説明

フッ素化合物及びその製造方法

【課題】 環境への負荷が無いPFOAフリーの撥水撥油剤や防汚剤等を提供する。

【解決手段】 式(1)

Rf−(CH−X−Y−Z (1)

(式中Rfは炭素数8未満のパーフルオロアルキル基、nは0〜5の整数であり、Xは−S−、−SO−または−SO−を表し、Yは炭素数6〜10の芳香族基、Zはフェノール基、アミノ基、カルボキシル基あるいはスルホン酸基を表す。)で表される、環境への負荷が無いPFOAフリーの撥水撥油剤や防汚剤等化合物用の原料を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水撥油剤、指紋などの汚れの付着を防止する防汚剤あるいはフッ素界面活性剤の原料として有用な新規フッ素化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の含フッ素化合物が提案されている。含フッ素化合物には、耐熱性、耐酸化性、耐候性などの特性にすぐれているという利点がある。含フッ素化合物の自由エネルギーが低い、すなわち付着し難いという特性を利用して、含フッ素化合物は、例えば撥水撥油剤および防汚剤として使用されている。
撥水撥油剤として使用できる含フッ素化合物として、フルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートエステルを構成モノマーとする含フッ素重合体が挙げられる。
これらの含フッ素化合物を構成しているフルオロアルキル基の炭素数は性能の観点から8以上のテロマー(テロマーとは長鎖フルオロアルキル基のことを意味する)が用いられている。
【0003】
しかし最近の研究結果[EPAレポート”PREL IMINARY RISK ASSESSMENT OF THE DEVELOPMENTAL TOXICITY ASSOCIATED WITH EXPOSURE TO PERFLUOROOCTNOIC ACID AND ITS SALTS”(http://www.epa.gov/opptintr/pfoara.pdf)]などから、長鎖フルオロアルキル化合物の一種であるPFOA(perfluorooctanoic acid)に対する環境への負荷の懸念が明らかとなってきており、2003年4月14日にEPA(米国環境保護庁)がPFOAに対する科学的調査を強化すると発表した。一方、Federal Register(FR Vol.68,No.73/April16,2003[FRL-2303-8],http://www.Epa.gov/opptintr/pfoa/pfoafr.pdf)やEPA Environmental News FOR RELEASE:MONDAY APRIL 14,2003 EPA INTENSIFIES SCIENTIFIC INVESTIGATION OF CHEMICAL PROCESSING AID( http//www.epa.gov/optintr/pfoa/pfoaprs.pdf)やEPA OPPT FACT SHEET April 14,2003(http//www.epa.gov/optintr/pfoa/pfoafacts.pdf)は、テロマーが分解または代謝によりPFOAを生成する可能性があると公表している。またテロマーが、撥水撥油性、防汚性を付与された泡消化剤、ケア製品、洗浄成分、カーペット、テキスタイル、紙、皮革などの多くの製品に使用されていることをも公表している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2005/092997
【特許文献2】WO2007/002894
【特許文献3】WO2007/034818
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、フルオロアルキル基の炭素数が8未満であっても、優れた撥水性撥油性あるいは防汚性を発現するフッ素化合物の原料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、式(1)で表されるフッ素化合物である。

Rf−(CH−X−Y−Z (1)

{式中Rfは炭素数1〜7のパーフルオロアルキル基、nは0〜5の整数であり、Xは−S−、−SO−または−SO−を表し、Yは炭素数1〜10のアルキレン基または芳香族基、Zは芳香族性水酸基、芳香族性アミノ基、カルボキシル基あるいはスルホン酸基(及びこれらの官能基の中和塩又はエステルを含む)を表す。}
【0007】
また、本発明は、
式(2)で表される化合物

Rf−(CH−I (2)

(式中Rfは炭素数1〜7のパーフルオロアルキル基、nは0〜5の整数であり、Iはヨウ素原子を表す。)と

式(3)で表される化合物

HS−Y−Z (3)

{式中、HSはチオール基を表し、Yは炭素数1〜10のアルキレン基または芳香族基を表し、Zは芳香族性水酸基、芳香族性アミノ基、カルボキシル基あるいはスルホン酸基(及びこれらの官能基の中和塩又はエステルを含む)を表す。}を反応させることを特徴とする、

式(4)で表されるフッ素化合物の製造方法である。

Rf−(CH−X−Y−Z (4)

{式中Rfは炭素数1〜7のパーフルオロアルキル基、nは0〜5の整数であり、Xは−S−、−SO−または−SO−を表し、Yは炭素数1〜10のアルキレン基または芳香族基を表し、Zは芳香族性水酸基、芳香族性アミノ基、カルボキシル基あるいはスルホン酸基(及びこれらの官能基の中和塩又はエステルを含む)を表す。}。
式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物を反応させるとX=Sである化合物、Rf−(CH−S−Y−Zを得ることができ、この化合物を酸化することにより、X=−SO−、−SO−の化合物を得ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、人体に安全な性能の優れた撥水撥油剤あるいは防汚剤等の原料を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
上記式(1)において、炭素数1〜7のRf基としては以下のものが挙げられる。
−CF、−CFCF、−CFCFCF、−CF(CF、−CFCFCFCF、−CFCF(CF、−C(CF、−(CFCF、−(CFCF(CF、−CFC(CF、−CF(CF)CFCFCF、−(CFCF、−(CFCF(CF、等が挙げられる。
【0010】
nは0から5の整数であり、原料入手のし易さ、コスト等を考慮すると0または2が好ましい。
【0011】
は−S−、−SO−または−SO−であり、コスト及び安定性等を考慮すると−S−または−SO−が好ましい。
【0012】
は炭素数1から10のアルキレン基または芳香族基であり、好ましくは炭素数1から5のアルキレン基または1から4個のフッ素原子で置換されていても良い1,4−フェニレン基である。
【0013】
Zは芳香族性水酸基、芳香族性アミノ基、カルボキシル基あるいはスルホン酸基である。
これらの官能基のうち、芳香族性アミノ基は塩酸、硫酸、リン酸等の酸との塩を含む。
これらの官能基のうち、芳香族性水酸基基、カルボキシル基及びスルホン酸基は中和塩あるいはエステルを含む。
【0014】
中和塩としては、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩等が挙げられ、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩等が挙げられる。
エステルとしては、炭素数1〜5のアルキル基が挙げられ、例えば、メチルエステル、エチルエステル等が挙げられる。
【0015】
本発明の製造方法の特徴は上記原料のフッ素化合物を製造する方法であって、パーフルオロアルキルアイオダイドとメルカプト基含有フェノール、メルカプト基含有芳香族アミン(及びその中和塩)、メルカプト基含有カルボン酸(及びその中和塩、エステル)又はメルカプト基含有スルホン酸(及びその中和塩、エステル)を反応させることを特徴とする。
【0016】
本発明のフッ素化合物としては、以下のものが挙げられる。
【0017】
Rf−S−C−OH
Rf−S−C−NH
Rf−S−C−NH・HCl
Rf−S−C−COOH
Rf−S−C−COOCH
Rf−S−C−COOC
Rf−S−C−COONa
Rf−S−C−COOK
Rf−S−C−COONH
Rf−S−C−SO
Rf−S−C−SOCH
Rf−S−C−SO
Rf−S−C−SONa
Rf−S−C−SO
Rf−S−C−SONH
Rf−CHCH−S−C−OH
【0018】
Rf−CHCH−S−C−NH
Rf−CHCH−S−C−NH・HCl
Rf−CHCH−S−C−COOH
Rf−CHCH−S−C−COOCH
Rf−CHCH−S−C−COOC
Rf−CHCH−S−C−COONa
Rf−CHCH−S−C−COOK
Rf−CHCH−S−C−COONH
Rf−CHCH−S−C−SO
Rf−CHCH−S−C−SOCH
Rf−CHCH−S−C−SO
Rf−CHCH−S−C−SONa
Rf−CHCH−S−C−SO
Rf−CHCH−S−C−SONH
【0019】
Rf−SO−C−OH
Rf−SO−C−NH
Rf−SO−C−NH・HCl
Rf−SO−C−COOH
Rf−SO−C−COOCH
Rf−SO−C−COOC
Rf−SO−C−COONa
Rf−SO−C−COOK
Rf−SO−C−COONH
Rf−SO−C−SO
Rf−SO−C−SOCH
Rf−SO−C−SO
Rf−SO−C−SONa
Rf−SO−C−SO
Rf−SO−C−SONH
【0020】
Rf−CHCH−SO−C−OH
Rf−CHCH−SO−C−NH
Rf−CHCH−SO−C−NH・HCl
Rf−CHCH−SO−C−COOH
Rf−CHCH−SO−C−COOCH
Rf−CHCH−SO−C−COOC
Rf−CHCH−SO−C−COONa
Rf−CHCH−SO−C−COOK
Rf−CHCH−SO−C−COONH
Rf−CHCH−SO−C−SO
Rf−CHCH−SO−C−SOCH
Rf−CHCH−SO−C−SO
Rf−CHCH−SO−C−SONa
Rf−CHCH−SO−C−SO
Rf−CHCH−SO−C−SONH
【0021】
Rf−SO−C−OH
Rf−SO−C−NH
Rf−SO−C−NH・HCl
Rf−SO−C−COOH
Rf−SO−C−COOCH
Rf−SO−C−COOC
Rf−SO−C−COONa
Rf−SO−C−COOK
Rf−SO−C−COONH
Rf−SO−C−SO
Rf−SO−C−SOCH
Rf−SO−C−SO
Rf−SO−C−SONa
Rf−SO−C−SO
Rf−SO−C−SONH
【0022】
Rf−CHCH−SO−C−OH
Rf−CHCH−SO−C−NH
Rf−CHCH−SO−C−NH・HCl
Rf−CHCH−SO−C−COOH
Rf−CHCH−SO−C−COOCH
Rf−CHCH−SO−C−COOC
Rf−CHCH−SO−C−COONa
Rf−CHCH−SO−C−COOK
Rf−CHCH−SO−C−COONH
Rf−CHCH−SO−C−SO
Rf−CHCH−SO−C−SOCH
Rf−CHCH−SO−C−SONa
Rf−CHCH−SO−C−SO
Rf−CHCH−SO−C−SONH
【0023】
Rf−S−CHCOOH
Rf−S−CHCOOCH
Rf−S−CHCOOC
Rf−S−CHCOONa
Rf−S−CHCOOK
Rf−S−CHCOONH
【0024】
Rf−CHCH−S−CHCOOH
Rf−CHCH−S−CHCOOCH
Rf−CHCH−S−CHCOOC
Rf−CHCH−S−CHCOONa
Rf−CHCH−S−CHCOOK
Rf−CHCH−S−CHCOONH
【0025】
Rf−SO−CHCOOH
Rf−SO−CHCOOCH
Rf−SO−CHCOOC
Rf−SO−CHCOONa
Rf−SO−CHCOOK
Rf−SO−CHCOONH
【0026】
Rf−CHCH−SO−CHCOOH
Rf−CHCH−SO−CHCOOCH
Rf−CHCH−SO−CHCOOC
Rf−CHCH−SO−CHCOONa
Rf−CHCH−SO−CHCOOK
Rf−CHCH−SO−CHCOONH
【0027】
Rf−SO−CHCOOH
Rf−SO−CHCOOCH
Rf−SO−CHCOOC
Rf−SO−CHCOONa
Rf−SO−CHCOOK
Rf−SO−CHCOONH
【0028】
Rf−CHCH−SO−CHCOOH
Rf−CHCH−SO−CHCOOCH
Rf−CHCH−SO−CHCOOC
Rf−CHCH−SO−CHCOONa
Rf−CHCH−SO−CHCOOK
Rf−CHCH−SO−CHCOONH
【0029】
Rf−S−CHSO
Rf−S−CHSOCH
Rf−S−CHSO
Rf−S−CHSONa
Rf−S−CHSO
Rf−S−CHSONH
【0030】
Rf−CHCH−S−CHSO
Rf−CHCH−S−CHSOCH
Rf−CHCH−S−CHSO
Rf−CHCH−S−CHSONa
Rf−CHCH−S−CHSO
Rf−CHCH−S−CHSONH
【0031】
Rf−SO−CHSO
Rf−SO−CHSOCH
Rf−SO−CHSO
Rf−SO−CHSONa
Rf−SO−CHSO
Rf−SO−CHSONH
【0032】
Rf−CHCH−SO−CHSO
Rf−CHCH−SO−CHSOCH
Rf−CHCH−SO−CHSO
Rf−CHCH−SO−CHSONa
Rf−CHCH−SO−CHSO
Rf−CHCH−SO−CHSONH
【0033】
Rf−SO−CHSO
Rf−SO−CHSOCH
Rf−SO−CHSO
Rf−SO−CHSONa
Rf−SO−CHSO
Rf−SO−CHSONH
【0034】
Rf−CHCH−SO−CHSO
Rf−CHCH−SO−CHSOCH
Rf−CHCH−SO−CHSO
Rf−CHCH−SO−CHSONa
Rf−CHCH−SO−CHSO
Rf−CHCH−SO−CHSONH
【0035】
本発明のフッ素化合物は以下の製造方法により得ることが出来き、本製造方法も本発明の一つである。
式(2)においてnが0の場合、ギ酸ナトリウムと亜硫酸ナトリウムの存在下、メルカプト基含有フェノール、メルカプト基含有アミン(中和塩を含む)、メルカプト基含有カルボン酸(中和塩およびエステルを含む)あるいはメルカプト基含有スルホン酸(中和塩およびエステルを含む)と反応させることにより、対応するフェノール基、アミノ基、カルボキシル基あるいはスルホン酸基を有するスルフィドを得ることができる。
【0036】
溶媒としては、これらの試薬を溶解させる不活性な溶媒であれば特に限定されず、アルコール系溶媒メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロパノール等)、エーテル系溶媒(ジエチルエーテル、テトラハイドロフラン、ジオキサン等)、非プロトン溶媒(ジメチルスルホキサイド、N,N−ジメチルホルムアミド等)、炭化水素系溶媒(トルエン、ヘキサン等)、水およびこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0037】
これらの中で、水/ジメチルホルミアミド混合溶媒等を用いることが好ましい。
反応温度は0℃〜80℃で行うことが可能で、10℃〜30℃が好ましい。
【0038】
また式(2)においてnが1以上の場合、塩基存在下、メルカプト基含有フェノール(中和塩を含む)、メルカプト基含有芳香族アミン(中和塩を含む)、メルカプト基含有カルボン酸(中和塩およびエステルを含む)あるいはメルカプト基含有スルホン酸(中和塩およびエステルを含む)と反応させることにより対応するアルコールやアミンを得ることができる。
【0039】
塩基としては、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウムおよび炭酸カリウム等が挙げられる。
【0040】
溶媒としては、これらの試薬を溶解させる不活性な溶媒であれば特に限定されず、アルコール系溶媒(メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロパノール等)、非プロトン溶媒(ジメチルスルホキサイド、N,N−ジメチルホルムアミド等)およびエーテル系溶媒(ジエチルエーテル、テトラハイドロフラン、ジオキサン等)等が挙げられる。
【0041】
これらの中で、ジメチルスルホキサイド、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性溶媒やメチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール系溶媒を用いることが好ましい。
【0042】
反応温度は0℃〜100℃が可能で、20℃〜80℃が好ましい。
【0043】
上記反応条件で得たスルフィドを酸化剤(メタクロロ過安息香酸、過酢酸および過酸化水素等)で酸化することにより対応するスルホキサイドやスルホンを得ることが出来る。
【0044】
溶媒としては、これらの試薬を溶解させる不活性な溶媒であれば特に限定されず、ハロゲン系溶媒(クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等)、炭化水素系溶媒(ヘキサン、トルエン等)、アルコール系溶媒(メチルアルコール、エチルアルコール等)、エーテル系溶媒(ジエチルエーテル、テトラハイドロフラン、ジオキサン等)および水等が挙げられる。
【0045】
これらの中で、ハロゲン系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒や水が好ましい。
【0046】
反応温度は−30℃〜100℃が可能で、0℃〜80℃が好ましい。
【実施例】
【0047】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
実施例は、本発明を説明するものであり、制限を加えるものではない。
以下特記しない限り、部は重量部を意味する。
【0048】
実施例1
ヨウ化パーフルオロブチル(東京化成工業株式会社)11.3部(32.7ミリモル部)、4−ヒドロキシチオフェノール(ナカライテスク株式会社)4.1部(32.5ミリモル部)をDMF/水(5:1)に溶かし、ギ酸ナトリウム(ナカライテスク株式会社)2.3部(33.9ミリモル部)、亜硫酸ナトリウム・7水和物(ナカライテスク株式会社)9.1部(32.9ミリモル部)を加えて室温で一晩撹拌した。反応終了後、ヘキサンで抽出した。ヘキサン層を炭酸水素ナトリウム水による洗浄、水による洗浄を経た後、ヘキサンを除去することにより本発明の化合物(1)である液体:C−S−C−OHを8.0部得た。本発明の化合物(1)の化学構造はH−NMR分析により確認した{7.52、6.88(d、4H、−S−C−OH)}。
【0049】
実施例2
4−ヒドロキシチオフェノール(ナカライテスク株式会社)6.5部(51.3ミリモル部)をジメチルスルホキサイド50部に溶かし、炭酸水素ナトリウム(ナカライテスク株式会社)5.2部を加え、次いで2−(パーフルオロブチル)エチルアイオダイド(東京化成工業株式会社)19.3部(51.6ミリモル部)を加え室温で1日間撹拌した。反応終了後、水を加え、トルエンで抽出した。トルエン層を水による洗浄を経た後、トルエンを除去することにより本発明の化合物(2)である白色固体:C−CHCH−S−C−OHを14.2部得た。本発明の化合物(12)の化学構造はH−NMR分析により確認した{7.34、6.81(d、4H、−S−C−OH)、2.96−3.02(m、2H、C−CH−S−)、2.22−2.42(m、2H、C−CCH−S−)}。
【0050】
実施例3
(1)4−アミノチオフェノール(ナカライテスク株式会社)25.0部(200.0ミリモル部)に水200部を加えさらに35%塩酸(ナカライテスク株式会社)22.9部(220.0ミリモル部)を加えて均一な溶液を得た。得られた溶液の水を除去し、エタノールで洗浄、乾燥することにより、白色固体の4−アミノチオフェノール塩酸塩27.6部を得た。
(2)ヨウ化パーフルオロブチル(東京化成工業株式会社)12.5部(36.1ミリモル部)、(1)で得た4−アミノチオフェノール塩酸塩5.83部(36.1ミリモル部)をDMF/水(5:1)50部に溶かし、ギ酸ナトリウム(ナカライテスク株式会社)2.5部(36.3ミリモル部)、亜硫酸ナトリウム・7水和物(ナカライテスク株式会社)9.1部(36.1ミリモル部)を加えて室温で一晩撹拌した。反応終了後、1N水酸化ナトリウム水を加えて反応溶液を塩基性にした後、ヘキサンで抽出した。ヘキサン層を水洗後、ヘキサンを除去することにより、本発明の化合物(3)である液体:C−S−C−NHを7.1部得た。本発明の化合物(3)の化学構造はH−NMR分析により確認した{7.39、6.65(d、4H、−S−C−NH)}。
【0051】
実施例4
実施例3の(1)で得た4−アミノチオフェノール塩酸塩4.23部(26.2ミリモル部)をジメチルスルホキサイド50部に溶かし、炭酸水素ナトリウム(ナカライテスク株式会社)2.6部(31.0ミリモル部)を加えて均一分散するように撹拌した。次いで、2−(パーフルオロブチル)エチルアイオダイド(東京化成工業株式会社)9.8部(26.2ミリモル部)を加え室温で3日間撹拌した。反応終了後、1N水酸化ナトリウム水を加えて反応溶液を塩基性にした後、ヘキサンで抽出した。ヘキサン層を水洗後、ヘキサンを除去することにより、本発明の化合物(4)である液体:C−CHCHS−C−NHを7.5部得た。本発明の化合物(4)の化学構造はH−NMR分析により確認した{7.25、6.63(d、4H、−S−C−OH)、2.87−2.97(m、2H、C−CH−S−)、2.20−2.42(m、2H、C−CCH−S−)}。
【0052】
実施例5
(1)市販の4−カルボキシチオフェノール25.0部(162.3ミリモル部)を脱水エタノール500部に溶かし、濃硫酸2部を加えて24時間加熱還流した。エタノールを除去後、さらに脱水エタノール500部を加えて24時間加熱還流した。次いでエタノールを除去し水を加えてトルエンで抽出した。最少量の炭酸水素ナトリウムを加えて水層のpHを中性に後、トルエン層を水洗することにより、4−カルボキシエチルチオフェノールを26.5部(145.6ミリモル部)得た。
化合物の化学構造はH−NMR分析により確認した{7.89、7.28(d、4H、−S−C−COOCHCH)、4.35(q、2H、−COOCHCH)、1.37(t、3H、−COOCH)}。
(2)ヨウ化パーフルオロブチル(東京化成工業株式会社)5.7部(16.5ミリモル部)、(1)で得た4−カルボキシエチルチオフェノール2.95部(16.2ミリモル部)をDMF/水(5:1)36部に溶かし、ギ酸ナトリウム(ナカライテスク株式会社)2.3部(38.5ミリモル部)、亜硫酸ナトリウム・7水和物(ナカライテスク株式会社)8.3部(29.2ミリモル部)を加えて室温で一晩撹拌した。反応終了後、1N水酸化ナトリウム水を加えて反応溶液を塩基性にした後、ヘキサンで抽出した。ヘキサン層を水洗後、ヘキサンを除去することにより、本発明の化合物(5)である液体:C−S−C−COOCを5.1部得た。本発明の化合物(5)の化学構造はH−NMR分析により確認した{8.08、7.73(d、4H、−S−C−COOCHCH)、4.40(q、2H、−COOCHCH)、1.39(t、3H、−COOCH)}。
【0053】
実施例6
実施例5の(1)で得た4−4−カルボキシエチルチオフェノール9.6部(52.7ミリモル部)をジメチルスルホキサイド100部に溶かし、水酸化ナトリウム(ナカライテスク株式会社)2.3部(57.5ミリモル部)を水5部に溶解させたものを加えて均一分散するように撹拌した。次いで、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアイオダイド(東京化成工業株式会社)25.0部(52.7ミリモル部)を加え室温で3日間撹拌した。反応終了後、1N水酸化ナトリウム水を加えて反応溶液を塩基性にした後、トルエンで抽出したトルエン層を水洗後、トルエンを除去し、ヘキサンで再結晶することにより、本発明の化合物(6)である固体:C613−CHCHS−C−COOCを26.3部得た。本発明の化合物(6)の化学構造はH−NMR分析により確認した{7.98、7.33(d、4H、−S−C−OH)、4.37(q、2H、−COOCHCH)、3.16−3.26(m、2H、C13−CH−S−)、2.32−2.55(m、2H、C−CCH−S−)、1.38(t、3H、−COOCH)}。
【0054】
実施例7
実施例1で得た本発明の化合物(1)3.4部(10ミリモル部)を塩化メチレン70部に溶かし、氷水で冷却した。m−クロロ安息香過安息香酸(ナカライテスク株式会社)4.7部(27.3ミリモル部)を、10℃以下で分割して投入した後、室温(約25℃)に戻し24時間反応させた。反応終了後、炭酸水素ナトリウム水溶液、チオ硫酸ナトリウム水溶液、水による洗浄を経た後、塩化メチレンを除去した。得られたオイルをヘキサン/酢酸エチルで再結晶することにより本発明の化合物(7)である固体:C−SO−C−OHを2.4部得た。本発明の化合物の化学構造はH−NMR分析により確認した{7.92、7.06(d、4H、−SO−C−OH)}。
【0055】
実施例8
実施例2で得た本発明の化合物(2)3.7部(10ミリモル部)を塩化メチレン70部に溶かし、氷水で冷却した。m−クロロ安息香過安息香酸(ナカライテスク株式会社)4.7部(27.3ミリモル部)を、10℃以下で分割して投入した後、室温(約25℃)に戻し24時間反応させた。反応終了後、炭酸水素ナトリウム水溶液、チオ硫酸ナトリウム水溶液、水による洗浄を経た後、塩化メチレンを除去した。得られたオイルをヘキサン/酢酸エチルで再結晶することにより本発明の化合物(7)である固体:C−CHCH−SO−C−OHを2.4部得た。本発明の化合物の化学構造はH−NMR分析により確認した{7.83、7.01(d、4H、−SO−C−OH)、3.25−3.34(m、2H、C−CH−SO−)、2.46−2.63(m、2H、C−CCH−SO−)}。
【0056】
実施例9
ヨウ化パーフルオロヘキシル(東京化成工業株式会社)32.0部(71.7ミリモル部)、チオグリコール酸メチルエステル7.6部(71.7ミリモル部)をDMF/水(5:1)90部に溶かし、ギ酸ナトリウム(ナカライテスク株式会社)4.9部(72.1ミリモル部)、亜硫酸ナトリウム・7水和物(ナカライテスク株式会社)8.3部(72.2ミリモル部)を加えて室温で一晩撹拌した。反応終了後、1N水酸化ナトリウム水を加えて反応溶液を塩基性にした後、トルエンで抽出したトルエン層を水洗後、トルエンを除去することにより、本発明の化合物(9)である液体:C13−S−CH−COOCHを6.5部得た。本発明の化合物(5)の化学構造はH−NMR分析により確認した{3.80(s、3H、−SCHCOOC)、3.72(s、2H、−SCCOOCH)}。
【0057】
実施例10
チオグリコール酸メチルエステル5.0部(47.2ミリモル部)をジメチルスルホキサイド100部に溶かし、水酸化ナトリウム(ナカライテスク株式会社)2.0部(50.0ミリモル部)を水5部に溶解させたものを加えて均一分散するように撹拌した。次いで、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアイオダイド(東京化成工業株式会社)25.0部(52.7ミリモル部)を加え室温で3日間撹拌した。反応終了後、1N水酸化ナトリウム水を加えて反応溶液を塩基性にした後、トルエンで抽出したトルエン層を水洗後、トルエンを除去し、ヘキサンで再結晶することにより、本発明の化合物(6)である固体:C613−CHCHS−CH−COOCHを21.2部得た。本発明の化合物(10)の化学構造はH−NMR分析により確認した{3.76(s、3H、−SCHCOOC)、3.28(s、2H、−SCCOOCH)、2.86−2.92(m、2H、C13−CH−S−)、2.34−2.53(m、2H、C13−CCH−S−)}。
【0058】
使用例1
実施例1で得た本発明の化合物(1)4.0部(11.6ミリモル)をジメチルスルホキサイド40部に溶かし水酸化ナトリウム(ナカライテスク株式会社)0.5部を溶かした水(4部)を加え均一になるまで室温(約25℃)で撹拌した。次いでp−クロロメチルスチレン(セイミケミカル株式会社)1.8部を加えて室温(約25℃)で3日間撹拌した。反応溶液を水の中へ投入し生じた沈殿をろ過乾燥し、ヘキサンで再結晶することにより重合性化合物(A):C−S−C−OCH-C−CH=CHを4.2部得た。本重合性化合物(A)の化学構造はH−NMR分析により確認した{7.56、6.99(d、4H、-S-C-OCH-C-)、7.43、7.37(d、4H、-S-C-OCH-C-)、6.72(dd、1H、-C-C=CH-)、5.77(d、1H、-C-CH=C)、5.27(d、1H、-C-CH=C)、5.07(s、2H、-OC-)}。
【0059】
使用例2
使用例1で得た重合性化合物(A)1.4部(3.0ミリモル部)、3−(トリメトキシシリル)プロパン−1−チオール(チッソ株式会社)0.6部(3.0ミリモル部)及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル25×10−3部(0.15ミリモル部)を、メチルアルコール18部に溶解した後、アルゴン雰囲気下、還流温度で24時間反応させて、本重合性化合物(B);C-S-C-OCH-C-CHCH-S-CHCHCH-Si(OCHを含むメチルアルコール溶液を得た。なお、このメチルアルコール溶液の一部を濃縮して、H−NMR分析により本重合性化合物(B)の化学構造を確認した{7.56、6.99(d、4H、-S-C-OCH-C-)、7.35、7.23(d、4H、-S-C-OCH-C-)、5.05(s、2H、-OC-)、3.56(s、9H、-Si-(OC、2.72−2.93(m、4H、-C-C-S-CHCHCH-、2.56(t、2H、-S-CCHCH-Si(OCH、1.66−1.77(m、2H、-S-CHCH-Si(OCH、0.67(t、2H、-S-CHCH-Si(OCH}。
【0060】
使用例3
実施例2で得た本発明の化合物(2)5.0部(13.4ミリモル部)をジメチルスルホキサイド50部に溶かし水酸化ナトリウム(ナカライテスク株式会社)0.6部を溶かした水(4部)を加え均一になるまで室温(約25℃)で撹拌した。次いでp−クロロメチルスチレン(セイミケミカル株式会社)2.1部(13.7ミリモル部)を加えて室温(約25℃)で3日間撹拌した。反応溶液を水の中へ投入し生じた沈殿をろ過乾燥し、ヘキサンで再結晶することにより、本重合性化合物(C);CCHCH-S-C-OCH-C-CH=CHを4.8部得た。本重合性化合物(C)の化学構造は、H−NMR分析により確認した{7.43、7.37(d、4H、-C-OCH-C-)、7.38、6.94(d、4H、-C-OCH-C-)、6.72(dd、1H、-C-C=CH-)、5.76(d、1H、-C-CH=C)、5.26(d、1H、-C-CH=C)、5.05(s、2H、-OC-)、2.96−3.02(m、2H、C-CH-S-C-OCH-)、2.23−2.43(m、2H、C-CCH-S-C-OCH-)}。
【0061】
使用例4
使用例3で得た重合性化合物(C)2.5部(5.1ミリモル部)、3−(トリメトキシシリル)プロパン−1−チオール(チッソ株式会社)1.0部(5.1ミリモル部)及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル42×10−3部(0.25ミリモル部)を、メチルアルコール32部に溶解した後、アルゴン雰囲気下、還流温度で24時間反応させて、本重合性化合物(D);CCHCH-S-C-OCH-C-CHCHSCHCHCHSi(OCHを含むメチルアルコール溶液を得た。なお、このメチルアルコール溶液の一部を濃縮して、H−NMR分析により本重合性化合物(D)の化学構造を確認した{7.36、7.22(d、4H、-C-OCH-C-)、7.37、6.94(d、4H、-C-OCH-C-)、5.02(s、2H、-OC-)、3.57(s、9H、-Si-(OC、2.96−3.06(m、2H、CCH-S-C-)、2.72−2.95(m、4H、-C-C-S-CHCHCH-)、2.57(t、2H、-S-CCHCH-Si(OCH)、2.20−2.45(m、2H、CCH-S-C-)、1.67−1.78(m、2H、-S-CHCH-Si(OCH)、0.76(t、2H、-S-CHCH-Si(OCH}
【0062】
使用例5
実施例3で得た本発明の化合物(3)2.14部(6.1ミリモル部)、イソシアン酸3−(トリエトキシシリル)プロピル(チッソ株式会社)1.54部(6.1ミリモル部)及びジラウリン酸ジ−n−ブチルスズ0.01部を、脱水MEK33部に溶解した後、アルゴン雰囲気下、約25℃で24時間反応させることにより、本重合性化合物(E);C-S-C-NHCONH-CHCHCH-Si(OCHCHを含むMEK溶液を得た。なお、このMEK溶液の一部を濃縮して、H−NMR分析により本重合性化合物(E)の化学構造を確認した{7.39、6.65(d、4H、C-S-C-)、5.39(t、-C-NCON-)、3.80(q、6H、-OCCH)、3.10―3.32(m、2H、-HNCONH-C-)、1.60−1.80(m、2H、-CCH-Si≡)、1.22(t、9H、OCH)、0.55−0.70(m、2H、-C-Si≡)}。
【0063】
使用例6
実施例3で得た本発明の化合物(3)2.64部(7.7ミリモル部)、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社)1.19部(7.7ミリモル部)及びジラウリン酸ジ−n−ブチルスズ0.01部を、脱水酢酸エチル35部に溶解した後、アルゴン雰囲気下、約25℃で24時間反応させて、本発明の重合性化合物(54);C-S-C-NHCONH-CHCH-OCOC(CH)=CHを含む酢酸エチル溶液を得た。なお、この酢酸エチル溶液の一部を濃縮して、H−NMR分析により本重合性化合物(F)の化学構造を確認した{7.55、7.42(d、4H、C-S-C-)、6.11(s、1H、-C(CH)=C)、5.58(s、1H、-C(CH)=C)、5.09(t、1H、-NCON-)、4.22(t、2H、-CH-OCOC(CH)=CH)、3.49(q、2H、-CCH-OCOC(CH)=CH)、1.93(s、3H、-OCOC(C)=CH}。
【0064】
使用例7
実施例4で得た本発明の化合物(4)4.32部(11.6ミリモル部)、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社)1.80部(11.6ミリモル部)及びジラウリン酸ジ−n−ブチルスズ0.02部を、脱水THF60部に溶解した後、アルゴン雰囲気下、約25℃で24時間反応させて、本重合性化合物(G);C-CHCH-S-C-NHCONH-CHCH-OCOC(CH)=CHを含むTHF溶液を得た。なお、このTHF溶液の一部を濃縮して、H−NMR分析により本重合性化合物(G)の化学構造を確認した{7.36,7.29(d、4H、-S-C-NHCONH-)、6.12(s、1H、-C(CH)=C)、5.60(s、1H、-C(CH)=C)、5.09(t、1H、-OCON-)、4.29(t、2H、-CH-OCOC(CH)=CH)、3.57(q、2H、-CCH-OCOC(CH)=CH)、3.01−3.08(m、2H、C-CH-S-)、2.23−2.45(m、2H、C-CCH-S-)、1.93(s、3H、-OCOC(C)=CH}。
【0065】
使用例8
実施例3で得た本発明の化合物(3)4.0部(11.7ミリモル部)及び乾燥ピリジン2.0部(25.3ミリモル部)を脱水THF40mlに溶かし、氷水で冷却した。アクリル酸クロライド2.0部(22.1モル部)を10℃以下で滴下した後、室温(約25℃)に戻しさらに24時間撹拌した。反応終了後、氷水の中へ投入し塩酸を加えて酸性にした。生じた沈殿をろ過、水洗及び乾燥しヘキサンで再結晶することにより、本重合性化合物(H);C-S-C-NHCOCH=CHを3.9部得た。本重合性化合物(H)の化学構造は、H−NMR分析により確認した{7.68、7.62(d、4H、C-S-C-NHCOCH=CH)、6.47(d、1H、-CH=C)、6.24(dd、1H、-C=CH)、5.83(d、1H、-CH=C)}。
【0066】
使用例9
実施例7で得た本発明の化合物(7)2.4部(6.4ミリモル部)をジメチルスルホキサイド30部に溶かし水酸化ナトリウム(ナカライテスク株式会社)0.25部を溶かした水(4部)を加え均一になるまで室温(約25℃)で撹拌した。次いでp−クロロメチルスチレン(セイミケミカル株式会社)1.0部(6.6ミリモル部)を加えて室温(約25℃)で3日間撹拌した。反応溶液を水の中へ投入し生じた沈殿をろ過乾燥し、エタノールで再結晶することにより、本重合性化合物(I);C-SO-C-OCH-C-CH=CHを2.0部得た。本重合性化合物(I)の化学構造は、H−NMR分析により確認した{7.96、7.16(d、4H、-SO-C-OCH-C-)、7.45、7.37(d、4H、-SO-C-OCH-C-)、6.73(dd、1H、-C-C=CH-)、5.78(d、1H、-C-CH=C)、5.30(d、1H、-C-CH=C)、5.17(s、2H、-OC-)}。
【0067】
使用例10
実施例8で得た本発明の化合物(8)1.2部(3.0ミリモル部)をジメチルスルホキサイド30部に溶かし水酸化ナトリウム(ナカライテスク株式会社)0.12部を溶かした水(2部)を加え均一になるまで室温(約25℃)で撹拌した。次いでp−クロロメチルスチレン(セイミケミカル株式会社)0.5部(3.3ミリモル部)を加えて室温(約25℃)で3日間撹拌した。反応溶液を水の中へ投入し生じた沈殿をろ過乾燥し、トルエンで再結晶することにより、本重合性化合物(J);C-CHCH-SO-C-OCH-C-CH=CHを0.9部得た。本重合性化合物(J)の化学構造は、H−NMR分析により確認した{7.85、7.12(d、4H、-C-OCH-C-)、7.46、7.37(d、4H、-C-OCH-C-)、6.73(dd、1H、-C-C=CH-)、5.78(d、1H、-C-CH=C)、5.29(d、1H、-C-CH=C)、5.15(s、2H、-OC-)、3.24−3.34(m、2H、C-CH-SO-C-OCH-)、2.47−2.67(m、2H、C-CCH-SO-C-OCH-)}。
【0068】
使用例11
実施例7で得た本発明の化合物(7)1.9部(5.0ミリモル部)、メタアクリル酸(ナカライテスク株式会社)0.6部(7.0ミリモル部)及びトリフェニルホスフィン(ナカライテスク株式会社)1.45部(5.5ミリモル部)を脱水THF30部に溶解させたTHF溶液に、アゾジエチルカルボン酸の40%トルエン溶液(ナカライテスク株式会社)2.4部(5.5ミリモル部)を、アルゴン雰囲気及び氷冷下で滴下した。滴下終了後室温(約25℃)に戻してさらに24時間反応させた。反応終了後、THF及びトルエンを除去し、ヘキサンに溶解して、ヘキサン相を1N水酸化ナトリウム水溶液による洗浄、水による洗浄を経た後、ヘキサンを除去することにより、本重合性化合物(K);C-SO-C-OOC(CH)=CHを得た。本重合性化合物(K)の化学構造はH−NMR分析により確認した{8.08、7.47(d、4H、-SO-C-)、6.41(s、-OOC(CH)=C、5.87(s、1H、-OOC(CH)=C)、2.08(s、1H、-OOC(C)=CH)}。
【0069】
使用例12
使用例9と同様の操作で得た重合性化合物(I)0.6部(1.2ミリモル部)、3−(トリメトキシシリル)プロパン−1−チオール(チッソ株式会社)0.23部(1.2ミリモル部)及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル10×10−3部(0.06ミリモル部)を、メチルアルコール25部に溶解した後、アルゴン雰囲気下、還流温度で24時間反応させて、本重合性化合物(L);C-SO-C-OCH-C-CHCHSCHCHCHSi(OCHを含むメチルアルコール溶液を得た。なお、このメチルアルコール溶液の一部を濃縮して、H−NMR分析により本重合性化合物(L)の化学構造を確認した{7.95、7.16(d、4H、-C-OCH-C-)、7.35、7.25(d、4H、-C-OCH-C-)、5.15(s、2H、-OC-)、3.57(s、9H、-Si-(OC、2.72−2.95(m、4H、-C-C-S-CHCHCH-)、2.57(t、2H、-S-CCHCH-Si(OCH)、1.67−1.78(m、2H、-S-CHCH-Si(OCH)、0.74(t、2H、-S-CHCH-Si(OCH}。
【0070】
使用例13
使用例10同様の操作で得た重合性化合物(J)1.9部(3.6ミリモル部)、3−(トリメトキシシリル)プロパン−1−チオール(チッソ株式会社)0.7部(3.6ミリモル部)及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル30×10−3部(0.18ミリモル部)を、メチルアルコール25部に溶解した後、アルゴン雰囲気下、還流温度で24時間反応させて、本重合性化合物(M);C-CHCH-SO-C-OCH-C-CHCHSCHCHCHSi(OCHを含むメチルアルコール溶液を得た。なお、このメチルアルコール溶液の一部を濃縮して、H−NMR分析により本重合性化合物(M)の化学構造を確認した{7.85、7.12(d、4H、-C-OCH-C-)、7.35、7.12(d、4H、-C-OCH-C-)、5.12(s、2H、-OC-)、3.57(s、9H、-Si-(OC、3.24−3.34(m、2H、CCH-SO-C-)、2.72−2.95(m、4H、-C-C-S-CHCHCH-)、2.57(t、2H、-S-CCHCH-Si(OCH)、2.20−2.45(m、2H、CCH-S-C-)、1.67−1.80(m、2H、-S-CHCH-Si(OCH)、0.76(t、2H、-S-CHCH-Si(OCH}。
【0071】
使用例14
(1)アクリル酸4−ヒドロキシブチル(東京化成工業株式会社)10.0部(69.4ミリモル部)、脱水ピリジン(ナカライテスク株式会社)11.0部(139.2ミリモル部)を脱水THF100mlに溶かし、10℃以下にて4−(クロロメチル)ベンゾイルクロリド(東京化成工業株式会社)13.7部(72.5ミリモル部)を滴下した。滴下終了後、室温(約25℃)に戻しそのまま24時間撹拌した。反応終了後、氷水の中へ投入しヘキサンで抽出した。ヘキサン層を1N塩酸水、水、1N水酸化ナトリウム水溶液及び水による洗浄を経たあとへキサンを除去することにより液体の中間体(N’);ClCH-C-COO-CHCHCHCH-OC
OCH=CHを19.8部得た。中間体(N’)の化学構造はH−NMR分析により確認した{8.03、7.46(d、4H、ClCH-C-COO-)、6.41(d、1H、-CH=C)、6.12(dd、1H、-C=CH)、5.83(d、1H、-CH=C)、4.61(s、2H、ClC-C-、4.37(t、ClCH-C-COO-CCHCHCH-OCOCH=CH、4.24(t、ClCH-C-COO-CHCHCH-OCOCH=CH、1.80−1.95(m、ClCH-C-COO-CHCH-OCOCH=CH)}。
(2)実施例1で得た本発明の化合物(1)2.68部(7.8ミリモル部)をジメチルスルホキサイド50部に溶かし水酸化ナトリウム(ナカライテスク株式会社)0.3部を溶かした水(4部)を加え均一になるまで室温(約25℃)で撹拌した。次いで(1)で得た中間体(N’)2.3部(7.8ミリモル部)を加えて室温(約25℃)で1日間撹拌した。反応溶液を水の中へ投入し生じた沈殿をろ過乾燥し、ヘキサンで再結晶することにより、本発明の重合性化合物(N);C-S-C-OCH-C-COO-CHCHCHCH-OCOCH=CHを3.4部得た。本重合性化合物(N)の化学構造は、H−NMR分析により確認した{8.06、7.57(d、4H、-OCH-C-COO-)、7.50,6.99(d、4H、-S-C-OCH-)、6.41(d、1H、-CH=C)、6.12(dd、1H、-C=CH)、5.83(d、1H、-CH=C)、5.15(s,2H、-C-OC-C-)、4.37(t、2H、-OCH-C-COO-CCHCHCH-OCOCH=CH)、4.24(t、2H、-OCH-C-COO-CHCHCH-OCOCH=CH)、1.80−1.95(m、4H、-OCH-C-COO-CHCH-OCOCH=CH)}。120.9
【0072】
使用例15
実施例2で得た本発明の化合物(2)3.10部(8.3ミリモル部)をジメチルスルホキサイド50部に溶かし水酸化ナトリウム(ナカライテスク株式会社)0.4部を溶かした水(4部)を加え均一になるまで室温(約25℃)で撹拌した。次いで使用例14の(1)で得た中間体(N’)2.47部(8.3ミリモル部)を加えて室温(約25℃)で1日間撹拌した。反応溶液を水の中へ投入し生じた沈殿をろ過乾燥し、ヘキサンで再結晶することにより、本重合性化合物(O);CCHCH-S-C-OCH-C-COO-CHCHCHCH-OCOCH=CHを3.8部得た。本重合性化合物(O)の化学構造は、H−NMR分析により確認した{8.06、7.50(d、4H、-OCH-C-COO-)、7.37,6.99(d、4H、-S-C-OCH-)、6.41(d、1H、-CH=C)、6.12(dd、1H、-C=CH)、5.82(d、1H、-CH=C)、5.13(s,1H、-C-OC-C-)、4.37(t、2H、-OCH-C-COO-CCHCHCH-OCOCH=CH)、4.24(t、2H、-OCH-C-COO-CHCHCH-OCOCH=CH)、3.20−2.95(m、2H、CCH-S-)、2.24−2.48(m、2H、CCH-S-)、1.80−1.95(m、-OCH-C-COO-CHCH-OCOCH=CH)}。
【0073】
撥水性評価結果1
使用例で得た重合性化合物を用いて、以下のようにしてスライドガラスの表面(重合性基がトリアルコキシシリル基の場合)、又は木綿の表面(重合性基が(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基又はビニル基の場合)を改質し、接触角を測定した。
【0074】
(A)重合性基がトリアルコキシリル基の場合
評価試料の重合性化合物を含む溶液(メチルアルコール、エチルアルコール、THF、MEKなど)15部、エタノール30部、水3部及び酢酸0.3部を均一混合した後、約25℃で2日間攪拌して、処理液(表面処理剤)を調製した。スライドガラス{76mm、26mm、1.2mm;水酸化ナトリウムの2−プロパノール飽和溶液に17時間浸漬した後、水洗し、乾燥(60℃、2時間)したもの}を処理液(表面処理剤)に浸漬し、スライドガラスを取り出した後、液切りをし、130℃10分間加熱処理して、表面改質スライドガラスを得た。
【0075】
(B)重合性基が(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基又はビニル基の場合
評価試料をTHFで10%溶液に調整した後、アルゴンガス雰囲気下、ラジカル開始剤(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル)を加えて24時間還流しながら重合を行い、THF又は酢酸エチルで10倍に希釈して処理液(表面処理剤)を調製した。
木綿布{35mm、50mm}を処理液に含浸し、液切りをし、風乾して表面改質木綿布を得た。
接触角測定装置{協和界面化学株式会社、DROP MASTER 500、液適量2μL、測定間隔1000ms、測定回数30回}で、表面改質スライドガラスの表面の任意の5箇所について、接触角(度)を測定し、平均値を算出した。これらの結果を表1に示した。なお、表面改質していないスライドガラスの表面について、同様に接触角(度)を測定し、これらの平均値をブランク1として、表1に示した。また、表面改質していない木綿布の表面について、同様に接触角(度)を測定し、これらの平均値をブランク2として、表1に示した。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明によるフッ素化合物は、人体に安全な撥水撥油あるいは防汚剤や界面活性剤などに利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるフッ素化合物。

Rf−(CH−X−Y−Z (1)

{式中Rfは炭素数1〜7のパーフルオロアルキル基、nは0〜5の整数であり、Xは−S−、−SO−または−SO−を表し、Yは炭素数1〜10のアルキレン基または芳香族基を表し、Zは芳香族性水酸基、芳香族性アミノ基、カルボキシル基あるいはスルホン酸基(及びこれらの官能基の中和塩又はエステルを含む)を表す。}

【請求項2】
式(2)で表される化合物

Rf−(CH−I (2)

(式中Rfは炭素数1〜7のパーフルオロアルキル基、nは0〜5の整数であり、Iはヨウ素原子を表す。)と

式(3)で表される化合物

HS−Y−Z (3)

{式中、HSはチオール基を表し、Yは炭素数1〜10のアルキレン基または芳香族基を表し、Zは芳香族性水酸基、芳香族性アミノ基、カルボキシル基あるいはスルホン酸基(及びこれらの官能基の中和塩又はエステルを含む)を表す。}を反応させることを特徴とする、

式(4)で表されるフッ素化合物お製造方法。

Rf−(CH−X−Y−Z (4)

{式中Rfは炭素数1〜7のパーフルオロアルキル基、nは0〜5の整数であり、Xは−S−、−SO−または−SO−を表し、Yは炭素数1〜10のアルキレン基または芳香族基を表し、Zは芳香族性水酸基、芳香族性アミノ基、カルボキシル基あるいはスルホン酸基(及びこれらの官能基の中和塩又はエステルを含む)を表す。}


【公開番号】特開2011−20924(P2011−20924A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164335(P2009−164335)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(591167430)株式会社KRI (211)
【Fターム(参考)】