説明

フッ素含有ゴム被覆積層体およびその製造方法

【課題】金属等で形成された基材と、フッ素含有ゴムとを、厚い接着剤層を介することなく、強く確りと接着させて、引張られたり曲げられたり長期間使用したりしても剥がれたり裂けたりしないフッ素含有ゴム被覆積層体、及びそれの簡便な製造方法を提供する。
【解決手段】フッ素含有ゴム被覆積層体は、金属、高分子樹脂、ガラス又はセラミックスで形成された基材の表面に有する水酸基と、活性シリル基含有化合物中のハイドロジェンシリル含有シリル基、ビニル含有シリル基、アルコキシシリル含有シリル基、及び加水分解性基含有シリル基から選ばれる少なくとも1種類の活性シリル基とが、シリルエーテル結合しており、活性シリル基に架橋反応したハイドロジェンシリル基含有化合物が、そのハイドロジェンシリル基を介して、フッ素含有ゴムの成分中の不飽和基に、付加反応していることにより、前記フッ素含有ゴムが接着されて被覆している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面にフッ素含有ゴムが接着できるように改質した金属、高分子樹脂、ガラス又はセラミックス製の基材を、フッ素含有ゴムで被覆した積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属やセラミックスのように硬い素材、高分子樹脂のような柔軟な素材で形成された被接着基材と、フッ素含有ゴムのような柔軟な素材の被覆材とを接着するには、接着界面での分子間相互作用による物理的な接着や、接着界面での化学結合形成による化学的な接着が行われる。
【0003】
そのような接着方法として、特許文献1には、弾性体上に、燐片状充填材含有のフッ素樹脂プライマー層及びフッ素樹脂トップコート層からなる少なくとも2層を設けたフッ素樹脂被覆積層体を得る方法が開示されている。このフッ素樹脂被覆積層体は、塗装によって得られるもので、弾性体からの分解ガスを吸着又は遮断するプライマー層により、分解ガスの所為でピンホールや膨れが防止され、トップコート層の表面平滑性に優れるというものである。一般にフッ素樹脂は、フッ素原子の分極率が低く分子間の相互作用が小さいことに起因して、その表面張力が低いため、高い撥水性や優れた耐薬品性を示す反面、基材との相互作用も小さいために、基材に強力に接着できない。
【0004】
また、物理的な接着の方法として、被接着部材の表面の肌理を粗くして接触面積を増加させ接着させる機械的接着法が知られており、また化学的な接着の方法として、被接着部材に加熱硬化性接着剤を塗布した後に接着部材を押付ける接着剤法、被接着部材を表面処理して反応性基を導入した後に接着部材の表面分子と化学的に結合させて接着させる表面処理法が知られている。
【0005】
一方、機械的接着法による接着体は、剥がれ易い。接着剤法による接着体は、被接着部材と接着部材との界面で両者を直接化学結合させていないため、密着性が不十分であったとき、過酷なヒートサイクルに晒されたとき、または長期間経過したときに、接着剤の劣化によって接着強度が低下してしまう。その接着層は、通常数μm〜数100μmであるから、引張られたり曲げられたりしたときの応力を分散させることができるが接着剤量が少なすぎて接着強度をさほど高くさせることができない。接着剤量を増やして接着層を厚くすると、応力による歪の集中を生じ、剥離し易くなって、かえって接着強度を低下させてしまう。そのバランスをとるのが、困難である。さらに、接着剤法では、微小な部材同士を接着させるのは困難である。また表面処理法による接着体は、一般に、非接着基材表面に、10000原子当たり僅か2〜4の化学結合が生成しただけで、比較的強い接着強度が得られ、接着時の外界温度又は溶剤の存在のような環境で接着強度が支配されない反面、被接着部材と接着部材との界面で確実に化学結合を生成させることが困難で、極めて限定された素材でできた基材しか用いることができず、汎用性に欠ける。
【0006】
【特許文献1】特開2001−315274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、金属、高分子樹脂、ガラス又はセラミックスで形成された基材と、フッ素含有ゴムとを、厚い接着剤層を介することなく、従来よりも遥かに強く確りと接着させて、引張られたり曲げられたり長期間使用したりしても剥がれたり裂けたりしないフッ素含有ゴム被覆積層体、及びそれの簡便な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するためになされた特許請求の範囲の請求項1に記載のフッ素含有ゴム被覆積層体は、金属、高分子樹脂、ガラス又はセラミックスで形成された基材の表面に有する水酸基と、活性シリル基含有化合物中のハイドロジェンシリル含有シリル基、ビニル含有シリル基、アルコキシシリル含有シリル基、及び加水分解性基含有シリル基から選ばれる少なくとも1種類の活性シリル基とが、シリルエーテル結合しており、活性シリル基に架橋反応したハイドロジェンシリル基含有化合物が、そのハイドロジェンシリル基を介して、フッ素含有ゴムの成分中の不飽和基に、付加反応していることにより、前記フッ素含有ゴムが接着されて被覆していることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載のフッ素含有ゴム被覆積層体は、請求項1に記載されたもので、前記ハイドロジェンシリル基含有化合物が、両末端にトリアルキルシロキシ基と、その間に酸素を介してエーテル結合しているジアルキルシリル基及びアルキルハイドロジェンシリル基とを、有しており、前記アルキルハイドロジェンシリル基を介して、前記付加反応していることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載のフッ素含有ゴム被覆積層体は、請求項1に記載されたもので、前記ハイドロジェンシリル基含有化合物が、両末端にハイドロジェンシリル基を有しており、両末端にビニル基を含有するポリジアルキルシロキサン化合物との混合物であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載のフッ素含有ゴム被覆積層体は、請求項3に記載されたもので、前記混合物が前記活性シリル基含有化合物上に付されており、それの前記ハイドロジェンシリル基含有化合物が、前記付加反応していることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載のフッ素含有ゴム被覆積層体は、請求項3に記載されたもので、前記混合物が前記フッ素含有ゴムに含まれており、それの前記ハイドロジェンシリル基含有化合物が、前記付加反応していることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載のフッ素含有ゴム被覆積層体は、請求項1に記載されたもので、前記ハイドロジェンシリル基含有化合物が、両末端にハイドロジェンシリル基とその間にパーフルオロアルキレン基とを有しており、両末端にビニル基とその間にパーフルオロアルキレン基とを有するフッ素含有化合物と混合されつつ、前記フッ素含有ゴムに含まれていることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載のフッ素含有ゴム被覆積層体は、請求項1に記載されたもので、前記活性シリル基が、
モノヒドロシリル含有シリル基及びジヒドロシリル含有シリル基から選ばれる前記ヒドロシリル含有シリル基;
ビニルシリル含有シリル基である前記ビニル含有シリル基;
トリアルコキシシリル末端含有シリル基及びジアルコキシシリル末端含有シリル基から選ばれる前記アルコキシシリル含有シリル基;
アシルオキシシリル基、アルケニルオキシシリル基、アルカンイミノオキシシリル基、アルキルオキシシリル基、アルキルアミノシリル基、ジアルキルアミノシリル基、含窒素複素環置換シリル基、及びアリールアミノシリル基から選ばれる加水分解性官能基を有している前記加水分解性基含有シリル基
であることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載のフッ素含有ゴム被覆積層体製造方法は、金属、高分子樹脂、ガラス又はセラミックスで形成されその表面に水酸基を有している基材に、ハイドロジェンシリル含有シリル基、ビニル含有シリル基、アルコキシシリル含有シリル基、及び加水分解性基含有シリル基から選ばれる少なくとも1種類の活性シリル基を有する活性シリル基含有化合物を付してシリルエーテル結合化反応させ中間体基材にした後、その前記活性シリル基にハイドロジェンシリル基含有化合物を架橋反応させ、そのハイドロジェンシリル基を介して、フッ素含有ゴムの成分中の不飽和基に、付加反応させることにより、前記フッ素含有ゴムで接着されて被覆されることを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載のフッ素含有ゴム被覆積層体製造方法は、請求項8に記載されたもので、前記水酸基が、前記基材の表面分子の水酸基若しくはその分子の酸化により形成された水酸基であり、または前記基材の表面へのコロナ放電、大気圧プラズマ処理及び紫外線照射の何れかにより生成した水酸基であることを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載のフッ素含有ゴム被覆積層体製造方法は、請求項8に記載されたもので、前記ハイドロジェンシリル基含有化合物を前記中間体基材に付してから常温下又は加熱下で前記架橋反応させた後、そこに前記フッ素含有ゴムを付してから常温下又は加熱下で硬化させて前記接着することを特徴とする。
【0018】
請求項11に記載のフッ素含有ゴム被覆積層体製造方法は、請求項8に記載されたもので、両末端にハイドロジェンシリル基を有している前記ハイドロジェンシリル基含有化合物と、両末端にビニル基を含有するポリジアルキルシロキサン化合物とを混合し、前記中間体基材に付してから常温下又は加熱下で硬化させて前記架橋反応させた後、そこに前記フッ素含有ゴムを付してから常温下又は加熱下で前記接着することを特徴とする。
【0019】
請求項12に記載のフッ素含有ゴム被覆積層体製造方法は、請求項8に記載されたもので、両末端にハイドロジェンシリル基を有している前記ハイドロジェンシリル基含有化合物と、両末端にビニル基を含有するポリジアルキルシロキサン化合物とを混合した前記フッ素含有ゴムを調製した後、それを前記中間体基材に付して常温下又は加熱下で硬化させることにより、前記活性シリル基へのハイドロジェンシリル基含有化合物の架橋反応と、フッ素含有ゴムの成分中の不飽和基へのハイドロジェンシリル基含有化合物の付加反応とを行って、前記接着することを特徴とする。
【0020】
請求項13に記載のフッ素含有ゴム被覆積層体製造方法は、請求項8に記載されたもので、両末端にハイドロジェンシリル基とその間にパーフルオロアルキレン基とを有する前記ハイドロジェンシリル基含有化合物と、両末端にビニル基とその間にパーフルオロアルキレン基とを有するフッ素含有化合物とを混合した前記フッ素含有ゴムを調製した後、それを前記中間体基材に付して常温下又は加熱下で硬化させることにより、前記活性シリル基へのハイドロジェンシリル基含有化合物の架橋反応と、フッ素含有ゴムの成分中の不飽和基へのハイドロジェンシリル基含有化合物の付加反応とを行って、前記接着することを特徴とする。
【0021】
請求項14に記載のフッ素含有ゴム被覆積層体製造方法は、請求項8に記載されたもので、前記架橋反応、及び/又は前記付加反応が、白金含有触媒及び/又はロジウム含有触媒存在下で行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明のフッ素含有ゴム被覆積層体は、金属、高分子樹脂又はセラミックスで形成された基材の表面の水酸基と活性シリル基含有化合物中の活性シリル基とをシリルエーテル結合させ、その活性シリル基をハイドロジェンシリル基含有化合物に架橋させ、そのハイドロジェンシリル基をフッ素含有ゴムの不飽和基に付加させて、夫々化学的に結合させて、強力に接着させたものである。
【0023】
これらの結合は、熱や光や応力によっても切断され難い化学結合である。そのため、このフッ素含有ゴム被覆積層体は、強固で剥がれ難く、耐熱性・耐光性・機械的耐久性に優れ、長期間安定である。この結合に起因して、積層体の界面間は、その表面エネルギーに関係している濡れ性を単に向上させても未だ不十分な接着強度よりも、遥かに強い強度を有する。その積層体は、それを構成する原料成分が長い分子鎖を有していてもそれに阻害されることなく、積層体の層間の化学的結合により強く接合されている。
【0024】
一般にフッ素含有ゴムのようなゴムの物性は、それの原料成分の末端での架橋に極めて影響され易く、外部の応力によって原料成分の未架橋の末端を基点にして分解等の劣化が惹き起こされる所為で、低下してしまうことが、知られている。しかし、このフッ素含有ゴム被覆積層体は、原料成分の比較的短い分子鎖の末端で十分に反応させたものであるから、界面での屈曲や捩れに追従することができる。
【0025】
このフッ素含有ゴム被覆積層体製造方法によれば、大小問わず、基材の素材に関わらず、フッ素含有ゴム被覆積層体を簡便かつ大量に製造することができる。
【発明を実施するための好ましい形態】
【0026】
以下、本発明の実施の好ましい形態について詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0027】
フッ素含有ゴム被覆積層体は、金属、高分子樹脂、ガラス又はセラミックス製で被覆すべき基材の表面の水酸基と、活性シリル基含有化合物中の活性シリル基とが、化学的にシリルエーテル結合してそれのシリルエーテルの単分子膜を形成し、その活性シリル基に架橋反応したハイドロジェンシリル基含有化合物が、そのハイドロジェンシリル基を介して、フッ素含有ゴムの成分中の不飽和基に、付加反応し、フッ素含有ゴムが接着されて基材を被覆している。
【0028】
本発明を適用するフッ素含有ゴム被覆積層体は、以下のようにして製造される。フッ素含有ゴム被覆積層体の実施の第一の形態は以下の通りである。
【0029】
金属製の被接着基材の基質表面を、適宜脱脂洗浄してから、コロナ放電処理を施し、その基質表面の金属の酸化物分子に由来する水酸基を生成させ、活性シリル基含有化合物架橋反応性の基材表面とする。また、基質表面に不純異物例えば有機物のような汚れが付着していると、コロナ放電処理により酸化されて基質表面に有機物由来のカルボキシル基が生じ、それに起因する水酸基を生成させた架橋反応性の基材表面となる。
【0030】
一方、その水酸基に反応してシリルエーテルを形成させるCH2=CH-Si(OCH3)3(ビニルメトキシシロキサン:VMS)のようなアルコキシシリル化合物である活性シリル基含有化合物と溶媒との溶液を、水酸基が生成している被接着基材表面に付し、乾燥させた後、加熱する。この化合物が含有する活性シリル基であるトリメトキシシリル基が、基材表面上の水酸基に反応し、前記活性シリル基となり、水酸基の脱水素残基とともに、化学的に強固なシリルエーテル結合を形成する。この活性シリル基含有化合物により、ビニル含有シリル基のようなシリル基がエーテル結合したシリルエーテルの単分子膜で被覆された中間体基材が得られる。
【0031】
この中間体基材を、白金触媒の懸濁液に浸漬する。その後、ハイドロジェンシリル基含有シラン化合物として、両末端にトリメチルシロキシ基を有しその間に酸素を介してジアルキルシリル基とアルキルハイドロジェンシリル基とが結合している化合物、例えばトリメチルシロキシ末端メチルハイドロジェンシロキサン−ジメチルシロキサンポリマーである(CH3)3-Si-[O-Si(CH3)2]a1-[O-SiH(CH3)]a2-O-Si(CH3)3(a1:a2はモル比で10〜100:2〜30)であり、-[O-Si(CH3)2]-基と-[O-SiH(CH3)]基とは、ブロック又はランダムであってもよい)の溶液に、浸漬し、乾燥してから、加熱する。その表面へ、フッ素含有ゴム成分中に不飽和基を含有する化合物が含まれたフッ素含有ゴムを、付し、加熱すると、フッ素含有ゴムが接着されて被覆しているフッ素含有ゴム被覆積層体が、得られる。
【0032】
ハイドロジェンシリル基含有シラン化合物分子が、一部のハイドロジェンシリル基で活性シリル基含有化合物分子のビニル基に付加する架橋反応し、別な一部のハイドロジェンシリル基でフッ素含有ゴム分子のビニル基に付加反応するため、極めて強固に結合したフッ素含有ゴム被覆積層体となっている。
【0033】
フッ素含有ゴム被覆積層体の実施の第二の形態は以下の通りである。
【0034】
前記のようにして得られた中間体基材を、白金触媒の懸濁液に浸漬する。ハイドロジェンシリル基含有化合物として例えば両末端にハイドロジェンシリル基を有するシラン化合物であるH(CH3)2Si-(CH2)a3-Si(CH3)2H(a3は2〜10)と、両末端にビニル基を含有するポリジアルキルシロキサン化合物として例えば両末端ビニルポリジメチルシロキサンポリマーであるCH2=CH-(CH3)2Si-O-(Si(CH3)2-O)a4-Si(CH3)2-CH=CH2(a4は10〜100)とを0.9:1.1〜1.1:0.9のモル比で混合した溶液を調製する。その溶液に、中間体基材を浸漬し、乾燥してから、加熱する。その表面へ、フッ素含有ゴム成分中に不飽和基を含有する化合物が含まれたフッ素含有ゴムを、付し、加熱すると、フッ素含有ゴムが接着されて被覆しているフッ素含有ゴム被覆積層体が、得られる。
【0035】
ハイドロジェンシリル基含有シラン化合物分子が、一端のハイドロジェンシリル基で活性シリル基含有化合物分子のビニル基に付加する架橋反応し、さらに他端のハイドロジェンシリル基でフッ素含有ゴム分子のビニル基に直接、付加反応したり、その他端のハイドロジェンシリル基で両末端ビニルポリジメチルシロキサンポリマーの一端のビニル基に付加し他端のビニル基とフッ素含有ゴム分子のビニル基とで反応したりして網目状に結合を形成するため、極めて強固に結合したフッ素含有ゴム被覆積層体となっている。なお、ハイドロジェンシリル基含有化合物は、シリル基に結合している官能基のハイドロジェン基が複数である二官能性の化合物、三官能性の化合物であってもよく、さらに反応性基に富む四官能性以上の化合物であってもよい。
【0036】
フッ素含有ゴム被覆積層体の実施の第三の形態は以下の通りである。
【0037】
前記のようにして得られた中間体基材を、白金触媒の懸濁液に浸漬する。ハイドロジェンシリル基含有化合物として例えば前記と同様なH(CH3)2Si-(CH2)a3-Si(CH3)2H、及び両末端にビニル基を含有するポリジアルキルシロキサン化合物として例えば前記と同様なCH2=CH-(CH3)2Si-O-(Si(CH3)2-O)a4-Si(CH3)2-CH=CH2を前記比率とし、さらに白金触媒を溶媒中で混合、分散させ、溶媒を蒸発させて高分子量化させてポリマーにする。このポリマーとフッ素含有ゴムの原料組成物とを1〜3:9〜7の質量比で混合しフッ素含有ゴムを調製する。そのフッ素含有ゴムを、中間体基材に付し、加熱すると、フッ素含有ゴムが接着されて被覆しているフッ素含有ゴム被覆積層体が、得られる。
【0038】
ハイドロジェンシリル基含有シラン化合物分子が、一端のハイドロジェンシリル基で活性シリル基含有化合物分子のビニル基に付加する架橋反応し、さらに他端のハイドロジェンシリル基でフッ素含有ゴム分子のビニル基に直接、付加反応したり、その他端のハイドロジェンシリル基でフッ素含有ゴム分子と共存している両末端ビニルポリジメチルシロキサンポリマーの一端のビニル基に付加し他端のビニル基とフッ素含有ゴム分子のビニル基とで反応したり、それらが更に同様な反応をしたりして複雑な網目状に結合するため、極めて強固に結合したフッ素含有ゴム被覆積層体となっている。
【0039】
フッ素含有ゴム被覆積層体の実施の第四の形態は以下の通りである。
【0040】
別なフッ素含有ゴム被覆積層体は、以下のようにして製造される。前記のようにして得られた中間体基材を、白金触媒の懸濁液に浸漬する。両末端にハイドロジェンシリル基とその間にパーフルオロアルキレン基とを有するハイドロジェンシリル基含有化合物としてH(CH3)2Si-(CH2)a5-(CF2)a6-(CH2)a7-Si(CH3)2H(a5,a7は1〜10、a6は2〜20)、及び末端にビニル基とパーフルオロアルキレン基とを有するフッ素含有化合物例えばCH2=CH-(CH2)a8-(CF2)a9-(CH2)a10-CH=CH2(a8,a10は0〜10、a9は2〜20)を0.9〜1.1:1.1〜0.9のモル比で調製し、それとフッ素含有ゴムの原料組成物とを1〜30:99〜70の質量比で混合しさらに白金触媒を混合して、フッ素含有ゴムを調製する。そのフッ素含有ゴムを、中間体基材に付し、加熱すると、フッ素含有ゴムが接着されて被覆しているフッ素含有ゴム被覆積層体が、得られる。
【0041】
これらのハイドロジェンシリル基含有化合物もフッ素含有化合物もフッ素含有樹脂もフッ素を有しているから互いに相溶し易い。しかも、ハイドロジェンシリル基含有シラン化合物分子が、一端のハイドロジェンシリル基で活性シリル基含有化合物分子のビニル基に付加する架橋反応し、さらに他端のハイドロジェンシリル基でフッ素含有ゴム分子のビニル基に直接、付加反応したり、その他端のハイドロジェンシリル基でフッ素含有ゴム分子と共存しているフッ素含有化合物の一端のビニル基に付加し他端のビニル基とフッ素含有ゴム分子のビニル基とで反応したり、それらが更に同様な反応をしたりして複雑な網目状に結合するため、極めて強固に結合したフッ素含有ゴム被覆積層体となっている。
【0042】
基材表面の水酸基に反応してシリルエーテルを形成させるVMSの例を示したが、この水酸基と反応しハイドロジェンシリル基含有シラン化合物と架橋する別な活性シリル基含有化合物を用いてもよい。
【0043】
これらの化合物中のアルキル基やアルキルオキシ基は炭素数1〜4のものが好ましいが、例示したようにメチル基やエチルオキシ基であることが好ましい。
【0044】
活性シリル基が、該基の末端に-SiH(R1)2又は-SiH2(R2)(R1及びR2は、炭素数1〜4のアルキル基)を有し、又は該基の主鎖の途中に-SiH-基を有しているヒドロシリル含有シリル基であってもよい。
【0045】
活性シリル基が、該基の末端に、-Si-R3基(R3はビニル含有基)を有し、又は該基の主鎖の途中に-Si(R4)-基(R4はビニル含有基)を有しているビニルシリル含有シリル基であってもよい。
【0046】
活性シリル基が、該基の末端に、-Si(OR5)2R6基(R5及びR6は炭素数1〜4のアルキル基)、又は-Si(OR7)3基(R7は炭素数1〜4のアルキル基)を有しているアルコキシシリル末端含有シリル基であってもよい。
【0047】
活性シリル基が、-Si(R8)b1(R9)3-b1基(R8は、水素原子;ハロゲン原子;炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アルキルオキシ基、フッ素置換アルキル基;アラルキル基;アリール基であり、R9は、炭素数1〜12のアシルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルカンイミノオキシ基、アルキルオキシ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基;含窒素複素環基、及びアリールアミノ基であり、b1は0〜3の数)で表わされる加水分解性官能基を有する加水分解性基含有シリル基であってもよい。
【0048】
活性シリル基含有化合物の活性シリル基の一つ又は複数が、ハイドロジェンシリル基含有化合物のヒドロシリル、ビニルシリル、ヒドロキシシリル、アルキルオキシシリル、アルケニルオキシシリル、アシルオキシシリル、イミノオキシシリル、アルキルアミノシリルから選ばれる少なくとも1種類と、シリルエーテル結合することが好ましい。
【0049】
ビニル基とハイドロジェンシリル基との反応が、その反応する化合物表面に、付された白金含有触媒やロジウム含有触媒の存在下で、進行することが好ましい。白金含有触媒として、白金錯体が挙げられ、ロジウム含有触媒として、ロジウム錯体が挙げられる。白金含有触媒やロジウム含有触媒が、それを含む溶液又は懸濁液で塗布又は浸漬によって付されていることが好ましい。白金含有触媒中の白金原子やロジウム含有触媒中のロジウム原子が、そのビニル基に配位しハイドロジェンシリル基と反応することが好ましい。
【0050】
白金含有触媒として、例えば白金−テトラメチルジビニルジシロキサン錯体のヘキサン溶液、1.85〜2.1%の白金カルボニルシクロビニルメチルシロキサン錯体のビニルメチル環状シロキサン溶液であるSIP6829.2(Gelest社製の商品名)、3〜3.5%の白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の両末端ビニルポリジメチルシロキサン溶液であるSIP6830.3(Gelest社製の商品名)、2.1〜2.4%の白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液であるSIP6831.2(Gelest社製の商品名)、2.1〜2.4%の白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液の低着色タイプであるSIP6831.2LC(Gelest社製の商品名)、2〜2.5%の白金−シクロビニルメチルシロキサン錯体の環状メチルビニルシロキサン溶液であるSIP6832.2(Gelest社製の商品名)、2〜2.5%の白金−オクタナル/オクタノール錯体のオクタノール溶液であるSIP6833.2(Gelest社製の商品名)のような白金錯体が挙げられる。白金含有触媒にかえて、ロジウム含有触媒、例えば、3〜3.5%のトリス(ジブチルスルフィド)ロジウムトリクロライドのトルエン溶液であるINRH078(Gelest社製の商品名)のようなロジウム錯体であってもよい。
【0051】
前記ビニル含有シリル基が、(CH2=CH-)(CH3O-)2Si-O-[(CH2=CH-)(CH3O-)Si-O]c1-Si(-OCH3)2(-CH=CH2) (c1は0〜100の数)、
(CH2=CH-)(C2H5O-)2Si-O-[(CH2=CH-)(C2H5O-)Si-O]c2-Si(-OC2H5)2(-CH=CH2) (c2は0〜100の数)、
(CH2=CH-)(C3H7O-)2Si-O-[(CH2=CH-)(C3H7O-)Si-O]c3-Si(-OC3H7)2(-CH=CH2) (c3は0〜100の数)、
から選ばれるビニル含有シリル化合物由来であることが好ましい。
【0052】
ヒドロシリル含有シリル基のようなシリル基でシリルエーテル結合した中間体基材の例を示したが、ビニルシリル含有シリル基で例示されるビニル含有シリル基、アルコキシシリル末端含有シリル基、加水分解性基含有シリル基のような活性シリル基でシリルエーテル結合したものであってもよい。
【0053】
このような活性シリル基は何れも、被接着基材の表面の水酸基に活性シリル基含有化合物のアルコキシシリル基が反応することにより、形成されるものである。
【0054】
このようなヒドロシリル含有シリル基で被接着基材(Sub.:Substrate)に形成されるシリルエーテル結合は、下記化学式[1]
Sub.−O−SiR20 ・・・[1]
で表わされる。ヒドロシリル含有シリル基−SiR20は、R20が末端に-SiH(R1)2又は-SiH2(R2)(R1及びR2は、炭素数1〜4のアルキル基)を有し、又はその主鎖の途中に-SiH-基を有しているというもので、ポリシロキシ基となっていてもよいというものである。
【0055】
−SiR20は、より具体的には、
-(C2H5O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2H、
-(CH3O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2H、
-(i-C3H7O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)H2
-(n-C3H7O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2Si(CH3)2Si(CH3)2H、
-(n-C4H9O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
-(t-C4H9O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
-(C2H5O)CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
-(CH3O)CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2Si(CH3)2Si(CH3)2H、
-(CH3)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
-(C2H5O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
-(n-C3H7)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
-(i-C3H7O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
-(n-C4H9)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
-(t-C4H9O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
-[(-O)(-)SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H]k1
-[(-O)(-)SiCH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H]k2
-[(-O)(-)SiCH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H]k3
-[(-O)(-)SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H]k4
-[(-O)(-)SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H]k5
-(CH3O)2SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
-(CH3O)CH3SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
-(CH3)2SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
-[(-O)(-)SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H]k6
-[(-O)(-)SiCH2CH2CH2Si(CH3)2C6H4OC6H4Si(CH3)2H]k7
-[(-O)(-)SiCH2CH2CH2Si(CH3)2C2H4Si(CH3)2H]k8
-(C2H5O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2O[Si(CH3)2O]m1Si(CH3)2H、
-(C2H5)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2O[Si(CH3)2O]m2Si(C2H5)2H、
-(C2H5O)CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2O[Si(CH3)2O]m3Si(CH3)2H、
(CH3)3SiO[-Si(CH3)]O[SiH(CH3)O]m4Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(-Si(CH3)CH2CH2CH2)(-)SiCH3]O[SiH(CH3)O]m5Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(-Si(OCH3)CH2CH2CH2)(-)SiCH3]O[SiH(CH3)O]m6Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(-Si(CH3)CH2CH2CH2)(-)SiCH3]O[SiH(CH3)O]m7Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(-Si(O-)CH2CH2CH2)SiCH3]O[SiH(CH3)O]m8Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(-Si(CH3)O[SiH(CH3)O]m9[Si(CH3)2O]n1Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(-Si(CH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2)(-)Si(CH3)O][SiH(CH3)O]m10[Si(CH3)2O]n2Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(-Si(OCH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2)(-)Si(CH3)O][SiH(CH3)O]m11[Si(CH3)2O]n3Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(-Si(O-)CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][SiH(CH3)O]m12[Si(CH3)2O]n4Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(-Si(OCH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2)(-)Si(CH3)O][SiH(CH3)O]m13[Si(CH3)2O]n5Si(CH3)3
(CH3)3SiO[-Si(C2H5)O][SiH(C2H5)O]m14Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(-Si(O-)CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(C2H5)]O[SiH(C2H5)O]m15Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(-Si(CH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2)(-)Si(C2H5)]O[SiH(C2H5)O]m16Si(CH3)3
-Si(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[HSi(CH3)2OSiC6H5O]m17Si(CH3)2H、
-Si(OCH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[HSi(CH3)2OSiC6H5O]m18Si(CH3)2H、
-Si(O-)CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[HSi(CH3)2OSiC6H5O]m19Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(CH3)2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m20Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(CH3)2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m21Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m22Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m23Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m24Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2CH2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m25Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2CH2C6H4CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m26Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m27Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m28Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m29Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m30Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m31Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m32Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m33Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2CH2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m34Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2CH2C6H4CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m35Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m36Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m37Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)CH2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m38Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)CH2C6H4CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m39Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m40Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m41Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m42Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m43Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m44Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m45Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m46Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)CH2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m47Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)CH2C6H4CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m48Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m49Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m50Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-)Si(CH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSiC6H5O]m51[HSi(CH3)2OSiC6H5O]n6Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-)Si(OCH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSiC6H5O]m52[HSi(CH3)2OSiC6H5O]n7Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-)Si(O-)CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSiC6H5O]m53[HSi(CH3)2OSiC6H5O]n8Si(CH3)2H、
-(CH3)2SiO[SiH(CH3)O]m54[SiCH3(C6H5)O]n9Si(CH3)2H、
-Si(OC2H5)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[SiH(CH3)O]m55[SiCH3(C6H5)O]n10Si(CH3)2H、
-Si(O-)CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[SiH(CH3)O]m56[SiCH3(C6H5)O]n11Si(CH3)2H、
-Si(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[SiH(CH3)O]m57[SiCH3(C6H5)O]n12Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO(-)Si(CH3)O[SiH(CH3)O]m58[SiCH3(C6H5)O]n13Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-)Si(OC2H5)2CH2CH2CH2Si(CH3)]O[SiH(CH3)O]m59[SiCH3(C6H5)O]n14Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-)Si(O-)CH2CH2CH2Si(CH3)]O[SiH(CH3)O]m60[SiCH3(C6H5)O]n15Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-)Si(CH3)2CH2CH2CH2Si(CH3)]O[SiH(CH3)O]m61[SiCH3(C6H5)O]n16Si(CH3)2H
が挙げられる。これらの基中、k1〜k8、m1〜m61及びn1〜n16は1〜100までの数である。一つの基に、ヒドロシリル基(SiH基)を、1〜99個有していることが好ましい。
【0056】
このようなヒドロシリル含有シリル基を形成する活性シリル基含有化合物の例として、
(CH3O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(CH3O)3SiCH2CH2CH2Si(OCH3)2OSi(OCH3)3
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(OCH3)2OSi(OCH3)3
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2H、
(CH3O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2H、
(i-C3H7O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)H
(n-C3H7O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2Si(CH3)2Si(CH3)2H、
(n-C4H9O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(t-C4H9O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)2CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(CH3O)2CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2Si(CH3)2Si(CH3)2H、
CH3O(CH3)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(n-C3H7)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(i-C3H7O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(n-C4H9)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(t-C4H9O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(CH3O)3SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
(CH3O)2CH3SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
CH3O(CH3)2SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2C6H4OC6H4Si(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2C2H4Si(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2O[Si(CH3)2O]p1Si(CH3)2H、
C2H5O(CH3)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2O[Si(CH3)2O]p2Si(C2H5)2H、
(C2H5O)2CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2O[Si(CH3)2O]p3Si(CH3)2H、
(CH3)3SiOSiH(CH3)O[SiH(CH3)O]p4Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(C2H5OSi(CH3)CH2CH2CH2)SiCH3]O[SiH(CH3)O]p5Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(C2H5OSiOCH3CH2CH2CH2)SiCH3]O[SiH(CH3)O]p6Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(C2H5OSi(CH3)CH2CH2CH2)SiCH3]O[SiH(CH3)O]p7Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(Si(OC2H5)2CH2CH2CH2)SiCH3]O[SiH(CH3)O]p8Si(CH3)3
(CH3)3SiOSi(OC2H5)2O[SiH(CH3)O]p9[Si(CH3)2O]q1Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(C2H5Osi(CH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][SiH(CH3)O]p10[Si(CH3)2O]q2Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][SiH(CH3)O]p11[Si(CH3)2O]q3Si(CH3)3
(CH3)3SiOSi(OC2H5)2O[SiH(C2H5)O]p12Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(Si(OC2H5)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(C2H5)]O[SiH(C2H5)O]p13Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(C2H5OSi(CH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(C2H5)]O[SiH(C2H5)O]p14Si(CH3)3
C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[HSi(CH3)2OSiC6H5O]p15Si(CH3)2H、
Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[HSi(CH3)2OSiC6H5O]p16Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p17Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p18Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p19Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p20Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p21Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p22Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2C6H4CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p23Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p24Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p25Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p26Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p27Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p28Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p29Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p30Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p31Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2C6H4CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p32Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p33Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p34Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p35Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(CH3O)Si(CH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSiC6H5O]p36[HSi(CH3)2OSiC6H5O]q4Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[Si(OCH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSiC6H5O]p37[HSi(CH3)2OSiC6H5O]q5Si(CH3)2H、
C2H5O(CH3)2SiO[SiH(CH3)O]p38[SiCH3(C6H5)O]q6Si(CH3)2H、
Si(OC2H5)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[SiH(CH3)O]p39[SiCH3(C6H5)O]q7Si(CH3)2H、
C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[SiH(CH3)O]p40[SiCH3(C6H5)O]q8Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO(C2H5O)Si(CH3)O[SiH(CH3)O]p41[SiCH3(C6H5)O]q9Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[Si(OC2H5)3CH2CH2CH2Si(CH3)]O[SiH(CH3)O]p42[SiCH3(C6H5)O]q10Si(CH3)2H
が挙げられる。これらの基中、p1〜p42及びq1〜q10は1〜100までの数である。一つの分子に、ヒドロシリル基を、1〜99個有していることが好ましい。
【0057】
また、活性シリル基含有化合物は、[H(CH3)2Si]q11-Xで表されるもので、-Xが、-(CH2)4C、-(OCH2)4C、-O4Si、-(CH2)3CCH3、-(OCH2)3CCH3、-(CH2)2O(CH2)2-、-O(CH2)2O(CH2)2O-、-O(CH2)2O-、-(CH2)4-、-O(CH2)4O-、-(C6H4)-、-O-(C6H4)-O-、-CH2-(C6H4)-CH2-、-OCH2-(C6H4)-CH2O-、-(C6H4)-(C6H4)-(何れも-(C6H4)-はp-フェニレン)、-O-[C6H3(O-)]-O-(C6H3は1,3,5-ベンゼントリオールの脱水酸基残基)であり、q11はその結合数を示す、多官能性の化合物であってもよい。
【0058】
またビニルシリル含有シリル基で被接着基材(Sub.)に形成されるシリルエーテル結合は、下記化学式[2]
Sub.−O−SiR21 ・・・[2]
で表わされる。ビニルシリル含有シリル基−SiR21は、R21が-Si-R3基(R3はビニル含有基)を有し、又は該基の主鎖の途中に-Si(R4)-基(R4はビニル含有基)を有しているというものである。
【0059】
−SiR21は、より具体的には、
-(C2H5O)2SiCH2-CH=CH2
-(C2H5O)2SiCH2CH2-CH=CH2
-(C2H5O)2SiCH2CH2CH2CH2-CH=CH2
-(C2H5O)2SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2-CH=CH2
-C2H5OSi(CH=CH2)OSi(OC2H5)-CH=CH2
-(CH3O)2SiCH2CH2C6H4-CH=CH2
-(CH3O)Si(CH=CH2)O[SiOCH3(CH=CH2)O]r1Si(OCH3)2-CH=CH2
-(C2H5O)Si(CH=CH2)O[SiOC2H5(CH=CH2)O]r2Si(OC2H5)2-CH=CH2
-(C2H5O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]r3-CH=CH2
-(CH3O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]r4-CH=CH2
-(CH3)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]r5-CH=CH2
-(C2H5O)CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]r6-CH=CH2
-(-O)SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]r7-CH=CH2
-(C2H5O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2(Si(CH3)3O)Si(CH3)O[SiCH3(-)O]s1Si(CH3)3
-(C2H5O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2(Si(CH3)3O)Si(CH3)O[SiCH3(-)O]s2[Si(CH3)2O]r8Si(CH3)3
-C2H5OSi(CH=CH2)O[SiCH3(-)O]s3Si(OC2H5)2CH=CH2
-C2H5OSi(CH=CH2)O[SiCH3(-)O]s4Si(CH=CH2)OC2H5-CH=CH2
-(-O)Si(CH=CH2)O[SiCH3(-)O]s5Si(OC2H5)2CH=CH2
-(-O)Si(CH=CH2)O[SiCH3(-)O]s6Si(CH=CH2)(O-)-CH=CH2
-(-O)Si(CH=CH2)O[SiCH3(-)(O-)]s7Si(CH=CH2)(O-)-CH=CH2
-Si(CH=CH2)O[Si(-)OC2H5]s8[Si(O-)CH=CH2]2
-Si(CH=CH2)O[Si(O-)]r9[Si(-)OC2H5]s9[Si(OC2H5)2CH=CH2]2
-Si(CH=CH2)O[Si(-)(O-)]s10[Si(O-)CH=CH2]2
が挙げられる。これらの基中、r1〜r9及びs1〜s10は、1〜30の数である。一つの基に、ビニル基(CH=CH2基)を、1〜30個有していることが好ましい。
【0060】
ビニルシリル含有シリル基を形成する活性シリル基含有化合物の例として、
(C2H5O)3SiCH2CH=CH2
(CH3O)3SiCH2CH2CH=CH2
(C2H5O)3SiCH2CH2CH=CH2
(CH3O)3SiCH2CH2CH2CH2CH=CH2
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2CH2CH=CH2
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH=CH2
(CH3O)3SiCH2(CH2)7CH=CH2
(C2H5O)2Si(CH=CH2)OSi(OC2H5)CH=CH2
(CH3O)3SiCH2CH2C6H4CH=CH2
(CH3O)2Si(CH=CH2)O[SiOCH3(CH=CH2)O]t1Si(OCH3)2CH=CH2
(C2H5O)2Si(CH=CH2)O[SiOC2H5(CH=CH2)O]t2Si(OC2H5)3
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]t3CH=CH2
(CH3O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]t4CH=CH2
CH3O(CH3)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]t5CH=CH2
(C2H5O)2CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]t6CH=CH、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]t7CH=CH、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2(Si(CH3)3O)Si(CH3)O[SiCH3(-)O]u1Si(CH3)3CH=CH2
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2(Si(CH3)3O)Si(CH3)O[SiCH3(-)O]u2[Si(CH3)2O]t8Si(CH3)3CH=CH2
(C2H5O)2Si(CH=CH2)O[SiCH3(OC2H5)O]u3Si(OC2H5)2CH=CH2
(C2H5O)2Si(CH=CH2)O[Si(OC2H5)2O]u4Si(OC2H5)2CH=CH2
(C2H5O)2Si(CH=CH2)O[Si(OC2H5)2O]u5Si(OC2H5)2CH=CH2
が挙げられる。これらの基中、t1〜t8及びu1〜u5は1〜30までの数である。一つの分子に、ビニル基を、1〜30個有していることが好ましい。
【0061】
また、アルコキシシリル末端含有シリル基で被接着基材(Sub.)に形成されるシリルエーテル結合は、下記化学式[3]
Sub.−O−SiR22 ・・・[3]
で表わされる。アルコキシシリル末端含有シリル基−SiR22は、R22が-Si(OR5)2R6基(R5及びR6は炭素数1〜4のアルキル基)、又は-Si(OR7)3基(R7は炭素数1〜4のアルキル基)を有しているものである。−SiR22は、より具体的には、
-(C2H5O)2SiCH2CH2Si(OC2H5)3
-(C2H5O)CH3SiCH2CH2Si(OC2H5)3
-(C2H5O)2SiCH=CHSi(OC2H5)3、
-(CH3O)2SiCH2CH2Si(OCH3)3、
-(CH3O)2SiCH2CH2C6H4CH2CH2Si(OCH3)3
-(CH3O)2Si[CH2CH2]3Si(OCH3)3
-(CH3O)2Si[CH2CH2]4Si(OCH3)3、
-(CH3O)CH3SiCH2CH2Si(OCH3)2CH3
-(C2H5O)CH3SiOSi(OC2H5)2CH3
-(C2H5O)Si(OC2H5)2
が挙げられる。
【0062】
アルコキシシリル末端含有シリル基を形成する活性シリル基含有化合物の例として、
(C2H5O)3SiCH2CH2Si(OC2H5)3
(C2H5O)2CH3SiCH2CH2Si(OC2H5)3
(C2H5O)3SiCH=CHSi(OC2H5)3
(CH3O)3SiCH2CH2Si(OCH3)3(CH3O)3SiCH2CH2C6H4CH2CH2Si(OCH3)3
(CH3O)3Si[CH2CH2]3Si(OCH3)3
(CH3O)2Si[CH2CH2]4Si(OCH3)3
(C2H5O)2Si(OC2H5)2
(CH3O)2CH3SiCH2CH2Si(OCH3)2CH3
(C2H5O)2CH3SiOSi(OC2H5)2CH3
(CH3O)3SiO[Si(OCH3)2O]v1Si(OCH3)3
(C2H5O)3SiO[Si(OC2H5)2O]v2Si(OC2H5)3
(C3H7O)3SiO[Si(OC3H7)2O]v3Si(OC3H7)3
が挙げられる。これらの基中、v1〜v3は0〜30までの数である。
【0063】
また、加水分解性基含有シリル基で被接着基材(Sub.)に形成されるシリルエーテル結合は、下記化学式[4]
Sub.−O−Si(R8)a(R9)3-a ・・・[4]
(R8は、水素原子;ハロゲン原子;炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アルキルオキシ基、フッ素置換アルキル基;アラルキル基;アリール基であり、R9は、炭素数1〜12のアシルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルカンイミノオキシ基、アルキルオキシ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基;含窒素複素環基、及びアリールアミノ基であり、aは0〜3の数)で表わされる。より具体的には、加水分解性基含有シリル基−Si(R8)a(R9)3-a中、R8は、H-、F-、CH3-、C2H5-、CH2=CH-、n-C3H7-、i-C3H7-、CH2=CHCH2-、C4H9-、C6H13-、C8H17-、C6H5-、CH3C6H4-、C6H5CH2-、CF3CF2CH2CH2-、CF3CF2CF2CH2CH2-、CF3CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2-、CH3O-、C2H5O-が挙げられ、R9は、CH3COO-、CH2=C(CH3)O-、C2H5(CH3)C=NO-、CH3O-、(CH3)2N-、(C2H5)2N-、(i-C3H7)2N-、O(CH2CH2)2N-、(CH3)3CNH-、C6H10NH-、C6H5NH-が挙げられる。
【0064】
加水分解性基含有シリル基を形成する活性シリル基含有化合物の例として、
CH3Si(OCOCH3)3、(CH3)2Si(OCOCH3)2、n-C3H7Si(OCOCH3)3、CH2=CHCH2Si(OCOCH3)3、C6H5Si(OCOCH3)3、CF3CF2CH2CH2Si(OCOCH3)3、CH2=CHCH2Si(OCOCH3)3、CH3OSi(OCOCH3)3、C2H5OSi(OCOCH3)3、CH3Si(OCOC3H7)3、CH3Si[OC(CH3)=CH2]3、(CH3)2Si[OC(CH3)=CH2]3、n-C3H7Si[OC(CH3)=CH2]3、CH2=CHCH2Si[OC(CH3)=CH2]3、C6H5Si[OC(CH3)=CH2]3、CF3CF2CH2CH2Si[OC(CH3)=CH2]3、CH2=CHCH2Si[OC(CH3)=CH2]3、CH3OSi[OC(CH3)=CH2]3、C2H5OSi[OC(CH3)=CH2]3、CH3Si[ON=C(CH3)C2H5]3、(CH32Si[ON=C(CH3)C2H5]2、n-C3H7Si[ON=C(CH3)C2H5]3、CH2=CHCH2Si[ON=C(CH3)C2H5]3、C6H5Si[ON=C(CH3)C2H5]3、CF3CF2CH2CH2Si[ON=C(CH3)C2H5]3、CH2=CHCH2Si[ON=C(CH3)C2H5]3、CH3OSi[ON=C(CH3)C2H5]3、C2H5OSi[ON=C(CH3)C2H5]]3、CH3Si[ON=C(CH3)C2H5]3、CH3Si[N(CH3)]3、(CH3)2Si[N(CH3)]2、n-C3H7Si[N(CH3)]3、CH2=CHCH2Si[N(CH3)]3、C6H5Si[N(CH3)]3、CF3CF2CH2CH2Si[N(CH3)]3、CH2=CHCH2Si[N(CH3)]3、CH3OSi[N(CH3)]3、C2H5OSi[N(CH3)]3、CH3Si[N(CH3)]3などの昜加水分解性オルガノシランが挙げられる。
【0065】
これらの活性シリル基含有化合物は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;酢酸エチルなどのエステル類;塩化メチレンなどのハロゲン化物、ブタン、ヘキサンなどのオレフィン類;テトラヒドロフラン、ブチルエーテルなどのエーテル類、ベンゼン、トルエンなどの芳香族類;ジメチルホルムアミド、メチルピロリドンなどのアミド類;及びこれらの混合溶媒などに溶解して使用される。
【0066】
活性シリル基含有化合物の添加量は、概ね上記の溶剤100gに対して、0.001〜5gの範囲が適当である。0.001g以下では接着効果が十分ではなく、5g以上では条件を制御しても多層薄膜が生成するので好ましくない。
【0067】
被接着基材は、金属、高分子樹脂、ガラス、又はセラミックスで形成されたものが挙げられる。
【0068】
その被接着基材の水酸基は、一般的な金属の酸化物に由来する水酸基、水酸基を有するポリマー、セラミックスが有する水酸基であってもよい。
【0069】
このような金属として、例えばMg,Ti,Be,Ca,Li,Al,Mn,Zn,Cr,Ga,Fe,Cd,In,Ta,Co,Ni,Sn,Sb,Bi,Pb,Cu,Ag,Pt,Pd,及びAuのような金属材料;これら金属材料の二元合金、三元合金、多元合金が挙げられる。このような合金として、例えばMg合金、Al合金、Fe‐Cr‐Ni合金、Ni合金、Co合金、Cu-Zn合金、Cu-Sn合金、Cu-Ni合金、Ag合金が挙げられる。いずれの金属製や合金製の被接着基材も、表面に水酸基を導入できるように酸化被膜を生成しているものである。中でも、アルミニウム、銅箔が好ましい。
【0070】
高分子樹脂として、例えばセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン、二酢酸セルロースのようなセルロース誘導体、表面ケン化酢酸ビニル樹脂、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、石油樹脂、ポリスチレン、クロマン・インデン樹脂、テルペン樹脂、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリルニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、ポリシアノアクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン・エチレン共重合体、フッ化ビニリデン・プロピレン共重合体、1,4‐トランスポリブタジエン、ポリオキシメチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、フェノール・ホルマリン樹脂、クレゾール・フォルマリン樹脂、レゾルシン樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂、グリプタル樹脂、変性グリプタル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブテレンテレフタレート、不飽和ポリエステル樹脂、アリルエステル樹脂、ポリカーボネート、6−ナイロン(ナイロンは登録商標)、6,6−ナイロン、6,10-ナイロン、ポリイミド、ポリアミド、ポリベンズイミダゾール、ポリアミドイミド、ケイ素樹脂、シリコーンゴム、シリコーン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリジメチルフェニレンオキサイド、ポリキシレン、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PPI、カプトン)、液晶樹脂、ケブラー繊維、炭素繊維とこれら複数材料のブレンド物、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)のような高分子材料、又は天然ゴム、1,4‐シスブタジエンゴム、イソプレンゴム、ポリクロロプレン、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、水素添加スチレン・ブタジエン共重合ゴム、アクリルニトリル・ブタジエン共重合ゴム、水素添加アクリルニトリル・ブタジエン共重合ゴム、ポリブテン、ポリイソブチレン、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ターポリマー、塩素化ポリエチレン、クロルスルフォン化ポリエチレン、アルキル化クロルスルフォン化ポリエチレン、クロロプレンゴム、塩素化アクリルゴム、臭素化アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンとその共重合ゴム、塩素化エチレンプロピレンゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴムなどのゴム材料が挙げられる。これらの混合物又はこれらの架橋物であってもよい。
【0071】
セラミックスとして、Mg,Ti,Be,Ca,Li,Al,Mn,Zn,Cr,Ga,Fe,Cd,In,Ta,Co,Ni,Sn,Sb,Bi,Pb,Cu,及びAgなど金属材料の焼結体、これらの金属材料の二元合金の酸化物の焼結体、三元合金の酸化物の焼結体、多元合金の酸化物の焼結体が挙げられる。
【0072】
被接着基材は、これら金属や高分子樹脂やガラスやセラミックスで形成されたものであればよく、粒子であってもよく、長方形、正方形、多角形のような形状のフィルム、板、布であってもよく、筒、空中糸、ホース、網のような製品形状であってもよく球、楕円球のような形状であってもよい。
【0073】
被接着基材にコロナ放電を施して水酸基を導入する例を示したが、大気圧プラズマ処理又は紫外線照射を施してもよい。
【0074】
コロナ放電は、「コロナ処理」、日本接着学会誌、Vol.36,No.3,126(2000)に記載の方法に準じて、大気圧プラズマ処理は、「プラズマ処理」、日本接着学会誌、Vol.41,No.1,4(2005)に準じて、紫外線照射は、紫外線に暴露させて、夫々処理するというものである。これらの処理によって、L.J.Gerenser:J.Adhesion Sci.Technol.7,1019(1997)に記載のように、金属、高分子樹脂、ガラス又はセラミックス製の被接着基材の基材表面に、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基などが生成したり、表面に出現したりする。
【0075】
前記の高分子樹脂は、元々水酸基を有するものと有しないものとがあるが、高分子樹脂製の被接着基材表面に水酸基を有しなくともコロナ放電、大気圧プラズマ処理又は紫外線照射の処理を施すことにより、そこに水酸基が効率よく生成される。
【0076】
それらの最適処理条件は、被接着基材表面の材質の種類や履歴によって異なるが、その表面に55kJ/m以上の表面張力が得られるまで処理し続けることが好ましい。これにより、十分な接着強度が得られる。
【0077】
具体的には、樹脂及び樹脂配合物等の表面のコロナ放電処理は、コロナ表面改質装置(例えば、信光電気計測(株)製コロナマスター)を用いて、電源:AC100V、出力電圧:0〜20kV,発振周波数:0〜40kHzで0.1秒〜60秒、温度0〜60℃の条件で行われる。
【0078】
また、樹脂及び樹脂配合物の表面の大気圧プラズマ処理は、大気圧プラズマ発生装置(例えば、松下電工(株)製:商品名Aiplasuma)を用いて、プラズマ処理速度10〜100mm/s,電源:200 or 220V AC(30A)、圧縮エア:0.5MPa(1NL/min),10kHz/300W〜5GHz、電力:100W〜400W,照射時間:0.1秒〜60秒の条件で行われる。
【0079】
また、樹脂及び樹脂配合物等の表面の紫外線照射は、紫外線−発光ダイオード(UV-LED)照射装置(例えば、(株)オムロン製のUV-LED照射装置:商品名ZUV-C30H)を用いて、波長:200〜400nm、電源:100V AC,光源ピーク照度:400〜3000mW/cm2, 照射時間:1〜60秒の条件で行われる。
【0080】
コロナ放電などの前処理により表面に水酸基を生成している被接着基材の表面を、分子接着剤である活性シリル基含有化合物の溶液に浸漬又は噴霧によって接触させてもよい。浸漬及び噴霧の時間に制限はなく、被接着基材表面が一様に湿潤していることが重要である。
【0081】
活性シリル基含有化合物を付した被接着基材を、オーブンに入れたり、ドライヤーで温風を送風したり、高周波を照射したりすることにより、加熱しながら乾燥する。加熱・乾燥は、50℃〜250℃の温度範囲で、1〜60分間行われる。50℃以下では、被接着基材表面に生成した水酸基と活性シリル基含有化合物との反応時間が長くかかりすぎて、生産性が低下し、コストの高騰を招く。また、250℃以上では、加熱乾燥時間が短くても被接着基材表面が変形したり、分解したりしてしまう。1分間以下の加熱乾燥では熱の伝達が不十分であるため、被接着基材表面の水酸基と活性シリル基含有化合物との結合が不十分となる。また、60分以上では生産性が低下する。
【0082】
被接着基材表面の水酸基と活性シリル基含有化合物との反応が不十分な場合には、上記の浸漬と乾燥とを1〜5回程度繰り返してもよい。それにより1回当たりの浸漬及び乾燥時間を短縮し、反応回数を増やす方が反応を十分に進行させることができる。
【0083】
さらに、前記の活性シリル基含有化合物と他のシラン化合物とを組み合わせて用いることにより、フッ素含有ゴムで強固に結合させることができる。
【0084】
たとえば、上記の活性シリル基含有化合物で被接着基材表面の水酸基とを反応させた後、シラン化合物、例えば
HSi(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
HSi(CH3)2C6H4OC6H4Si(CH3)2H、
CH3Si(H)2C2H4Si(H)2CH3
HSi(CH3)2C2H4Si(CH3)2H、
HSi(CH3)2OSi(CH3)2H、
HSi(CH3)2O[Si(CH3)2O]x1Si(CH3)2H(但しx1=1〜840)、
(CH3)3SiO[SiH(R17)O]x2[Si(CH3)2O]y1Si(CH3)3(但しR17=CH3-、C2H5-、C6H5-;y1=1〜50;x2=0〜50)、
HSi(CH3)2O[SiC6H5(OSi(CH3)2H)]x3Si(CH3)2H(x3=1〜5)、
HSi(CH3)2O[SiCH3(H)O]x4[SiCH3(C6H5)O]y2Si(CH3)2H(x4=1〜10、y2=1〜10)
が挙げられる。これらのシラン化合物の0.01〜5%アルコール溶液に浸漬して、0〜200℃に1〜60分間加熱することによって、接着用の基材が得られる。0.01%以下では反応時間がかかりすぎ、5%以上では洗浄・回収のコストがかかってしまう。0℃以下では反応性が低く、200℃以上では生産性が劣る。1分間以下では反応が完結せず、60分間以上では生産性が劣る。
【0085】
同様に、以下の不飽和アルコキシシラン化合物、例えば
CH2=CHCH2Si(OC2H5)3
CH2=CHCH2CH2Si(OC2H5)3
CH2=CHCH2CH2CH2CH2Si(OC2H5)3
CH2=CHCH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(OCH3)3
CH2=CHSi(OC2H5)2OSi(OC2H5)2CH=CH2
CH2=CHC6H4CH2CH2Si(OCH3)3
CH2=CHSi(OCH3)2O[SiOCH3(CH=CH2)O]x5Si(OCH3)2CH=CH2 (但し、x5=1〜30)、
CH2=CHSi(CH3)2O[Si(CH3)2O]y3[Si(R18)2O]x6Si(CH3)2CH=CH2(但し、R18=CH3−,C2H5−,C6H5−,又はCF3CH2CH3−、x6=0〜2100、y3=0〜2100)、
(CH3)3SiO[Si(CH3)2O]y4[SiCH3(CH=CH2)O]x7Si(CH3)3(但し、x7=0〜2100、y4=0〜2100)、
(CH3)3SiO[Si(CH3)2O]y5[SiCH3(CH=CH2)O]x8[SiCH3(R19)O]z1Si(CH3)3(R19=CH3−,C2H5−,C6H5−,又はCF3CH2CH3−、x8=0〜2100、y5=0〜2100、z1=0〜2100)
が挙げられる。これらの不飽和アルコキシシラン化合物で被接着基材表面の水酸基と反応させた後、前記のシラン化合物の0.01〜5%と、白金触媒の10〜1000ppmとの混合物の懸濁液に、0〜200℃、1〜60分間浸漬しても接着用の基材が得られる。
【0086】
このときシラン化合物濃度が0.01%以下では反応時間がかかりすぎ、5%以上では洗浄・回収のコストがかかってしまう。白金触媒濃度が10ppmでは反応速度が遅すぎ、1000ppm以上ではコストが問題となってしまう。0℃以下では反応性が低いので生産性が低く、また200℃以上ではSiH基が酸化されて性能が低下する。1分間以下では反応が完結しない場合もあり、60分間以上では生産性が劣る。
【0087】
フッ素含有ゴムは、繰り返し単位が、Si-[CF2-CF(CF3)-O-]であるSIFEL3511A/B(信越化学工業株式会社製;SIFELは登録商標)、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体(FKM)、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体(FEPM)、フッ化ビニリデン−と六フッ化プロピレン−四フッ化エチレン共重合体(FFKM)が挙げられる。
【0088】
フッ素含有ゴムの原料成分の組成物はフッ素含有ゴム成分の他に、充填剤、架橋剤、触媒が加えられていてもよい。
【0089】
充填剤は、湿式シリカ、乾式シリカ、タルク、ニプシル、カーボンブラック、金属酸化物が挙げられ、10〜100部の範囲内で添加される。10部以下では補強効果が十分でなく、また100以上では充填が困難になってしまう。
【0090】
フッ素含有ゴムの厚さは、0.2mm〜20mmであることが好ましい。フッ素含有ゴムと反応させるのに、25〜200℃で、1分間〜24時間、処理することが好ましい。
【実施例】
【0091】
以下、本発明のフッ素含有ゴム被覆積層体を試作した実施例を詳細に説明する。
【0092】
(実施例1)
基質(アルミニウム板)を、アセトン中で30分間超音波照射して洗浄し、次いでイオン交換水中で、10分間ずつ2回超音波照射して洗浄処理した。その基質表面を大気雰囲気下でコロナ放電処理(信光電気計装株式会社製 コロナマスターPS−1M 電圧13kVで、往復)し、表面酸化して表面に水酸基を生じさせた。
(CH2=CH-)(CH3O-)2Si-O-[(CH2=CH-)(CH3O-)Si-O]b1-Si(-OCH3)2(-CH=CH2) (但しc1は3.78で、平均分子量が635.6)で示されるビニルメトキシシロキサン(VMS)の1.0g/Lのエタノール水溶液(エタノール:水の体積比 95:5)に5分間浸漬させた。その基質を引き上げ、120℃で10分間加熱処理し、未反応のビニルメトキシシロキサン(VMS)をエタノールで洗浄後、乾燥して、100ppmの白金−テトラメチルジビニルジシロキサン錯体のヘキサン溶液に3分間、浸漬させ後、取り出して乾燥させ、表面に白金含有触媒が付された接着用基材(Pt-VMS-Al)を得た。フッ素含有ゴムの原料成分の組成物であるSIFEL35511のA液・B液(信越化学工業株式会社製;登録商標)を混合して脱泡し、フッ素含有ゴムを得た。一方、ハイドロジェンシリル基含有化合物としてトリメチルシロキシ末端−メチルハイドロジェンシロキサン−ジメチルシロキサンポリマーである(CH3)3-Si-[O-Si(CH3)2]a1-[O-SiH(CH3)]a2-O-Si(CH3)3で示されるHMS-031(ゲレスト社製;商品名、粘度:25〜35cp、a1,a2は分子量を1900〜2000とし、[O-SiH(CH3)]を3〜4mol%とする数)をエタノールに溶解して5%エタノール溶液を調製した。この溶液に、中間体基材を浸漬させてから、室温で乾燥した後、120℃で10分間、オーブンで加熱した。これにフッ素含有ゴムを載せ、150℃で30分間、オーブンで加熱して、フッ素含有ゴム被覆積層体を得た。
【0093】
(実施例2)
両末端ビニルポリジメチルシロキサンポリマーとしてCH2=CH-(CH3)2Si-O-(Si(CH3)2-O)a4-Si(CH3)2-CH=CH2であるDMS-V31(ゲレスト社製;商品名、粘度:1000cp、a4は、分子量を28000とする数)と、ハイドロジェンシリル基含有化合物として両末端にハイドロジェンシリル基を有するシラン化合物H(CH3)2Si-(CH2)2-Si(CH3)2HであるSIT7544.0(ゲレスト社製;商品名)とを、1/2当量となるようにエタノールに溶解し、5%エタノール溶液を調製した。この溶液に、実施例1と同様にして調製した中間体基材を浸漬させてから、室温で乾燥した後、120℃で10分間、オーブンで加熱した。これに、SIFEL35511のA液・B液を混合し脱泡して得たフッ素含有ゴムを載せ、150℃で30分間、オーブンで加熱して、フッ素含有ゴム被覆積層体を得た。
【0094】
(実施例3)
実施例2で用いたDMS-V31、同じくSIT7544.0、白金含有触媒として白金−テトラメチルジビニルジシロキサン錯体を、200:1:0.01の質量比でヘキサンに加えて分散させた後、この溶剤を蒸発させて、ポリマーを調製した。このポリマーと、SIFEL35511のA液・B液とを、2:8の質量比で混合し脱泡して得たフッ素含有ゴムを、実施例1と同様にして調製した中間体基材に載せ、150℃で30分間、オーブンで加熱して、フッ素含有ゴム被覆積層体を得た。
【0095】
(実施例4)
フッ素含有化合物としてCH2=CH-(CF2)8-CH=CH2(ダイキン工業株式会社製)と、ハイドロジェンシリル基含有化合物としてH(CH3)2Si-(CH2)2-(CF2)8-(CH2)2-OHと、白金触媒である白金テトラメチルジビニルシロキサン錯体とを1:1:0.01の質量比で混合した混合物と、SIFEL35511のA液・B液とを、2:8の質量比で混合し脱泡して得たフッ素含有ゴムを、実施例1と同様にして調製した中間体基材に載せ、150℃で30分間、オーブンで加熱して、フッ素含有ゴム被覆積層体を得た。
【0096】
(比較例1)
基質(アルミニウム板)を、アセトン中で30分間超音波照射して洗浄し、次いでイオン交換水中で、10分間ずつ2回超音波照射して洗浄処理し、乾燥して、接着用基材を得た。この接着用基材に、SIFEL35511のA液・B液を混合して脱泡して得たフッ素含有ゴムを乗せ、150℃で30分間、オーブンで加熱して、フッ素含有ゴム被覆積層体を得た。
【0097】
(比較例2)
基質(アルミニウム板)を、アセトン中で30分間超音波照射して洗浄し、次いでイオン交換水中で、10分間ずつ2回超音波照射して洗浄処理し、その基質表面を大気雰囲気下でコロナ放電処理(信光電気計装株式会社製 コロナマスターPS−1M 電圧13kVで、往復)し、表面酸化して表面に水酸基を生じさせた。この接着用基材に、SIFEL35511のA液・B液を混合して脱泡して得たフッ素含有ゴムを乗せ、150℃で30分間、オーブンで加熱して、フッ素含有ゴム被覆積層体を得た。
【0098】
(接着強度測定試験)
JIS K6256−2:2005の試験法に準じシリコーンゴムを剥離させる90°ピール試験を行う剥離強度測定方法により、実施例1〜4、及び比較例1〜2のフッ素含有ゴム被覆積層体について、接着強度を測定した。その結果をまとめて表1に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
表1から明らかな通り、実施例のフッ素含有ゴム被覆積層体は、比較例のものより、遥かに接着強度が強かった。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明のフッ素含有ゴム被覆積層体は、金属、高分子樹脂、ガラス又はセラミックス製の基材表面に、フッ素含有ゴムを被覆して接着させ、基材を保護したり弾性を付与したりしたものである。
【0102】
弾性を必要とする製品で、耐水性、耐薬品性、耐溶解性、ガスバリア性、滑性を必要とする各種製品に用いられる。特に、従来何層にも積層されていたガソリン供給用のホース、シリンジ用ガスケットやプレフィルドシリンジやシリンジポンプや輸液バッグのような医療器具・医療機器に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属、高分子樹脂、ガラス又はセラミックスで形成された基材の表面に有する水酸基と、活性シリル基含有化合物中のハイドロジェンシリル含有シリル基、ビニル含有シリル基、アルコキシシリル含有シリル基、及び加水分解性基含有シリル基から選ばれる少なくとも1種類の活性シリル基とが、シリルエーテル結合しており、活性シリル基に架橋反応したハイドロジェンシリル基含有化合物が、そのハイドロジェンシリル基を介して、フッ素含有ゴムの成分中の不飽和基に、付加反応していることにより、前記フッ素含有ゴムが接着されて被覆していることを特徴とするフッ素含有ゴム被覆積層体。
【請求項2】
前記ハイドロジェンシリル基含有化合物が、両末端にトリアルキルシロキシ基と、その間に酸素を介してエーテル結合しているジアルキルシリル基及びアルキルハイドロジェンシリル基とを、有しており、前記アルキルハイドロジェンシリル基を介して、前記付加反応していることを特徴とする請求項1に記載のフッ素含有ゴム被覆積層体。
【請求項3】
前記ハイドロジェンシリル基含有化合物が、両末端にハイドロジェンシリル基を有しており、両末端にビニル基を含有するポリジアルキルシロキサン化合物との混合物であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素含有ゴム被覆積層体。
【請求項4】
前記混合物が前記活性シリル基含有化合物上に付されており、それの前記ハイドロジェンシリル基含有化合物が、前記付加反応していることを特徴とする請求項3に記載のフッ素含有ゴム被覆積層体。
【請求項5】
前記混合物が前記フッ素含有ゴムに含まれており、それの前記ハイドロジェンシリル基含有化合物が、前記付加反応していることを特徴とする請求項3に記載のフッ素含有ゴム被覆積層体。
【請求項6】
前記ハイドロジェンシリル基含有化合物が、両末端にハイドロジェンシリル基とその間にパーフルオロアルキレン基とを有しており、両末端にビニル基とその間にパーフルオロアルキレン基とを有するフッ素含有化合物と混合されつつ、前記フッ素含有ゴムに含まれていることを特徴とする請求項1に記載のフッ素含有ゴム被覆積層体。
【請求項7】
前記活性シリル基が、
モノヒドロシリル含有シリル基及びジヒドロシリル含有シリル基から選ばれる前記ヒドロシリル含有シリル基;
ビニルシリル含有シリル基である前記ビニル含有シリル基;
トリアルコキシシリル末端含有シリル基及びジアルコキシシリル末端含有シリル基から選ばれる前記アルコキシシリル含有シリル基;
アシルオキシシリル基、アルケニルオキシシリル基、アルカンイミノオキシシリル基、アルキルオキシシリル基、アルキルアミノシリル基、ジアルキルアミノシリル基、含窒素複素環置換シリル基、及びアリールアミノシリル基から選ばれる加水分解性官能基を有している前記加水分解性基含有シリル基
であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素含有ゴム被覆積層体。
【請求項8】
金属、高分子樹脂、ガラス又はセラミックスで形成されその表面に水酸基を有している基材に、ハイドロジェンシリル含有シリル基、ビニル含有シリル基、アルコキシシリル含有シリル基、及び加水分解性基含有シリル基から選ばれる少なくとも1種類の活性シリル基を有する活性シリル基含有化合物を付してシリルエーテル結合化反応させ中間体基材にした後、その前記活性シリル基にハイドロジェンシリル基含有化合物を架橋反応させ、そのハイドロジェンシリル基を介して、フッ素含有ゴムの成分中の不飽和基に、付加反応させることにより、前記フッ素含有ゴムで接着されて被覆されることを特徴とするフッ素含有ゴム被覆積層体製造方法。
【請求項9】
前記水酸基が、前記基材の表面分子の水酸基若しくはその分子の酸化により形成された水酸基であり、または前記基材の表面へのコロナ放電、大気圧プラズマ処理及び紫外線照射の何れかにより生成した水酸基であることを特徴とする請求項8に記載のフッ素含有ゴム被覆積層体製造方法。
【請求項10】
前記ハイドロジェンシリル基含有化合物を前記中間体基材に付してから常温下又は加熱下で前記架橋反応させた後、そこに前記フッ素含有ゴムを付してから常温下又は加熱下で硬化させて前記接着することを特徴とする請求項8に記載のフッ素含有ゴム被覆積層体製造方法。
【請求項11】
両末端にハイドロジェンシリル基を有している前記ハイドロジェンシリル基含有化合物と、両末端にビニル基を含有するポリジアルキルシロキサン化合物とを混合し、前記中間体基材に付してから常温下又は加熱下で硬化させて前記架橋反応させた後、そこに前記フッ素含有ゴムを付してから常温下又は加熱下で前記接着することを特徴とする請求項8に記載のフッ素含有ゴム被覆積層体製造方法。
【請求項12】
両末端にハイドロジェンシリル基を有している前記ハイドロジェンシリル基含有化合物と、両末端にビニル基を含有するポリジアルキルシロキサン化合物とを混合した前記フッ素含有ゴムを調製した後、それを前記中間体基材に付して常温下又は加熱下で硬化させることにより、前記活性シリル基へのハイドロジェンシリル基含有化合物の架橋反応と、フッ素含有ゴムの成分中の不飽和基へのハイドロジェンシリル基含有化合物の付加反応とを行って、前記接着することを特徴とする請求項8に記載のフッ素含有ゴム被覆積層体製造方法。
【請求項13】
両末端にハイドロジェンシリル基とその間にパーフルオロアルキレン基とを有する前記ハイドロジェンシリル基含有化合物と、両末端にビニル基とその間にパーフルオロアルキレン基とを有するフッ素含有化合物とを混合した前記フッ素含有ゴムを調製した後、それを前記中間体基材に付して常温下又は加熱下で硬化させることにより、前記活性シリル基へのハイドロジェンシリル基含有化合物の架橋反応と、フッ素含有ゴムの成分中の不飽和基へのハイドロジェンシリル基含有化合物の付加反応とを行って、前記接着することを特徴とする請求項8に記載のフッ素含有ゴム被覆積層体製造方法。
【請求項14】
前記架橋反応、及び/又は前記付加反応が、白金含有触媒及び/又はロジウム含有触媒存在下で行われることを特徴とする請求項8に記載のフッ素含有ゴム被覆積層体製造方法。

【公開番号】特開2009−215366(P2009−215366A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58066(P2008−58066)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(597096161)株式会社朝日ラバー (74)
【Fターム(参考)】