説明

フッ素化水溶性共重合体

基材に撥水性、撥油性、防汚性、汚れ除去性、耐汚染性、および染み除去性を付与する方法であって、
式1:
【化1】


(式中、
fは、任意に少なくとも1個の酸素原子で中断されている炭素数約2〜約8の直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキル基、又はその混合であり、
Qは、炭素数1〜約15のアルキレン、炭素数2〜約15のヒドロキシアルキレン、−O(Cn2n)−、−(CH2CF2m(CH2n−、−CONR1(Cn2n)−、−(Cn2n)OCONR1(Cn2n)−、(−CONR1CH22CH−、−SO2N(R1)(Cn2n)−、又は−(Cn2n)SO2N(R1)(Cn2n)−であり、
各R1は、独立してH又は炭素数1〜約4のアルキルであり、
各nは、独立して1〜約15であり、
各mは、独立して1〜約4であり、
Zは、水素又はメチルであり、
xは、正の整数であり、
yは、0又は正の整数であり、
tは、正の整数であり、
Mは、H+、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、又はアンモニウムである)の繰り返し単位を任意の配列で有する共重合体を含む組成物と基材を接触させる工程を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理される基材に撥水性、撥油性、防汚性(soil resistance)、汚れ除去性(soil release)、耐汚染性(stain resistance)、および染み除去性(stain release)を付与するフッ素化水溶性(メタ)アクリレート共重合体で基材を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々なフッ素化ポリマー組成物が、基材に表面効果を付与する処理剤として有用であることが知られている。表面効果としては、撥水撥油性、防汚性、汚れ除去性、耐汚染性および染み除去性などが挙げられ、これらは、繊維基材および硬質表面などの他の基材に特に有用である。このような処理剤の多くは、フッ素化ポリマー又はコポリマーである。
【0003】
基材に撥水撥油性を付与する処理剤として有用なほとんどの市販のフッ素化ポリマーは、所望の性質を付与するため、パーフルオロアルキル鎖の炭素数が8より多いことが圧倒的に多い。Hondaらは、Macromolecules(2005), 38(13), 5699−5705で、炭素数が8より多いパーフルオロアルキル鎖では、パーフルオロアルキル鎖の配向が平行な配置に維持されるが、炭素数がより少ないこのようなフルオロアルキル鎖では再配向が起こることを教示している。従って、炭素数6以下の短鎖フルオロアルキル基は、パーフルオロアルキル鎖が最表面に非常に整然と並ばないため、基材に表面効果を付与することに関して、従来、商業的に成功しなかった。
【0004】
米国特許第6,833,419号明細書は、アクリロイルジメチルタウリンおよび/又はアクリロイルジメチルタウレートと1種類以上の含フッ素化合物とのフリーラジカル共重合によって得られる水溶性又は水膨潤性共重合体を開示している。得られる共重合体は、増粘剤として有用である。しかし、この特許では基材に対する表面効果は開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
炭素数8以下のパーフルオロアルキル基を含有するフッ素化モノマーを使用しつつ、撥水性、撥油性、防汚性、汚れ除去性、耐汚染性、および染み除去性を含む表面効果、並びに他の効果を付与する水溶性ポリマー組成物で基材を処理する方法が必要とされている。本発明は、このような方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基材に撥水性、撥油性、防汚性、汚れ除去性、耐汚染性、および染み除去性を付与する方法であって、
式1:
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、
fは、任意に少なくとも1個の酸素原子で中断されている炭素数約2〜約8の直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキル基、又はその混合であり、
Qは、炭素数1〜約15のアルキレン、炭素数2〜約15のヒドロキシアルキレン、−O(Cn2n)−、−(CH2CF2m(CH2n−、−CONR1(Cn2n)−、−(Cn2n)OCONR1(Cn2n)−、(−CONR1CH22CH−、−SO2N(R1)(Cn2n)−、又は−(Cn2n)SO2N(R1)(Cn2n)−であり、
各R1は、独立してH又は炭素数1〜約4のアルキルであり、
各nは、独立して1〜約15であり、
各mは、独立して1〜約4であり、
Zは、水素又はメチルであり、
xは、正の整数であり、
yは、0又は正の整数であり、
tは、正の整数であり、
Mは、H+、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、又はアンモニウムである)の繰り返し単位を任意の配列で有する共重合体を含む組成物と基材を接触させる工程を含む方法を含む。
【0009】
本発明は、更に、撥水性、撥油性、防汚性、汚れ除去性、耐汚染性、および染み除去性を有する前述の式1の組成物で処理された基材を含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書では、商標は全て大文字で示す。
【0011】
本明細書で使用される「(メタ)アクリレート」の用語は、アクリレート又はメタクリレートを示す。
【0012】
本発明は、式1:
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、
fは、任意に少なくとも1個の酸素原子で中断されている炭素数約2〜約8の直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキル基、又はその混合であり、
Qは、炭素数1〜約15のアルキレン、炭素数2〜約15のヒドロキシアルキレン、−O(Cn2n)−、−(CH2CF2m(CH2n−、−CONR1(Cn2n)−、−(Cn2n)OCONR1(Cn2n)−、(−CONR1CH22CH−、−SO2N(R1)(Cn2n)−、又は−(Cn2n)SO2N(R1)(Cn2n)−であり、
各R1は、独立してH又は炭素数1〜約4のアルキルであり、
各nは、独立して1〜約15であり、
各mは、独立して1〜約4であり、
Zは、水素又はメチルであり、
xは、正の整数であり、
yは、0又は正の整数であり、
tは、正の整数であり、
Mは、H+、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、又はアンモニウムである)
の繰り返し単位を任意の配列で含む水溶性共重合体で基材を処理する方法を含む。
【0015】
ポリマーの配列としては、ランダム、統計、ブロック、マルチブロック、グラジエント、又は交互繰り返し単位が挙げられ、モノマーは、頭−頭であっても、又は尾−尾であってもよい。好ましくは、(メタ)アクリレート共重合体は、頭−尾配置である。
【0016】
式1では、xは好ましくは1〜約10,000、より好ましくは約1〜5000、より好ましくは約5〜約2000、又はこれらの混合であり;yは、好ましくは0〜約10,000、より好ましくは約1〜5000、より好ましくは約5〜約2000、又はこれらの混合であり、tは、好ましくは1〜約10,000、より好ましくは1〜5000、より好ましくは約5〜約2000、又はこれらの混合である。
【0017】
fは、任意に少なくとも1個の酸素原子で中断された炭素数約2〜約8の、より好ましくは炭素数約2〜約6の、より好ましくは炭素数約4〜約6の直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキル基、又はその混合である。典型的にはRfは、任意に1〜5個の酸素原子で中断されている。好適なRfの例としては、C613−、C49−、C37−、C49CH2CF2−、C37OCF2CF2−、C37OCHFCF2−、C37OCF(CF3)−、およびC37O−(CF(CF3)CF2O)kCFCF3)−(式中、kは1〜4である)が挙げられる。
【0018】
Qは、炭素数1〜約15のアルキレン、炭素数2〜約15のヒドロキシアルキレン、−O(Cn2n)−、−(CH2CF2m(CH2n−、−CONR1(Cn2n)−、−(Cn2n)OCONR1(Cn2n)−、(−CONR1CH22CH−、−SO2N(R1)(Cn2n)−、又は−(Cn2n)SO2N(R1)(Cn2n)−(式中、R1は、独立して、H、又は炭素数1〜約4のアルキルであり、nは、独立して1〜約15であり、mは、1〜約4である)である。好ましいQの例としては、−CH2CH2−、CH2CH(OH)CH2−、−O(Cn2n)−、−(CH2CF2mCH2CH2−、−CONHCH2CH2−、−CH2CH2O−CONHCH2CH2−、(−CONHCH22CH−、−SO2N(CH3)CH2CH2−、又は−SO2N(C25)CH2CH2−が挙げられる。
【0019】
−[Rf−Q−O−C(O)−C(CH3)−CH2x−の繰り返し単位、又は−[Rf−Q−O−C(O)−CH−CH2x−の繰り返し単位、又はこれらの混合は、共重合体の約10重量%〜約95重量%、好ましくは約30重量%〜約95重量%、より好ましくは約40重量%〜約80重量%で存在する。−[CH−CH2−C(O)−NH−C(CH32CH2SO3M]t−の繰り返し単位は、共重合体中に約10重量%〜約70重量%、好ましくは約15重量%〜約60重量%で存在する。−[CH2(O)CH−CH2−O−C(O)−C(CH3)−CH2y−の繰り返し単位は、0重量%〜約10重量%、好ましくは約0.5重量%〜約5重量%で存在する。
【0020】
式1の共重合体は、フッ素化(メタ)アクリルモノマーと他のモノマー(メタクリル酸グリシジルおよび2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸および/又はその金属塩を含む)の重合によって調製される。
【0021】
式Iのフッ素化(メタ)アクリレート共重合体は、フッ素化(メタ)アクリルモノマーと前述の他のモノマーのいずれかとの混合物のフリーラジカル開始重合によって、有機溶媒中で調製されるか、又は水に乳化される。本発明のフッ素化共重合体は、攪拌装置並びに外部加熱および冷却装置を備えた好適な反応容器内で前述のモノマーを有機溶媒又は水中で攪拌することによって製造される。フリーラジカル開始剤を添加し、温度を約20℃から約80℃に上昇させる。重合開始剤の例としては、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、又は2,2’−アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩が挙げられる。このタイプの開始剤は、E. I. du Pont de Nemours and Company(Wilmington, Delaware)によって「VAZO」の名称で市販されている。好適な重合調整剤又は連鎖移動剤の例としては、ドデシルメルカプタンがある。本発明の式Iの共重合体の調製に有用な好適な有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルイソブチルケトン、イソプロパノール、酢酸エチル、およびこれらの混合物が挙げられる。イソプロパノールが好ましい。反応は、窒素などの不活性ガス下で酸素を排除して行われる。ポリマーは、任意に沈殿によって単離され、任意に再結晶などの従来の手段で精製される。溶媒を蒸発により除去するか、又は、溶液をそのまま保存し、希釈して基材に塗布する。反応生成物は、式1のフッ素化(メタ)アクリレート共重合体である。
【0022】
得られる式1のフッ素化(メタ)アクリレート共重合体を、その後、そのまま基材に塗布するか、又は、水で希釈するか若しくは水に乳化させて基材に塗布する。あるいは、基材に最終的に塗布するための溶媒(以下「塗布溶媒」)として適している単純なアルコール又はケトンの溶媒に共重合体を更に分散又は溶解させる。あるいは、蒸発により重合生成物から溶媒を除去すること、および当業者に既知の乳化又は均質化法の使用により、水性分散体を調製する。このような溶媒非含有エマルションは、可燃性および揮発性有機化合物(VOC)を最小限にするのに好ましい。
【0023】
基材に塗布される最終生成物は、式1のフッ素化(メタ)アクリレート共重合体の分散体(水ベースであるか又は水に乳化させる場合)又は溶液(水以外の溶媒を使用する場合)である。
【0024】
本発明の式1の共重合体の調製に使用される、式
[Rf−Q−O−C(O)−C(CH3)=CH2x、又は[Rf−Q−O−C(O)−CH=CH2x
の好適なフッ素化(メタ)アクリルモノマーの例としては、以下のものが挙げられる:
613CH2CH2O−COC(CH3)=CH2
613CH2CH2O−COCH=CH2
613CH2CH(OH)CH2O−COC(CH3)=CH2
613CH2CH(OH)CH2O−COCH=CH2
49CH2CH2O−CONHCH2CH2O−COC(CH3)=CH2
49CH2CH2O−CONHCH2CH2O−COCH=CH2
49CH2CF2−CH2CH2O−COC(CH3)=CH2
49CH2CF2−CH2CH2O−COCH=CH2
49CH2CF2−CH2CH(OH)CH2O−COC(CH3)=CH2
49CH2CF2−CH2CH(OH)CH2O−COCH=CH2
37OCF(CF3)−CONHCH2CH2O−COCH=CH2
(C37OCF(CF3)−CONHCH22CHO−COCH=CH2
37OCF2CF2−CH2CH2O−COC(CH3)=CH2
37OCF2CF2−CH2CH2O−COCH=CH2
37OCF2CF2−CH2CH(OH)CH2O−COC(CH3)=CH2
37OCF2CF2−CH2CH(OH)CH2O−COCH=CH2
613SO2N(CH3)CH2CH2O−COC(CH3)=CH2
613SO2N(C25)CH2CH2O−COC(CH3)=CH2
613SO2N(C25)CH2CH2O−COCH=CH2
613CH2CH2SO2N(CH3)CH2CH2O−COCH=CH2
613CH2CH2SO2N(CH3)CH2CH2O−COC(CH3)=CH2
613SO2N(CH3)CH2CH2O−COCH=CH2
49SO2N(CH3)CH2CH2O−COC(CH3)=CH2
49SO2N(CH3)CH2CH2O−COCH=CH2
49SO2N(C25)CH2CH2O−COC(CH3)=CH2
49SO2N(C25)CH2CH2O−COCH=CH2
49CH2CH2SO2N(CH3)CH2CH2O−COC(CH3)=CH2
49CH2CH2SO2N(CH3)CH2CH2O−COCH=CH2
49CH2CF2−SO2N(CH3)CH2CH2O−COC(CH3)=CH2
49CH2CF2−SO2N(CH3)CH2CH2O−COCH=CH2
49CH2CH2SO2N(C25)CH2CH2O−COC(CH3)=CH2
49CH2CH2SO2N(C25)CH2CH2O−COCH=CH2
49CH2CF2SO2N(C25)CH2CH2O−COC(CH3)=CH2
49CH2CF2SO2N(C25)CH2CH2O−COCH=CH2
37OCF(CF3)−SO2N(CH3)CH2CH2O−COCH=CH2
(C37OCF(CF3)−SO2N(CH3)CH2CH2O−COCH=CH2
37OCF2CF2−SO2N(CH3)CH2CH2O−COC(CH3)=CH2
37OCF2CF2−SO2N(CH3)CH2CH2O−COCH=CH2
37OCF2CF2CH2CH2SO2N(CH3)CH2CH2O−COC(CH3)=CH2、および
37OCF2CF2CH2CH2SO2N(CH3)CH2CH2O−COCH=CH2
【0025】
本発明の式1の共重合体の調製に適したこれらのフッ素化(メタ)アクリルモノマーの多くは、E. I. du Pont de Nemours and Company(Wilmington, DE)から入手可能である。QがCH2CH(OH)CH2などのヒドロキシ基を含有するフッ素化モノマーは、Aurora Fine Chemicals(Graz, A−8020, Austria)から、又はFluorochem USA(West Columbia, SC)から入手可能である。
【0026】
Qが−(Cn2n)OCONR1(Cn2n)−であるフッ素化ウレタン(メタ)アクリレートモノマーは、パーフルオロアルキルエタノールを、反応性イソシアネート基および重合性ビニル二重結合を有する(メタ)アクリレートと反応させることによって調製される。好ましい反応条件は、約−10℃〜約60℃の温度である。任意の適した溶媒としては、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、アセトン、ヘキサン、又は酢酸エチルが挙げられる。
【0027】
Qが(CH2CF2m(CH2nであるフッ化ビニリデン含有モノマーおよびポリマーは、米国特許第3,282,905号明細書および欧州特許出願公開第1632542A1号明細書に記載の手順を使用して、対応するフッ素化アルコールおよびフッ素化チオールから、アクリル酸、メタクリル酸、2−クロロアクリル酸又は2−フルオロアクリル酸でエステル化することによって調製される。あるいは、アクリレートエステルおよびメタクリレートエステルは、米国特許第3,890,376号明細書に開示されている手順により、対応する硝酸エステルから製造することができる。
【0028】
フッ素化アクリレートの生成に有用なフッ素化アルコールとしては、式(V):
f−(CH2CF2q(CH2CH2r−OH (V)
(式中、Rfは、炭素数2〜8の直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキル基である)
のフッ素化テロマーアルコールが挙げられる。これらのテロマーアルコールは、スキーム1による合成によって得ることができる。
【0029】
【化3】

【0030】
フッ化ビニリデンと直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキルアイオダイドのテロメリゼーションにより、構造式Rf(CH2CF2qI(式中、qは1以上であり、RfはC2〜C6パーフルオロアルキル基である)の化合物が生成される。例えば、Balagueら、「Synthesis of fluorinated telomers, Part 1 ,Telomerization of vinylidene fluoride with perfluoroalkyl iodides」、J. Fluorine Chem.(1995), 70(2), 215−23を参照されたい。特定のテロマーアイオダイドは分留によって単離される。米国特許第3,979,469号明細書に記載の手順によってテロマーアイオダイドをエチレンで処理し、テロマーエチレンアイオダイド(VI)(式中、rは1〜3であるか又はそれより大きい)を得る。テロマーエチレンアイオダイド(VI)をオレウムで処理し、加水分解して、対応するテロマーアルコール(V)を得る。あるいは、テロマーエチレンアイオダイド(VI)をN−メチルホルムアミドで処理した後、エチルアルコール/酸で加水分解することができる。
【0031】
アルコール(V)の対応するチオールは、J. Fluorine Chemistry, 104, 2 173−183(2000)に記載の手順に従って様々な試薬で処理することによりテロマーエチレンアイオダイド(VI)から得ることができる。一例は、次のスキームに示すように、テロマーエチレンアイオダイドをチオ酢酸ナトリウムと反応させた後、加水分解することである。
【0032】
【化4】

【0033】
パーフルオロアルキルエーテル基を含有するモノマーは、フルオロアルキルエーテル基を含有する対応するフッ素化アルコール、フルオロチオール、又はフルオロアミンから調製される。
【0034】
本発明の組成物を製造するのに使用されるフルオロアルコールは、次の一連の反応によって得ることができる。
【0035】
【化5】

【0036】
出発パーフルオロアルキルエーテルアイオダイドは、パーフルオロ−n−プロピルビニルエーテルから式(V)の化合物を調製することを開示している米国特許第5,481,028号明細書の実施例8に記載の手順で製造される。
【0037】
上記の第2の反応で、パーフルオロアルキルエーテルアイオダイド(V)を高温高圧で過剰のエチレンと反応させる。エチレンの付加は熱的に実施することができるが、好適な触媒を使用することが好ましい。好ましくは、触媒は、ベンゾイルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、プロピオニルパーオキサイド、又はアセチルパーオキサイドなどの過酸化物触媒である。より好ましくは、過酸化物触媒はベンゾイルパーオキサイドである。反応温度は限定されないが、110℃〜130℃の範囲の温度が好ましい。反応時間は、触媒および反応条件で変わるが、典型的には24時間で十分である。生成物は、最終生成物から未反応の出発物質を分離する任意の手段で精製され得るが、蒸留が好ましい。パーフルオロアルキルエーテルアイオダイド1モル当たり約2.7molのエチレン、110℃の温度および自己圧(autogenous pressure)、24時間の反応時間を使用し、蒸留により生成物を精製して、理論の80%までの十分な収率が得られた。
【0038】
パーフルオロアルキルエーテルエチレンアイオダイド(VI)をオレウムで処理し、加水分解して、対応するアルコール(VII)を得る。あるいは、パーフルオロアルキルエーテルエチルアイオダイドをN−メチルホルムアミドで処理した後、エチルアルコール/酸で加水分解する。約130℃〜160℃の温度が好ましい。高圧の過剰のエチレンを用いてテロマーエチレンアイオダイド(VI)のより大きい同族体(q=2、3)を得ることができる。
【0039】
J.Fluorine Chemistry, 104,2 173−183(2000)に記載の手順に従って、テロマーエチレンアイオダイド(VI)を様々な試薬で処理し、対応するチオールを得ることができる。一例は、テロマーエチレンアイオダイド(VI)をチオ酢酸ナトリウムと反応させた後、加水分解することである。
【0040】
テロマーエチレンアイオダイド(VI)を、次の図式に従ってω−メルカプト−1−アルカノールで処理し、式(VIII)の化合物を得る。
【0041】
【化6】

【0042】
テロマーエチレンアイオダイド(VI)を次の図式に従ってω−メルカプト−1−アルキルアミンで処理し、式(IX)の化合物を得る。
【0043】
【化7】

【0044】
Qが、−CONR1(Cn2n)−又は(−CONR1CH22CH−であるモノマー、例えば、化合物C37OCF(CF3)−CONHCH2CH2O−COCH=CH2、又は(C37OCF(CF3)−CONHCH22CHO−COCH=CH2は、ヘキサフルオロプロピレンオキサイドダイマー、又はヘキサフルオロイソブチレンなどのフルオロアルキルカルボン酸誘導体をモノ−若しくは第一級アミン又は第一級ジアミンと反応させることによって調製される。ヘキサフルオロイソブチレンを用いたアミンのフルオロアルキル化は、アミンに共有結合したヘキサフルオロイソブチル基を有する第二級フルオロアルキルアミンを提供するのに十分な反応温度と反応時間で、アミンをヘキサフルオロイソブチレンと接触させることによる。接触は、溶媒の存在下で、および/又は塩基触媒の存在下で実施することができる。好適な溶媒としては、アルコール、アルキルエーテル、アルキルエステル、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ニトリル、およびアミドが挙げられる。好適な触媒としては、第三級アルキルアミン、アルキル金属水酸化物、およびアルカリ金属水素化物が挙げられる。
【0045】
QがSO2N(R1)(Cn2n)−、又は−(Cn2n)SO2N(R1)(Cn2n)−であるモノマーは、フルオロスルホニルフルオライドをアミンと反応させることによって調製される。特に、フルオロスルホニルフルオライドを、NH(CH3)CH2CH2OC(O)CH=CH2、NH(CH3)CH2CH2OC(O)C(CH3)=CH2、NH(CH2CH3)CH2CH2OC(O)CH=CH2、又はNH(CH2CH3)CH2CH2OC(O)C(CH3)=CH2などのメチルアミン又はエチルアミンと反応させる。
【0046】
本発明は、前述の式1のフッ素化(メタ)アクリレート共重合体溶液又は分散体を基材と接触させる工程を含む、基材に撥油性、撥水性、防汚性、汚れ除去性、耐汚染性、および染み除去性の1つ以上を付与する方法を含む。好適な基材としては、後述の繊維基材が挙げられる。
【0047】
フッ素化(メタ)アクリレート共重合体溶液又は分散体を任意の好適な方法で基材と接触させる。このような方法としては、吸尽、泡、フレックスニップ(flex−nip)、ニップ、パディング、キスロール、ベック(beck)、かせ、ウインス、液体注入、オーバーフローフラッド(overflow flood)、ロール、刷毛、ローラー、スプレー、ディッピング、および浸漬等による塗布が挙げられるが、これらに限定されない。また、ベック染色(beck dyeing)法、連続的染色法、又は紡糸ライン塗布(thread−line application)を使用することによって共重合体を接触させる。
【0048】
フッ素化(メタ)アクリレート共重合体溶液又は分散体は、基材に、それ自体で、又は他の任意のテキスタイル仕上剤若しくは表面処理剤と組み合わせて塗布される。このような任意の追加の成分は、追加の表面処理効果を達成する処理剤若しくは仕上剤、又は、一般にこのような処理剤若しくは仕上剤と一緒に使用される添加剤を含む。このような追加の成分は、ノーアイロン、アイロン掛けし易さ、収縮抑制、しわ防止、パーマネントプレス、水分調節、柔軟性、強度、スリップ防止、帯電防止、スナッグ防止(anti−snag)、ピリング防止、染みをはじく性質、染み除去性(stain release)、汚れをはじく性質、汚れ除去性、撥水性、撥油性、臭気抑制、抗微生物、日焼け防止(sun protection)、洗濯可能性、および類似の効果などの表面効果を付与する化合物又は組成物を含む。このような処理剤又は仕上剤の1つ以上が、式1の共重合体の前、後、又は式1の共重合体と同時に基材に塗布される。例えば、繊維基材では、合成布帛又は木綿布帛を処理するとき、E. I. du Pont de Nemours and Company(Wilmington, DE)から入手可能なALKANOL 6112などの湿潤剤の使用が望ましい可能性がある。木綿又は綿混の布帛を処理するとき、Omnova Solutions(Chester, SC)から入手可能なPERMAFRESH EFCなどの防皺性樹脂を使用することができる。
【0049】
また、任意に、界面活性剤、pH調整剤、架橋剤、湿潤剤、ワックスエクステンダ、および当業者に既知の他の添加剤などの、一般にこのような処理剤又は仕上剤と一緒に使用される他の添加剤が存在する。好適な界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、非イオン性、N−オキサイド、および両性界面活性剤が挙げられる。DUPONOL WAQE若しくはSUPRALATE WAQEとしてWitco Corporation(Greenwich, CT)から、又は、SUPRALATE WAQEとしてWitco(Houston, TX)から入手可能なラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤が好ましい。このような添加剤の例としては、加工助剤、発泡剤、潤滑剤、および汚染防止剤(anti−stains)等が挙げられる。組成物は、製造設備で、小売業者の場所で、又は敷設および使用の前に、又は消費者の場所で塗布される。
【0050】
任意に、耐久性を更に促進するブロックイソシアネートを式1の共重合体と一緒に添加する(即ち、ブレンドされた組成物として)。本発明に使用するのに好適なブロックイソシアネートの例は、Ciba Specialty Chemicals(High Point NJ)から入手可能なHYDROPHOBOL XANである。他の市販のブロックイソシアネートも本明細書で使用するのに好適である。ブロックイソシアネートの添加の必要性は、共重合体の特定の用途に依存する。現在考えられている用途のほとんどでは、それは、鎖間の十分な架橋、又は基材への結合を達成するために存在する必要はない。ブレンドされたイソシアネートとして添加されるとき、約20重量%以下の量を添加する。
【0051】
任意に、フッ素効率を更に増加させる可能性がある非フッ素化エクステンダー組成物も塗布組成物中に含まれる。このような任意の追加のエクステンダーポリマー組成物の例としては、アクリレート、メタクリレート、又はこれらの混合物の炭化水素共重合体が挙げられる。このような共重合体は、また、塩化ビニリデン、塩化ビニル、又は酢酸ビニル、又はこれらの混合物も含み得る。
【0052】
所与の基材の最適な処理は、(1)フッ素化共重合体の特性、(2)基材の表面の特性、(3)表面に塗布されるフッ素化共重合体の量、(4)表面へのフッ素化共重合体の塗布方法、および他の多くの要因に依存する。幾つかのフッ素化共重合体撥水撥油剤(repellents)は多くの異なる基材で良好に機能し、油、水、および他の様々な液体をはじく。他のフッ素化共重合体撥水撥油剤は、基材によって、より優れた撥水撥油性を示すこともあれば、より高い添加レベルを必要とすることもある。
【0053】
本発明は、更に、前述の式1のフッ素化(メタ)アクリレート共重合体溶液又は分散体で処理された基材を含む。好適な基材としては、繊維基材が挙げられる。繊維基材としては、繊維、ヤーン、布帛、混紡布、テキスタイル、不織布、紙、皮革およびカーペットが挙げられる。これらは、木綿、セルロース、ウール、シルク、レーヨン、ナイロン、アラミド、アセテート、アクリル、ジュート、サイザル麻、海草、コイア、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリアラミド、又はこれらの混紡を含む天然又は合成繊維から製造される。「混紡布」とは、2種類以上の繊維からなる布帛を意味する。典型的には、これらの混紡布は少なくとも1種類の天然繊維と少なくとも1種類の合成繊維の組み合わせであるが、2種類以上の天然繊維の混紡および/又は2種類以上の合成繊維の混紡を含んでもよい。カーペット基材は染色されていても、顔料で着色されていても、捺染されていても、又は染色されていなくてもよい。カーペット基材は、精練されていても、精練されていなくてもよい。防汚性および汚れ除去性を付与するために本発明の方法で処理されることが特に有利な基材としては、ポリアミド繊維(ナイロンなど)、木綿、ポリエステルと木綿の混紡から製造されるもの、特にテーブルクロス、衣料品、および洗濯可能なユニフォーム等に使用される基材が挙げられる。不織布基材としては、例えば、E. I. du Pont de Nemours and Company(Wilmington, DE)から入手可能なSONTARAなどのスパンレース不織布、およびスパンボンド−メルトブロー−スパンボンド不織布が挙げられる。本発明の処理された基材は、優れた撥水性、撥油性、防汚性、汚れ除去性、耐汚染性、および染み除去性の1つ以上を有する。
【0054】
本発明の方法は、処理される基材に優れた撥水性、撥油性、防汚性、汚れ除去性、耐汚染性、および染み除去性を付与するのに有用である。これらの表面特性は、炭素数約2〜約8、好ましくは炭素数約2〜約6のパーフルオロアルキル基を含有する共重合体を使用して得られる。本発明の処理された基材は、衣類、防護服、カーペット、室内装飾材料、室内装備品および他の用途などの様々な用途および製品に有用である。前述の優れた表面特性は、表面の清浄さを維持するのに役立ち、従って、より長く使用することを可能にする。
【0055】
試験方法
試験方法1−布帛のウィッキングおよび染み除去性試験
A.布帛処理
使用した布帛は、Textile Innovators Corporation(100 Forest Street, Windsor, NC27983)から入手可能な100%木綿であった。布帛は、異なる色、重量、および構造であった。パディングおよび乾燥後に布帛に付着したフッ素が約1000重量ppmとなるように、浴中に3重量%の試験される最終共重合体エマルションを有する浴が得られるように、調製した本発明の濃縮ポリマーエマルションを脱イオン水で希釈した。
【0056】
水および処理化合物を含有する槽に約2秒間布帛を通過させ、2本のロール間に約20psi(137.9×103Pa)の圧力を加えて通して、100重量%〜300重量%のウェットピックアップを達成するパディング法でこの処理浴を布帛に塗布した。布帛を約160℃の温度に乾燥させ、その温度で3分間維持した。
【0057】
B.ウィッキング試験
ウィッキング試験のため、DI水を5滴木綿サンプル上の生地の異なる領域に付けた。布帛に完全に吸収されるのにかかる時間(単位、秒)を測定した。水滴が180秒以内に吸収されなかった場合、180+の値を記録した。ウィッキング時間は、親水性又は疎水性の指標である。ウィッキング時間が短いほど親水性が高いことを示し、ウィッキング時間が長いほど疎水性が高いことを示す。
【0058】
C.染み除去性試験:
染み除去性試験は、AATCC Test Method 130−1995に準拠した。鉱油又はコーン油を5滴、1枚の吸取紙上の各処理サンプルの中心に付けた。1枚のグラシン紙(秤量紙)をその染みの上に被せ、5ポンドの重りをグラシン紙の上に載せた。60秒後、重りとグラシン紙を取り除いた。油染みの周囲に4つの赤い点が付いた。サンプルを、多量(Large load)、温水(Warm)(100°F、38℃)/冷水(Cold)、すすぎ1回(One rinse)、念入り(Ultra Clean)(設定12)、および普通(Normal)(速/遅)の設定のKenmore洗濯機に入れた。AATCC WOB洗剤100gと、バラスト布を含む生地4lbs.を洗濯機に加えた。洗濯後、サンプルを高設定のKenmore乾燥機に45分間入れた。下記の染み除去性複製等級(Stain Release Replica Grades)を基準にしてサンプルを評価した。
【0059】
【表1】

【0060】
5級は最良の染み除去を示し、1級は最低の染み除去を示す。
【0061】
試験方法2−撥水性試験
処理された基材の撥水性をAATCC標準試験方法第193−2004およびTEFLON Global Specifications and Quality Control Tests information packetに概要が記載されているDuPont Technical Laboratory Methodに従って測定した。試験は、水性液体による濡れに対する処理された基材の耐性を決定する。様々な表面張力の水−アルコール混合物の液滴を基材につけて、表面の濡れの程度を視覚的に決定する。
【0062】
撥水性試験液の組成を表1に示す。
【0063】
【表2】

【0064】
試験液1を3滴、処理された基材につける。10秒後、真空吸引を使用して液滴を除去する。液体の浸透又は部分的吸収が観察されない(基材に濡れて色の濃くなった斑点が現れない)場合、試験液2で試験を繰り返す。液体の浸透が観察される(基材に濡れて色の濃くなった斑点が現れる)まで、試験液3および順次それより大きい試験液番号で試験を繰り返す。試験結果は、基材に浸透しない最も大きい試験液番号である。スコアが高いほど撥水性が大きいことを示す。
【0065】
試験方法3−撥油性試験
次のように実施したAATCC標準試験方法第118の変更により、処理されたサンプルの撥油性を試験した。試験方法1で前述したポリマーの水性分散体で処理されたサンプルを23℃+相対湿度20%および65℃+相対湿度10%で最低2時間維持する。次いで、下記の表2に示す一連の有機液体をサンプルに1滴ずつつける。最も小さい番号の試験液(撥油性評価番号1)で始めて、3つの場所にそれぞれ1滴(直径約5mm又は体積0.05mL)、少なくとも5mm離してつける。液滴を30秒間観察する。この時間の終わりに、3滴のうち2滴がまだ球状の形状であり、液滴の周囲にウィッキングが起こっていない場合、次の最も大きい番号の液体を3滴、隣接する部位につけ、同様に30秒間観察する。試験液の1つで3滴のうち2滴が球状〜半球状を維持できないという結果になるまで、又は濡れ若しくはウィッキングが起こるまで、この手順を繰り返す。
【0066】
撥油性評価は、3滴のうち2滴が球状〜半球状を維持し、30秒間ウィッキングが起こらない最も大きい番号の試験液である。一般に、5以上の評価を有する処理されたサンプルは、良〜優と考えられる。1以上の評価を有する皮などの布帛は、ある一定の用途に使用できる。
【0067】
【表3】

【0068】
試験方法4−汚れ促進試験(Accelerated Soiling Test)
ドラムミル(ローラー上の)を使用し、カーペットサンプルに合成汚れを回転付着させた。合成汚れは、AATCC Test Method 123−2000, Section 8に記載のように調製した。汚れでコーティングされたビーズは次のように調製した。合成汚れ3gと清浄なナイロン樹脂ビーズ(SURLYNアイオノマー樹脂ビーズ、直径1/8〜3/16インチ(0.32〜0.48cm)1リットルを清浄な空のキャニスタに入れた。SURLYNは、E.I.du Pont de Nemours and Co., Wilmington, DE)から入手可能なエチレン/メタクリル酸共重合体である。キャニスタの蓋を閉じ、ダクトテープで密封し、キャニスタをローラー上で5分間回転させた。汚れでコーティングされたビーズをキャニスタから取り出した。
【0069】
ドラムに入れるカーペットサンプルを以下のように準備した。使用したカーペット生地は、市販のレベルループ(LL)1245デニール、1/10ゲージ(0.1インチ又は2.5mmのタフト間隔)、26oz/yd2(0.88kg/m2)で、淡黄色に染色されたものであり、Invista Inc.(Wilmington DE)から入手可能であった。これらの試験では、全カーペットサンプルサイズは8×25インチ(20.3×63.5cm)であった。1つの試験サンプルと1つの対照サンプルを同時に試験した。全てのサンプルのカーペットのパイルを同じ方向になるように置いた。各カーペットサンプルの短辺を機械方向に(タフト列に関して)切断した。強力接着テープをカーペット片の裏側につけ、それらを一緒に保持した。カーペットサンプルを、タフトがドラムの中心を向くようにして清浄な空のドラムミルに入れた。カーペットを剛性のワイヤでドラムミル内の所定の位置に保持した。汚れでコーティングされた樹脂ビーズ250ccとボールベアリング(直径5/6インチ、0.79cm)250ccをドラムミルに入れた。ドラムミルの蓋を閉じ、ダクトテープで密封した。ドラムをローラー上で2−1/2分間、毎分105rpmで回転させた。ローラーを停止させ、ドラムミルの方向を逆にした。ドラムをローラー上で更に2−1/2分間、105rpmで回転させた。カーペットサンプルを取り出し、余分な汚れを除去するため均一に真空吸引した。汚れでコーティングされた樹脂ビーズを廃棄した。
【0070】
元の汚れていないカーペットと比較して、汚れたカーペットのΔE色差を試験品および対照品について測定した。各カーペットの色測定を、汚れ促進試験の後のカーペットで行った。各対照サンプルおよび試験サンプルについて、カーペットの色を測定し、サンプルを汚し、汚れたカーペットの色を測定した。ΔEは、汚れたサンプルと汚れていないサンプルの色の差であり、正の数として表される。Minolta Chroma Meter CR−310を使用して、各品で色差を測定した。カーペットサンプルの5つの異なる領域で色を読み取り、平均ΔEを記録した。各試験品の対照カーペットは、試験品と同じ色および構造であった。対照カーペットは、全くフルオロケミカルで処理されていなかった。
【0071】
防汚性および/又は汚れ除去性を含むカーペットでの表面効果を、防止された汚れのパーセンテージで測定する。ドラム汚れ後の防止された汚れのパーセンテージを「未処理より清浄である%」として、次の計算で算出した:
【0072】
【数1】

【0073】
この値を使用することによって、異なるカーペットの色および構造に対して補正がなされ、データセット間の有意味な比較が可能である。パーセンテージが高いほど、防汚性が優れていることを示す。
【0074】
材料
特に他の記載がない限り、次の材料を実施例で使用した。下記に示す略称を表中で使用した。
【0075】
1)モノマーA:1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルアクリレートエステル、E. I. du Pont de Nemours and Company(Wilmington, DE)から入手可能。
【0076】
2)モノマーB:1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルメタクリレートエステル、E. I. du Pont de Nemours and Company(Wilmington, DE)から入手可能。
【0077】
3)AMPS:2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、Sigma−Aldrich(Milwaukee, WI)から入手可能。
【0078】
4)GMA:グリシジル(メタ)アクリレート、Sigma−Aldrich(Milwaukee, WI)から入手可能。
【0079】
5)BRIJ 58:数平均分子量(average number molecular weight)1124のポリエチレングリコールヘキサデシルエーテル、Sigma−Aldrichから入手可能。
【実施例】
【0080】
実施例1
実施例1では、下記に記載するように共重合体を調製した。冷却器、機械的攪拌機、ガス入口、およびガス出口を備えた500mLの四つ口丸底フラスコに、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルメタクリレートエステル(7.0グラム、0.016モル)、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルアクリレートエステル(3.0グラム、0.0072モル)、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸(AMPS、2.5グラム、0.012モル)、グリシジル(メタ)アクリレート(GMA、0.2グラム、0.0014モル)、ドデシルメルカプタン(0.04グラム)、VAZO67(1.32グラム)、および2−プロパノール(200グラム)を加えた。20℃で1時間、150rpmで攪拌しつつ、溶液に乾燥窒素を穏やかに通気させて、酸素を除去した。窒素通気に代わって窒素ブランケットを用い、反応混合物を16時間80℃で加熱攪拌した。窒素ブランケットを除去し、ポリマー溶液を20℃に冷却した。低温蒸留で2−プロパノール約150グラムを留去した。水100mLに炭酸水素ナトリウム(0.5グラム)溶解した溶液を反応混合物に添加した。低温蒸留で残りの2−プロパノールを留去し、pH約8のフッ素化AMPS共重合体の水性分散体を得た。試験方法1を使用して、100%木綿の布帛に上記実施例1で調製された共重合体溶液を塗布した。試験方法1を使用して、処理された布帛のウィッキングおよび親水性染み除去性を試験した。結果を下記の表4に記載する。
【0081】
実施例2〜18
実施例2〜18では、実施例1で前述した手順を使用して表3に記載の共重合体化合物を調製した。
【0082】
【表4】

【0083】
試験方法1を使用して、上記の実施例2〜18で調製された共重合体溶液を100%木綿の布帛に塗布した。試験方法1を使用して、処理された布帛のウィッキングおよび親水性染み除去性を試験した。結果を下記の表4に記載する。
【0084】
【表5】

【0085】
表4のデータから、本発明の実施例は、木綿布帛からの油性汚れの優れた除去性を付与したと共に、依然として水が吸い上げられ、水が布帛を濡らすことを可能にしたことが分かる。
【0086】
上記の実施例1〜18で調製された共重合体溶液をカーペットサンプルに塗布し、試験方法2、3および4を使用して撥水性、撥油性、防汚性、および汚れ除去性を試験した。結果を表5に記載する。
【0087】
【表6】

【0088】
表5のデータから、本発明の実施例は、処理された敷物材料に、特に優れた撥油性および乾燥汚れに対する防汚性および汚れ除去性を付与したことが分かる。
【0089】
実施例19〜26
実施例19〜26では、実施例1で前述した手順を使用して、表6に記載の共重合体化合物を調製した。
【0090】
【表7】

【0091】
試験方法1を使用して、上記の実施例19〜26で調製された共重合体溶液を100%木綿の布帛に塗布した。処理された布帛のウィッキングおよび親水性染み除去性を、試験方法1を使用して試験した。結果を下記の表7に記載する。
【0092】
【表8】

【0093】
表7のデータから、本発明の実施例は、木綿布帛からの油性汚れの優れた除去性を付与したと共に、依然として水が吸い上げられ、水が布帛を濡らすことを可能にしたことが分かる。
【0094】
上記の実施例19〜26で調製された共重合体溶液をカーペットサンプルに塗布し、試験方法2、3および4を使用して、撥水性、撥油性、防汚性、および汚れ除去性を試験した。結果を表8に記載する。
【0095】
【表9】

【0096】
表8のデータから、本発明の実施例は、処理された敷物材料に、特に優れた撥油性および乾燥汚れに対する防汚性を付与したことが分かる。
【0097】
実施例27
実施例27では、乳化重合を使用して共重合体を調製した。プラスチック製のビーカーに、脱イオン水80グラム、水中20重量%のBRIJ58、2.0グラム、ドデシルメルカプタン0.04グラム、グリシジル(メタ)アクリレート(GMA)0.20グラム、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸(AMPS)および水中3重量%の四ホウ酸ナトリウム2.5グラム(共にSigma−Aldrich(Milwaukee, WI)製)、スルホネートAA−10(Intertrade Holding(Copperhill, TN)製)5.0グラム、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルアクリレートエステル(モノマーA)3.0グラム、および1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルメタクリレートエステル(モノマーB)7.0グラムを入れて混合した。反応混合物を55℃に加熱し、ソニケーターで2回、2分間、均一な乳白色のエマルションが得られるまで乳化させた。窒素ブランケット、冷却器、オーバーヘッド攪拌機、および温度プローブを備えた250mLのフラスコに、溶液を投入し、窒素通気を開始し、170rpmで攪拌した。30分間にわたってフラスコを75℃に加熱し、窒素ブランケットに切り換えた。水中10重量%の過硫酸カリウム(Sigma−Aldrich(Milwaukee, WI)製)2.0グラムを添加し、75℃で1時間、攪拌し続けた。水中10重量%の過硫酸カリウム(Sigma−Aldrich(Milwaukee, WI)製)1.0グラムを更に添加し、75℃で3時間、攪拌し続けた。次いで、溶液を室温に冷却し、その後、重力ろ過を使用しミルクフィルターでろ過して小さい口のある瓶に入れ、固形分13.2重量%の乳化共重合体を得た。試験方法1を使用して、100%木綿の布帛に実施例27の乳化共重合体を塗布し、ウィッキングおよび染み除去性を試験した。結果を表10に記載する。
【0098】
実施例28
実施例28では、表9に記載のように、異なる量のモノマーを反応に使用したこと以外、実施例27で前述したのと同じ乳化重合手順を使用して、共重合体化合物を調製した。
【0099】
【表10】

【0100】
試験方法1を使用して、実施例28の乳化共重合体を100%木綿の布帛に塗布した。試験方法1を使用して、処理された布帛のウィッキングおよび親水性染み除去性を試験した。結果を表10に記載する。
【0101】
【表11】

【0102】
表10のデータから、本発明の実施例27および28は、数回の洗濯サイクルを経ても耐久性のある優れたウィッキングおよび染み除去性を付与したことが分かる。
【0103】
実施例27〜28の乳化共重合体をカーペットサンプルに塗布し、試験方法2、3および4を使用して撥水性、撥油性、防汚性、および汚れ除去性を試験した。結果を表11に記載する。
【0104】
【表12】

【0105】
表11のデータから、本発明の実施例27および28は、優れた撥水性、撥油性、防汚性および汚れ除去性を付与したことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に撥水性、撥油性、防汚性、汚れ除去性、耐汚染性、および染み除去性を付与する方法であって、
式1:
【化1】

(式中、
fは、任意に少なくとも1個の酸素原子で中断されている炭素数約2〜約8の直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキル基、又はその混合であり、
Qは、炭素数1〜約15のアルキレン、炭素数2〜約15のヒドロキシアルキレン、−O(Cn2n)−、−(CH2CF2m(CH2n−、−CONR1(Cn2n)−、−(Cn2n)OCONR1(Cn2n)−、(−CONR1CH22CH−、−SO2N(R1)(Cn2n)−、又は−(Cn2n)SO2N(R1)(Cn2n)−であり、
各R1は、独立してH又は炭素数1〜約4のアルキルであり、
各nは、独立して1〜約15であり、
各mは、独立して1〜約4であり、
Zは、水素又はメチルであり、
xは、正の整数であり、
yは、0又は正の整数であり、
tは、正の整数であり、
Mは、H+、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、又はアンモニウムである)の繰り返し単位を任意の配列で有する共重合体を含む組成物と基材を接触させる工程を含む方法。
【請求項2】
fが、独立してC613−、C49−、C37−、C37OCF2CF2−、C37OCF(CF3)−、およびC37O−(CF(CF3)CF2O)kCFCF3)−(式中、kは1〜4である)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Qが、−CH2CH2−、CH2CH(OH)CH2−、−O(Cn2n)−、−(CH2CF2mCH2CH2−、−CONHCH2CH2−、−CH2CH2O−CONHCH2CH2−、(−CONHCH22CH−、−SO2N(CH3)CH2CH2−、および−SO2N(C25)CH2CH2−からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
−[Rf−Q−O−C(O)−C(CH3)−CH2x−の繰り返し単位が、前記共重合体中に約10重量%以上の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
−[CH−CH2−C(O)−NH−C(CH32CH2SO3M]z−の繰り返し単位が、前記共重合体中に約10重量%〜約70重量%で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
−[CH2(O)CH−CH2−O−C(O)−C(CH3)−CH2y−の繰り返し単位が、0重量%〜約10重量%で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物を水性分散体又は溶液として前記基材と接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物を、吸尽、泡、フレックスニップ(flex−nip)、ニップ、パディング、キスロール、ベック(beck)、かせ、ウインス、液体注入、オーバーフローフラッド(overflow flood)、ロール、刷毛、ローラー、スプレー、ディッピング又は浸漬により前記基材と接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、A)ノーアイロン、アイロン掛けし易さ、収縮抑制、しわ防止、パーマネントプレス、水分調節、柔軟性、強度、スリップ防止、帯電防止、スナッグ防止、ピリング防止、染みをはじく性質、染み除去性、汚れをはじく性質、汚れ除去性、撥水性、撥油性、臭気抑制、抗微生物、日焼け防止、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、表面効果を付与する少なくとも1つの薬剤、又はB)界面活性剤、酸化防止剤、耐光剤(light fastness agent)、耐変色剤(color fastness agent)、水、pH調整剤、架橋剤、湿潤剤、エクステンダー、発泡剤、加工助剤、潤滑剤、ブロックイソシアネート、非フッ素化エクステンダー、又はこれらの組み合わせの少なくとも1つの存在下で塗布される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の組成物が塗布された基材。

【公表番号】特表2011−505231(P2011−505231A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532185(P2010−532185)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/081488
【国際公開番号】WO2009/058795
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】