説明

フッ素化合物含有ガスの処理方法及び処理装置

【課題】被処理ガス中に微量含有するフッ素化合物を効率良く除去する。
【解決手段】被処理ガスに微量含まれるフッ素化合物を吸着材によって濃縮し、吸着材の吸着能力が飽和に達した時点で脱離させ、後段に設置したフッ素化合物処理装置でフッ素化合物を処理する。吸着塔の下流部にはフッ素化合物の検知装置を設置し、吸着材で吸着しきれずに破過したフッ素化合物濃度をモニタリングし、フッ素化合物の破過が確認された後にフッ素化合物処理装置及びフッ素化合物を脱離させるために流入するガスを加熱するガス加熱装置の加熱を開始する。加熱時間を制御することによって過剰なランニングコストを削減できる。また、ガス加熱装置は急速加熱することを特徴とし、吸着したフッ素化合物を急速加熱により迅速に脱離させることで吸着・脱離のサイクルを加速し、充填吸着材量を少なくできるため、装置のコンパクト化が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素化合物を含むガスを処理するためのガス処理方法と処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体或いは液晶の製造プロセスでは、エッチング或いはクリーニングを行うにあたり、通常、フッ素化合物ガス、特にパーフルオロコンパウンド(Perfluorocoupound、以下
PFCという) を用いる。PFCの一例を示すと、CF4,C26,C38,CHF3
48,SF6 、及びNF3等がある。PFCは二酸化炭素(CO2)の数千倍から数万倍の赤外線吸収度を持つ地球温暖化ガスであり、2005年2月に発行された京都議定書で全世界的に排出が制限された。エッチング或いはクリーニング工程では、導入したPFCの一部しか使用されず、大部分は排ガスとして排出される。また、近年、金属アルミの精錬工程で微量のPFCが生成し、大気に排出されていることが明らかになった。このように大気に排出されるPFCは除去或いは分解してから排気されることが必要になる。
【0003】
PFCの処理方法としては、触媒法,燃焼法,プラズマ法,薬剤法等が知られている。現在はメンテナンスが簡便で、ランニングコストが低く、PFC分解率が高いという点から、触媒法を用いたPFC分解方法が普及しはじめている。
【0004】
特許文献1では、数100ppm オーダーのフロンを濃縮・分解する方法としてガス中に微量含まれるフロンを吸着によって濃縮し、脱離させた後に触媒によって分解する技術が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平3−106419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、アルミ精錬から排出されるPFCは数ppm〜数10ppmと非常に微量である。したがって、同じシステムを導入しても吸着・脱離に時間がかかる。そのため、吸着・脱離の間、後段のPFC分解装置の触媒槽を常に一定の温度に保っていては多量の熱エネルギーが浪費され、PFC処理量に対するランニングコストが高くなる。また、特許文献1には、システムの詳細は提案されていない。
【0007】
そこで本発明の目的は、上記課題を解決する半導体,液晶製造工場及びアルミ精錬工場から排出されるフッ素化合物を含むガスを処理するための処理方法と処理装置、特にPFC分解装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の特徴は、フッ素化合物分解装置の加熱装置を制御し、フッ素化合物の捕捉と脱離を切替つつ、フッ素化合物分解装置にフッ素化合物を供給する際のみ加熱装置を稼動させるシステムを採用したことにある。フッ素化合物分解装置の加熱装置は、フッ素化合物分解装置に流入するガスを加熱する装置や、分解装置そのものを加熱する装置が上げられる。特に、被処理ガスに微量含まれるフッ素化合物を吸着材によって濃縮し、吸着材の吸着能力が飽和に達した時点で脱離させ、後段に設置したフッ素化合物処理装置でフッ素化合物を処理する。吸着塔の下流部にはフッ素化合物の検知装置を設置し、吸着材で吸着しきれずに破過したフッ素化合物濃度をモニタリングし、フッ素化合物の破過が確認された後にフッ素化合物処理装置及びフッ素化合物を脱離させるために流入するガスを加熱するガス加熱装置の加熱を開始する。加熱時間を制御することによって過剰なランニングコストを削減できる。また、ガス加熱装置は急速加熱することを特徴とし、吸着したフッ素化合物を急速加熱により迅速に脱離させることで吸着・脱離のサイクルを加速し、充填吸着材量を少なくできるため、装置のコンパクト化が可能になる。
【0009】
本発明は、フッ素化合物を含む被処理ガス中のフッ素化合物を吸着するフッ素化合物吸着工程と、吸着したフッ素化合物を脱離させるためにフッ素化合物吸着工程に供給するガスを加熱するガス加熱工程1と、脱離したフッ素化合物を処理するフッ素化合物処理工程と、前記フッ素化合物処理工程に流入するガスを加熱するガス加熱工程2を有するフッ素化合物含有ガスの処理方法において、フッ素化合物吸着工程の下流部にてフッ素化合物を検知し、フッ素化合物が検知されたのちにフッ素化合物処理工程,ガス加熱工程の加熱を開始することを特徴とするフッ素化合物含有ガスの処理方法にある。
【0010】
また、フッ素化合物を含む被処理ガス中のフッ素化合物を吸着するフッ素化合物吸着装置と、吸着したフッ素化合物を脱離させるためにフッ素化合物吸着装置に供給するガスを加熱するガス加熱装置1と、脱離したフッ素化合物を分解するフッ素化合物処理装置と、前記フッ素化合物処理装置に流入するガスを加熱するガス加熱装置2を有するフッ素化合物含有ガスの処理装置において、フッ素化合物吸着装置の下流部にフッ素化合物検知装置を備える。フッ素化合物検知装置で、所定量のフッ素化合物が検知された時点でフッ素化合物処理装置,ガス加熱装置の加熱を開始し、フッ素化合物含有ガスを処理する装置である。フッ素化合物の捕捉と脱離を制御することにより、フッ素化合物を濃縮・分解することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低濃度のフッ素化合物を効率良く除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の特徴は、被処理ガスに含まれるフッ素化合物を捕捉するフッ素化合物捕捉装置と、捕捉装置の後流でフッ素化合物の量または濃度を検知するガス検知装置を有しており、ガス検知装置で所定量を検知した場合にフッ素化合物捕捉装置に加熱したガスを供給する第一のガス加熱装置または前記捕捉装置を加熱する第一の加熱装置を有する点である。
【0013】
このように装置を使用することにより、フッ素化合物を濃縮して分解することができ、分解効率を上げると共に、分解時の加熱するエネルギーを減少させたり、分解に使用する装置・触媒の劣化を防止できる。
【0014】
同様にガス検知装置に基づき、フッ素化合物処理装置に流入するガスを加熱する第二の加熱装置や、フッ素化合物分解触媒を加熱してもよい。
【0015】
尚、加熱装置によってガスは1分間に1000度以上の急速加熱をされることが好ましい。
【0016】
本発明の処理方法および処理装置は、広くフッ素化合物含有ガスの処理に適用できる。特にPFCの処理に効果的である。
【0017】
PFCの濃縮方法の一つに吸着材による吸着法がある。しかし、PFCは他の媒体に吸着しにくいため、吸着材量を多く充填する必要がある。したがって、装置が大型化する。装置を小型化させるためには、少量の吸着材で、吸着・脱離のサイクルを迅速に行うことが可能なシステムを開発することが有効である。また、同時に、排ガスにごく微量含まれる地球温暖化ガスであるPFCを効率良く処理し、且つ、装置のランニングコストを低減することができる。
【0018】
図1は、本発明の処理方法の一例を示したシステムフローである。本システムはフッ素化合物吸着工程,フッ素化合物検知工程,フッ素化合物処理工程,ガス加熱工程,酸性ガス除去工程から構成される。
【0019】
アルミ精錬工場等のフッ素化合物を使用する工場から排出されたガス中に含まれるごく微量のフッ素化合物は、フッ素化合物吸着工程で吸着される。時間が経つにつれフッ素化合物吸着材で吸着できなかったフッ素化合物が破過する。破過すると、出口のフッ素化合物濃度は徐々に高くなるので、破過したフッ素化合物をフッ素化合物吸着工程の下流部に設置したフッ素化合物検知工程で検知する。
【0020】
フッ素化合物が破過したらフッ素化合物処理工程,ガス加熱工程の加熱を開始する。ガス加熱工程で加熱されたガスがフッ素化合物吸着工程を通過することで吸着していたフッ素化合物が脱離しする。また、加熱されたフッ素化合物がフッ素化合物処理工程に送られ、分解除去される。フッ素化合物の分解によって生成したフッ化水素,SOx,NOx等の酸性ガスは酸性ガス除去工程で除去され、無害化された後排出される。
【0021】
フッ素化合物吸着工程には、吸着塔を複数個設置することによりフッ素化合物の濃縮を常時行うことができる。二塔の吸着塔を備えることが好ましい。二塔設置することにより一塔で吸着,脱離処理が終わり、吸着塔を冷却する間、残りの一塔で吸着処理を実施することができる。吸着塔の設置数は三搭以上であってもよい。
【0022】
フッ素化合物は吸着材によって吸着されることが好ましく、吸着材としては吸着対象とするPFCの分子径よりも細孔径が十分に大きいものが好ましい。例えば、CF4 の分子径は約3.6Å であるので、それ以上の細孔径を有する材料が好ましい。吸着材として活性炭,ゼオライト,メソポーラスシリカが使用できる。この中でも特にメソポーラスシリカは2−50nmのメソ孔を有し、細孔容積が大きいため好ましい材料である。また、吸着は常温(25℃)で実施することが好ましい。
【0023】
吸着塔の下流部に設置し、破過したフッ素化合物を検知するガス分析計の例としては、レーザー式ガス分析計,ガスクロマトグラフィー(GC),フーリエ変換赤外分光高度計(FT−IR)がある。本発明に適した分析計は、測定時間が短いものである。また市販のガス検知センサーも使用できる。検知装置は各吸着塔の下部に一つずつ設置するのが好ましいが、高価な検知装置を使用する場合等は吸着塔からのガスが混合する部分に一つ設置してもよい。
【0024】
フッ素化合物検知工程でフッ素化合物の破過が確認されたら吸着塔のラインを切り替え、フッ素化合物分解触媒を加熱する加熱装置の加熱を開始する。また、吸着したフッ素化合物を吸着材から脱離させるためのガスの供給及びそのガスを加熱するための加熱装置の加熱を開始する。
【0025】
なお、あらかじめ吸着材へのフッ素化合物吸着容量やガスの処理量を把握しておき、ある一定時間吸着処理をしたらそれぞれの加熱装置の加熱及びガス供給を開始するというシステムでもよい。
【0026】
触媒加熱装置,ガス加熱装置の加熱開始時間をずらすことが望ましい。フッ素化合物の分解温度は約750℃であり、フッ素化合物の脱離温度は約100〜200℃である。したがって、同時に加熱を開始し、PFCが脱離して触媒反応槽に達しても、触媒温度が低いと分解しないためである。フッ素化合物が破過したら、触媒加熱装置のみを加熱し、触媒反応槽の温度が十分高くなったらガス加熱装置の加熱を開始するというシステムも有効である。低濃度のフッ素化合物を分解するために常時加熱するのではなく、低濃度のフッ素化合物を濃縮し、脱離させる際のみ加熱することにより過剰なランニングコストを削減できる。
【0027】
フッ素化合物処理工程の前段にバッファーを設置することが望ましい。フッ素化合物の破過が始まってもフッ素化合物処理工程の触媒温度が低いとフッ素化合物は処理されずに排出される。フッ素化合物処理工程の前段にバッファーを設置することで触媒が所定の温度になるまで触媒へのフッ素化合物の流入を抑制できる。バッファーの中にフッ素化合物吸着材を充填することがさらに望ましい。バッファー以外でも、触媒へのフッ素化合物流入を抑制できる方法ならば何でもよい。
【0028】
フッ素化合物を脱離させるために供給するガスを加熱する加熱装置は急速加熱が可能であることが好ましい。急速加熱することで迅速にフッ素化合物を脱離させ、次の吸着のために冷却させる時間を十分に確保できるためである。急速加熱が可能な方法の一つとしてマイクロ波加熱がある。これは物質を構成する電子とマイクロ波の電界・磁界作用で発熱させる方法である。マイクロ波を照射させることで加熱させることができる固体は種々あり、例えばCuOなら30秒で約700℃まで、Cなら1分間で約1200℃まで昇温が可能である。加熱媒体及びマイクロ波の照射量はフッ素化合物の脱離温度に即して決めることが望ましい。マイクロ波加熱以外でもガスを急速加熱できる方法ならば何でもよい。
【0029】
触媒を使用するフッ素化合物分解工程では、フッ素化合物は加水分解によって分解される。フッ素化合物が加水分解されると酸性ガスであるフッ化水素やSOx,NOxが生成する。生成した酸性ガスはPFC分解工程の後段の酸性ガス除去工程に送られて除去される。
【0030】
フッ素化合物であるPFCの加水分解反応における代表的な反応式を以下に示す。
【0031】
CF4+2H2O → CO2+4HF (式1)
26+3H2O → CO+CO2+6HF (式2)
CHF3+H2O → CO+3HF (式3)
SF6+3H2O → SO3+6HF (式4)
2NF3+3H2O → NO+NO2+6HF (式5)
以下、実施例にて本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0032】
図2に本発明の処理装置の一例を示す。
【0033】
本例では湿式処理装置として、フッ素化合物吸着装置120の前段にスプレー塔110を用いている。フッ素化合物含有ガス100は湿式処理装置であるスプレー塔110によってガス中に含まれる固形物や酸性ガスが除去される。スプレー塔以外の湿式処理装置として、棚段型気液接触装置,スクラバなどがある。いずれも気液の接触が十分であることが望ましい。また、装置の内径が小さいと、装置内のガス線速度が大きくなり、ガスに同伴するミスト量も多くなる。したがって、装置内のガス流速が10m/min以上18m/
min 以下となるように設計することが望ましい。また、湿式処理装置への流入水として、水道水或いは装置内の循環水を使用することができるが、循環水のみを使用すると、循環水に溶解した固形物や酸性成分がミストとして多く排出される可能性がある。したがって、充填塔やスプレー塔に設置する最上段のノズルからは水道水を流入し、棚段,スクラバからの流入水には水道水も流入させ、流入水中の珪素化合物濃度を低くすることが望ましい。また、流入水としては、水道水,循環水以外に、アルカリ水溶液等を用いてもよい。
【0034】
また、スプレー塔110の下流部には吸湿材200を設置し、湿式処理後のガス中の水分を完全に除去する。ガス中に水分が含まれていると吸着材種によっては選択的に水分を吸着し、フッ素化合物を吸着しないことが起こるからである。
【0035】
吸着塔120は二塔設置し、流入ガス流路の切り替えを電磁弁300で操作する。
【0036】
吸着塔の下流部に、フッ素化合物検知装置130を設置し、フッ素化合物の破過を検知する。フッ素化合物検知装置130で得られる結果が所定の濃度・化合物量よりも大きい場合には、適宜触媒式反応装置の予熱装置141,触媒加熱装置142及びガス加熱装置161での加熱を開始する。
【0037】
吸着塔の後段で、触媒式反応装置の前段に吸着材を充填したバッファー400を設置し、触媒反応装置の触媒が所定温度になるまで触媒へのフッ素化合物流入を抑制する。
【0038】
フッ素化合物吸着装置からフッ素化合物を脱離させるためには、窒素101を導入する。この窒素101を加熱するために配管途中に加熱室160を設置し、加熱室160は外側から急速加熱が可能な加熱装置161によって加熱される。
【0039】
また、予熱装置141を備えた触媒式反応装置として反応塔140を設置し、反応塔
140の下部にはフッ素化合物分解触媒143を設置している。フッ素化合物分解触媒は反応塔140の外側から触媒加熱装置142によって加熱される。
【0040】
触媒式反応装置の予熱装置141,触媒加熱装置142及びガス加熱装置161の運転は、フッ素化合物の破過が検知された場合に開始される。この際、まず触媒式反応装置の予熱装置141及び触媒加熱装置142の運転を開始し、触媒143の温度が所定の温度(例えば約700℃)になったらガス加熱装置161の運転を開始することが望ましい。加熱開始時間をずらすことで脱離したPFCが確実に分解されるためである。触媒の温度が所定温度に達したら、ガス加熱装置161の運転を開始し、窒素101を急速加熱する。ガス加熱装置の加熱温度は吸着材からのフッ素化合物脱離温度、または流入するフッ素化合物含有ガス100の流入量によって設定する必要がある。
【0041】
加熱された窒素101は吸着塔120に供給され、吸着材からフッ素化合物を脱離させる。また、加熱された窒素101によってバッファー400中に充填した吸着材に吸着したフッ素化合物も脱離させることができる。
【0042】
反応塔140の下流には冷却室150を設置している。その下流に酸性ガス除去装置としてスプレー塔170を設置し、酸性ガス除去後のガスはエジェクタまたはブロア等の排気装置180を用いて排出する。排気装置は常に装置内を負圧に維持し、差圧の上昇が起こらないようにするために設置する。
【0043】
フッ素化合物吸着装置120から脱離したフッ素化合物は触媒143で分解される。フッ素化合物であるPFCの分解反応は加水分解であるため、反応水103を反応塔140上部の予熱槽内で気化させて、水蒸気として触媒143に通気させ、(式1)〜(式5)の反応によって分解する。なお、(式2)および(式3)の反応ではCOが生成するため、空気102を流入させることによってCOをCO2 にすることができる。また、CO酸化触媒をフッ素化合物分解触媒の後段に設置すれば、反応塔内でCOをCO2 に酸化できる。PFCなどのフッ素化合物を加水分解すると酸性ガスであるフッ化水素,SOx,
NOxが生成する。これらの酸性ガスは酸性ガス除去装置であるスプレー塔170で水等により洗浄され、排ガスから除去されて、その他のガスが排気される。
【0044】
フッ素化合物の分解に使用される触媒は、加水分解用あるいは酸化分解用の触媒であり、例えばAlとZn,Ni,Ti,Fe,Sn,Co,Zr,Ce,Si,W,Pt,
Pdから選ばれた少なくとも1種を含む触媒である。触媒成分は酸化物,金属,複合酸化物などの形で含まれる。特にAlとNi,Zn,Ti,Wから選ばれた少なくとも1種との触媒が高いフッ素化合物分解性能を持つので好ましい。
【0045】
フッ素化合物の加水分解に際して反応塔に添加される水蒸気の量は、加水分解に必要とされる理論水蒸気量の2〜50倍、通常は3〜30倍が好ましい。また、捕捉剤により珪素化合物を加水分解除去する場合は、フッ素化合物の加水分解に必要とされる理論水蒸気量よりも多く供給することが望ましく、2〜60倍、通常は5〜50倍が好ましい。
【0046】
フッ素化合物の加水分解温度は500〜850℃が好ましい。フッ素化合物濃度が高い場合には反応温度を高めにし、フッ素化合物濃度が1%以下の場合には反応温度を低めにするのがよい。反応温度が850℃よりも高くなると触媒が劣化しやすくなり、反応塔材料も腐食しやすくなる。反対に反応温度が500℃よりも低くなるとフッ素化合物の分解率が低下する。
【0047】
本装置例では反応塔140の下流に冷却室150を設置している。冷却室150ではノズル151により例えば水を噴霧してガス温度を所定温度に下げる。水冷方式あるいはガス冷却方式の一般的な熱交換器を使用してもよい。また、ガス中に圧縮空気などを導入して所定温度に制御してもよい。
【0048】
酸性ガス除去装置としては一般的な湿式及び乾式除去装置を使用することができる。湿式の例としてはスプレー塔のほか、充填塔,スクラバ,棚段型気液接触装置がある。また、乾式の例として、酸性ガス除去剤による固定層,移動層,流動層型乾式除去装置がある。また、バグフィルタ方式もよい。酸性ガス除去剤としては、アルカリ金属,アルカリ土類金属の塩基性塩、例えば水酸化カルシウム,水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,水酸化マグネシウム,炭酸水素ナトリウム,炭酸ナトリウム,炭酸カルシウム,酸化カルシウムが使用できる。
【実施例2】
【0049】
本実施例では、吸着材の性能を評価した。試験装置の構成を図3に示す。PFCの一つであるCF4を吸着材に通気させ、吸着材出口ガス中のCF4 濃度をモニタリングして検討した。
【0050】
2,PFCとしてCF4 を流量調節器12で調節して反応管20に供給した。供給量は2slm とし、CF4 を200ppmとした。この反応ガスをCF4 吸着材23と空間速度800毎時で接触させた。
【0051】
このとき、吸着材23としてはメソポーラスシリカ,ゼオライト,ゼオライトにCuを担持したものを用いた。吸着材の充填量は150mlとした。反応管20は内径47mm,長さ450mmのインコネル製とした。
【0052】
ゼオライトにCuを担持した理由は細孔径を制御するためである。吸着材は粉末状のものを成型して使用し、粒径は2.0〜4.5mmとした。吸着材を通過したガス中のCF4 濃度を気体用FT−IRで測定した。吸着性能はそれぞれの吸着材のCF4 吸着量で比較した。CF4 吸着量は次式により求めた。
【0053】
【数1】

【0054】
各吸着材のCF4吸着性能を図4に示す。それぞれの吸着材へのCF4吸着量は、メソポーラスシリカで8.2×10-3mmol、ゼオライトで1.1×10-3mmol、Cu/ゼオライトで4.6×10-4mmol であった。メソポーラスシリカが最も高い吸着性能を示した。メソポーラスシリカ,ゼオライトの平均細孔径はそれぞれ41Å,7Åであり、メソポーラスシリカの方が大きい細孔径を有する。Cu/ゼオライトではゼオライトよりもさらに細孔径が小さく約5Åである。また、CF4 の平均分子径は約3.6Åであり、ゼオライト,Cu/ゼオライトの細孔径よりも小さいが、約2倍程の細孔径には入りにくいと推定された。したがって、CF4 の分子径の10倍以上大きな細孔を有するメソポーラスシリカの方がCF4 吸着には適していると推定される。本実施例ではCF4 で吸着性能を比較したが、使用するフッ素化合物によって最適な吸着材を選定することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明により、微量のフッ素化合物が排出されるラインにおいてフッ素化合物を効率良く分解することができ、フッ素化合物分解装置の小型化及びランニングコストの低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の処理方法の一例を示すシステムフロー図である。
【図2】本発明の処理装置の一例を示すシステム構成図である。
【図3】吸着材の性能の評価実験に使用した装置の概略図である。
【図4】吸着材の吸着効果を示す試験結果図である。
【符号の説明】
【0057】
10…窒素ガス、11…PFCガス、12…流量調節器、20…反応管、23…フッ素化合物吸着材、30…気体用FT−IR、100…フッ素化合物含有ガス、101…窒素、102…空気、103…反応水、110…スプレー塔、111,171…スプレーノズル、120…フッ素化合物吸着装置、130…フッ素化合物検知装置、140…反応塔、141…予熱装置、142…触媒加熱装置、143…フッ素化合物分解触媒、150…冷却室、151…ノズル、160…加熱室、161…ガス加熱装置、170…酸性ガス除去装置(スプレー塔)、180…排気装置、200…吸湿材、300,301…電磁弁、
400…バッファー。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化合物を含む被処理ガス中のフッ素化合物を吸着するフッ素化合物吸着工程と、
フッ素化合物吸着工程に供給するガスを加熱し吸着したフッ素化合物を脱離させる第一のガス加熱工程と、
前記脱離したフッ素化合物を分解するフッ素化合物処理工程と、を有するフッ素化合物含有ガスの処理方法において、
前記フッ素化合物吸着工程の下流側でフッ素化合物を検知する工程を有し、
前記検知されたフッ素化合物の量に基づき前記第一のガス加熱工程の加熱を開始することを特徴とするフッ素化合物含有ガスの処理方法。
【請求項2】
請求項1において、前記脱離したフッ素化合物を含むガスを前記フッ素化合物処理工程に流入する前に加熱する第二のガス加熱工程を有することを特徴とするフッ素化合物含有ガスの処理方法。
【請求項3】
請求項1または2において、前記フッ素化合物はPFCを含むことを特徴とするフッ素化合物含有ガスの処理方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記フッ素化合物処理工程が触媒式分解工程であるフッ素化合物含有ガスの処理方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記フッ素ガス吸着工程は、複数のフッ素ガス吸着塔を切り替えて使用することを特徴とするフッ素化合物含有ガスの処理方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、
前記第一または第二のガス加熱工程は、1000℃/分以上で急速加熱する工程であることを特徴するフッ素化合物含有ガスの処理方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記検知されたフッ素化合物の量に基づきフッ素化合物吸着工程の経路変更または停止を行うことを特徴とするフッ素化合物含有ガスの処理方法。
【請求項8】
請求項2において、前記第二の加熱工程の開始後に、前記第一の加熱工程を開始することを特徴とするフッ素化合物含有化合物ガスの処理方法。
【請求項9】
フッ素化合物を含む被処理ガス中のフッ素化合物を吸着するフッ素化合物吸着装置と、前記フッ素化合物吸着装置を加熱し、前記吸着したフッ素化合物を脱離させる第一の加熱装置と、前記脱離したフッ素化合物を分解するフッ素化合物処理装置と、前記フッ素化合物処理装置に流入するガスを加熱する第二の加熱装置を有するフッ素化合物含有ガスの処理装置であって、
前記フッ素化合物吸着装置の下流部に配置されたフッ素化合物検知装置と、前記フッ素化合物検知装置が所定量のフッ素化合物を検知して前記加熱装置の加熱を制御する加熱制御装置を有することを特徴とするフッ素化合物含有ガスの処理装置。
【請求項10】
請求項9において、前記第一の加熱装置は、前記フッ素化合物吸着装置に流入するガスを加熱する装置であることを特徴とするフッ素化合物含有ガスの処理装置。
【請求項11】
請求項9または10において、前記第一または第二の加熱装置が急速加熱装置であることを特徴とするフッ素化合物含有ガスの処理装置。
【請求項12】
請求項9ないし11のいずれかにおいて、前記フッ素化合物分解装置が触媒式分解装置であることを特徴とするフッ素化合物含有ガスの処理装置。
【請求項13】
請求項9ないし12のいずれかにおいて、前記フッ素化合物分解装置の後流側に酸性ガス除去装置を備えたことを特徴とするフッ素化合物含有ガスの処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−301467(P2007−301467A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−132068(P2006−132068)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】