説明

フッ素化アリーレン含有化合物、方法、及びそれから調製されるポリマー

フッ素化アリーレン含有化合物、及びフッ素化アリーレン含有化合物から形成されるフッ素化ポリマー、並びに方法が記述される。フッ素化アリーレン含有化合物から形成されるフッ素化ポリマーは、低エネルギー表面を提供するのに使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年12月22日に出願された米国特許仮出願第61/289,046号の利益を主張し、その開示内容の全体を参照として本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
撥油性及び撥水性が強化されていることが望ましい用途で用いることができるフッ素化高分子物質は、以前から調製されている。これらフッ素化高分子物質の一部は、ペルフルオロオクチル基を含んでいた。特定のペルフルオロオクチル含有化合物は、生物において生体内蓄積する傾向がある。この傾向は、幾つかのフルオロケミカル物質に関する潜在的な問題として言及されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
体内から効率的に排出されることができ、有効な撥水性及び撥油性を提供する新規フルオロケミカル物質が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
フッ素化アリーレン含有化合物、方法(例えば、製造方法)、及びその特定のアリーレン含有化合物から調製されるフッ素化ポリマーについて記述される。本明細書に記述される特定のアリーレン含有化合物から調製されるフッ素化ポリマーは、例えば、油及び水の忌避剤となる低エネルギー表面を提供するのに使用できる。
【0005】
本発明の一態様において、式(I)のアリーレン含有化合物が提供される。
Rf−L−CH−Ar−CH−Y−Q
(I)
【0006】
式(I)において、基Arはフェニレン又はジフェニレンである。基Rfは、鎖内に任意でO又はNを含むペルフルオロアルキルである。基Lは、−O−、−SO−、−CH−O−、−C−O−、−C−S−、及び−SO−N(R)−から選択される。基Rは、C1〜C4のアルキルである。
【0007】
式(I)において、基Y及びQは次のように選択される。Yが−O−、−S−、又は−NH−から選択される場合、Qは次のものから選択される:−H、−C2n−OH、−C(O)−C2b+1
−C(O)−C2n−OH、−C(O)−O−C2n−OH、−C(O)−C(R)=CH、−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C(O)−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C(O)−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、及び−(CHSi(OR。あるいは、Yが−C(O)O−、−CH−C(O)O−、又は−CH−C(O)NH−である場合、Qは次のものから選択される:−H、
−C2n−OH、−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、及び
−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH。あるいは、Y−Qは次のものから選択される:
−P(O)(OR、及び−N
【0008】
式(I)において、基Rは−H又は−CHである。基Rは−H、−CH、又は−Cである。基RはC1〜C4のアルキル又は−C(O)−CHである。変数bは1〜20の整数である。変数mは2〜18の整数である。変数nは2〜18の整数である。
【0009】
本発明の一態様において、式(I)の化合物はメタ(アクリレート)官能化されたアリーレン含有化合物であり、式中、Arはフェニレン又はジフェニレンであり、Rfは鎖内に任意でO又はNを含むペルフルオロアルキルであり;Lは−O−、−SO−、−CH−O−、−C−O−、−C−S−、及び−SO−N(R)−から選択され;RはC1〜C4のアルキルである。そのような(メタ)アクリレート官能化されたアリーレン含有化合物について、Y及びQは次のように選択される。Yが−O−、−S−、又は−NH−から選択される場合、Qは次のものから選択される:−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、−C(O)−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、及び−C(O)−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH。あるいは、Yが−C(O)O−、
−CH−C(O)O−、又は−CH−C(O)NH−である場合、Qは次のものから選択される:−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、及び−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH。そのような式(I)の(メタ)アクリレート官能化されたアリーレン含有化合物について、Rは−H又は−CHであり、
mは2〜18の整数、nは2〜18の整数である。
【0010】
別の一態様において、フッ素化ポリマーは、上述の式(I)の(メタ)アクリレート官能化されたアリーレン含有化合物を含む複数のモノマーの反応生成物として提供される。
【0011】
本発明の別の一態様において、式(II):
Rf−L−CH−Ar−CH−W
(II)
の一置換アリーレン化合物を提供する工程と(式中、Arはフェニレン又はジフェニレンであり;Rfは鎖内に任意でO又はNを含むペルフルオロアルキルであり;Lは−O−、−SO−、−CH−O−、−C−O−、−C−S−、及び−SO−N(R)−から選択され;RはC1〜C4のアルキルであり;並びにWは脱離基である);式(II)の一置換アリーレン化合物と求核剤とを合わせて上述の式(I)のアリーレン含有化合物を形成する工程と(式中、Arはフェニレン又はジフェニレンであり;Rfは鎖内に任意でO又はNを含むペルフルオロアルキルであり;Lは−O−、−SO−、−CH−O−、−C−O−、−C−S−、及び−SO−N(R)−から選択され;RはC1〜C4のアルキルであり;Y及びQは、Yが−O−、−S−、若しくは−NH−から選択されるとき、Qは次のものから選択される:−H、−C2n−OH、−C(O)−C2b+1、−C(O)−C2n−OH、
−C(O)−C(R)=CH、−C(O)−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C(O)−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、及び−(CHSi(OR;あるいはY−Qは−P(O)(OR、及び−Nから選択され;Rは−H又は−CHであり;Rは−H、−CH、又は−Cであり;RはC1〜C4のアルキル又は−C(O)−CHであり;bは1〜20の整数であり;mは2〜18の整数であり;nは2〜18の整数である)、を含む方法が提供される。これは、上記の式(I)の化合物の全範囲の部分集合であることがわかる。この化合物の部分集合は、式(II)の化合物から直接形成することができ、一方、式(I)の他の化合物は、式(I)のこれら化合物から調製することができる。
【0012】
定義
用語「含む」及びその変化形は、これらの用語が説明文及び特許請求の範囲において現れる場合、限定的な意味を有するものではない。
用語「好ましい」及び「好ましくは」は、特定の状況下で、特定の利点をもたらし得る本発明の実施形態を指す。しかしながら、同じ又は他の状況下において他の実施形態が好ましい場合もある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の引用は、他の実施形態が有用でないことを含意するものではなく、本発明の範囲内から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
本明細書で使用する時、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、「少なくとも1つの」。及び「1つ以上の」は、同じ意味で使用される。
本明細書で使用する時、用語「又は(or)」は、文意で明らかに別途示されている場合を除き、「及び/又は(and/or)」を含む通常の意味で一般的に用いられる。用語「及び/又は(and/or)」は、列記されている要素の1つ又はすべて、あるいは列記されている要素の2つ以上の組み合わせを意味する。
本明細書で使用する時、すべての数値は用語「約(about)」及び好ましくは用語「正確に(exactly)」で修飾されると見なされる。本発明の広い範囲を示している数値範囲及びパラメータはすべて近似値であるけれども、具体的な実施例を示している数値は、できる限り正確に報告されている。しかしながら、あらゆる数値は、それらの試験測定値における標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を本来的に含むものである。
また、本明細書における端点による数の範囲の記載には、その範囲に含まれるすべての数が含まれる(例えば、1〜5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5、などが含まれる)。
用語「の範囲」は、指定の範囲の両端点を含む。
ある基が本明細書で記載した式中に2回以上存在するとき、各基は特に記載しようとしまいと、「独立に」選択される。例えば、式中に2つ以上のOR基が存在するとき、各OR基は独立に選択される。更に、サブ置換基が置換基内に含まれている場合、そのようなサブ置換基も独立に選択される。
本明細書において開示されている代替要素又は実施形態のグループ化は、制限として解釈されるべきものではない。基の各構成員は、個別に参照され請求されるか、又は基の他の構成員若しくは本明細書に記載される他の要素との任意の組み合わせで参照され請求され得る。基の1つ以上の構成員は、便宜上及び/又は特許資格の理由から、1つの基に含まれてよく、あるいは1つの基から削除されてもよいことが期待される。そのような包含又は削除が生じた場合、本明細書における仕様は、改変された基を含むものと見なされ、これにより、添付の請求項に使用されるマーカッシュ形式の基すべての記載された説明を充足する。
用語「脱離基」は、不均一結合開裂において離れる1対の電子を有する原子又は原子団を指す。典型的に、これは例えば、ハロゲン化物及びスルホネートエステル(例えば、塩化物、臭化物、メタンスルホネート)等の強酸の安定なアニオンである。
用語「一置換アリーレン化合物」は、アリーレン含有前駆体の2個の脱離基のうちの1個が、1個のフルオロケミカル基によって置換されている化合物を指す。
用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレート化合物の両方を指す。
用語「アルキル」とは、アルカンのラジカルである一価の基を指し、直鎖、分枝鎖、環状、又はこれらの組み合わせである基を含む。アルキル基は典型的に、1〜60個の炭素原子、1〜30個の炭素原子、1〜20個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子(特定の実施形態では3〜6個の炭素原子)、又は1〜4個の炭素原子を有する。アルキル基の例としては、これらに限定されないが、メチル(Me)、エチル(Et)、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、及びエチルヘキシルが挙げられる。
用語「アリーレン」又は「Ar」は、二価の芳香族炭素環基を指し、具体的にはフェニレン(−C−)及びジフェニレン(−C−C−)を指す。
用語「アリール」は、芳香族及び炭素環式である一価の基を指す。アリールは、芳香環と結合又は縮合した1〜5個の環を有し得る。その他の環構造は、芳香族、非芳香族、又はこれらの組み合わせであってよい。アリール基の例としては、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル、アセナフチル、アントラキノニル、フェナンスリル、アントラセニル、ピレニル、ペリレニル、及びフルオレニルが挙げられるが、これらに限定されない。
用語「(CO)」又は「(OC)」又は「O(C)」又は「C(O)」は、カルボニル基を指すのに互換可能に使用される。Oの代わりにSとなっている同様の基は、スルホニル基を指す。
用語「ハロゲン化物」はフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物を指す。
用語「ペルフルオロアルキル」は、水素原子がすべてフッ素原子で置換されているアルキルを指す。
用語「オキシ」は、二価基−O−を指す。
用語「スルホニル」は、二価基−SO−を指す。
用語「チオ」は、二価基−S−を指す。
【0013】
本発明の上述の「課題を解決するための手段」は、本発明の開示される各実施形態又はすべての実施を記載することを目的としていない。以下の説明により、例示的な実施形態をより具体的に例示する。本出願のいくつかの箇所で、実施例の一覧として説明を提供するが、実施例は種々の組み合わせにて使用することが可能である。いずれの場合にも、記載した一覧は、代表的な群としてのみ役立つものであり、排他的な一覧として解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、フッ素化アリーレン含有化合物、及び特定のフッ素化アリーレン含有化合物から形成されるフッ素化ポリマーを提供する。このような化合物は非アリーレン含有化合物に比べ、より撥性(例えば、水及び油に対して)が高く、より耐久性の高いコーティングを提供する。
【0015】
本発明の一態様において、式(I)のアリーレン含有化合物が提供される。
Rf−L−CH−Ar−CH−Y−Q
(I)
式(I)において、基Arはフェニレン又はジフェニレンである。基Rfは、鎖内に任意でO又はNを有するペルフルオロアルキルである。基Lは、−O−、−SO−、−CH−O−、−C−O−、−C−S−、及び−SO−N(R)−から選択される。基Rは、C1〜C4のアルキルである。
【0016】
式(I)において、基Y及びQは次のように選択される。Yが−O−、−S−、又は−NH−から選択される場合、Qは次のものから選択される:−H、−C2n−OH、−C(O)−C2b+1
−C(O)−C2n−OH、−C(O)−O−C2n−OH、−C(O)−C(R)=CH、−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C(O)−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C(O)−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、及び−(CHSi(OR。あるいは、Yが−C(O)O−、−CH−C(O)O−、又は−CH−C(O)NH−から選択される場合、Qは次のものから選択される:−H、
−C2n−OH、−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、及び
−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH。あるいは、Y−Qは次のものから選択される:
−P(O)(OR、及び−N
【0017】
式(I)において、基Rは−H又は−CHである。基Rは−H、−CH、又は−Cである。基Rは、C1〜C4のアルキル又は−C(O)−CHである。変数bは1〜20の整数である。変数mは2〜18の整数である。変数nは2〜18の整数である。
【0018】
基Arはフェニレン又はジフェニレンである。特定の実施形態において、基Arはジフェニレンである。
【0019】
基Rfは、所望により鎖内にO又はNを有するペルフルオロアルキルである。好適なペルフルオロアルキル基は、1〜60個の炭素原子、1〜30個の炭素原子、1〜20個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子(特定の実施形態では3〜6個の炭素原子)、又は1〜4個の炭素原子を有することが多い。特定の実施形態において、Rf基は式C2x+1(OC2yOC2p−のものであり、式中、xは1〜4、yは1〜4、pは1〜4、aは0〜20(特定の実施形態については4〜20)、式中、任意の1分子で各変数は独立に選択される。特定の実施形態において、Rf基は式C(OCFCF(CF))OCF(CF)−のものであり、式中、aは4〜20である。
【0020】
多くの実施形態において、基Rfは−C、−C、−C13、又は−C17である。より具体的には、Rfは−C、−C、又は−C13である。更に具体的には、Rfは−C又は−C13である。
【0021】
基Lは、−O−(オキシ基)、−SO−(スルホニル基)、−CH−O−、−C−O−、−C−S−、及び−SO−N(R)−から選択される。特定の実施形態において、基Lは−CH−O−、−C−O−、及び−SO−N(R)−から選択される。特定の実施形態において、Lは−SO−N(R)−又は−C−O−である。
【0022】
特定の実施形態において、基Y及びQは次のように選択される:Yが−O−、−S−(チオ基)、又は−NH−から選択されるとき、Qは次のものから選択される:−H(これによりY−Qは−OH、−SH、又は−NH基となる)、−C2n−OH、−C(O)−C2b+1
−C(O)−C2n−OH、−C(O)−O−C2n−OH、−C(O)−C(R)=CH
−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、−C(O)−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C(O)−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、及び−(CHSi(OR
【0023】
特定の実施形態において、基Y及びQは次のように選択される:Yが−O−、−S−、又は−NH−から選択されるとき、Qは次のものから選択される:−H、−C2n−OH、
−C(O)−C2b+1、−C(O)−C2n−OH、−C(O)−C(R)=CH
−C(O)−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C(O)−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、及び−(CHSi(OR
【0024】
他の特定の実施形態において、基Y及びQは次のように選択される:Yが−O−、−S−、又は−NH−から選択されるとき、Qは次のものから選択される:
−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、−C(O)−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、及び
−C(O)−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
【0025】
特定の実施形態において、基Y及びQは次のように選択される:Yが−O−又は−S−から選択されるとき、Qは次のものから選択される:−H、−C2n−OH、−C(O)−C2n−OH、
−C(O)−O−C2n−OH、−C(O)−C(R)=CH、−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C(O)−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C(O)−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、及び−(CHSi(OR
【0026】
他の特定の実施形態において、基Y及びQは次のように選択される:Yが−O−又は−S−から選択されるとき、Qは次のものから選択される:−H、−C(O)−C(R)=CH
−C2n−OH、−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、−C(O)−C2n−OH、
−C(O)−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、及び
−C(O)−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
【0027】
あるいは、特定の実施形態において、基Y及びQは次のように選択される:Yが−C(O)O−、−CH−C(O)O−、又は−CH−C(O)NH−から選択されるとき、Qは次のものから選択される:−H、−C2n−OH、
−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、及び−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
【0028】
あるいは、他の実施形態において、基Y及びQは次のように選択される:Yが−C(O)O−、−CH−C(O)O−、又は−CH−C(O)NH−から選択されるとき、Qは次のものから選択される:
−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、及び−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
【0029】
あるいは、特定の実施形態において、Y−Qは−P(O)(OR、−N、及び−NHから選択される。特定の実施形態において、Y−Qは−P(O)(OR及び−Nから選択される。特定の実施形態において、Y−Qは−P(O)(ORである。
【0030】
基Rは、C1〜C4のアルキルである。特定の実施形態において、Rは−CHである。
基Rは−H又は−CHである。
基Rは−H、−CH、又は−Cである。
基RはC1〜C4のアルキル又は−C(O)−CHである。特定の実施形態において、基RはC1〜C4のアルキルである。特定の実施形態において、Rは−CHである。
変数bは1〜20の整数である。
変数mは2〜18の整数である。特定の状況において、mは2〜12、又はmは2〜6である。
変数nは2〜18の整数である。特定の状況において、nは2〜12、又はnは2〜6である。
【0031】
式(I)の特定の実施形態において、化合物は基を含み、式中:Arはジフェニレンであり;Rfは−C又は−C13であり;Lは−SO−N(R)−又は−C−O−であり;基Y及びQは次のように選択される:Yが−O−若しくは−S−から選択されるとき、Qは次のものから選択される:−H、
−C(O)−C(R)=CH、−C2n−OH、−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、−C(O)−C2n−OH、
−C(O)−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、及び
−C(O)−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH;Rは−CH;Rは−H又は−CHであり;
mは2〜6の整数、nは2〜6の整数である。
【0032】
式(I)の特定の実施形態において、化合物は、(メタ)アクリレート官能化されたアリーレン含有化合物であり、式中、Arはフェニレン又はジフェニレンであり;
Rfは鎖内に任意でO又はNを含むペルフルオロアルキルであり;Lは−O−、
−SO−、−CH−O−、−C−O−、−C−S−、及び−SO−N(R)−から選択され;RはC1〜C4のアルキルであり;
基Y及びQは次のように選択される:Yが−O−、−S−、又は−NH−から選択されるとき、Qは次のものから選択される:−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、−C(O)−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、及び−C(O)−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH;あるいはYが−C(O)O−、
−CH−C(O)O−、又は−CH−C(O)NH−のとき、Qは次のものから選択される:−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、及び−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH;Rは−H又は−CHであり;mは2〜18の整数;並びにnは2〜18の整数である。
【0033】
式(I)の代表的及び好ましい化合物は、次の構造のものである:
【化1】

式中、Xは次のものから選択される:−SC−O−C(O)−CH=CH、−O−C(O)−CH=CH
−O−C(O)−CHO−C(O)−CH=CH、−SC−O−C(O)−C(CH)=CH
−O−C(O)−(CHO−C(O)−C(CH)=CH、−O−C(O)−CHO−C(O)−C(CH)=CH、及び
−C(O)−CHO−C(O)−NH−CO−C(O)−CH=CH
【0034】
特に好ましい化合物は次の構造のものである:
【化2】

【化3】

【0035】
式(I)の化合物は、様々な好適なプロセスによって調製することができる。一実施形態において、式(I)の化合物は、式(II)の一置換アリーレン化合物を用いて作ることができる:
Rf−L−CH−Ar−CH−W
(II)
式中、Arはフェニレン又はジフェニレン(特定の実施形態においてArはジフェニレン)であり;Rfは鎖内に任意でO又はNを有するペルフルオロアルキルであり;Lは−O−、−SO−、−CH−O−、−C−O−、−C−S−、及び−SO−N(R)−から選択され;RはC1〜C4のアルキルであり;並びにWは脱離基である。
【0036】
式(II)の特定の実施形態において、基Wは好ましくは、ハロゲン化物及び擬ハロゲン化物から選択される。より好ましくは、基Wは、Cl、Br、又は−OSO(式中、Rは、アルキル、アリール、フッ素化アルキル、又はこれらの組み合わせ(例えば、メチル、トリル、及びベンジル)である)から選択される。式(II)の化合物の代表的及び好ましいRf基は、式(I)の化合物について本明細書で記述されている。式(II)の化合物の代表的及び好ましいL基は、式(I)の化合物について本明細書で記述されている。式(II)の化合物の代表的及び好ましいR基は、式(I)の化合物について本明細書で記述されている。
【0037】
特定の実施形態において、式(I)の特定の化合物は、脱離基Wを置換することによって式(II)の化合物から直接調製することができる。例えば、式(II)の一置換アリーレン化合物は、求核剤と結合して、式(I)のアリーレン含有化合物を形成することができる。これについては後で詳しく記述される。
【0038】
他の実施形態において、式(I)の特定の化合物は、式(I)の他の化合物を調製するための中間生成物として使用することができる。例えば、式(I)の特定の化合物は、O、S、又はNの上に活性水素がある(例えば、OH、SH、NH)式(I)のその他の化合物から作ることができる。一実施形態において、
−OC(O)CH基は−OH基に変換でき、これはアクリレート基に変換でき、これは式(I)の化合物におけるすべての−Y−Q基である。
【0039】
上述の式(II)の一置換アリーレン化合物は、式(III)Rf−L−Hの化合物、式(IV)W−CH−Ar−CH−Wの化合物、及び有機溶媒を、塩基と合わせる工程を含む方法を用いて調製することができる。好ましくは、式(III)及び(IV)の化合物を有機溶媒で溶液にして、この溶液に塩基を添加する。反応(例えば、式(III)及び(IV)の化合物の溶液に対する塩基の添加)は、式(II)の一置換アリーレン化合物を形成するのに有効な時間実施される。
【0040】
出発物質である式(III)の化合物において:Rfは鎖内に任意でO又はNを有するペルフルオロアルキルであり(式(I)の化合物について本明細書で検討した代表的及び好ましいRf基を有する);Lは−O−、−SO−、−CH−O−、
−C−O−、−C−S−、及び−SO−N(R)−(式中、RはC1〜C4のアルキルであり、好ましくは、Rは−CHである)から選択される。特定の実施形態において、基Lは−CH−O−、−C−O−、及び
−SO−N(R)−から選択される。特定の実施形態において、Lは−SO−N(R)−又は−C−O−である。
【0041】
出発物質である式(IV)の化合物において:Arは、フェニレン又はジフェニレン(好ましくは、ジフェニレン)であり;W基は脱離基である(式(II)の化合物について本明細書で検討した代表的及び好ましいW基を有する)。式(II)の化合物において、W基は、独立に選択してもよい。
【0042】
式(II)の一置換アリーレン化合物(例えば、スルホンアミド化合物)を作製する方法の特定の実施形態において、塩基は、炭酸ナトリウムよりも塩基性が強い。この方法の特定の実施形態では、塩基は有機塩基である。この方法の特定の実施形態では、有機塩基は、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、及び(RNOH(式中、RはC1〜C4のアルキルである)から選択される。特定の方法では、塩基は、NaOH又はNaH等の無機塩基である。
【0043】
式(II)の一置換アリーレン化合物を作製する方法の特定の実施形態では、有機溶媒は、アセトン、THF、DMF、トルエン、又はこれらの混合物から選択される。代表的な有機溶媒は、例えば、25℃〜50℃の温度で式(II)の一置換アリーレン化合物を溶解するものである。式(III)の出発物質と式(IV)の出発物質との間の反応温度は、特に重要ではない。即ち、当業者が実用的、有効、及び効率的であると判定することができる温度範囲を用いることができる。例えば、0℃以上の温度を用いることができ、並びに溶媒の還流温度を用いることができる。典型的に、25℃〜50℃の温度が用いられる。
【0044】
式(II)の一置換アリーレン化合物を作製する方法の特定の実施形態では、塩基は、式(III)及び(IV)の出発物質の溶液に添加される。しかし、別の方法として、反応物質のうちの1つ、典型的に、式(III)の出発物質に塩基を添加し、次いで、その混合物を、式(IV)W−CH−Ar−CH−Wの出発物質に添加してもよい。典型的に、塩基(両出発物質の溶液に添加するか、式(III)の出発物質と組み合わせて添加するか)は、式(IV)W−CH−Ar−CH−Wの化合物が反応求核剤に対して過剰になるように、比較的ゆっくり添加される。典型的に、塩基は、少なくとも1時間、多くの場合少なくとも2時間にわたって添加されるが、より短い時間を用いてもよい。
【0045】
式(II)の一置換アリーレン化合物を作製する方法の特定の実施形態では、このような化合物は、少なくとも70モル%の収率で形成される。
【0046】
式(II)の一置換アリーレン化合物を作製する方法の特定の実施形態では、このような化合物は、固体の総重量に基づいて、少なくとも70重量%の純度で形成される。
【0047】
式(II)の一置換アリーレン化合物を作製する方法の特定の実施形態では、このような化合物は、更なる使用の前に(すなわち、式(I)の化合物を作る方法において求核剤と接触させる前に)、反応混合物から単離される。
【0048】
式(I)の化合物は、式(II)の化合物の基Wと求核剤を直接反応させて形成でき、式中、含まれる式(II)の化合物について:Arはフェニレン又はジフェニレンであり;Rfは鎖内に任意でO又はNを含むペルフルオロアルキルであり;Lは−O−、−SO−、−CH−O−、−C−O−、−C−S−、及び−SO−N(R)−から選択され;RはC1〜C4のアルキルであり;Y及びQは次のように選択される:Yが
−O−、−S−、又は−NH−から選択されるとき、Qは次のものから選択される:−H、−C2n−OH、−C(O)−C2b+1
−C(O)−C2n−OH、−C(O)−C(R)=CH、−C(O)−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C(O)−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、及び−(CHSi(OR;あるいはY−Qが次のものから選択される:−P(O)(OR、及び−N;Rは−H又は−CHであり;Rは−H、−CH、又は−Cであり;RはC1〜C4のアルキル又は−C(O)−CHであり;bは1〜20の整数であり;mは2〜18の整数であり;並びに、nは2〜18の整数である。
【0049】
Y−Qが−OH又は−SHである式(I)の実施形態において、これらはWを置換することによって式(II)から直接作ることができるが、−OH又は−SHが過剰に存在する場合を除き、その収量と純度は低くなり得る。そうでない場合は、初期付加物が別のWを置換し得る。よって好ましくは、O及びSをアセテート及びチオ尿素を用いてマスクし、Y−Qが−OH又は−SHである式(I)の化合物を間接的に作る。
【0050】
式(II)の化合物から式(I)の化合物を形成するこの直接的方法の特定の実施形態において、求核剤は、次のうちの1つ以上から選択される化合物であるか、又はこれらから誘導される(例えば、イオン化によって):
HO−C2n−OH、式中、nは2〜18の整数でありS−C2n−OHアニオン、式中、nは2〜18の整数であり;HO−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、式中、Rは−H又は−CHであり;
S−(CHSi(OMe)アニオン;S−(CHSi(OEt)アニオン;P(OR、式中、Rは−H、−CH、又は−Cであり;O−C(O)−Cn−12n−2−OHアニオン、式中、nは2〜18の整数(これは例えば、塩、酸、又はラクトンから誘導できる)であり;O−C(O)−C2b+1アニオン、式中、bは1〜20の整数であり;S−C(O)−C2b+1アニオン、式中、bは1〜20の整数であり;NHC(S)NHアニオン;並びにCH−(C(O)ORアニオン、式中、RはC1〜C4のアルキルである。
【0051】
この、式(II)の一置換アリーレン化合物と求核剤との間の反応において、求核剤は典型的に、一置換アリーレン化合物に対してモル等量又はモル過剰量で使用される。そのような反応は、溶媒中(水を含む)で実施することができ、典型的には有機溶媒(例えば、アセトン、DMF、MEK、THF、トルエン、メタノール、及びトルエン−THF混合物などの混合物を含む)であり、有効な温度で(例えば、室温〜150℃の範囲、しばしば50℃)、有効な時間(例えば、1時間〜24時間、しばしば2〜4時間の範囲)、実施される。当業者に既知であるような、求核置換反応を実施するのに好適な様々な条件を使用することができ、これは実施例の項で例示される。
【0052】
式(I)の化合物は、非アリーレン含有化合物に比べ、より撥性が高く、より耐久性の高いコーティングを提供する。これは、高い組織構造と、高い融点によるものと考えられる。
【0053】
式(I)の化合物は添加剤(例えば、溶融添加剤)又はポリマーの前駆体として使用することができる。一態様において、上述の式(I)の(メタ)アクリレート官能化アリーレン含有化合物を含む複数のモノマーの反応生成物であるフッ素化ポリマーが提供される。重合反応は、当業者に周知の標準条件を用いて実施することができる。
【0054】
フッ素化ポリマーを好適な溶媒に溶解させて、基材の表面に塗布できるコーティング組成物を調製することができる。溶媒は、基材にコーティングを塗布した後に除去してもよい。好適な溶媒としては、アルコール、エステル、エーテル、グリコールエーテル、アミド、ケトン、炭化水素、クロロ炭化水素、ヒドロフルオロエーテル、クロロカーボン、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。コーティング組成物は、0.1〜10重量パーセント、0.1〜5重量パーセント、又は0.5〜5重量パーセントのフッ素化ポリマーを含有することが多い。
【0055】
コーティング組成物は、任意の好適な基材に塗布することができる。幾つかの実施形態では、コーティング組成物は、織布、メリヤス生地、不織布、織物、カーペット、皮革、又は紙等の繊維に塗布される。他の基材としては、ガラス、セラミック、メーソンリー、コンクリート、天然石、金属、木材、プラスチック、及び塗装表面が挙げられるが、これらに限定されない。基材は、平面又は曲面を有してもよく、粒子又は顆粒であってもよい。
【0056】
コーティング組成物は、例えば、噴霧、パディング、浸漬、ロールコーティング、又はブラッシング等の任意の好適な塗布方法を用いて基材に塗布することができる。適切な大きさの平坦な基材をコーティングするとき、ナイフコーティング又はバーコーティング法を用いて、確実に基材を均一にコーティングしてもよい。コーティングの厚さは、所望の撥性等の所望の特性を得るために必要な任意の好適な厚さであってもよい。このコーティングの厚さは、基材の所望の特徴を損なわせることなく調整できることが多い。例えば、コーティングは、数マイクロメートル(例えば、1〜5マイクロメートル)から最大50マイクロメートル、又は更にはそれ以上、最大30マイクロメートル、最大20マイクロメートル、又は最大10マイクロメートルの範囲であってもよい。
【0057】
また、ポリマーを加熱し、次いで、押出成形又は成型してもよい。当該技術分野において既知である任意の方法を用いることができる。幾つかの実施形態では、フッ素化ポリマーを押出成形して、光学用途で使用するのに好適な透明フィルムを形成する。このポリマーはしばしば、150℃〜300℃の温度範囲、又は150℃〜250℃の温度範囲で押出成形される。
【0058】
フッ素化ポリマーは、その撥水性及び撥油性によって示されるように低表面エネルギーを有し得る。多くの非フッ素化ポリマーと比べて、水及びヘキサデカンに対する接触角が大きくなる傾向がある。即ち、これらのポリマーを用いて、撥水性及び撥油性である表面を提供することができる。このような表面は、清浄な状態を保つ傾向があり、多くの非フッ素化表面よりも容易に清浄化される。この特性は、感圧性接着剤に剥離性を提供するのにも有用である。
【0059】
特定の実施形態について、フッ素化ポリマーは少なくとも90°、好ましくは100°の水後退接触角を有する。特定の実施形態について、フッ素化ポリマーは少なくとも60°、好ましくは70°のヘキサン後退接触角を有する。
【実施例】
【0060】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に、本発明を過度に制限するものと解釈されるべきではない。これらの実施例は、単にあくまで例示を目的としたものであり、添付した請求項の範囲を限定することを意味するものではない。
【0061】
本明細書の実施例及びその他の部分における部、百分率、比等はすべて、特段の規定がない限り、重量による。使用される溶媒及び他の試薬は、特に記載のない限り、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
【0062】
材料
米国特許第6,664,354号(Savuら)の実施例1の記述に従い、N−メチルペルフルオロブタンスルホンアミドを調製した。
4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニルは、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
(CNOHは、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
アセトンは、VWR Scientific(Batavia,IL)から入手した。
酢酸エチルは、EMD Chemicals USA(Gibbstown,NJ)から入手した。
無水硫酸マグネシウムは、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
HO(CHOHは、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
銅(II)アセチルアセトナートは、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
エチレングリコールは、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
炭酸カリウムは、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
DMFは、EMD Chemicals USA(Gibbstown,NJ)から入手した。
HS(CHOHは、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
酢酸ナトリウムは、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
トルエンスルホン酸一水和物は、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
エタノールは、EMD Chemicals USA(Gibbstown,NJ)から入手した。
ε−カプロラクトンは、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
HOCHCOOHは、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
CHOHは、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
鉱油中NaHは、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
塩化メチレンは、EMD Chemicals USA(Gibbstown,NJ)から入手した。
1H,2H,2H−ペルフルオロ−1−オクタノールは、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
THFは、EMD Chemicals USA(Gibbstown,NJ)から入手した。
NaOHは、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
ペルフルオロメチルモルホリン(PF5052)は、3M Company(St.Paul,MN)から入手した。
チオ尿素は、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
メチルエチルケトンは、EMD Chemicals USA(Gibbstown,NJ)から入手した。
HClは、Alfa Aesar(Ward Hill,MA)から入手した。
塩化アクリロイルは、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
塩化メタクリロイルは、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
1,2−ジメトキシエタンは、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
トリエチルアミンは、EMD Chemicals USA(Gibbstown,NJ)から入手した。
イソシアナトエチルメタクリレートは、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
ジラウリン酸ジブチル錫は、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
VAZO 67は、Dupont(Wilmington,DE)から入手した。
リン酸トリエチルは、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
臭化トリメチルシリルは、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
ジクロロメタンは、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
HS(CHSi(OMe)は、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
CH(COOEt)は、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
ナトリウムメトキシド(メタノール中25% w/w)は、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
【0063】
試験方法
動的接触角の測定方法
本発明に従い調製されたポリマーの試験溶液(典型的に酢酸エチル中固体約3%)を、ナイロン−6,6フィルム(DuPont(Wilmington,DE)から入手)に、フィルムストリップを試験溶液にディップコーティングすることによって塗布した。コーティング前に、このフィルムをメチルアルコールで洗浄した。小型バインダークリップを使用してナイロンフィルムの一端を保持して、ストリップを試験液に浸漬し、次に溶液からゆっくり及びスムーズに引き上げた。コーティングされたストリップは、保護された場所で最低30分間空気乾燥させ、次に10分間150℃で硬化させた。
【0064】
次に、コーティングされたナイロンフィルム上の前進接触角及び後退接触角を、カーン動的接触角分析器(型式DCA 322)(制御及びデータ処理用コンピュータを備えたウィルヘルミー(Wilhelmy)天秤装置(ATI(Madison,WI)より市販)を使用して測定した。水及びヘキサデカンを、プローブ液体として使用した。水及びヘキサデカン両方の値が報告される。接触角が大きい値であるほど、撥性が良好であることを示す。
【0065】
示差走査熱量測定(DSC)分析の方法
本発明に従って調製されたポリマーのサンプル(7〜10ミリグラム)をTZEROアルミニウムパンに入れ、蓋をし(TA Instruments(New Castle,DE)から入手)、1分間当たり50mLの窒素流下でTA Q2000 DSC(TA Instruments(New Castle,DE))内で分析した。時間−試験の温度特性は次のようにした:サンプル温度は最初に30℃で平衡に保ち、次に毎分20℃のペースで加熱して290℃にし、290℃に3分間保ち、毎分20℃のペースで冷却して30℃にし、毎分20℃のペースで加熱して290℃にした。ポリマーの融解温度T及びガラス転移温度Tが測定された。
【0066】
(実施例1)
【化4】

N−メチルペルフルオロブタンスルホンアミド0.15モル(mol)、47グラム(g)及び4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニル(0.15mol、37.7g)を250mLのアセトンに溶かした。溶液を50℃に加熱した。溶液を50℃に保ったまま、(CNOH(水中55% w/w、0.15mol、70.8g)を3時間かけてゆっくり加えた。添加が終了した後、反応混合物を50℃で更に1時間維持した。固形物を濾過して除去し、アセトン100ミリリットル(mL)で洗った。合わせたアセトン溶液を回転蒸発にかけ、アセトンを除去した。固体を酢酸エチルに再溶解させ、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。ロータリーエバポレーターによる溶媒蒸発によって、純度94%の4−(N−メチルペルフルオロブタンスルホンアミドメチル)−4’−クロロメチルビフェニル60gが得られた。
【0067】
(実施例2)
【化5】

4−(N−メチルペルフルオロブタンスルホンアミドメチル)−4’−クロロメチルビフェニル(0.02mol、10.56g)、HO(CHOH(0.12mol、14.06g)、及び銅(II)アセチルアセトナート(96%、0.26g)を、フラスコに入れた。この溶液を140℃で3時間加熱した。この溶液を酢酸エチルで希釈し、水で洗い、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。ロータリーエバポレーターで溶媒を蒸発させて、生成物4’−(N−メチルペルフルオロブタンスルホンアミドメチル)−4’−(6−ヒドロキシへキシルオキシメチル)ビフェニル8.1gを得た。
【0068】
(実施例3)
【化6】

4−(N−メチルペルフルオロブタンスルホンアミドメチル)−4’−クロロメチルビフェニル(0.02mol、10.56g)、エチレングリコール(0.2mol、13.4g)、及び銅(II)アセチルアセトナート(96%、0.26g)を、フラスコに入れた。この溶液を140℃で3時間加熱した。この溶液を酢酸エチルで希釈し、水で洗い、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。ロータリーエバポレーターで溶媒を蒸発させて、生成物4’−(N−メチルペルフルオロブタンスルホンアミドメチル)−4’−(2−ヒドロキシエトキシメチル)ビフェニル10.4gを得た。
【0069】
(実施例4)
【化7】

4−(N−メチルペルフルオロブタンスルホンアミドメチル)−4’−クロロメチルビフェニル(0.02mol、10.55g)、HS(CHOH(0.022mol、1.72g)、炭酸カリウム(0.03mol、4.2g)及びDMF 20mLを、フラスコに入れた。この溶液を室温で3時間攪拌した。この溶液を酢酸エチルで希釈し、水で洗い、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。ロータリーエバポレーターで溶媒を蒸発させて、生成物4’−(N−メチルペルフルオロブタンスルホンアミドメチル)−4’−(2−ヒドロキシエチルメルカプトメチル)ビフェニル9.7gを得た。
【0070】
(実施例5)
【化8】

4−(N−メチルペルフルオロブタンスルホンアミドメチル)−4’−クロロメチルビフェニル(0.01mol、5.28g)、酢酸ナトリウム(0.02mol、1.64g)及びDMF 20mLを、フラスコに入れた。この溶液を80℃で2時間加熱した。この溶液を酢酸エチルで希釈し、水で洗い、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。ロータリーエバポレーターで溶媒を蒸発させて、4’−(N−メチルペルフルオロブタンスルホンアミドメチル)−4’−(アセトキシメチル)ビフェニル5.2gを得た。得られた化合物すべてと、トルエンスルホン酸一水和物(0.17g)、エタノール200mLを24時間還流させた。この溶液を酢酸エチルで希釈し、水で洗い、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。ロータリーエバポレーターで溶媒を蒸発させて、4’−(N−メチルペルフルオロブタンスルホンアミドメチル)−4’−ヒドロキシメチルビフェニル5.0gを得た。
【0071】
(実施例6)
【化9】

ε−カプロラクトン(0.012mol、1.37g)及び(CNOH(水中55% w/w、0.012mol、5.66g)を混合し、65℃で2時間加熱した。次にロータリーエバポレーターで水を蒸発させた。DMF(20mL)及び4−(N−メチルペルフルオロブタンスルホンアミドメチル)−4’−クロロメチルビフェニル(0.01mol、5.28g)を加えた。この溶液を65℃で2時間加熱した。この溶液を酢酸エチルで希釈し、水で洗い、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。ロータリーエバポレーターで溶媒を蒸発させて、4’−(N−メチルペルフルオロブタンスルホンアミドメチル)−4’−(6−ヒドロキシヘキサノイルオキシメチル)ビフェニル5.0gを得た。
【0072】
(実施例7)
【化10】

HOCHCOOH(0.024mol、1.38g)及び(CNOH(水中55% w/w、0.024mol、11.32g)を混合し、65℃で2時間加熱した。次にロータリーエバポレーターで水を蒸発させた。DMF(20mL)及び4−(N−メチルペルフルオロブタンスルホンアミドメチル)−4’−クロロメチルビフェニル(0.02mol、10.56g)を加えた。この溶液を65℃で2時間加熱した。この溶液を酢酸エチルで希釈し、水で洗い、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。ロータリーエバポレーターで溶媒を蒸発させて、4’−(N−メチルペルフルオロブタンスルホンアミドメチル)−4’−ヒドロキシアセチルオキシメチルビフェニル10gを得た。
【0073】
(実施例8)
4−(ヘプタフルオロブトキシメチル)−4’−クロロメチルビフェニルの調製
【化11】

CHOH 20.0g(0.1mol)及びDMF 60mLの混合物を、4.0gの60% NaH/鉱油で<10℃で少しずつ処理した。得られた溶液を1時間にわたって、50℃の4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニル25.1g(0.1mol)の110mL DMF溶液に滴下した。5時間後、混合物を1リットル(L)の水に注ぎ、得られた白色固体を濾過によって回収した。GLC(熱伝導率検出器)は、2つの新規物質(5%及び39%)及び50%の未反応出発二塩化物を示した。GC/MSによって、これらは、それぞれ4,4’−ビス(ヘプタフルオロブトキシメチル)ビフェニル及び4−(ヘプタフルオロブトキシメチル)−4’−クロロメチルビフェニルであると確認された。固体(35.4g)を600mLの沸騰ヘキサンに溶解させた。形成された顆粒状沈殿物(5.8g)を23℃に冷却した。上清液体を蒸発させて、収量17.5g、10%ジエーテル、60%モノエーテル、及び30%二塩化物を得た。
【0074】
(実施例9)
4−(ヘプタフルオロブトキシメチル)−4’−ヒドロキシメチルビフェニルの調製
【化12】

前述の実施例8の生成物(17.5g)を、NaOAc 8.2gと共にDMF 50mL中で、80℃で4時間攪拌した。反応を水でクエンチし、結果として得られた粘着性の固体を濾過し、塩化メチレンに溶かし、乾燥させ(MgSO)、生成物16.5gを分離した。これは1740cm−1の赤外線吸収を示した。これを、エタノール150mL中で0.4gトルエンスルホン酸水和物と混合し、20時間還流攪拌した。溶媒を除去した後、生成物4−(ヘプタフルオロブトキシメチル)−4’−ヒドロキシメチルビフェニル(10.9g)は固体であり、3345cm−1で広いOH吸収を示し、1740cm−1での赤外線吸収は示さなかった。
【0075】
(実施例10)
4−((1H,1H,2H,2H−ペルフルオロ−1−オクチル)オキシメチル)−4’−クロロメチルビフェニルの調製
【化13】

40.0g(0.1mol)の1H,1H,2H,2H−ペルフルオロ−1−オクタノール及び25.1g(0.1mol)の4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニルの150mL THF沸騰溶液を、8.0gの50% NaOH/水で1時間にわたって液滴処理した。2.5時間で反応を停止させ、水でクエンチし、塩化メチレンで抽出した。この物質(61.5g)は、淡黄色の固体であり、GLCによれば少量の液体C13OHを含んでいた。ヘキサンと共に粉砕したところ19.3gの固体が残り、GLCによって55%二塩化物及び2つの新規生成物であることが示された。ヘキサンを蒸発させ、36.4gとなった。ペルフルオロメチルモルホリンと共に粉砕したところ26.4gの固体が残った。GC/MSは、主成分(74%)が所望の4−((1H,1H,2H,2H−ペルフルオロ−1−オクチル)オキシメチル)−4’−クロロメチルビフェニルであり、微量成分としてジエーテル(4,4’−ビス((1H,1H,2H,2H−ペルフルオロ−1−オクチル)オキシメチル)ビフェニルを含むことを示した。
【0076】
(実施例11)
4−((1H,1H,2H,2H−ペルフルオロ−1−オクチル)オキシメチル)−4’−ヒドロキシメチルビフェニル及びそのアクリレートの調製
【化14】

前述の実施例9の生成物(26.4g)を、NaOAc 7.8gと共にDMF 50mL中で、80℃で18時間攪拌した。GLCは、大半の構成成分が新しい物質に完全に変換されたことを示し、1740cm−1で赤外線吸収を示した。混合物を水でクエンチし、白色固体を得て、これを濾過し、MgSOを入れた塩化メチレン中で乾燥させ、29.0gを分離した。このうち19.6gを、電磁攪拌器を用いて沸騰ペルフルオロ−N−メチルモルホリン500mLで抽出し(これにより本質的に純粋な4,4’−ビス((1H,1H,2H,2H−ペルフルオロ−1−オクチル)オキシメチルビフェニルを溶かす)、白色固体が残った。これを回収してヘキサン400mL中に入れて加熱し、少量の薄黄色固体を濾過し、この溶液を蒸発させて、4−((1H,1H,2H,2H−ペルフルオロ−1−オクチル)オキシメチル)−4’−ヒドロキシメチルビフェニル12.1gを得て、これをヘキサンで再結晶化させて8.4gを得た。このうち8.1g(0.0145mol)を塩化メチレン100mLに溶かし、最初に塩化アクリロイル1.5g(0.0177mol)で処理し、次にジイソプロピルエチルアミン2.3g(0.0178mol)を滴下で加えた。アクリレートへの変換は、GLC及び赤外線分光計で確認された。この混合物をMeOH 5mLで処理し、次にHCl希釈溶液で洗い、次にNaCl溶液で洗った。有機層にMgSOを入れて乾燥させ、分離した。残留物をヘキサン中に入れて加熱し、濾過し、ワックス様固体の4−((1H,1H,2H,2H−ペルフルオロ−1−オクチル)オキシメチル)−4’−アクリロキシメチルビフェニル5.8gを分離した。これは1725cm−1で赤外線吸収を示した。このうち5.4gを、0.056gのVAZO 67を含んだ酢酸エチル21.6gに溶かし、この溶液を重合ボトル内で、Nで毎分1Lで1分間パージした。これを水浴中、63℃で18時間加熱した。ポリマーをメタノールで沈殿させた。
【0077】
(実施例12)
4−(N−メチルペルフルオロブタンスルホンアミドメチル)−4’−メルカプトメチルビフェニルの調製
【化15】

メチルエチルケトン100mL中、4−(N−メチルペルフルオロブタンスルホンアミドメチル)−4’−クロロメチルビフェニル10.5g(0.02mol)とチオ尿素1.90g(0.024mol)の混合物を攪拌し、還流で加熱した。最初、溶液は白濁し、1時間で白色の沈殿が生じた。この混合物を17時間加熱し、冷却し、濾過した。この生成物(8.2g)を、N雰囲気下、150mLの沸騰エタノール中で加熱し、8g(0.1mol)の50% NaOHで処理し、20時間加熱した。結果として得られた濁った溶液を冷まし、10% HCl 20mLで処理し、200mLの水に注いで、白色固体を得た。これを塩化メチレン内に入れ、MgSOを加えて乾燥させ、目的の生成物7.0gを分離した。
【0078】
(実施例13)
【化16】

4−(N−メチルペルフルオロブタンスルホンアミドメチル)−4’−クロロメチルビフェニル(0.03mol、15.8g)と亜リン酸トリエチル(0.06mol、20g)の混合物を140〜150℃で24時間加熱した。冷却後、過剰な亜リン酸トリエチルを減圧で除去した。上記の粗生成物6.3g(0.01mol)をジクロロメタン10mLに溶かした溶液に、臭化トリメチルシリル(0.033mol、5.06g)を加えた。室温で3時間攪拌した後、この混合物を減圧下で濃縮した。メタノール(10mL)を加え、この混合物を室温で1時間攪拌した。溶媒を蒸発させ、得られた生成物を、重量が一定になるまで減圧下で乾燥させた。
【0079】
(実施例14)
【化17】

4−(N−メチルペルフルオロブタンスルホンアミドメチル)−4’−クロロメチルビフェニル(0.005mol、2.64g)、HS(CHSi(OMe)(0.00525mol、1.03g)、KCO(0.0075mol、1.03g)、及びアセトンの混合物を80℃で5時間加熱した。揮発物を蒸発させた後、酢酸エチルを追加して、生成物を再溶解させた。次に濾過を行い、塩を除去した。溶媒を蒸発させて、目的の生成物を得た。
【0080】
(実施例15)
【化18】

1Lの一口フラスコに、マロン酸ジメチル264g(2.0mol)と、メタノール中432g(2.0mol)の25%ナトリウムメトキシドを入れた。この混合物をロータリーエバポレーターで分離した。トルエン約200mLを加え、混合物を20時間かけて分離して、薄茶色の粉末として305.9gのNaCH(COOMe)を得た。化合物4−(N−メチルペルフルオロブタンスルホンアミドメチル)−4’−クロロメチルビフェニル(0.005mol、2.64g)、NaCH(COOMe)(0.01mol、1.78g)及びエタノール(10mL)の混合物を混合し、2時間還流させた。次にKOH水溶液(10%)4mLを加え、更に2時間還流させた。次に酢酸エチル50mLを加え、水で洗い、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。ロータリーエバポレーターによる溶媒蒸発によって、粗生成物2.4gを得た。
【0081】
アクリレート及びメタクリレートモノマーを調製するための一般的手順
アルコール0.004mol及び塩化アクリロイル又は塩化メタクリロイル0.0044molの混合物と、1,2−ジメトキシエタン40mLの混合物を、電磁攪拌器と共にフラスコに入れた。この溶液を0℃に冷却し、トリエチルアミン(0.0044mol、0.45g)を1時間以内でゆっくり滴下で加えた。0℃で更に1時間保った後、反応が停止した。この溶液を酢酸エチルで希釈し、水及び炭酸ナトリウムで洗い、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。ロータリーエバポレーターで溶媒を蒸発させ、目的のアクリレート又はメタクリレートを得た。
【0082】
ウレタンメタクリレートモノマーを調製するための一般的手順
アルコール0.0027molとイソシアナトエチルメタクリレート0.00284molの混合物、酢酸エチル20mL、及びジラウリン酸ジブチル錫2滴を、攪拌棒を入れた重合ボトルに加えた。この溶液を室温で2日間攪拌した。この溶媒を蒸発させ、固形物をアセトンに再溶解させ、水で沈殿させた。回収した固形物を酢酸エチルに溶かし、水及び炭酸ナトリウムで洗い、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。ロータリーエバポレーターで溶媒を蒸発させ、目的のウレタンメタクリレートを得た。
【0083】
(実施例16〜33)
実施例16〜33のそれぞれについて、上述のモノマー調製の一般的手順のうちの1つで調製されたモノマー1g、VAZO 67を0.02g、及び酢酸エチル3gを、重合ボトルに入れ、窒素で1分間パージした。次にボトルを密閉し、55℃で48時間、重合反応させた。結果として得られたポリマーを、酢酸エチル溶液から、メタノールを使って沈殿させた。回収したポリマーを60℃の減圧炉で24時間乾燥させた。
【0084】
下記の表1は、実施例16〜33それぞれについて、使用したモノマーとそのDSCデータ(すなわち、融解温度Tとガラス転移温度T)、指示されたモノマーから合成されたポリマーの水及びヘキサデカンの接触角をまとめたものである。
【0085】
DSCデータと接触角データは、実施例11のポリマーを除き、上述の方法を用いて取得された。実施例11(アクリレートから調製)は、230℃で硬化させてから接触角測定を行った。
【0086】
【表1−1】

【0087】
【表1−2】

【0088】
本明細書中に引用される特許、特許文献、及び刊行物の完全な開示は、それぞれが個々に組み込まれたかのように、その全体が参照することによって組み込まれる。本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない本発明の様々な変更や改変は、当業者には明らかとなるであろう。本発明は、本明細書で述べる例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されるものではないこと、また、こうした実施例及び実施形態は、本明細書において以下に記述する「特許請求の範囲」によってのみ限定されると意図する本発明の範囲に関する例示のためにのみ提示されることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
Rf−L−CH−Ar−CH−Y−Q
(I)
のアリーレン含有化合物であって、式中、
Arは、フェニレン又はジフェニレンであり、
Rfは、鎖内に任意でO又はNを含むペルフルオロアルキルであり、
Lは、−O−、−SO−、−CH−O−、−C−O−、−C−S−、及び
−SO−N(R)−から選択され、
はC1〜C4のアルキルであり、
Y及びQは次のように選択される、
Yが−O−、−S−、又は−NH−から選択される場合、Qは次のものから選択される、
−H、
−C2n−OH、
−C(O)−C2b+1
−C(O)−C2n−OH、
−C(O)−O−C2n−OH、
−C(O)−C(R)=CH
−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C(O)−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C(O)−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、及び
−(CHSi(OR
あるいは、Yが−C(O)O−、−CH−C(O)O−、又は−CH−C(O)NH−から選択される場合、Qは次のものから選択される、
−H、
−C2n−OH、
−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、及び
−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
あるいは、Y−Qは次のものから選択される、
−P(O)(OR、及び
−N
は−H又は−CHであり、
は−H、−CH、又は−Cであり、
はC1〜C4のアルキル又は−C(O)−CHであり、
bは1〜20の整数であり、
mは2〜18の整数であり、並びに
nは2〜18の整数である、アリーレン含有化合物。
【請求項2】
Y及びQが次のように選択される、
Yが−O−又は−S−から選択される場合、Qは次のものから選択される
−H、
−C2n−OH、
−C(O)−C2n−OH、
−C(O)−O−C2n−OH、
−C(O)−C(R)=CH
−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C(O)−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C(O)−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、及び
−(CHSi(OR
あるいは、Y−Qは次のものから選択される
−P(O)(OR
−N、及び
−NH
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Y及びQが次のように選択される、
Yが−O−又は−S−から選択される場合、Qは次のものから選択される、
−H、
−C2n−OH、
−C(O)−C2n−OH、
−C(O)−O−C2n−OH、
−C(O)−C(R)=CH
−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C(O)−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C(O)−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、及び
−(CHSi(OR
あるいは、Y−Qは−P(O)(ORである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Arがジフェニレンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
Rfが、
−C、−C、又は−C13である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
Rfが、式:
2x+1(OC2yOC2p−で表わされ、式中、xは1〜4、yは1〜4、pは1〜4、及びaは0〜20であり、式中、任意の一分子においてそれぞれの変数は独立に選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
Rfが、式:
(OCFCF(CF))OCF(CF)−で表わされ、式中、aは4〜20である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
Lが、
−CH−O−、−C−O−、及び−SO−N(R)−から選択され、式中、RはC1〜C4のアルキルである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
が−CHである、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
nが2〜12である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
nが2〜6である、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
mが2〜12である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
mが2〜6である、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
Arがジフェニレンであり、
Rfが−C又は−C13であり、
Lが−SO−N(R)−又は−C−O−であり、
Y及びQは次のように選択される、
Yが−O−又は−S−から選択される場合、Qは次のものから選択される、
−H、
−C(O)−C(R)=CH
−C2n−OH、
−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C(O)−C2n−OH、
−C(O)−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、及び
−C(O)−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
は−CHであり、
は−H又は−CHであり、
mは2〜6の整数であり、並びに
nは2〜6の整数である、請求項6及び7に依存する場合を除き、請求項1〜5及び請求項8〜13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
式:
【化1】

であって、式中、Xが、
−SC−O−C(O)−CH=CH
−O−C(O)−CH=CH
−O−C(O)−CHO−C(O)−CH=CH
−SC−O−C(O)−C(CH)=CH
−O−C(O)−(CHO−C(O)−C(CH)=CH
−O−C(O)−CHO−C(O)−C(CH)=CH、及び
−C(O)−CHO−C(O)−NH−CO−C(O)−CH=CHから選択される、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
式(II):
Rf−L−CH−Ar−CH−W
(II)
の一置換アリーレン化合物を提供する工程と(式中、
Arは、フェニレン又はジフェニレンであり、
Rfは、鎖内に任意でO又はNを含むペルフルオロアルキルであり、
Lは、−O−、−SO−、−CH−O−、−C−O−、−C−S−、及び−SO−N(R)−から選択され、
は、C1〜C4アルキルであり、
Wは、脱離基である)、
式(II)の一置換アリーレン化合物と求核剤とを合わせて、式(I):
Rf−L−CH−Ar−CH−Y−Q
(I)
のアリーレン含有化合物を形成する工程と(式中、
Arは、フェニレン又はジフェニレンであり、
Rfは、鎖内に任意でO又はNを含むペルフルオロアルキルであり、
Lは、−O−、−SO−、−CH−O−、−C−O−、−C−S−、及び−SO−N(R)−から選択され、
はC1〜C4のアルキルであり、
Y及びQは次のように選択される、
Yが−O−、−S−、又は−NH−から選択される場合、Qは次のものから選択される、
−H、
−C2n−OH、
−C(O)−C2b+1
−C(O)−C2n−OH、
−C(O)−C(R)=CH
−C(O)−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C(O)−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、及び
−(CHSi(OR
あるいは、Y−Qは次のものから選択される、
−P(O)(OR、及び
−N
は−H又は−CHであり、
は−H、−CH、又は−Cであり、
はC1〜C4のアルキル又は−C(O)−CHであり、
bは1〜20の整数であり、
mは2〜18の整数であり、並びに
nは、2〜18の整数である)、を含む、方法。
【請求項17】
前記求核剤が、
HO−C2n−OH(式中、nは2〜18の整数)、
S−C2n−OHアニオン(式中、nは2〜18の整数)、
HO−C2n−O−C(O)−C(R)=CH(式中、Rは−H又は−CH)、
S−(CHSi(OMe)アニオン、
S−(CHSi(OEt)アニオン、
P(OR(式中、Rは−H、−CH、又は−C)、
O−C(O)−Cn−12n−2−OHアニオン(式中、nは2〜18の整数)、
O−C(O)−C2b+1アニオン(式中、bは1〜20の整数)、
S−C(O)−C2b+1アニオン(式中、bは1〜20の整数)、
NHC(S)NH
アニオン、及び
CH−(C(O)ORアニオン(式中、RはC1〜C4のアルキル)、のうち1つ以上から選択されるか、又は次のうち1つ以上から誘導される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記求核剤が、一置換化合物に対してモル等量又はモル過剰量で使用される、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
式(II)の一置換アリーレン化合物を提供することが、式(II)の一置換アリーレン化合物を形成するのに有効な時間にわたって、
式(III)Rf−L−Hの化合物、
式(IV)W−CH−Ar−CH−Wの化合物、及び
有機溶媒、
を含む構成要素と塩基とを合わせることを含み、式中、
Rfは、鎖内に任意でO又はNを含むペルフルオロアルキルであり、
Lは−O−、−SO−、−CH−O−、−C−O−、−C−S−、及び
−SO−N(R)−から選択され(式中、Rは、C1〜C4アルキルである)、
Arはフェニレン又はジフェニレンであり、並びに
Wは、脱離基である、請求項16〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記塩基が、炭酸ナトリウムよりも塩基性である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記塩基が有機塩基である、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記有機塩基が、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、及び(RNOHから選択され、式中、RはC1〜C4のアルキルである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記有機溶媒が、アセトン、THF、DMF、トルエン、又はこれらの混合物から選択される、請求項19〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記塩基が、式(III)及び(IV)の化合物を含む溶液に、少なくとも2時間の時間をかけて添加される、請求項19〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
式(II)の前記一置換アリーレン化合物が、少なくとも70モル%の収率で形成される、請求項19〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
式(II)の前記一置換アリーレン化合物が、合計固体重量に基づいて、少なくとも70重量%の純度レベルで形成される、請求項19〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
式(II)の前記一置換アリーレン化合物が、前記求核剤に接触する前に、反応混合物から分離される、請求項19〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
式(I):
Rf−L−CH−Ar−CH−Y−Q
(I)
の(メタ)アクリレート官能化されたアリーレン含有化合物であって、式中、
Arは、フェニレン又はジフェニレンであり、
Rfは、鎖内に任意でO又はNを含むペルフルオロアルキルであり、
Lは−O−、−SO−、−CH−O−、−C−O−、−C−S−、及び
−SO−N(R)−、
はC1〜C4のアルキルであり、
Y及びQは次のように選択される、
Yが−O−、−S−、又は−NH−から選択される場合、Qは次のものから選択される、
−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C(O)−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、及び
−C(O)−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
あるいは、Yが−C(O)O−、−CH−C(O)O−、又は−CH−C(O)NH−から選択される場合、Qは次のものから選択される、
−C2n−O−C(O)−C(R)=CH、及び
−C2m−O−C(O)−NH−C2n−O−C(O)−C(R)=CH
は−H又は−CHであり、
mは2〜18の整数であり、並びに
nは2〜18の整数である、化合物。
【請求項29】
請求項28に記載の(メタ)アクリレート官能化されたアリーレン含有化合物から調製されるポリマー。

【公表番号】特表2013−515067(P2013−515067A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546080(P2012−546080)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/061021
【国際公開番号】WO2011/087717
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】