フッ素含有ガス分解処理装置、及びこれを用いたフッ素化合物回収方法
【課題】 フッ素含有ガスを高い分解率で分解可能であり、生成物の取扱い性に優れ、かつ該生成物であるフッ素化合物の純度が高く、再資源化が可能なフッ素含有ガス分解処理装置、及びフッ素化合物回収方法を提供する。
【解決手段】 フッ素含有ガスと、水素含有化合物とからなる被処理ガスを熱処理し、前記フッ素含有ガス中の被分解物を熱分解する熱分解炉、及び前記熱分解炉から排出される分解ガスと、固定化材料供給装置から供給される固定化材料とを乾式反応させ、前記分解ガス中のフッ素成分を固定する乾式固定化炉が少なくとも配置され、
前記熱分解炉の体積が前記被分解物の熱分解特性に基づく設計式により導出され、前記乾式固定化炉の反応帯の体積が前記分解ガスと前期固定化材料との固定化特性に基づく設計式により導出されたことを特徴とするフッ素含有ガス分解処理装置、及びこれを用いたフッ素化合物回収方法である。
【解決手段】 フッ素含有ガスと、水素含有化合物とからなる被処理ガスを熱処理し、前記フッ素含有ガス中の被分解物を熱分解する熱分解炉、及び前記熱分解炉から排出される分解ガスと、固定化材料供給装置から供給される固定化材料とを乾式反応させ、前記分解ガス中のフッ素成分を固定する乾式固定化炉が少なくとも配置され、
前記熱分解炉の体積が前記被分解物の熱分解特性に基づく設計式により導出され、前記乾式固定化炉の反応帯の体積が前記分解ガスと前期固定化材料との固定化特性に基づく設計式により導出されたことを特徴とするフッ素含有ガス分解処理装置、及びこれを用いたフッ素化合物回収方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素含有ガスを処理し、該フッ素含有ガス中のフッ化物を再資源化するためのフッ素含有ガス分解処理装置、及びフッ素化合物回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素含有ガスであるSF6ガスは、高い絶縁性能と消弧性能を有し、高電圧機器や遮断器等のガス絶縁機器に幅広く使われており、日本国内における電力関連分野の貯蔵量は約9千トンに達している。しかし、前記SF6ガスは、地球温暖化係数がCO2ガスの23,900倍と極めて高く、温室効果の高いガスであり、京都議定書において排出削減が必要なガスとして定められている。このため、前記SF6ガスの最大の需要家である電力関連産業としても、前記SF6ガスの回収率向上やリサイクル促進等、大気中への排出抑制に向けた着実な努力が展開されている。
【0003】
前記SF6ガスが絶縁性ガスとして封入された電気機器等は、その運転中、製造工場や設置場所での組立て作業中、及び定期点検時の回収過程などにおいて前記SF6ガス中への不純物の混入が避けられない。不純物の混入によりリサイクルできない前記SF6ガスは、廃棄処分されている。また、近年、SF6代替ガスの研究開発が精力的に進められていることから、代替ガスへの切替えの際には前記SF6ガスが大量に廃棄される可能性もある。
【0004】
近年、廃棄される前記SF6ガスは、フルオロカーボン用の処理設備を転用し、水蒸気を用いた燃焼湿式法により処理されている。具体的には、前記SF6ガスを燃焼処理し、生成したガスを水酸化ナトリウム水溶液で吸収した後、炭酸カルシウムと湿式にて反応させ、蛍石として回収する方法である。
しかしながら、前記処理により得られた生成物は微細な粒子状であるため、回収するために凝集剤を必要とするという問題がある。また、回収した前記生成物は、含有する前記凝集剤やアルカリ成分の除去が困難であることに加え、前記炭酸カルシウムとの湿式反応が不完全であるため、フッ化物の純度が低く、再資源化できないという問題がある。さらに、湿式反応により発生するフッ化水素酸によって、処理装置に腐食が生じるという問題がある。
【0005】
一方、前記SF6ガスを空気、窒素、水蒸気とともにTiO2系の触媒反応器に注入して分解処理する方法が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の装置及び方法では、分解により生成したガスは、NaOH水溶液で中和し、ミストを除去した後、乾燥剤を通過させて排気しており、処理実績としては、触媒層入口のSF6ガス濃度が、0.5%(処理量2.4g/h)での800℃における破壊試験において99.93%の破壊効率を達成している。しかしながら、該装置及び方法は、前記SF6の分解率として国連環境基準である99.99%以上の分解率は達成されず、また、フッ素化合物と硫黄化合物を同時に吸収除去しているため、これらを分離することができず、フッ素化合物の再資源化をめざしたものではない。
【0006】
したがって、前記フッ素含有ガスを高い分解率で分解可能であり、分解処理後の生成物の取扱い性に優れ、該生成物であるフッ素化合物の純度が高く、再資源化可能であり、かつ装置の腐食の恐れがないフッ素含有ガス処理装置、及びフッ素化合物の回収方法は未だ提供されておらず、更なる改良開発が望まれているのが現状である。
【0007】
【特許文献1】国際公開WO00/09258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、前記フッ素含有ガスを高い分解率で分解可能であり、分解処理後の生成物の取扱い性に優れ、該生成物であるフッ素化合物の純度が高く、再資源化可能であり、かつ装置の腐食の恐れがないフッ素含有ガス分解処理装置、及びフッ素化合物回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> フッ素含有ガス供給装置から供給されるフッ素含有ガスと、水素供給装置から供給される水素含有化合物とからなる被処理ガスを熱処理し、前記フッ素含有ガス中の被分解物を熱分解する熱分解炉、及び
前記熱分解炉から排出される分解ガスと、固定化材料供給装置から供給される固定化材料とを乾式反応させ、前記分解ガス中のフッ素成分を固定する乾式固定化炉が少なくとも配置され、
前記熱分解炉の体積V(m3)が、下記式(1)から導出され、前記乾式固定化炉の反応帯の体積VC(m3)が、下記式(3)から導出されたことを特徴とするフッ素含有ガス分解処理装置である。
【数5】
ただし、FA0は前記被処理ガスの処理量(m3/s)、kは下記式(2)で表される分解反応速度定数(1/s)、εAはδA・yA0、δAは分解反応前後におけるモル体積の増加分のフッ素化合物モル体積に対する割合、yA0は反応開始時の前記被分解物のモル分率、xは前記被分解物の分解率を表す。
【数6】
ただし、k0は分解反応の頻度因子(s−1)、Eは活性化エネルギー(J/mol)、Rは気体定数、Tは反応炉の絶対温度(K)を表す。
【数7】
ただし、αは下記式(4)で表される設計係数(m3・min/mol)、GCは分解ガスの流入量(mol/min)を表す。
【数8】
ただし、τは破過時間(min)、bは量論係数、QCは固定化材料の前記分解ガス吸収容量(mol/m3−bed)を表す。
該<1>に記載のフッ素含有ガス分解処理装置においては、前記熱分解炉の体積V(m3)が、前記被分解物の熱分解特性に基づく前記式(1)から導出された体積であるため、前記熱分解において前記被分解物が所望の分解率で分解され、前記乾式固定化炉の反応帯の体積VC(m3)が、前記分解ガスと前記固定化材料との固定化特性に基づく前記式(3)から導出された体積であるため、前記乾式固定化炉内で、前記分解ガス中のフッ素原子が全量固定される。
<2> 熱分解炉が管状構造であり、該熱分解炉内に伝熱体を有する前記<1>に記載のフッ素含有ガス分解処理装置である。該<2>に記載のフッ素含有ガス分解処理装置においては、前記熱分解炉が管状構造であり、該熱分解炉内に伝熱体を有するため、加熱された前記伝熱体壁面との接触面積が大きく、前記フッ素含有ガス中の被分解物の分解が効率よく行われる。
<3> 伝熱体が黒鉛製及びアルミナ製のいずれかであり、前記伝熱体の形状がチューブ状及びボール状のいずれかである前記<2>に記載のフッ素含有ガス分解処理装置である。
<4> 乾式固定化炉が管状構造の反応管からなり、前記反応管の全長が、反応帯の長さの2倍以上である前記<1>から<3>のいずれかに記載のフッ素含有ガス分解処理装置である。該<4>に記載のフッ素含有ガス分解処理装置においては、乾式固定化炉が管状構造の反応管からなり、前記反応管の全長が、反応帯の高さの2倍以上であるため、反応管内において前記分解ガス中のフッ素原子を全量固定可能であり、再資源化可能な高純度のフッ素化合物を回収することができる。
<5> 乾式固定化炉が、分解ガスが流通可能に接続された2以上の反応管からなり、前記分解ガスが前記2以上の反応管の内部を交互に通過するように設計された前記<1>から<4>のいずれかに記載のフッ素含有ガス分解処理装置である。該<5>に記載のフッ素含有ガス分解処理装置においては、乾式固定化炉が、分解ガスが流通可能に接続された2以上の反応管からなり、前記分解ガスが前記2以上の反応管の内部を交互に通過するように設計されているため、連続的に高純度のフッ素化合物を回収することができる。
<6> 乾式固定化炉が、固定化材料として、Na、Li、K、Ca、Mg、及びSiから選択される少なくとも1種の炭酸塩、Na、Li、K、Ca、Mg、及びSiから選択される少なくとも1種の酸化物、及び炭酸水素ナトリウムのいずれかを含む前記<1>から<5>のいずれかに記載のフッ素含有ガス分解処理装置である。該<6>に記載のフッ素含有ガス分解処理装置においては、前記乾式固定化炉が、前記固定化材料として、Na、Li、K、Ca、Mg、及びSiから選択される少なくとも1種の炭酸塩、Na、Li、K、Ca、Mg、及びSiから選択される少なくとも1種の酸化物、及び炭酸水素ナトリウムのいずれかを含むため、前記分解ガス中のフッ素原子が、前記固定化材料に効率よく乾式固定され、再資源化可能なフッ素化合物として回収される。
<7> 乾式固定化炉の下流側に、前記乾式固定化炉から排出される未固定の分解ガスを燃焼させる燃焼炉、及び前記未固定の分解ガスを洗浄するスクラバーの少なくともいずれかが配置された前記<1>から<6>のいずれかに記載のフッ素含有ガス分解処理装置である。該<7>に記載のフッ素含有ガス分解処理装置においては、乾式固定化炉の下流側に、前記乾式固定化炉から排出される未固定の分解ガスを燃焼させる燃焼炉、及び前記未固定の分解ガスを洗浄するスクラバーの少なくともいずれかが配置されているため、再資源化せず廃棄する成分を燃焼後湿式で無害化して処理することができる。
<8> フッ素含有ガス中の被分解物がSF6(六フッ化硫黄)であり、水素含有化合物がH2(水素)である前記<1>から<7>のいずれかに記載のフッ素含有ガス分解処理装置である。
<9> フッ素含有ガス中の被分解物がSF6(六フッ化硫黄)であり、前記SF6を99.99%以上分解する熱分解炉の体積V(m3)を式(1)より導出するのに際し、
前記式(1)中の分解反応速度定数k(1/s)が、式(2)において、頻度因子k0=2.08×103(s−1)、活性化エネルギーE=8.314×104(J/mol)として導出される前記<8>に記載のフッ素含有ガス分解処理装置である。
<10> 熱分解炉の下流側に、硫黄成分除去フィルターが配置された前記<8>から<9>のいずれかに記載のフッ素含有ガス分解処理装置である。該<10>に記載のフッ素含有ガス分解処理装置においては、前記熱分解炉の下流側に、硫黄成分除去フィルターが配置されているため、前記SF6の熱分解において発生した前記分解ガス中の固体硫黄分を、乾式反応前に除去することができる。
<11> フッ素含有ガス中の被分解物がフルオロカーボンであり、水素含有化合物が水蒸気及び空気の少なくともいずれかである前記<1>から<7>のいずれかに記載のフッ素含有ガス分解処理装置である。
【0010】
<12> 前記<1>から<11>のいずれかに記載のフッ素含有ガス分解処理装置を用い、フッ素含有ガスと水素含有化合物とを熱処理し、分解ガスを生成させ、前記分解ガスを固定化材料と乾式反応させ、固定化生成物として生成したフッ素化合物を回収することを特徴とするフッ素化合物回収方法である。該<12>に記載のフッ素化合物回収方法においては、前記フッ素化合物の回収が前記フッ素含有ガス処理装置を用いて行われ、前記フッ素含有ガスの熱分解と、前記分解ガス中のフッ素成分の乾式固定とが別々の炉で行われる。この結果、前記フッ素含有ガス中の被分解物が高い分解率で分解されるとともに、前記分解ガス中のフッ素原子の全量が固定され、この結果、高純度のフッ素化合物が回収される。
<13> 水素含有化合物が、フッ素含有ガス中のフッ素原子がすべてHF(フッ化水素)となるために必要なモル数以上の水素を含む前記<12>に記載のフッ素化合物回収方法である。該<13>に記載のフッ素化合物回収方法においては、前記水素含有化合物中に、前記フッ素含有ガス中のフッ素原子がすべてHFとなるために必要なモル数以上の水素が含まれる。この結果、前記フッ素含有ガス中のすべてのフッ素原子がHFとなる。例えば、その後、前記固定化材料に前記HFを乾式反応により固定させることにより、フッ素化合物として回収することができる。
<14> フッ素含有ガスと水素含有化合物との熱処理温度が、700℃〜1200℃である前記<12>から<13>に記載のフッ素化合物回収方法である。
<15> HFと固定化材料との乾式反応温度が、150〜500℃である前記<12>から<14>のいずれかに記載のフッ素化合物回収方法である。
<16> 固定化生成物の回収率が90%以上であり、該固定化生成物が純度97%以上のフッ素化合物である前記<12>から<15>のいずれかに記載のフッ素化合物回収方法である。該<16>に記載のフッ素化合物回収方法においては、固定化生成物の回収率が90%以上であり、該固定化生成物が純度97%以上のフッ素化合物であるため、得られた前記フッ素化合物は、例えば、フッ素原料用等に再資源化できる。
【0011】
<17> フッ素含有ガス供給装置から供給されるフッ素含有ガスと、水素供給装置から供給される水素含有化合物とからなる被処理ガスを熱処理し、前記フッ素含有ガス中の被分解物を熱分解する熱分解炉、及び
前記熱分解炉から排出される分解ガスと、固定化材料供給装置から供給される固定化材料とを乾式反応させ、前記分解ガス中のフッ素成分を固定する乾式固定化炉を少なくとも配置し、
前記熱分解炉の体積V(m3)を、下記式(1)から導出し、乾式固定化炉の反応帯の体積VC(m3)を、下記式(3)から導出することを特徴とするフッ素含有ガス分解処理装置の設計方法である。
【数9】
ただし、FA0は被処理ガスの処理量(m3/s)、kは下記式(2)で表される分解反応速度定数(1/s)、εAはδA・yA0、δAは分解反応前後におけるモル体積の増加分のフッ素化合物モル体積に対する割合、yA0は反応開始時の前記被分解物のモル分率、xAは前記被分解物の分解率を表す。
【数10】
ただし、k0は分解反応の頻度因子(s−1)、Eは活性化エネルギー(J/mol)、Rは気体定数、Tは熱分解温度の絶対温度(K)を表す。
【数11】
ただし、αは下記式(4)で表される設計係数(m3・min/mol)、GCは分解ガスの流入量(mol/min)を表す。
【数12】
ただし、τは前記固定化材料の破過時間(min)、bは前記固定化材料の量論係数、QCは固定化材料の前記分解ガス吸収容量(mol/m3−bed)を表す。
該<17>に記載のフッ素含有ガス分解処理装置の設計方法においては、前記熱分解炉の体積V(m3)が、前記式(1)から導出されるため、例えば、前記被処理ガスの処理量と熱処理温度とをパラメータとして、前記被分解物が所望の分解率で熱分解されるように前記熱分解炉の体積を算出し、該熱分解炉の体積に基づいて前記熱分解炉を設計することができる。また、前記乾式固定化炉の反応帯体積が、前記式(3)から導出されるため、前記固定化材料の固定化特性に応じて前記乾式固定化炉の反応帯体積を算出し、該体積に基づいて前記乾式固定化炉を設計することができ、この結果、前記分解ガス中のフッ素原子の全量を固定可能な前記乾式固定化炉を設計することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、前記フッ素含有ガスを高い分解率で分解可能であり、分解処理後の生成物の取扱い性に優れ、該生成物であるフッ素化合物の純度が高く、再資源化可能であり、かつ装置の腐食の恐れがないフッ素含有ガス分解処理装置、及びフッ素化合物回収方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(フッ素含有ガス分解処理装置)
本発明のフッ素含有ガス分解処理装置は、
フッ素含有ガス供給装置から供給されるフッ素含有ガスと、水素供給装置から供給される水素含有化合物とからなる被処理ガスを熱処理し、前記フッ素含有ガス中の被分解物を熱分解する熱分解炉、及び
前記熱分解炉から排出される分解ガスと、固定化材料供給装置から供給される固定化材料とを乾式反応させ、前記分解ガス中のフッ素成分を固定する乾式固定化炉が少なくとも配置され、
前記熱分解炉の体積V(m3)が、下記式(1)から導出され、前記固定化炉の反応帯の体積VC(m3)が、下記式(3)から導出される。
【数13】
ただし、FA0は前記被処理ガスの処理量(m3/s)、kは下記式(2)で表される分解反応速度定数(1/s)、εAはδA・yA0、δAは分解反応前後におけるモル体積の増加分のフッ素化合物モル体積に対する割合、yA0は反応開始時の前記被分解物のモル分率、xAは前記被分解物の分解率を表す。
【数14】
ただし、k0は分解反応の頻度因子(s−1)、Eは活性化エネルギー(J/mol)、Rは気体定数、Tは熱分解温度の絶対温度(K)を表す。
【数15】
ただし、前記式(3)中、αは下記式(4)で表される設計係数(m3・min/mol)、GCは分解ガスの流入量(mol/min)を表す。
【数16】
ただし、前記式(4)中、τは破過時間(min)、bは量論係数、QCは固定化材料の前記分解ガス吸収容量(mol/m3−bed)を表す。
【0014】
前記フッ素含有ガス分解処理装置としては、例えば、被処理ガス供給装置から供給されるフッ素含有ガス中の被分解物がSF6であり、水素供給装置から供給される水素含有化合物がH2であるSF6ガス分解処理装置、及び、被処理ガス供給装置から供給されるフッ素含有ガス中の被分解物がフルオロカーボンであり、水素供給装置から供給される水素含有化合物が水蒸気及び空気であるフルオロカーボンガス分解処理装置などが挙げられる。前記SF6ガス分解処理装置の一例を、図1に示す。
【0015】
<熱分解炉>
前記熱分解炉としては、該熱分解炉の体積が前記式(1)によって導出される限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記フッ素含有ガス供給装置から供給されるフッ素含有ガスの導入口、前記水素供給装置から供給される水素含有化合物の導入口、反応後の前記分解ガスを排出する排出口を備え、内部がガスの流通可能に貫通している構造などが挙げられる。
【0016】
前記熱分解炉は、管状構造であることが好ましく、また、前記熱分解炉内に前記被処理ガスと接触可能に配置された伝熱体を有することが好ましい。
前記伝熱体の形状としては、例えば、チューブ状、及びボール状などが挙げられる。また、伝熱体がチューブ状の場合、前記被処理ガスとの接触面積をより大きくするために、該伝熱体内にさらに管状構造物や球状構造物を備えてもよい。
また、前記伝熱体の設置数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2以上であることが好ましい。
【0017】
前記伝熱体の材質としては、熱処理条件下において前記被処理ガス及び前記分解ガスと反応しないものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、黒鉛、金属、及びセラミックスなどが挙げられる。
前記金属としては、例えば、銅、ステンレス、炭素鋼、インコネル、及びニッケルなどが挙げられる。
前記セラミックスとしては、例えば、アルミナ、ムライト、及び炭化珪素などが挙げられる。
これらの中でも、黒鉛、及びアルミナが好ましい。
【0018】
前記熱分解炉における前記伝熱体の加熱方法としては、特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電気ヒーター等により前記伝熱体を間接加熱する方法、及び前記伝熱体に通電を行い、電気抵抗加熱により前記伝熱体を発熱させる方法などが挙げられる。
【0019】
<<熱分解炉の設計>>
前記熱分解炉を設計する方法としては、例えば、
(1)前記フッ素含有ガス中の被分解物の濃度、分解温度、滞留時間、及び前記水素含有化合物の添加量をパラメータとして、前記被分解物の熱分解特性としての分解率を実験的に求め、
(2)前記(1)の結果から、前記被分解物の分解反応速度定数を求めるとともに、該分解反応速度定数のアレニウスプロットから前記被分解物の分解反応の頻度因子及び活性化エネルギーを求め、
(3)前記熱分解炉の体積を導出するための設計式を用いて、所望の分解率で前記被分解物を分解可能な前記熱分解炉の体積を求め、
(4)前記熱分解炉の径及び長さを決定して設計する方法、が挙げられる。
以下、前記フッ素含有ガスとしてSF6ガスと、前記水素含有化合物として水素ガスとを熱分解し、被分解物のSF6を国連環境計画の破壊基準である99.99%以上の分解率で分解するための前記熱分解炉の設計方法について、具体的に説明する。
【0020】
−(1)分解特性(分解率)−
前記フッ素含有ガス中の被分解物の熱分解特性(分解率)としては、濃度、分解温度、滞留時間、及び前記水素含有化合物の添加量をパラメータとして求めることができる。
前記SF6の熱分解特性(分解率)としては、例えば、前記SF6ガス中のSF6濃度(6.6%、13.8%)、分解温度(800℃、900℃、1000℃)、前記反応管内の滞留時間(7.5秒、10秒、15秒)、及び前記水素ガスの添加量(H/(F+S)比:1.33、1.6、2.0)をパラメータとして調べることができ、その結果から、SF6は、水素ガスとともに熱処理することによって1000℃以下の温度において99.99%以上分解されることがわかる。
前記SF6ガス中のSF6濃度が6.6%、前記水素ガスの添加量がH/(F+S)比として1.33の場合について、分解温度と分解率との関係を示すグラフを図2に示す。
【0021】
−(2)分解反応速度定数−
前記フッ素含有ガス中の被分解物の分解反応速度定数としては、上記(1)において得られた各パラメータに対する分解率の結果から、前記被分解物の分解反応速度を、前記被分解物の濃度との一次速度式(下記式(5))で整理することにより得られる。
【数17】
ただし、前記式(5)中、kは分解反応速度定数(1/s)、rAは分解反応速度(molm−3s−1)、CA0は反応開始時の被分解物の濃度(mol/m3)を表す。
前記一次速度式(前記式(5))の、管形の反応器における積分形設計式としては、下記式(6)で表される。
【数18】
ただし、前記式(6)において、τは滞留時間(s)、εAはδx・y0(ただし、δは分解反応前後におけるモル体積の増加分のフッ素化合物モル体積に対する割合)、xAは被分解物の分解率、y0は被分解物のモル分率を表す。
前記分解反応速度定数kは、下記式(2)で表される。
【数19】
ただし、前記式(2)中、k0は分解反応の頻度因子(s−1)、Eは活性化エネルギー(J/mol)、Rは気体定数、Tは分解温度の絶対温度(K)を表す。
さらに、前記分解反応速度定数のアレニウスプロットから、前記被分解物の分解反応の頻度因子及び活性化エネルギーを求める。
【0022】
前記SF6の分解反応速度定数としては、上記(1)において得られた各パラメータに対する分解率の結果(図3)から、前記SF6の分解反応速度を、前記一次速度式(前記式(5))で整理することにより得られる。
また、前記SF6の分解反応速度定数のアレニウスプロット(図4)から、前記SF6の分解反応の頻度因子(k0)として2.08×103(s−1)、活性化エネルギー(E)として8.314×104(J/mol)という値が得られる。
【0023】
−(3)熱分解炉の体積−
前記熱分解炉の体積を導出するための設計式は、前記式(6)で表される管形の反応器における積分形設計式、及び上記(2)において求めた分解反応速度定数に基づき、下記式(1)で表すことができる。
【数20】
ただし、前記式(1)中、Vは体積(m3)、FA0は前記被処理ガスの処理量(m3/s)、kは前記式(2)で表される分解反応速度定数(1/s)、εAはδA・yA0(δAは分解反応前後におけるモル体積の増加分のフッ素化合物モル体積に対する割合であり、下記反応式(I)で表されるSF6の分解反応においてδA=2)、yA0は反応開始時の前記被分解物のモル分率、xAは前記被分解物の分解率を表す。
【化1】
【0024】
前記式(1)において、前記被処理ガスの処理量FA0の値と、前記式(1)で熱処理温度Tを定めて求めた反応速度定数kの値とから、被分解物の分解率xAを99.99%とするための前記熱分解炉の体積を算出することができる。
前記SF6が99.99%の分解率で熱分解される前記熱分解炉の体積の計算例を、下記表1に示す。下記表1は、前記SF61kgを1時間で99.99%の分解率で分解処理するための熱分解炉の体積について、反応温度をパラメータとして計算した例である。
【0025】
【表1】
【0026】
−(4)熱分解炉の設計−
前記熱分解炉の設計としては、上記(3)において得られた熱分解炉の体積から、前記熱分解炉の断面積及び長さを算出することにより、設計することができる。
前記熱分解炉は管形であることが好ましく、例えば、前記式(1)により得られた体積Vが、0.0061m3である場合、前記熱分解炉としては、直径0.12m、長さ0.54mという形状を選択することができる。
前記式(1)により導出された熱分解炉の体積Vは、前記熱分解に最低限必要な空間体積である。このため、前記熱分解炉が前記伝熱体を有する場合、外寸から算出される体積は前記式(1)により導出される体積Vよりも大きくなる。例えば、前記式(1)から導出された体積が0.0061m3であり、2以上の伝熱体を有する前記熱分解炉の例を、図5に示す。
【0027】
前記熱分解炉の設計においては、直径(a)と長さ(b)の比((a)/(b))が、0.05〜0.3であることが好ましく、0.1〜0.2であることがより好ましい。前記直径(a)と長さ(b)の比((a)/(b))が0.3を超えると、前記被処理ガスが完全に分解する前に、前記熱分解炉を通過してしまうことがあり、0.05未満であると、前記熱分解炉内の加熱効率及び前記伝熱体の発熱効率が低下することがある。
また、前記熱分解炉の直径としては、0.03m未満であることが好ましく、0.02m未満であることが好ましい。前記熱分解炉の直径が0.03mを超えると、前記被処理ガスへの伝熱効率が低下し、分解効率が低下することがある。
【0028】
前記熱分解炉の設計においては、前記被処理ガスへの伝熱効率の観点から、前記式(1)により導出された体積に基づき、前記直径(a)と長さ(b)の比((a)/(b))の範囲、及び前記直径の数値範囲をともに満たすように設計することが好ましいが、ともに満たすことが困難である場合には、前記熱分解炉中の前記伝熱体を2以上設けることにより、前記被処理ガスへの伝熱性を向上させてもよい。
【0029】
前記被分解物としてSF6を99.99%以上分解する前記熱分解炉の体積V(m3)としては、該体積V(m3)を前記式(1)により導出するのに際し、前記式(1)中の分解反応定数kが、前記式(2)において、頻度因子(k0)を2.08×103(s−1)、活性化エネルギー(E)を8.314×104(J/mol)として導出されることが好ましい。
【0030】
また、前記被分解物としてSF6を99.99%以上分解する前記熱分解炉としては、前記SF6を水素ガスとともに熱分解した際に発生する固体硫黄分を除去するために、下流側に、硫黄成分除去フィルターを配置することが好ましい。
前記硫黄成分除去フィルターとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テフロン(登録商標)ウール製フィルター等)、アルミナウール製フィルターなどが挙げられ、これらの中でもテフロン(登録商標)ウール製フィルターが好ましい。
【0031】
一方、前記被分解物としてフルオロカーボンを99.99%以上分解する前記熱分解炉の体積V(m3)としては、上述した前記SF6を99.99%以上分解する前記熱分解炉と同様に導出することができる。
また、前記被分解物としてフルオロカーボンを99.99%以上分解する前記熱分解炉としては、分解反応において除去すべき固体硫黄成分が生じないため、前記硫黄成分除去フィルターが不要である以外は、前記SF6を99.99%以上分解する前記熱分解炉と同様に設計されることが好ましい。
【0032】
<乾式固定化炉>
前記乾式固定化炉としては、内部に前記固定化材料を含み、該熱乾式固定化炉の反応帯の体積が前記式(3)によって導出される限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記熱分解炉の下流に配置され、前記熱分解炉から排出された前記分解ガスが流入可能であり、さらに、前記固定化材料の供給手段、及び前記固定化生成物の回収手段が接続された構造などが挙げられる。
【0033】
前記乾式固定化炉は、管状構造の反応管からなることが好ましい。
また、前記反応管の全長は、前記式(3)により導出された反応帯体積に基づいて設計された反応帯の長さの2倍以上であることが好ましく、2〜10倍であることがより好ましく、3〜5倍であることが特に好ましい。
前記反応管の長さが、前記反応帯の長さの2倍未満であると、前記分解ガス中のフッ素成分と前記固定化材料との反応が不完全となることがある。
【0034】
前記乾式固定化炉は、分解ガスが流通可能に接続された2以上の反応管からなることが好ましい。前記分解ガスが前記2以上の反応管の内部を交互に通過することにより、高純度のフッ素化合物を回収することができる。
前記分解ガスが流通可能に接続された2以上の反応管からなる前記乾式固定化炉の例を図6に示す。
【0035】
前記反応帯とは、前記反応管内において前記分解ガスと前記固定化材料とが反応し、フッ素化合物が生成する領域であり、該領域は前記分解ガスの流れに伴って反応管内をガス流入口から排出口へ移動する(図6(a)〜(c))。
図6に示す前記乾式固定化炉における、固定化反応の制御方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
前記分解ガスが、1段目の反応管に流入することにより、前記反応帯が形成される。前記反応帯は、前記反応ガス中のフッ素成分と前記固定化材料との反応が進行することによって、排出口方向へ移動する(図6(a))。前記1段目の反応管内の前記固定化材料が完全にフッ化された後、前記分解ガスは2段目の反応管内に流入し、反応帯を形成する(図6(b))。この時点で、前記分解ガスを前記2段目の反応管内のみに流入するように制御し、前記1つめの反応管内で生成したフッ素化合物を回収する。次いで、前記1段目の反応管内に前記固定化材料を充填し、前記2段目の反応管から排出された前記分解ガスが流入するように制御する(図6(c))。
この制御手順を繰り返すことにより、高純度のフッ素化合物を効率よく回収することができる。
なお、前記反応管内の前記固定化材料が完全にフッ化されるのに要する時間は、前記反応管のガス排出口(図6中のA及びB)におけるフッ化水素ガスの検出(濃度)により導出することができる。
【0036】
前記乾式反応において、腐食性を有するフッ化水素酸が生成しないため、前記反応管の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミナ及びムライト等のセラミックス系材料、並びに銅及びステンレス等の金属系材料などが挙げられる。
【0037】
<<乾式固定化炉の設計>>
前記乾式固定化炉を設計する方法としては、例えば、
(1)前記固定化材料の種類、反応温度、及び前記分解ガスの空塔速度をパラメータとして、前記分解ガスと前記固定化材料との乾式反応特性を実験的に調べ、
(2)前記固定化材料の前記分解ガス破過特性から破過時間を実験的に求め、
(3)前記固定化材の前記分解ガス吸収容量及び量論係数を求め、これを前記(2)で求めた破過時間とともに設計係数として前記乾式固定化炉の反応帯体積を求め、
(4)前記乾式固定化炉の反応帯の径及び長さを決定し、前記乾式固定化炉を設計する方法、が挙げられる。
【0038】
以下、前記フッ素含有ガスとしてSF6ガスと、前記水素含有化合物として水素ガスとを前記熱分解炉で熱分解し、被分解物のSF6が99.99%以上分解した条件で得られた前記分解ガスを固定化し、フッ素化合物を得るための前記乾式固定化炉の設計方法について、具体的に説明する。
【0039】
−(1)乾式反応特性−
前記乾式反応特性を調べるために用いる前記分解ガスとしては、前記熱分解炉において熱処理される前の組成が、SF6:H2:Ar(体積比)=2:9:30であって、前記SF6が99.99%以上分解されたものとする。
前記固定化材料の種類(NaHCO3、CaCO3)、反応温度(200℃、250℃、300℃)、及び前記分解ガスの空塔速度(2.5〜4.5cm/s)をパラメータとして、前記分解ガスと前記固定化材料との乾式反応特性を実験的に調べることができる。
前記分解ガス中には、HFとH2Sとが含まれるが、それぞれの乾式反応特性は、反応中の乾式固定化炉のガス排出口において検出される濃度から確認することができる。前記乾式固定化炉のガス排出口において検出されない成分は、前記固定化材料と乾式反応して固定化され、前記乾式固定化炉のガス排出口において検出される成分は、前記固定化材料と乾式反応していないと考えられる。前記乾式固定化炉内のHFとH2Sの検知管による検出濃度の測定結果を図7に示す。図7から、HFは前記固定化材料に固定化され、H2Sは固定化されないため、HFとH2Sとを分離して回収可能であることがわかる。
【0040】
−(2)破過時間−
前記分解ガスの破過特性は、前記乾式固定化炉のガス排出口から排出されるガスを脱イオン水で吸収し、吸収液中に含まれるフッ素イオン濃度を、フッ化物イオン電極で連続して計測することにより調べることができる。前記分解ガス中のHFの破過特性を調べた結果を図7にあわせて示す。図7から、HFの破過開始により吸収液中にHFが検出されることがわかる。
このようにして、破過開始から、前記乾式固定化炉のガス排出口におけるHF濃度が、乾式反応前の前記分解ガスのHF濃度に達するまでの時間を測定することにより、前記分解ガス中のHFの破過時間を求めることができる。
【0041】
−(3)設計係数−
前記乾式固定化炉の反応帯体積は、下記式(3)から求めることができる。
【数21】
ただし、前記式(3)中、αは下記(4)で示される設計係数(m3・min/mol)、GCは分解ガスの流入量(mol/min)を表す。
【数22】
ただし、前記式(4)中、τは破過時間(min)、bは量論係数、QCは固定化材料の前記分解ガス吸収容量(mol/m3−bed)を表す。
前記固定化材の前記分解ガス吸収容量、量論係数、及び上記(2)において求めた破過時間とともに設計係数αを求めることができ、前記乾式固定化炉への前記分解ガスの流入量を設定し、前記式(3)により前記乾式固定化炉の反応帯体積を求めることができる。
【0042】
−(4)乾式固定化炉の設計−
前記乾式固定化炉の設計としては、前記分解ガスの処理流量と前記乾式固定化炉における空塔速度条件から、前記乾式固定化炉の断面積を算出することができ、該断面積と上記(3)において得られた前記乾式固定化炉の反応帯体積とから、前記反応帯の長さを算出することができる。
前記乾式固定化炉の長さとしては、設計された前記反応帯の長さの2倍以上とすることが好ましく、2〜10倍とすることがより好ましく、3〜5倍とすることが特に好ましい。
また、前記乾式固定化炉の長さは、前記乾式固定化炉の内径の3倍以上とすることが好ましく、5倍以上とすることがより好ましい。前記乾式固定化炉の長さが前記乾式固定化炉の内径の3倍未満であると、前記分解ガスと前記固定化材料とが均一に反応しないことがあり、反応帯が設計通りに形成されないことがある。
【0043】
前記乾式固定化炉は管形であることが好ましく、例えば、前記式(3)により得られた体積VCが、8.0×10−4m3である場合、前記乾式固定化炉の反応帯としては、直径0.12m、長さ0.07mという形状を選択することができ、前記乾式固定化炉としては、直径0.12m、長さ0.4mという形状を選択することができる。
【0044】
また、前記乾式固定化炉は、2以上反応管を前記分解ガスが流通可能に接続して配置するように設計することが好ましい。
前記2以上の反応管を配置した場合には、各反応管へのガスの流入を制御するために、自動制御された弁やバルブ等を用いることが好ましい。
【0045】
−固定化材料供給手段−
前記乾式固定化炉に接続される前記固定化材料の供給手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、スクリューフィーダー、パーツフィーダーなどが挙げられる。
【0046】
−固定化生成物回収手段−
前記乾式固定化炉に接続される前記固定化生成物の回収手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばバイブレーション方式による回収、ダンパー方式による回収などが挙げられる。
【0047】
<その他の装置>
前記フッ素含有ガス分解処理装置には、前記乾式固定化炉の下流側に、前記乾式固定化炉から排出される未固定の分解ガスを燃焼させる燃焼炉、及びスクラバーが配置されていることが好ましい。前記燃焼炉及び前記スクラバーにより、前記分解ガス中の成分であって、再資源化しない成分を燃焼後湿式で無害化して処理することができる。
【0048】
前記燃焼炉としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、バーナー式燃焼炉、電気ヒーター式燃焼炉などが挙げられる。
【0049】
前記スクラバーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、溜水式、加圧水式、充填層式、回転式などのスクラバーが挙げられる。
【0050】
本発明のフッ素含有ガス分解処理装置は、前記被処理ガスを熱分解処理するため、従来の燃焼方式と比較して、設備の起動と停止が容易である。また、処理工程における排ガス発生量が少なく、該排ガスの処理設備を小さくすることができるため、小型化が可能である。さらに、固定化反応においてフッ化水素酸が生成しないため、腐食を受けることがない。
本発明のフッ素含有ガス分解処理装置は、後述するフッ素化合物回収方法に好適に使用することができる。
【0051】
(フッ素化合物回収方法)
本発明のフッ素化合物回収方法は、上述した本発明のフッ素含有ガス分解処理装置を用いて行われ、フッ素含有ガスと水素含有化合物とを熱処理し、分解ガスを生成させ、前記分解ガスを前記固定化材料と乾式反応させ、固定化生成物として生成したフッ素化合物を回収する方法であり、前記フッ素含有ガス中のフッ素成分と、その他の成分とを分離し、前記フッ素成分のみを回収する方法である。
【0052】
前記フッ素化合物回収方法により処理される前記フッ素含有ガスとしては、成分としてフッ素原子を含むものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる、例えば、SF6等のフッ素および硫黄を含有する化合物、フルオロカーボン等のフッ素化物(C、H、F化合物)などが挙げられ、特にSF6が好適に処理される。
【0053】
前記水素含有化合物としては、前記フッ素含有ガス中のフッ素原子がすべてHFとなるために必要なモル数以上の水素を含む化合物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記フッ素含有ガス中のフッ素原子と、硫黄原子やハロゲン原子等のその他の原子とが、すべて水素化合物となるために必要なモル数以上の水素を含むことが好ましい。
【0054】
前記被分解物がSF6である場合、前記水素含有化合物としては、フッ素原子と硫黄原子とがそれぞれすべてHF、H2Sとなるのに必要なモル数以上の水素を含む水素ガスであることが好ましい。このような前記水素ガスを用いることにより、SF6中のフッ素原子はすべてHF、硫黄原子はすべてH2Sとなる。その後、例えば、前記HFのみを前記固定化材料に乾式固定することにより、硫黄成分が分離された純度の高いフッ素化合物を回収することができる。
【0055】
前記フッ素含有ガスと前記水素含有化合物との熱処理温度としては、700〜1200℃であることが好ましく、1000〜1200℃であることがより好ましい。
前記熱処理温度が700℃未満であると、被分解物の熱分解が十分に行われないことがあり、前記熱処理温度が1200℃を超えると、H2Sガスの分解が促進され、単体の硫黄が多く発生し、前記硫黄除去フィルターの目詰まりを引き起こすことがある。
【0056】
前記固定化材料としては、前記分解ガス中のHFと乾式反応し、前記HF中のフッ素原子を固定し、固体のフッ素化合物として回収される化合物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記固定化材料としては、例えば、Na、Li、K、Ca、Mg、及びSiから選択される少なくとも1種の炭酸塩、Na、Li、K、Ca、Mg、及びSiから選択される少なくとも1種の酸化物、及び炭酸水素ナトリウムなどが挙げられ、これらの中でも、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、及び酸化カルシウムが好ましい。
【0057】
前記固定化材料の性状としては、固体であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、粒状であることが好ましく、その粒径としては1〜2mmであることが好ましい。
【0058】
前記分解ガスと固定化材料との乾式反応温度としては、150〜500℃であることが好ましく、150〜300℃であることがより好ましい。
前記乾式反応温度としては、前記分解ガス中のHFのみが前記固定化材料と反応する温度であることが好ましく、例えば、前記被分解物がSF6である場合、分解ガス中のHFだけが前記固定化材料と反応し、その他の硫黄化合物は前記固定化材料と反応しない温度であることが好ましい。
前記乾式反応温度が150℃未満であると、前記分解ガス中のHFがフッ化水素酸となり、生成した該フッ化水素酸により装置の腐食を生じることがある。前記乾式反応温度が500℃を超えると、前記分解ガス中のHFガスの化学平衡濃度が大きくなり、固定化率が低下することがある。
【0059】
H2S1モル、HF6モル、及びNa2CO35モルの1気圧での固体成分の化学平衡組成を図8に示し、気体成分の化学平衡組成を図9に示す。
図8から、前記固定化材料としての炭酸ナトリウムは、200〜800℃の広い温度範囲においてHFと反応してNaFとなるが、H2Sとは殆ど反応せず、H2Sはガス状が安定であることがわかる。
また、図9から、気相中のHF濃度は、500℃以下の温度範囲において十数ppm以下であり、300℃以下の温度範囲において1ppm(10−6atm)未満であることから、150〜300℃の乾式反応温度において、前記固定化材料の炭酸ナトリウムによってHFを選択的に低濃度まで固定できることがわかる。
【0060】
H2S1モル、HF6モル、及びCaCO310モル、及びO24モルの1気圧での固体成分の化学平衡組成を図10に示し、気体成分の化学平衡組成を図11に示す。
図10から、前記固定化材料としての炭酸カルシウム又は酸化カルシウムは、200〜800℃の広い温度範囲においてHFと反応してCaF2となるが、H2Sとは殆ど反応せず、H2Sはガス状が安定であることがわかる。
また、図11から、気相中のHF濃度は、500℃以下の温度範囲において十数ppm以下であり、300℃以下の温度範囲において1ppm(10−6atm)未満であることから、150〜300℃の乾式反応温度において、前記固定化材料の炭酸カルシウム又は酸化カルシウムによってHFを選択的に低濃度まで固定できることがわかる。
【0061】
前記フッ素化合物回収方法においては、前記HFを前記固定化材料に固定した後、前記固定化材料に固定されない硫黄化合物を処理することが好ましい。
前記硫黄化合物の処理方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般的な酸性ガス除去処理方法を適用することができる。
また、前記硫黄化合物がH2Sの場合、H2Sを燃焼させてSOxとした後、炭酸カルシウム溶液等と反応させ、石膏(CaSO4)として回収することにより再資源化できる。
【0062】
本発明のフッ素含有ガス分解処理装置(図1)を用いた、SF6含有ガスの回収方法を説明する。
前記フッ素含有ガス供給装置から供給されたSF6、及び前記水素化合物供給装置から供給されたH2ガスは、前記熱分解炉3に導入され、熱処理される。前記被分解物のSF6は分解され、H2S及びHFを含む分解ガス、並びに硫黄が生成する。硫黄は、前記熱分解炉の下流に備えられた硫黄除去フィルターにより除去される。
生成した前記分解ガスは、前記乾式固定化炉に導入され、前記固定化材料供給装置から供給された前記固定化材料と共に150〜500℃の温度条件下で乾式固定される。ここで、前記分解ガス中のHFのみが前記固定化材料に固定され、前記固定化生成物(フッ素化合物)となる。前記固定化生成物は、回収タンク等に回収される。
一方、固定化されないH2Sは、前記乾式固定化炉から排出され、前記燃焼炉において燃焼されてSOxとなる。その後、スクラバー等により湿式除去される。
上記の処理により、前記固定化生成物として、例えば、フッ化ナトリウム、及びフッ化カルシウムが得られる。
【0063】
前記固定化生成物は、固体で粒状である前記固定化材料が、前記分解ガスとの乾式反応により生成するため、回収率が90%以上である。
また、前記固定化生成物は、純度97%以上のフッ素化合物である。
【0064】
前記固定化生成物の用途としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、HF製造用や鉄鋼用等の工業用原料、及び試薬などが挙げられる。
【0065】
本発明のフッ素化合物回収方法は、前記フッ素含有ガスと前記水素含有化合物とからなる被処理ガスを加熱することにより熱分解し、生成した前記分解ガス中のフッ素原子を、乾式反応により前記固定化材料に固定させ、前記固定化生成物を回収する方法であるため、分解処理工程における排ガス発生量が少なく、得られる前記固定化生成物が粒状のフッ素化合物であるため、取扱い性に優れる。
また、本発明のフッ素化合物回収方法は、前記フッ素含有ガスを分解処理して得られる前記フッ素化合物の純度97%以上であるため、再資源化に好適である。
【実施例】
【0066】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこの実施例に何ら限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
被処理ガスとして、Ar、SF6、H2からなるガスを用い、SF6を99.99%以上分解し、フッ素化合物を回収する実験を行った。前記Arは、希釈用に添加された成分である。
【0068】
−熱分解炉の設計・製造−
SF6を99.99%以上分解可能な前記熱分解炉の設計を行った。
前記SF6の分解率を99.99%として、被処理ガスの処理量をAr:5.0×10−6m3/s、SF6:1.0×10−6m3/s、H2:4.0×10−6m3/s、熱処理温度を1000℃と設定し、下記式(1)を用いて、前記熱分解炉の体積V(m3)を算出した。
【数23】
ただし、式(1)中、FA0は前記被処理ガスの処理量(m3/s)、kは分解反応速度定数(1/s)、εAはδA・yA0(δAは分解反応前後におけるモル体積の増加分のフッ素化合物モル体積に対する割合であり、δA=2)、yA0は反応開始時の前記被分解物のモル分率、xAは前記被分解物の分解率を表す。
前記分解反応速度定数は、頻度因子(k0)を2.08×103(s−1)、活性化エネルギー(E)を8.314×104(J/mol)として下記式(2)を用いて算出した。
【数24】
ただし、k0は分解反応の頻度因子(s−1)、Eは活性化エネルギー(J/mol)、Rは気体定数、Tは熱処理温度の絶対温度(K)を表す。
【0069】
この結果、前記熱分解炉の体積を0.19×10−3m3とし、内径が0.02m、長さが0.6mの管形の熱分解炉を設計した。
前記設計に基づき、内部に黒鉛製、チューブ状の伝熱体を備えた熱分解炉を製造した。
【0070】
−乾式固定化炉の設計・製造−
前記固定化材料として、炭酸カルシウムを用いることとし、前記分解ガス中のHFと前記固定化材料の炭酸カルシウムとの乾式反応特性を調べ、HFの破過時間を求めた。
また、前記固定化材料について、HFの吸収容量、及び量論係数を求めた。
前記乾式固定化炉への前記分解ガスの流入量を設定し、下記式(3)を用いて、前記乾式固定化炉の反応帯体積VCを算出した。
【数25】
ただし、前記式(3)中、αは下記(4)で示される設計係数(m3・min/mol)、GCは分解ガスの流入量(mol/min)を表す。
【数26】
ただし、前記式(4)中、τは破過時間(min)、bは量論係数、QCは固定化材料の前記分解ガス吸収容量(mol/m3−bed)を表す。
【0071】
この結果、前記乾式固定化炉の反応帯体積の値として0.023×10−3m3を得た。
前記乾式固定化炉は、2つの反応管を前記分解ガスが流通可能に接続して配置するように設計するため、前記乾式固定化炉の反応帯を、直径0.03m、長さ0.035mとし、前記乾式固定化炉を、直径0.03m、長さ0.15mとして設計した。
前記設計に基づき、アルミナセラミック製の反応管2本からなる乾式固定化炉を製造した。
【0072】
−フッ素ガス分解処理装置−
設計・製造した前記熱分解炉、及び前記乾式固定化炉を、図1のように配置してなるフッ素ガス分解処理装置を製造した。
【0073】
−フッ素化合物の回収−
前記フッ素ガス分解処理装置を用いて、SF6ガスの分解処理及びフッ素化合物の回収を行った。
前記熱分解炉に、被処理ガスを0.017×10−3m3/sで送り、1100℃で熱処理を行って分解ガスを生成し、次いで、該分解ガスを前記乾式固定化炉に0.02×10−3m3/sで送り、前記固定化材料の炭酸カルシウム100gとともに200℃で乾式反応させ、得られた固定化生成物(フッ素化合物)を回収した。
前記乾式固定炉出口でのH2Sガス濃度を検知管により確認したところ、反応開始時から分析精度の範囲でほぼ一定値を示しているのに対して、HF濃度は全く検出できなかった。このことから、HFガスとH2Sとが分離されたことがわかった。
【0074】
回収されたフッ素化合物(CaF2)の純度を、トリウム滴定及び蛍光X線分析を用いて測定したところ、97%であることがわかった。
また、前記乾式固定化炉に充填した前記固定化材料がすべてフッ化物となる時の量論的な重量、及び回収したフッ素化合物の重量、並びに回収したフッ素化合物の純度から、回収率は99%であることがわかった。
【0075】
(実施例2)
実施例1において、前記乾式固定化炉を単一の反応管からなる構造とした以外は、実施例1と同様にして、SF6含有ガスを熱分解し、フッ素化合物を得た。
回収されたフッ素化合物(CaF2)の純度を、トリウム滴定及び蛍光X線分析を用いて測定したところ、90%であることがわかった。
また、回収率は99%であることがわかった。
【0076】
(実施例3)
実施例1において、前記乾式固定化炉の反応管の長さを、前記反応帯の長さの2倍未満とした以外は、実施例1と同様にしてSF6含有ガスを熱分解し、フッ素化合物を得た。
回収されたフッ素化合物(CaF2)の純度を、トリウム滴定及び蛍光X線分析を用いて測定したところ、60%であることがわかった。
また、回収率は99%であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のフッ素含有ガス分解処理装置の設計方法、及び該設計方法により設計されたフッ素含有ガス分解処理装置、並びにこれを用いたフッ素化合物回収方法は、フッ素含有ガスを高い分解率で分解可能であり、分解処理後の生成物の取扱い性に優れ、かつ該生成物であるフッ素化合物の純度が高く、再資源化が可能であるため、SF6ガスやフルオロカーボンガスの廃棄処理などに好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、SF6ガス分解処理装置の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、SF6の分解特性を示したグラフの一例である。
【図3】図3は、SF6の分解反応速度を解析するためのグラフの一例である。
【図4】図4は、SF6の反応速度定数のアレニウスプロットの一例である。
【図5】図5は、熱分解炉の一例を示す模式図である。
【図6】図6は、乾式固定化炉の一例を示す模式図である。
【図7】図7は、SF6の分解ガスの乾式分離特性を示したグラフの一例である。
【図8】図8は、H2S、HF、及びNa2CO3の固体成分の化学平衡図である。
【図9】図9は、H2S、HF、及びNa2CO3の気体成分の化学平衡図である。
【図10】図10は、H2S、HF、CaCO3、及びO2の固体成分の化学平衡図である。
【図11】図11は、H2S、HF、CaCO3、及びO2の気体成分の化学平衡図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素含有ガスを処理し、該フッ素含有ガス中のフッ化物を再資源化するためのフッ素含有ガス分解処理装置、及びフッ素化合物回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素含有ガスであるSF6ガスは、高い絶縁性能と消弧性能を有し、高電圧機器や遮断器等のガス絶縁機器に幅広く使われており、日本国内における電力関連分野の貯蔵量は約9千トンに達している。しかし、前記SF6ガスは、地球温暖化係数がCO2ガスの23,900倍と極めて高く、温室効果の高いガスであり、京都議定書において排出削減が必要なガスとして定められている。このため、前記SF6ガスの最大の需要家である電力関連産業としても、前記SF6ガスの回収率向上やリサイクル促進等、大気中への排出抑制に向けた着実な努力が展開されている。
【0003】
前記SF6ガスが絶縁性ガスとして封入された電気機器等は、その運転中、製造工場や設置場所での組立て作業中、及び定期点検時の回収過程などにおいて前記SF6ガス中への不純物の混入が避けられない。不純物の混入によりリサイクルできない前記SF6ガスは、廃棄処分されている。また、近年、SF6代替ガスの研究開発が精力的に進められていることから、代替ガスへの切替えの際には前記SF6ガスが大量に廃棄される可能性もある。
【0004】
近年、廃棄される前記SF6ガスは、フルオロカーボン用の処理設備を転用し、水蒸気を用いた燃焼湿式法により処理されている。具体的には、前記SF6ガスを燃焼処理し、生成したガスを水酸化ナトリウム水溶液で吸収した後、炭酸カルシウムと湿式にて反応させ、蛍石として回収する方法である。
しかしながら、前記処理により得られた生成物は微細な粒子状であるため、回収するために凝集剤を必要とするという問題がある。また、回収した前記生成物は、含有する前記凝集剤やアルカリ成分の除去が困難であることに加え、前記炭酸カルシウムとの湿式反応が不完全であるため、フッ化物の純度が低く、再資源化できないという問題がある。さらに、湿式反応により発生するフッ化水素酸によって、処理装置に腐食が生じるという問題がある。
【0005】
一方、前記SF6ガスを空気、窒素、水蒸気とともにTiO2系の触媒反応器に注入して分解処理する方法が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の装置及び方法では、分解により生成したガスは、NaOH水溶液で中和し、ミストを除去した後、乾燥剤を通過させて排気しており、処理実績としては、触媒層入口のSF6ガス濃度が、0.5%(処理量2.4g/h)での800℃における破壊試験において99.93%の破壊効率を達成している。しかしながら、該装置及び方法は、前記SF6の分解率として国連環境基準である99.99%以上の分解率は達成されず、また、フッ素化合物と硫黄化合物を同時に吸収除去しているため、これらを分離することができず、フッ素化合物の再資源化をめざしたものではない。
【0006】
したがって、前記フッ素含有ガスを高い分解率で分解可能であり、分解処理後の生成物の取扱い性に優れ、該生成物であるフッ素化合物の純度が高く、再資源化可能であり、かつ装置の腐食の恐れがないフッ素含有ガス処理装置、及びフッ素化合物の回収方法は未だ提供されておらず、更なる改良開発が望まれているのが現状である。
【0007】
【特許文献1】国際公開WO00/09258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、前記フッ素含有ガスを高い分解率で分解可能であり、分解処理後の生成物の取扱い性に優れ、該生成物であるフッ素化合物の純度が高く、再資源化可能であり、かつ装置の腐食の恐れがないフッ素含有ガス分解処理装置、及びフッ素化合物回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> フッ素含有ガス供給装置から供給されるフッ素含有ガスと、水素供給装置から供給される水素含有化合物とからなる被処理ガスを熱処理し、前記フッ素含有ガス中の被分解物を熱分解する熱分解炉、及び
前記熱分解炉から排出される分解ガスと、固定化材料供給装置から供給される固定化材料とを乾式反応させ、前記分解ガス中のフッ素成分を固定する乾式固定化炉が少なくとも配置され、
前記熱分解炉の体積V(m3)が、下記式(1)から導出され、前記乾式固定化炉の反応帯の体積VC(m3)が、下記式(3)から導出されたことを特徴とするフッ素含有ガス分解処理装置である。
【数5】
ただし、FA0は前記被処理ガスの処理量(m3/s)、kは下記式(2)で表される分解反応速度定数(1/s)、εAはδA・yA0、δAは分解反応前後におけるモル体積の増加分のフッ素化合物モル体積に対する割合、yA0は反応開始時の前記被分解物のモル分率、xは前記被分解物の分解率を表す。
【数6】
ただし、k0は分解反応の頻度因子(s−1)、Eは活性化エネルギー(J/mol)、Rは気体定数、Tは反応炉の絶対温度(K)を表す。
【数7】
ただし、αは下記式(4)で表される設計係数(m3・min/mol)、GCは分解ガスの流入量(mol/min)を表す。
【数8】
ただし、τは破過時間(min)、bは量論係数、QCは固定化材料の前記分解ガス吸収容量(mol/m3−bed)を表す。
該<1>に記載のフッ素含有ガス分解処理装置においては、前記熱分解炉の体積V(m3)が、前記被分解物の熱分解特性に基づく前記式(1)から導出された体積であるため、前記熱分解において前記被分解物が所望の分解率で分解され、前記乾式固定化炉の反応帯の体積VC(m3)が、前記分解ガスと前記固定化材料との固定化特性に基づく前記式(3)から導出された体積であるため、前記乾式固定化炉内で、前記分解ガス中のフッ素原子が全量固定される。
<2> 熱分解炉が管状構造であり、該熱分解炉内に伝熱体を有する前記<1>に記載のフッ素含有ガス分解処理装置である。該<2>に記載のフッ素含有ガス分解処理装置においては、前記熱分解炉が管状構造であり、該熱分解炉内に伝熱体を有するため、加熱された前記伝熱体壁面との接触面積が大きく、前記フッ素含有ガス中の被分解物の分解が効率よく行われる。
<3> 伝熱体が黒鉛製及びアルミナ製のいずれかであり、前記伝熱体の形状がチューブ状及びボール状のいずれかである前記<2>に記載のフッ素含有ガス分解処理装置である。
<4> 乾式固定化炉が管状構造の反応管からなり、前記反応管の全長が、反応帯の長さの2倍以上である前記<1>から<3>のいずれかに記載のフッ素含有ガス分解処理装置である。該<4>に記載のフッ素含有ガス分解処理装置においては、乾式固定化炉が管状構造の反応管からなり、前記反応管の全長が、反応帯の高さの2倍以上であるため、反応管内において前記分解ガス中のフッ素原子を全量固定可能であり、再資源化可能な高純度のフッ素化合物を回収することができる。
<5> 乾式固定化炉が、分解ガスが流通可能に接続された2以上の反応管からなり、前記分解ガスが前記2以上の反応管の内部を交互に通過するように設計された前記<1>から<4>のいずれかに記載のフッ素含有ガス分解処理装置である。該<5>に記載のフッ素含有ガス分解処理装置においては、乾式固定化炉が、分解ガスが流通可能に接続された2以上の反応管からなり、前記分解ガスが前記2以上の反応管の内部を交互に通過するように設計されているため、連続的に高純度のフッ素化合物を回収することができる。
<6> 乾式固定化炉が、固定化材料として、Na、Li、K、Ca、Mg、及びSiから選択される少なくとも1種の炭酸塩、Na、Li、K、Ca、Mg、及びSiから選択される少なくとも1種の酸化物、及び炭酸水素ナトリウムのいずれかを含む前記<1>から<5>のいずれかに記載のフッ素含有ガス分解処理装置である。該<6>に記載のフッ素含有ガス分解処理装置においては、前記乾式固定化炉が、前記固定化材料として、Na、Li、K、Ca、Mg、及びSiから選択される少なくとも1種の炭酸塩、Na、Li、K、Ca、Mg、及びSiから選択される少なくとも1種の酸化物、及び炭酸水素ナトリウムのいずれかを含むため、前記分解ガス中のフッ素原子が、前記固定化材料に効率よく乾式固定され、再資源化可能なフッ素化合物として回収される。
<7> 乾式固定化炉の下流側に、前記乾式固定化炉から排出される未固定の分解ガスを燃焼させる燃焼炉、及び前記未固定の分解ガスを洗浄するスクラバーの少なくともいずれかが配置された前記<1>から<6>のいずれかに記載のフッ素含有ガス分解処理装置である。該<7>に記載のフッ素含有ガス分解処理装置においては、乾式固定化炉の下流側に、前記乾式固定化炉から排出される未固定の分解ガスを燃焼させる燃焼炉、及び前記未固定の分解ガスを洗浄するスクラバーの少なくともいずれかが配置されているため、再資源化せず廃棄する成分を燃焼後湿式で無害化して処理することができる。
<8> フッ素含有ガス中の被分解物がSF6(六フッ化硫黄)であり、水素含有化合物がH2(水素)である前記<1>から<7>のいずれかに記載のフッ素含有ガス分解処理装置である。
<9> フッ素含有ガス中の被分解物がSF6(六フッ化硫黄)であり、前記SF6を99.99%以上分解する熱分解炉の体積V(m3)を式(1)より導出するのに際し、
前記式(1)中の分解反応速度定数k(1/s)が、式(2)において、頻度因子k0=2.08×103(s−1)、活性化エネルギーE=8.314×104(J/mol)として導出される前記<8>に記載のフッ素含有ガス分解処理装置である。
<10> 熱分解炉の下流側に、硫黄成分除去フィルターが配置された前記<8>から<9>のいずれかに記載のフッ素含有ガス分解処理装置である。該<10>に記載のフッ素含有ガス分解処理装置においては、前記熱分解炉の下流側に、硫黄成分除去フィルターが配置されているため、前記SF6の熱分解において発生した前記分解ガス中の固体硫黄分を、乾式反応前に除去することができる。
<11> フッ素含有ガス中の被分解物がフルオロカーボンであり、水素含有化合物が水蒸気及び空気の少なくともいずれかである前記<1>から<7>のいずれかに記載のフッ素含有ガス分解処理装置である。
【0010】
<12> 前記<1>から<11>のいずれかに記載のフッ素含有ガス分解処理装置を用い、フッ素含有ガスと水素含有化合物とを熱処理し、分解ガスを生成させ、前記分解ガスを固定化材料と乾式反応させ、固定化生成物として生成したフッ素化合物を回収することを特徴とするフッ素化合物回収方法である。該<12>に記載のフッ素化合物回収方法においては、前記フッ素化合物の回収が前記フッ素含有ガス処理装置を用いて行われ、前記フッ素含有ガスの熱分解と、前記分解ガス中のフッ素成分の乾式固定とが別々の炉で行われる。この結果、前記フッ素含有ガス中の被分解物が高い分解率で分解されるとともに、前記分解ガス中のフッ素原子の全量が固定され、この結果、高純度のフッ素化合物が回収される。
<13> 水素含有化合物が、フッ素含有ガス中のフッ素原子がすべてHF(フッ化水素)となるために必要なモル数以上の水素を含む前記<12>に記載のフッ素化合物回収方法である。該<13>に記載のフッ素化合物回収方法においては、前記水素含有化合物中に、前記フッ素含有ガス中のフッ素原子がすべてHFとなるために必要なモル数以上の水素が含まれる。この結果、前記フッ素含有ガス中のすべてのフッ素原子がHFとなる。例えば、その後、前記固定化材料に前記HFを乾式反応により固定させることにより、フッ素化合物として回収することができる。
<14> フッ素含有ガスと水素含有化合物との熱処理温度が、700℃〜1200℃である前記<12>から<13>に記載のフッ素化合物回収方法である。
<15> HFと固定化材料との乾式反応温度が、150〜500℃である前記<12>から<14>のいずれかに記載のフッ素化合物回収方法である。
<16> 固定化生成物の回収率が90%以上であり、該固定化生成物が純度97%以上のフッ素化合物である前記<12>から<15>のいずれかに記載のフッ素化合物回収方法である。該<16>に記載のフッ素化合物回収方法においては、固定化生成物の回収率が90%以上であり、該固定化生成物が純度97%以上のフッ素化合物であるため、得られた前記フッ素化合物は、例えば、フッ素原料用等に再資源化できる。
【0011】
<17> フッ素含有ガス供給装置から供給されるフッ素含有ガスと、水素供給装置から供給される水素含有化合物とからなる被処理ガスを熱処理し、前記フッ素含有ガス中の被分解物を熱分解する熱分解炉、及び
前記熱分解炉から排出される分解ガスと、固定化材料供給装置から供給される固定化材料とを乾式反応させ、前記分解ガス中のフッ素成分を固定する乾式固定化炉を少なくとも配置し、
前記熱分解炉の体積V(m3)を、下記式(1)から導出し、乾式固定化炉の反応帯の体積VC(m3)を、下記式(3)から導出することを特徴とするフッ素含有ガス分解処理装置の設計方法である。
【数9】
ただし、FA0は被処理ガスの処理量(m3/s)、kは下記式(2)で表される分解反応速度定数(1/s)、εAはδA・yA0、δAは分解反応前後におけるモル体積の増加分のフッ素化合物モル体積に対する割合、yA0は反応開始時の前記被分解物のモル分率、xAは前記被分解物の分解率を表す。
【数10】
ただし、k0は分解反応の頻度因子(s−1)、Eは活性化エネルギー(J/mol)、Rは気体定数、Tは熱分解温度の絶対温度(K)を表す。
【数11】
ただし、αは下記式(4)で表される設計係数(m3・min/mol)、GCは分解ガスの流入量(mol/min)を表す。
【数12】
ただし、τは前記固定化材料の破過時間(min)、bは前記固定化材料の量論係数、QCは固定化材料の前記分解ガス吸収容量(mol/m3−bed)を表す。
該<17>に記載のフッ素含有ガス分解処理装置の設計方法においては、前記熱分解炉の体積V(m3)が、前記式(1)から導出されるため、例えば、前記被処理ガスの処理量と熱処理温度とをパラメータとして、前記被分解物が所望の分解率で熱分解されるように前記熱分解炉の体積を算出し、該熱分解炉の体積に基づいて前記熱分解炉を設計することができる。また、前記乾式固定化炉の反応帯体積が、前記式(3)から導出されるため、前記固定化材料の固定化特性に応じて前記乾式固定化炉の反応帯体積を算出し、該体積に基づいて前記乾式固定化炉を設計することができ、この結果、前記分解ガス中のフッ素原子の全量を固定可能な前記乾式固定化炉を設計することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、前記フッ素含有ガスを高い分解率で分解可能であり、分解処理後の生成物の取扱い性に優れ、該生成物であるフッ素化合物の純度が高く、再資源化可能であり、かつ装置の腐食の恐れがないフッ素含有ガス分解処理装置、及びフッ素化合物回収方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(フッ素含有ガス分解処理装置)
本発明のフッ素含有ガス分解処理装置は、
フッ素含有ガス供給装置から供給されるフッ素含有ガスと、水素供給装置から供給される水素含有化合物とからなる被処理ガスを熱処理し、前記フッ素含有ガス中の被分解物を熱分解する熱分解炉、及び
前記熱分解炉から排出される分解ガスと、固定化材料供給装置から供給される固定化材料とを乾式反応させ、前記分解ガス中のフッ素成分を固定する乾式固定化炉が少なくとも配置され、
前記熱分解炉の体積V(m3)が、下記式(1)から導出され、前記固定化炉の反応帯の体積VC(m3)が、下記式(3)から導出される。
【数13】
ただし、FA0は前記被処理ガスの処理量(m3/s)、kは下記式(2)で表される分解反応速度定数(1/s)、εAはδA・yA0、δAは分解反応前後におけるモル体積の増加分のフッ素化合物モル体積に対する割合、yA0は反応開始時の前記被分解物のモル分率、xAは前記被分解物の分解率を表す。
【数14】
ただし、k0は分解反応の頻度因子(s−1)、Eは活性化エネルギー(J/mol)、Rは気体定数、Tは熱分解温度の絶対温度(K)を表す。
【数15】
ただし、前記式(3)中、αは下記式(4)で表される設計係数(m3・min/mol)、GCは分解ガスの流入量(mol/min)を表す。
【数16】
ただし、前記式(4)中、τは破過時間(min)、bは量論係数、QCは固定化材料の前記分解ガス吸収容量(mol/m3−bed)を表す。
【0014】
前記フッ素含有ガス分解処理装置としては、例えば、被処理ガス供給装置から供給されるフッ素含有ガス中の被分解物がSF6であり、水素供給装置から供給される水素含有化合物がH2であるSF6ガス分解処理装置、及び、被処理ガス供給装置から供給されるフッ素含有ガス中の被分解物がフルオロカーボンであり、水素供給装置から供給される水素含有化合物が水蒸気及び空気であるフルオロカーボンガス分解処理装置などが挙げられる。前記SF6ガス分解処理装置の一例を、図1に示す。
【0015】
<熱分解炉>
前記熱分解炉としては、該熱分解炉の体積が前記式(1)によって導出される限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記フッ素含有ガス供給装置から供給されるフッ素含有ガスの導入口、前記水素供給装置から供給される水素含有化合物の導入口、反応後の前記分解ガスを排出する排出口を備え、内部がガスの流通可能に貫通している構造などが挙げられる。
【0016】
前記熱分解炉は、管状構造であることが好ましく、また、前記熱分解炉内に前記被処理ガスと接触可能に配置された伝熱体を有することが好ましい。
前記伝熱体の形状としては、例えば、チューブ状、及びボール状などが挙げられる。また、伝熱体がチューブ状の場合、前記被処理ガスとの接触面積をより大きくするために、該伝熱体内にさらに管状構造物や球状構造物を備えてもよい。
また、前記伝熱体の設置数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2以上であることが好ましい。
【0017】
前記伝熱体の材質としては、熱処理条件下において前記被処理ガス及び前記分解ガスと反応しないものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、黒鉛、金属、及びセラミックスなどが挙げられる。
前記金属としては、例えば、銅、ステンレス、炭素鋼、インコネル、及びニッケルなどが挙げられる。
前記セラミックスとしては、例えば、アルミナ、ムライト、及び炭化珪素などが挙げられる。
これらの中でも、黒鉛、及びアルミナが好ましい。
【0018】
前記熱分解炉における前記伝熱体の加熱方法としては、特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電気ヒーター等により前記伝熱体を間接加熱する方法、及び前記伝熱体に通電を行い、電気抵抗加熱により前記伝熱体を発熱させる方法などが挙げられる。
【0019】
<<熱分解炉の設計>>
前記熱分解炉を設計する方法としては、例えば、
(1)前記フッ素含有ガス中の被分解物の濃度、分解温度、滞留時間、及び前記水素含有化合物の添加量をパラメータとして、前記被分解物の熱分解特性としての分解率を実験的に求め、
(2)前記(1)の結果から、前記被分解物の分解反応速度定数を求めるとともに、該分解反応速度定数のアレニウスプロットから前記被分解物の分解反応の頻度因子及び活性化エネルギーを求め、
(3)前記熱分解炉の体積を導出するための設計式を用いて、所望の分解率で前記被分解物を分解可能な前記熱分解炉の体積を求め、
(4)前記熱分解炉の径及び長さを決定して設計する方法、が挙げられる。
以下、前記フッ素含有ガスとしてSF6ガスと、前記水素含有化合物として水素ガスとを熱分解し、被分解物のSF6を国連環境計画の破壊基準である99.99%以上の分解率で分解するための前記熱分解炉の設計方法について、具体的に説明する。
【0020】
−(1)分解特性(分解率)−
前記フッ素含有ガス中の被分解物の熱分解特性(分解率)としては、濃度、分解温度、滞留時間、及び前記水素含有化合物の添加量をパラメータとして求めることができる。
前記SF6の熱分解特性(分解率)としては、例えば、前記SF6ガス中のSF6濃度(6.6%、13.8%)、分解温度(800℃、900℃、1000℃)、前記反応管内の滞留時間(7.5秒、10秒、15秒)、及び前記水素ガスの添加量(H/(F+S)比:1.33、1.6、2.0)をパラメータとして調べることができ、その結果から、SF6は、水素ガスとともに熱処理することによって1000℃以下の温度において99.99%以上分解されることがわかる。
前記SF6ガス中のSF6濃度が6.6%、前記水素ガスの添加量がH/(F+S)比として1.33の場合について、分解温度と分解率との関係を示すグラフを図2に示す。
【0021】
−(2)分解反応速度定数−
前記フッ素含有ガス中の被分解物の分解反応速度定数としては、上記(1)において得られた各パラメータに対する分解率の結果から、前記被分解物の分解反応速度を、前記被分解物の濃度との一次速度式(下記式(5))で整理することにより得られる。
【数17】
ただし、前記式(5)中、kは分解反応速度定数(1/s)、rAは分解反応速度(molm−3s−1)、CA0は反応開始時の被分解物の濃度(mol/m3)を表す。
前記一次速度式(前記式(5))の、管形の反応器における積分形設計式としては、下記式(6)で表される。
【数18】
ただし、前記式(6)において、τは滞留時間(s)、εAはδx・y0(ただし、δは分解反応前後におけるモル体積の増加分のフッ素化合物モル体積に対する割合)、xAは被分解物の分解率、y0は被分解物のモル分率を表す。
前記分解反応速度定数kは、下記式(2)で表される。
【数19】
ただし、前記式(2)中、k0は分解反応の頻度因子(s−1)、Eは活性化エネルギー(J/mol)、Rは気体定数、Tは分解温度の絶対温度(K)を表す。
さらに、前記分解反応速度定数のアレニウスプロットから、前記被分解物の分解反応の頻度因子及び活性化エネルギーを求める。
【0022】
前記SF6の分解反応速度定数としては、上記(1)において得られた各パラメータに対する分解率の結果(図3)から、前記SF6の分解反応速度を、前記一次速度式(前記式(5))で整理することにより得られる。
また、前記SF6の分解反応速度定数のアレニウスプロット(図4)から、前記SF6の分解反応の頻度因子(k0)として2.08×103(s−1)、活性化エネルギー(E)として8.314×104(J/mol)という値が得られる。
【0023】
−(3)熱分解炉の体積−
前記熱分解炉の体積を導出するための設計式は、前記式(6)で表される管形の反応器における積分形設計式、及び上記(2)において求めた分解反応速度定数に基づき、下記式(1)で表すことができる。
【数20】
ただし、前記式(1)中、Vは体積(m3)、FA0は前記被処理ガスの処理量(m3/s)、kは前記式(2)で表される分解反応速度定数(1/s)、εAはδA・yA0(δAは分解反応前後におけるモル体積の増加分のフッ素化合物モル体積に対する割合であり、下記反応式(I)で表されるSF6の分解反応においてδA=2)、yA0は反応開始時の前記被分解物のモル分率、xAは前記被分解物の分解率を表す。
【化1】
【0024】
前記式(1)において、前記被処理ガスの処理量FA0の値と、前記式(1)で熱処理温度Tを定めて求めた反応速度定数kの値とから、被分解物の分解率xAを99.99%とするための前記熱分解炉の体積を算出することができる。
前記SF6が99.99%の分解率で熱分解される前記熱分解炉の体積の計算例を、下記表1に示す。下記表1は、前記SF61kgを1時間で99.99%の分解率で分解処理するための熱分解炉の体積について、反応温度をパラメータとして計算した例である。
【0025】
【表1】
【0026】
−(4)熱分解炉の設計−
前記熱分解炉の設計としては、上記(3)において得られた熱分解炉の体積から、前記熱分解炉の断面積及び長さを算出することにより、設計することができる。
前記熱分解炉は管形であることが好ましく、例えば、前記式(1)により得られた体積Vが、0.0061m3である場合、前記熱分解炉としては、直径0.12m、長さ0.54mという形状を選択することができる。
前記式(1)により導出された熱分解炉の体積Vは、前記熱分解に最低限必要な空間体積である。このため、前記熱分解炉が前記伝熱体を有する場合、外寸から算出される体積は前記式(1)により導出される体積Vよりも大きくなる。例えば、前記式(1)から導出された体積が0.0061m3であり、2以上の伝熱体を有する前記熱分解炉の例を、図5に示す。
【0027】
前記熱分解炉の設計においては、直径(a)と長さ(b)の比((a)/(b))が、0.05〜0.3であることが好ましく、0.1〜0.2であることがより好ましい。前記直径(a)と長さ(b)の比((a)/(b))が0.3を超えると、前記被処理ガスが完全に分解する前に、前記熱分解炉を通過してしまうことがあり、0.05未満であると、前記熱分解炉内の加熱効率及び前記伝熱体の発熱効率が低下することがある。
また、前記熱分解炉の直径としては、0.03m未満であることが好ましく、0.02m未満であることが好ましい。前記熱分解炉の直径が0.03mを超えると、前記被処理ガスへの伝熱効率が低下し、分解効率が低下することがある。
【0028】
前記熱分解炉の設計においては、前記被処理ガスへの伝熱効率の観点から、前記式(1)により導出された体積に基づき、前記直径(a)と長さ(b)の比((a)/(b))の範囲、及び前記直径の数値範囲をともに満たすように設計することが好ましいが、ともに満たすことが困難である場合には、前記熱分解炉中の前記伝熱体を2以上設けることにより、前記被処理ガスへの伝熱性を向上させてもよい。
【0029】
前記被分解物としてSF6を99.99%以上分解する前記熱分解炉の体積V(m3)としては、該体積V(m3)を前記式(1)により導出するのに際し、前記式(1)中の分解反応定数kが、前記式(2)において、頻度因子(k0)を2.08×103(s−1)、活性化エネルギー(E)を8.314×104(J/mol)として導出されることが好ましい。
【0030】
また、前記被分解物としてSF6を99.99%以上分解する前記熱分解炉としては、前記SF6を水素ガスとともに熱分解した際に発生する固体硫黄分を除去するために、下流側に、硫黄成分除去フィルターを配置することが好ましい。
前記硫黄成分除去フィルターとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テフロン(登録商標)ウール製フィルター等)、アルミナウール製フィルターなどが挙げられ、これらの中でもテフロン(登録商標)ウール製フィルターが好ましい。
【0031】
一方、前記被分解物としてフルオロカーボンを99.99%以上分解する前記熱分解炉の体積V(m3)としては、上述した前記SF6を99.99%以上分解する前記熱分解炉と同様に導出することができる。
また、前記被分解物としてフルオロカーボンを99.99%以上分解する前記熱分解炉としては、分解反応において除去すべき固体硫黄成分が生じないため、前記硫黄成分除去フィルターが不要である以外は、前記SF6を99.99%以上分解する前記熱分解炉と同様に設計されることが好ましい。
【0032】
<乾式固定化炉>
前記乾式固定化炉としては、内部に前記固定化材料を含み、該熱乾式固定化炉の反応帯の体積が前記式(3)によって導出される限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記熱分解炉の下流に配置され、前記熱分解炉から排出された前記分解ガスが流入可能であり、さらに、前記固定化材料の供給手段、及び前記固定化生成物の回収手段が接続された構造などが挙げられる。
【0033】
前記乾式固定化炉は、管状構造の反応管からなることが好ましい。
また、前記反応管の全長は、前記式(3)により導出された反応帯体積に基づいて設計された反応帯の長さの2倍以上であることが好ましく、2〜10倍であることがより好ましく、3〜5倍であることが特に好ましい。
前記反応管の長さが、前記反応帯の長さの2倍未満であると、前記分解ガス中のフッ素成分と前記固定化材料との反応が不完全となることがある。
【0034】
前記乾式固定化炉は、分解ガスが流通可能に接続された2以上の反応管からなることが好ましい。前記分解ガスが前記2以上の反応管の内部を交互に通過することにより、高純度のフッ素化合物を回収することができる。
前記分解ガスが流通可能に接続された2以上の反応管からなる前記乾式固定化炉の例を図6に示す。
【0035】
前記反応帯とは、前記反応管内において前記分解ガスと前記固定化材料とが反応し、フッ素化合物が生成する領域であり、該領域は前記分解ガスの流れに伴って反応管内をガス流入口から排出口へ移動する(図6(a)〜(c))。
図6に示す前記乾式固定化炉における、固定化反応の制御方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
前記分解ガスが、1段目の反応管に流入することにより、前記反応帯が形成される。前記反応帯は、前記反応ガス中のフッ素成分と前記固定化材料との反応が進行することによって、排出口方向へ移動する(図6(a))。前記1段目の反応管内の前記固定化材料が完全にフッ化された後、前記分解ガスは2段目の反応管内に流入し、反応帯を形成する(図6(b))。この時点で、前記分解ガスを前記2段目の反応管内のみに流入するように制御し、前記1つめの反応管内で生成したフッ素化合物を回収する。次いで、前記1段目の反応管内に前記固定化材料を充填し、前記2段目の反応管から排出された前記分解ガスが流入するように制御する(図6(c))。
この制御手順を繰り返すことにより、高純度のフッ素化合物を効率よく回収することができる。
なお、前記反応管内の前記固定化材料が完全にフッ化されるのに要する時間は、前記反応管のガス排出口(図6中のA及びB)におけるフッ化水素ガスの検出(濃度)により導出することができる。
【0036】
前記乾式反応において、腐食性を有するフッ化水素酸が生成しないため、前記反応管の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミナ及びムライト等のセラミックス系材料、並びに銅及びステンレス等の金属系材料などが挙げられる。
【0037】
<<乾式固定化炉の設計>>
前記乾式固定化炉を設計する方法としては、例えば、
(1)前記固定化材料の種類、反応温度、及び前記分解ガスの空塔速度をパラメータとして、前記分解ガスと前記固定化材料との乾式反応特性を実験的に調べ、
(2)前記固定化材料の前記分解ガス破過特性から破過時間を実験的に求め、
(3)前記固定化材の前記分解ガス吸収容量及び量論係数を求め、これを前記(2)で求めた破過時間とともに設計係数として前記乾式固定化炉の反応帯体積を求め、
(4)前記乾式固定化炉の反応帯の径及び長さを決定し、前記乾式固定化炉を設計する方法、が挙げられる。
【0038】
以下、前記フッ素含有ガスとしてSF6ガスと、前記水素含有化合物として水素ガスとを前記熱分解炉で熱分解し、被分解物のSF6が99.99%以上分解した条件で得られた前記分解ガスを固定化し、フッ素化合物を得るための前記乾式固定化炉の設計方法について、具体的に説明する。
【0039】
−(1)乾式反応特性−
前記乾式反応特性を調べるために用いる前記分解ガスとしては、前記熱分解炉において熱処理される前の組成が、SF6:H2:Ar(体積比)=2:9:30であって、前記SF6が99.99%以上分解されたものとする。
前記固定化材料の種類(NaHCO3、CaCO3)、反応温度(200℃、250℃、300℃)、及び前記分解ガスの空塔速度(2.5〜4.5cm/s)をパラメータとして、前記分解ガスと前記固定化材料との乾式反応特性を実験的に調べることができる。
前記分解ガス中には、HFとH2Sとが含まれるが、それぞれの乾式反応特性は、反応中の乾式固定化炉のガス排出口において検出される濃度から確認することができる。前記乾式固定化炉のガス排出口において検出されない成分は、前記固定化材料と乾式反応して固定化され、前記乾式固定化炉のガス排出口において検出される成分は、前記固定化材料と乾式反応していないと考えられる。前記乾式固定化炉内のHFとH2Sの検知管による検出濃度の測定結果を図7に示す。図7から、HFは前記固定化材料に固定化され、H2Sは固定化されないため、HFとH2Sとを分離して回収可能であることがわかる。
【0040】
−(2)破過時間−
前記分解ガスの破過特性は、前記乾式固定化炉のガス排出口から排出されるガスを脱イオン水で吸収し、吸収液中に含まれるフッ素イオン濃度を、フッ化物イオン電極で連続して計測することにより調べることができる。前記分解ガス中のHFの破過特性を調べた結果を図7にあわせて示す。図7から、HFの破過開始により吸収液中にHFが検出されることがわかる。
このようにして、破過開始から、前記乾式固定化炉のガス排出口におけるHF濃度が、乾式反応前の前記分解ガスのHF濃度に達するまでの時間を測定することにより、前記分解ガス中のHFの破過時間を求めることができる。
【0041】
−(3)設計係数−
前記乾式固定化炉の反応帯体積は、下記式(3)から求めることができる。
【数21】
ただし、前記式(3)中、αは下記(4)で示される設計係数(m3・min/mol)、GCは分解ガスの流入量(mol/min)を表す。
【数22】
ただし、前記式(4)中、τは破過時間(min)、bは量論係数、QCは固定化材料の前記分解ガス吸収容量(mol/m3−bed)を表す。
前記固定化材の前記分解ガス吸収容量、量論係数、及び上記(2)において求めた破過時間とともに設計係数αを求めることができ、前記乾式固定化炉への前記分解ガスの流入量を設定し、前記式(3)により前記乾式固定化炉の反応帯体積を求めることができる。
【0042】
−(4)乾式固定化炉の設計−
前記乾式固定化炉の設計としては、前記分解ガスの処理流量と前記乾式固定化炉における空塔速度条件から、前記乾式固定化炉の断面積を算出することができ、該断面積と上記(3)において得られた前記乾式固定化炉の反応帯体積とから、前記反応帯の長さを算出することができる。
前記乾式固定化炉の長さとしては、設計された前記反応帯の長さの2倍以上とすることが好ましく、2〜10倍とすることがより好ましく、3〜5倍とすることが特に好ましい。
また、前記乾式固定化炉の長さは、前記乾式固定化炉の内径の3倍以上とすることが好ましく、5倍以上とすることがより好ましい。前記乾式固定化炉の長さが前記乾式固定化炉の内径の3倍未満であると、前記分解ガスと前記固定化材料とが均一に反応しないことがあり、反応帯が設計通りに形成されないことがある。
【0043】
前記乾式固定化炉は管形であることが好ましく、例えば、前記式(3)により得られた体積VCが、8.0×10−4m3である場合、前記乾式固定化炉の反応帯としては、直径0.12m、長さ0.07mという形状を選択することができ、前記乾式固定化炉としては、直径0.12m、長さ0.4mという形状を選択することができる。
【0044】
また、前記乾式固定化炉は、2以上反応管を前記分解ガスが流通可能に接続して配置するように設計することが好ましい。
前記2以上の反応管を配置した場合には、各反応管へのガスの流入を制御するために、自動制御された弁やバルブ等を用いることが好ましい。
【0045】
−固定化材料供給手段−
前記乾式固定化炉に接続される前記固定化材料の供給手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、スクリューフィーダー、パーツフィーダーなどが挙げられる。
【0046】
−固定化生成物回収手段−
前記乾式固定化炉に接続される前記固定化生成物の回収手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばバイブレーション方式による回収、ダンパー方式による回収などが挙げられる。
【0047】
<その他の装置>
前記フッ素含有ガス分解処理装置には、前記乾式固定化炉の下流側に、前記乾式固定化炉から排出される未固定の分解ガスを燃焼させる燃焼炉、及びスクラバーが配置されていることが好ましい。前記燃焼炉及び前記スクラバーにより、前記分解ガス中の成分であって、再資源化しない成分を燃焼後湿式で無害化して処理することができる。
【0048】
前記燃焼炉としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、バーナー式燃焼炉、電気ヒーター式燃焼炉などが挙げられる。
【0049】
前記スクラバーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、溜水式、加圧水式、充填層式、回転式などのスクラバーが挙げられる。
【0050】
本発明のフッ素含有ガス分解処理装置は、前記被処理ガスを熱分解処理するため、従来の燃焼方式と比較して、設備の起動と停止が容易である。また、処理工程における排ガス発生量が少なく、該排ガスの処理設備を小さくすることができるため、小型化が可能である。さらに、固定化反応においてフッ化水素酸が生成しないため、腐食を受けることがない。
本発明のフッ素含有ガス分解処理装置は、後述するフッ素化合物回収方法に好適に使用することができる。
【0051】
(フッ素化合物回収方法)
本発明のフッ素化合物回収方法は、上述した本発明のフッ素含有ガス分解処理装置を用いて行われ、フッ素含有ガスと水素含有化合物とを熱処理し、分解ガスを生成させ、前記分解ガスを前記固定化材料と乾式反応させ、固定化生成物として生成したフッ素化合物を回収する方法であり、前記フッ素含有ガス中のフッ素成分と、その他の成分とを分離し、前記フッ素成分のみを回収する方法である。
【0052】
前記フッ素化合物回収方法により処理される前記フッ素含有ガスとしては、成分としてフッ素原子を含むものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる、例えば、SF6等のフッ素および硫黄を含有する化合物、フルオロカーボン等のフッ素化物(C、H、F化合物)などが挙げられ、特にSF6が好適に処理される。
【0053】
前記水素含有化合物としては、前記フッ素含有ガス中のフッ素原子がすべてHFとなるために必要なモル数以上の水素を含む化合物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記フッ素含有ガス中のフッ素原子と、硫黄原子やハロゲン原子等のその他の原子とが、すべて水素化合物となるために必要なモル数以上の水素を含むことが好ましい。
【0054】
前記被分解物がSF6である場合、前記水素含有化合物としては、フッ素原子と硫黄原子とがそれぞれすべてHF、H2Sとなるのに必要なモル数以上の水素を含む水素ガスであることが好ましい。このような前記水素ガスを用いることにより、SF6中のフッ素原子はすべてHF、硫黄原子はすべてH2Sとなる。その後、例えば、前記HFのみを前記固定化材料に乾式固定することにより、硫黄成分が分離された純度の高いフッ素化合物を回収することができる。
【0055】
前記フッ素含有ガスと前記水素含有化合物との熱処理温度としては、700〜1200℃であることが好ましく、1000〜1200℃であることがより好ましい。
前記熱処理温度が700℃未満であると、被分解物の熱分解が十分に行われないことがあり、前記熱処理温度が1200℃を超えると、H2Sガスの分解が促進され、単体の硫黄が多く発生し、前記硫黄除去フィルターの目詰まりを引き起こすことがある。
【0056】
前記固定化材料としては、前記分解ガス中のHFと乾式反応し、前記HF中のフッ素原子を固定し、固体のフッ素化合物として回収される化合物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記固定化材料としては、例えば、Na、Li、K、Ca、Mg、及びSiから選択される少なくとも1種の炭酸塩、Na、Li、K、Ca、Mg、及びSiから選択される少なくとも1種の酸化物、及び炭酸水素ナトリウムなどが挙げられ、これらの中でも、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、及び酸化カルシウムが好ましい。
【0057】
前記固定化材料の性状としては、固体であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、粒状であることが好ましく、その粒径としては1〜2mmであることが好ましい。
【0058】
前記分解ガスと固定化材料との乾式反応温度としては、150〜500℃であることが好ましく、150〜300℃であることがより好ましい。
前記乾式反応温度としては、前記分解ガス中のHFのみが前記固定化材料と反応する温度であることが好ましく、例えば、前記被分解物がSF6である場合、分解ガス中のHFだけが前記固定化材料と反応し、その他の硫黄化合物は前記固定化材料と反応しない温度であることが好ましい。
前記乾式反応温度が150℃未満であると、前記分解ガス中のHFがフッ化水素酸となり、生成した該フッ化水素酸により装置の腐食を生じることがある。前記乾式反応温度が500℃を超えると、前記分解ガス中のHFガスの化学平衡濃度が大きくなり、固定化率が低下することがある。
【0059】
H2S1モル、HF6モル、及びNa2CO35モルの1気圧での固体成分の化学平衡組成を図8に示し、気体成分の化学平衡組成を図9に示す。
図8から、前記固定化材料としての炭酸ナトリウムは、200〜800℃の広い温度範囲においてHFと反応してNaFとなるが、H2Sとは殆ど反応せず、H2Sはガス状が安定であることがわかる。
また、図9から、気相中のHF濃度は、500℃以下の温度範囲において十数ppm以下であり、300℃以下の温度範囲において1ppm(10−6atm)未満であることから、150〜300℃の乾式反応温度において、前記固定化材料の炭酸ナトリウムによってHFを選択的に低濃度まで固定できることがわかる。
【0060】
H2S1モル、HF6モル、及びCaCO310モル、及びO24モルの1気圧での固体成分の化学平衡組成を図10に示し、気体成分の化学平衡組成を図11に示す。
図10から、前記固定化材料としての炭酸カルシウム又は酸化カルシウムは、200〜800℃の広い温度範囲においてHFと反応してCaF2となるが、H2Sとは殆ど反応せず、H2Sはガス状が安定であることがわかる。
また、図11から、気相中のHF濃度は、500℃以下の温度範囲において十数ppm以下であり、300℃以下の温度範囲において1ppm(10−6atm)未満であることから、150〜300℃の乾式反応温度において、前記固定化材料の炭酸カルシウム又は酸化カルシウムによってHFを選択的に低濃度まで固定できることがわかる。
【0061】
前記フッ素化合物回収方法においては、前記HFを前記固定化材料に固定した後、前記固定化材料に固定されない硫黄化合物を処理することが好ましい。
前記硫黄化合物の処理方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般的な酸性ガス除去処理方法を適用することができる。
また、前記硫黄化合物がH2Sの場合、H2Sを燃焼させてSOxとした後、炭酸カルシウム溶液等と反応させ、石膏(CaSO4)として回収することにより再資源化できる。
【0062】
本発明のフッ素含有ガス分解処理装置(図1)を用いた、SF6含有ガスの回収方法を説明する。
前記フッ素含有ガス供給装置から供給されたSF6、及び前記水素化合物供給装置から供給されたH2ガスは、前記熱分解炉3に導入され、熱処理される。前記被分解物のSF6は分解され、H2S及びHFを含む分解ガス、並びに硫黄が生成する。硫黄は、前記熱分解炉の下流に備えられた硫黄除去フィルターにより除去される。
生成した前記分解ガスは、前記乾式固定化炉に導入され、前記固定化材料供給装置から供給された前記固定化材料と共に150〜500℃の温度条件下で乾式固定される。ここで、前記分解ガス中のHFのみが前記固定化材料に固定され、前記固定化生成物(フッ素化合物)となる。前記固定化生成物は、回収タンク等に回収される。
一方、固定化されないH2Sは、前記乾式固定化炉から排出され、前記燃焼炉において燃焼されてSOxとなる。その後、スクラバー等により湿式除去される。
上記の処理により、前記固定化生成物として、例えば、フッ化ナトリウム、及びフッ化カルシウムが得られる。
【0063】
前記固定化生成物は、固体で粒状である前記固定化材料が、前記分解ガスとの乾式反応により生成するため、回収率が90%以上である。
また、前記固定化生成物は、純度97%以上のフッ素化合物である。
【0064】
前記固定化生成物の用途としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、HF製造用や鉄鋼用等の工業用原料、及び試薬などが挙げられる。
【0065】
本発明のフッ素化合物回収方法は、前記フッ素含有ガスと前記水素含有化合物とからなる被処理ガスを加熱することにより熱分解し、生成した前記分解ガス中のフッ素原子を、乾式反応により前記固定化材料に固定させ、前記固定化生成物を回収する方法であるため、分解処理工程における排ガス発生量が少なく、得られる前記固定化生成物が粒状のフッ素化合物であるため、取扱い性に優れる。
また、本発明のフッ素化合物回収方法は、前記フッ素含有ガスを分解処理して得られる前記フッ素化合物の純度97%以上であるため、再資源化に好適である。
【実施例】
【0066】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこの実施例に何ら限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
被処理ガスとして、Ar、SF6、H2からなるガスを用い、SF6を99.99%以上分解し、フッ素化合物を回収する実験を行った。前記Arは、希釈用に添加された成分である。
【0068】
−熱分解炉の設計・製造−
SF6を99.99%以上分解可能な前記熱分解炉の設計を行った。
前記SF6の分解率を99.99%として、被処理ガスの処理量をAr:5.0×10−6m3/s、SF6:1.0×10−6m3/s、H2:4.0×10−6m3/s、熱処理温度を1000℃と設定し、下記式(1)を用いて、前記熱分解炉の体積V(m3)を算出した。
【数23】
ただし、式(1)中、FA0は前記被処理ガスの処理量(m3/s)、kは分解反応速度定数(1/s)、εAはδA・yA0(δAは分解反応前後におけるモル体積の増加分のフッ素化合物モル体積に対する割合であり、δA=2)、yA0は反応開始時の前記被分解物のモル分率、xAは前記被分解物の分解率を表す。
前記分解反応速度定数は、頻度因子(k0)を2.08×103(s−1)、活性化エネルギー(E)を8.314×104(J/mol)として下記式(2)を用いて算出した。
【数24】
ただし、k0は分解反応の頻度因子(s−1)、Eは活性化エネルギー(J/mol)、Rは気体定数、Tは熱処理温度の絶対温度(K)を表す。
【0069】
この結果、前記熱分解炉の体積を0.19×10−3m3とし、内径が0.02m、長さが0.6mの管形の熱分解炉を設計した。
前記設計に基づき、内部に黒鉛製、チューブ状の伝熱体を備えた熱分解炉を製造した。
【0070】
−乾式固定化炉の設計・製造−
前記固定化材料として、炭酸カルシウムを用いることとし、前記分解ガス中のHFと前記固定化材料の炭酸カルシウムとの乾式反応特性を調べ、HFの破過時間を求めた。
また、前記固定化材料について、HFの吸収容量、及び量論係数を求めた。
前記乾式固定化炉への前記分解ガスの流入量を設定し、下記式(3)を用いて、前記乾式固定化炉の反応帯体積VCを算出した。
【数25】
ただし、前記式(3)中、αは下記(4)で示される設計係数(m3・min/mol)、GCは分解ガスの流入量(mol/min)を表す。
【数26】
ただし、前記式(4)中、τは破過時間(min)、bは量論係数、QCは固定化材料の前記分解ガス吸収容量(mol/m3−bed)を表す。
【0071】
この結果、前記乾式固定化炉の反応帯体積の値として0.023×10−3m3を得た。
前記乾式固定化炉は、2つの反応管を前記分解ガスが流通可能に接続して配置するように設計するため、前記乾式固定化炉の反応帯を、直径0.03m、長さ0.035mとし、前記乾式固定化炉を、直径0.03m、長さ0.15mとして設計した。
前記設計に基づき、アルミナセラミック製の反応管2本からなる乾式固定化炉を製造した。
【0072】
−フッ素ガス分解処理装置−
設計・製造した前記熱分解炉、及び前記乾式固定化炉を、図1のように配置してなるフッ素ガス分解処理装置を製造した。
【0073】
−フッ素化合物の回収−
前記フッ素ガス分解処理装置を用いて、SF6ガスの分解処理及びフッ素化合物の回収を行った。
前記熱分解炉に、被処理ガスを0.017×10−3m3/sで送り、1100℃で熱処理を行って分解ガスを生成し、次いで、該分解ガスを前記乾式固定化炉に0.02×10−3m3/sで送り、前記固定化材料の炭酸カルシウム100gとともに200℃で乾式反応させ、得られた固定化生成物(フッ素化合物)を回収した。
前記乾式固定炉出口でのH2Sガス濃度を検知管により確認したところ、反応開始時から分析精度の範囲でほぼ一定値を示しているのに対して、HF濃度は全く検出できなかった。このことから、HFガスとH2Sとが分離されたことがわかった。
【0074】
回収されたフッ素化合物(CaF2)の純度を、トリウム滴定及び蛍光X線分析を用いて測定したところ、97%であることがわかった。
また、前記乾式固定化炉に充填した前記固定化材料がすべてフッ化物となる時の量論的な重量、及び回収したフッ素化合物の重量、並びに回収したフッ素化合物の純度から、回収率は99%であることがわかった。
【0075】
(実施例2)
実施例1において、前記乾式固定化炉を単一の反応管からなる構造とした以外は、実施例1と同様にして、SF6含有ガスを熱分解し、フッ素化合物を得た。
回収されたフッ素化合物(CaF2)の純度を、トリウム滴定及び蛍光X線分析を用いて測定したところ、90%であることがわかった。
また、回収率は99%であることがわかった。
【0076】
(実施例3)
実施例1において、前記乾式固定化炉の反応管の長さを、前記反応帯の長さの2倍未満とした以外は、実施例1と同様にしてSF6含有ガスを熱分解し、フッ素化合物を得た。
回収されたフッ素化合物(CaF2)の純度を、トリウム滴定及び蛍光X線分析を用いて測定したところ、60%であることがわかった。
また、回収率は99%であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のフッ素含有ガス分解処理装置の設計方法、及び該設計方法により設計されたフッ素含有ガス分解処理装置、並びにこれを用いたフッ素化合物回収方法は、フッ素含有ガスを高い分解率で分解可能であり、分解処理後の生成物の取扱い性に優れ、かつ該生成物であるフッ素化合物の純度が高く、再資源化が可能であるため、SF6ガスやフルオロカーボンガスの廃棄処理などに好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、SF6ガス分解処理装置の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、SF6の分解特性を示したグラフの一例である。
【図3】図3は、SF6の分解反応速度を解析するためのグラフの一例である。
【図4】図4は、SF6の反応速度定数のアレニウスプロットの一例である。
【図5】図5は、熱分解炉の一例を示す模式図である。
【図6】図6は、乾式固定化炉の一例を示す模式図である。
【図7】図7は、SF6の分解ガスの乾式分離特性を示したグラフの一例である。
【図8】図8は、H2S、HF、及びNa2CO3の固体成分の化学平衡図である。
【図9】図9は、H2S、HF、及びNa2CO3の気体成分の化学平衡図である。
【図10】図10は、H2S、HF、CaCO3、及びO2の固体成分の化学平衡図である。
【図11】図11は、H2S、HF、CaCO3、及びO2の気体成分の化学平衡図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素含有ガス供給装置から供給されるフッ素含有ガスと、水素供給装置から供給される水素含有化合物とからなる被処理ガスを熱処理し、前記フッ素含有ガス中の被分解物を熱分解する熱分解炉、及び
前記熱分解炉から排出される分解ガスと、固定化材料供給装置から供給される固定化材料とを乾式反応させ、前記分解ガス中のフッ素成分を固定する乾式固定化炉が少なくとも配置され、
前記熱分解炉の体積V(m3)が、下記式(1)から導出され、前記乾式固定化炉の反応帯の体積VC(m3)が、下記式(3)から導出されたことを特徴とするフッ素含有ガス分解処理装置。
【数1】
ただし、FA0は前記被処理ガスの処理量(m3/s)、kは下記式(2)で表される分解反応速度定数(1/s)、εAはδA・yA0、δAは分解反応前後におけるモル体積の増加分のフッ素化合物モル体積に対する割合、yA0は反応開始時の前記被分解物のモル分率、xAは前記被分解物の分解率を表す。
【数2】
ただし、k0は分解反応の頻度因子(s−1)、Eは活性化エネルギー(J/mol)、Rは気体定数、Tは熱分解温度の絶対温度(K)を表す。
【数3】
ただし、αは下記式(4)で表される設計係数(m3・min/mol)、GCは分解ガスの流入量(mol/min)を表す。
【数4】
ただし、τは破過時間(min)、bは量論係数、QCは固定化材料の前記分解ガス吸収容量(mol/m3−bed)を表す。
【請求項2】
熱分解炉が管状構造であり、該熱分解炉内に伝熱体を有する請求項1に記載のフッ素含有ガス分解処理装置。
【請求項3】
乾式固定化炉が管状構造の反応管からなり、前記反応管の全長が、反応帯の長さの2倍以上である請求項1から2のいずれかに記載のフッ素含有ガス分解処理装置。
【請求項4】
乾式固定化炉が、分解ガスが流通可能に接続された2以上の反応管からなり、前記分解ガスが前記2以上の反応管の内部を交互に通過するように設計された請求項1から3のいずれかに記載のフッ素含有ガス分解処理装置。
【請求項5】
乾式固定化炉が、固定化材料として、Na、Li、K、Ca、Mg、及びSiから選択される少なくとも1種の炭酸塩、Na、Li、K、Ca、Mg、及びSiから選択される少なくとも1種の酸化物、及び炭酸水素ナトリウムのいずれかを含む請求項1から4のいずれかに記載のフッ素含有ガス分解処理装置。
【請求項6】
乾式固定化炉の下流側に、前記乾式固定化炉から排出される未固定の分解ガスを燃焼させる燃焼炉、及び前記未固定の分解ガスを洗浄するスクラバーの少なくともいずれかが配置された請求項1から5のいずれかに記載のフッ素含有ガス分解処理装置。
【請求項7】
フッ素含有ガス中の被分解物がSF6(六フッ化硫黄)であり、水素含有化合物がH2(水素)である請求項1から6のいずれかに記載のフッ素含有ガス分解処理装置。
【請求項8】
フッ素含有ガス中の被分解物がSF6(六フッ化硫黄)であり、前記SF6を99.99%以上分解する熱分解炉の体積V(m3)を式(1)より導出するのに際し、
前記式(1)中の分解反応速度定数k(1/s)が、式(2)において、頻度因子k0=2.08×103(s−1)、活性化エネルギーE=8.314×104(J/mol)として導出される請求項7に記載のフッ素含有ガス分解処理装置。
【請求項9】
熱分解炉の下流側に、硫黄成分除去フィルターが配置された請求項7から8のいずれかに記載のフッ素含有ガス分解処理装置。
【請求項10】
フッ素含有ガス中の被分解物がフルオロカーボンであり、水素含有化合物が水蒸気及び空気の少なくともいずれかである請求項1から6のいずれかに記載のフッ素含有ガス分解処理装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載のフッ素含有ガス分解処理装置を用い、
フッ素含有ガスと水素含有化合物とを熱処理し、分解ガスを生成させ、
前記分解ガスを固定化材料と乾式反応させ、固定化生成物として生成したフッ素化合物を回収することを特徴とするフッ素化合物回収方法。
【請求項1】
フッ素含有ガス供給装置から供給されるフッ素含有ガスと、水素供給装置から供給される水素含有化合物とからなる被処理ガスを熱処理し、前記フッ素含有ガス中の被分解物を熱分解する熱分解炉、及び
前記熱分解炉から排出される分解ガスと、固定化材料供給装置から供給される固定化材料とを乾式反応させ、前記分解ガス中のフッ素成分を固定する乾式固定化炉が少なくとも配置され、
前記熱分解炉の体積V(m3)が、下記式(1)から導出され、前記乾式固定化炉の反応帯の体積VC(m3)が、下記式(3)から導出されたことを特徴とするフッ素含有ガス分解処理装置。
【数1】
ただし、FA0は前記被処理ガスの処理量(m3/s)、kは下記式(2)で表される分解反応速度定数(1/s)、εAはδA・yA0、δAは分解反応前後におけるモル体積の増加分のフッ素化合物モル体積に対する割合、yA0は反応開始時の前記被分解物のモル分率、xAは前記被分解物の分解率を表す。
【数2】
ただし、k0は分解反応の頻度因子(s−1)、Eは活性化エネルギー(J/mol)、Rは気体定数、Tは熱分解温度の絶対温度(K)を表す。
【数3】
ただし、αは下記式(4)で表される設計係数(m3・min/mol)、GCは分解ガスの流入量(mol/min)を表す。
【数4】
ただし、τは破過時間(min)、bは量論係数、QCは固定化材料の前記分解ガス吸収容量(mol/m3−bed)を表す。
【請求項2】
熱分解炉が管状構造であり、該熱分解炉内に伝熱体を有する請求項1に記載のフッ素含有ガス分解処理装置。
【請求項3】
乾式固定化炉が管状構造の反応管からなり、前記反応管の全長が、反応帯の長さの2倍以上である請求項1から2のいずれかに記載のフッ素含有ガス分解処理装置。
【請求項4】
乾式固定化炉が、分解ガスが流通可能に接続された2以上の反応管からなり、前記分解ガスが前記2以上の反応管の内部を交互に通過するように設計された請求項1から3のいずれかに記載のフッ素含有ガス分解処理装置。
【請求項5】
乾式固定化炉が、固定化材料として、Na、Li、K、Ca、Mg、及びSiから選択される少なくとも1種の炭酸塩、Na、Li、K、Ca、Mg、及びSiから選択される少なくとも1種の酸化物、及び炭酸水素ナトリウムのいずれかを含む請求項1から4のいずれかに記載のフッ素含有ガス分解処理装置。
【請求項6】
乾式固定化炉の下流側に、前記乾式固定化炉から排出される未固定の分解ガスを燃焼させる燃焼炉、及び前記未固定の分解ガスを洗浄するスクラバーの少なくともいずれかが配置された請求項1から5のいずれかに記載のフッ素含有ガス分解処理装置。
【請求項7】
フッ素含有ガス中の被分解物がSF6(六フッ化硫黄)であり、水素含有化合物がH2(水素)である請求項1から6のいずれかに記載のフッ素含有ガス分解処理装置。
【請求項8】
フッ素含有ガス中の被分解物がSF6(六フッ化硫黄)であり、前記SF6を99.99%以上分解する熱分解炉の体積V(m3)を式(1)より導出するのに際し、
前記式(1)中の分解反応速度定数k(1/s)が、式(2)において、頻度因子k0=2.08×103(s−1)、活性化エネルギーE=8.314×104(J/mol)として導出される請求項7に記載のフッ素含有ガス分解処理装置。
【請求項9】
熱分解炉の下流側に、硫黄成分除去フィルターが配置された請求項7から8のいずれかに記載のフッ素含有ガス分解処理装置。
【請求項10】
フッ素含有ガス中の被分解物がフルオロカーボンであり、水素含有化合物が水蒸気及び空気の少なくともいずれかである請求項1から6のいずれかに記載のフッ素含有ガス分解処理装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載のフッ素含有ガス分解処理装置を用い、
フッ素含有ガスと水素含有化合物とを熱処理し、分解ガスを生成させ、
前記分解ガスを固定化材料と乾式反応させ、固定化生成物として生成したフッ素化合物を回収することを特徴とするフッ素化合物回収方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−122790(P2006−122790A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−313207(P2004−313207)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】
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