説明

フッ素化酸またはそれらの塩を含む廃水の処理

本発明は、アニオン交換体を用いて、フッ素化酸、特にペルフルオロカルボン酸およびペルフルオロスルホン酸またはそれらの塩を希薄水溶液から分離除去する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アニオン交換体を用いて、フッ素化酸、特にペルフルオロカルボン酸およびペルフルオロスルホン酸またはそれらの塩を希薄水溶液から分離除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素化酸、たとえば、特にペルフルオロカルボン酸(PFCA)およびペルフルオロスルホン酸(PFSA)は、界面活性剤として、またはフッ素化剤のための先行製品、たとえば、ペルフルオロブタンスルホニルフルオリドとして使用されることが多く、工業的に典型的には、電気的フッ素化(electrofluorination)によるか、または頻度は低いがフッ素化モノマーを重合させることによって製造されるが、それらはいずれも、技術的に高度な複雑さを伴っている。
【0003】
たとえばペルフルオロスルホン酸を製造するための電気的フッ素化の際には、廃ガスの精製および製品の精製の結果として、典型的には、廃水としてペルフルオロスルホン酸の希薄水溶液が生成し、それには、たとえば二次的な酸化反応からのペルフルオロカルボン酸、さらには使用したフッ化水素の残渣が含まれている可能性がある。
【0004】
フッ素化酸の有利な適用性には、それらの生分解が極めて困難であり、そのために食物連鎖の中に蓄積されるという欠点を伴っている。この理由から、各種の管轄権限において、法的規制の対象物質を環境中へ排出するための努力および処置が存在している(EUにおいては、たとえば2006/122/ECガイドライン)。
【0005】
この理由からも、希薄水溶液たとえば上述の廃水から、フッ素化酸を回収するか、または少なくとも除去するための試みが無い訳ではなかった。
【0006】
(特許文献1)には、汚染された出発物質から再利用可能な形態でフッ素化カルボン酸を回収するためのプロセスが開示されていて、それには、必要とあれば、充分に強い酸を用いて水溶液中のそれらの物質からフッ素化カルボン酸を放出させる工程、そのフッ素化カルボン酸を適切なアルコールと反応させる工程、そして生成したエステルを蒸留除去する工程が含まれている。この場合に使用することが可能な出発物質は、重合、特にいわゆるエマルション重合からの反応液であって、その中では、比較的大量の界面活性剤としてのフッ素含有カルボン酸の存在下に、コロイド粒子の形態でフルオロポリマーが製造されている。その回収プロセスは、極めてやりがいの有る筈のものであろうとは考えられるものの、その出発物質の中におけるフッ素化カルボン酸の濃度がかなり高いことが前提となっている。
【0007】
(特許文献2)には、希薄水溶液からペルフルオロカルボン酸を得るための方法が開示されていて、それには、ペルフルオロカルボン酸の希薄な水溶液を、弱塩基性のアニオン交換体樹脂と吸着接触状態とし、その結果として、その溶液の中に存在しているペルフルオロカルボン酸をアニオン交換体樹脂の上に吸着させる工程、アンモニア水溶液を用いてそのアニオン交換体樹脂の溶出を行わせ、それによって吸着されたペルフルオロカルボン酸を溶離剤の中に移行させる工程、最終的にその溶出液から酸を得る工程が含まれる。しかしながら、完全に溶離させるためには、比較的大量の希薄アンモニア溶液が必要であり、さらには、この方法では、長い時間がかかる。
【0008】
前述の欠点は、(特許文献3)から公知の、塩基性のアニオン交換体に吸着されたフッ素化乳化剤酸を溶離させるための方法によって克服できると言われているが、ここでは、吸着されたフッ素化乳化剤酸をアニオン交換体から溶離させるには、希鉱酸と有機溶媒との混合物が用いられている。この方法の場合、酸を使用することによって、交換体樹脂の再生が同時に実施される。
【0009】
最後になるが、(特許文献4)には、まず、廃水から微細固形物および/または固形物に変換可能な画分を除去し、次いで、フッ素化酸をアニオン交換体樹脂に結合させ、それからフッ素化酸を溶出させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5 442 097号明細書
【特許文献2】独国特許出願第A 20 44 986号明細書
【特許文献3】米国特許第4 282 162号明細書
【特許文献4】独国特許出願第198 24 614A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前述の方法の欠点は、イオン交換体の選択性、したがって分離の効率が極めて不充分であるという点にある。
【0012】
したがって、希薄水溶液からフッ素化酸を可能な限り完全に分離することが可能な方法を提供することが目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
フッ素化酸またはそれらの塩を、それらの希薄水溶液から、前述の溶液をアニオン交換体と接触させることによって分離除去するための方法が今や見出されたのであるが、この方法は、使用するアニオン交換体が、少なくとも部分的にフルオリドの形態で存在しているようなものであること特徴としている。
【0014】
本発明の範囲には、これまでおよび以下に示す、一般的な用語としてまたは好ましい範囲内の、ラジカルの定義および/またはパラメーターが包含され、それらは相互に、各種所望の組合せで含まれている。
【0015】
本発明の文脈の範囲内においては、「希薄水溶液(dilute aqueous solution)」という用語は、5重量%未満、好ましくは1重量%未満、特に好ましくは0.05重量%未満の固形分の分率を有する液状媒体を意味しており、それには、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%の水と、さらには、少なくとも1種のフッ素化酸またはフッ素化酸の少なくとも1種の塩とが含まれ、そのフッ素化酸またはフッ素化酸の塩の合計量が、0.0005〜5重量%、好ましくは0.0005〜2重量%、特に好ましくは0.005〜1重量%、極めて特に好ましくは0.01〜0.5重量%である。
【0016】
本発明の文脈の範囲内においては、フッ素化酸は、1〜30個の炭素原子および少なくとも1個のフッ素原子を有していて、標準条件下で6.0以下、好ましくは4.0以下、特に好ましくは3.2以下のpKaを有するものである。この場合、1個または複数、好ましくは1個の酸基が存在していてもよく、多価酸の場合においては、そのpKa値は、それぞれのケースで第一の脱プロトン化段階に相当するものを指している。
【0017】
本発明の文脈の範囲内においては、好ましいフッ素化酸は、式(I)のペルフルオロカルボン酸、および式(II)のペルフルオロスルホン酸である。
[化1]
F−(CFCOOH (I)
[化2]
F−(CFSOOH (II)
[式中、
nおよびmは、それぞれの場合において、1〜24、好ましくは1〜12、特に好ましくは4〜8、極めて特に好ましくは4の整数である]
【0018】
先にフッ素化酸ついて示した定義、範囲、および好ましい範囲は、そのフッ素化酸に対応する塩に対してもすべて同様に適用される。フッ素化酸の塩とは、その酸のプロトンが他のカチオンたとえば、金属カチオンまたはアンモニウムイオンによって置換された化合物を意味していると理解されたい。
【0019】
少なくとも部分的にフルオリドの形態で存在しているアニオン交換体は、イオン的相互作用によってフルオリドアニオンがそれに対して結合されているものである。好適なアニオン交換体には、強塩基性および弱塩基性のアニオン交換体が含まれるが、強塩基性のアニオン交換体とは、特に四級アンモニウムイオンを含むものを意味していると理解されたく、また弱塩基性のものは、構造要素として、一級、二級もしくは三級アミン基またはそれらに相当するアンモニウムイオンを含むものを意味していると理解された
【0020】
好適な強塩基性のアニオン交換体は、式(III)の構造要素を有するものである:
[化3]
−N(R)X (III)
[式中、
、RおよびRは、それぞれの場合において互いに独立して、ヒドロキシもしくはC〜C−アルコキシによって、さらに非置換、モノ置換もしくはポリ置換のいずれかをされていてもよいC〜C12−アルキルであるか、または、それらのラジカルの二つが合体して、ヒドロキシもしくはC〜C−アルコキシによってモノ置換もしくはポリ置換されていてもよいC〜C12−アルキレンであり、
は、一つの好ましい実施態様においては、フルオリド、クロリド、ブロミド、ヒドロキシド、ナイトレート、ハイドロジェンスルフェート、およびスルフェートの群から選択されるアニオンである]
【0021】
好適な弱塩基性のアニオン交換体は、式(IV)の構造要素もしくは式(V)の構造要素を有するか、または式(IV)および(V)の構造要素を有するものである。
[化4]
−N(R)X (IV)
[式中、
、RおよびRは、それぞれの場合において互いに独立して、水素であるか、または、ヒドロキシもしくはC〜C−アルコキシによってさらに非置換、モノ置換もしくはポリ置換のいずれかをされていてもよいC〜C12−アルキルであるか、または、ラジカルR、RおよびRのうちの二つが水素ではない場合、それらのラジカルが合体して、ヒドロキシもしくはC〜C−アルコキシによってモノ置換もしくはポリ置換されていてもよいC〜C12−アルキレンであるが、ただしそれらのラジカルR、RおよびRの、少なくとも1個、好ましくは1個もしくは2個、特に好ましくは1個が水素であり、そして
は、一つの好ましい実施態様においては、フルオリド、クロリド、ブロミド、ヒドロキシド、ナイトレート、ハイドロジェンスルフェート、およびスルフェートの群から選択されるアニオンである];
[化5]
−N(R) (V)
[式中、
およびRは、それぞれの場合において互いに独立して、水素であるか、または、ヒドロキシもしくはC〜C−アルコキシによってさらに非置換、モノ置換もしくはポリ置換のいずれかをされていてもよいC〜C12−アルキルであるか、または、ラジカルRおよびRのうちの二つが水素ではない場合、それらのラジカルが合体して、ヒドロキシもしくはC〜C−アルコキシによってモノ置換もしくはポリ置換されていてもよいC〜C12−アルキレンである]
【0022】
原理的には、適切なイオン交換体にはさらに、式(III)および(IV)および/または(V)の構造要素を有するものがさらに含まれる。
【0023】
弱塩基性のイオン交換体が好ましく、さらには、式(IV)および/または(V)の構造要素を有すものがさらに好ましい。
【0024】
特に好適なアニオン交換体は、三級アミノ基を含む弱塩基性のマクロポーラスアニオン交換体である、Lanxess Deutschland GmbH製の、Lewatit(登録商標)MP 62である。
【0025】
本発明においては、そのアニオン交換体が、少なくとも部分的にフルオリドの形態で存在する、すなわち、フルオリドアニオンがイオン的相互作用を介してアニオン交換体に結合されている。
【0026】
これは、典型的には以下のようにして達成される:
A)使用するアニオン交換体を、フッ化水素および/またはフルオリドアニオンを含む塩と接触させ、その後で、それらを、フッ素化酸またはそれらの塩の希薄水溶液と接触させて、接触させた後に、イオン的相互作用によって結合されているアニオンの少なくとも幾分か、好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%がフルオリドアニオンになるようにするか、
および/または
B)それらの希薄水溶液がさらに、フッ化水素および/またはフルオリドアニオンを含むか、または、それらをアニオン交換体と接触させる前に、それらを、フッ化水素および/またはフルオリドアニオンを含む塩と混合する。
この場合、その希薄水溶液中のフッ素化酸またはそれらの塩の含量は、フッ化水素基準で比較、計算して、0.05〜10重量%のフッ化水素もしくはフルオリドアニオンを含有する塩であるのが好ましい。
【0027】
一つの例示的な実施態様においては、そのフッ素化酸またはそれらの塩の希薄水溶液のpHが、それぞれの場合において標準条件下で、1.0〜10.0、好ましくは2.0〜10.0、特に好ましくは3.0〜9.0、極めて特に好ましくは3.0〜8.0である。
【0028】
弱塩基性のアニオン交換体を使用する場合、そのpHは標準条件下で、好ましくは3.5〜7.5、好ましくは5.5〜7.0、特に好ましくは6.0〜6.8である。
【0029】
フッ素化酸またはそれらの塩の希薄水溶液をアニオン交換体と接触させることは、自体公知の方法で実施することが可能であって、たとえばアニオン交換体を、たとえばチューブまたはカラムのような慣用される装置の中に配置して、その中に希薄水溶液を流すこともできる。
【0030】
フッ素化酸またはそれらの塩の希薄水溶液をアニオン交換体と接触させた後の残る廃水は、典型的には、フッ素化酸またはそれらの塩の含量が、接触させる前に比較して、顕著に低く、そのプロセスは、使用した希薄水溶液中に存在しているフッ素化酸またはそれらの塩の少なくとも80重量%が、アニオン交換体によって、好ましくは90重量%結合されるように調節するのが好ましい。
【0031】
このことはたとえば、流体通過後にアニオン交換体を、それを適量の希薄水溶液を接触させて再生または置換させると確実になる。
【0032】
アニオン交換体のフッ素化酸またはそれらの塩に対する容量は、なかんずく、選択したアニオン交換体のタイプ、ならびに使用するフッ素化酸またはそれらの塩の希薄水溶液のタイプおよび含量に依存する。しかしながら、このことは、当業者ならば、自体公知の方法で簡単な予備的実験を行うことにより確認することが可能である。
【0033】
アニオン交換体と接触させた後に得られる廃水には、さらなる工程においてカルシウム塩を添加することによって、フッ化カルシウムの形態で少なくとも部分的に沈殿させることが可能な、フッ化水素および/またはフルオリドアニオンを含んでいる。
【0034】
必要があれば、その廃水を、慣用される吸着剤、たとえば活性炭と接触させて、フッ素化酸またはそれらの塩の残存している可能性がある部分を除去することもできる。
【0035】
変法A)が特に好ましい。したがって、本発明にはさらに、アニオン交換体を酸と接触させることによってそれらをコンディショニングする方法も包含されていて、ここでその酸はフッ化水素酸であり、さらには、アニオン交換体をコンディショニングするためのフッ化水素酸の使用も包含されている。
【0036】
アニオン交換体について先に特定された好ましい範囲が、この場合においても同様に適用される。
【0037】
コンディショニングのための、フッ化水素酸中のフッ化水素の含量は、たとえば0.1〜38重量%、好ましくは1〜25重量%、特に好ましくは2.5〜10重量%とすることができる。
【0038】
溶出液には、典型的には、希薄水溶液の場合に比較してより濃縮された形でのフッ素化酸またはそれらの塩が含まれ、さらにフッ化水素も含まれる。その濃縮度は、フッ素化酸およびそれらの塩の含量を基準にして、たとえば10倍〜200倍、好ましくは20倍〜50倍とすることができる。
【0039】
フッ素化酸またはそれらの塩は、場合によってはエステル化させた後に、たとえば有機溶媒を使用して溶出液から抽出することが可能であるか、またはその濃縮された溶出液を、たとえば廃水焼却によって処理することもできる。
【0040】
本発明による方法は特に、電気的フッ素化によりペルフルオロスルホン酸を製造することによって生成する、フッ素化酸および/またはそれらの塩を含む希薄水溶液の場合に好適である。
【0041】
たとえばペルフルオロスルホン酸を製造するためのそのような電気的フッ素化の際には、廃ガスの精製および製品の精製の結果として、典型的には、廃水としてペルフルオロスルホン酸の希薄水溶液が生成し、それには、たとえば二次的な酸化反応からのペルフルオロカルボン酸、さらには使用したフッ化水素の残留分が含まれている可能性がある。
【0042】
典型的には、そのような希薄水溶液には、式(I)の酸および式(II)の酸(ここで量的には先に説明したように、m=(n+1)である)、さらにはフッ化水素またはフルオリドが含まれるが、そのフッ化水素またはフルオリドは、典型的には、フッ化水素基準で比較、計算して1〜100g/Lの量で存在している。
【0043】
前述の希薄水溶液にはフッ化スルホニルが含まれていてもよく、典型的には0〜3.5のpHを有している。
【0044】
フッ化スルホニルを加水分解させ、場合によってはフッ化水素を分離除去させるためには、まず、塩基性の塩を添加することによってその希薄水溶液のpHを10〜14、好ましくは11〜13に調節して沈降した塩をすべて分離除去し、この方法で得られた希薄水溶液を先に定義されたpHに調節するのが好ましい。
【0045】
沈降したフッ化カルシウムの分離は、自体公知の方法、たとえば濾過法(必要があれば濾過助剤を使用)、デカンテーション法、遠心法、または沈降法によって実施することができる。
【0046】
塩基性の塩は、たとえば、ナトリウム、カリウムおよびカルシウムまたはそれらの混合物の炭酸塩および水酸化物である。
【0047】
本発明の利点は、従来技術に比較して、希薄水溶液からのフッ素化酸またはそれらの塩の分離に優れていることである。
【0048】
実施例
実施例1:サンプルの調製
ペルフルオロブタンスルホン酸製造工程からの廃水を集め、フッ化水素酸を使用してpH6.2に調節した。
【0049】
それぞれの場合において遊離の酸を基準に計算して、70mg/Lのペルフルオロブタン酸またはペルフルオロブタノエート(PFBA)、1290mg/Lのペルフルオロブタンスルホン酸またはペルフルオロブタンスルホネート(PFBS)、およびフルオリドを基準にして計算して1.5g/Lのフッ化水素またはフルオリドを含む希薄水溶液を得た。
【0050】
実施例2:吸着
約100mLの弱塩基性のアニオン交換体、Lewatit(登録商標)MP 62(Lanxess Deutschland GmbH製)を、ガラスフリットを備えた円筒状のガラスカラム(長さ150cm、直径12mm)に加え、水を用いて洗い流した。アニオン交換体のコンディショニングを実施するために、カラム体積の3倍量(すなわち、300mL)の4重量%強度フッ化水素酸溶液を、45分かけて、線形速度(linear rate)で流して、コンディショニングを行った。
【0051】
そのアニオン交換体の上に、実施例1からの希薄水溶液を、1時間あたりカラム体積の4倍量(すなわち、400mL)の割合で線形速度でフィードし、流出物の中のペルフルオロブタンスルホン酸もしくはその塩(PFBS)の濃度、またはペルフルオロブタン酸もしくはその塩(PFBA)の濃度を、HPLC−MSにより2.5時間間隔で測定した。その結果を表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
この実施例から、ペルフルオロブタンスルホン酸もしくはその塩(PFBS)の吸着が、ペルフルオロブタン酸もしくはその塩(PFBA)の場合よりも長い時間にわたって完全に進行するということが判る。見出された結果から、フッ素化酸の90重量%を超える吸着が、全時間において総合的に達成されるということが推論できる。
【0054】
実施例3:溶離
実施例2において吸着させたアニオン交換体を、全部で200mLの7重量%強度の水酸化ナトリウム溶液を用いて30分かけて再生させ、次いでそのアニオン交換体を、全部で400mLの水を使用し60分かけて洗浄したが、それらの工程はそれぞれ、線形速度で実施した。
【0055】
溶出液を合わせて、処理した。
【0056】
実施例4:コンディショニング
実施例3のようにして再生させたアニオン交換体を、実施例2の場合と同様にして、カラム体積の3倍量(すなわち、300mL)の4重量%強度フッ化水素酸溶液を、45分かけて、線形速度で流して、コンディショニングを行ない、実施例3と同様の吸着実験に再使用した。
【0057】
得られた測定値には変化はなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希薄水溶液からフッ素化酸またはそれらの塩を、前述の溶液をアニオン交換体と接触させることによって分離除去する方法であって、使用される前記アニオン交換体が、少なくとも部分的にフルオリドの形態で存在しているものであることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記希薄水溶液が少なくとも1種のフッ素化酸またはフッ素化酸の少なくとも1種の塩を含み、フッ素化酸またはフッ素化酸の塩の合計量が0.0005〜5重量%、好ましくは0.0005〜2重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記希薄水溶液が、式(I)のペルフルオロカルボン酸および/または式(II)のペルフルオロスルホン酸、またはそれらの塩を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
[化1]
F−(CFCOOH (I)
[化2]
F−(CFSOOH (II)
[式中、nおよびmは、それぞれの場合において、1〜24の整数である]
【請求項4】
前記希薄水溶液が、式(I)のペルフルオロカルボン酸および式(II)のペルフルオロスルホン酸を含み、nおよびmがそれぞれの場合において1〜24の整数であり、m=(n+1)であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記希薄水溶液が、フルオリド基準で比較、計算して、0.1〜10重量%の量の、フッ化水素またはフルオリドをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
使用される前記アニオン交換体が、式(IV)の構造要素もしくは式(V)の構造要素を有するか、または式(IV)および(V)の構造要素を有するものであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
[化3]
−N(R)X (IV)
[式中、
、RおよびRが、それぞれの場合において互いに独立して、水素であるか、または、ヒドロキシもしくはC〜C−アルコキシによってさらに非置換、モノ置換もしくはポリ置換のいずれかをされていてもよいC〜C12−アルキルであるか、または、ラジカルR、RおよびRのうちの二つが水素ではない場合、それらのラジカルが合体して、ヒドロキシもしくはC〜C−アルコキシによって非置換、モノ置換もしくはポリ置換されていてもよいC〜C12−アルキレンであるが、ただしそれらのラジカルR、RおよびRの少なくとも1個が水素であり、そして
が、アニオンである]
[化4]
−N(R) (V)
[式中、
およびRが、それぞれの場合において互いに独立して、水素であるか、または、ヒドロキシもしくはC〜C−アルコキシによってさらに非置換、モノ置換もしくはポリ置換のいずれかをされていてもよいC〜C12−アルキルであるか、または、ラジカルRおよびRのうちの二つが水素ではない場合、それらのラジカルが合体して、ヒドロキシもしくはC〜C−アルコキシによって非置換、モノ置換もしくはポリ置換されていてもよいC〜C12−アルキレンである]
【請求項7】
前記希薄水溶液のpHが、3.5〜7.5であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
使用される前記アニオン交換体が、再生され、再使用されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記アニオン交換体を酸と接触させることによってアニオン交換体をコンディショニングさせる方法であって、前記酸がフッ化水素酸であることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法における、アニオン交換体の使用。
【請求項11】
アニオン交換体をコンディショニングさせるための、フッ化水素酸の使用。

【公表番号】特表2013−519517(P2013−519517A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553290(P2012−553290)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052204
【国際公開番号】WO2011/101342
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】