説明

フッ素樹脂膜製品とその製造法

【課題】
フッ素樹脂の多孔質膜を1枚または複数枚の支持シートと貼り合わせても、エアフィルタなどとして用いた際に、多孔質膜について好適な高い通気性を保持させる。
【解決手段】
通気性の支持シートをニードルパンチしてその全面に多数の小突起を分散形成し、ついで支持シートの突起表面を毛焼き加工して主に小突起の個所を溶融・非晶化した後に、フッ素樹脂の多孔質膜を支持シートの上に重ね合わせ、加熱・加圧によって多孔質膜を支持シートと全面的に熱圧着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素樹脂の多孔質膜が支持シートと点接着されることにより、該多孔質膜がエアフィルタなどとして用いた際に好適な高い通気性を維持するフッ素樹脂膜製品およびその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂は、耐薬品性、耐熱性および非粘着性などが高いきわめて安定した素材であり、その多孔質膜は、特開平5−202217号や特開2003−93815号に開示するように、エアフィルタとして半導体工場などのクリーンルームで使用されている。PTFE多孔質膜は、強靱ではあっても非常に柔軟であるので、フィルタフレームに取り付ける際などに、補強のために通気性の不織布や織布をラミネートすることが必要である。
【0003】
補強のための不織布や織布に関して、特開平5−154355号では、PTFE多孔質膜のフィルタを円盤状の樹脂外枠部に融着する際に、該フィルタよりも孔径の大きい環状のPTFE多孔質膜を重ね合わせ、さらに両PTFE多孔質膜の間にFEPフィルムを介在させて積層し、圧力を加えて全体を熱圧着する。このフィルタは、高い濾過性能を有し、PTFE多孔質膜の利用分野を多少広げるにしても、使用材料が多いうえにその価格が高いのでフィルタのコストが上がり、しかもこのフィルタの使用可能分野は限定されているので汎用性を欠いている。
【0004】
一方、特開2000−61280号や特開2003−93815号は、PTFE多孔質膜に通気性の不織布をラミネートし、プリーツ加工によってひだ付けしてエアフィルタに適用する。このプリーツ加工の際にピンホールが発生する損傷が発生しないように、特開2000−61280号では、PTFE多孔質膜を不織布と積層して加熱した後に、該不織布をシリコンロールに押圧することでシート表面を平滑にして摩擦抵抗を小さくする。特開2003−93815号では、PTFE多孔質膜を2枚の不織布で挟み、さらにその両面にPPSフィルムを配置し、この積層体を加熱ロールに接触させて加熱した後に、2枚のPPSフィルムを剥離する。これらの表面加工法を適用すると、PTFE多孔質膜がプリーツ加工の際に損傷を受けることは少なくなっても、該多孔質膜の全面に不織布を密に熱圧着するため、PTFE多孔質膜の通気性がかなり低下することを回避できない。
【特許文献1】特開平5−154355号公報
【特許文献2】特開平5−202217号公報
【特許文献3】特開2000−61280号公報
【特許文献4】特開2003−93815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PTFE多孔質膜は、前記のようなフィルタ用途だけでなく、クッション性の高いフェルトや不織布をラミネートすると、従来はPTFE繊維の単なる樹脂コーティングや不織布を貼り付けていた各種の工業的用途で代替えすることが可能になる。例えば、液晶セル組立て用クッション材のほかに、プリント基板加工用クッション材、樹脂板成形用クッション材、テント材料、テント倉庫の屋根材、化学プラントにおける耐熱保温材のような保温シート材、樹脂含浸のパッキン、シール材、スペーサ、ガスケット、Oリングなどに適用可能である。これらの用途においても、PTFE多孔質膜の高い通気性が維持できれば、その適用範囲がいっそう拡がる可能性を秘めている。
【0006】
本発明は、従来のフッ素樹脂膜製品に関する前記の問題点を改善するために提案されたものであり、フッ素樹脂の多孔質膜と通気性の支持シートとを点接着することで通気性の低下が殆ど発生しないフッ素樹脂膜製品を提供することを目的としている。本発明の他の目的は、高い通気性を維持しながら、フッ素樹脂膜およびフェルトや不織布本来の特性を併せ持つフッ素樹脂膜製品を提供することである。本発明の別の目的は、高い通気性を有するフッ素樹脂膜製品を容易且つ迅速に製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るフッ素樹脂膜製品は、通気性の支持シートの片面または両面にフッ素樹脂の多孔質膜を貼り合わせている。このフッ素樹脂膜製品では、支持シートの全面において多数の小突起を密に分散形成することにより、加熱・加圧によって支持シートが主に小突起の個所においてフッ素樹脂の多孔質膜と全面的に点接着されている。
【0008】
本発明のフッ素樹脂膜製品では、フッ素樹脂の多孔質膜において点接着の数が1cm当たり20〜120個であり、且つ個々の点接着の面積が0.01〜0.3mmであることが望ましい。また、好ましくは、通気性の支持シートがポリエステルを主体とするスパンボンド不織布であり、多孔質膜がPTFE樹脂製である。
【0009】
本発明に係るフッ素樹脂膜製品の製造法は、通気性の支持シートをニードルパンチしてその全面に多数の小突起を分散形成する。ついで支持シートの突起表面を毛焼き加工して主に小突起の個所を溶融・非晶化し、その後にフッ素樹脂の多孔質膜を支持シートの毛焼き面の上に重ね合わせ、加熱・加圧によって多孔質膜を支持シートと全面的に熱圧着すればよい。
【0010】
本発明方法において、支持シートにおける各小突起の個所を加熱バーナを用いて溶融・非晶化し、その後に該支持シートの毛焼き面にフッ素樹脂の多孔質膜を重ね合わせ、さらに支持シートまたは多孔質膜の上に保護フィルムを積層し、ロール対に通して加熱・加圧して支持シートと多孔質膜を熱接着した後に保護フィルムを剥離すると好ましい。
【0011】
本発明を図面によって説明すると、図1から図3において、本発明に係るフッ素樹脂膜製品1の基本構造を例示している。フッ素樹脂の多孔質膜2は、小突起3を分散形成した通気性の支持シート5の毛焼き片面または両面に重ね合わせて熱圧着する。図1では各1枚の多孔質膜2と支持シート5を熱圧着し、図2では多孔質膜2,2を支持シート5の両面に熱圧着し、図3では多孔質膜2の両面に支持シート5,5を熱圧着する。
【0012】
本発明のフッ素樹脂膜製品において、多孔質膜2と支持シート5とは、より多層に積層してもよく、さらに支持シート5に基布および他のシート材を介在させることも可能である。また、支持シート5である不織布6(図5)やフェルトにフッ素樹脂のディスパージョンなどを含浸してから小突起3を分散形成し、その後に該支持シートの片面または両面に多孔質膜2を重ね合わせて熱圧着してもよい。
【0013】
これらのフッ素樹脂膜製品は、多孔質膜2と不織布やフェルト本来の特性を併せ持ち、多孔質膜2に由来する通気性、非粘着性、低摩擦抵抗性、撥水性に加えて、不織布6やフェルト本来の高剛性、クッション性、防振性などについても優れている。このフッ素樹脂膜製品は、高い非粘着性と耐熱性を有する。特に、ポリエステルスパンボンド不織布を用いた場合、多孔質膜2の優れた特性を維持したまま、薄くて高剛性の材料が得られるので、レーザプリンタのトナーカートリッジやインクジェットプリンタのインクカートリッジのエアベントとして好適に使用できる。
【0014】
多孔質膜2の素材であるフッ素樹脂は、耐熱性、耐薬品性、非粘着性が優れた厚さ10〜100μmのPTFEであると好ましい。PTFE樹脂は、そのファインパウダーをペースト押出して延伸・熱処理すると、柔軟で強靱な多孔質膜となる。多孔質膜2として主に機械的特性や電気的特性も利用する分野では、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)なども使用可能である。用途がフィルタである場合には、PTFE多孔質膜は、十分な捕集性能を有しているので孔径、気孔率、厚さなどを特に限定する必要はなく、半導体クリーンルームなどのエアフィルタでは、捕集性能を示すPF値が20より大きいことが望ましい。
【0015】
一方、通気性の支持シート5は、多数の小突起3が分散形成可能な不織布6、フェルト、その他の多孔シート材料であり、多孔質膜2との熱圧着する時に溶融しない程度の耐熱性を有することを要する。支持シート5は、フッ素樹脂の多孔質膜2より通気性が優れていれば、材質、構造、形態などを特に限定する必要はなく、機械的強度、柔軟性、作業性などの観点から不織布6またはフェルトが好ましい。支持シート5を製造プロセスから分類すると、ニードルパンチ、スパンボンド、スパンレース、メルトブロ−ン、ステッチボンド、湿式フェルトなどがある。
【0016】
支持シート5において、不織布6やフェルトを構成する有機繊維は、比較的柔軟な耐熱性繊維であり、毛焼き加工によって突起先端部が溶融・非晶化し、且つ多孔質膜2と熱圧着する際に溶融しないように融点が250℃以上であると好ましい。好適な有機繊維である融点約250℃以上の繊維として、ポリエステル繊維(融点255〜260℃)、PTFE繊維(融点327℃)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維(融点287℃)、ポリエーテルエーテルケトン繊維、66ナイロン繊維(融点250〜260℃)、ヘテロ環繊維などが例示でき、これらの繊維および他の高耐熱性繊維や無融点繊維を複合繊維や混合繊維の態様で使用してもよい。支持シート5の厚さは0.05〜5mm、その密度は0.04〜0.4g/cmであると好適である。厚さが0.05mmより薄いと十分な剛性が得られず、5mmより厚いと通気性が低下するので好ましくない。同様に、密度が0.04g/cmより低いと十分な剛性が得られず、0.4g/cmより高いと通気性が低下するので好ましくない。
【0017】
支持シート5がフェルトであれば、フッ素樹脂膜製品1の寸法安定性を高めるために織物基布を介在させ、用途に応じて織物基布に耐熱性の有機繊維を用いてもよい。この織物基布は、通常、平織布や綾織布などであると好ましい。この織物基布を構成する繊維は、ポリエステル繊維、メタフェニレンイソフタルアミド繊維、パラフェニレンテレフタルアミド繊維などの高張力繊維であると好ましい。この織物基布は、2等分のカードラップの中間に介在させても、カードラップの上方ないし下方に配置させてもよい。
【0018】
本発明のフッ素樹脂膜製品を製造するには、まず、ニードルパンチングによって支持シート5である不織布6やフェルトの全面において、多数の突出繊維部8つまり小突起3を分散形成する。このニードルパンチングでは、図4に示すように、ニードルパンチングマシーン10において、多数本のニードル12を支持シート5の表側または裏側から突き刺し、該支持シートを突き抜けて繊維を反対側に立毛させ、この際に突出繊維部8では繊維がループ状に突出することが多い。支持シート5がフェルトであれば、カードラップをニードルパンチングで一体化する際に同時に突出繊維部8を形成しても、2段階のニードルパンチングによって一体化と突起形成とを分離処理してもよい。また、図2に示すフッ素樹脂膜製品のように、支持シート5の両面に多孔質膜2,2を積層する場合には、該支持シートの両面に小突起3を分散形成するため、支持シート5の表側および裏側から順次ニードルパンチングを行う。
【0019】
このニードルパンチングに用いるニードル12は、不織布6やフェルトの繊維を表面から突出させるように、先端が特殊な形をして繊維を少量引っ掛けられるように溝(バーブ)を付けたり、先端の溝を深くしてU字形側面であることが望ましい。ニードル12は、通常、ニードルヘッド14に幅当たり1000〜6000本/mで植設されており、この針本数に応じて針ピッチ(シートの長さ方向でニードルを打ち込む本数)を決め、針密度が15〜130本/cmになるような条件でニードルパンチを行う。なお、針密度は針本数を針ピッチで除した値である。針密度が15本/cmより少ないと点接着する接着点の数が少なくなって接着が不十分になり、130本/cmを超えると接着点が多すぎて通気性が低下するので好ましくない。ニードルパンチングの時に、ニードル12が支持シート5の一部を突き出す針深さは5〜15mmであるのが良好であり、5mm未満では突出繊維部8が十分に形成されず、15mmを超えると支持シート5のダメージが大きくなるので好ましくない。
【0020】
支持シート5の突起表面15は、図4に示すように、毛焼き加工によって主に小突起3つまり突出繊維部8の個所を溶融・非晶化する。支持シート5の突起表面15では、毛焼き加工の際に突出繊維部8以外の部分まで溶融・非晶化しないように、局部的な加熱手段を選択すると望ましく、例えば、加熱バーナ16のような加熱手段を用い、直火18によって突起表面15の各突出繊維部8だけを溶融・非晶化させる。局部的な加熱手段として、突起表面15にヒータを近接設置すればよく、水平一連に配置する加熱バーナ16のほかに、突起表面15を帯状の電熱ヒータに近接通過させたり、上側または下側のヒータだけに通電した加熱炉を通過させてもよい。
【0021】
支持シート5は、その突起表面15において、毛焼き加工の後に多孔質膜2と貼り合わせる。支持シート5は、多孔質膜2の貼り付けと同時またはその直後に、ロール対20(図4)、ホットプレス、カレンダ、テンタープレートなどによる加熱・加圧によって、該多孔質膜と突出繊維部8のみで完全に熱圧着させる。ロール対20は、通常、ロールラミネータであり、加熱・加圧による接着と同時にフッ素樹脂膜製品1を所定の厚みと密度に調整できる。
【0022】
この加熱・加圧は、約200℃以上且つ支持シート5の融点未満で数秒間加圧すればよく、加熱だけを単独で行い、その後に冷間プレスすることも可能である。所望に応じて、多孔質膜2を片面に圧着したフッ素樹脂膜製品1では、支持シート5がフェルトであれば、圧着の後に、多孔質膜2を圧着していない他の面を毛焼き加工して遊び毛を除いてもよい。
【0023】
支持シート5を多孔質膜2と熱接着する際に、図6に示すように、支持シート5または多孔質膜2の上に保護フィルム22を積層し、この積層体をロール対20に通して加熱・加圧してもよい。積層した保護フィルム22は、支持シート5を多孔質膜2と熱接着した後に剥離すればよい。通常、保護フィルム22は、剥離後に巻き取られ、繰り返し使用することができる。保護フィルム22は、通常、ポリイミドフィルムやPPSフィルムであると好ましく、または220℃前後で軟化しない他の耐熱性フィルムを用いる。
【0024】
保護フィルム22を支持シート5の上に積層すると、該支持シートである不織布6またはフェルトの表面をいっそう平滑にできる。得たフッ素樹脂膜製品は、殆ど毛羽がなく、クリーンルームに要求される清浄空間を保持するエアフィルタとして好適である。また、多孔質膜2が熱溶融型フッ素樹脂フィルムであれば、該フィルムと支持シートとの熱接着を良化することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るフッ素樹脂膜製品は、フッ素樹脂の多孔質膜と支持シートとが全面的に点接着されることにより、従来のPTFE多孔質膜積層体に比べて通気性の低下が生じることが少なく、捕集効率の高いフィルタとして適用でき、エアフィルタであればプリーツ加工によるひだ付けなども可能である。本発明のフッ素樹脂膜製品は、フッ素樹脂の多孔質膜と支持シート本来の特性を併せ持ち、PTFE繊維単独の不織布に比べて遙かに安価である。本発明のフッ素樹脂膜製品において、支持シートの不織布やフェルトが備えるクッション性、防振性などを利用すると広い工業的用途が期待できる。
【0026】
本発明のフッ素樹脂膜製品は、高い非粘着性およびクッション性も有することにより、PTFE多孔質膜単体やPTFE繊維の不織布を貼り付けていた各種の工業的用途において代替えすることが可能である。例えば、本発明のフッ素樹脂膜製品は、エアフィルタのほかに、レーザプリンタのトナーカートリッジやインクジェットプリンタのインクカートリッジのエアベントなどにも適用可能である。
【実施例1】
【0027】
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。図1において、支持シート5は、目付30g/mのポリエステルスパンボンド不織布6(図5)(商品名:マリックス、ユニチカ製)である。
【0028】
図4に示すように、不織布6の全面において、ニードルパンチングによって多数本のニードル12を不織布表側から突き刺し、該不織布を突き抜けて繊維を裏側に立毛させ、多数の突出繊維部8つまり小突起3を分散形成する。このニードルパンチングに用いるニードル12は36番手であり、針密度73本/cm、針深さ10mmの条件でニードルパンチングする。不織布6の突起表面15は、毛焼き加工によって主に小突起3の個所が溶融・非晶化し、この毛焼き加工には加熱バーナ16を用いる。
【0029】
不織布6の突起表面15つまり毛焼き表面に、孔径15μm、厚さ25μmのPTFE多孔質膜2(商品名:ポアフロン、住友電工ファインポリマー製)を重ね合わせ、ロールラミネータ20を通して、温度220℃、線圧0.08MPa・cm、速度1m/分の条件で不織布6を多孔質膜2と熱接着した。
【0030】
得たフッ素樹脂膜製品1は、多孔質膜2と不織布6との接着が良好であり、その通気度は1.8cc/cm秒である。フッ素樹脂膜製品1において、接着点の数は83個/cm、接着点の面積は0.03〜0.18mmである。
【0031】
フッ素樹脂膜製品1に関して、その通気度は、フラジール型通気度試験機によって測定した。また、接着点の数および面積は、フッ素樹脂膜製品1を2層に剥がし、不織布6が溶融している部分を接着点と解し、その部分を実体顕微鏡を用いて面積1cmについて実測した。フッ素樹脂膜製品1は、エアフィルタを含む各種のフィルタ用途に適している。
【0032】
比較例1
実施例1で用いた不織布6について、ニードルパンチ処理および毛焼き加工を行わない以外は、実施例1と同様に処理してフッ素樹脂膜積層体を得る。このフッ素樹脂膜積層体は、多孔質膜2と不織布6との接着力が不十分であり、直ぐに剥がれてしまう。
【0033】
比較例2
実施例1で用いた不織布6の代わりに、ポリエステル芯/ポリエチレン鞘の繊維からなるスパンボンド不織布を用い、ニードルパンチ処理および毛焼き加工を行わずに、多孔質膜2を重ね合わせ、ロールラミネータ20を用いて温度160℃の条件で該不織布と多孔質膜2を熱接着した。このフッ素樹脂膜積層体は、多孔質膜2と不織布とが、ポリエチレンによってほぼ全面で完全接着されてしまい、その通気度が0.8cc/cm秒という低い値になる。
【実施例2】
【0034】
実施例1で用いたポリエステルスパンボンド不織布を実施例1と同様に処理して毛焼き加工する。この不織布6を2枚用い、厚さ15μmのPTFE多孔質膜2を不織布6,6の間に挟んで積層する(図3参照)。図6に示すように、この積層体24の両面に、ポリイミドフィルムを保護フィルム22として配置する。加熱温度160℃のロールラミネータ20を用いて、支持シート5である不織布6を多孔質膜2と熱圧着した後に、保護フィルム22,22を剥がすことにより、3層構造のフッ素樹脂膜製品26を得る。
【0035】
フッ素樹脂膜製品26は、不織布6,6の表面が平滑化されて摩擦抵抗が小さくなることにより、レシプロ型のプリーツ機でプリーツ加工した際に、ブレードと膜製品つまりフィルタと間の摩擦抵抗が小さくなり、多孔質膜2がプリーツ加工時に損傷を受けにくくなる。また、保護フィルム22は、常に新しい平滑面を不織布6に接触させるため、長期にわたる製造の場合でも膜製品26の表面に毛羽などが発生せず、高性能のエアフィルタを安定供給できる。
【実施例3】
【0036】
繊度3デニールであるポリエステル繊維100%を均一に混綿してウェブを製造する。このウェブを積層し、重さ380g/m2のカードラップを形成する。2等分のカードラップの間に、織物基布として、重さ70g/m2であるポリエステル繊維のマルチフィラメント織布を介在させて密にニードルパンチングし、同時にフェルトの全面に多数の小突起を分散形成する。
【0037】
得たフェルト素材の突起表面において、毛焼き加工によって主に小突起の個所を溶融・非晶化させてから、カレンダーのロール対を通して厚さ30μmのPTFE樹脂の多孔質膜2を毛焼き表面に貼り合わせる。ロール対は、温度220℃、圧力0.15MPaであり、速度2.5m/分で圧着すると、重さ475g/m2、厚さ1.5mmのフッ素樹脂膜製品を得る。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係るフッ素樹脂膜製品の一例を示す拡大断面図である。
【図2】フッ素樹脂膜製品の他の例を示す拡大断面図である。
【図3】フッ素樹脂膜製品の別の例を示す拡大断面図である。
【図4】フッ素樹脂膜製品の製造工程を概略的に示す側面図である。
【図5】支持シートとして用いる不織布の毛焼き加工後を示す拡大断面図である。
【図6】支持シートにフッ素樹脂の多孔質膜を接着する別の態様を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 フッ素樹脂膜製品
2 多孔質膜
3 小突起
5 支持シート
6 不織布
8 突出繊維部
12 ニードル
16 加熱バーナ
20 ロール対

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性の支持シートの片面または両面にフッ素樹脂の多孔質膜を貼り合わせた膜製品であって、該支持シートの全面において多数の小突起を密に分散形成することにより、加熱・加圧によって支持シートが主に小突起の個所においてフッ素樹脂の多孔質膜と全面的に点接着されているフッ素樹脂膜製品。
【請求項2】
フッ素樹脂の多孔質膜において点接着の数が1cm当たり20〜120個であり、且つ個々の点接着の面積が0.01〜0.3mmである請求項1記載のフッ素樹脂膜製品。
【請求項3】
通気性の支持シートがポリエステルを主体とするスパンボンド不織布であり、多孔質膜がポリテトラフルオロエチレン樹脂製である請求項1記載のフッ素樹脂膜製品。
【請求項4】
通気性の支持シートをニードルパンチしてその全面に多数の小突起を分散形成し、ついで支持シートの突起表面を毛焼き加工して主に小突起の個所を溶融・非晶化し、その後にフッ素樹脂の多孔質膜を支持シートの毛焼き面の上に重ね合わせ、加熱・加圧によって多孔質膜を支持シートと全面的に熱圧着するフッ素樹脂膜製品の製造法。
【請求項5】
支持シートにおける各小突起の個所を加熱バーナを用いて溶融・非晶化し、その後に該支持シートの毛焼き面にフッ素樹脂の多孔質膜を重ね合わせ、さらに支持シートまたは多孔質膜の上に保護フィルムを積層し、ロール対に通して加熱・加圧して多孔質膜を支持シートと熱接着した後に保護フィルムを剥離する請求項4記載の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−110400(P2006−110400A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−297255(P2004−297255)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000136413)株式会社フジコー (26)
【Fターム(参考)】