、アルカリ脱脂処理されたステンレス鋼板上に浸漬、噴霧、はけ刷り、ロールコートなどの方法によって10〜1000mg/m2、好ましくは50〜500mg/m2の片面目付量(皮膜量)で塗布され、室温または温風で乾燥された後、100〜250℃で0.5〜20分間焼付け処理される。
【0018】
ステンレス鋼板上に塗布され、乾燥処理を行った表面処理剤層上には、シラン含有樹脂系加硫接着剤が塗布される。シラン含有樹脂系加硫接着剤としては、シリカおよび熱硬化性樹脂、好ましくは熱硬化性フェノール樹脂を必須成分とする加硫接着剤が用いられる。シリカとしては、前述の如きもの、好ましくはコロイダルシリカが用いられ、また熱硬化性フェノール樹脂としては、好ましくはレゾール型フェノール樹脂またはジヒドロベンゾオキサジン環を有するフェノール樹脂が用いられ、これらの熱硬化性フェノール樹脂と共に、ノボラック型フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の他の熱硬化性樹脂を併用することもできる。
【0019】
レゾール型フェノール樹脂としては、フェノール、p-クレゾール、m-クレゾール、p-第3ブチルフェノール等のフェノール性水酸基に対してo-位および/またはp-位に2個または3個の置換可能な核水素原子を有するフェノール類またはこれらの混合物とホルムアルデヒドとを、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化バリウム、アンモニア等のアルカリ触媒の存在下において縮合反応させることによって得られる軟化点が約80〜150℃の樹脂が使用され、好ましくはm-クレゾール、p-クレゾール混合物とホルムアルデヒドとから製造された軟化点100℃以上のものが用いられる。
【0020】
また、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性フェノール樹脂としては、ジヒドロベンゾオキサジン環を有し、ジヒドロベンゾオキサジン環の開環反応によって硬化する熱硬化性フェノール樹脂であれば任意のものを使用することができ、例えばフェノール性水酸基を有する化合物、1級アミンおよびホルムアルデヒドから、次式に示される如く、ジヒドロ-2H-1,3-ベンゾオキサジン誘導体が合成される。

【0021】
フェノール性水酸基を有する化合物としては、芳香環のフェノール性水酸基に対して少くとも一方のo−位に水素原子が結合していることが必要であり、好ましくは分子中にフェノール性水酸基が複数個存在する多官能性フェノール類が用いられる。具体的には、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン等のフェノール類、1,5-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール類、ノボラック型またはレゾール型フェノール樹脂、メラミンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂等のフェノール樹脂類が例示される。
【0022】
また、1級アミンとしては、アニリン、トルイジン等の芳香族アミン類またはメチルアミン、エチルアミン等の脂肪族アミンが例示される。
【0023】
これらのフェノール性水酸基を有する化合物と1級アミンのそれぞれ1モルに対して、2モル以上のホルムアルデヒドが用いられ、しゅう酸触媒等の存在下に、反応温度約70〜130℃、好ましくは約90〜110℃で約1/3〜4時間程度反応させた後、減圧下120℃以下で未反応のフェノール性化合物、1級アミン類、ホルムアルデヒド等を除去することにより、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂が得られる。
【0024】
ステンレス鋼板上に積層されるゴムとして、フッ素ゴムを用いることによりニトリルゴムを積層させた金属素材よりも耐熱性は良好となるが、耐水性は低下するため、ニトリルゴム素材と同じ成分の使用では成立しないため、上塗り接着剤中へのシリカの添加が必要となってくる。
【0025】
かかる見地から、熱硬化性樹脂成分100重量部に対して約10〜100重量部、好ましくは約15〜40重量部のシリカが添加されて用いられる。これよりも少ないシリカの添加割合では耐水性が低下し、一方これよりも多い割合でシリカが添加されて用いられると、初期接着性が低下するようになる。
【0026】
なお、この重量基準となる熱硬化性樹脂としては、熱硬化性フェノール樹脂100重量部当り0〜500重量部、好ましくは約50〜200重量部の割合で、ノボラック型フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の他の熱硬化性樹脂を添加したもの、あるいは0〜500重量部、好ましくは約50〜150重量部の割合でフッ素ゴムまたはフッ素ゴムコンパウンド(フッ素ゴム分として)を添加したものが用いられる。ノボラック型フェノール樹脂やエポキシ樹脂の添加は、さらなる耐熱性の向上に有効であり、ただしこれ以上の割合での添加は、初期接着性を低下させるようになる。また、フッ素ゴム(コンパウンド)の添加も、さらなる耐熱性の向上に有効であり、ただしこれ以上の割合での添加は、耐水性の低下を招くようになる。
【0027】
これらのシリカ含有樹脂系加硫接着剤は、一般にメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系有機溶剤またはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系有機溶剤を単独または混合溶剤として、その成分濃度が約0.1〜10重量%の有機溶剤溶液として調製され、表面処理剤の場合と同様の塗布方法により50〜2000mg/m2の片面目付量(皮膜量)で塗布され、室温または温風で乾燥された後、100〜250℃で1〜20分間焼付処理される。
【0028】
このようにして形成された加硫接着剤層上には、未加硫のフッ素ゴムコンパウンドが約5〜120μm程度の片面厚さの加硫物層を両面に形成せしめるように、フッ素ゴムコンパウンドの有機溶剤溶液として塗布される。
【0029】
フッ素ゴムとしては、ポリオール加硫性およびパーオキサイド加硫性のいずれも使用することができ、未加硫のフッ素ゴムコンパウンドとしては、例えば後記のような配合例が示される。
【0030】
ポリオール加硫性フッ素ゴムとしては、一般にフッ化ビニリデンと他の含フッ素オレフィン、例えばヘキサフルオロプロペン、ペンタフルオロプロペン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、フッ化ビニル、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)等の少なくとも一種との共重合体または含フッ素オレフィンとプロピレンとの共重合体などが挙げられ、これらのフッ素ゴムは、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン、ヒドロキノン等のポリヒドロキシ芳香族化合物によってポリオール加硫される。
【0031】
また、パーオキサイド加硫性フッ素ゴムとしては、例えば分子中にヨウ素および/または臭素を有するフッ素ゴムが挙げられ、これらのフッ素ゴムは一般にパーオキサイド加硫に用いられている有機過酸化物によって加硫(架橋)される。この場合には、有機過酸化物と共に、トリアリルイソシアヌレートによって代表される多官能性不飽和化合物を併用することが好ましい。
【0032】
(配合例I)
フッ素ゴム(デュポン社製品バイトンE45) 100重量部
メタけい酸カルシウム 40 〃
MTカーボンブラック 2 〃
酸化マグネシウム(協和化学製品マグネシア#150) 6 〃
水酸化カルシウム 3 〃
加硫剤(デュポン社製品キュラティブ#30) 2 〃
加硫促進剤(同社製品キュラティブ#20) 1 〃
(配合例II)
フッ素ゴム(デュポン社製品バイトンE60C) 100重量部
加硫剤(デュポン社製品ダイアックNo.3) 3 〃
酸化マグネシウム(協和化学製品マグネシア#30) 10 〃
MTカーボンブラック 30 〃
(配合例III)
フッ素ゴム(ダイキン製品ダイエルG901) 100重量部
メタけい酸カルシウム 20 〃
MTカーボンブラック 20 〃
酸化マグネシウム(マグネシア#150) 6 〃
水酸化カルシウム 3 〃
トリアリルイソシアヌレート 1.8 〃
有機過酸化物(日本油脂製品パーヘキサ25B) 0.8 〃
【0033】
塗布された未加硫ゴム層は、室温乃至約100℃の温度で約1〜15分間程度乾燥し、有機溶剤として用いられたメタノール、エタノールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類またはこれらの混合溶剤などを揮発させた後、約150〜230℃で約0.5〜30分間加熱加硫し、必要に応じて加圧して加硫することも行われる。加硫されたフッ素ゴム層は、ガスケットとしての用途上、硬度(デュロメーターA)が80以上で、圧縮永久歪(100℃、22時間)が50%以下であることが望ましく、特に配合内容によって制限されるものではない。また、粘着防止が必要な場合には、その表面に粘着防止剤を塗布することもできる。
【0034】
粘着防止剤は、ゴム同士やゴムと金属との粘着を防止する目的で使用され、加硫フッ素ゴム層上に皮膜を形成し得るものであれば任意のものを用いることができ、例えばシリコーン系、フッ素系、グラファイト系、アミド、パラフィン等のワックス系、ポリオレフィン系またはポリブタジエン系のもの等が挙げられるが、好ましくは液状の1,2-ポリブタジエン水酸基含有物、1,2-ポリブタジエンイソシアネート基含有物およびポリオレフィン系樹脂の有機溶剤分散液からなる粘着防止剤が用いられる。
【特許文献14】特開平7−165953号公報
【実施例】
【0035】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0036】
実施例1〜105
SUS301鋼板(厚さ0.2mm)の表面をアルカリ脱脂した後、後記配合成分よりなる表面処理剤1〜21を皮膜量(片面目付量)120mg/m2となるように塗布し、200℃で1分間の乾燥を行った。
【0037】
次に、下記組成を有する加硫接着剤A〜Fを塗布し、室温で乾燥させた後、220℃で5分間の焼付処理を行った。
(加硫接着剤A)
レゾール型フェノール樹脂47%メチルエチルケトン溶液 100重量部
(群栄化学化学製品レヂトップPL2108)
コロイダルシリカ30%メチルエチルケトン溶液 47 〃
(日産化学製品MEK-ST)
メチルエチルケトン 1075 〃

(加硫接着剤B)
ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂 100 〃
レゾール型フェノール樹脂47%メチルエチルケトン溶液 600 〃
(レヂトップPL2108)
コロイダルシリカ30%メチルエチルケトン溶液(MEK-ST) 382 〃
メチルエチルケトン 8850 〃

(加硫接着剤C)
レゾール型フェノール樹脂47%メチルエチルケトン溶液 100 〃
(レヂトップPL2108)
o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂 47 〃
(ジャパンエポキシレジン製品エピコート180S)
コロイダルシリカ30%メチルエチルケトン溶液(MEK-ST) 94 〃
メチルエチルケトン 2203 〃

(加硫接着剤D)
ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂 100 〃
o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エピコート180S) 100 〃
コロイダルシリカ30%メチルエチルケトン溶液(MEK-ST) 200 〃
メチルエチルケトン 6000 〃

(加硫接着剤E)
ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂 100 〃
o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エピコート180S) 100 〃
コロイダルシリカ30%メチルエチルケトン溶液(MEK-ST) 200 〃
配合例Iのフッ素ゴムコンパウンド 100 〃
メチルエチルケトン 6700 〃

(加硫接着剤F)
ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂 100 〃
o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エピコート180S) 100 〃
配合例Iのフッ素ゴムコンパウンド 100 〃
メチルエチルケトン 5700 〃
【0038】
なお、ここで用いられたジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂は、次のようにして合成された。
フェノール500g、37%ホルマリン302.5gおよびしゅう酸1gを容量5Lのフラスコ中に仕込み、還流温度で6時間反応させた後、内部を減圧して未反応フェノールと水分とを除去し、ノボラック型フェノール樹脂を得た。このノボラック型フェノール樹脂300gをアニリン263gと混合し、80℃で5時間攪拌して均一な混合溶液を得た。この混合溶液を、90℃に加熱したホルマリン286gを仕込んだ容量5Lのフラスコ中に30分間かけて少量宛滴下し、滴下終了後30分間還流温度に保った後、100℃で2時間減圧して縮合水を除去し、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を得た。
【0039】
表面処理剤塗布SUS301鋼板上の加硫接着剤層上に、フッ素ゴムコンパウンド(前記配合例I)の25重量%混合有機溶剤溶液(トルエン:メチルエチルケトン=重量比9:1)を塗布し、60℃、15分間乾燥させて片面厚さ20μmの未加硫ゴム層を形成させた後、220℃、60kgf/m2(5.88MPa)、2分間の加圧加硫を行って、フッ素ゴム金属積層ガスケット素材を得た。
【0040】
表面処理剤成分として用いられた有機金属化合物
(前記一般式参照;比較例使用物を含む):
有機金属化合物構造 固形分
記号 M R R′ n m (重量%)
A Ti i-C3H7 - 0 - 40
B 〃 C4H9 - 0 - 40
C 〃 C8H17 - 0 - 40
D 〃 i-C3H7 OC2H5 2 - 42.10
E 〃 〃 CH3 2 - 62.70
F Al 〃 OC2H5 - 2 42
G 〃 C4H9 - - 0 40
H Zr 〃 - 0 - 40
I 〃 〃 OC2H5 3 - 42
J 〃 〃 CH3 2 - 63
K Ti - OC2H5 4 - 40
L 〃 - CH3 4 - 36.20
注) ここで固形分とは、有機金属化合物を135℃で1時間蒸発乾固させたときの蒸発残分 量を指し、有機金属化合物の固形分は構造によって異なるが、有機金属化合物成分 の約30〜70重量%程度である(有機金属化合物成分それ自体は殆んど液状であり、 加熱によって縮合反応を起して固化し、縮合反応を起さなかった部分は蒸発し、こ の蒸発残分として残る固形分が加熱前の有機金属化合物成分の約30〜70%を占める ようになるが、このとき残る固形分は縮合反応の速度と蒸発速度との兼ね合いによ って決まるので、有機金属化合物の種類や構造によっても固形分量は異ってくる)

表面処理剤組成(No.22〜27は比較例である):
表面処 有機金属 シリカゾル・ 配合量(重量部) 成分比 固形分
理剤No. 化合物 溶剤 有機金属 シリカ 溶媒 率(%) 比率(%)
1 A IPA 100 90 6510 79:21 60:40
2 B 〃 〃 〃 〃 〃 〃
3 C 〃 〃 〃 〃 〃 〃
4 D 〃 〃 92 6778 〃 〃
5 〃 MeOH 〃 〃 〃 〃 〃
6 〃 IPA 〃 188 13657 〃 〃
A 105 〃
7 E MeOH 100 140 10330 42:58 〃
8 〃 IPA 〃 280 20413 75:25 〃
A 157 〃
9 F MeOH 100 80 6420 80:20 〃
10 G IPA 〃 〃 6220 〃 〃
11 H 〃 〃 90 6510 79:21 〃
12 I 〃 〃 〃 〃 〃 〃
13 J 〃 〃 〃 〃 〃 〃
14 A 〃 〃 30 4770 85:15 70:30
15 〃 〃 〃 178 9062 65:35 43:57
16 D MeOH 〃 32 5038 85:15 70:30
17 〃 〃 〃 188 9562 64:36 43:57
18 〃 IPA 〃 62 10042 85:15 70:30
A 106
19 D 〃 100 374 19051 65:35 43:57
A 105
20 K MeOH 100 92 6568 79:21 60:40
21 L 〃 〃 84 5956 80:20 59:41

22 A (IPA) 〃 − 3900 100:0 100:0
23 〃 IPA 〃 45 5205 88:12 75:25
24 〃 〃 〃 311 12919 52:48 30:70
25 D (MeOH) 〃 − 4110 88:12 100:0
26 〃 MeOH 〃 46 5464 〃 75:25
27 〃 〃 〃 327 12873 52:48 30:70
注1) シリカゾル・溶剤欄で、IPAはイソプロパノールシリカゾル(日産化学工業製品)お よびイソプロパノール溶剤が用いられたことを示しており、MeOHはメタノールシリ カゾル(同社製品)およびメタノール溶剤が用いられたことを示している(ただし、
No.22、25はシリカが用いられていないので、溶剤の種類のみを示している)
注2) 成分比率とは、表面処理剤中の有機金属化合物とシリカ固形分との重量割合を示 している
注3) 固形分比率とは、表面処理剤中の有機金属化合物固形分とシリカ固形分との重量 割合を示している
【0041】
比較例1〜6
実施例1〜21において、表面処理剤として前記No.22〜27のものが用いられた。
【0042】
比較例7
実施例1〜21において、表面処理剤28として下記配合のものが用いられた。
ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート) 100重量部
γ-アミノプロピルトリエトキシシラン 50 〃
メタノール 6350 〃
【0043】
比較例8
実施例1〜21において、表面処理剤29として下記配合のものが用いられた。
ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート) 100重量部
γ-アミノプロピルトリエトキシシラン 50 〃
メタノールシリカゾル 80 〃
メタノール 8670 〃
【0044】
比較例9
実施例1〜21において、表面処理剤30として下記配合のものが用いられた。
ジイソプキシチタンビス(エチルアセトアセテート) 100重量部
共重合オリゴマー 100 〃
メタノールシリカゾル 80 〃
メタノール 8120 〃
【0045】
なお、ここで用いられた共重合オリゴマーは、次のようにして合成された。
攪拌機、加熱ジャケットおよび滴下ロートを備えた三口フラスコに、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン40重量部および水20重量部を仕込み、pHが4〜5になる迄酢酸を加えてpHを調整し、数分間攪拌した。さらに攪拌を続けながら、ビニルトリエトキシシラン40重量部を滴下ロートを使って徐々に滴下し、滴下終了後約60℃で5時間加熱還流を行い、室温迄冷却してシラン共重合オリゴマーを得た。
【0046】
比較例10
実施例1〜21において、表面処理剤31として下記配合のものが用いられた。
上記共重合オリゴマー 100重量部
メタノールシリカゾル 80 〃
メタノール 4720 〃
【0047】
比較例11
実施例1〜21において、表面処理剤32として下記配合のものが用いられた。
前記シラン共重合オリゴマー 100重量部
メタノール 2400 〃
【0048】
比較例12〜17
実施例85〜105において、表面処理剤として前記No.22〜27のものが用いられた。
【0049】
比較例18
実施例85〜105において、表面処理剤として前記No.28のものが用いられた。
【0050】
比較例19
実施例85〜105において、表面処理剤として前記No.29のものが用いられた。
【0051】
比較例20
実施例85〜105において、表面処理剤として前記No.30のものが用いられた。
【0052】
比較例21
実施例85〜105において、表面処理剤として前記No.31のものが用いられた。
【0053】
比較例22
実施例85〜105において、表面処理剤として前記No.32のものが用いられた。
【0054】
比較例23〜43
実施例1〜21において、加硫接着剤として前記加硫接着剤Fが用いられた。
【0055】
以上の各実施例および比較例で得られたガスケット素材について、耐水性試験、耐LLC性試験および耐熱性試験を行った。
耐水性試験:ガラス製容器内に入れた95℃の1重量%炭酸水素ナトリウム水溶液中に70時間、ゴム-金属積層ガスケット素材とアルミニウム板とを逆V字形で頂部が接するようにクリップなどで押さえながら浸漬し、その際頂部付近は液面より上部に位置するようにし、また接触部分のゴム金属積層板はゴム部分を削り取り、ステンレス鋼板部分がアルミニウム板とが直接接触するようにして浸漬試験を行った後、ゴバン目剥離試験(JIS K5600-5-6塗膜の付着性試験方法=クロスカット法=準拠)を実施した
なお、この浸漬試験は、異種金属間の電位差を考慮した浸漬試験であり、本出願人によって提案されているものである(特願2003-282441号)
耐LLC性試験:ゴム-金属積層ガスケット素材を、50重量%LLC(日本ケミカル工業製品JCC310)水溶液に150℃、100時間浸せき後、ゴバン目剥離試験(JIS K5600-5-6塗膜の付着性試験方法=クロスカット法=準拠)を実施した
耐熱性試験:ゴム-金属積層ガスケット素材を、165℃、100時間空気加熱暴露した後、直径4mmのマンドレルを使用して耐屈曲性試験(JIS K5600-5-1準拠)を実施し、以下の基準に従って評価を行った
評点5:割れ、剥がれなし
〃 4:端面に小さなひび割れあり
〃 3:全体的に小さなひび割れあり
〃 2:全体的にひび割れあり
〃 1:完全に剥がれている
【0056】
得られた結果は、次の表に示される。

表面 加硫
処理剤 接着剤 耐水性試験 耐LLC性試験 耐熱性試験
実施例1 1 A 0 0 4
〃 2 2 〃 0 0 4
〃 3 3 〃 0 0 4
〃 4 4 〃 0 0 4
〃 5 5 〃 0 0 4
〃 6 6 〃 0 0 4
〃 7 7 〃 1 0 4
〃 8 8 〃 0 0 4
〃 9 9 〃 0 0 4
〃 10 10 〃 0 0 4
〃 11 11 〃 1 0 4
〃 12 12 〃 1 1 4
〃 13 13 〃 2 1 4
〃 14 14 〃 0 0 4
〃 15 15 〃 0 0 4
〃 16 16 〃 0 0 4
〃 17 17 〃 0 0 4
〃 18 18 〃 0 0 4
〃 19 19 〃 0 0 4
〃 20 20 〃 1 1 3
〃 21 21 〃 2 1 3
〃 22 1 B 0 0 5
〃 23 2 〃 0 0 5
〃 24 3 〃 0 0 5
〃 25 4 〃 0 0 5
〃 26 5 〃 0 0 5
〃 27 6 〃 0 0 5
〃 28 7 〃 1 0 5
〃 29 8 〃 0 0 5
〃 30 9 〃 0 0 5
〃 31 10 〃 0 0 5
〃 32 11 〃 1 0 5
〃 33 12 〃 1 1 5
〃 34 13 〃 1 1 4
〃 35 14 〃 0 0 5
〃 36 15 〃 0 0 5
〃 37 16 〃 0 0 5
〃 38 17 〃 0 0 5
〃 39 18 〃 0 0 5
〃 40 19 〃 0 0 5
〃 41 20 〃 1 1 4
〃 42 21 〃 2 1 4
〃 43 1 C 0 0 5
〃 44 2 〃 0 0 5
〃 45 3 〃 0 0 5
〃 46 4 〃 0 0 5
〃 47 5 〃 0 0 5
〃 48 6 〃 0 0 5
〃 49 7 〃 1 0 5
〃 50 8 〃 0 0 5
〃 51 9 〃 0 0 5
〃 52 10 〃 0 0 5
〃 53 11 〃 1 0 5
〃 54 12 〃 1 1 5
〃 55 13 〃 1 1 4
〃 56 14 〃 0 0 5
〃 57 15 〃 0 0 5
〃 58 16 〃 0 0 5
〃 59 17 〃 0 0 5
〃 60 18 〃 0 0 5
〃 61 19 〃 0 0 5
〃 62 20 〃 1 1 4
〃 63 21 〃 2 1 4
〃 64 1 D 0 0 5
〃 65 2 〃 0 0 5
〃 66 3 〃 0 0 5
〃 67 4 〃 0 0 5
〃 68 5 〃 0 0 5
〃 69 6 〃 0 0 5
〃 70 7 〃 1 0 5
〃 71 8 〃 0 0 5
〃 72 9 〃 0 0 5
〃 73 10 〃 0 0 5
〃 74 11 〃 1 0 5
〃 75 12 〃 1 0 5
〃 76 13 〃 1 1 5
〃 77 14 〃 0 0 5
〃 78 15 〃 0 0 5
〃 79 16 〃 0 0 5
〃 80 17 〃 0 0 5
〃 81 18 〃 0 0 5
〃 82 19 〃 0 0 5
〃 83 20 〃 0 0 5
〃 84 21 〃 1 1 5
〃 85 1 E 0 0 5
〃 86 2 〃 0 0 5
〃 87 3 〃 0 0 5
〃 88 4 〃 0 0 5
〃 89 5 〃 0 0 5
〃 90 6 〃 0 0 5
〃 91 7 〃 1 0 5
〃 92 8 〃 0 0 5
〃 93 9 〃 0 0 5
〃 94 10 〃 0 0 5
〃 95 11 〃 1 0 5
〃 96 12 〃 1 0 5
〃 97 13 〃 2 1 5
〃 98 14 〃 0 0 5
〃 99 15 〃 0 0 5
〃 100 16 〃 0 0 5
〃 101 17 〃 0 0 5
〃 102 18 〃 0 0 5
〃 103 19 〃 0 0 5
〃 104 20 〃 1 0 5
〃 105 21 〃 2 1 5
比較例1 22 A 5 5 4
〃 2 23 〃 4 5 4
〃 3 24 〃 0 0 2
〃 4 25 〃 5 5 4
〃 5 26 〃 5 5 4
〃 6 27 〃 0 0 1
〃 7 28 〃 5 5 4
〃 8 29 〃 4 3 3
〃 9 30 〃 3 3 3
〃 10 31 〃 4 4 5
〃 11 32 〃 5 5 5
〃 12 22 E 5 5 5
〃 13 23 〃 4 5 5
〃 14 24 〃 0 0 3
〃 15 25 〃 5 5 5
〃 16 26 〃 5 5 5
〃 17 27 〃 0 0 2
〃 18 28 〃 5 5 5
〃 19 29 〃 4 3 5
〃 20 30 〃 3 3 5
〃 21 31 〃 4 4 5
〃 22 32 〃 5 5 5
〃 23 1 F 5 4 5
〃 24 2 〃 5 4 5
〃 25 3 〃 5 4 5
〃 26 4 〃 5 4 5
〃 27 5 〃 5 4 5
〃 28 6 〃 5 4 5
〃 29 7 〃 5 4 5
〃 30 8 〃 5 4 5
〃 31 9 〃 5 4 5
〃 32 10 〃 5 4 5
〃 33 11 〃 5 4 5
〃 34 12 〃 5 5 5
〃 35 13 〃 5 5 5
〃 36 14 〃 5 4 5
〃 37 15 〃 5 4 5
〃 38 16 〃 5 4 5
〃 39 17 〃 5 4 5
〃 40 18 〃 5 4 5
〃 41 19 〃 5 4 5
〃 42 20 〃 5 5 5
〃 43 21 〃 5 5 5

上記比較例3、6、14、17は耐水性については問題はみられないものの、耐熱性の評価(1〜3)の点で劣っている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス鋼板上に、有機金属化合物およびシリカを含有する表面処理剤層、シリカ含有樹脂系加硫接着剤層およびフッ素ゴム層を順次積層してなるフッ素ゴム-金属積層ガスケット素材。
【請求項2】
シリカがコロイダルシリカである請求項1記載のフッ素ゴム-金属積層ガスケット素材。
【請求項3】
表面処理剤層を形成する有機金属化合物とシリカとが、固形分比率として70:30〜40:60の重量比で用いられた請求項1または2記載のフッ素ゴム-金属積層ガスケット素材。
【請求項4】
有機金属化合物が少くとも1個のアルコキシル基を有する化合物である請求項1または3記載のフッ素ゴム-金属積層ガスケット素材。
【請求項5】
有機金属化合物が、少くとも1個のキレート環およびアルコキシル基を含有する化合物である請求項1または3記載のフッ素ゴム-金属積層ガスケット素材。
【請求項6】
有機金属化合物が少くとも1個のキレート環を有する化合物と金属アルコキシドとの混合物である請求項1または3記載のフッ素ゴム-金属積層ガスケット素材。
【請求項7】
有機金属化合物が有機チタン化合物である請求項1、4、5または6記載のフッ素ゴム-金属積層ガスケット素材。
【請求項8】
シリカ含有樹脂系加硫接着剤がシリカおよび熱硬化性樹脂を必須成分とする加硫接着剤である請求項1記載のフッ素ゴム-金属積層ガスケット素材。
【請求項9】
熱硬化性樹脂がレゾール型フェノール樹脂である請求項8記載のフッ素ゴム-金属積層ガスケット素材。
【請求項10】
熱硬化性フェノール樹脂がジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性フェノール樹脂である請求項8記載のフッ素ゴム-金属積層ガスケット素材。
【請求項11】
熱硬化性フェノール樹脂を含む熱硬化性樹脂100重量部当り10〜100重量部の割合でシリカが添加されたシリカ含有樹脂系加硫接着剤が用いられた請求項8、9または10記載のフッ素ゴム-金属積層ガスケット素材。
【請求項12】
フッ素ゴム層上にさらに粘着防止剤層を積層させた請求項1記載のフッ素ゴム-金属積層ガスケット素材。
【請求項13】
エンジンシリンダーヘッドガスケットとして用いられる請求項1乃至12のいずれかに記載のフッ素ゴム-金属積層ガスケット素材。

【公開番号】特開2006−56015(P2006−56015A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−237119(P2004−237119)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】