説明

フッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルム及びそれを含む成形品

【課題】本発明は、車輌内外装部材用途にも使用しうる、透明性、表面硬度、耐薬品性、耐乳酸性、耐日焼け止め剤性などの耐汚染性に優れた、新規な多層フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、含フッ素アルキル(メタ)アクリレートポリマー成分を含むフッ素系(メタ)アクリル樹脂(B)を含むフッ素樹脂(C)を成形してなるフッ素樹脂フィルムであるフッ素樹脂フィルム層が、アクリル系樹脂(A)からなるフィルム層の少なくとも片面に積層してなる、フッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素樹脂フィルムを積層してなるフッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車輌用部材の成形において、環境問題から塗装・メッキ工程で排出される有害物質の規制が一層厳しくなる中、これらの代替品や部材の保護用として特にアクリル加飾フィルムや保護フィルムが注目されている。これら保護フィルムや加飾フィルムは、基材の表面に接着させて使用されるため、基材の表面に施した印刷や模様が鮮明に見える透明性、インサート、インモールド成形時の耐折曲げ割れ性が要求される。
【0003】
また、フィルム自体に印刷を施す為、耐薬品性はもちろんのこと、車輌内装部材においては、人の手に接触する機会も多い為、人の皮脂、汗に含まれる乳酸成分や、夏場や暑い地域において日焼け止め剤、例えばコパトーン(登録商標)を使用する際にこれが内装部材に付着することによる基材の劣化が問題となる場合が増加しており、これらに対する耐汚染性も要求される。
【0004】
これらの要求品質を満足する為に、耐候性や耐薬品性に優れているフッ素樹脂とメタクリル系樹脂組成物とが共押出成形された多層フィルムやフッ素樹脂により表面ハードコート処理を施したアクリル系樹脂フィルムが、市場において強い関心を持たれている。なかでも、フッ素樹脂として、溶融成形が可能であるフッ化ビニリデン系樹脂をアクリル系樹脂に積層したフィルムを塗装代替としてプラスチック成形品の表面に加飾する方法が注目されている。
【0005】
しかし、フッ化ビニリデン系樹脂は結晶性樹脂であり、結晶化速度が大きいため、透明性を満足させることは非常に困難である。そのため、フィルムの薄膜化(特許文献1参照)、フッ化ビニリデン樹脂のメタクリル樹脂との混合(特許文献2参照)、フィルム加工時の成形条件(押出成形温度、吐出速度、押出機内滞留時間)の制御(特許文献3参照)といった検討がなされているが、これらの方法では要求される透明性を満足させることは容易ではない。
【0006】
また、フッ化ビニリデン樹脂では、上記用途に所望されるほどの表面強度を実現するのも難しい。
【0007】
適切な温度に調整した金属ロールで挟み込みを行うことにより、透明性、表面平滑性に優れたフッ化ビニリデン樹脂フィルムを得る方法も検討されているが(特許文献4参照)、工程が増えることで、新たな設備、既存設備の改造が必要となる場合もあり、経済面で不利となる為、より簡便に製造が可能であるものが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭57−187248号公報
【特許文献2】特開平5−50566号公報
【特許文献3】特開平6−80794号公報
【特許文献4】国際公開第2006/016618号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、車輌内外装部材用途にも使用しうる、透明性、表面硬度、耐薬品性、人の皮脂・汗に含まれる乳酸成分や日焼け止め剤に対する耐汚染性のバランスに優れた、新規な単層および多層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記事情に鑑み、鋭意検討した結果、本発明者らは、含フッ素アルキル(メタ)アクリレート成分を含有するフッ素系(メタ)アクリル樹脂を使用することによって、透明性、表面硬度、耐薬品性、耐汚染性に優れる、新規なフッ素樹脂フィルムの作製に成功した。さらにポリフッ化ビニリデンを混合したフッ素系(メタ)アクリル樹脂を使用してなるフッ素樹脂フィルムが前記特性に加え、耐熱性のバランスにも優れることを見出した。
【0011】
さらに、本発明者らは上記フッ素系(メタ)アクリル樹脂を使用したフッ素樹脂積層フィルムの開発も検討した。上記フッ素系(メタ)アクリル樹脂を含有するフッ素樹脂の使用によって、共押出成形などの一般的な方法により、フッ素樹脂層とアクリル系樹脂層との積層フィルムを容易に製造することに成功した。得られたフッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルムは1μm以上の厚みのフッ素樹脂層を有しても、優れた透明性、表面硬度、耐薬品性、耐汚染性、耐熱性のバランスを奏することを見出した。また、アクリル系樹脂層を構成するアクリル系樹脂組成物を特定することにより、フッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルムが、車輌内外装用途として使用しうる為に必要な優れた耐折り曲げ割れ、耐折曲げ白化性をも奏することも見出し、本発明に至った。
【0012】
すなわち、本発明は含フッ素アルキル(メタ)アクリレートポリマー成分を含むフッ素系(メタ)アクリル樹脂(B)、を含むフッ素樹脂(C)を成形してなるフッ素樹脂フィルムに関する。
【0013】
本発明のフッ素樹脂フィルムは、含フッ素アルキル(メタ)アクリレートポリマー成分の含有量が、フッ素系(メタ)アクリル樹脂(B)100重量%において80重量%以上であることが好ましい。
【0014】
本発明のフッ素樹脂フィルムは、フッ素樹脂(C)がポリフッ化ビニリデンを含有してもよい。
【0015】
本発明のフッ素樹脂フィルムは、ポリフッ化ビニリデンの含有量が、フッ素系(メタ)アクリル樹脂(B)100重量部に対し、0.1〜10重量部であることが好ましい。
【0016】
本発明のフッ素樹脂フィルムは、フッ素系(メタ)アクリル樹脂(B)の溶融粘度が、JIS K7199に基づく、ダイス温度220℃、剪断速度122sec−1、キャピラリーダイ径1mmの条件下において300〜4000Pa・secであることが好ましい。
【0017】
本発明のフッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルムは、本発明のフッ素樹脂フィルム層が、アクリル系樹脂(A)からなるフィルム層の少なくとも片面に積層されてなる。
【0018】
本発明のフッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルムは、アクリル系樹脂(A)が、アクリル系弾性体グラフト共重合体(a−1)5〜100重量%およびメタクリル系重合体(a−2)0〜95重量%からなるアクリル系樹脂組成物[(a−1)および(a−2)の合計量が100重量%]であって、
アクリル系弾性体グラフト共重合体(a−1)が、アクリル酸アルキルエステル50〜99.9重量%、共重合可能な他のビニル系単量体0〜49.9重量%および共重合可能な1分子当たり2個以上の非共役二重結合を有する多官能性単量体0.1〜10重量%からなる単量体混合物(a−1a)を重合してなる少なくとも一層のアクリル酸エステル系架橋弾性体5〜85重量部の存在下に、
メタクリル酸アルキルエステル50〜100重量%および共重合可能な他のビニル系単量体0〜50重量%からなる単量体混合物(a−1b)を95〜15重量部共重合してなる[(a−1a)および(a−1b)の合計量が100重量部]ものであり、
メタクリル系重合体(a−2)が、メタクリル酸アルキルエステル80〜100重量%および共重合可能な他のビニル系単量体0〜20重量%からなる単量体混合物を共重合してなるものであることが好ましい。
【0019】
本発明のフッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルムは、前記アクリル酸エステル系架橋弾性体の平均粒子径d(nm)と、前記共重合可能な1分子当たり2個以上の非共役二重結合を有する多官能性単量体の量w(重量%)とが、関係式:0.02d≦w≦0.06dを満たすことが好ましい。
【0020】
本発明のフッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルムは、前記アクリル系樹脂(A)のメチルエチルケトン可溶分の還元粘度が0.2〜0.8dl/gであることが好ましい。
【0021】
本発明のフッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルムは、全体の厚みが30〜300μmであり、かつ、フッ素樹脂フィルム層の厚みが1〜30μmであることが好ましい。
【0022】
本発明の成形品は、本発明のフッ素樹脂フィルムまたはフッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルムを積層してなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のフッ素樹脂フィルムおよびフッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルムは、透明性、表面硬度、耐薬品性、耐汚染性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明におけるフッ素樹脂(C)は、含フッ素アルキル(メタ)アクリレートポリマー成分を含むフッ素系(メタ)アクリル樹脂(B)を含む。フッ素樹脂(C)を成形してなるフッ素樹脂フィルムは、透明性、表面硬度、耐薬品性、乳酸、日焼け止め剤などに対する耐汚染性を奏することが出来る。ここでの「(メタ)アクリル」とは、メタクリルおよび/またはアクリルを示すものとする。
【0025】
ここで言う「含フッ素アルキル(メタ)アクリレートポリマー成分」としては、含フッ素アルキル(メタ)アクリレート(共)重合体、つまり、含フッ素アルキル(メタ)アクリレートポリマーおよび/または含フッ素アルキル(メタ)アクリレート共重合体を使用できる。
【0026】
含フッ素アルキル(メタ)アクリレートポリマー成分の含有量は、耐薬品性の点で、フッ素系(メタ)アクリル樹脂(B)全重量を100重量%とした場合、80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましい。
【0027】
含フッ素アルキル(メタ)アクリレートポリマーとしては、公知のものを使用できるが、その具体例としては、ポリ(トリフルオロメチルメタクリレート)、ポリ(2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート)、ポリ(2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート)、ポリ(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピルメタクリレート)、ポリ(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピルメタクリレート)、ポリパーフルオロエチルメチルメタクリレート、ポリパーフルオロプロピルメチルアクリレート、ポリパーフルオロプロピルメチルメタクリレート、ポリパーフルオロブチルメチルアクリレート、ポリパーフルオロブチルメチルメタクリレート、ポリパーフルオロペンチルメチルアクリレート、ポリパーフルオロペンチルメチルメタクリレート、ポリパーフルオロヘキシルメチルアクリレート、ポリパーフルオロヘキシルメチルメタクリレート、ポリパーフルオロヘプチルメチルアクリレート、ポリパーフルオロヘプチルメチルメタクリレート、ポリパーフルオロオクチルメチルアクリレート、ポリパーフルオロオクチルメチルメタクリレート、ポリパーフルオロノニルメチルアクリレート、ポリパーフルオロノニルメチルメタクリレート、ポリパーフルオロデシルメチルアクリレート、ポリパーフルオロデシルメチルメタクリレート、ポリパーフルオロウンデシルメチルアクリレート、ポリパーフルオロウンデシルメチルメタクリレート、ポリパーフルオロドデシルメチルアクリレート、ポリパーフルオロドデシルメチルメタクリレート、ポリパーフルオロトリデシルメチルアクリレート、ポリパーフルオロトリデシルメチルメタクリレート、ポリパーフルオロテトラデシルメチルアクリレート、ポリパーフルオロテトラデシルメチルメタクリレート、ポリ(2−(トリフルオロメチル)エチルアクリレート)、ポリ(2−(トリフルオロメチル)エチルメタクリレート)、ポリ(2−(パーフルオロエチル)エチルアクリレート)、ポリ(2−(パーフルオロエチル)エチルメタクリレート)、ポリ(2−(パーフルオロプロピル)エチルアクリレート)、ポリ(2−(パーフルオロプロピル)エチルメタクリレート)、ポリ(2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート)、ポリ(2−(パーフルオロブチル)エチルメタクリレート)、ポリ(2−(パーフルオロペンチル)エチルアクリレート)、ポリ(2−(パーフルオロペンチル)エチルメタクリレート)、ポリ(2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート)、ポリ(2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート)、ポリ(2−(パーフルオロヘプチル)エチルアクリレート)、ポリ(2−(パーフルオロヘプチル)エチルメタクリレート)、ポリ(2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート)、ポリ(2−(パーフルオロオクチル)エチルメタクリレート)、ポリ(2−(パーフルオロノニル)エチルアクリレート)、ポリ(2−(パーフルオロノニル)エチルメタクリレート)、ポリ((パーフルオロトリデシル)エチルアクリレート)、ポリ(2−(パーフルオロトリデシル)エチルメタクリレート)、ポリ(2−(パーフルオロテトラデシル)エチルアクリレート)、ポリ(2−(パーフルオロテトラデシル)エチルメタクリレート)などが挙げられる。
【0028】
これらの中でも、フィルム状成形体とした時の透明性、アクリル系樹脂(A)層との密着性の点から、ポリ(トリフルオロメチルメタクリレート)、ポリ(2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート)、ポリ(2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート)、ポリ(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピルメタクリレート)、ポリ(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピルメタクリレート)、ポリ(2−(トリフルオロメチル)エチルアクリレート)、ポリ(2−(トリフルオロメチル)エチルメタクリレート)が好ましい。
【0029】
含フッ素アルキル(メタ)アクリレートポリマーの製造方法は、一般的に使用される方法であれば特に限定されず、公知の乳化重合法、乳化−懸濁重合法、懸濁重合法、塊状重合法または溶液重合法が適用可能である。含フッ素アルキル(メタ)アクリレートを含む重合性単量体、分散安定剤、油溶性のラジカル重合開始剤およびイオン交換水を重合容器に仕込んで、攪拌下懸濁重合を行うのが好ましい。
【0030】
分散安定剤としては、例えば、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール部分ケン化物等の水溶性高分子、リン酸三カルシウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、二酸化ケイ素等の無機物などが例示できる。これらの分散安定剤のうち、特にポリビニルアルコール部分ケン化物、ヒドロキシプロピルセルロース、リン酸三カルシウムが好ましく用いられる。これらの分散安定剤は、単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。分散安定剤の使用量は、例えば、重合性単量体100重量部に対して0.1〜60重量部、好ましくは0.2〜30重量部程度である。
【0031】
油溶性のラジカル重合開始剤は、予め重合性単量体に溶解させておくことが好ましい。油溶性のラジカル開始剤としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、o−メトキシベンゾイルパーオキサイド、o−クロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ系化合物等が例示される。これらのラジカル重合開始剤のうち、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等が好ましく用いられる。これらのラジカル重合開始剤は単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。ラジカル重合開始剤の使用量は、例えば、重合性単量体100重量部に対して0.1〜5重量部、好ましくは0.1〜2重量部程度である。
【0032】
更に必要により、重合性単量体の液滴の分散安定化のために、界面活性剤を添加してもよい。使用できる界面活性剤としては、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤やポリエチレングリコールノニルフェニルエーテルなどのノニオン界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。界面活性剤の使用量は、例えば、重合性単量体100重量部に対して0.05〜2重量部程度である。
【0033】
必要に応じて、水相重合の禁止剤を、例えば、亜硝酸ナトリウム等を添加しても良い。
【0034】
懸濁重合によりポリマー粒子を生成させる方法としては、反応開始に先立って、重合性単量体、分散安定剤、油溶性のラジカル重合開始剤およびイオン交換水の混合物を攪拌による剪断力により、モノマー油滴を所望の大きさに調整する方法が好ましい。
【0035】
この場合、30μm以下の微小なモノマー油滴を形成するためには、ホモミキサー、ホモディスパー、ホモジナイザー、ラインミキサー等の各種の分散手段を使用するのが好ましい。モノマー油滴の大きさは、分散手段の回転速度などによる剪断力の調整により、制御することが可能である。
【0036】
このようにして調製されたモノマー油滴(重合性モノマー分散液)を、通常ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度まで昇温し、重合反応を行うことにより、ポリマー粒子懸濁液が得られる。例えば、ラジカル開始剤としてラウロイルパーオキサイドを用いる場合には55℃以上に、2,2'−アゾビスイソブチロニトリルを用いる場合は65℃以上に昇温して、ラジカル重合を行う。
【0037】
重合により得られた含フッ素アルキル(メタ)アクリレートポリマーは、重合反応液から通常の操作により、粉体(微粒子)として取り出して使用される。すなわち、塩析や凍結により凝集させた後、遠心分離による方法、噴霧乾燥などによる方法をとることができる。
【0038】
含フッ素アルキル(メタ)アクリレートポリマー成分として、含フッ素アルキル(メタ)アクリレートを他の共重合可能なモノマー種と共重合してなる含フッ素アルキル(メタ)アクリレート共重合体を使用してもよい。共重合可能なモノマー種としては、例えば、上記含フッ素アルキル(メタ)アクリレートポリマーのモノマー種、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル等のメタクリル酸エステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル等のアクリル酸エステル、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル誘導体、塩化ビニリデン、弗化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カルシウム等のアクリル酸およびその塩、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸グリシジル、アクリルアミド、N−メチロ−ルアクリルアミド等のアクリル酸アルキルエステル誘導体、メタクリル酸、メアクリル酸ナトリウム、メタアクリル酸カルシウム等のメタクリル酸およびその塩、メタクリルアミド、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジル等のメタクリル酸アルキルエステル誘導体等があげられる。これらの単量体は2種以上が併用されてもよい。
【0039】
これらのうちでも、耐候性、耐熱性、透明性の点より、アクリル酸エステルが好ましく、アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。なかでも、アルキル基の炭素数が1〜12であるものが好ましく、直鎖状でも分岐状でもよい。
【0040】
含フッ素アルキル(メタ)アクリレート共重合体は、透明性、耐熱性、成形性、積層対象物との接着性の観点から含フッ素アルキル(メタ)アクリレート80〜99.9重量%および前記他の共重合可能なモノマー種0.1〜20重量%からなる組成物から形成されてもよい。より好ましくは、含フッ素アルキル(メタ)アクリレート90〜99.9重量%および他の共重合可能なモノマー種0.1〜10重量%である。他の共重合可能なモノマー種、好ましくはアクリル酸エステルが0.1重量%以上含有されることにより、透明性、耐熱性および接着性を向上することができる。含フッ素アルキル(メタ)アクリレートが80重量%未満では、耐薬品性、耐汚染性が低下する傾向がある。
【0041】
含フッ素アルキル(メタ)アクリレート共重合体は、上述した含フッ素アルキル(メタ)アクリレートポリマーの製造方法と同様の方法で製造しても良い。
【0042】
得られる含フッ素アルキル(メタ)アクリレート(共)重合体の微粒子(以下、「フッ素系ポリマー微粒子」と称することがある)は、平均粒子径が0.5〜200μmであるのが好ましく、1〜100μmがより好ましい。
【0043】
なお、本発明におけるフッ素系ポリマー微粒子の平均粒子径は、日機装株式会社製 Microtrac粒度分布測定装置MT3000を使用し、ラテックス状態で光散乱法を用いて測定した値である。
【0044】
フッ素系ポリマー微粒子の形状は、特に限定されないが、球形、回転楕円体などであることが好ましい。
【0045】
含フッ素アルキル(メタ)アクリレート(共)重合体は一種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
フッ素系(メタ)アクリル樹脂(B)は、公知のフッ素系(メタ)アクリル樹脂を含有させてもよい。
【0047】
フッ素系(メタ)アクリル樹脂(B)の溶融粘度は、300〜4000Pa・secであることが好ましく、300〜3000Pa・secがより好ましく、300〜2000Pa・secであることがさらに好ましい。フッ素系(メタ)アクリル樹脂(B)の溶融粘度が300Pa・sec未満では、幅方向に均一に展開しにくい傾向がある。4000Pa・sec超では、流れ方向に均一に展開し難く、また薄膜化が困難になりアクリル系樹脂(A)層との界面にムラが発生、密着不良やダイライン等の外観不良が生じやすい傾向にある。
【0048】
この溶融粘度(Pa・sec)は、JIS K7199に従い、溶融粘度測定装置(東洋精機製作所製、キャピログラフ1D)を使用して、ダイス温度220℃、せん断速度122S−1、キャピラリーダイ径1mmの条件にて測定した値である。
【0049】
フッ素樹脂(C)には、耐候性(特に紫外線防御性能)、コスト、成形性および積層対象物との接着性の点から、後述のアクリル系樹脂(A)を添加しても良い。
【0050】
フッ素樹脂(C)には、意匠性付与のために公知の光拡散剤を添加しても良い。含フッ素アルキル(メタ)アクリレートポリマーの架橋重合体粒子や後述するアクリル系樹脂、特にアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの架橋重合体粒子が分散性の点で良い。
【0051】
フッ素樹脂(C)は、耐熱性の観点から、ポリフッ化ビニリデンを含有してもよい。ポリフッ化ビニリデンとしては公知の物が使用できる。その含有量は透明性の点で、フッ素系(メタ)アクリル樹脂(B)100重量部に対し、ポリフッ化ビニリデンを0.1〜10重量部が好ましく、0.5〜10重量部がより好ましい。
【0052】
フッ素樹脂には、着色の為に無機系顔料または有機系染料を、熱や光に対する安定性を更に向上させるために抗酸化剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤などを、意匠性を付与する為にアクリル系艶消し剤やマイカ、ガラス等のフィラーを、あるいは、抗菌、脱臭剤、滑剤等を添加してもよい。これらは単独または2種以上組み合わせて添加してもよい。
【0053】
フッ素樹脂フィルムは、一般的な方法により製造することが可能であり、押出機の先端に取り付けたTダイ等からフィルム状に溶融押出して製造する方法が挙げられる。使用する押出機としては、単軸押出機、2軸押出機のどちらを用いても良い。ただし、2軸押出機を使用する場合には、吐出量制御の為に、定量フィーダーを使用して原料樹脂を供給することが好ましく、樹脂圧力制御、製膜精度の点から、押出機とダイスとの間にギアポンプを介して樹脂を押し出すことが好ましい。
【0054】
本発明のフッ素樹脂フィルムの厚みは、成形性、透明性の観点から、30〜300μmであることが好ましく、30〜200μmであることがより好ましい。
【0055】
本発明のフッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルムは、アクリル系樹脂(A)フィルム層の少なくとも片面に、含フッ素アルキル(メタ)アクリレートポリマー成分を含むフッ素系(メタ)アクリル樹脂(B)を含むフッ素樹脂(C)フィルム層が積層されてなる。本発明のフッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルムは、アクリル系樹脂(A)の優れた特性を生かしつつ、透明性、表面硬度、耐薬品性、および耐汚染性に優れたバランスを奏することが出来る。
【0056】
アクリル系樹脂(A)としては、公知のアクリル系樹脂を使用出来る。耐折り曲げ割れ性、耐折り曲げ白化性に優れる点から、アクリル系弾性体グラフト共重合体(a−1)、または、表面硬度に優れる点からアクリル系弾性体グラフト共重合体(a−1)およびメタクリル系重合体(a−2)からなる樹脂組成物が好ましい。
【0057】
アクリル系樹脂(A)には、それぞれ重合して得られたアクリル系弾性体グラフト共重合体(a−1)とメタクリル系重合体(a−2)をラテックス状あるいはパウダー、ビーズ、ペレット等の形態で混合して得たものを使用出来る。
【0058】
アクリル系樹脂(A)には、同一の反応機でアクリル系グラフト共重合体(a−1)を製造した後、メタクリル系重合体(a−2)を続けて製造したものも使用出来る。
【0059】
アクリル系弾性体グラフト共重合体(a−1)としては、アクリル酸エステル系架橋弾性体[アクリル酸エステルを主成分とした架橋弾性体]の存在下に、メタクリル酸エステル50〜100重量%および共重合可能な他のビニル系単量体0〜50重量%からなる単量体混合物(a−1b)を共重合して得られるものが好ましい。
【0060】
アクリル酸エステル系架橋弾性体には、アクリル酸エステル、必要に応じて共重合可能な他のビニル系単量体、および、共重合可能な1分子あたり2個以上の非共役二重結合を有する多官能性単量体からなる単量体混合物(a−1a)を重合させてなるものを好ましく使用できる。単量体および多官能性単量体を全部混合(1段重合)して使用してもよく、また、単量体および多官能性単量体の組成を変化させて2回以上(2段重合以上)に分けて使用してもよい。
【0061】
アクリル酸エステル系架橋弾性体におけるアクリル酸エステルとしては、重合性やコストの点より、アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキル基の炭素数1〜12のものを用いることができる。その具体例としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル等があげられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
アクリル酸エステル系架橋弾性体におけるアクリル酸エステル量は、50〜99.9重量%が好ましく、70〜99.9重量%がより好ましく、80〜99.9重量%が最も好ましい。アクリル酸エステル量が50重量%未満では、耐衝撃性が低下し、引張破断時の伸びが低下し、フィルム切断時にクラックが発生しやすくなる傾向がある。
【0063】
アクリル酸エステル系架橋弾性体における共重合可能な他のビニル系単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル等のメタクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数が1〜12であるものが好ましく、直鎖状でも分岐状でもよい)、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル誘導体、塩化ビニリデン、弗化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カルシウム等のアクリル酸およびその塩、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸グリシジル、アクリルアミド、N−メチロ−ルアクリルアミド等のアクリル酸アルキルエステル誘導体、メタクリル酸、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カルシウム等のメタクリル酸およびその塩、メタクリルアミド、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジル等のメタクリル酸アルキルエステル誘導体等があげられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上が併用されてもよい。これらのうちでも、耐候性、透明性の点より、メタクリル酸エステルが特に好ましい。
【0064】
アクリル酸エステル系架橋弾性体における共重合可能な他のビニル系単量体の量は、0〜49.9重量%が好ましく、0〜30重量%がより好ましく、0〜20重量%が最も好ましい。他のビニル系単量体の量が49.9重量%を超えると、耐衝撃性が低下し、引張破断時の伸びが低下し、フィルム切断時にクラックが発生しやすくなる場合がある。
【0065】
アクリル酸エステル系架橋弾性体における共重合可能な1分子あたり2個以上の非共役二重結合を有する多官能性単量体としては、通常使用されるものでよく、例えば、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジビニルアジペート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチルロールプロパントリメタクリレート、テトロメチロールメタンテトラメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレートおよびこれらのアクリレート類などを使用することができる。これらの多官能性単量体は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0066】
アクリル酸エステル系架橋弾性体における共重合可能な1分子あたり2個以上の非共役二重結合を有する多官能性単量体の量は、アクリル酸エステル系架橋弾性体の平均粒子径と共に、応力白化、引張破断時の伸びあるいは透明性に大きく影響する。
【0067】
本発明のアクリル酸エステル系架橋弾性体における多官能性単量体の配合量は、単量体混合物(a−1a)100重量%において0.1〜10重量%が好ましく、1.0〜4重量%がより好ましい。多官能性単量体の配合量が0.1〜10重量%であれば、耐折り曲げ割れ性、耐折り曲げ白化性および成形時における樹脂の流動性の観点から好ましい。
【0068】
アクリル系弾性体グラフト共重合体(a−1)は、アクリル酸エステル系架橋弾性体の存在下に、メタクリル酸エステル50〜100重量%および共重合可能な他のビニル系単量体0〜50重量%からなる単量体混合物(a−1b)を共重合させて得られるものが好ましい。より好ましくは、アクリル酸エステル系架橋弾性体5〜85重量部の存在下に、メタクリル酸アルキルエステル50〜100重量%および共重合可能な他のビニル系単量体0〜50重量%からなる単量体混合物(a−1b)95〜15重量部を少なくとも1段階以上で共重合させることにより得られるものである。ただし、単量体混合物(a−1a)および単量体混合物(a−1b)の合計量が100重量部を満たすものとする。
【0069】
単量体混合物(a−1b)中のメタクリル酸アルキルエステルの配合量は、硬度、剛性の点で、80重量%以上が好ましく、85重量%がより好ましく、90重量%がさらに好ましい。共重合可能な他のビニル系単量体としては、上記アクリル酸エステル系架橋弾性体に使用したものや、アルキル基の炭素数が1〜12であるアクリル酸アルキルエステルが使用可能である。具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル等があげられる。これらの単量体は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
この際、単量体混合物(a−1b)(グラフト共重合組成)においては、アクリル酸エステル系架橋弾性体にグラフト反応せずに、未グラフトの重合体となる成分(フリーポリマー)が生じる。この成分(フリーポリマー)は、メタクリル系重合体(a−2)の一部または全部を構成するものとして使用できる。
【0071】
アクリル系弾性体グラフト共重合体(a−1)の一部[(a−1a)およびグラフトされた(a−1b)]は、メチルエチルケトンに不溶となる。
【0072】
アクリル酸エステル系架橋弾性体に対するグラフト率は、30〜250%が好ましく、50〜230%がより好ましく、70〜220%がさらに好ましい。グラフト率が30%未満では耐折曲げ白化性が低下したり、また、透明性が低下したり、引張破断時の伸びが低下してフィルム切断時にクラックが発生しやすくなる傾向がある。250%超では、フィルム成形時の溶融粘度が高くなりフィルムの成形性が低下する傾向がある。
【0073】
アクリル系弾性体グラフト共重合体(a−1)の製造方法は、特に限定されず、公知の乳化重合法、乳化−懸濁重合法、懸濁重合法、塊状重合法または溶液重合法が適用可能であるが、乳化重合法が特に好ましい。
【0074】
アクリル系弾性体グラフト共重合体(a−1)の平均粒子径dは、100nm超400nm以下が好ましく、100nm超350nm以下がより好ましく、100nm超300nm以下がさらに好ましい。アクリル系弾性体グラフト共重合体(a−1)の平均粒子径が100nm以下では、フィルムの耐衝撃性および耐折曲げ割れ性が低下する傾向がある。400nmを超えるとフィルムの透明性が低下する傾向にある。
【0075】
ここでのアクリル系弾性体グラフト共重合体(a−1)の平均粒子径は、日機装株式会社製 Microtrac粒度分布測定装置MT3000を使用し、ラテックス状態で光散乱法を用いて測定した値である。
【0076】
アクリル系樹脂(A)中のアクリル酸エステル系架橋弾性体の平均粒子径d(nm)と、アクリル酸エステル系架橋弾性体に用いられる多官能性単量体の量w(重量%)とは、フィルムの応力白化、引張破断時の伸び、あるいは透明性に大きく影響する為、関係式:0.02d≦w≦0.06dを満たすものであることが好ましく、0.02d≦w≦0.05dを満たすものであることがより好ましい。多官能性単量体の量wが、上記範囲であれば応力白化が生じ難い、耐衝撃性が低下し難い、引張破断時の伸びが低下し難くフィルム切断時にクラックが生じ難い、透明性が低下し難い、フィルム成形性が良好といった利点を奏する。
【0077】
アクリル系樹脂(A)中のアクリル酸エステル系架橋弾性体の平均粒子径dは50〜200nmが好ましく、50〜160nmがより好ましく、50〜120nmがさらに好ましく、60〜120nmが特に好ましい。アクリル酸エステル系架橋弾性体の平均粒子径dが50nm以上であれば、耐衝撃性および引張破断時の伸びが低下しにくく、フィルム切断時にクラックが生じにくくなり、200nm以下であれば、応力白化が生じにくく、透明性、特に真空成形後の透明性(加熱前後の透明性保持)を確保することができるため、好ましい。
【0078】
アクリル酸エステル系架橋弾性体の平均粒子径dは、得られるフィルムから凍結超薄切片法により試料調整した後、透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製 JEM1200EX)を用いて、加速電圧80kVにて40000倍で観察した写真を基に測定した値である。
【0079】
アクリル系樹脂(A)のメチルエチルケトン可溶分の還元粘度は0.2〜0.8dl/gが好ましく、0.2〜0.7dl/gがより好ましく、0.2〜0.6dl/gがさらに好ましい。上記範囲であれば、得られるフィルムの引張破断時の伸びが低下し難くフィルムを切断する際にクラックが発生し難い。またフィルムの成形性が良好といった利点を有する。
【0080】
ここでのメチルエチルケトン可溶分の還元粘度は、アクリル系樹脂(A)をメチルエチルケトンに溶解させた後、ISO1628−1に基づき、標準粘度管を使用し、25℃の恒温室にて溶液、溶媒の流下時間を測定し、これらの値と溶液濃度を用いて算出した値である。
【0081】
アクリル系弾性体グラフト共重合体(a−1)は、一般式(1)で示される紫外線吸収剤を共重合してなるものが、紫外線遮蔽性能、紫外線遮蔽性能保持率、成形加工時にブリードし難い点から、さらに好ましい。
【0082】
【化1】



【0083】
(式中、XはHまたはハロゲン、RはH、メチルまたは炭素数4〜6のt−アルキル基、Rは直鎖または枝分かれ鎖状の炭素数2〜10のアルキレン基、RはHまたはメチルである。)
一般式(1)で示す紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾ-ル類であり、2−(2’−ヒドロキシ−5’−アクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾ-ル、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾ-ル、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾ-ル、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシプロピルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾ-ル、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチル−3’−t−ブチルフェニル)12H−ベンゾトリアゾ-ル等が挙げられる。これらのうちでは、コストおよび取り扱い性から、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾ-ルが好ましい。
【0084】
一般式(1)で示す紫外線吸収剤の共重合比率は、アクリル系弾性体グラフト共重合体(a−1)100重量部に対して、0.01〜30重量部が好ましく、0.01〜25重量部がより好ましく、0.01〜20重量部がさらに好ましく、0.05〜20重量部が特に好ましい。一般式(1)で示す紫外線吸収剤の共重合比率が0.01重量部未満では、得られるフィルムの耐候性を上げる効果が生じ難い傾向にあり、30重量部を超えると、フィルムの耐衝撃性および耐折曲げ割れ性を上げる効果が生じ難い傾向にある。
【0085】
一般式(1)で示す紫外線吸収剤の共重合は、アクリル系弾性体グラフト共重合体(a−1)のいずれの層において共重合されていても構わないが、アクリル酸エステル系架橋弾性体およびメタクリル酸エステル系共重合体(a−1b)に共重合されていることが好ましく、紫外線吸収剤はアクリル系弾性体グラフト共重合体(a−1)全体に均一に共重合されることがより好ましい。
【0086】
一般式(1)で示す紫外線吸収剤の共重合方法も特に限定されず、アクリル系弾性体グラフト共重合体(a−1)の製造中に共重合することが好ましい。
【0087】
アクリル酸エステル系架橋弾性体の重合における開始剤としては、公知の有機系過酸化物、無機系過酸化物、アゾ化合物などの開始剤を使用することができる。具体的には、t−ブチルハイドロパ−オキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパ−オキサイド、スクシン酸パ−オキサイド、パ−オキシマレイン酸t−ブチルエステル、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ホルムアルデヒドスルホキシ酸ソーダ、還元糖、アスコルビン酸等の有機系過酸化物や、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、2価の鉄塩等の無機系過酸化物、さらにアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物も使用される。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。これらの開始剤は、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルフォキシレート、アスコルビン酸、ヒドロキシアセトン酸、硫酸第一鉄、硫酸第一鉄とエチレンジアミン四酢酸2ナトリウムの錯体などの還元剤と組み合わせた通常のレドックス型開始剤として使用してもよい。
【0088】
これらの中でも、重合安定性、粒子径制御の点から、2価の鉄塩等の無機系還元剤および/またはホルムアルデヒドスルホキシル酸ソーダ、還元糖、アスコルビン酸等の有機系還元剤と組み合わせたレドックス系開始剤を使用するのが好ましい。
【0089】
有機系過酸化物は、重合系にそのまま添加する方法、単量体に混合して添加する方法、乳化剤水溶液に分散させて添加する方法など、公知の添加法で添加することができる。透明性の点から、単量体に混合して添加する方法あるいは乳化剤水溶液に分散させて添加する方法が好ましい。
【0090】
乳化重合に使用される界面活性剤にも特に限定はなく、通常の乳化重合用の界面活性剤であれば使用することができる。例えば、アルキルスルフォン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸ナトリウム等の陰イオン性界面活性剤や、アルキルフェノール類、脂肪族アルコール類とプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドとの反応生成物等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。更に要すれば、アルキルアミン塩等の陽イオン性界面活性剤を使用してもよい。
【0091】
得られたアクリル系弾性体グラフト共重合体(a−1)ラテックスは、通常の凝固、洗浄および乾燥の操作により、または、スプレ−乾燥、凍結乾燥などによる処理により、樹脂組成物が分離、回収される。
【0092】
メタクリル系重合体(a−2)は、メタクリル酸エステル系重合体、またはメタクリル酸エステルと共重合可能な他のビニル系単量体との共重合体を使用出来る。好ましくは、メタクリル酸エステルを80〜100重量%および共重合可能な他のビニル系単量体0〜20重量%からなる単量体混合物を共重合してなるものを使用出来る。
【0093】
得られるフィルムの硬度、剛性の観点から、メタクリル酸エステルの配合量は85重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましい。
【0094】
上記メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸アルキルエステルが好ましく、容易に入手できる点で、メタクリル酸メチルがより好ましい。
【0095】
メタクリル系重合体(a−2)における共重合可能な他のビニル系単量体としては、前記アクリル系弾性体グラフト共重合体(a−1)に使用したものがあげられる。これらの単量体は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0096】
メタクリル系重合体(a−2)を、アクリル系弾性体グラフト共重合体(a−1)と別個に重合することも可能である。その場合も重合方法は特に限定されず、公知の乳化重合法、乳化−懸濁重合法、懸濁重合法、塊状重合法または溶液重合法が適用可能である。
【0097】
メタクリル系重合体(a−2)の平均粒子径は、100〜500μmが好ましく、100〜300μmがより好ましい。メタクリル系重合体(a−2)の平均粒子径が100μm未満では、耐衝撃性、耐折曲げ割れ性、耐薬品性が低下する傾向があり、500μm超では、透明性が低下する傾向がある。
【0098】
メタクリル系重合体(a−2)の平均粒子径は、日機装株式会社製 Microtrac粒度分布測定装置MT3000を使用し、ラテックス状態で光散乱法を用いて測定した値である。
【0099】
メタクリル系重合体(a−2)の重合における開始剤としては、上述したアクリル酸エステル系架橋弾性体(a−1a)の重合における開始剤と同様の、公知の有機系過酸化物、無機系過酸化物、アゾ化合物などの開始剤を使用することができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0100】
有機系過酸化物は、重合系にそのまま添加する方法、単量体に混合して添加する方法、乳化剤水溶液に分散させて添加する方法など、公知の添加法で添加することができるが、透明性の点から、単量体に混合して添加する方法が好ましい。
【0101】
懸濁重合に使用される分散剤としては、一般的に懸濁重合に用いられる分散剤、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等の高分子分散剤、リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、ピロリン酸マグネシウム等の難水溶性無機塩があげられる。難水溶性無機塩を用いる場合には、α−オレフィンスルフォン酸ソーダ、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ等のアニオン性界面活性剤を併用すると、分散安定性が増すので効果的である。また、これらの分散剤は得られる樹脂粒子の粒子径を調整するために、重合中に1回以上追加することもある。
【0102】
アクリル系樹脂(A)中のアクリル系弾性体グラフト共重合体(a−1)の含有量は、5〜100重量%が好ましく、5〜45重量%がより好ましく、10〜30重量%がさらに好ましい。ただし、アクリル系弾性体グラフト共重合体(a−1)およびメタクリル系重合体(a−2)の合計量が100重量%であるものとする。アクリル系弾性体グラフト共重合体(a−1)の含有量が5重量%以上であれば、得られるフィルムの引張破断時の伸びが低下し難く、フィルムを切断する際にクラックが発生し難く、また応力白化が発生し難くなる傾向がある。5〜45重量%では、さらに得られるフィルムの硬度、剛性が良好となる傾向がある。
【0103】
本発明のフッ素樹脂(C)フィルム層およびアクリル系樹脂(A)フィルム層とからなるフッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルムの製造方法としては、一般的な方法により製造することが可能であり、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、ホットメルトラミネート法、加熱プレスラミネート法、Tダイ等でフィルム状に溶融押出しながらラミネートする押出ラミネート法、ダイ内またはマルチスロット法のようなダイ外で溶融接着する共押出法が挙げられる。フッ素樹脂(C)フィルム層とアクリル系樹脂(A)フィルム層との接着性確保、多層フィルム製造時のフィルムの熱履歴制御の容易さの点から、共押出法が最も好ましい。
【0104】
共押出法としてはTダイ内にて接着される方法が好ましく、この場合に使用される好ましい製造設備としては、Tダイは通常の単層マニホールドダイを使用し、その流入部に併合流層を形成する部分(フィードブロック)を設けるフィードブロック式積層設備、樹脂がTダイス内の各々の層毎にマニホールドを経て合流点に至りリップ部より吐出されるマルチマニホールド式積層設備、層形成のプロセスはマルチマニホールドダイに類似しており、ダイ全般に渡ってマニホールドを内臓したプレートを設け、ダイボディにはプレートを内臓する凹みが設けられており、その中に単位プレートを積層したプレートパックを挿入したスタックプレート式積層設備、等が挙げられる。
【0105】
共押出法に使用される押出機としては、単軸押出機、2軸押出機のどちらを用いても良い。ただし、2軸押出機を使用する場合には、吐出量制御の為に、定量フィーダーを使用して原料樹脂を供給することが好ましく、樹脂圧力制御、製膜精度の点から、押出機とダイスとの間にギアポンプを介して樹脂を押し出すことが好ましい。
【0106】
共押出法は、積層フィルムを成形する際に、押出機のシリンダーおよび押出機先端に設置されたダイス部の温度調節を、150〜270℃で行うことが好ましい。設定温度を150℃未満とすると、樹脂が未溶融となり、均一に混練され難いため、成形性が低下する傾向にあり、270℃より高いと、押出機内でのせん断発熱もあるため、樹脂温度が必要以上に上昇し、樹脂の分解が促進され、成形品の品質が低下する傾向にある。
【0107】
必要に応じて、フィルムを成形する際、フィルム両面をロールまたは金属ベルトに同時に接触させることにより、特にガラス転移温度以上の温度に加熱したロールまたは金属ベルトに同時に接触させることにより、表面性のより優れたフィルムを得ることも可能であり、目的に応じて、二軸延伸などによるフィルムの改質も可能である。
【0108】
本発明のフッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルムは、全体の厚みが、30〜300μmであることが好ましく、30〜200μmであることがより好ましい。フッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルム全体の厚みが30μm未満では、フィルムの成形加工性が低下すると共に、フィルム巻取り時にシワが入り易くなる傾向があり、300μmを超えると、フィルムの透明性が低下し、さらに2次加工性が低下する傾向にある。
【0109】
本発明のフッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルムにおけるフッ素樹脂(C)フィルム層の厚みは、1〜30μmであることが好ましく、5〜30μmであることがより好ましく、5〜20μmがさらに好ましい。フッ素樹脂(C)フィルム層の厚みが1μm未満では、十分な耐候性、耐薬品性、耐汚染性が得られず成形性も低下する傾向にあり、30μmを超えると、コスト的に不利になると同時にフィルムの透明性が低下、および成形性が低下してダイライン等の外観不良が生じやすくなる傾向にある。
【0110】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で、積層化のためにフッ素樹脂(C)フィルム層とアクリル系樹脂(A)フィルム層間に適した接着剤、あるいは接着性樹脂を用いた接着層を設けてもよい。
【0111】
接着剤、接着性樹脂としては公知のものが使用可能であり、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系樹脂、またはこれらの共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレンゴム、ポリイソブチレンゴム等のゴム類や、ポリビニルエーテル系、シリコーン系、マレイミド系、シアノアクリレート系樹脂、塩化ビニリデンやフッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン樹脂やこれらと含フッ素アルキル(メタ)アクリレートポリマー成分を含むフッ素系(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系樹脂との混合物などが挙げられる。耐候性、透明性の観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を主成分とする共重合体である(メタ)アクリル酸アルキルエステル系樹脂が好ましい。これらは単独で使用しても良く、架橋剤、粘着付与剤を配合して、粘着剤組成物として用いても良い。
【0112】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系樹脂は、アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルであって、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等が挙げられる。
【0113】
接着層を設ける方法は、上記フッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルムの成形方法と同様の方法を用いることが出来る。
【0114】
本発明のフッ素樹脂フィルム、およびフッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルムの用途としては、車輌用途、建材用途が好ましい用途として挙げられる。具体例としては、インストルメントパネル、コンソールボックス、メーターカバー、ドアロックペゼル、ステアリングホイール、パワーウィンドウスイッチベース、センタークラスター、ダッシュボード等の自動車内装用途、ウェザーストリップ、バンパー、バンパーガード、サイドマッドガード、ボディーパネル、スポイラー、フロンリル、ストラットマウント、ホイールキャップ、センターピラー、ドアミラー、センターオーナメント、サイドモール、ドアモール、ウインドモール等、窓、ヘッドランプカバー、テールランプカバー、風防部品等の自動車外装用途、AV機器や家具製品のフロントパネル、ボタン、エンブレム、表面化粧材等の用途、携帯電話等のハウジング、表示窓、ボタン等の用途、さらには家具用外装材用途、壁面、天井、床等の建築用内装材用途、サイディング等の外壁、塀、屋根、門扉、破風板等の建築用外装材用途、窓枠、扉、手すり敷居、鴨居等の家具類の表面化粧材用途、各種ディスプレイ、レンズ、ミラー、ゴーグル、窓ガラス等の光学部材用途、あるいは電車、航空機、船舶等の自動車以外の各種乗り物の内外装用途等に利用することが可能である。
【0115】
前記用途の中でも特に車輌内外装部材に積層する場合は、積層後の部材表面がフッ素樹脂フィルム層、部材との接着層がアクリル系樹脂(A)フィルム層であることが好ましく、積層方法としては特に制限されるものではないが、特公昭63−6339号、特公平4−9647号、特開平7−9484号、特開平8−323934号、特開平10−279766号等公報に記載の方法と同様な、フィルムインモールド成形法またはフィルムインサート成形法により製造することが好ましい。すなわち、真空成形等により予め形状を付与した、または、付与しなかったフィルムを、射出成形金型間に挿入し、フィルムを挟んだ状態で金型を閉じ型締めし、基材樹脂の射出成形を行うことにより、射出された基材樹脂成形体の表面にフィルムを溶融一体化させることが好ましい。その際、樹脂温度、射出圧力等の射出条件は、基材樹脂の種類等を勘案して適宜設定される。
【実施例】
【0116】
次に、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0117】
下記製造例、実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、それぞれ「重量部」及び「重量%」を表す。
【0118】
なお、以下の実施例および比較例で測定した物性の各測定方法は、次のとおりである。
【0119】
(アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子の粒径測定方法)
得られたフィルムを、透過型電子顕微鏡(日本電子製JEM−1200EX)にて、加速電圧80kV、RuO4染色超薄切片法で撮影し、得られた写真からアクリル酸エステル系架橋弾性体粒子画像を無作為に100個選択し、それらの粒子径の平均値を求めた。
【0120】
(フッ素系(メタ)アクリル樹脂(B)およびアクリル系弾性体グラフト共重合体の粒径測定方法)
日機装株式会社製 Microtrac粒度分布測定装置MT3000を使用し、ラテックス状態で光散乱法を用いて測定した。
【0121】
(透明性の評価)
得られたフィルムの透明性は、JIS K6714に準じて、温度23℃±2℃、湿度50%±5%の条件下にて、曇価(ヘイズ)を測定した。
【0122】
(耐薬品性の評価)
<耐キシレン性>
得られたフィルム上にキシレンを一滴(0.02g)垂らし、フィルムの変化を目視で評価した。
○:変化が全く認められない。
△:微小な滴下跡が認められる。
×:表面の劣化が酷く、滴下跡がはっきり認められる。
【0123】
(耐汚染性の評価)
<耐日焼け止め剤性[耐コパトーン(登録商標)性](試験法1)>
得られたフィルム上に日焼け止め剤(コパトーン ウォーター・ベイビーズ・ローションSPF50)を少量塗布し、その上にガーゼを押し当て、500gの加重をかける。そのまま室温で1時間放置した後、オーブンで54℃、64℃、74℃で1時間加熱した後、付着した日焼け止め剤をガーゼでふき取り、フィルムを水洗し、目視で塗布部の変化を観測した。
○:変化が認められない。
△:微小な塗布跡が認められる。
×:表面の劣化が酷く、塗布跡がはっきり認められる。
【0124】
<耐日焼け止め剤性[耐コパトーン(登録商標)性](試験法2)>
得られたフィルム上に日焼け止め剤(コパトーン ウォーター・ベイビーズ・ローションSPF50)を一滴(0.005g)滴下し、2×3cmの範囲に刷毛を用いて延ばし、70℃、80℃、90℃で24時間放置した後、付着した日焼け止め剤をガーゼでふき取り、フィルムを水洗、目視で塗布部の変化を観測した。
○:変化が認められない。
△:微小な塗布跡が認められる。
×:表面の劣化が酷く、塗布跡がはっきり認められる。
【0125】
<耐乳酸性の評価>
得られたフィルム上に10%乳酸水溶液を一滴垂らし、80℃の温度条件化で24時間放置後、フィルムを水洗し、フィルムの変化を目視で評価した。
○:変化が全く認められない。
△:微小なピンホール状の溶解跡が認められる。
×:表面の劣化が酷く、溶解跡がはっきり認められる。
【0126】
(耐折り曲げ割れ性の評価)
得られたフィルムを1回180度折り曲げて、折り曲げ部の変化を目視で評価した。
○:割れが認められない。
△:僅かに割れが発生する。
×:フィルムが割れ、完全に破断する。
【0127】
(耐折り曲げ白化性の評価)
得られたフィルムを1回180度折り曲げて、折り曲げ部の変化を目視で評価した。
○:白化が認められない。
△:光を透過した時に僅かに白化が認められる。
×:白化が認められる。
【0128】
(表面硬度の評価)
得られたフィルムの表面硬度は、JIS K5600−5−4に従い、鉛筆硬度を測定して評価した。
【0129】
(成形性の評価)
<フィルム連続成形性の評価:(評価法1)>
フィルム成形を2時間連続して行い、その運転状況を観察し、以下の基準により評価を行った。
○:フィルムの厚みが均一で、フィルムが破断せずに成形できる。
×:フィルムの厚みが不均一、またはフィルム破断が発生する。
【0130】
<積層フィルム成形性の評価:(評価法2)>
積層フィルム成形を行い、その外観性を観察し、以下の基準により評価を行った。
○:表面層樹脂の展開性が均一であり、メルトフラクチャーによる界面ムラがない。
×:表面層樹脂の展開性が不均一であり、メルトフラクチャーによる界面ムラが発生する。
【0131】
(耐熱性の評価)
<耐熱老化性の評価>
得られたフィルムを、80℃の恒温槽にて168時間放置し、フィルムの状態を目視で評価、および透明性についてJIS K6714に準じて、温度23℃±2℃、湿度50%±5%の条件下にて、曇価(ヘイズ)を測定した。
○:変化が全く認められない。
△:熱によるフィルムの変形が僅かに認められる。
×:フィルムが白化、または熱により表面荒れや変形が発生する。
【0132】
(製造例1)フッ素樹脂(C−1)
<含フッ素アルキル(メタ)アクリレートポリマー(b−1)>
分散容器に、脱イオン水300部、ポリビニルアルコール2部を入れた。これとは別に、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート95部、エチレングリコールジメタクリレート5部およびラウリルパーオキサイド1部からなる単量体溶液を調製し、上記の分散容器に加えた。得られた混合液に対してホモミキサーを用いて分散処理を行い、液滴径を100nmに調整した分散液を得た。
【0133】
この分散液を撹拌機、温度計、環流冷却器及び窒素導入口を備えた8L重合反応機に注入し、窒素気流下70℃で撹拌しながら、液温80〜90℃にて3時間の重合反応を行った。
【0134】
得られたポリマー粒子の分散液を濾過、洗浄、乾燥することにより、含フッ素アルキル(メタ)アクリレートポリマー(b−1)として、ポリ(2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート)の球状有機微粒子粉体(平均粒子径100μm)を得た。
【0135】
<フッ素樹脂(C−1)>
上記の方法にて得られた含フッ素アルキル(メタ)アクリレートポリマー(b−1)を使用し、シリンダ温度を200℃に温度調整した40mmφ単軸押出機(大阪精機工作(株)製)を使用し、スクリュー回転数75rpm、吐出量10kg/時間にて溶融混練を行い、ストランド状に引き取り、水槽にて冷却後、ペレタイザーを用いて切断して、フッ素樹脂の樹脂ペレット(C−1)を製造した。
【0136】
(製造例2)フッ素樹脂(C−2)
フッ素樹脂として、得られた含フッ素アルキル(メタ)アクリレートポリマー(b−1)を使用し、シリンダ温度200〜240℃、スクリュー回転数125rpm、吐出量15kg/時間に変更した以外は、製造例1と同様の操作にてフッ素樹脂の樹脂ペレット(C−2)を製造した。
【0137】
(製造例3)アクリル系樹脂(A−1)
<アクリル系弾性体グラフト共重合体(a1−1)>
攪拌機付き8L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。
脱イオン水 200部
ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム 0.25部
ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト 0.15部
エチレンジアミン四酢酸−2−ナトリウム 0.001部
硫酸第一鉄 0.00025部
重合機内を窒素ガスで充分に置換し実質的に酸素のない状態とした後、内温を60℃にし、下記単量体混合物(a1−1a)30重量部および2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2−H−ベンゾトリアゾール(大塚化学(株)製、RUVA−93)0.5部からなる混合物を10重量部/時間の割合で連続的に添加し、添加終了後、さらに0.5時間重合を継続し、アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(平均粒子径d=60nm)を得た。重合転化率は99.5%であった。
単量体混合物(a1−1a):
・ビニル系単量体混合物(アクリル酸ブチル(BA)90%およびメタクリル酸メチル(MMA)10%) 100部
・アリルメタクリレート(AlMA) 1部
・クメンハイドロパーオキサイド(CHP) 0.2部
その後、ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム0.05重量部を仕込んだ後、内温を60℃にし、ビニル系単量体混合物(BA10%およびMMA90%)100部、ターシャリードデシルメルカプタン(t−DM)0.5部およびCHP0.5部からなる単量体混合物(a1−1b)70部を10部/時間の割合で連続的に添加し、さらに1時間重合を継続し、アクリル系弾性体グラフト共重合体(a1−1)(平均粒子径=180μm)を得た。重合転化率は98.2%であった。得られたラテックスを塩化カルシウムで塩析、凝固し、水洗、乾燥して樹脂粉末(a1−1)を得た。
【0138】
<メタクリル系重合体(a1−2)>
メタクリル系重合体(a1−2)として、メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル共重合体(住友化学(株)製、スミペックスLG、ビーズ状物)を使用した。
【0139】
<アクリル系樹脂(A−1)>
上記の如く得られたアクリル系弾性体グラフト共重合体(a1−1)70部およびメタクリル系重合体(a1−2)30部をヘンシェルミキサーを用いて混合した後、シリンダ温度を200℃〜260℃に温度調整した40mmφ単軸押出機(大阪精機工作(株)製)を使用し、スクリュー回転数90rpm、吐出量15kg/時間にて溶融混練を行い、ストランド状に引き取り、水槽にて冷却後、ペレタイザーを用いて切断して、アクリル系樹脂の樹脂ペレット(A−1)を製造した。
【0140】
(製造例4)フッ素樹脂(C−3)
フッ素樹脂として、製造例1で得られた含フッ素アルキル(メタ)アクリレートポリマー(b−1)80部と製造例2で得られたアクリル系弾性体グラフト共重合体20部の混合物を使用した以外は、製造例2と同様の操作にて、フッ素樹脂の樹脂ペレット(C−3)を製造した。
【0141】
(製造例5)アクリル系樹脂(A−2)
<アクリル系弾性体グラフト共重合体(a2−1)>
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、モノマー供給管、還流冷却器を備えた8リットル重合機に以下の物質 を仕込んだ。
水(イオン交換水) 200部
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.15部
硫酸第一鉄・2水塩 0.0015部
エチレンジアミン四酢酸−2−ナトリウム 0.006部
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 0.0015部
重合器内を窒素ガスで十分に置換して実質的に酸素のない状態とした後、内温を60℃にし、ビニル系単量体混合物(BA84%、MMA8%およびスチレン(ST)8%)100部、AlMA1部およびCHP0.1部からなる単量体混合物(a2−1a)50部を15部/時間の割合で連続的に添加し、添加終了後、さらに1時間重合を継続し、アクリル酸エステル系架橋弾性体粒子(a2−1a)(平均粒子径d=210nm)を得た。重合転化率は98.5%であった。
【0142】
その後、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.05部を仕込んだ後、内温を60℃にし、ビニル系単量体混合物(MMA90%およびBA10%)100部、t−DM0.2部およびCHP0.1部からなる単量体混合物(a2−1b)50部を10部/時間の割合で連続的に添加し、さらに1時間重合を継続し、アクリル系弾性体グラフト共重合体(a2−1)(平均粒子径=200μm)を得た。重合転化率は99.0%であった。得られたラテックスを塩化カルシウムで塩析、凝固し、水洗、乾燥して樹脂粉末(a2−1)を得た。
【0143】
<メタクリル系重合体(a2−2)>
メタクリル系重合体(a2−2)として、メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル共重合体(住友化学(株)製、スミペックスEX、ビーズ状物)を使用した。
【0144】
<アクリル系樹脂(A−2)>
上記の如く得られたアクリル系弾性体グラフト共重合体(a2−1)25部およびメタクリル系重合体(a2−2)75部、紫外線吸収剤としてチヌビン234(チバジャパン製)1.0部をヘンシェルミキサーを用いて混合した後、シリンダ温度を240℃に温度調整した以外は、製造例2と同様にして、アクリル系樹脂の樹脂ペレット(A−2)を製造した。
【0145】
(比較製造例1)フッ素樹脂(C−4)
フッ素樹脂として、ポリフッ化ビニリデン(SOLVAY社製、SOLEF−1008)100部のみを用い、シリンダ温度を260℃に変更した以外は、製造例2と同様の方法にて、フッ素樹脂の樹脂ペレット(C−4)を製造した。
【0146】
(比較製造例2)フッ素樹脂(C−5)
フッ素樹脂として、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(旭硝子(株)製、フルオンETFE AH−2000)100部のみを用いた以外は、比較製造例2と同様の方法にて、フッ素樹脂の樹脂ペレット(C−5)を製造した。
【0147】
(製造例6)フッ素樹脂(C−6)
フッ素樹脂として、製造例1で得られた含フッ素アルキル(メタ)アクリレートポリマー(b−1)100部とポリフッ化ビニリデン10部の混合物を使用した以外は、製造例3と同様の操作にてフッ素樹脂の樹脂ペレット(C−6)を製造した。
【0148】
(製造例7)フッ素樹脂(C−7)
フッ素樹脂として、製造例1で得られた含フッ素アルキル(メタ)アクリレートポリマー(b−1)100部とポリフッ化ビニリデン0.1部の混合物を使用した以外は、製造例1と同様の操作にてフッ素樹脂の樹脂ペレット(C−7)を製造した。
【0149】
<フッ素樹脂単層フィルムの作製1>
(実施例1)
製造例1で得られたフッ素樹脂の樹脂ペレット(C−1)を、Tダイ付40mmφ単軸押出機を用いて、シリンダ設定温度160〜220℃にて吐出量10kg/hrにて溶融混練し、ダイス温度240℃にて、厚み125μmの単層樹脂フィルムを得た。
【0150】
得られたフィルムに関する評価結果を表1に示す。
【0151】
(実施例2)
製造例2で得られたフッ素樹脂の樹脂ペレット(C−2)を使用し、Tダイ付40mmφ単軸押出機のシリンダ設定温度180〜240℃に変更した以外は、実施例1と同様の操作にて、厚み125μmの単層樹脂フィルムを得た。
【0152】
得られたフィルムに関する評価結果を表1に示す。
【0153】
表1に示される通り、比較例1および2に比べ、本発明のフッ素樹脂単層フィルムは、耐薬品性、耐乳酸性、日焼け止め剤に対する耐汚染性、透明性、および表面硬度のバランスに優れることが判る。
【0154】
(比較例1)
製造例2で得られたアクリル系樹脂の樹脂ペレット(A−1)を用いた以外は、実施例1と同様の操作にてアクリル系樹脂単層フィルムを得た。
【0155】
得られたフィルムに関する評価結果を表1に示す。
【0156】
(比較例2)
比較製造例1で得られたフッ素樹脂の樹脂ペレット(C−4)を用いた以外は、実施例1と同様の操作にてフッ素樹脂単層フィルムを得た。
【0157】
得られたフィルムに関する評価結果を表1に示す。
【0158】
<フッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルムの作製1>
(実施例3)
製造例3で得られたアクリル系樹脂の樹脂ペレット(A−1)をベース樹脂とし、製造例2で得られたフッ素樹脂の樹脂ペレット(C−2)を表面層樹脂として、以下の共押出方法により、厚み125μm(ベース樹脂層110μmおよび表層樹脂層15μm)の積層フィルムを得た。
【0159】
共押出に用いるTダイとしては、2種2層Tダイ(フィードブロック方式)を使用した。アクリル系樹脂(A)側の押出機としては、40mmφ単軸押出機を用い、シリンダ設定温度200〜260℃にて吐出量5〜15kg/hrにて溶融混練し、他方、フッ素樹脂(C)側の押出機としては、32mmφ単軸押出機を用い、シリンダ設定温度180〜240℃にて吐出量0.5〜3kg/hrにて溶融混練し、ダイス温度240℃に設定された上記ダイ中に溶融樹脂を投入して、積層フィルムを得た。
【0160】
得られたフィルムに関する評価結果を、表1に示す。
【0161】
(実施例4)
表面層樹脂を、製造例4で得られたフッ素樹脂の樹脂ペレット(C−3)に変更した以外は、実施例3と同様の操作により、積層フィルムを得た。
【0162】
得られたフィルムに関する評価結果を、表1に示す。
【0163】
表1に示されるように、本発明のフッ素樹脂積層アクリル系フィルムは、透明性、耐薬品性、日焼け止め剤に対する耐汚染性、耐乳酸性および表面硬度に優れたバランスを有することがわかる。中でも、比較例3との比較から、本発明のフッ素樹脂積層アクリル系フィルムが、透明性および表面硬度に優れた効果があることは明らかである。さらに、本発明のフッ素樹脂積層アクリル系フィルムでは、比較例1に示される、アクリル系樹脂単層フィルムの、優れた耐折り曲げ割れ性および耐折り曲げ白化性が維持されることも判る。
【0164】
(実施例5)
ベース樹脂を、製造例5で得られたアクリル系樹脂の樹脂ペレット(A−2)に変更した以外は、実施例3と同様の操作により、積層フィルムを得た。
【0165】
得られたフィルムに関する評価結果を、表1に示す。
【0166】
表1に示されるように、本発明のフッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルムは、アクリル系樹脂(A)を変えたとしても、透明性、表面強度、耐薬品性、および耐汚染性に優れることが判る。
【0167】
(比較例3)
表面層樹脂を、比較製造例1で得られたフッ素樹脂の樹脂ペレット(C−4)に変更した以外は、実施例3と同様の操作により、積層フィルムを得た。
【0168】
得られたフィルムに関する評価結果を、表1に示す。
【0169】
(比較例4)
表面層樹脂を、比較製造例2で得られたフッ素樹脂の樹脂ペレット(C−5)に変更した以外は、実施例3と同様の操作により、積層フィルムを得た。
【0170】
得られたフィルムに関する評価結果を、表1に示す。
【0171】
【表1】




【0172】
表1に示される通り、比較例1のフッ素樹脂フィルムでは日焼け止め剤に対する耐汚染性や耐乳酸性が劣り、比較例2のフッ素樹脂フィルムでは透明性および表面硬度が劣る。一方、本発明のフッ素樹脂単層フィルムは、耐薬品性、耐乳酸性、日焼け止め剤に対する耐汚染性、表面硬度、および透明性に優れることは明らかである。
【0173】
また、比較例3や4のフッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルムは透明性および表面硬度に劣る。一方、本発明のフッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルムは、表面硬度および透明性に優れるとともに、耐薬品性、耐乳酸性、日焼け止め剤に対する耐汚染性にも優れることは明らかである。さらに、本発明のフッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルムは、アクリル系樹脂単層フィルムが有する優れた耐折り曲げ割れ性、耐折り曲げ白化性を損なわない。
【0174】
<フッ素樹脂単層フィルムの作製2>
(実施例6)
製造例6で得られたフッ素樹脂の樹脂ペレット(C−6)を用いた以外は、実施例2と同様の操作にてフッ素樹脂単層フィルムを得た。
【0175】
得られたフィルムに関する評価結果を表2に示す。
【0176】
表2に示されるように、本発明のフッ素系樹脂にポリフッ化ビニリデンが添加されると、高温条件下での耐日焼け止め剤性および耐熱老化性が向上し、耐熱性が上がっていることがわかる。さらに、ポリフッ化ビニリデンの添加にも関わらず、優れた透明性を維持できることもわかる。
【0177】
<フッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルムの作製2>
(実施例7)
表面層樹脂を、製造例6で得られたフッ素樹脂の樹脂ペレット(C−6)に変更した以外は、実施例3と同様の操作により、積層フィルムを得た。
【0178】
得られたフィルムに関する評価結果を、表1に示す。
【0179】
表2に示されるように、本発明のフッ素樹脂積層アクリル系フィルムでは、フッ素系樹脂にポリフッ化ビニリデンを添加しているにも関わらず、比較例1のアクリル系樹脂フィルムが有する透明性を維持できることがわかる。さらに、本発明のフッ素樹脂積層アクリル系フィルムは表面硬度、耐薬品性、耐汚染性、および耐熱性のバランスにも優れていることが判る。
【0180】
(実施例8)
表面層樹脂を製造例7で得られたフッ素樹脂ペレット(C−7)に変更し、共押出に用いるTダイを2種2層Tダイ(スタックプレート方式)にした以外は、実施例3と同様の操作により、積層フィルムを得た。
【0181】
得られたフィルムに関する評価結果を、表2に示す。
【0182】
ポリフッ化ビニリデンの含有量が0.1部であるにも関わらず、耐熱老化性が向上していることがわかる。
【0183】
(実施例9)
表面層樹脂として、製造例6で得られたフッ素樹脂の樹脂ペレット(C−6)を使用し、積層フィルムの厚みをベース樹脂層85μmおよび表層樹脂層40μmに変更した以外は、実施例3と同様の操作により、積層フィルムを得た。
【0184】
得られたフィルムに関する評価結果を、表2に示す。
【0185】
表面層(フッ素樹脂フィルム層)の厚みに因らず、透明性が維持されており、表面硬度、耐薬品性、耐汚染性、耐熱性のバランスに優れていることが判る。
【0186】
【表2】




【0187】
表2に示される結果から、本発明のフッ素樹脂がポリフッ化ビニリデンを含有する場合、曇価が0.5〜0.7%という優れた透明性、表面硬度Fを維持しながら、高温での耐日焼け止め剤性に優れ、また耐熱老化性で曇価の上昇率が低減されており、耐熱性のバランスにも優れていることが判る。よって、曇価1%以下という高い透明性、表面硬度が要求される車輌内外装部材にも本発明のフッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルムは適用出来る。
【0188】
以上のように、本発明にかかるフッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルムは、優れた透明性、耐折り曲げ割れ、耐折り曲げ白化性、表面硬度等の、アクリル系樹脂が有する優れた特性を維持しながら、優れた耐日焼け止め剤性、耐乳酸性の耐汚染性をも有する。また、本発明のフッ素樹脂(C)にポリフッ化ビニリデンを含有させると、高い透明性を有しながら、かつ、耐熱性を向上させることもできる。よって、本発明のフッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルムは、これら特性につき厳しい基準を満たすことが要求される車輌内外装部材への適用も可能である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂フィルム層が、アクリル系樹脂(A)からなるフィルム層の少なくとも片面に積層されてなる、フッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルムであって、
前記フッ素樹脂フィルム層が、含フッ素アルキル(メタ)アクリレートポリマー成分を含むフッ素系(メタ)アクリル樹脂(B)
を含むフッ素樹脂(C)を成形してなるものである、フッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルム。
【請求項2】
含フッ素アルキル(メタ)アクリレートポリマー成分の含有量が、フッ素系(メタ)アクリル樹脂(B)100重量%において80重量%以上である、請求項1に記載のフッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルム。
【請求項3】
フッ素樹脂(C)がポリフッ化ビニリデンを含有する、請求項1または2に記載のフッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルム。
【請求項4】
ポリフッ化ビニリデンの含有量が、フッ素系(メタ)アクリル樹脂(B)100重量部に対し、0.1〜10重量部である、請求項3に記載のフッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルム。
【請求項5】
フッ素系(メタ)アクリル樹脂(B)の溶融粘度が、JIS K7199に基づく、ダイス温度220℃、剪断速度122sec−1、キャピラリーダイ径1mmの条件下において300〜4000Pa・secである、請求項1〜4のいずれかに記載のフッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルム。
【請求項6】
アクリル系樹脂(A)が、
アクリル系弾性体グラフト共重合体(a−1)5〜100重量%およびメタクリル系重合体(a−2)0〜95重量%からなるアクリル系樹脂組成物[(a−1)および(a−2)の合計量が100重量%]であって、
アクリル系弾性体グラフト共重合体(a−1)が、アクリル酸アルキルエステル50〜99.9重量%、共重合可能な他のビニル系単量体0〜49.9重量%および共重合可能な1分子当たり2個以上の非共役二重結合を有する多官能性単量体0.1〜10重量%からなる単量体混合物(a−1a)を重合してなる少なくとも一層のアクリル酸エステル系架橋弾性体5〜85重量部の存在下に、
メタクリル酸アルキルエステル50〜100重量%および共重合可能な他のビニル系単量体0〜50重量%からなる単量体混合物(a−1b)を95〜15重量部共重合してなる[(a−1a)および(a−1b)の合計量が100重量部]ものであり、
メタクリル系重合体(a−2)が、メタクリル酸アルキルエステル80〜100重量%および共重合可能な他のビニル系単量体0〜20重量%からなる単量体混合物を共重合してなるものである、請求項1〜5のいずれかに記載のフッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルム。
【請求項7】
前記アクリル酸エステル系架橋弾性体の平均粒子径d(nm)と、前記共重合可能な1分子当たり2個以上の非共役二重結合を有する多官能性単量体の量w(重量%)とが、関係式:0.02d≦w≦0.06dを満たす、請求項6に記載のフッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルム。
【請求項8】
前記アクリル系樹脂(A)のメチルエチルケトン可溶分の還元粘度が0.2〜0.8dl/gである、請求項6または7に記載のフッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルム。
【請求項9】
全体の厚みが30〜300μmであり、かつ、フッ素樹脂フィルム層の厚みが1〜30μmである、請求項1〜8のいずれかに記載のフッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のフッ素樹脂積層アクリル系樹脂フィルムを積層してなる成形品。



【公開番号】特開2012−187934(P2012−187934A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−143897(P2012−143897)
【出願日】平成24年6月27日(2012.6.27)
【分割の表示】特願2010−516865(P2010−516865)の分割
【原出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】