説明

フッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリドの製造方法

【課題】フッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリドを効率的に製造する。
【解決手段】一般式(I):


(式中、R、R、R、Rは、メチル基、エチル基、n−プロピル基およびn−ブチル基からなる群より互いに独立して選択される)で表わされるビス(ジアルキルアミノ)メタンの存在下に、第1の原料として、含フッ素カルボニル化合物、2,2,3,3−テトラフルオロオキセタンおよびテトラフルオロエタンスルトンからなる群より選択される少なくとも1つの化合物と、第2の原料として、ヘキサフルオロプロピレンオキシドとを、非プロトン性極性溶媒中で反応させて、フッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリドを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリドの製造方法に関し、より詳細には、ヘキサフルオロプロピレンオキシドを用いてフッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリドを得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリドは、フッ素オイル、フッ素樹脂、フッ素ゴムなどの原料や、有機合成中間体として有用であり、さまざまな製造方法が研究されてきている。
【0003】
従来、フッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリドは、ヘキサフルオロプロピレンオキシドを単独で、またはヘキサフルオロプロピレンオキシドを含フッ素カルボニル化合物と共に、溶媒中でオリゴメリ反応させることにより製造されている。
【0004】
上記オリゴメリ反応において、金属ハロゲン化物などのイオン性固体触媒が一般的に使用されている(例えば特許文献1、2を参照のこと)。上記オリゴメリ反応は、水分が混入すると反応速度が低下するため、水分の混入を極力避ける必要がある。しかしながら、イオン性固体触媒は一般的に吸湿性を有するので、その取り扱いに注意を要し、煩雑である。また、上記オリゴメリ反応の原料として使用するヘキサフルオロプロピレンオキシド中には、ヘキサフルオロプロピレンが不純物として含まれていることが通常である。ヘキサフルオロプロピレンは、ヘキサフルオロプロピレンオキシド中に、その製造方法に由来して存在し、両者を分離することは極めて困難である。かかるヘキサフルオロプロピレンオキシド原料を使用しつつ、イオン性固体触媒を使用すると、ヘキサフルオロプロピレンのオリゴメリ反応も進行してしまい、製品中に意図しない副生物が混入することとなる。
【0005】
そこで、上記イオン性固体触媒に代えて、触媒として、ビス(ジアルキルアミノ)ジフルオロメタンを使用する方法(特許文献3)、テトラ低級アルキル尿素を使用する方法(特許文献4、5)、アルキレン尿素化合物を使用する方法(特許文献6)が提案されている。これらの触媒は、上記イオン性固体触媒に比較して取り扱いが容易であり、また、非イオン性であるため、副反応であるヘキサフルオロプロピレンの単独オリゴメリ反応を抑制して、目的とするフッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリドを効率的に製造することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第3250808号明細書
【特許文献2】米国特許第3311658号明細書
【特許文献3】特開昭52−156810号公報
【特許文献4】特開平2−4733号公報
【特許文献5】特開昭62−175437
【特許文献6】特開平4−139145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これまで提案されているような触媒(特許文献3〜6を参照のこと)は、金属ハロゲン化物(例えばフッ化セシウム)などのイオン性触媒(特許文献1〜2を参照のこと)と比較して触媒能が低い。
【0008】
このことは、ヘキサフルオロプロピレンオキシドを単独でオリゴメリ反応に供する場合には大きな問題とはならないが、ヘキサフルオロプロピレンオキシドを含フッ素カルボニル化合物などの他の化合物と一緒にオリゴメリ反応に供して当該他の化合物に由来する部分を一端に有するフッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリドを得る場合には、不都合である。より詳細には、後者の場合、副反応としてヘキサフルオロプロピレンオキシドの単独オリゴメリ反応が進行して、n−ヘキサフルオロプロピル基を一端に有する副生物を生じ、目的とするフッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリドの収率が低下することとなる。この問題は、ヘキサフルオロプロピレンオキシドを2分子以上でオリゴメリ反応させる場合に顕著である。
【0009】
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、ヘキサフルオロプロピレンオキシドを他の化合物と反応させて、フッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリドを効率的に製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、所定の構造を有する含フッ素カルボニル化合物、2,2,3,3−テトラフルオロオキセタン、および/またはテトラフルオロエタンスルトンと、ヘキサフルオロプロピレンオキシドとを反応させて、これら含フッ素カルボニル化合物、2,2,3,3−テトラフルオロオキセタンおよびテトラフルオロエタンスルトンのいずれかに由来する部分を一端に有するフッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリドを製造する方法において使用するのに適した触媒について鋭意検討を重ねてきた。その結果、特定の構造を有するビス(ジアルキルアミノ)メタンを触媒として使用する場合に、フッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリド(特に、ヘキサフルオロプロピレンオキシドが2分子以上反応したフッ素化ポリエーテル含有カルボニルフルオリド)が極めて効率的に得られることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明によれば、フッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリドの製造方法であって、
一般式(I):
【化1】

(式中、R、R、R、Rは、メチル基、エチル基、n−プロピル基およびn−ブチル基からなる群より互いに独立して選択される)で表わされるビス(ジアルキルアミノ)メタンの存在下に、
第1の原料として、
(A)一般式(II):
【化2】

(式中、RおよびRは、フッ素原子、トリフルオロメチル基、1,1,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロ−n−プロピル基、ノナフルオロ−n−ブチル基、ウンデカフルオロ−n−ペンチル基、トリデカフルオロ−n−ヘキシル基、ペンタデカフルオロ−n−ヘプチル基、ヘプタデカフルオロ−n−オクチル基、1−トリフルオロメトキシ−1,2,2,2−テトラフルオロエチル基、1−(ヘプタフルオロ−n−プロポキシ)−1,2,2,2−テトラフルオロエチル基、フルオロスルホニル基、1−(1,1,2,2−テトラフルオロ−2−(フルオロスルホニル)エトキシ)−1,2,2,2−テトラフルオロエチル基、1−(1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロ−3−(フルオロスルホニル)プロポキシ)−1,2,2,2−テトラフルオロエチル基、および1−(1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロ−4−(フルオロスルホニル)ブトキシ)−1,2,2,2−テトラフルオロエチル基からなる群より互いに独立して選択されるが、RおよびRの一方がペンタフルオロエチル基または1−(ヘプタフルオロ−n−プロポキシ)−1,2,2,2−テトラフルオロエチル基である場合には、もう一方はフッ素原子ではない)で表わされる含フッ素カルボニル化合物、
(B)2,2,3,3−テトラフルオロオキセタン、および
(C)テトラフルオロエタンスルトン
からなる群より選択される少なくとも1つの化合物と、
第2の原料として、ヘキサフルオロプロピレンオキシドとを、非プロトン性極性溶媒中で反応させて、
一般式(III):
【化3】

(式中、nは0以上の整数であり、RおよびRは、
前記第1の原料が(A)一般式(II)で表わされる含フッ素カルボニル化合物である場合には、一般式(II)における前記RおよびRと同じであり、
前記第1の原料が(B)2,2,3,3−テトラフルオロオキセタンである場合には、それぞれジフルオロメチル基およびフッ素原子であり、
前記第1の原料が(C)テトラフルオロエタンスルトンである場合には、それぞれジフルオロ(フルオロスルホニル)メチル基およびフッ素原子である)で表わされるフッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリドを得ることを含む、製造方法が提供される。
【0012】
本発明の上記製造方法によれば、一般式(II)で表わされる含フッ素カルボニル化合物、2,2,3,3−テトラフルオロオキセタン、および/またはテトラフルオロエタンスルトンと、ヘキサフルオロプロピレンオキシドとを反応させて、一般式(III)で表わされるフッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリドを製造する方法において、一般式(I)で表わされるビス(ジアルキルアミノ)メタンを触媒として使用することによって、一般式(III)で表わされるフッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリド、特に、一般式(III)中、nが1以上の整数であるものを、極めて効率的に得ることができる。
【0013】
本発明において、一般式(I)で表わされるビス(ジアルキルアミノ)メタンは、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノメタンおよびN,N,N’,N’−テトラエチルジアミノメタンの少なくとも一方を含んでいてよい。これらは、本発明で実施されるオリゴメリ反応において高い触媒活性を有し、また、入手の容易性、経済性などの点で好都合である。なかでも、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノメタンが好ましい。
【0014】
本発明において、一般式(II)で表わされる含フッ素カルボニル化合物は、トリフルオロ酢酸フルオリド、ヘプタフルオロブタン酸フルオリド、ウンデカフルオロヘキサン酸フルオリド、ペンタデカフルオロオクタン酸フルオリド、フッ化カルボニル、ヘキサフルオロアセトン、2,3,3,3−テトラフルオロ−2−(1,1,2,2−テトラフルオロ−2−(フルオロスルホニル)エトキシ)プロピオン酸フルオリド、2,3,3,3−テトラフルオロ−2−(1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロ−3−(フルオロスルホニル)プロポキシ)プロピオン酸フルオリド、および2,3,3,3−テトラフルオロ−2−(1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロ−4−(フルオロスルホニル)ブトキシ)プロピオン酸フルオリドからなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含んでいてよい。これらは、入手の容易性、経済性などの点で好都合である。なかでも、トリフルオロ酢酸フルオリド、フッ化カルボニル、ヘキサフルオロアセトン、および2,3,3,3−テトラフルオロ−2−(1,1,2,2−テトラフルオロ−2−(フルオロスルホニル)エトキシ)プロピオン酸フルオリドからなる群より選択される少なくとも1つの化合物が好ましく、フッ化カルボニルおよびヘキサフルオロアセトンの少なくとも一方がより好ましい。
【0015】
本発明において、非プロトン性極性溶媒は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールのジアルキルエーテル、ならびにテトラヒドロフラン、p−ジオキサン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリルおよびスベロニトリルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含んでいてよい。これらの溶媒は、反応中間体として生成する塩を溶解する点と、工業的に多用されるために入手性の点で好都合である。なかでも、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールのジアルキルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましい。より具体的には、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラエチレングリコールジメチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0016】
本発明の上記製造方法は、一般式(III)中、nが1以上の整数であるフッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリドを得るのに適する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ヘキサフルオロプロピレンオキシドを、所定の構造を有する含フッ素カルボニル化合物、2,2,3,3−テトラフルオロオキセタンおよび/またはテトラフルオロエタンスルトンと反応させて、フッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリドを効率的に製造できる方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のフッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリドの製造方法について詳述する。
【0019】
本発明において、第1の原料として、(A)所定の構造を有する含フッ素カルボニル化合物(以下、単に含フッ素カルボニル化合物とも言う)、(B)2,2,3,3−テトラフルオロオキセタン、および(C)テトラフルオロエタンスルトンからなる群より選択される少なくとも1つの化合物を使用する。
【0020】
含フッ素カルボニル化合物は、一般式(II):
【化4】

で表わされる。この式中、RおよびRは、フッ素原子、トリフルオロメチル基、1,1,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロ−n−プロピル基、ノナフルオロ−n−ブチル基、ウンデカフルオロ−n−ペンチル基、トリデカフルオロ−n−ヘキシル基、ペンタデカフルオロ−n−ヘプチル基、ヘプタデカフルオロ−n−オクチル基、1−トリフルオロメトキシ−1,2,2,2−テトラフルオロエチル基、1−(ヘプタフルオロ−n−プロポキシ)−1,2,2,2−テトラフルオロエチル基、フルオロスルホニル基、1−(1,1,2,2−テトラフルオロ−2−(フルオロスルホニル)エトキシ)−1,2,2,2−テトラフルオロエチル基、1−(1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロ−3−(フルオロスルホニル)プロポキシ)−1,2,2,2−テトラフルオロエチル基、および1−(1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロ−4−(フルオロスルホニル)ブトキシ)−1,2,2,2−テトラフルオロエチル基からなる群より互いに独立して選択可能である。
但し、RおよびRの一方がペンタフルオロエチル基または1−(ヘプタフルオロ−n−プロポキシ)−1,2,2,2−テトラフルオロエチル基である場合には、もう一方はフッ素原子ではないものとする。その理由は、ヘキサフルオロプロピレンオキシドの単独オリゴメリ反応により生成する副生物を、目的生成物である一般式(III)で表わされるフッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリドから除く趣旨である。しかしながら、これは、本発明の製造方法において、ヘキサフルオロプロピレンオキシドの単独オリゴメリ反応が全く進行しないことを意図したものでないことに留意されたい。
また、本発明を限定するものではないが、RおよびRの一方がフルオロスルホニル基である場合には、もう一方はフッ素原子であることが好ましい。
【0021】
かかる含フッ素カルボニル化合物は、例えば、トリフルオロ酢酸フルオリド、ヘプタフルオロブタン酸フルオリド、ウンデカフルオロヘキサン酸フルオリド、ペンタデカフルオロオクタン酸フルオリド、フッ化カルボニル、ヘキサフルオロアセトン、2,3,3,3−テトラフルオロ−2−(1,1,2,2−テトラフルオロ−2−(フルオロスルホニル)エトキシ)プロピオン酸フルオリド、2,3,3,3−テトラフルオロ−2−(1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロ−3−(フルオロスルホニル)プロポキシ)プロピオン酸フルオリド、および2,3,3,3−テトラフルオロ−2−(1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロ−4−(フルオロスルホニル)ブトキシ)プロピオン酸フルオリドであってよく、これらの1種を単独で使用しても、または2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらは、含フッ素カルボニル化合物のうちでは、比較的、入手が容易であり、安価である。なかでも、トリフルオロ酢酸フルオリド、フッ化カルボニル、ヘキサフルオロアセトン、および2,3,3,3−テトラフルオロ−2−(1,1,2,2−テトラフルオロ−2−(フルオロスルホニル)エトキシ)プロピオン酸フルオリドが好ましく、フッ化カルボニルおよびヘキサフルオロアセトンがより好ましく、フッ化カルボニルが特に好ましい。
【0022】
2,2,3,3−テトラフルオロオキセタンおよびテトラフルオロエタンスルトンは、いずれも特に限定されず、市販で入手可能である。これらはいずれも、その製造方法等に由来する不純物として、例えば酸分を含んでいてもよいが、かかる酸分は反応を阻害し得るために予め除去してあることが望ましい。
【0023】
第1の原料には、これら含フッ素カルボニル化合物、2,2,3,3−テトラフルオロオキセタンおよびテトラフルオロエタンスルトンのうち、これらの1種を単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
また、本発明において、第2の原料として、ヘキサフルオロプロピレンオキシドを使用する。
【0025】
第2の原料は、ヘキサフルオロプロピレンを含む粗ヘキサフルオロプロピレンオキシドの形態であってよい。しかしながら、無用な成分の混入は反応装置の内圧を上昇させるため、ヘキサフルオロプロピレンはある程度除去してあることが望ましい。具体的には、第2の原料は、ヘキサフルオロプロピレンオキシド純度85重量%以上であることが好ましい。
【0026】
上記含フッ素カルボニル化合物、2,2,3,3−テトラフルオロオキセタンおよび/またはテトラフルオロエタンスルトンに対する、ヘキサフルオロプロピレンオキシドの割合(モル%)は、目的生成物であるフッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリドの重合度(一般式(III)中のn数)や、第1の原料の種類、反応温度などに応じて異なり得る。
【0027】
本発明においては、触媒として、一般式(I):
【化5】

で表わされるビス(ジアルキルアミノ)メタンを使用する。この式中、R、R、R、Rは、メチル基、エチル基、n−プロピル基およびn−ブチル基からなる群より互いに独立して選択可能である。
【0028】
一般式(I)で表わされるビス(ジアルキルアミノ)メタンは、常温常圧ならびに一般的に反応に適用される温度および圧力範囲において液体であり、取り扱いが簡便である。また、一般式(I)で表わされるビス(ジアルキルアミノ)メタンは、非イオン性触媒であるものの、本発明が対象とする反応において、金属ハロゲン化物などのイオン性触媒と同程度に高い触媒能を有する。
【0029】
かかる触媒は、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノメタン(ビス(ジメチルアミノ)メタンとも呼ばれ、一般式(I)中、R=R=R=R=メチル基)およびN,N,N’,N’−テトラエチルジアミノメタン(ビス(ジエチルアミノ)メタンとも呼ばれ、一般式(I)中、R=R=R=R=エチル基)であってよく、これらを別個に使用しても、または組み合わせて使用してもよい。これらは、反応点である窒素原子が適度な電子密度を有するために、本発明で実施されるオリゴメリ反応において(ヘキサフルオロプロピレンオキシドの単独オリゴメリ反応におけるよりも)高い触媒活性を示し得る。また、一般式(I)で表わされるビス(ジアルキルアミノ)メタンのうちでは、比較的、入手が容易であり、安価である。なかでも、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノメタンが触媒活性と入手性の点で好ましい。
【0030】
触媒の使用量は、特に限定されないが、経済性を考慮すると、上記含フッ素カルボニル化合物、2,2,3,3−テトラフルオロオキセタンおよび/またはテトラフルオロエタンスルトン1モル(2種以上を使用する場合は合計)に対し、触媒濃度が0.05〜1.0モル程度であることが好ましく、0.12〜0.50モル程度であることがより好ましい。
【0031】
上記第1および第2の原料の反応は、上記触媒の存在下にて、溶媒中で進行する。本発明において、溶媒には、非プロトン性極性溶媒を使用する。
【0032】
非プロトン性極性溶媒には、反応を実施する温度において凝固しない限り任意の適切な非プロトン性極性溶媒を選択可能である。かかる非プロトン性極性溶媒は、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールのジアルキルエーテル、ならびにテトラヒドロフラン、p−ジオキサン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリルおよびスベロニトリルであってよく、これらの1種を単独で使用しても、または2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらは、反応中間体として生成する塩を溶解する点と、工業的に多用されるために入手性の点で好ましい。なかでも、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールのジアルキルエーテルが、取り扱い時の安全性、沸点または凝固点などの物性の点で好ましく、より具体的には、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラエチレングリコールジメチルエーテルを使用できる。
【0033】
反応温度は、特に限定されず、触媒濃度などに応じて適宜設定してよいが、安全性、経済性などを考慮すると、通常、−50〜50℃程度であってよく、好ましくは−20〜30℃程度である。反応温度は一定であっても、必要に応じて途中で昇温もしくは冷却を行ってもよい。
【0034】
反応時の圧力は、特に限定されず、常圧、加圧または減圧下に反応を実施するものであってよい。
【0035】
反応時間(または滞留時間)は、特に限定されず、触媒濃度や、所望されるフッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリドの種類(特に、一般式(III)中のn数)などに応じて適宜設定され得る。
【0036】
本発明の製造方法は、バッチ式および連続式のいずれでも実施可能である。具体的な方法は、特に限定されないが、例えば次の通りである。まず、金属製オートクレーブ等の容器(反応器)に溶媒および触媒を予め投入する。そして、反応器内を適宜、圧力調整した(例えば真空ポンプ等で減圧した)後、第1の原料である含フッ素カルボニル化合物、2,2,3,3−テトラフルオロオキセタンおよび/またはテトラフルオロエタンスルトンと、第2の原料であるヘキサフルオロプロピレンオキシドとを、反応器に(例えばいずれも気相で)導入して、反応を液相で実施する。このとき、必要に応じて反応器内の液相を加熱、冷却、撹拌してもよい。またこのとき、第1の原料である含フッ素カルボニル化合物、2,2,3,3−テトラフルオロオキセタンおよび/またはテトラフルオロエタンスルトンと、第2の原料であるヘキサフルオロプロピレンオキシドとは、反応器に同時に導入しても、別途に順次導入してもよいが、ヘキサフルオロプロピレンオキシドの単独オリゴメリ反応をできるだけ防止するためや、操作の簡便性などを考慮すると、第1の原料である含フッ素カルボニル化合物、2,2,3,3−テトラフルオロオキセタンおよび/またはテトラフルオロエタンスルトンを先に導入しておくことが好ましい。
【0037】
以上により、一般式(III):
【化6】

で表わされるフッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリドが得られる。この式中、RおよびRは、
第1の原料が(A)一般式(II)で表わされる含フッ素カルボニル化合物である場合には、一般式(II)における上記RおよびRと同じであり、
第1の原料が(B)2,2,3,3−テトラフルオロオキセタンである場合には、それぞれジフルオロメチル基およびフッ素原子であり、
第1の原料が(C)テトラフルオロエタンスルトンである場合には、それぞれジフルオロ(フルオロスルホニル)メチル基およびフッ素原子である。もちろん、第1の原料として、含フッ素カルボニル化合物、2,2,3,3−テトラフルオロオキセタンおよびテトラフルオロエタンスルトンの2種以上を組み合わせて使用した場合には、使用した原料に応じて反応生成物が生じ、得られるフッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリドはこれら反応生成物の混合物となる。
【0038】
また、上記式中、nは0以上の整数であればよいが、本発明の製造方法は、nが1以上の整数であるフッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリドを効率的に得ることができる。n数は、所望される目的生成物の物性などに応じて異なり得る。n数の上限は特に存在しないが、例えば100以下、具体的には50以下、特に25以下、より特に5以下であってよい。
【0039】
このとき、副反応としてヘキサフルオロプロピレンの単独オリゴメリ反応が進行して、以下の一般式(IV):
【化7】

で表わされる副生物を生じることが考えられ得る。しかしながら、本発明において触媒として使用する上記一般式(II)で表わされるビス(ジアルキルアミノ)メタンは、金属ハロゲン化物などのイオン性触媒と同程度に高い触媒能を有することから、ヘキサフルオロプロピレンオキシドの単独オリゴメリ反応を抑制することができ、よって、目的とするフッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリドを効率的に得ることができる。
【0040】
以上により、一般式(III)で表わされるフッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリドが得られる。
【0041】
生成したフッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリドは、通常、液相(反応溶液)中に存在する。反応後の液相は、常法に従って、分液、抽出、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー、洗浄などの公知の方法で処理して、フッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリドを精製分離してよい。
【実施例】
【0042】
(実施例1)
ハステロイC製の200mLのオートクレーブ(反応器)を密閉し、触媒として2.04gのビス(ジメチルアミノ)メタンと、非プロトン性極性溶媒として49.85gのトリエチレングリコールジメチルエーテルとを反応器に吸入させた。次いで、反応器を−15℃に冷却し、反応器内の溶液を撹拌しながら、第1の原料として5.0gのフッ化カルボニルを反応器に導入した。10分間撹拌を継続した後に、第2の原料として13.24gのヘキサフルオロプロピレンオキシド(純度95重量%)を毎分0.1gの速度で反応器に導入し、導入終了後1時間撹拌を継続した。撹拌を終了した時点で反応器内は負圧であったため、約20mLのメタノールを反応器に吸入させて反応生成物をエステル化し、反応を停止させた。そして、反応器を開放して反応溶液を分液漏斗に移し、150mLの純水を加えて下層を分離した後に、残部溶液を50mLの純水で2回洗浄し、14.20gの無色透明液体を得た。得られた液体をガスクロマトグラフィー分析に付して、反応生成物の組成を調べた。結果を表1に示す。なお、ガスクロマトフィー分析は、分析の都合上、反応性生成物のエステル化物の形態で行ったが、反応生成物であるフッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリドの組成と、そのエステル化物の組成は、実質的に同じであると考えて差し支えない(以下の実施例および比較例も同様である)。
【0043】
【表1】

【0044】
(実施例2)
触媒として2.04gのビス(ジメチルアミノ)メタンと、非プロトン性極性溶媒として49.49gのトリエチレングリコールジメチルエーテルとを用い、第2の原料として25.16gのヘキサフルオロプロピレンオキシド(純度95重量%)を用いたこと以外は、実施例1と同様として、26.18gの無色透明液体を得た。得られた液体をガスクロマトグラフィー分析に付して、反応生成物の組成を調べた。結果を表2に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
(比較例1)
ハステロイC製の200mLのオートクレーブ(反応器)を密閉し、触媒として2.66gのビス(ジメチルアミノ)ジフルオロメタンと、非プロトン性極性溶媒として49.30gのトリエチレングリコールジメチルエーテルとを反応器に吸入させた。次いで、反応器を−15℃に冷却し、反応器内の溶液を撹拌しながら、第1の原料として5.0gのフッ化カルボニルを反応器に導入した。10分間撹拌を継続した後に、第2の原料として13.24gのヘキサフルオロプロピレンオキシド(純度95重量%)を毎分0.1gの速度で反応器に導入し、導入終了後1時間撹拌を継続した。撹拌を終了した時点で反応器内は陽圧であったため、大気圧となるまで反応器内のガスを排気した。排気したガスの重量は13.63gであった。次いで、反応器内に約10mLのメタノールを導入して反応生成物をエステル化し、反応を停止させた。そして、反応器を開放して反応溶液を分液漏斗に移し、100mLの純水を加えて下層を分離した後に、残部溶液を50mLの純水で2回洗浄し、1.81gの無色透明液体を得た。得られた液体をガスクロマトグラフィー分析に付して、反応生成物の組成を調べたところ、一般式(III)の化合物および一般式(IV)の化合物のいずれもがほとんど生成していなかった。また、得られた液体を質量分析に付したところ、その主成分はCFCF(OCH)C(=O)OCHであることが確認された。この主成分を成す化合物は、未反応のヘキサフルオロプロピレンオキシドがメタノールと反応して生成したものと理解される。
【0047】
比較例1の結果より、ビス(ジメチルアミノ)ジフルオロメタンは、実施例1および2で使用したビス(ジメチルアミノ)メタンとは全く異なり、本発明が対象とする反応において有効な触媒ではないことは明らかである。
【0048】
(比較例2)
ハステロイC製の200mLのオートクレーブ(反応器)を密閉し、触媒として2.23gのN,N,N’,N’−テトラメチル尿素と、非プロトン性極性溶媒として49.52gのトリエチレングリコールジメチルエーテルとを反応器に吸入させた。次いで、反応器を−15℃に冷却し、反応器内の溶液を撹拌しながら、第1の原料として5.0gのフッ化カルボニルを反応器に導入した。10分間撹拌を継続した後に、第2の原料として13.24gのヘキサフルオロプロピレンオキシド(純度95重量%)を毎分0.1gの速度で反応器に導入し、導入終了後30分間撹拌を継続した。撹拌を終了した時点で反応器内は負圧であったため、約20mLのメタノールを反応器に吸入させて反応生成物をエステル化し、反応を停止させた。そして、反応器を開放して反応溶液を分液漏斗に移し、150mLの純水を加えて下層を分離した後に、残部溶液を50mLの純水で2回洗浄し、15.66gの無色透明液体を得た。得られた液体をガスクロマトグラフィー分析に付して、反応生成物の組成を調べた。結果を表3に示す。
【0049】
【表3】

【0050】
(比較例3)
触媒として2.16gのN,N,N’,N’−テトラメチル尿素と、非プロトン性極性溶媒として49.52gのトリエチレングリコールジメチルエーテルとを用い、第2の原料として25.16gのヘキサフルオロプロピレンオキシド(純度95重量%)を用いたこと以外は、比較例2と同様にして、26.80gの無色透明液体を得た。得られた液体をガスクロマトグラフィー分析に付して、反応生成物の組成を調べた。結果を表4に示す。
【0051】
【表4】

【0052】
(比較例4)
ハステロイC製の200mLのオートクレーブ(反応器)を密閉し、触媒として2.20gの1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと、非プロトン性極性溶媒として48.88gのトリエチレングリコールジメチルエーテルとを反応器に吸入させた。次いで、反応器を−15℃に冷却し、反応器内の溶液を撹拌しながら、第1の原料として5.0gのフッ化カルボニルを反応器に導入した。10分間撹拌を継続した後に、第2の原料として13.24gのヘキサフルオロプロピレンオキシド(純度95重量%)を毎分0.1gの速度で反応器に導入し、導入終了後30分間撹拌を継続した。撹拌を終了した時点で反応器内は負圧であったため、約20mLのメタノールを反応器に吸入させて反応生成物をエステル化し、反応を停止させた。そして、反応器を開放して反応溶液を分液漏斗に移し、150mLの純水を加えて下層を分離した後に、残部溶液を50mLの純水で2回洗浄し、14.61gの無色透明液体を得た。得られた液体をガスクロマトグラフィー分析に付して、反応生成物の組成を調べた。結果を表5に示す。
【0053】
【表5】

【0054】
(比較例5)
触媒として2.19gの1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと、非プロトン性極性溶媒として49.34gのトリエチレングリコールジメチルエーテルとを用い、第2の原料として25.16gのヘキサフルオロプロピレンオキシド(純度95重量%)を用いたこと以外は、比較例4と同様にして、27.00gの無色透明液体を得た。得られた液体をガスクロマトグラフィー分析に付して、反応生成物の組成を調べた。結果を表6に示す。
【0055】
【表6】

【0056】
(比較例6)
ハステロイC製の200mLのオートクレーブ(反応器)を密閉し、触媒として2.47gのN,N’−ジメチルプロピレン尿素と、非プロトン性極性溶媒として49.31gのトリエチレングリコールジメチルエーテルとを反応器に吸入させた。次いで、反応器を−15℃に冷却し、反応器内の溶液を撹拌しながら、第1の原料として5.0gのフッ化カルボニルを反応器に導入した。10分間撹拌を継続した後に、第2の原料として13.24gのヘキサフルオロプロピレンオキシド(純度95重量%)を毎分0.1gの速度で反応器に導入し、導入終了後1時間撹拌を継続した。撹拌を終了した時点で反応器内は負圧であったため、約20mLのメタノールを反応器に吸入させて反応生成物をエステル化し、反応を停止させた。そして、反応器を開放して反応溶液を分液漏斗に移し、150mLの純水を加えて下層を分離した後に、残部溶液を50mLの純水で2回洗浄し、13.53gの無色透明液体を得た。得られた液体をガスクロマトグラフィー分析に付して、反応生成物の組成を調べた。結果を表7に示す。
【0057】
【表7】

【0058】
実施例1と比較例2、4、6とを比較し、実施例2と比較例3、5とを比較すると、実施例1、2において、一般式(IV)で表わされる化合物(副生物)の生成が抑制され、一般式(III)で表わされる化合物(目的生成物であるフッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリド)、特に、一般式(III)中、nが1以上の整数である化合物が効率的に得られることが確認された。
【0059】
(比較例7)
ハステロイC製の200mLのオートクレーブ(反応器)に、触媒として2.80gのフッ化セシウムを投入して密閉し、非プロトン性極性溶媒として49.43gのトリエチレングリコールジメチルエーテルを反応器に吸入させた。次いで、反応器を−15℃に冷却し、反応器内の溶液を撹拌しながら、第1の原料として5.0gのフッ化カルボニルを反応器に導入した。10分間撹拌を継続した後に、第2の原料として13.24gのヘキサフルオロプロピレンオキシド(純度95重量%)を毎分0.1gの速度で反応器に導入し、導入終了後30分間撹拌を継続した。撹拌を終了した時点で反応器内は負圧であったため、約20mLのメタノールを反応器に吸入させて反応生成物をエステル化し、反応を停止させた。そして、反応器を開放して反応溶液を分液漏斗に移し、150mLの純水を加えて下層を分離した後に、残部溶液を50mLの純水で2回洗浄し、14.22gの無色透明液体を得た。得られた液体をガスクロマトグラフィー分析に付して、反応生成物の組成を調べた。結果を表8に示す。
【0060】
【表8】

【0061】
(比較例8)
触媒として2.82gのフッ化セシウムと、非プロトン性極性溶媒として49.47gのトリエチレングリコールジメチルエーテルとを用い、第2の原料として25.16gのヘキサフルオロプロピレンオキシド(純度95重量%)を用い、ヘキサフルオロプロピレンオキシドの導入終了後60分間撹拌を継続したこと以外は、比較例7と同様にして、26.94gの無色透明液体を得た。得られた液体をガスクロマトグラフィー分析に付して、反応生成物の組成を調べた。結果を表9に示す。
【0062】
【表9】

【0063】
実施例1および2と、触媒としてフッ化セシウムを用いた比較例7および8とをそれぞれ比較すると、実施例1および2において、一般式(IV)で表わされる化合物(副生物)の生成が比較例7および8に準じる程度に抑制され、一般式(III)で表わされる化合物(目的生成物であるフッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリド)が比較例7および8にほぼ相当する程度に効率的に得られることが確認された。特に、一般式(III)中、nが1以上の整数である化合物は、実施例1および2において、それぞれ比較例7および8よりも効率的に得られた。
【0064】
(比較例9)
ハステロイC製の200mLのオートクレーブ(反応器)を密閉し、触媒として2.27gのN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンと、非プロトン性極性溶媒として49.37gのトリエチレングリコールジメチルエーテルとを反応器に吸入させた。次いで、反応器を−15℃に冷却し、反応器内の溶液を撹拌しながら、第1の原料として5.0gのフッ化カルボニルを反応器に導入した。10分間撹拌を継続した後に、第2の原料として13.24gのヘキサフルオロプロピレンオキシド(純度95重量%)を毎分0.1gの速度で反応器に導入し、ヘキサフルオロプロピレンオキシドの導入終了後は、反応器内が負圧となるまで撹拌を継続したところ、5.5時間を要した。次いで、約20mLのメタノールを反応器に吸入させて反応生成物をエステル化し、反応を停止させた。そして、反応器を開放して反応溶液を分液漏斗に移し、150mLの純水を加えて下層を分離した後に、残部溶液を50mLの純水で2回洗浄し、12.73gの無色透明液体を得た。得られた液体をガスクロマトグラフィー分析に付して、反応生成物の組成を調べた。結果を表10に示す。
【0065】
【表10】

【0066】
(比較例10)
ハステロイC製の200mLのオートクレーブ(反応器)を密閉し、触媒として3.32gのN,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサンと、非プロトン性極性溶媒として49.32gのトリエチレングリコールジメチルエーテルとを反応器に吸入させた。次いで、反応器を−15℃に冷却し、反応器内の溶液を撹拌しながら、第1の原料として5.0gのフッ化カルボニルを反応器に導入した。10分間撹拌を継続した後に、第2の原料として13.24gのヘキサフルオロプロピレンオキシド(純度95重量%)を毎分0.1gの速度で反応器に導入し、ヘキサフルオロプロピレンオキシドの導入終了後は、反応器内が負圧となるまで撹拌を継続したところ、8時間を要した。次いで、約20mLのメタノールを反応器に吸入させて反応生成物をエステル化し、反応を停止させた。そして、反応器を開放して反応溶液を分液漏斗に移し、150mLの純水を加えて下層の分離を試みたが、溶液が乳化したために分離することができなかった。僅かに分液した下層(エステル層)をガスクロマトグラフィー分析に付して、反応生成物の組成を調べた。結果を表11に示す。
【0067】
【表11】

【0068】
実施例1と比較例9、10とを比較すると、実施例1において、一般式(IV)で表わされる化合物(副生物)の生成が抑制され、一般式(III)で表わされる化合物(目的生成物であるフッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリド)、特に、一般式(III)中、nが1以上の整数である化合物が効率的に得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の製造方法によって得られるフッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリドは、例えば、高分子製品原料、有機合成中間体などの各種用途に利用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリドの製造方法であって、
一般式(I):
【化1】

(式中、R、R、R、Rは、メチル基、エチル基、n−プロピル基およびn−ブチル基からなる群より互いに独立して選択される)で表わされるビス(ジアルキルアミノ)メタンの存在下に、
第1の原料として、
(A)一般式(II):
【化2】

(式中、RおよびRは、フッ素原子、トリフルオロメチル基、1,1,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロ−n−プロピル基、ノナフルオロ−n−ブチル基、ウンデカフルオロ−n−ペンチル基、トリデカフルオロ−n−ヘキシル基、ペンタデカフルオロ−n−ヘプチル基、ヘプタデカフルオロ−n−オクチル基、1−トリフルオロメトキシ−1,2,2,2−テトラフルオロエチル基、1−(ヘプタフルオロ−n−プロポキシ)−1,2,2,2−テトラフルオロエチル基、フルオロスルホニル基、1−(1,1,2,2−テトラフルオロ−2−(フルオロスルホニル)エトキシ)−1,2,2,2−テトラフルオロエチル基、1−(1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロ−3−(フルオロスルホニル)プロポキシ)−1,2,2,2−テトラフルオロエチル基、および1−(1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロ−4−(フルオロスルホニル)ブトキシ)−1,2,2,2−テトラフルオロエチル基からなる群より互いに独立して選択されるが、RおよびRの一方がペンタフルオロエチル基または1−(ヘプタフルオロ−n−プロポキシ)−1,2,2,2−テトラフルオロエチル基である場合には、もう一方はフッ素原子ではない)で表わされる含フッ素カルボニル化合物、
(B)2,2,3,3−テトラフルオロオキセタン、および
(C)テトラフルオロエタンスルトン
からなる群より選択される少なくとも1つの化合物と、
第2の原料として、ヘキサフルオロプロピレンオキシドとを、非プロトン性極性溶媒中で反応させて、
一般式(III):
【化3】

(式中、nは0以上の整数であり、RおよびRは、
前記第1の原料が(A)一般式(II)で表わされる含フッ素カルボニル化合物である場合には、一般式(II)における前記RおよびRと同じであり、
前記第1の原料が(B)2,2,3,3−テトラフルオロオキセタンである場合には、それぞれジフルオロメチル基およびフッ素原子であり、
前記第1の原料が(C)テトラフルオロエタンスルトンである場合には、それぞれジフルオロ(フルオロスルホニル)メチル基およびフッ素原子である)で表わされるフッ素化(ポリ)エーテル含有カルボニルフルオリドを得ることを含む、製造方法。
【請求項2】
一般式(I)で表わされるビス(ジアルキルアミノ)メタンが、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノメタンおよびN,N,N’,N’−テトラエチルジアミノメタンの少なくとも一方を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
一般式(I)で表わされるビス(ジアルキルアミノ)メタンが、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノメタンである、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
一般式(II)で表わされる含フッ素カルボニル化合物が、トリフルオロ酢酸フルオリド、ヘプタフルオロブタン酸フルオリド、ウンデカフルオロヘキサン酸フルオリド、ペンタデカフルオロオクタン酸フルオリド、フッ化カルボニル、ヘキサフルオロアセトン、2,3,3,3−テトラフルオロ−2−(1,1,2,2−テトラフルオロ−2−(フルオロスルホニル)エトキシ)プロピオン酸フルオリド、2,3,3,3−テトラフルオロ−2−(1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロ−3−(フルオロスルホニル)プロポキシ)プロピオン酸フルオリド、および2,3,3,3−テトラフルオロ−2−(1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロ−4−(フルオロスルホニル)ブトキシ)プロピオン酸フルオリドからなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
一般式(II)で表わされる含フッ素カルボニル化合物が、トリフルオロ酢酸フルオリド、フッ化カルボニル、ヘキサフルオロアセトン、および2,3,3,3−テトラフルオロ−2−(1,1,2,2−テトラフルオロ−2−(フルオロスルホニル)エトキシ)プロピオン酸フルオリドからなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含む、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
一般式(II)で表わされる含フッ素カルボニル化合物が、フッ化カルボニルおよびヘキサフルオロアセトンの少なくとも一方を含む、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
非プロトン性極性溶媒が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールのジアルキルエーテル、ならびにテトラヒドロフラン、p−ジオキサン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリルおよびスベロニトリルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
非プロトン性極性溶媒が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールのジアルキルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
非プロトン性極性溶媒が、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラエチレングリコールジメチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
一般式(III)中、nが1以上の整数である、請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2013−82634(P2013−82634A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221502(P2011−221502)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】