説明

フッ素樹脂コーティング除去方法

【課題】発泡弾性体ローラ成形型キャビティ内表面を摩耗することなく、該成形型キャビティ内表面のフッ素樹脂コート層を除去する方法を提供する。
【解決手段】円柱形キャビティ内表面にフッ素樹脂コーティングが施された発泡弾性体ローラ成形型6のフッ素樹脂コーティング除去方法であって、合成樹脂製の研磨材3を使用したブラスト処理工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真形式の画像形成装置に用いる弾性ローラの成形型を再生する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乾式電子写真装置等の画像形成装置には、一般にトナー供給ローラ、現像ローラ、クリーニングローラおよび給紙ローラなどの、芯金の外周に発泡弾性体層を形成したローラが用いられている。これらのいわゆる発泡弾性体ローラは、予め芯金が配置された円柱状のキャビティを有する成形金型に発泡体形成材料を注型して発泡硬化させる一体発泡成形法により製造されるのが一般的である。この方法においては、脱型後、切削処理や研削処理などを必要としないために、生産性に優れている。しかしながら、この方法では、回転軸の外周に設けられた発泡弾性体層の表面に、一般にスキン層といわれる薄い膜が形成される。その結果、該発泡体ローラを例えばトナー供給ローラなどとして用いる場合には、トナー供給性能が阻害されるため、該スキン層を研磨などにより、除去する必要があった。したがって、上記一体発泡成形法において、スキン層が形成されない方法の開発が望まれていた。これに対して、成形金型円柱状キャビティ内表面にフッ素樹脂コート層を設けた場合にはスキン層の形成がされにくいため、成形金型円柱状キャビティ内表面にフッ素樹脂コート層を設けることが、広く行われている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、このフッ素樹脂コート層の表面はミクロ的に見ると無数の穴が開いているため、発泡成形により発泡弾性体ローラを製造する際にこの穴に発泡弾性体形成材料が入りこみ、成形と脱型を繰り返すことによりこれが蓄積する。その結果、脱型性を悪化させ、形成された発泡弾性体層の表面が脱型時に剥離する等の不都合が生じる。
【0004】
特許文献2には、キャビティ表面にフッ素樹脂コート層を設けた成形金型を用いて発泡弾性体ローラを発泡成形した際に、フッ素樹脂コート層表面に生じる汚れを低いコストでしかも効率よく除去する成形金型の洗浄方法が提案されている。具体的には、成形金型を加熱処理したのち、キャビティ表面をブラッシングする方法が提案されている。
【0005】
しかし、ブラシ等の物理的な接触により円筒成形金型内表面に設けられたフッ素樹脂コート層表面の微小な穴に、発泡弾性体ローラを発泡成形した際に発生する汚れが蓄積したものを完全に除去できない場合があった。
【0006】
またフッ素樹脂は強度、硬さが低いため、特許文献2のようにブラッシングしたり、成形金型キャビティ内に予め芯金を配置する際に芯金が接触して、フッ素樹脂コート層が成形金型キャビティ表面から剥離してしまう場合があった。こういった場合、剥離してしまった部分に発泡弾性体形成材料が付着してしまい、充分な離型性が得られず、発泡弾性体層表面が破断してしまう場合があった。
【0007】
そのため、成形金型キャビティ表面に汚れが付着してしまったり、フッ素樹脂コート層が剥離してしまった成形金型は、電子写真部品として要求される発泡弾性体層表面の均一性等の品質を満足することが不可能となる。この時が成形金型キャビティ表面のフッ素樹脂コート層の寿命となる。
【0008】
例え成形金型の母材自体の寿命が長くても、キャビティ表面にフッ素樹脂コート層を再度、コーティングすることができなければ、新規に成形金型を用意し、そのキャビティ表面にフッ素樹脂コーティングを施さなくてはならない。従って、金型コストは増加することになってしまう。これを解決するために、フッ素樹脂コート層のみを成形金型キャビティ表面から除去し、成形金型キャビティ表面をフッ素樹脂コート層を形成する前の初期状態に戻した後、再度フッ素樹脂コーティングを施せるようにすることが必要である。
【0009】
しかしながら、フッ素樹脂は耐薬品性に優れているため、化学物質を用いて、成形金型キャビティ表面から除去することは困難である。そこで、フッ素樹脂コーティングを除去する方法として自動車ボディ塗装剥離等に用いられるブラスト処理が挙げられる。しかし、通常自動車ボディ塗装剥離に用いられるようなブラスト処理では、成形金型キャビティ表面が摩耗しやすく、成形金型キャビティ表面が摩耗してしまった場合、成形金型キャビティ内径が大きくなるので、ローラ外径が大きくなってしまうことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特登録3881719号公報
【特許文献2】特登録3938506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような従来技術の事情を鑑みなされたものである。その課題とするところは、キャビティ内表面にフッ素樹脂コート層を施した発泡弾性体ローラ成形型のフッ素樹脂コーティング除去方法において、キャビティ内表面を磨耗することなく、フッ素樹脂コート層を除去することを可能とする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するための、本発明は、以下の通りである。
【0013】
本発明にかかるフッ素樹脂コーティング除去方法は、円柱形キャビティ内表面にフッ素樹脂コーティングが施された発泡弾性体ローラ成形型のフッ素樹脂コーティング除去方法であって、
合成樹脂製の研磨材を使用して、前記フッ素樹脂コーティングが施されたキャビティ内表面をブラスト処理する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、発泡弾性体ローラを成形する成形型キャビティ表面を摩耗することなく、該成形型キャビティ内表面のフッ素樹脂コート層を除去する発泡弾性体ローラ成形型キャビティ内のフッ素樹脂コーティング除去方法を提供ができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る発泡弾性体ローラの模式図である。
【図2】ブラスト処理を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
以下に本発明の発泡弾性体ローラ成形型キャビティ内表面のフッ素樹脂コーティング除去方法について詳しく説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0018】
本発明は、円柱形キャビティ内表面にフッ素樹脂コーティングが施された発泡弾性体ローラ成形型のフッ素樹脂コーティング除去方法において、合成樹脂製の研磨材を使用したブラスト処理により、フッ素樹脂コーティングを除去することを特徴とする。
【0019】
一般的に水の接触角が大きいと、物質表面の接着エネルギーが小さくなり、非粘着性に優れる。つまりは高撥水性の物質で円柱形キャビティ内表面をコーティングすることで、容易に優れた離型性を得ることができる。その高撥水性の物質の中でもフッ素樹脂は耐熱性、耐薬品性、安定性に優れるため好ましい。
【0020】
フッ素樹脂コート層を形成するフッ素樹脂としては、公知の何れの物も好ましく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン‐ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パフルオロ(プロピルビニルエーテル)3元共重合体(EPE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン−テトラフルオロエチレン交互共重合体(ETFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン交互共重合体(ECTFE)、ポリ弗化ビニル(PVF)等を挙げることが出来る。耐熱性、離型性等の点からポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)がより好ましい。
【0021】
(フッ素樹脂コート層の形成方法)
フッ素樹脂コート層の形成方法としては、特に限定されず、フッ素樹脂組成物の粉体を静電粉体塗装によりフッ素樹脂コート層を設ける方法、フッ素樹脂が分散した溶液をスプレー塗布やディッピング等によりフッ素樹脂コート層を設ける方法等が挙げられる。この中でも均一なフッ素樹脂コート層が得られやすく、環境面にも優しいことから水分散系のフッ素樹脂液を用いることが好ましい。また、フッ素樹脂コート層の接着強度を高めるために、成形金型キャビティ表面をショットブラスト等により粗くしたり、フッ素樹脂コート層と成形金型キャビティ面の間に接着層を設けることは、好適に用いられる。
【0022】
(ブラスト処理)
ブラスト処理方法としては、特に限定するものはなく、研磨材の投射方法により、機械式、空気式、湿式など方法が挙げられる。
【0023】
この中でも、投射条件を細かく設定することができ、投射エネルギーを大きくすることができ、また、噴射ノズルをマニピュレーター等の先端につけることにより円柱状の内面の処理の自動化も行え、装置の小型化が図りやすい空気式ブラスト処理が好ましい。
【0024】
(研磨材)
ブラスト処理に用いる研磨材は一般的に金属系研磨材、セラミック系研磨材、ガラス系研磨材、植物系研磨材、合成樹脂系研磨材が知られている。しかしながら、金属系研磨材、セラミック系研磨材、ガラス系研磨材は、高硬度であるために、発泡弾性体ローラ成形金型キャビティ表面を摩耗してしまい、発泡弾性体ローラ成形金型キャビティ内径が大きくなる。そのため、ローラ外径大きくなってしまうため、好ましくない。また植物性研磨材は、低硬度であるために、発泡弾性体ローラ成形金型キャビティ表面を摩耗することなく、発泡弾性体ローラ成形金型キャビティ表面のフッ素樹脂コート層を除去することが可能である。しかしながら、使用時に破砕されやすいので、研磨材としてのライフが短いため、コスト面において不利であるため、好ましくない。
【0025】
合成樹脂系研磨材は、適度に低硬度であるために、発泡弾性体ローラ成形金型キャビティ表面を摩耗することなく、発泡弾性体ローラ成形金型キャビティ表面のフッ素樹脂コート層を除去することが可能である。更に、破砕されにくいので、コスト面においても優れているため、好ましい。合成樹脂の種類としては、ナイロン樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリエステル樹脂などがあり、さらに合成樹脂系研磨材の中においても、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂は特に硬く研削力があるため、より好ましい。合成樹脂系研磨剤の硬度としては、モース硬度で3以上4未満が好ましい。
【0026】
ブラスト処理に用いる研磨材の平均粒径は50μm以上600μm以下が好ましい。研磨材の平均粒径が50μm未満であると、研磨材を投射することが困難になる場合がある。また研磨材の平均粒径が50μm未満のものは、市販グレードが希少であり、高価なものであるため、好ましくいない。研磨材の平均粒径が600μmより大きくなった場合、発泡弾性体ローラ成形金型キャビティ表面の微細な凹凸に対応することが困難であり、成形金型キャビティ表面のフッ素樹脂コート層を除去しきれないことがあるため、好ましくない。研磨材の投射条件や発泡弾性体ローラ成形金型キャビティ表面の微細な凹凸への対応を考慮すると、研磨材の平均粒径は70μm以上400μm以下がより好ましい。
【0027】
(成形型)
本発明における成形型は、コーティング層以外の型部材として、特に限定されず、鉄、銅、アルミニウム、ステンレス鋼などの金属部材のほか、鉄などの鋼材にニッケルやクロムなどのメッキを施した金属部材を用いることができる。さらにポリカーボネート、ポリアミドなどの合成樹脂やセラミックなどを適宜使用することができる。また、型内での芯金固定方法は特に限定されず、磁石やネジ、バネなどで固定することができる。
【0028】
(発泡弾性体材料について)
本発明における発泡弾性体ローラの発泡弾性体層の発泡弾性体材料としては、ポリウレタンフォームおよび、発泡ゴムのいずれも用いることができる。
【0029】
まずポリウレタンフォームを発泡弾性体材料とした場合、少なくともポリオールとポリイソシアネートとを含むウレタン原料から形成される。
【0030】
該ポリオールとしては特に制限は無く、従来公知の各種ポリオールの中から適宜選択して使用することが出来る。例えば、そのような液状のポリウレタン原料を構成するポリオール成分としては、一般に軟質ポリウレタンフォームの製造に用いられている公知のポリオール類の中から適宜選択して使用することが出来、一種又は二種以上を組み合わせて用いても良い。公知のポリオール類としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール等が挙げられる。
【0031】
なお、上記ポリオールのうち、ポリエーテルポリオールを用いると、耐湿熱耐久性に優れた軟質高弾性ポリウレタン製造に好適である。更に、エチレンオキシドを5モル%以上含有するポリエーテルポリオールを使用すると、成形性が良く好ましい。また、あらかじめポリイソシアネートと重合させたプレポリマーを用いても差し支えない。
【0032】
また、該ポリイソシアネートとしては特に制限は無く、従来公知の各種ポリイソシアネートの中から、適宜選択して使用することが出来る。例えば、以下の成分を単独で、又は二種以上を組合わせて用いても良い。2、4−および2、6−トリレンジイソシアネート(TDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、4、4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、およびカーボジイミド変成MDI、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ポリメリックポリイソシアネート等。なお、該ポリイソシアネートを公知の活性水素化合物の1種または2種以上と反応させることにより得られるイソシアネート基末端プレポリマーも、ポリイソシアネートとして使用することもできる。
【0033】
ポリウレタン原料のNCOインデックスは60以上、120以下であることが好ましく、70以上、100以下であることがより好ましい。なお、NCOインデックスとは、ポリイソシアネート中のイソシアネート基の総数をイソシアネート基と反応する活性水素の総数で除したものに100を乗じた値とする。即ち、イソシアネート基と反応する活性水素数とポリイソシアネート中のイソシアネート基が化学量論的に等しい場合にそのNCOインデックスは100となる。
【0034】
また、その他のポリウレタンフォーム用原料としては、必要に応じて適宜使用して差し支えないが、以下の例が挙げられる。
【0035】
触媒としては特に制限は無く、従来公知の各種触媒の中から適宜選択して使用することが出来る。トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、ビス(ジメチルアミノ)エチルエーテル等、従来公知の触媒が使用できる。
【0036】
整泡剤としては特に制限は無く、従来公知の各種整泡剤の中から適宜選択して使用することが出来る。例えばシリコーン系界面活性剤としては、東レ・ダウコーニング社製のSRX−274C(商品名)、日本ユニカ社製のL−5309、L−520(商品名)等が使用できる。
【0037】
また、これらポリオール成分とポリイソシアネート成分とが配合されてなるポリウレタン原料には更に、従来と同様に架橋剤、発泡剤(水、低沸点物、ガス体等)、破泡剤等を添加することができる。これらの成分が目標とする発泡成形後のポリウレタンスポンジ層の構造、即ち、連続気泡型若しくは独立気泡型の何れか一方を生ぜしめ易い公知の配合となるように添加されて、反応性の発泡原料とされる。
【0038】
また、そのような原料には必要に応じて所望の導電性を付与するための導電性付与剤や帯電防止剤等も、従来と同様に公知のものが添加せしめられる。導電付与剤は公知の物を使用することができ、例えば導電付与剤としては以下のものが挙げられる。第4級アンモニウム塩、リチウム塩、ホスホニウム塩や各種イオン性液体の如きイオン導電剤、カーボンブラック、グラフアイト、酸化チタン、酸化錫などの導電性の金属酸化物、Cu、Agなどの金属、これら導電性材料を粒子表面に被覆して導電化した粒子など。
【0039】
これらの導電付与剤は単独、あるいは複数種を組み合せて用いることができる。その他添加剤として、難燃剤、減粘剤、顔料、安定剤、着色剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、酸化防止剤等を必要に応じて配合することが出来る。架橋剤としてはトリエタノールアミン、ジエタノールアミン等の従来公知のものが挙げられる。
【0040】
次に、発泡ゴムを発泡弾性体材料とした場合、少なくともゴム材料、化学発泡剤および加硫剤に加えて、さらに、所望により加硫促進剤、オイル、可塑剤、亜鉛華、ステアリン酸、炭酸カルシム、マグネシアなどのゴム用添加剤を添加して形成される。
【0041】
ゴム材料としては、例えば、以下に挙げられるものを単独で用いてもよいし、または二種以上を組み合わせて用いてもよい。エチレンプロピレンジエン(EPDM)ゴム、ニトリルゴム(NBR)、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、ブチルゴム、アクリルゴムなど。
【0042】
また、化学発泡剤としては、特に制限はなく、公知の無機発泡剤および有機発泡剤のうちから適宜選択して用いることができる。ここで、無機発泡剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、水素化ホウ酸ナトリウムなどが挙げられる。また、有機発泡剤としては、例えば、次のものが挙げられる。アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、バリウムアゾジカルボキシレート、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、p−トルエンスルホニルヒドラジドなど。これらの化学発泡剤は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも特に、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)およびアゾジカルボンアミドが、緻密で均一な発泡セルが得られることから好適である。
【0043】
また、導電付与剤は、公知の物を使用することができ、例えば導電付与剤としては以下のものを挙げることができる。第4級アンモニウム塩、リチウム塩、ホスホニウム塩や各種イオン性液体の如きイオン導電剤、カーボンブラック、グラフアイト、酸化チタン、酸化錫などの導電性の金属酸化物、Cu、Agなどの金属、これら導電性材料を粒子表面に被覆して導電化した粒子など。また、その配合量は、所望の固有抵抗値をもつ発泡弾性体層が得られるように、導電付与剤の種類に応じて適宜選定することができる。
【0044】
加硫剤としては、ゴム材料の種類に応じて、公知の加硫剤、例えば、硫黄や過酸化物などの中から適宜選択することができる。
【0045】
(発泡弾性体ローラ)
また、本発明における成形型を用いて成形された発泡弾性体層を有する画像形成装置用ローラはトナー供給ローラ、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、クリーニングローラなどの弾性を有するローラ等の形態で用いられる。好ましくはトナー供給ローラとして使用するのが最適である。
【0046】
トナー供給ローラは、表面セルが開口したポリウレタンフォームからなる発泡弾性体ローラが用いられているのが一般的である。また、電子写真プロセスにおいて、現像ローラ表面に付着せるトナーをトナー供給ローラにて掻き取り、除去せしめる一方、現像ローラ上に、新たに、均一にトナーを供給することで、目的とするトナー像を形成する。本発明の成形型で得られるポリウレタンフォームローラは、安定したセル開口性を得ることを目的としているためトナー供給ローラに適している。
【実施例】
【0047】
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明を更に具体的に説明する。本発明は、実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもない。
【0048】
発泡弾性体ローラ成形金型キャビティ内表面の表面粗さ(Rz)の測定はJISB0601に準拠し、(株)小坂研究所製surfcorder SE−3400を用い、送り速度0.1mm/s、カットオフ0.8mm、測定長2.5mmの条件で測定した。測定は発泡弾性体ローラ成形金型キャビティ内表面を、1)フッ素樹脂コート層を形成する前と2)ブラスト処理をし、フッ素樹脂コート層を除去した後の発泡弾性体ローラ成形金型キャビティ内表面の同じ位置を表面粗さ計により測定した。発泡弾性体ローラ成形金型1本につき長手方向に3箇所を行いそれぞれの測定値の平均値を算出し、3つの値の単純平均を発泡弾性体ローラ成形金型キャビティ内表面の表面粗さ(Rz)とした。
【0049】
発泡弾性体ローラ成形金型キャビティ内表面のフッ素樹脂コーティング除去後のフッ素樹脂コート層の有無は、成形金型キャビティ内表面のフッ素樹脂コート層をブラスト処理した。その後、発泡弾性体ローラ成形金型を長手方向に切断し、キャビティ内表面が観察できるようにし、そのキャビティ内表面をビデオマイクロにて確認し、キャビティ内表面に残っているフッ素樹脂コート層の有無を確認した。ビデオマイクロにはデジタルマイクロスコープVH−8000(キーエンス社製)を使用した。このときキャビティ内表面にフッ素樹脂コート層が無いことが好ましく、フッ素樹脂コート層がないものを○、フッ素樹脂コート層があるものを×、僅かにフッ素樹脂コート層が残ってしまっているものを△とした。
【0050】
実施例1〜5及び比較例1〜3の発泡弾性体ローラ成形金型キャビティ内表面のフッ素樹脂コーティングは、以下のように行った。まず、フッ素樹脂コート層の接着強度を高めるために、成形金型キャビティ内径15mmの成形金型キャビティ内表面をショットブラストにより表面粗さ(Rz)が3μmになるように粗した。次に、旭硝子株式会社製 Fluon PTFE AD911L(PTFE)をスプレーを用い、発泡弾性体ローラ成形金型キャビティ内表面に噴霧し、電気炉で90℃、30分乾燥した。さらに電気炉で250℃、30分再度乾燥した後、380℃、45分焼成することで、キャビティ内表面にPTFE樹脂コート層を有する発泡弾性体ローラ成形金型を得た。
【0051】
実施例6の発泡弾性体ローラ成形金型キャビティ内表面のフッ素樹脂コーティングは、以下のように行った。まず、フッ素樹脂コート層の接着強度を高めるために、成形金型キャビティ内径15mmの成形金型キャビティ内表面をショットブラストにより表面粗さ(Rz)が3μmになるように粗した。次に、ダイキン工業株式会社製 ネオフロン AD−2CRE(PFA)をスプレーを用い、発泡弾性体ローラ成形金型キャビティ内表面に噴霧し、電気炉で90℃、30分乾燥した。さらに電気炉で250℃、30分再度乾燥した後、380℃、45分焼成することで、キャビティ内表面にPFA樹脂コート層を有する発泡弾性体ローラ成形金型を得た。
【0052】
実施例7の発泡弾性体ローラ成形金型キャビティ内表面のフッ素樹脂コーティングは、以下のように行った。まず、フッ素樹脂コート層の接着強度を高めるために、成形金型キャビティ内径15mmの成形金型キャビティ内表面をショットブラストにより表面粗さ(Rz)が3μmになるように粗した。次に、三井・デュポンフロロケミカル株式会社製 FEP120−J(FEP)をスプレーを用い、発泡弾性体ローラ成形金型キャビティ内表面に噴霧し、電気炉で90℃、30分乾燥し、さらに電気炉で250℃、30分再度乾燥した。その後、380℃、45分焼成することで、キャビティ内表面にFEP樹脂コート層を有する発泡弾性体ローラ成形金型を得た。
【0053】
次に実施例及び比較例のフッ素樹脂コーティング除去方法について説明する。
【0054】
実施例及び比較例の発泡弾性体ローラ成形金型キャビティ内表面への研磨材投射条件は以下の通りである。まず成形金型キャビティ内径15mmの円筒形成形金型を円筒形成形金型長手方向の中心軸を中心に30rpmで回転させる。内径8mm、外径10mm、長さ250mmの噴射ノズルを円筒形成形金型長手方向の中心軸と噴射ノズルの中心軸が同軸になるように、毎秒0.5mmで進入させた。研磨材は噴射圧力0.5Mpaで投射した。
【0055】
(実施例1)
研磨材は株式会社ユー・エス・テクノロジー,ファーイースト製のポリプラスPP60−80(材質:ユリア樹脂、平均粒径240μm)を用いた。図2に示す状態から、噴射ノズルを発泡弾性体ローラ成形金型内に差込みながら、キャビティ内表面に研磨材を投射させた。
【0056】
(実施例2)
研磨材は株式会社ユー・エス・テクノロジー,ファーイースト製のポリプラスPP30−40(材質:ユリア樹脂、平均粒径512μm)を用いた。図2に示す状態から、噴射ノズルを発泡弾性体ローラ成形金型内に差込みながら、キャビティ内表面に研磨材を投射させた。
【0057】
(実施例3)
研磨材は株式会社ユー・エス・テクノロジー,ファーイースト製のポリプラスPP100−200(材質:ユリア樹脂、平均粒径113μm)を用いた。図2に示す状態から、噴射ノズルを発泡弾性体ローラ成形金型内に差込みながら、キャビティ内表面に研磨材を投射させた。
【0058】
(実施例4)
研磨材は株式会社ユー・エス・テクノロジー,ファーイースト製のポリエクストラPP60−80(材質:不飽和ポリエステル樹脂、平均粒径240μm)を用いた。図2に示す状態から、噴射ノズルを発泡弾性体ローラ成形金型内に差込みながら、キャビティ内表面に研磨材を投射させた。
【0059】
(実施例5)
研磨材は株式会社グランツ製のサンブラストH H60−80(材質:メラミン樹脂、平均粒径234μm)を用いた。図2に示す状態から、噴射ノズルを発泡弾性体ローラ成形金型内に差込みながら、キャビティ内表面に研磨材を投射させた。
【0060】
(実施例6)
研磨材は株式会社ユー・エス・テクノロジー,ファーイースト製のポリプラスPP60−80(材質:ユリア樹脂、平均粒径240μm)を用いた。図2に示す状態から、噴射ノズルを発泡弾性体ローラ成形金型内に差込みながら、キャビティ内表面に研磨材を投射させた。
【0061】
(実施例7)
研磨材は株式会社ユー・エス・テクノロジー,ファーイースト製のポリプラスPP60−80(材質:ユリア樹脂、平均粒径240μm)を用いた。図2に示す状態から、噴射ノズルを発泡弾性体ローラ成形金型内に差込みながら、キャビティ内表面に研磨材を投射させた。
【0062】
(比較例1)
研磨材は三昌研磨材株式会社製のステンレスカットワイヤー SUS−4(材質:ステンレス、平均粒径400μm)を用いた。図2に示す状態から、噴射ノズルを発泡弾性体ローラ成形金型内に差込みながら、キャビティ内表面に研磨材を投射させた。
【0063】
(比較例2)
研磨材は三昌研磨材株式会社製のガラスビーズ J−46(材質:ガラス、平均粒径362μm)を用いた。図2に示す状態から、噴射ノズルを発泡弾性体ローラ成形金型内に差込みながら、キャビティ内表面に研磨材を投射させた。
【0064】
(比較例3)
研磨材は三昌研磨材株式会社製のアランダム(A)AF46(材質:溶融アルミナ、平均粒径362μm)を用いた。図2に示す状態から、噴射ノズルを発泡弾性体ローラ成形金型内に差込みながら、キャビティ内表面に研磨材を投射させた。
【0065】
実施例1〜5の結果を表1に示す。
【0066】
比較例1〜3の結果を表2に示す。
・発泡弾性体ローラ成形金型キャビティ内表面のフッ素樹脂コーティング除去後のフッ素樹脂コート層の有無
実施例1及び実施例3〜7に関しては、フッ素樹脂コーティング除去後の発泡弾性体ローラ成形金型キャビティ内表面にフッ素樹脂コート層の残りは確認できなかった。実施例2においては、フッ素樹脂コート層が僅かではあるが残っていた。フッ素樹脂コート層が僅かに残っている部分に、再度フッ素樹脂コート層を形成してみたが、フッ素樹脂コート層の浮き上がりやクラック等の異常は確認できなかったため、使用に問題のあるレベルでない。
【0067】
比較例1〜3に関しては、フッ素樹脂コーティング除去後の発泡弾性体ローラ成形金型キャビティ内表面にフッ素樹脂コート層の残りは確認できなかった。しかし、発泡弾性体成形金型キャビティ表面が荒れおり、発泡弾性体ローラ成形金型キャビティ内表面にフッ素樹脂コート層を形成する初期の表面状態とは異なる表面状態になっており、発泡弾性体ローラ成形金型キャビティ表面が摩耗していた。
・発泡弾性体成形金型キャビティ内表面のフッ素樹脂コート層をブラスト処理した後の表面粗さ
実施例1〜7に関しては、ブラスト処理前後での表面粗さはほぼ変わりなく、発泡弾性体ローラ成形金型キャビティ表面を摩耗していない。実施例2のみ、若干ブラスト処理後の表面粗さが小さくなっているが、これは、成形金型キャビティ内表面の微小な凹凸に除去しきれなかったフッ素樹脂コート層がわずかに残ったためである。
【0068】
比較例1〜3に関しては、ブラスト処理後の表面粗さが大きくなっており、研磨材により発泡弾性体ローラ成形金型キャビティ表面を摩耗して、フッ素樹脂コート層を除去することは可能である。しかし、発泡弾性体ローラ成形金型キャビティ表面の初期状態に戻すことはできない。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【符号の説明】
【0071】
1: 芯金
2: 発泡弾性体層
3: 研磨材
4: 加圧タンク
5: 噴射ノズル
6: 発泡弾性体ローラ成形金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱形キャビティ内表面にフッ素樹脂コーティングが施された発泡弾性体ローラ成形型キャビティ内表面のフッ素樹脂コーティング除去方法であって、
合成樹脂製の研磨材を使用して、前記フッ素樹脂コーティングが施されたキャビティ内表面をブラスト処理する工程を有することを特徴とする、フッ素樹脂コーティング除去方法。
【請求項2】
該フッ素樹脂コーティングに含有されるフッ素樹脂がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン‐ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)のいずれかを含有することを特徴とする請求項1に記載の発泡弾性体ローラ成形型キャビティ内表面のフッ素樹脂コーティング除去方法。
【請求項3】
該ブラスト処理に使用する研磨材がユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂のいずれかからなる研磨材であることを特徴とする請求項1及び2に記載の発泡弾性体ローラ成形型キャビティ内表面のフッ素樹脂コーティング除去方法。
【請求項4】
該ブラスト処理に使用する研磨材の平均粒径が50μm以上600μm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の発泡弾性体ローラ成形型キャビティ内表面のフッ素樹脂コーティング除去方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−240973(P2010−240973A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91980(P2009−91980)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】