説明

フッ素ゴム塗料用組成物

【課題】 通常1Pa・s以上の高粘度であっても、塗装時の泡切れを良くし、発泡跡が残らない塗膜を効率よく形成することができるフッ素ゴム塗料用組成物を提供する。
【解決手段】 フッ素ゴム溶液及び加硫剤からなるフッ素ゴム塗料用組成物であって、前記フッ素ゴム溶液は、フッ素ゴムを良溶剤及び増粘剤からなる溶剤組成物に溶解させたものであり、前記フッ素ゴム塗料用組成物は、更に、消泡有機液体からなるものであることを特徴とするフッ素ゴム塗料用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素ゴム塗料用組成物及び塗装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素ゴムは、その優れた耐熱性、耐油性、耐溶剤性、耐薬品性を利用して、成形品のほか、コーティングにも用いられ、後者としては、例えば、織物、繊維、金属、プラスチック、ゴム、その他種々の基材に塗装又は含浸して、工業用材料として広く用いられている。特にエンジンガスケット分野では、アスベスト材料からの代替品としてフッ素ゴムをコーティングしたメタルガスケットが用いられ始めており、今後ますます発展が期待されている。
【0003】
メタルガスケット用のコーティング材料は、高温、高圧の条件下にガス流体に侵されず、温度、圧力に対して充分な弾性や柔軟性を保ち、基材との接合面からの漏れを生じさせないように必要な締め付け圧力を維持することができるものでなければならず、しかも、耐不凍液性及び耐エンジンオイル性をも満足するものでなければならない。
【0004】
メタルガスケット用に使用されているフッ素ゴム塗料としては、おもにカーテンフローコート方式の塗布に使用される低粘度タイプ(一般的には1Pa・s未満)と、おもにスクリーン印刷方式の塗布に使用される高粘度タイプ(一般的には1Pa・s以上)とがある。高粘度タイプには、塗料の粘度が高くなるにつれて塗布時の抱きこみによる泡が消えにくくなり、均一な塗膜を得られない問題があった。
【0005】
スクリーン印刷方式用のコーティング液としては、スクリーンの目詰まりを低減することを目的として、特定範囲内の沸点を有するエステルを、フッ素ゴムを溶解する溶剤として特定量含有したものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この技術には、消泡性に劣る問題があった。
【0006】
高粘度タイプのフッ素ゴム塗料を消泡させるためには、従来、シリコーンオイル等の消泡剤を配合していたが、強度、密着性等の塗膜物性を低下させることから、その配合量には限度があり、効果に持続性がない問題があった。
【特許文献1】特開平8−100147号公報(請求項1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記現状に鑑み、通常1Pa・s以上の高粘度であっても、塗装時の泡切れを良くし、発泡跡が残らない塗膜を効率よく形成することができるフッ素ゴム塗料用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、フッ素ゴム溶液及び加硫剤からなるフッ素ゴム塗料用組成物であって、上記フッ素ゴム溶液は、フッ素ゴムを良溶剤及び増粘剤からなる溶剤組成物に溶解させたものであり、上記フッ素ゴム塗料用組成物は、更に、消泡有機液体からなるものであることを特徴とするフッ素ゴム塗料用組成物である。
本発明は、表面に金属部分を有する基材と、塗膜とを有する塗装物品であって、
上記塗膜は、上記金属部分上に上記フッ素ゴム塗料用組成物を塗装することにより形成したものであることを特徴とする塗装物品である。
以下に本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明のフッ素ゴム塗料用組成物は、フッ素ゴム溶液及び加硫剤からなり、更に、消泡有機液体からなる組成物である。上記フッ素ゴム溶液は、フッ素ゴムが良溶剤及び増粘剤からなる溶剤組成物に溶解したものである。
【0010】
本発明のフッ素ゴム塗料用組成物は、基材等の被塗物上に塗装することにより塗膜を形成することができるものである。上記塗装は、被塗物上に上記フッ素ゴム塗料用組成物を塗布することにより塗布膜を得て、必要に応じて乾燥したのち、通常、焼成することにより塗膜を形成することよりなる。本明細書において、上記「塗布膜」は塗布後乾燥前のもの、上記「塗膜」は焼成後のものとして、区別して用いる。
本発明のフッ素ゴム塗料用組成物に含まれる各成分を以下に説明する。
【0011】
フッ素ゴム
フッ素ゴムは、主鎖に−CH−で示される繰り返し単位を含む含フッ素共重合体からなるものであることが望ましい。
その代表例は、ビニリデンフルオライドからなる弾性状含フッ素共重合体であり、具体的には、主鎖が以下の構造の繰り返し単位からなる共重合体である。
−CF−CH−、−CH−CH−、及び、−CH−CH(CH)−から選択される少なくとも1種の繰り返し単位、並びに、
−CF−CF(CF)−、−CF−CF−、−CF−CFCl−、−CF−CF(CFH)−、及び、−CF−CF(OR)−(式中、Rは炭素数1〜9のフルオロアルキル基である。)から選択される少なくとも1種の繰り返し単位。
【0012】
このような含フッ素共重合体としては、例えば、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ビニリデンフルオライドとテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、エチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンとプロピレンとの共重合体等が挙げられる。
このような弾性状含フッ素共重合体は、例えば、「ダイエル」(商品名、ダイキン工業社製)、「バイトン」(商品名、E.I.デュポン社製)、「アフラス」(商品名、旭硝子社製)等の商品名で市販されている。
上記フッ素ゴムは、1種又は2種以上を用いることができる。
上記弾性状含フッ素共重合体は、分子量が5000〜200000であるものが好ましい。
上記弾性状含フッ素共重合体としては、また、架橋性の点でビニリデンジフルオライド系共重合体が好ましい。
【0013】
良溶剤
本明細書において、上記「良溶剤」とは、1種類を単独で溶剤として用いて上記フッ素ゴムの20質量%溶液としたときに1Pa・s未満の粘度をもつ溶剤を意味する。
本明細書において、粘度は、東京計器社製B型粘度計(BM型)、No.2ローターを用いてローターの回転数60rpmにて2分間回転させ20℃にて測定して得られる値である。
【0014】
本発明における上記良溶剤としては、例えば、ケトン類、酢酸エステル等が挙げられる。
上記良溶剤として用いるケトン類としては、炭素数3〜7の鎖状又は環状のモノケトンが好ましく、このようなモノケトンとしては、例えば、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン等が挙げられる。
上記良溶剤として用いる酢酸エステルとしては、炭素数1〜7程度のアルコールとの酢酸エステルが好ましく、このような酢酸エステルとしては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル、酢酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。上記酢酸エステルとしては、アルコール由来のアルキル基が分岐しているものがより好ましい。
上記良溶剤は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0015】
本発明において、上記良溶剤は、本発明のフッ素ゴム塗料用組成物の5〜50質量%であることが好ましい。5質量%未満であると、粘度が高すぎて泡が消え難い場合があり、50質量%を超えると、本発明のフッ素ゴム塗料用組成物を高粘度に調製する場合、高粘度組成物が得られにくいことがある。上記フッ素ゴム塗料用組成物に占める上記良溶剤のより好ましい下限は8質量%、更に好ましい下限は10質量%であり、より好ましい上限は40質量%、更に好ましい上限は30質量%である。
【0016】
増粘剤
本発明において、上記「増粘剤」としては、本発明のフッ素ゴム塗料用組成物として高粘度組成物を調製する場合、1種類を単独で溶剤として用いて上記フッ素ゴムの20質量%溶液としたときに1Pa・s以上、好ましくは3Pa・s以上で、より好ましくは5Pa・s以上の粘度をもつ溶剤が有用である。
【0017】
本発明における上記増粘剤としては、高級酢酸エステル、ジアルキレングリコール誘導体等が挙げられる。
上記高級酢酸エステルとしては、例えば酢酸ジプロピレングリコールメチルエーテル等の炭素数7以上の高級酢酸エステル類、プロピレングリコールジアセテート等の炭素数7以上の高級酢酸ジエステル類等が挙げられる。
上記ジアルキレングリコール誘導体等としては、ジエチレングリコール誘導体、ジプロピレングリコール誘導体が好ましく、これらの誘導体としては、アルキルエーテルがより好ましく、上記アルキルエーテルとしては、例えば、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル等が挙げられる。本明細書において、上記「ジアルキレングリコール誘導体」は、上述の高級酢酸エステルを含まない概念である。
上記増粘剤は、粘度調整の必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。上記増粘剤は、2種以上を混合して使用すると、例えば、塗布後の乾燥速度の調整が容易となりやすい。
【0018】
本発明において、上記増粘剤は、本発明のフッ素ゴム塗料用組成物の10〜70質量%であることが好ましい。10質量%未満であると、本発明のフッ素ゴム塗料用組成物を高粘度に調製する場合、高粘度組成物が得られにくいことがあり、70質量%を超えると、粘度が高すぎて泡が消え難い場合がある。上記フッ素ゴム塗料用組成物に占める上記増粘剤のより好ましい下限は20質量%、更に好ましい下限は25質量%であり、より好ましい上限は60質量%、更に好ましい上限は50質量%である。
【0019】
本発明における上記良溶剤及び上記増粘剤は、連続塗装作業時における乾燥による粘度変化等の低減の点から、沸点が100℃以上、好ましくは150℃以上、更に好ましくは200℃以上であるものが好ましい。
本発明における上記良溶剤及び上記増粘剤は、また、得られる本発明のフッ素ゴム塗料用組成物を低揮発性とする点で、20℃における蒸気圧が670Pa以下、好ましくは150Pa以下、更に好ましくは70Pa以下であるものが好ましい)。
【0020】
消泡有機液体
本明細書において、上記「消泡有機液体」とは、有機液体に上述のフッ素ゴムを添加して25℃にて24時間攪拌したときに溶解するフッ素ゴムが前記添加されるフッ素ゴムと前記有機液体の総重量の1質量%以下である該有機液体を意味する。
【0021】
上記消泡有機液体としては、特に、得られるフッ素ゴム塗料用組成物の消泡性の観点から、脂肪族炭化水素系液体を用いる。上記脂肪族炭化水素系液体は、一般式C2n+2で表される。上記脂肪族炭化水素系液体としては、直鎖のもの、側鎖をもつもの、それらの混合物を使用することができるが、イソパラフィンからなるものが好ましい。上記一般式C2n+2で表されるパラフィンとしては、一般に、常温(20℃)において、nが小さいものは気体であり、nが大きいものは固体であるので、溶剤系塗料用組成物として適さない。本発明で使用し得る脂肪族炭化水素系液体としては、炭素数6〜15程度のものが好ましく、特に、炭素数9〜13程度であり表面張力が0.026N・m−1以下であるイソパラフィン系液体がより好ましい。上記脂肪族炭化水素系液体としては、例えば、石油の分留物として得られるものを用いることができ、石油の分留物である場合、通常、2種以上の化合物の混合物である。
本明細書において、表面張力は、ASTM D971の方法により測定して得られる値である。
【0022】
本発明において、上記消泡有機液体は、フッ素ゴム溶解性が実質的にないに等しいので、配合量が多いと、得られる組成物において上澄みを形成してしまう。上記消泡有機液体は、フッ素ゴムのポリマー組成と良溶剤、増粘剤の組成により決まるが、一般的には、本発明のフッ素ゴム塗料用組成物の20質量%以下であることが好ましい。上記フッ素ゴム塗料用組成物に占める上記消泡有機液体は、消泡効果の点で、好ましい下限が5質量%、より好ましい下限が10質量%であり、より好ましい上限が18質量%、更に好ましい上限が15質量%である。
【0023】
本発明のフッ素ゴム塗料用組成物に用いる加硫系としては、一般に実施されているポリオール加硫系、ポリアミン加硫系、ポリオール加硫系とポリアミン加硫系との複合加硫系等をそれぞれ用いることができる。
【0024】
ポリオール系加硫剤
ポリオール系加硫剤としては、ポリオール加硫系フッ素ゴムに通常使用される加硫剤を用いることができる。
本発明においてポリオール系加硫剤としては、水酸基、特にフェノール性水酸基を分子内に少なくとも2個有する化合物であって、加硫性能を有するものが挙げられ、この化合物は、高分子化合物であってもよい。
【0025】
好ましいポリオール加硫剤としては、例えば、
【0026】
【化1】

【0027】
等のフェノール化合物、下記一般式
【0028】
【化2】

【0029】
(式中、Yは水素原子、ハロゲン原子、−R、−CHOR又は−ORを示し、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rは−CH−又は−CHOCH−を示し、n1は0〜100の整数を示す。n1個のYは同一であってもよいし異なってもよい。n1個のRは同一であってもよいし異なってもよい。)で表されるフェノール樹脂等が挙げられ、上記フェノール化合物及びフェノール樹脂等は、塩基性化合物と塩を形成していてもよい。
【0030】
なかでも、ビスフェノールA、ビスフェノールAF、ヒドロキノン等のフェノール誘導体及びそれらの塩;フェノール樹脂等のエノール型水酸基を分子内に2個以上有するポリヒドロキシ化合物及びそれらの塩;式:R(CHOH)(Rはパーフルオロアルキルポリエーテル基を示す。)で表される化合物等が好ましい。
上記ポリオール系加硫剤としては、上記以外にも、フッ素ゴム用ポリオール系加硫剤として市販されているものはいずれも使用することができる。
上記ポリオール系加硫剤は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0031】
上記ポリオール系加硫剤は、フッ素ゴムの固形分100質量部に対して、0.1〜20質量部用いることが好ましい。より好ましい下限は0.5質量部であり、より好ましい上限は5質量部である。
【0032】
ポリオール系加硫における加硫助剤
本発明のフッ素ゴム塗料用組成物においては、ポリオール系加硫を用いる場合、加硫を促進させるために、加硫助剤を用いることもできる。
加硫助剤としては、以下のような化合物を用いることができる。
トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、ジメチルデシルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、ミリスチルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルテトラデシルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチルテトラデシルアンモニウムクロライド、ココナットトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、1,4−フェニレンジメチレンビストリメチルアンモニウムジクロライド、1,4−フェニレンジメチレンビストリエチルアンモニウムジクロライド、エチレンビストリエチルアンモニウムジブロマイド等のアルキル及びアラルキル第4級アンモニウム塩;
【0033】
8−メチル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−メチル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムアイオダイド、8−メチル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムハイドロオキサイド、8−メチル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウム−メチルサルフェート、8−メチル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムブロマイド、8−プロピル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムブロマイド、8−ドデシル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−ドデシル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムハイドロオキサイド、8−エイコシル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−テトラコシル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−ベンジル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライド〔DBU−b〕、8−ベンジル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムハイドロオキサイド、8−フェネチル−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−(3−フェニルプロピル)−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライド等の第4級1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウム塩等の第4級アンモニウム塩;
【0034】
トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリn−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルn−プロピルアミン、ジメチルn−ブチルアミン、ジメチルイソブチルアミン、ジメチルイソプロピルアミン、ジメチル−sec−ブチルアミン、ジメチル−tert−ブチルアミン、トリアリルアミン、ジアリルメチルアミン、アリルジメチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ベンジルジエチルアミン、N−アリルピペリジン、N−エチルピペリジン、N−ブチルピペリジン、N−メチルピロリジン、N−シクロヘキシルピロリジン、N−n−ブチルピロリジン、N−エチルピロリジン、N−ベンジルピロリジン、2,4,6−トリメチルピリジン等の3級アミン;
及びトリフェニルホスフィンベンジルクロライド塩等の4級ホスフォニウム塩。
【0035】
本発明のフッ素ゴム塗料用組成物は、上記加硫助剤を使用しなくても、得られる塗膜についてある程度の物性は確保することができるが、加硫助剤を添加することにより物性を向上することができる。上記加硫助剤の使用量としては、フッ素ゴムの固形分100質量部に対して0〜10質量部である。好ましい下限は0.1質量部、より好ましい下限は0.3質量部であり、好ましい上限は5質量部である。
【0036】
ポリアミン加硫剤
ポリアミン加硫剤としては、一般にフッ素ゴムのアミン加硫に使用されるものはいずれも使用することができる。
上記ポリアミン加硫剤としては、例えば、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、エタノールアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサ−2−スピロ[5,5]−ウンデカン等の脂肪族ポリアミン及びその塩;ジアミノジフェニルメタン、キシリレンジアミン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族アミン及びその塩;変性ポリアミン;ポリアミドアミン等が挙げられる。
上記ポリアミン加硫剤は、1種類を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記ポリアミン加硫剤は、フッ素ゴムの固形分100質量部に対して、0.5〜30質量部用いることが好ましい。より好ましい下限は1質量部であり、より好ましい上限は10質量部である。
【0037】
アミノ基含有金属化合物
本発明のフッ素ゴム塗料用組成物は、ポリアミン加硫系を用いる場合、通常、アミノ基含有金属化合物を用いる。上記アミノ基含有金属化合物としては、基材として無機材料を用いる場合であっても、該無機材料と、有機材料であるフッ素ゴムとの界面に作用し、化学的結合又は物理的結合により両材料間に強固なブリッジを形成させる化合物であり、特にフッ素ゴムの加硫剤としての機能を果たすと共に、上述の良溶剤、増粘剤及び消泡有機液体に対しても安全に用いられるものをいう。
【0038】
本発明においては、上記アミノ基含有金属化合物として、Si、Al、Ti及びZrよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属のアミノ基含有金属化合物を用いる。
好ましいアミノ基含有金属化合物としては、アミノ基含有シランカップリング剤、アミノ基含有アルミニウムカップリング剤、アミノ基含有チタンカップリング剤、アミノ基含有ジルコニウムカップリング剤が挙げられる。
好ましいアミノ基含有シランカップリング剤としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、β−アミノエチル−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
上記アミノ基含有金属化合物は、1種類を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記アミノ基含有金属化合物は、フッ素ゴムの固形分100質量部に対して、0.5〜30質量部用いることが好ましい。より好ましい下限は6質量部であり、より好ましい上限は15質量部である。
【0039】
安定剤
本発明のフッ素ゴム塗料用組成物は、保存安定性の向上を目的として、安定剤を添加したものであってもよい。上記安定剤としては、炭素数1〜12の有機酸、好ましくは炭素数1〜4の有機酸が用いられる。好ましい有機酸として、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等のモノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸等のジカルボン酸等が挙げられる。
【0040】
フッ素樹脂
本発明のフッ素ゴム塗料用組成物には、溶融加工可能なフッ素樹脂を加えることもできる。上記溶融加工可能なフッ素樹脂は、融点が320℃以下であるフッ素樹脂であり、例えば、以下のような重合体からなるフッ素樹脂が挙げられる。
テトラフルオロエチレン〔TFE〕/ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕共重合体〔FEP〕、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PFVE〕共重合体〔PFA〕、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体〔EPA〕、テトラフルオロエチレン/クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕共重合体〔PCTFE〕、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体〔ETFE〕、ポリフッ化ビニリデン〔PVdF〕、分子量30万以下のポリテトラフルオロエチレン〔LMW−PTFE〕等。
【0041】
上記PFVEとしては、下記式(1)〜(5)で表される化合物が挙げられる。下記式(1)〜(5)におけるn3、n4、n5、n6及びn7は整数である。
式(1): CF=CFO(CFn3CF (n3=1〜9)
式(2): CF=CFO(CFCFCFO)n4−CFCFCF (1≦n4≦5)
式(3): CF=CFO[CFCF(CF)]n5−CFCFCF (1≦n5≦5)
式(4): CF=CFO[CFCF(CF)]n6−CFCFCHI (1≦n6≦5)
式(5): CF=CFOCFOCH(CFn7X (n7=1〜12、X=H、F又はCl)
【0042】
上記フッ素樹脂としては、非粘着性、表面平滑性の点でFEP、PFA又はEPAが好ましい。
上記フッ素樹脂は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0043】
上記フッ素樹脂を使用する場合、フッ素ゴムの固形分は、通常、フッ素ゴムとフッ素樹脂との合計固形分の20〜95質量%であることが好ましく、より好ましい下限は30質量%、より好ましい上限は90質量%である。フッ素ゴムの割合が上記上限を越えると、フッ素樹脂を添加することによる非粘着性、耐磨耗性等の効果が得られない場合があり、上記下限より少なくなると、フッ素ゴムの弾性が損なわれることがあり、塗膜にひび割れ等の欠陥が生じる場合がある。
本明細書において、上記「フッ素ゴムとフッ素樹脂との合計固形分」とは、本発明のフッ素ゴム塗料用組成物を80〜100℃の温度で乾燥し、180〜250℃で30〜60分間焼成した後に得られる固体を意味する。
【0044】
本発明のフッ素ゴム塗料用組成物には、上記成分に加え、フッ素ゴム塗料用の組成物に通常添加される各種添加剤、例えば充填材、着色剤、受酸剤等を配合することができる。
充填材としては、カーボンブラック、2硫化モリブデン、ホワイトカーボン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、珪酸カルシウム等が挙げられる。
着色剤としては、無機顔料、複合酸化物顔料等が挙げられる。
受酸剤としては酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化亜鉛、炭酸鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト等の複塩が挙げられる。受酸剤は、通常、その活性度に応じて、フッ素ゴムの固形分100質量部に対し、1〜40質量部配合することができる。
【0045】
本発明のフッ素ゴム塗料用組成物は、塗装時の作業性の観点から、粘度が1〜10Pa・sであるものが好ましい。1Pa・s未満であると、液流れにより塗布膜厚が安定しにくく塗装物品の性能が不安定となる場合があり、10Pa・sを超えると、塗布膜からの泡抜けが不充分となりやすい。より好ましい下限は2Pa・s、更に好ましい下限は3Pa・sであり、より好ましい上限は8Pa・s、更に好ましい上限は7Pa・sである。本発明のフッ素ゴム塗料用組成物をスクリーン印刷方式に用いる場合も上記範囲内の粘度が好ましい。
【0046】
本発明のフッ素ゴム塗料用組成物は、フッ素ゴムの固形分が10〜60質量%であるものが好ましい。10質量%未満であると、スクリーン印刷方式により塗装する場合、膜厚が薄くなって要求膜厚を得られない場合があり、60質量%を超えると、粘度調整が難しくなる場合がある。好ましい下限は20質量%、好ましい上限は50質量%である。
本明細書において、「フッ素ゴムの固形分」とは、後述の所望により加える溶融加工可能なフッ素樹脂を含まない本発明のフッ素ゴム塗料用組成物を80〜100℃の温度で乾燥し、180〜250℃で30〜60分間焼成した後に得られる固体を意味する。
【0047】
本発明のフッ素ゴム塗料用組成物は、従来のフッ素ゴム塗料用の組成物の調製方法と同様の方法を用いて調製することができるが、好ましくは、フッ素ゴムと所望により用いる充填材、受酸剤等の添加剤とを混練してコンパウンドとし、このコンパウンドに上述の良溶剤、増粘剤及び消泡有機液体とを混合することにより、フッ素ゴムを良溶剤及び増粘剤からなる溶剤組成物に溶解させてなるフッ素ゴム溶液として含有するフッ素ゴム組成物(A液)を得る。本発明のフッ素ゴム塗料用組成物は、いわゆる一液型の場合、上記フッ素ゴム組成物(A液)に加硫剤、加硫助剤等の加硫系を構成する成分をも混合して調製し、塗装に供することができ、いわゆる二液型の場合、上記フッ素ゴム組成物(A液)とは別に、用いる加硫系に応じて加硫剤と所望により加硫助剤、アミノ基含有金属化合物を適切な溶剤に溶解し、必要に応じて安定剤等の添加剤を配合してなる加硫剤組成物(B液)を調製しておき、塗装に際して上記フッ素ゴム組成物(A液)と混合する。
【0048】
本発明のフッ素ゴム塗料用組成物について、上述した粘度、各成分の配合量は、少なくとも塗布時において充足すればよく、通常、上記一液型の場合は調製した後に、上記二液型の場合は上記フッ素ゴム組成物(A液)と上記加硫剤組成物(B液)とを混合した後に、それぞれ測定して得られる値である。
【0049】
本発明のフッ素ゴム塗料用組成物は、上述のように、フッ素ゴム、良溶剤及び増粘剤からなるフッ素ゴム溶液と、消泡有機液体とからなる組成物であるので、塗布した際、塗布膜からの消泡を促進することができ、この消泡性は、上記フッ素ゴム塗料用組成物が例えば1Pa・s以上のような高粘度である場合であっても充分に発揮することができる。
上記フッ素ゴム塗料用組成物がこのように優れた効果を奏する機構としては明確ではないが次のように考えられる。即ち、上記消泡有機液体は、フッ素ゴムを実質的に溶解しないのでフッ素ゴムを消泡有機液体中に有さないが、乾燥前の塗布膜において、フッ素ゴム溶液中に分散しており、フッ素ゴムを有さないことにより、塗布膜に生じた泡を通過させて塗布膜外に排出させるものと考えられる。
フッ素ゴム塗料用組成物にフッ素ゴムを実質的に溶解しない有機液体(消泡有機液体)を存在させることにより塗布膜からの消泡作用を発揮すること、なかでも、上記消泡有機液体として上述の脂肪族炭化水素系液体が特に顕著な消泡作用を有することは、本発明において初めて見出された事実である。
本発明のフッ素ゴム塗料用組成物は、上記消泡作用を発揮するのみならず、得られる塗膜について、強度、密着性等の塗膜物性を低下させず持続させることもできるものである。
【0050】
本発明のフッ素ゴム塗料用組成物は、上記消泡作用に優れる点で、例えば1Pa・s以上の高粘度組成物として調製することに好適である。
本発明のフッ素ゴム塗料用組成物は、例えば、スクリーン印刷方式に代表される通常の高粘度塗料塗布方法を用いて被塗物に塗布することができ、通常、上記塗布により得られる塗布膜を充分に乾燥させたのち加熱焼成することにより、塗膜を形成することができる。
上記被塗物は、本発明のフッ素ゴム塗料用組成物を塗布する前に、表面を充分に脱脂、洗浄しておくことが好ましい。
上記フッ素ゴム塗料用組成物は、ディスペンサーコーティング、スクリーンコーティング、ハケ塗り、浸漬等により被塗物に塗布し、上述の良溶剤、増粘剤及び消泡有機液体等の媒体を蒸発させるため、100℃前後の雰囲気で充分に乾燥させる。
その後、例えば150〜250℃で0.5〜24時間焼成する。これにより、上記フッ素ゴム塗料用組成物中のフッ素ゴムは充分に加硫し、反応ガス及び溶剤成分が系外に追い出される。
本発明のフッ素ゴム塗料用組成物は、消泡性に優れるので、焼成後の塗膜の膜厚が例えば5〜50μmである比較的厚膜であっても、発泡跡が残らない塗膜を形成することができる。
【0051】
本発明のフッ素ゴム塗料用組成物により被覆する対象となる被塗物としての物品基材としては、例えば、鉄、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、真鍮等の金属類;ガラス板、ガラス繊維の織布又は不織布等のガラス製品;ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン等の汎用樹脂若しくは耐熱性樹脂の成形品又は被覆物;スチレン−ブチレンゴム〔SBR〕、ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム〔NBR〕、エチレン−プロピレンゴム〔EPDM〕等の汎用ゴムの成形品又は被覆物;シリコーンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性ゴムの成形品又は被覆物;天然繊維若しくは合成繊維の織布又は不織布;等を使用することができる。
【0052】
本発明のフッ素ゴム塗料用組成物から形成された塗膜は、耐不凍液性、耐油性、耐熱性、シール性に優れ、メタルガスケットに適する。また、上記物品基材上に塗膜を形成することにより、耐溶剤性、潤滑性、非粘着性が要求される分野において使用することができ、用途としては、例えば、各種シート・ベルト類;O−リング、ダイヤフラム、バルブシール、化学プラント用ガスケット、エンジンガスケット等のシーリング材;耐薬品性チューブ、燃料ホース、継手等の薬液等流体輸送部材;複写機、プリンター、ファクシミリ等のOA機器用のロール(例えば、定着ロール、圧着ロール)又は搬送ベルト等が挙げられる。上記エンジンガスケットとしては、例えば、自動車エンジン等のヘッドガスケット等が挙げられる。
【0053】
表面に金属部分を有する基材と、塗膜とを有する塗装物品であって、上記塗膜は、上記金属部分上に上述の本発明のフッ素ゴム塗料用組成物を塗装することにより形成したものであることを特徴とする塗装物品もまた、本発明の一つである。
【0054】
上記金属としては、物品基材として上述した各種金属類が挙げられる。
上記基材は、少なくとも、表面の一部に金属部分を有するものであれば、基材全体が金属であるものであってもよく、例えば金属板等であってよい。
本発明の塗装物品は、例えば上述のスクリーン印刷方式等の塗布方法を用いて、上記金属部分上に上述のフッ素ゴム塗料用組成物を塗布し、必要に応じて乾燥したのち、焼成することよりなる塗装を行うことにより、塗膜を形成して、製造することができる。上記塗膜は、例えば上記基材が上記金属板である場合、金属板の片面に形成してもよいし、両面に形成してもよい。
本発明の塗装物品としては、自動車エンジンガスケットが好ましい。
【発明の効果】
【0055】
本発明のフッ素ゴム塗料組成物は、上述の構成よりなるので、粘度1Pa・s以上、好ましくは1〜10Pa・sである高粘度組成物とした場合であっても、塗装時の泡切れを良くし、発泡跡が残らない塗膜を効率よく形成することができる。本発明のフッ素ゴム塗料組成物は、更に、強度、密着性等の塗膜物性を低下させず、むしろ持続し得る塗膜を得ることもできるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例において、粘度、表面張力、固形分は、いずれも、上述の測定方法により測定した。
【0057】
実施例1
(1)フッ素ゴム塗料用組成物の調製
フッ素ゴムとしてフッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(モル比でフッ化ビニリデン:ヘキサフルオロプロピレン=78:22)からなるエラストマー(ダイキン工業社製)の固形分100質量部に対し、MTカーボンブラック20質量部及び受酸剤としてハイドロタルサイトDHT−4A(商品名、協和化学工業社製)5質量部をオープンロールにて混練し、コンパウンドとした。このコンパウンドを増粘剤としてプロピレングリコールジアセテート120質量部、良溶剤としてメチルイソブチルケトン60質量部、及び、消泡有機液体としてシェルゾールTK(商品名、シェルケミカルズジャパン社製、表面張力が0.026N・m−1以下のイソパラフィン系溶剤)50質量部から構成される混合溶媒と混合した。上記シェルゾールTK 90gに上記フッ素ゴムを10g添加して25℃にて24時間攪拌したところ、上記フッ素ゴムはシェルゾールTKに全く溶けなかった。
一方、ポリオール系加硫剤としてビスフェノールAF2質量部と加硫助剤としてDBU−b(8−ベンジル−1,8−ジアザービシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムクロライド)0.5質量部をエタノール17.5質量部に溶解し、その中に安定剤として酢酸2質量部を加えた。この溶液を先に溶解したコンパウンド溶液とディスパーで混合調製し、粘度7Pa・sのフッ素ゴム塗料用組成物を得た。
【0058】
(2)消泡性の評価
予めアセトンで洗浄しておいたSUS301板上に、上記フッ素ゴム塗料用組成物を充分に攪拌した後スクリーン印刷方式により焼成後の塗膜の膜厚が25μmとなるように塗布した。1回目の塗布はスクリーンの網目中の空気が塗布膜中に移動してなる泡が多く存在するので、塗布を5回実施し、2回目以降の4回それぞれにおいて、塗布終了直後にストップウォッチをスタートし、塗布膜から泡が完全に消失するまでの時間を計測し、4回の平均値を消泡時間とした。塗布に用いたスクリーン印刷機は一般に市販されている手動印刷方式であり、一般に市販されている70メッシュリング状パターンのスクリーンを使用した。
【0059】
比較例1
シェルゾールTKを使用せず、プロピレングリコールジアセテートを130質量部、メチルイソブチルケトンを100質量部とした以外は実施例1と同様にして、粘度7Pa・sの塗料用組成物を得て、消泡性の評価を行った。
【0060】
比較例2
プロピレングリコールジアセテートを110質量部、メチルイソブチルケトンを70質量部とし、シェルゾールTKに代えてキシレン(表面張力0.029N・m−1)50質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、粘度7Pa・sの塗料用組成物を得て、消泡性の評価を行った。上記キシレン90gに実施例1で用いたフッ素ゴムを10g添加して25℃にて24時間攪拌したところ、上記フッ素ゴムはキシレンに全く溶けなかった。
【0061】
【表1】

【0062】
表1から、上記表面張力を有するイソパラフィン系溶剤を用いた実施例1では、上記イソパラフィン系溶剤を用いない比較例1、及び、上記イソパラフィン系溶剤に代えてキシレンを用いた比較例2に比べて、消泡性が著しく優れることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のフッ素ゴム塗料組成物は、粘度1Pa・s以上、好ましくは1〜10Pa・sの高粘度組成物であっても塗装時の泡切れが良く、発泡跡が残らない塗膜を効率よく形成することができ、更に、得られる塗膜は強度、密着性等の塗膜物性を持続し得るものであるので、メタルガスケットその他幅広い用途のコーティングに好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素ゴム溶液及び加硫剤からなるフッ素ゴム塗料用組成物であって、
前記フッ素ゴム溶液は、フッ素ゴムを良溶剤及び増粘剤からなる溶剤組成物に溶解させたものであり、
前記フッ素ゴム塗料用組成物は、更に、消泡有機液体からなるものである
ことを特徴とするフッ素ゴム塗料用組成物。
【請求項2】
粘度が1〜10Pa・sである請求項1記載のフッ素ゴム塗料用組成物。
【請求項3】
フッ素ゴムの固形分が10〜60質量%である請求項1又は2記載のフッ素ゴム塗料用組成物。
【請求項4】
消泡有機液体は、脂肪族炭化水素系液体である請求項1、2又は3記載のフッ素ゴム塗料用組成物。
【請求項5】
更に、フッ素樹脂からなるものである請求項1、2、3又は4記載のフッ素ゴム塗料用組成物。
【請求項6】
表面に金属部分を有する基材と、塗膜とを有する塗装物品であって、
前記塗膜は、前記金属部分上に請求項1、2、3、4、5記載のフッ素ゴム塗料用組成物を塗装することにより形成したものである
ことを特徴とする塗装物品。
【請求項7】
自動車エンジンガスケットである請求項6記載の塗装物品。

【公開番号】特開2006−70132(P2006−70132A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−254094(P2004−254094)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】