説明

フッ素系ポリマー、その製造方法および高分子電解質

【課題】良好な長期安定性の燃料電池を実現する高分子電解質膜が得られるフッ素系ポリマー、該フッ素系ポリマーが得られるフッ素系ポリマー前駆体、該フッ素系ポリマーの製造方法、該フッ素系ポリマーを用いた燃料電池部材および長期安定性に優れた固体高分子型燃料電池を提供する。
【解決手段】下記式(1)で示される構造単位と下記式(2)又は下記式(3)で表される構造単位とを有することを特徴とするフッ素系ポリマー。





【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素系ポリマー、その製造方法および高分子電解質に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池(以下、「燃料電池」と略記することがある。)は、水素と酸素の電気化学的反応を利用した発電装置であり、次世代エネルギーの一つとして電気機器産業や自動車産業等の分野において大きく期待されている。燃料電池に使用される高分子電解質膜として、フッ素系高分子電解質膜や炭化水素系高分子電解質膜が注目されている。
【0003】
ところで、フッ素系高分子電解質や炭化水素系高分子電解質からなる高分子電解質膜は、燃料電池として作動させた場合の長期の運転安定性(以下、「長期安定性」と呼ぶ)が必ずしも十分でないことが指摘されている。この長期安定性を妨げる要因としては、様々の原因が推定されているが、その1つとして、電池稼動時に発生する過酸化物(例えば、過酸化水素等)又は該過酸化物から発生するラジカルによる膜の劣化が知られている。それゆえ、高分子電解質膜の過酸化物やラジカルに対する耐久性(以下、「ラジカル耐性」と呼ぶ)を向上させることが、固体高分子型燃料電池の長期安定性に繋がる1つの対策とされている。
【0004】
このようなラジカル耐性を向上させる方法として、スルホン化ポリマーと、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンおよびビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトからなる酸化防止剤とを含む高分子電解質組成物からなる高分子電解質膜が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−201403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の高分子電解質膜を用いた燃料電池は、電池の起動・停止を繰り返すような長期運転を行なうと、高分子電解質膜が著しく劣化して、イオン伝導性が低下し、結果として燃料電池自体の発電性能が低下し易い。従って、良好なラジカル耐性を有し、燃料電池の長期安定性を可能とする高分子電解質膜の実現が切望されていた。
このような状況下、本発明の目的は、良好な長期安定性の燃料電池を実現する高分子電解質膜が得られるフッ素系ポリマー、該フッ素系ポリマーが得られるフッ素系ポリマー前駆体、該フッ素系ポリマーの製造方法、該フッ素系ポリマーを用いた燃料電池部材および長期安定性に優れた固体高分子型燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は下記[1]〜[24]を提供するものである。
[1]下記式(1)で示される構造単位と、下記式(2)で示される構造単位および下記式(3)で示される構造単位からなる群より選ばれる1種以上の構造単位とを有することを特徴とするフッ素系ポリマー。

(式(1)中、X1〜X3はそれぞれ独立に−Fで示される基または−CF3で示される基を表す。Rf1は炭素数1〜100のパーフルオロアルキレン基または炭素数1〜100のパーフルオロアルキレン基と−O−とからなる2価の基を表す。Z1は下記式(1−a)〜(1−h)で示される基のいずれかを表す。

(式(1−a)〜(1−h)中、Y1は直接結合、−CO−で示される基または−SO2−で示される基を表す。Ar1は芳香族基を表す。該炭化水素系芳香族基は置換基を有していてもよい。))

(式(2)中、X4〜X6はそれぞれ独立に−Fで示される基または−CF3で示される基を表す。Rf2は直接結合、炭素数1〜100のパーフルオロアルキレン基または炭素数1〜100のパーフルオロアルキレン基と−O−とからなる2価の基を表す。E1はイオン交換基またはイオン交換前駆基を表す。)

(式(3)中、X27〜X29はそれぞれ独立に−Fで示される基または−CF3で示される基を表す。Rf3は直接結合、炭素数1〜100のパーフルオロアルキレン基または炭素数1〜100のパーフルオロアルキレン基と−O−とからなる2価の基を表す。E2は−Fで示される基または−CF3で示される基を表す。)
[2]上記式(1)で示される構造単位が、下記式(4)で示される構造単位であることを特徴とする[1]に記載のフッ素系ポリマー。

式(4)
(式(4)中、X7〜X16はそれぞれ独立に−Fで示される基または−CF3で示される基を表す。Z1は前記と同義である。a1、d1およびg1はそれぞれ独立に0または1を表し、b1、e1およびh1はそれぞれ独立に1〜8の整数を表し、c1およびf1はそれぞれ独立に0〜8の整数を表す。)
[3]式(4)における、a1〜h1の総和が5〜10であることを特徴とする[2]に記載のフッ素系ポリマー。
[4]上記式(1)で示される構造単位と、上記式(2)で示される構造単位とを有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のフッ素系ポリマー。
[5]上記式(2)で示される構造単位が、下記式(5)で示される構造単位であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載のフッ素系ポリマー。

式(5)
(式(5)中、X17〜X26はそれぞれ独立に−Fで示される基または−CF3で示される基を表す。E1は前記と同義である。a2、d2およびg2はそれぞれ独立に0または1を表し、b2、e2およびh2はそれぞれ独立に1〜8の整数を表し、c2およびf2はそれぞれ独立に0〜8の整数を表す。)
[6]上記E1がスルホ基およびその塩の基、ホスホン基およびその塩の基、カルボキシル基およびその塩の基、並びに、スルホンイミド基およびその塩の基からなる群より選ばれる1種以上の基であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載のフッ素系ポリマー。
[7]上記E1がスルホ基およびその塩の基からなる群より選ばれる1種以上の基であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載のフッ素系ポリマー。
[8]式(5)における、a2〜h2の総和が5〜10であることを特徴とする[5]〜[7]のいずれかに記載のフッ素系ポリマー。
[9]上記式(1)で示される構造単位と、上記式(3)で示される構造単位とを有することを特徴とする[1]〜[8]のいずれかに記載のフッ素系ポリマー。
[10]上記式(3)で示される構造単位が、下記式(6)で示される構造単位であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれかに記載のフッ素系ポリマー。

式(6)
(式(6)中、X60〜X69はそれぞれ独立に−Fで示される基または−CF3で示される基を表す。E2は前記と同義である。a3、d3およびg3はそれぞれ独立に0または1を表し、b3、e3およびh3はそれぞれ独立に1〜8の整数を表し、c3およびf3はそれぞれ独立に0〜8の整数を表す。)
[11]式(6)における、a5〜h5の総和が5〜10であることを特徴とする[10]に記載のフッ素系ポリマー。
[12]Z1が−S−で示される基、−S+=で示される基および−SO−で示される基からなる群より選ばれる1種以上の基を含有することを特徴とする[1]〜[11]のいずれかに記載のフッ素系ポリマー。
[13]Ar1が環状構造を有し、該環内に−S−で示される基、−S+=で示される基、および−SO−で示される基からなる群より選ばれる1種以上の基を有し、且つ、該環内に窒素原子を有することを特徴とする[1]〜[12]のいずれかに記載のフッ素系ポリマー。
[14]Ar1が下記式(7)で示される炭化水素系芳香族基であることを特徴とする[1]〜[13]のいずれかに記載のフッ素系ポリマー。

(式(7)中、R2〜R9はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜20のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基を表わす。)
[15]下記式(8)で示される構造単位と、下記式(9)で示される構造単位および下記式(10)で示される構造単位からなる群より選ばれる1種以上の構造単位とを有することを特徴とするフッ素系ポリマー前駆体。


式(8)
(式(8)中、X30〜X42はそれぞれ独立に−Fで示される基または−CF3で示される基を表す。Q1は−Clで示される基、−Brで示される基または−Iで示される基を表す。a3、d3およびg3はそれぞれ独立に0または1を表し、b3、e3およびh3はそれぞれ独立に1〜8の整数を表し、c3,f3,およびh3はそれぞれ独立に0〜8の整数を表し、a3〜h3の整数の総和は5〜10である。)


式(9)
(式(9)中、X43〜X55はそれぞれ独立に−Fで示される基または−CF3で示される基を表す。E3はイオン交換基またはイオン交換前駆基を表す。a4、d4およびg4はそれぞれ独立に0または1の整数を表し、b4、e4およびh4はそれぞれ独立に1〜8の整数を表し、c4、f4およびh4はそれぞれ独立に0〜8の整数を表し、a4〜h4の整数の総和は5〜10である。)

(式(10)中、X56、X57、X58はそれぞれ独立に−Fで示される基または−CF3で示される基を表す。Rf4は、直接結合、炭素数1〜100のパーフルオロアルキレン基または炭素数1〜100のパーフルオロアルキレン基と−O−とからなる2価の基を表す。E4は−Fで示される基または−CF3で示される基を表す。)
[16]X30〜X32およびX43〜X45が全て−Fで示される基であることを特徴とする[15]に記載のフッ素系ポリマー前駆体。
[17]E3がスルホ基またはその塩の基であることを特徴とする[15]または[16]に記載のフッ素系ポリマー前駆体。
[18][15]〜[17]のいずれかに記載のフッ素系ポリマー前駆体と下記式(2−a)〜(2−g)で示される化合物からなる群より選ばれる1種以上とを反応させることを特徴とするフッ素系ポリマーの製造方法。

(式(2−a)〜(2−g)中、Ar1は芳香族基を表す。)
[19][1]〜[14]のいずれかに記載のフッ素系ポリマーを含有することを特徴とする高分子電解質。
[20][19]に記載の高分子電解質と炭化水素系高分子電解質とを含有することを特徴とする高分子電解質組成物。
[21][19]に記載の高分子電解質および[20]に記載の高分子電解質組成物からなる群より選ばれる1種以上を含有することを特徴とする高分子電解質膜。
[22][19]に記載の高分子電解質および[20]に記載の高分子電解質組成物からなる群より選ばれる1種以上と、触媒成分とを含有することを特徴とする触媒組成物。
[23][21]に記載の高分子電解質膜および[22]に記載の触媒組成物からなる群より選ばれる1種以上を有することを特徴とする膜電極接合体。
[24][23]に記載の膜電極接合体を有することを特徴とする固体高分子形燃料電池。
【発明の効果】
【0008】
本発明のフッ素系ポリマーを用いることで、ラジカル耐性に優れた高分子電解質膜等の燃料電池用部材を得ることができる。かかる燃料電池用部材を備えた燃料電池は長期安定性に優れるものとなるので、工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のフッ素系ポリマーに係る好適な実施態様について具体的に説明する。
【0010】
<フッ素系ポリマー>
本発明のフッ素系ポリマーは、下記式(1)で示される構造単位と、下記式(2)で示される構造単位および下記式(3)で示される構造単位からなる群より選ばれる1種以上の構造単位とを有することを特徴とする。

(式(1)中、X1〜X3はそれぞれ独立に−Fで示される基または−CF3で示される基を表す。Rf1は炭素数1〜100のパーフルオロアルキレン基または炭素数1〜100のパーフルオロアルキレン基と−O−とからなる2価の基を表す。Z1は下記式(1−a)〜(1−h)で示される基のいずれかを表す。

(式(1−a)〜(1−h)中、Y1は直接結合、−CO−で示される基または−SO2−で示される基を表す。Ar1は芳香族基を表す。該炭化水素系芳香族基は置換基を有していてもよい。))

(式(2)中、X4〜X6はそれぞれ独立に−Fで示される基または−CF3で示される基を表す。Rf2は直接結合、炭素数1〜100のパーフルオロアルキレン基または炭素数1〜100のパーフルオロアルキレン基と−O−とからなる2価の基を表す。E1はイオン交換基またはイオン交換前駆基を表す。)

(式(3)中、X27〜X29はそれぞれ独立に−Fで示される基または−CF3で示される基を表す。Rf3は直接結合、炭素数1〜100のパーフルオロアルキレン基または炭素数1〜100のパーフルオロアルキレン基と−O−とからなる2価の基を表す。E2は−Fで示される基または−CF3で示される基を表す。)
【0011】
本発明のフッ素系ポリマーは、ラジカル耐性の観点から、ポリマーの主鎖を構成する炭素原子が、C―H結合形成していないことが好ましく、C−F結合を形成していることが好ましい。ポリマー主鎖を構成する炭素原子が形成するC−H結合およびC−F結合の合計数を100%としたとき、C−F結合の割合が、30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることがよりさらに好ましく、100%であることが特に好ましい。ここで、ポリマーの主鎖とは、ポリマーを形成する最も長い鎖のことをいい、上記Z1を含まない。この鎖は共有結合により相互に結合した炭素原子から構成されていて、その際、この鎖は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等により中断されていてもよい。
【0012】
上記式(1)中、Rf1は炭素数1〜100のパーフルオロアルキレン基または炭素数1〜100のパーフルオロアルキレン基と−O−とからなる2価の基を表す。好ましいRf1としては、炭素数1〜100のパーフルオロアルキレン基と−O−とからなる2価の基が挙げられる。Rf1の具体例としては、以下の構造を例示できる。

【0013】
上記式(1)で示される構造単位としては、下記式(4)で示される構造単位が好ましい。

式(4)
(式(4)中、X7〜X16はそれぞれ独立に−Fで示される基または−CF3で示される基を表す。Z1は前記と同義である。a1、d1およびg1はそれぞれ独立に0または1を表し、b1、e1およびh1はそれぞれ独立に1〜8の整数を表し、c1およびf1はそれぞれ独立に0〜8の整数を表す。)
【0014】
a1〜h1の総和は、3〜20であることが好ましい。そのような構造として下記式(4−1)〜(4−10)を挙げることができる。より好ましくはa1〜h1の総和が5〜10であり、そのような構造として下記式(4−2)〜式(4−7)、式(4−9)、式(4−10)を例示することができる。

【0015】
1は下記式(1−a)〜(1−h)で示される基のいずれかを表す。


(式(1−a)〜(1−h)中、Y1は直接結合、−CO−で示される基または−SO2−で示される基を表す。Ar1は芳香族基を表す。)
【0016】
好ましいZ1の構造としては、(1−a)〜(1−d)、(1−g)(1−h)であり、より好ましくは(1−a)〜(1−c)、(1−g)であり、特に好ましくは(1−a)〜(1−c)である。中でも(1−a)〜(1−c)において、Ar1が15、16族のヘテロ原子を有するものが好ましい。
【0017】
1が−S−で示される基、−S+=で示される基および−SO−で示される基からなる群より選ばれる1種以上の基を含有することが好ましく、−S−で示される基および−SO−からなる群より選ばれる1種以上の基を含有するものがより好ましい。Z1はヘテロ原子を含んでもよく、中でも15、16族のヘテロ原子を含むものが好ましい。15、16族のヘテロ原子としては、窒素原子、リン原子、砒素原子、アンチモン原子、ビスマス原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子が挙げられ、好ましくは、窒素原子、リン原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子であり、より好ましくは、窒素原子、硫黄原子、セレン原子であり、更に好ましくは窒素原子、硫黄原子であり、特に好ましくは硫黄原子である。
【0018】
式(1−a)〜(1−h)中、Ar1は芳香族基を示す。該芳香族基はヘテロ原子を含んでもよい。該芳香族基としては、炭化水素系芳香族基が好ましく、炭素数3〜50の炭化水素系芳香族基がより好ましい。具体的には、ベンゼン、アニソール、ビフェニル、フルオロベンゼン、ニトロベンゼン、アニリン、チオフェノール、アミノベンゼンチオール、ジフェニルスルフィド、ベンゼンジチオール、ポリフェニレンスルフィドなどの単環性芳香族化合物の芳香環上の水素原子を一つ取り去って得られる基、ナフタレン、アントラセンなどの縮環芳香族化合物の芳香環上の水素原子を一つ取り去って得られる基、ピリジン、ピロール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ピラゾール、カルバゾール、プリン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、チアントレン、フェノキサチイン、チオキサントン、ジフェニルスルフィド、ポリフェニレンスルフィド、チアゾール、イソチアゾール、ベンゾチアゾール、フェノチアジン、フェノチアジン−5−オキサイド、10−ベンゾイルフェノチアジン、エトプロパジン、アズールB、アズールII、メチレンブルー、ベンゾイルロイコメチレンブルー、ベーシックグリーン5、チオニンクロライド、チオニンアセテート、ベーシックブルー17、アセトンベンゾチアゾリル−2−ヒドラゾン2−チオキサンチン、6−チオグアニンなどのヘテロ芳香族化合物の芳香環上の水素原子を一つ取り去って得られる基などを挙げることができる。
【0019】
上記炭化水素系芳香族基上の置換基としては、水酸基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜20のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基から選ばれる基を表す。
【0020】
上記の置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基として、直鎖状または分岐鎖状アルキル基があげられ、具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、トリフルオロメチル基などが挙げられる。
【0021】
上記の置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基として、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ基などが挙げられる。
【0022】
上記の置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基として、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、sec−ブチルチオ、t−ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ、ヘプチルチオ、オクチルチオ、デシルチオ基などが挙げられる。
【0023】
上記の置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基として、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル基などのアルキル基の群から選ばれる1つのアルキル基でアミノ基の1つの水素原子を置換した基が挙げられる
【0024】
上記の置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基として、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル基などのアルキル基の群から選ばれる2つのアルキル基でアミノ基の2つの水素原子を置換した基が挙げられる。
【0025】
上記の置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基として、フェニル、o−メチルフェニル、m−メチルフェニル、p−メチルフェニル、o−メトキシフェニル、m−メトキシフェニル、p−メトキシフェニル、o-エトキシフェニル、m-エトキシフェニル、p-エトキシフェニル、o−フェノキシフェニル、m−フェノキシフェニル、p−フェノキシフェニル、o−クロロフェニル、m−クロロフェニル、p−クロロフェニル、o−ニトロフェニル、m−ニトロフェニル、p−ニトロフェニル、o−アミノフェニル、m−アミノフェニル、p−アミノフェニル基などの単環性アリール基、1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントラシル、2−アントラシル、4−アントラシル基などの縮環系アリール基、1−ピリジル、2−ピリジル、4−ピリジル、1−ピロリル、2−ピロリル、1−チエニル、2−チエニル、1−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、1−ピラゾリル、3−ピラゾリル、4−ピラゾリル基などのヘテロアリール基などが挙げられる。
【0026】
上記の置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基として、フェニルオキシ、o−メチルフェニルオキシ、m−メチルフェニルオキシ、p−メチルフェニルオキシ、o−メトキシフェニルオキシ、m−メトキシフェニルオキシ、p−メトキシフェニルオキシ、o-エトキシフェニルオキシ、m-エトキシフェニルオキシ、p-エトキシフェニルオキシ、o−フェノキシフェニルオキシ、m−フェノキシフェニルオキシ、p−フェノキシフェニルオキシ、o−クロロフェニルオキシ、m−クロロフェニルオキシ、p−クロロフェニルオキシ、o−ニトロフェニルオキシ、m−ニトロフェニルオキシ、p−ニトロフェニルオキシ、o−アミノフェニルオキシ、m−アミノフェニルオキシ、p−アミノフェニルオキシ基などの単環性アリールオキシ基、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシ、1−アントラシルオキシ、2−アントラシルオキシ、4−アントラシルオキシ基などの縮環系アリールオキシ基、1−ピリジルオキシ、2−ピリジルオキシ、4−ピリジルオキシ、1−ピロリルオキシ、2−ピロリルオキシ、1−チエニルオキシ、2−チエニルオキシ、1−イミダゾリルオキシ、2−イミダゾリルオキシ、4−イミダゾリルオキシ、2−チアゾリルオキシ、4−チアゾリルオキシ、5−チアゾリルオキシ、1−ピラゾリルオキシ、3−ピラゾリルオキシ、4−ピラゾリルオキシ基などが挙げられる。
【0027】
上記の置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基として、前述の置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基の例示の群より選ばれる1つのアリール基でアミノ基の1つの水素原子を置換した基などが挙げられる。
【0028】
上記の置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基として、前述の置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基の例示の群より選ばれる2つのアリール基でアミノ基の2つの水素原子を置換した基などが挙げられる。
【0029】
上記の置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基として、前述の置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基の例示の群より選ばれるアリール基でメルカプト基の水素原子を置換した基などが挙げられる。
【0030】
上記の置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基として、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、パルミトイル、ステアロイル、オレオイル基などがあげられる。
【0031】
上記の置換基を有していてもよい炭素数4〜20のアロイル基として、前述の置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基の例示の群より選ばれるアリール基でホルミル基の水素原子を置換した基などが挙げられる。
【0032】
上記の置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基として、フェニルスルホニル、o−メチルフェニルスルホニル、m−メチルフェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル、o−メトキシフェニルスルホニル、m−メトキシフェニルスルホニル、p−メトキシフェニルスルホニル、o-エトキシフェニルスルホニル、m-エトキシフェニルスルホニル、p-エトキシフェニルスルホニル、o−フェノキシフェニルスルホニル、m−フェノキシフェニルスルホニル、p−フェノキシフェニルスルホニル、o−クロロフェニルスルホニル、m−クロロフェニルスルホニル、p−クロロフェニルスルホニル、o−ニトロフェニルスルホニル、m−ニトロフェニルスルホニル、p−ニトロフェニルスルホニル、o−アミノフェニルスルホニル、m−アミノフェニルスルホニル、p−アミノフェニルスルホニル基などの単環性アリールスルホニル基、1−ナフチルスルホニル、2−ナフチルスルホニル、1−アントラシルスルホニル、2−アントラシルスルホニル、4−アントラシルスルホニル基などの縮環系アリールスルホニル基、1−ピリジルスルホニル、2−ピリジルスルホニル、4−ピリジルスルホニル、1−ピロリルスルホニル、2−ピロリルスルホニル、1−チエニルスルホニル、2−チエニルスルホニル、1−イミダゾリルスルホニル、2−イミダゾリルスルホニル、4−イミダゾリルスルホニル、2−チアゾリルスルホニル、4−チアゾリルスルホニル、5−チアゾリルスルホニル、1−ピラゾリルスルホニル、3−ピラゾリルスルホニル、4−ピラゾリルスルホニル基などが挙げられる。
【0033】
上記の置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基として、具体的には、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソブチルスルホニル、sec−ブチルスルホニル、t−ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、ヘキシルスルホニル、ヘプチルスルホニル、オクチルスルホニル、デシルスルホニル基などが挙げられる。
【0034】
Ar1はヘテロ原子を含んでもよく、中でも15、16族のヘテロ原子を含むものが好ましい。15、16族のヘテロ原子としては、上述のものがあげられ、窒素原子、リン、酸素原子、硫黄原子、セレン原子を含むものが好ましく、窒素原子、リン原子、酸素原子、硫黄原子を含むものがより好ましく、窒素原子、硫黄原子を含むものがさらに好ましく、硫黄を含むものが特に好ましい。硫黄原子を含むものの中でも−S−で示される基、−S+=で示される基および−SO−で示される基からなる群より選ばれる1種以上の基を有するAr1が好ましく、−S−で示される基および−SO−で示される基からなる群より選ばれる1種以上の基を有するものがより好ましい。より好ましいものとしては、Ar1が環状構造を有し、該環内に−S−で示される基、−S+=で示される基および−SO−で示される基からなる群より選ばれる1種以上の基を有する基であり、特に好ましくは、Ar1が該環内に−S−で示される基を有する基である。該環状構造としては5員環および6員環が好ましく、特に好ましくは6員環である。なお、Ar1はイオン性であってもよく、電気的中性を満たすように任意の対イオンを有してよい。
【0035】
−S−で示される基、−S+=で示される基および−SO−で示される基からなる群より選ばれる1種以上の基を有するAr1の例として、チオフェノール、ベンゼンジチオール、ジフェニルジスルフィド、4,4‘−ジチオジアニリン、アミノベンゼンチオール、2−アミノフェニルフェニルスルフィド、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、チアントレン、フェノキサチイン、チオキサントン、ジフェニルスルフィド、ポリフェニレンスルフィド、チアゾール、イソチアゾール、ベンゾチアゾール、フェノチアジン、2−メトキシフェノチアジン、2−メチルチオフェノチアジン、2-エチルチオフェノチアジン、2−クロロフェノチアジン、2−(トリフルオロメチル)フェノチアジン、10−メチルフェノチアジン、フェノチアジン−5−オキサイド、3−フェノチアゾン、10−ベンゾイルフェノチアジン、エトプロパジン、アズールB、アズールII、メチレンブルー、ベンゾイルロイコメチレンブルー、ベーシックグリーン5、チオニンクロライド、チオニンアセテート、ベーシックブルー17、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−5−メチルベンズイミダゾール、5−アミノ−2−メルカプトベンズイミダゾール、2−(メチルチオ)ベンゾイミダゾール、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール、6−アミノ−2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプト−6−ニトロベンゾチアゾール、アセトンベンズチアゾリル−2−ヒドラゾン、6−メルカプトプリン、6−メチルメルカプトプリン、2,6−ジメルカプトプリン、2−チオキサンチン、6−チオグアニンから芳香環上の水素原子を一つ取り去って得られる基を挙げることができる。
【0036】
−S−で示される基および−SO−で示される基からなる群より選ばれる1種以上の基を有するAr1の具体的としては、チオフェノール、ベンゼンジチオール、ジフェニルジスルフィド、4,4‘−ジチオジアニリン、アミノベンゼンチオール、2−アミノフェニルフェニルスルフィド、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、チアントレン、フェノキサチイン、チオキサントン、ジフェニルスルフィド、ポリフェニレンスルフィド、チアゾール、イソチアゾール、ベンゾチアゾール、フェノチアジン、2−メトキシフェノチアジン、2−メチルチオフェノチアジン、2-エチルチオフェノチアジン、2−クロロフェノチアジン、2−(トリフルオロメチル)フェノチアジン、10−メチルフェノチアジン、フェノチアジン−5−オキサイド、3−フェノチアゾン、10−ベンゾイルフェノチアジン、エトプロパジン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−5−メチルベンズイミダゾール、5−アミノ−2−メルカプトベンズイミダゾール、2−(メチルチオ)ベンゾイミダゾール、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール、6−アミノ−2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプト−6−ニトロベンゾチアゾール、アセトンベンズチアゾリル−2−ヒドラゾン、6−メルカプトプリン、6−メチルメルカプトプリン、2,6−ジメルカプトプリン、2−チオキサンチン、6−チオグアニンから芳香環上の水素原子を一つ取り去って得られる基を挙げることができる。
【0037】
環状構造内に−S−で示される基、−S+=で示される基および−SO−で示される基を有するAr1の具体的としては、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、チアントレン、フェノキサチイン、チオキサントン、チアゾール、イソチアゾール、ベンゾチアゾール、フェノチアジン、2−メトキシフェノチアジン、2−メチルチオフェノチアジン、2-エチルチオフェノチアジン、2−クロロフェノチアジン、2−(トリフルオロメチル)フェノチアジン、10−メチルフェノチアジン、フェノチアジン−5−オキサイド、3−フェノチアゾン、10−ベンゾイルフェノチアジン、エトプロパジン、アズールB、アズールII、メチレンブルー、ベンゾイルロイコメチレンブルー、ベーシックグリーン5、チオニンクロライド、チオニンアセテート、ベーシックブルー17、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール、6−アミノ−2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプト−6−ニトロベンゾチアゾール、アセトンベンゾチアゾリル−2−ヒドラゾンから芳香環上の水素原子を一つ取り去って得られる基を挙げることができる。
【0038】
またAr1として、−S−で示される基、−S+=で示される基および−SO−で示される基からなる群より選ばれる1種以上の基を有し、且つ、窒素原子を有するAr1が好ましい。より好ましいものとしては、Ar1が−S−で示される基および−SO−で示される基からなる群より選ばれる1種以上の基を有し、且つ、窒素原子を有する基であり、特に好ましくは、Ar1が−S−で示される基を有し、且つ、窒素原子を有する基である。−S−で示される基、−S+=で示される基、−SO−で示される基および窒素原子は、Ar1の環状構造内に含まれることが好ましい。該環状構造としては5員環および6員環が好ましく、特に好ましくは6員環である。
【0039】
好ましい窒素原子の形態としては、アミノ基(−NR2,Rは水素原子であるか、任意の有機基であり、2つのRは同じであっても異なっていてもよく、2つのRが結合して環を形成してもよい。)、イミノ基(=NR、Rは水素原子であるか、任意の有機基である。)、窒素原子を含む複素環を有するようなピリジル基やイミダゾリル基中の=N−結合が挙げられる。
【0040】
−S−で示される基、−S+=で示される基および−SO−で示される基からなる群より選ばれる1種以上の基を有し、且つ、窒素原子を有するAr1の具体例としては、4,4‘−ジチオジアニリン、アミノベンゼンチオール、2−アミノフェニルフェニルスルフィド、チアゾール、イソチアゾール、ベンゾチアゾール、フェノチアジン、2−メトキシフェノチアジン、2−メチルチオフェノチアジン、2-エチルチオフェノチアジン、2−クロロフェノチアジン、2−(トリフルオロメチル)フェノチアジン、10−メチルフェノチアジン、フェノチアジン−5−オキサイド、3−フェノチアゾン、10−ベンゾイルフェノチアジン、エトプロパジン、アズールB、アズールII、メチレンブルー、ベンゾイルロイコメチレンブルー、ベーシックグリーン5、チオニンクロライド、チオニンアセテート、ベーシックブルー17、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−5−メチルベンズイミダゾール、5−アミノ−2−メルカプトベンズイミダゾール、2−(メチルチオ)ベンゾイミダゾール、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール、6−アミノ−2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプト−6−ニトロベンゾチアゾール、アセトンベンゾチアゾリル−2−ヒドラゾン、6−メルカプトプリン、6−メチルメルカプトプリン、2,6−ジメルカプトプリン、2−チオキサンチン、6−チオグアニンから芳香環上の水素原子を一つ取り去って得られる基を挙げることができる。
【0041】
環状構造内に−S−で示される基、−S+=で示される基および−SO−で示される基からなる群より選ばれる1種以上の基を有し、且つ、環状構造内に窒素原子を有するAr1の具体例としては、チアゾール、イソチアゾール、ベンゾチアゾール、フェノチアジン、2−メトキシフェノチアジン、2−メチルチオフェノチアジン、2-エチルチオフェノチアジン、2−クロロフェノチアジン、2−(トリフルオロメチル)フェノチアジン、10−メチルフェノチアジン、フェノチアジン−5−オキサイド、3−フェノチアゾン、10−ベンゾイルフェノチアジン、エトプロパジン、アズールB、アズールII、メチレンブルー、ベンゾイルロイコメチレンブルー、ベーシックグリーン5、チオニンクロライド、チオニンアセテート、ベーシックブルー17、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール、6−アミノ−2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプト−6−ニトロベンゾチアゾール、アセトンベンゾチアゾリル−2−ヒドラゾンから芳香環上の水素原子を一つ取り去って得られる基を挙げることができる。
【0042】
6員環構造内に−S−で示される基、−S+=で示される基および−SO−で示される基からなる群より選ばれる1種以上の基を有し、且つ、6員環構造内に窒素原子を有するAr1の具体例としては、フェノチアジン、2−メトキシフェノチアジン、2−メチルチオフェノチアジン、2-エチルチオフェノチアジン、2−クロロフェノチアジン、2−(トリフルオロメチル)フェノチアジン、10−メチルフェノチアジン、フェノチアジン−5−オキサイド、3−フェノチアゾン、10−ベンゾイルフェノチアジン、エトプロパジン、アズールB、アズールII、メチレンブルー、ベンゾイルロイコメチレンブルー、ベーシックグリーン5、チオニンクロライド、チオニンアセテート、ベーシックブルー17から芳香環上の水素原子を一つ取り去って得られる基を挙げることができる。
【0043】
Ar1は、下記式(7)で示される炭化水素系芳香族基であることが好ましい。

(式(7)中、R2〜R9はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜20のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基を表わす。)
【0044】
置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜20のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基の具体例としては、上記の例で示したものとそれぞれ同様なものを挙げることができる。
【0045】
式(7)の好ましい構造として、具体的には次の構造(7−1)〜(7−5)を例示できる。好ましくは(7−1)、(7−3)〜(7−5)であり、より好ましくは(7−1)、(7−2)であり、特に好ましくは(7−1)である。


【0046】
以上、式(1)の構造について詳しく述べたが、式(1)の好適な構造を具体的に例示すると、以下の通りである。

【0047】
上記具体例の中でも、原料が比較的容易に入手できるという観点から、式(100−1)〜(100−6)をより好ましく用いることができる。
【0048】
式(2)のRf2は直接結合、炭素数1〜100のパーフルオロアルキレン基または炭素数1〜100のパーフルオロアルキレン基と−O−とからなる2価の基を表す。好ましいRf2としては、炭素数1〜100のパーフルオロアルキレン基と−O−とからなる2価の基が挙げられる。Rf2の具体例としては、上述の式(1−1)〜(1−26)の構造を例示できる。
【0049】
式(2)のイオン交換基としては、スルホ基およびその塩の基、ホスホン基およびその塩の基、カルボキシル基およびその塩の基、スルホンイミド基その塩等があげられる。これらイオン交換基の塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩などのアルカリ金属塩、ベリリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩などのテトラアルキルアンモニウム塩、テトラフェニルホスホニウム塩などのテトラアリールホスホニウム塩などを挙げることができる。これらの中でも、スルホ基およびその塩の基、ホスホン基およびその塩の基、カルボキシル基およびその塩の基、スルホンイミド基その塩の基の何れかが好ましい。更に好ましくは、スルホ基およびその塩の基であり、最も好ましくはスルホ基である。スルホ基であると、後述するように、当該フッ素系ポリマーを電解質膜として使用する場合、高いプロトン伝導性を確保でき、高い燃料電池性能を得ることができる。
【0050】
式(2)のイオン交換前駆基としては、スルホ基、ホスホン基、カルボキシル基の前駆体があげられ、具体的には、スルホ基、ホスホン基、カルボキシル基中の−OH基部分をアルコキシ基、アリーロキシ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のハロゲノ基で置換されたものが挙げられる。
【0051】
該アルコキシ基としては、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基であり、直鎖状または分岐鎖状アルコキシ基があげられ、具体的には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、デシルオキシ基などが挙げられる。
【0052】
該アリーロキシ基としては、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリーロキシ基であり、フェニルオキシ、o−メチルフェニルオキシ、m−メチルフェニルオキシ、p−メチルフェニルオキシ、o−メトキシフェニルオキシ、m−メトキシフェニルオキシ、p−メトキシフェニルオキシ、o-エトキシフェニルオキシ、m-エトキシフェニルオキシ、p-エトキシフェニルオキシ、o−フェノキシフェニルオキシ、m−フェノキシフェニルオキシ、p−フェノキシフェニルオキシ、o−クロロフェニルオキシ、m−クロロフェニルオキシ、p−クロロフェニルオキシ、o−ニトロフェニルオキシ、m−ニトロフェニルオキシ、p−ニトロフェニルオキシ、o−アミノフェニルオキシ、m−アミノフェニルオキシ、p−アミノフェニルオキシ基などの単環性アリールオキシ基などが挙げられる。
【0053】
上記式(1)で示される構造単位としては、下記式(5)で示される構造単位が好ましい。

式(5)
(式(5)中、X17〜X26はそれぞれ独立に−Fで示される基または−CF3で示される基を表す。E1は前記と同義である。a2、d2およびg2はそれぞれ独立に0または1を表し、b2、e2およびh2はそれぞれ独立に1〜8の整数を表し、c2およびf2はそれぞれ独立に0〜8の整数を表す。)
【0054】
a2〜h2の総和は、3〜20であることが好ましい。そのような構造として下記式(5−1)〜(5−7)を挙げることができる。中でも、a2〜h2の総和が5〜10であることが好ましく、そのような構造として(5−2)〜(5−5)、(5−7)を挙げることができる。

【0055】
式(5)に含有されるE1は、上述のものがあげられ、その好ましい例も同様である。。
【0056】
式(3)のRf3は直接結合、炭素数1〜100のパーフルオロアルキレン基または炭素数1〜100のパーフルオロアルキレン基と−O−とからなる2価の基を表す。好ましいRf3としては、炭素数1〜100のパーフルオロアルキレン基と−O−とからなる2価の基が挙げられる。Rf3の具体例としては、上述の式(1−1)〜(1−26)の構造を例示できる。
【0057】
式(3)の構造単位を有することにより、ポリマー中には、親水的な部分であるイオン交換基もしくはイオン交換前駆基に加えて、式(3)の構造単位に由来する疎水的な部位が存在することとなる。これによりポリマーの耐水性が向上し、燃料電池に用いる部材として好適なものとなる。
【0058】
具体的に、式(3)で表される構造単位として、次の(3−1)〜(3−17)の構造を例示できる。

【0059】
上記式(3)で示される構造単位としては、下記式(6)で示される構造単位が好ましい。

式(6)
(式(6)中、X60〜X69はそれぞれ独立に−Fで示される基または−CF3で示される基を表す。E2は前記と同義である。a3、d3およびg3はそれぞれ独立に0または1を表し、b3、e3およびh3はそれぞれ独立に1〜8の整数を表し、c3およびf3はそれぞれ独立に0〜8の整数を表す。)
【0060】
a5〜h5の総和は3〜20であることが好ましい。そのような構造として上記式(3−3)〜(3−16)を挙げることができる。より好ましくはa5〜h5の総和は5〜10であり、そのような構造として上記式(3−4)〜(3−8)、(3−11)〜(3−16)を挙げることができる。
【0061】
本発明のフッ素系ポリマーとしては、例えば、(200−1)〜(200−49)で表される構造単位の組合せを有するものを例示することができる。
【0062】

【0063】

【0064】

【0065】

【0066】

【0067】

【0068】

【0069】

【0070】

【0071】

【0072】
好ましくは(200−1)〜(200−6)、(200−17)〜(200−46)であり、より好ましくは(200−1)〜(200−6)、(200−23)〜(200−46)であり、更に好ましくは(200−23)〜(200−46)である。
【0073】
<フッ素系ポリマー前駆体およびフッ素系ポリマーの製造方法>
本発明のフッ素系ポリマーは、下記式(8)で示される構造単位と、下記式(9)で示される構造単位および下記式(10)で示される構造単位からなる群より選ばれる1種以上の構造単位とを有することを特徴とするフッ素系ポリマー前駆体を原料として製造することができる。


式(8)
(式(8)中、X30〜X42はそれぞれ独立に−Fで示される基または−CF3で示される基を表す。Q1は−Clで示される基、−Brで示される基または−Iで示される基を表す。a3、d3およびg3はそれぞれ独立に0または1を表し、b3、e3およびh3はそれぞれ独立に1〜8の整数を表し、c3,f3,およびh3はそれぞれ独立に0〜8の整数を表し、a3〜h3の整数の総和は5〜10である。)


式(9)
(式(9)中、X43〜X55はそれぞれ独立に−Fで示される基または−CF3で示される基を表す。E3はイオン交換基またはイオン交換前駆基を表す。a4、d4およびg4はそれぞれ独立に0または1の整数を表し、b4、e4およびh4はそれぞれ独立に1〜8の整数を表し、c4、f4およびh4はそれぞれ独立に0〜8の整数を表し、a4〜h4の整数の総和は5〜10である。)

(式(10)中、X56、X57、X58はそれぞれ独立に−Fで示される基または−CF3で示される基を表す。Rf4は、直接結合、炭素数1〜100のパーフルオロアルキレン基または炭素数1〜100のパーフルオロアルキレン基と−O−とからなる2価の基を表す。E4は−Fで示される基または−CF3で示される基を表す。)
【0074】
ここで、X30〜X32およびX43〜X45が全て−Fで示される基であることが好ましい。
【0075】
3はイオン交換基もしくはイオン交換前駆基を表すが、具体的には式(2)のものと同様なものを挙げることができ、その好ましい例も同様である。
【0076】
Rf4の具体例としては、前記式(3)中のRf3と同じ構造を示すことができ、その好ましい例も同様なものが挙げられる。
【0077】
上述の通り、本発明のフッ素系ポリマー前駆体としては、例えば、次の(300−1)〜(300−30)の構造を例示することができる。
【0078】

【0079】

【0080】

【0081】

【0082】
好ましくは、(300−1)〜(300−8)、(300−13)〜(300−20)、(300−25)〜(300−30)であり、より好ましくは(300−13)〜(300−20)、(300−25)〜(300−30)である。
【0083】
本発明のフッ素系ポリマーの製造方法として、以下の方法が挙げられる。
(製法1)前記式(1)で示される構造単位と、前記式(2)で示される構造単位および前記式(3)で示される構造単位からなる群から選ばれる1種以上の構造単位とを与える下記式(11)で示されるモノマーと、下記式(12)で示されるモノマーおよび下記式(3)示されるモノマーからなる群から選ばれる1種以上のモノマーとを共重合する方法(共重合法)。

(式(9)中、X1〜X3、Rf1およびZ1は前記と同義である。)


(式(10)中、X4〜X6、Rf2およびE1は前記と同義である。)

(式(10)中、X27〜X29、Rf3およびE2は前記と同義である。)
【0084】
(製法2)前記式(1)中のZ1基になり得る化合物および/もしくは前記式(2)中のE1基になり得る化合物と反応してZ1基および/もしくはE1基に変換し得る官能基含有構造単位を含むフッ素系ポリマー前駆体と、前記式(1)中のZ1基になり得る化合物および/もしくは前記式(2)中のE1基になり得る化合物とを高分子反応させる方法(高分子反応法)。
【0085】
本発明のフッ素系ポリマーの製造方法として、好ましくは高分子反応法が挙げられる。好ましい高分子反応法としては、前記式(1)中のZ1基になり得る化合物と反応してZ1基に変換し得る官能基含有構造単位を含むフッ素系ポリマー前駆体と、前記式(1)中のZ1基になり得る化合物とを高分子反応させる方法である。
【0086】
上記の高分子反応法におけるフッ素系ポリマー前駆体中のZ1基および/もしくはE1基に変換し得る官能基としては、クロロ、ブロモ、ヨード、フルオロカルボニル、クロロカルボニル、ブロモカルボニル、ヨードカルボニル、フルオロスルホニル、クロロスルホニル、ブロモスルホニル、ヨードスルホニル基が挙げられる。これらの官能基を含有する構造単位と前記式(2)で示される構造単位を持つフッ素系ポリマー前駆体が好ましく用いられる。
【0087】
フッ素系ポリマー前駆体の具体的な好ましい例の一つとして、前述のフッ素系ポリマー前駆体が挙げられる。
【0088】
高分子反応法における前記式(1)中のZ1基になり得る化合物としては、下記式(2−a)〜(2−g)などが挙げられる。

(式(2−a)〜(2−g)中、Ar1は芳香族基を表す。)
【0089】
Ar1の具体例およびその好ましい例は上述と同様である。
【0090】
高分子反応法の具体例として、上記のフッ素系ポリマー前駆体と上記式(2−a)〜(2−g)を反応させる方法が挙げられる。
【0091】
上記反応では溶媒を用いることができ、溶媒としては種々の溶媒を用いることができる。例えば、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、ベンゼンなどの炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)のようなエーテル溶媒、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、γ-ブチロラクトン(GBL)などの非プロトン性極性溶媒、あるいはジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの塩素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル、2H,3H-デカフルオロペンタン、エイコサフルオロノナン、ヘプタコサフルオロトリブチルアミン、ヘキサフルオロベンゼン、オクタデカフルオロオクタン、パーフルオロヘプタン、パーフルオロトリエチルアミン、1H,1H,10H,10H-ヘキサデカフロオロ-1,10-デカンジオール、1H,1H-ノナフルオロ-1-ペンタノール、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノール、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブタノール、ヘプタフルオロ酪酸メチルなどのフッ素系溶媒、水などが挙げられる。
【0092】
また、反応を促進させる為、反応を塩基性条件とすることもできる。塩基としては種々の塩基を用いることができ、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、アンモニア、などの無機塩基、トリエチルアミン、ピリジンなどの有機塩基、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどの金属水素化物、ブチルリチウム、メチルリチウムなどの有機金属などが挙げられる。また、塩基成分として、上記の(2−b)、(2−c)を塩基として用いることもできる。
【0093】
具体的な高分子反応法の反応の一例を以下に示す。

【0094】
加水分解可能なイオン交換前駆体基やイオン交換基の塩の基は、加水分解、酸処理などにより酸型のイオン交換基へと誘導することができる。一例を以下に示す。

【0095】

【0096】
本発明のフッ素系ポリマー前駆体の製造方法としては前記式(8)で示される構造単位と、下記式(9)で示される構造単位および下記式(10)で示される構造単位からなる群より選ばれる1種以上の構造単位とを与える前記式(14)で示されるモノマーと、下記式(15)で示されるモノマーおよび下記式(13)で示されるモノマーからなる群より選ばれる1種以上のモノマーを共重合する方法が挙げられる。

式(14)
(式(14)において、X30〜X42、Q1、a3〜h3は前記と同義であり、その好ましい例も同様である。)


式(15)
(式(15)において、X43〜X55、E3、a3〜h3は前記と同義であり、その好ましい例も同様である。)
【0097】
前記式(14)で示されるフッ素モノマーとしては以下のものを例示することができる。
CF2=CFOCF2CF21
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF21
CF2=CFO(CF251
CF2=CFOCF2CF2CF2OCF2CF21
CF2=CFCF2OCF2CF21
CF2=CFCF21
CF2=CFCF2CF21
CF=CF(CF23OCF2CF21
【0098】
前記式(15)で示されるフッ素モノマーとしては以下のものを例示することができる。
CF2=CFO(CF23OCF(CF3)COF
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2
CF2=CFO(CF25COF
CF2=CFO(CF25COOCH3
CF2=CFOCF2CF(CF2)O(CF22COOCH3
CF2=CFO(CF23OCF(CF3)COOCH3
CF2=CFCF2OCF2CF2COF
CF2=CFCF2OCF2CF2COOCH3
【0099】
前記式(13)で示されるフッ素モノマーとしては以下のものを例示することができる。
CF2=CFOCF2OCF3
CF2=CFOCF2CF2(OCF25OCF3
CF2=CFOCF2CF2(OCF24OCF3
CF2=CFOCF2CF2(OCF23OCF3
CF2=CFOCF2CF2(OCF22OCF3
CF2=CFO(CF23OCF3
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CF3
CF2=CFOCF2CF2CF3
CF2=CFCF2OCF2OCF3
CF2=CFCF2OCF2CF2(OCF25OCF3
CF2=CFCF2OCF2CF2(OCF24OCF3
CF2=CFCF2OCF2CF2(OCF23OCF3
CF2=CFCF2OCF2CF2(OCF22OCF3
CF2=CFCF2OCF2CF2OCF2OCF3
CF2=CFCF2O(CF23OCF3
CF2=CFCF2OCF3
CF2=CF2
CF2=CF(CF3
【0100】
フッ素系ポリマー前駆体の製造におけるモノマーの種類は2つ以上用いればよく、その共重合比は任意の広い範囲で選択できる。
【0101】
該共重合法としては、たとえばラジカル共重合法、アニオン共重合法、カチオン共重合などの方法が採用できる。また、重合形態としては、溶液重合、懸濁重合、乳化重合およびバルク重合などが採用できる。得られるフッ素系ポリマー前駆体は、ブロック共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体、ランダム共重合体であってもよい。
【0102】
ラジカル重合を開始するには、ラジカル的に進行するものであれば手段は何ら制限されないが、たとえば有機または無機ラジカル重合開始剤、熱、光、あるいは電離放射線などの活性エネルギー線によって開始される。重合の形態も溶液重合、バルク重合、懸濁重合、乳化重合などを用いることができる。また、分子量は重合に用いるモノマーの濃度、重合開始剤の濃度、連鎖移動剤の濃度、温度などによって制御される。共重合体組成は仕込みモノマーの組成により制御可能である。
【0103】
<高分子電解質>
本発明に用いられる高分子電解質は、以上で説明したフッ素系ポリマーがイオン交換基を有する場合はその高分子電解質を単独で膜化して高分子電解質膜を得ることができる。あるいは、フッ素系ポリマーのイオン交換基の存在に関わらず、フッ素系ポリマーと、別の一種以上の高分子電解質との高分子電解質組成物を膜化し、高分子電解質膜とすることができる。
【0104】
前記のフッ素系ポリマーと組成物として組み合せる高分子電解質としては、Nafion(デュポン社登録商標)、旭化成製のAciplex(旭化成登録商標)、旭硝子製のFlemion(旭硝子登録商標)などのフッ素系高分子電解質や、脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素にスルホ基(−SO3H)、カルボキシル基(−COOH)、ホスホン基(−PO32)、スルホニルイミド基(−SO2NHSO2−)、フェノール性水酸基等の酸性基を導入した炭化水素系高分子電解質などが用いられる。ただし、炭化水素系高分子電解質はラジカル耐性が低いことが懸念されるので、高分子電解質が炭化水素系である場合、本発明が奏する、優れたラジカル耐性を有する高分子電解質膜等が得られるという効果をより享受できる。また、フッ素系高分子電解質に比して、耐熱性等の観点からも炭化水素系高分子電解質は有利である。
【0105】
炭化水素系高分子電解質としては、酸性基を有する構造単位と、イオン交換基(酸性基及び塩基性基)を有さない構造単位とを有するものであると、高分子電解質膜としたとき、耐水性や機械強度に優れる傾向があるので、好ましい。この2種の構造単位の共重合様式は、ランダム共重合、交互共重合、ブロック共重合、グラフト共重合の何れでもよく、これらの共重合様式の組み合わせでもよい。
なお、炭化水素系高分子電解質とは、当該高分子電解質を構成する元素重量含有比で表してハロゲン原子が15重量%以下である高分子電解質を意味する。かかる炭化水素系高分子電解質は、前記のフッ素系高分子電解質と比較して安価であるという利点を有するため、より好ましい、特に好適な炭化水素系高分子電解質とは実質的にハロゲン原子を含有していないものであり、このような炭化水素系高分子電解質は燃料電池の作動時に、ハロゲン化水素を発生して、他の部材を腐食させたりする恐れがない。
【0106】
該炭化水素系高分子電解質の中でも、芳香族系高分子電解質膜は、より機械強度に優れ、高耐熱性であることからも好ましい。
【0107】
該炭化水素系高分子電解質は、主として酸性基を有する構造単位からなるセグメント(酸性基を有するセグメント)及び、主としてイオン交換基を有さない構造単位からなるセグメント(イオン交換基を実質的に有さないセグメント)とを有し、共重合様式がブロック共重合又はグラフト共重合である高分子電解質であると、後述するミクロ相分離構造の高分子電解質膜を形成し易い傾向があり、加えて、酸性基を有するセグメントが密な相が膜厚方向に連続相を形成できれば、よりプロトン伝導性に優れる高分子電解質膜が得られるといった利点があるので好ましい。
【0108】
ここで、「酸性基を有するセグメント」とは、酸性基が、該セグメントを構成する構造単位1個あたりで平均0.5個以上含まれているセグメントであることを意味し、構造単位1個あたりで平均1.0個以上含まれているとより好ましい。
一方、「イオン交換基を実質的に有しないセグメント」とは、イオン交換基が、該セグメントを構成する構造単位1個あたりで平均0.5個未満であるセグメントであることを意味し、構造単位1個あたりで平均0.1個以下であるとより好ましく、平均0.05個以下であるとさらに好ましい。
典型的には、酸性基を有するセグメントとイオン交換基を実質的に有さないセグメントとが、直接結合で結合されているか、適当な原子又は原子団で結合された形態のブロック共重合体である。
【0109】
本発明に適用する高分子電解質においては、プロトン伝導性を担う酸性基の導入量は、イオン交換容量で表して、0.5meq/g〜5.5meq/gが好ましく、更に好ましくは1.0meq/g〜5.0meq/gである。イオン交換容量が前記の範囲であると、燃料電池用高分子電解質として、十分なプロトン伝導性が発現され、比較的耐水性も良好であるという利点もある。
【0110】
特に好ましい高分子電解質としては、下記式(11a)、(12a)、(13a)又は(14a)[以下、場合により、「式(11a)〜(14a)」と呼ぶことがある]



(式中、Ar1〜Ar9は、互いに独立に、主鎖に芳香族環を有し、さらに芳香族環を有する側鎖を有してもよい2価の芳香族基を表す。該主鎖の芳香族環か側鎖の芳香族環の少なくとも1つが該芳香族環に直接結合したイオン交換基を有する。
Z、Z’は互いに独立にCO、SO2のいずれかを表し、X、X’、X”は互いに独立にO、Sのいずれかを表す。Yは直接結合もしくは下記一般式(15)で表される基を表す。pは0、1又は2を表し、q、rは互いに独立に1、2又は3を表す。)
で示されるイオン交換基を有するセグメントと、
下記式(11b)、(12b)、(13b)又は(14b)[以下、場合により、「式(11b)〜(14b)」と呼ぶことがある。]


(式中、Ar11〜Ar19は、互いに独立に側鎖としての置換基を有していてもよい2価の芳香族炭素基を表す。Z、Z’は互いに独立にCO、SO2のいずれかを表し、X、X’、X”は互いに独立にO、Sのいずれかを表す。Yは直接もしくは下記一般式(15)で表される基を表す。p’は0、1又は2を表し、q’、r’は互いに独立に1、2又は3を表す。)
で表される、イオン交換基を実質的に有しないセグメントと、を有し、その共重合様式がブロック共重合又はグラフト共重合である高分子電解質が例示される。

(式中、R1及びR2は互いに独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基を表し、R1とR2とが連結して環を形成していてもよい。)
【0111】
式(11a)〜(14a)におけるAr1〜Ar9は、2価の芳香族基を表す。2価の芳香族基としては、例えば、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン等の2価の単環性芳香族基、1,3−ナフタレンジイル、1,4−ナフタレンジイル、1,5−ナフタレンジイル、1,6−ナフタレンジイル、1,7−ナフタレンジイル、2,6−ナフタレンジイル、2,7−ナフタレンジイル等の2価の縮環系芳香族基、ピリジンジイル、キノキサリンジイル、チオフェンジイル等のヘテロ芳香族基等が挙げられる。好ましくは2価の単環性芳香族基である。
【0112】
また、式(11a)〜(14a)におけるAr1〜Ar9は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基で置換されていてもよい。
【0113】
式(11a)〜(14a)におけるAr1〜Ar9は、主鎖を構成する芳香環に少なくとも一つのイオン交換基を有する。該イオン交換基として、上述のように酸性基が好ましく、酸性基の中でも、スルホ基がより好ましい。
【0114】
この式(11a)〜(14a)から繰り返し単位からなるセグメントの重合度は5以上であり、5〜1000が好ましく、10〜500であるとさらに好ましい。この重合度が5以上であれば、燃料電池用の高分子電解質として、十分なプロトン伝導度を発現し、この重合度が1000以下であれば、製造がより容易である利点がある。
【0115】
一方、式(11b)〜(14b)におけるAr11〜Ar19は、互いに独立な2価の芳香族基を表す。2価の芳香族基としては、例えば、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン等の2価の単環性芳香族基、1,3−ナフタレンジイル、1,4−ナフタレンジイル、1,5−ナフタレンジイル、1,6−ナフタレンジイル、1,7−ナフタレンジイル、2,6−ナフタレンジイル、2,7−ナフタレンジイル等の2価の縮環系芳香族基、ピリジンジイル、キノキサリンジイル、チオフェンジイル等のヘテロ芳香族基等が挙げられる。好ましくは2価の単環性芳香族基である。
また、Ar11〜Ar18は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基で置換されていてもよい。なお、ここでいう「置換基を有していてもよい」の置換基とはイオン交換基を包含するものではない。
【0116】
ここで、前述の2価の芳香族基(式(11a)〜(14a)におけるAr1〜Ar9及び式(11b)〜(14b)におけるAr11〜Ar19)の置換基を簡単に例示しておく。アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基等が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。アリール基としてはフェニル基等が挙げられ、アリールオキシ基としてはフェノキシ基等が挙げられる。アシル基としては、アセチル基、ブチリル基等が挙げられる。
【0117】
また、式(11b)〜(14b)から選ばれる構造単位からなるセグメントの重合度は5以上であり、5〜100が好ましく、5〜80がさらに好ましい。この重合度が5以上であれば、燃料電池用の高分子電解質として、十分な機械強度を有し、該重合度が100以下であれば、製造がより容易であるので好ましい。
【0118】
このように、本発明のMEAに適用する電解質膜において、好適な高分子電解質は、前記式(11a)〜(14a)で表される構造単位からなる、イオン交換基を有するセグメントと、前記式(11a)〜(14a)で表される構造単位からなる、イオン交換基を実質的に有しないセグメントとを有するものであるが、当該高分子電解質の製造上の容易さを勘案すると、ブロック共重合体が好ましい。さらに好適なブロック共重合体の組み合わせを挙げると、下記の表1の<ア>〜<ク>に示すセグメントの組み合わせを挙げることができる。
【0119】
【表1】

【0120】
更に好ましくは、前記の<イ>、<ウ>、<エ>、<キ>又は<ク>であり、<キ>又は<ク>が特に好ましい。
【0121】
具体的に、好適なブロック共重合体を挙げると、以下に示すイオン交換基を有する繰り返し単位から選ばれる1種又は2種以上の繰り返し単位を含むセグメント(イオン交換基を有するセグメント)と、以下に示すイオン交換基を有しない繰り返し単位から選ばれる1種又は2種以上の繰り返し単位を含むセグメント(イオン交換基を実質的に有しないセグメント)と、からなるブロック共重合体を挙げることができる。なお、イオン交換基を有する繰り返し単位におけるイオン交換基は、好適なスルホ基により例示している。
また、両セグメント同士は直接結合している形態でもよく、適当な原子又は原子団で連結している形態でもよい。ここでいうセグメント同士を結合する原子又は原子団の典型的なものとしては、2価の芳香族基、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はこれらを組み合わせてなる2価の基を挙げることができる。
【0122】
(イオン交換基を有する繰り返し単位)



【0123】
(イオン交換基を有しない繰り返し単位)

【0124】
前記例示の中でも、イオン交換基を有するセグメントを構成する繰り返し単位としては、(14a−10)及び/又は(14a−11)及び/又は(14a−12)が好ましく、その中でも(14a−11)及び/又は(14a−12)が特に好ましい。このような繰り返し単位を含むセグメントを有する高分子電解質、特に、このような繰り返し単位からなるセグメントを有する高分子電解質は、優れたイオン伝導性を発現できるものであり、当該セグメントがポリアリーレン構造となるために化学的安定性も比較的良好となる傾向がある。イオン交換基を有しないセグメントを構成する繰り返し単位としては、(14b−2)及び/又は(14b−3)及び/又は(14b−10)及び/又は(14b−13)が特に好ましい。
【0125】
<高分子電解質膜>
本発明の高分子電解質膜は、上記のフッ素系ポリマーを含むことを特徴とする。高分子電解質膜は、以下の(i)〜(iv)の工程を含む溶液キャスト法により製造される高分子電解質膜が好ましい。
(i)上述のような高分子電解質および/または高分子電解質組成物を、高分子電解質および/または高分子電解質組成物を溶解し得る有機溶媒に溶解し、高分子電解質溶液を調製する工程;
(ii)前記(i)で得られた高分子溶液を、比較的平滑な表面を有する支持基材上に流延塗工し、該支持基材上に高分子電解質流延膜を形成する工程;
(iii)前記(ii)で支持基材上に形成された高分子電解質流延膜から、前記有機溶媒を除去して、該支持基材上に高分子電解質膜を形成する工程;
(iv)前記(iii)の工程を行った後、支持基材と高分子電解質膜とを分離する工程
【0126】
ここで、前記溶液キャスト法に関する各工程(i)〜(iv)に関し順次説明する。
まず、(i)では上述のように高分子電解質溶液を調製する。ここで該高分子電解質溶液調製に使用する有機溶媒としては、使用する1種又は2種以上の高分子電解質を溶解し得るものが選ばれる。また、高分子電解質および/または高分子電解質組成物に加えて、添加剤などの成分を用いる場合は、これら他の成分も共に溶解し得るものが好ましい。
該有機溶媒は、使用する高分子電解質および/または高分子電解質組成物を溶解し得る溶媒であり、具体的には、この高分子電解質および/または高分子電解質組成物を、25℃で1重量%以上の濃度で溶解し得る有機溶媒を意味する。好適には、高分子電解質および/または高分子電解質組成物を5〜50重量%の濃度で溶解し得る有機溶媒を用いることが好ましい。
また、この有機溶媒は、前記支持基材上に前記高分子電解質流延膜を形成した後に、加熱処理により除去し得る程度の揮発性が必要である。ただし、該有機溶媒は少なくとも1種、101.3kPa(1気圧)における沸点が150℃以上である有機溶媒を含むことが好ましい。前記高分子電解質および/または高分子電解質組成物を溶解し得る有機溶媒として沸点が150℃以下の有機溶媒のみを用いると、後述する(iii)で高分子電解質流延膜から有機溶媒を除去して高分子電解質膜を形成しようとすると、形成した高分子電解質膜に凹凸状の外観不良が発生するおそれがある。これは、沸点が150℃以上である有機溶媒では、前記高分子電解質流延膜から急激に有機溶媒が揮発してしまうためである。
【0127】
前記高分子電解質溶液の調製に好適な有機溶媒を例示すると、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、γ-ブチロラクトン(GBL)などの非プロトン性極性溶媒、あるいはジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの塩素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好適に用いられる。これらは単独で用いることもできるが、必要に応じて2種以上の有機溶媒を混合して用いることもできる。中でも、非プロトン性極性溶媒を含む有機溶媒が好ましく、実質的に非プロトン性極性溶媒からなる有機溶媒が特に好ましい。ここでいう実質的に非プロトン性極性溶媒からなる有機溶媒とは企図せず含有される水分などの存在を排除するものではない。該非プロトン性極性溶媒は、支持基材に対して親和性が比較的小さく、該支持基材に非プロトン性極性溶媒が吸収され難いという利点もある。また、上述の好適な高分子電解質であるブロック共重合体の溶解性が高いという点では、該非プロトン性極性溶媒の中でも、DMSO、DMF、DMAc、NMP、GBL又はこれらから選ばれる2種以上の混合溶媒が好ましい。
【0128】
次に、(ii)の工程について説明する。
この工程は、前記(i)で得られた高分子電解質溶液を支持基材上に流延塗工する工程である。該流延塗工の方法としては、ローラーコート法、スプレイコート法、カーテンコート法、スロットコート法、スクリーン印刷法などの各種手段を用いることができるが、好ましくは、ダイと呼ばれる一定クリアランスが設けられた金型により、所定の幅及び厚みに賦型する手段が挙げられる。このようにして支持基材上に形成された高分子電解質流延膜は、塗工時に高分子電解質溶液中の有機溶媒の一部が揮発するために膜の形状を有するものとなる。この際の高分子電解質流延膜の膜厚は、3〜50μmになるようにしておくことが好ましい。このような膜厚の高分子電解質流延膜を得るには、使用する高分子電解質溶液の高分子電解質濃度、塗工装置の塗出量などを適宜調整すればよい。また、該支持基材が連続的に走行する基材である場合は、その支持基材の走行速度等で調節することもできる。
【0129】
(ii)で使用する支持基材としては、流延塗工に供する高分子電解質溶液に対して十分な耐久性を有し、後述する(iii)の工程での処理条件に対しても耐久性を有する材質からなるものが選択される。この場合の耐久性とは、高分子電解質溶液によって支持基材自身が実質的に溶け出さないことや、(iii)の工程の処理条件により、支持基材自身が膨潤や収縮を起こさず寸法安定性がよいことなどを意味するものである。
【0130】
該支持基材としては、たとえばガラス板;SUS箔、銅箔等の金属箔;ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム等のプラスチックフィルムを挙げることができる。また、このプラスチックフィルムには、上述したような耐久性を著しく損なわない範囲で、そのフィルム表面に対し、UV処理、離型処理、エンボス処理などの表面処理を行ってもよい。
【0131】
次に(iii)の工程に関し説明する。
この工程は前記(ii)において前記支持基材上に形成された高分子電解質流延膜に含有される前記有機溶媒を除去して、該支持基材上に高分子電解質膜を形成する工程である。このような除去には、乾燥又は洗浄溶媒による洗浄が推奨される。このような乾燥と洗浄とを組み合わせて、前記有機溶媒を除去することがより一層好ましく、乾燥と洗浄とを組み合わせる場合には、まず乾燥を行って、前記支持基材上に形成された高分子電解質流延膜に含有される前記有機溶媒のほとんどを除去した後、洗浄溶媒による洗浄を行うことが特に好ましい。
【0132】
ここでは、(iii)として好適な方法である乾燥と洗浄とを、この順で実施することについて詳述する。(ii)を経て得られた支持基材上に形成された高分子電解質流延膜から有機溶媒を乾燥除去するには、加熱、減圧、通風などの処理を採用することができるが、生産性が良好である点と、操作が容易である点で加熱処理が好ましい。この場合、高分子電解質流延膜が形成された支持基材(以下、場合により「第1の積層フィルム」という)を、直接加熱、温風接触などにより加熱処理する。高分子電解質流延膜中の高分子電解質を著しく損なわない点で、温風処理が特に好ましい。たとえば、該第1の積層フィルムが長尺状であり、かかる長尺状の第1の積層フィルムを連続的に処理する場合は、乾燥炉中に該第1の積層フィルムを通過させればよい。このときの乾燥炉は、40〜150℃の範囲、好ましくは50〜140℃に温度設定された温風を、該第1の積層フィルムの通過方向に対し垂直方向及び/又は対向方向に沿って送風する。こうすることにより、支持基材上にある高分子電解質流延膜から有機溶媒等の揮発成分が乾燥(蒸発)除去され、該支持基材上に高分子電解質膜が形成された第2の積層フィルムが形成する。
【0133】
このようにして得られた第2の積層フィルムの高分子電解質膜中には、まだ若干量の有機溶媒が含有されているため、この有機溶媒を洗浄溶媒で洗浄する。洗浄溶媒で洗浄することにより、外観等に優れる高分子電解質膜が得られ易い。前記高分子電解質溶液の調製において好適な有機溶媒である、DMSO、DMF、DMAc、NMP又はGBL、あるいはこれらの組合せからなる混合溶媒を使用した場合、前記洗浄溶媒には純水、特に超純水を使用することが好ましい。
【0134】
上述のように、第1の積層フィルムが長尺状であって連続的に走行している場合、乾燥炉を通過して連続的に形成された第2の積層フィルムは、たとえば洗浄溶媒を充填した洗浄槽中を通過させることにより洗浄することができる。また、乾燥炉を通過して連続的に形成された第2の積層フィルムを適当な巻芯に巻き取って巻取り体として後、この巻取り体を、洗浄処理を担う洗浄装置へと移し変え、移し変えた巻取り体から第2の積層フィルムを洗浄槽へと送り出す形式で洗浄を行うこともできる。こうすることで、第2の積層フィルムにある高分子電解質膜の有機溶媒含有量はより一層低減することが可能である。
【0135】
かくして得られた第2の積層フィルムから支持基材を剥離などによって除去することにより高分子電解質膜は得られる。この高分子電解質膜は好適な溶液キャスト法により得られたものであるため、実質的に無多孔質のものとなる。なお、ここでいう実質的に無多孔質とは、ボイドなどの微小貫通孔が高分子電解質膜に形成されていないことを意味する。ただし、この高分子電解質膜は、前記酸素透過係数が前記の範囲を満足する程度の少数量のボイド又は小さい径のボイドであれば、当該ボイドを有するような膜であってもよい。
また、上述の溶液キャスト法による高分子電解質膜製造では、主として支持基材が連続的に走行している場合を説明したが、無論枚葉の支持基材を用いても、高分子電解質膜を得ることができる。この場合、枚葉の支持基材上に塗工された高分子電解質溶液は、適当な乾燥炉中に保管することで、有機溶媒を除去することができるし、このようにして得られた枚葉の第2の積層フィルムは、洗浄溶媒を備えた洗浄槽に浸漬等することで洗浄処理を行うことができる。
また、洗浄後の第2の積層フィルムは、支持基材を除去した後、残存又は付着している洗浄溶媒を乾燥除去させてもよいし、洗浄後の第2の積層フィルムをそのまま加熱等することで残存又は付着している洗浄溶媒を乾燥除去した後、支持基材を除去してもよい。
【0136】
以上、前記溶液キャスト法による実質的に無多孔質の高分子電解質膜の製造方法を説明したが、既述のとおり、この高分子電解質膜には高分子電解質以外の成分(その他の成分)を含有させることができる。
その他の成分としては、通常の高分子に使用される可塑剤、安定剤、離型剤、保水剤等の添加剤が挙げられる。
なお、これらその他の成分は、溶液キャスト法を用いる際に、使用する高分子電解質溶液を調製する際に、該高分子電解質溶液にこれらの成分を添加しておけばよい。
【0137】
<燃料電池>
次に、前記本発明の高分子電解質膜を用いてなる燃料電池について説明する。本発明の燃料電池は、本発明の高分子電解質膜の両面に、触媒および集電体としての導電性物質を接合することにより製造することができる。
ここで触媒としては、水素又は酸素との酸化還元反応を活性化できるものであれば特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、白金又は白金系合金の微粒子を触媒として用いることが好ましい。白金又は白金系合金の微粒子はしばしば活性炭や黒鉛などの粒子状または繊維状のカーボンに担持されて用いられることもある。
また、カーボンに担持された白金又は白金系合金を、パーフルオロアルキルスルホン酸樹脂の溶剤と共に混合してペースト化したもの(触媒インク)を、ガス拡散層に塗布・乾燥することにより、ガス拡散層と積層一体化した触媒層が得られる。得られた触媒層を、高分子電解質膜に接合させるようにしれば、燃料電池用の膜−電極接合体を得ることができる。具体的な方法としては例えば、J. Electrochem. Soc.: Electrochemical Science and Technology, 1988, 135(9), 2209 に記載されている方法等の公知の方法を用いることができる。また、触媒インクを、高分子電解質膜に塗布・乾燥して、この膜の表面上に、直接触媒層を形成させても、燃料電池用の膜−電極接合体を得ることができる。
ここで、触媒層に使用する高分子電解質として、前記のパーフルオロアルキルスルホン酸樹脂の代わりに、本発明の高分子電解質および/または高分子電解質組成物を用い、触媒組成物とすることもできる。この触媒組成物を用いて得られる触媒層は、前記の高分子電解質膜と同様に、良好な長期安定性を発現できるため、触媒層として好適である。
集電体としての導電性物質に関しても公知の材料を用いることができるが、多孔質性のカーボン織布、カーボン不織布またはカーボンペーパーが、原料ガスを触媒へ効率的に輸送するために好ましい。
このようにして製造された本発明の燃料電池は、燃料として水素ガス、改質水素ガス、メタノールを用いる各種の形式で使用可能である。
【実施例】
【0138】
以下に本発明を実施例により説明する。
【0139】
実施例1<フッ素系ポリマー前駆体Aの製造>
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2F、CF2=CFO(CF25I、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CF3の混合物をラジカル重合させることにより、下記式(300−15)で示される構造単位を有するフッ素系ポリマー前駆体Aを得ることができる。


【0140】
実施例2<フッ素系ポリマーAの製造>
フッ素系ポリマー前駆体Aにフェノチアジンを反応させ、加水分解することで、下記式(200−23)で示される構造単位を有するフッ素系ポリマーAを得ることができる。


【0141】
実施例3<フッ素系ポリマーAを含む膜の製造>
高分子電解質としては、特開2007−284653号公報記載の方法を参考にして、スミカエクセルPES 5200P(住友化学株式会社製、Mw=73,000)を使用し、下記

で示される繰り返し単位からなる、スルホン酸基を有するセグメント(イオン性セグメント)と、下記



で示される、非イオン性セグメントとを有するブロック共重合体A(イオン交換容量=2.50meq/g、Mw=340,000、Mn=160,000)を準備する。このブロック共重合体Aと、上記フッ素系ポリマーAとを、ジメチルスルホキシドに約8.5重量%の濃度(ブロック共重合体A/フッ素系ポリマーAの重量比=95重量%/5重量%)になるように溶解させて、高分子電解質溶液を調製する。次いで、この高分子電解質溶液をPET基材上に均一に塗り広げ、その後高分子電解質溶液を80℃で常圧乾燥する。得られる乾燥塗膜を2N硫酸に浸漬、洗浄した後、イオン交換水で洗浄し、更に常温乾燥し、PET基材から剥離することで高分子電解質膜Aを得ることができる。
【0142】
実施例4<フッ素系ポリマーAを含む膜の燃料電池評価>
(触媒インクの製造)
市販の5重量%ナフィオン溶液(溶媒:水と低級アルコールの混合物)11.4mLに、白金が担持された白金担持カーボン(SA50BK、エヌ・イー・ケムキャット製、白金含有量;50重量%)を1.00g投入し、さらにエタノールを50.20g、水を7.04g加える。得られた混合物を1時間超音波処理した後、スターラーで5時間攪拌して触媒インクを得ることができる。
【0143】
(膜−電極接合体の製造)
次に、高分子電解質膜Aの片面の中央部における5.2cm角の領域に、スプレー法により上記の触媒インクを塗布する。この際、吐出口から膜までの距離は6cmとし、ステージ温度は75℃に設定する。同様の方法で8回の重ね塗りを行った後、塗布物をステージ上に15分間放置し、これにより溶媒を除去してアノード触媒層を形成させる。得られたアノード触媒層は、その組成と塗布重量から算出して0.6mg/cm2の白金を含有する。続いて、高分子電解質膜のアノード触媒層と反対側の面にも同様に触媒インクを塗布して、0.6mg/cm2の白金を含むカソード触媒層を形成できる。これにより、膜−電極接合体を得ることができる。
【0144】
(燃料電池セルの製造)
市販のJARI標準セルを用いて燃料電池セルを製造できる。すなわち、上記の膜−電極接合体の両外側に、ガス拡散層としてカーボンクロスと、ガス通路用の溝を切削加工したカーボン製セパレータとをこの順で配置し、さらにその外側に集電体及びエンドプレートを順に配置し、これらをボルトで締め付けることによって、有効電極面積25cm2の燃料電池セルを製造できる。
【0145】
(燃料電池セルの特性評価[負荷変動試験])
得られた燃料電池セルを80℃に保ちながら、低加湿状態の水素(70mL/分、背圧0.1MPaG)と低加湿状態の空気(174mL/分、背圧0.05MPaG)をセルに導入し、開回路と一定電流での負荷変動試験を行うことで、高分子電解質膜や燃料電池セルの長期安定性を評価する。この条件で燃料電池セルを200時間作動させた後、膜−電極接合体を取り出してエタノール/水の混合溶液に投入し、さらに超音波処理することで触媒層を取り除く。そして、残った高分子電解質膜Aの分子量をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定する。試験前後での分子量の維持率を算出すると、90〜100%であり、高分子電解質膜Aは高い安定性を示すことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される構造単位と、下記式(2)で示される構造単位および下記式(3)で示される構造単位からなる群より選ばれる1種以上の構造単位とを有することを特徴とするフッ素系ポリマー。

(式(1)中、X1〜X3はそれぞれ独立に−Fで示される基または−CF3で示される基を表す。Rf1は炭素数1〜100のパーフルオロアルキレン基または炭素数1〜100のパーフルオロアルキレン基と−O−とからなる2価の基を表す。Z1は下記式(1−a)〜(1−h)で示される基のいずれかを表す。

(式(1−a)〜(1−h)中、Y1は直接結合、−CO−で示される基または−SO2−で示される基を表す。Ar1は芳香族基を表す。該炭化水素系芳香族基は置換基を有していてもよい。))

(式(2)中、X4〜X6はそれぞれ独立に−Fで示される基または−CF3で示される基を表す。Rf2は直接結合、炭素数1〜100のパーフルオロアルキレン基または炭素数1〜100のパーフルオロアルキレン基と−O−とからなる2価の基を表す。E1はイオン交換基またはイオン交換前駆基を表す。)

(式(3)中、X27〜X29はそれぞれ独立に−Fで示される基または−CF3で示される基を表す。Rf3は直接結合、炭素数1〜100のパーフルオロアルキレン基または炭素数1〜100のパーフルオロアルキレン基と−O−とからなる2価の基を表す。E2は−Fで示される基または−CF3で示される基を表す。)
【請求項2】
上記式(1)で示される構造単位が、下記式(4)で示される構造単位であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素系ポリマー。

式(4)
(式(4)中、X7〜X16はそれぞれ独立に−Fで示される基または−CF3で示される基を表す。Z1は前記と同義である。a1、d1およびg1はそれぞれ独立に0または1を表し、b1、e1およびh1はそれぞれ独立に1〜8の整数を表し、c1およびf1はそれぞれ独立に0〜8の整数を表す。)
【請求項3】
式(4)における、a1〜h1の総和が5〜10であることを特徴とする請求項2に記載のフッ素系ポリマー。
【請求項4】
上記式(1)で示される構造単位と、上記式(2)で示される構造単位とを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフッ素系ポリマー。
【請求項5】
上記式(2)で示される構造単位が、下記式(5)で示される構造単位であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフッ素系ポリマー。

式(5)
(式(5)中、X17〜X26はそれぞれ独立に−Fで示される基または−CF3で示される基を表す。E1は前記と同義である。a2、d2およびg2はそれぞれ独立に0または1を表し、b2、e2およびh2はそれぞれ独立に1〜8の整数を表し、c2およびf2はそれぞれ独立に0〜8の整数を表す。)
【請求項6】
上記E1がスルホ基およびその塩の基、ホスホン基およびその塩の基、カルボキシル基およびその塩の基、並びに、スルホンイミド基およびその塩の基からなる群より選ばれる1種以上の基であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のフッ素系ポリマー。
【請求項7】
上記E1がスルホ基およびその塩の基からなる群より選ばれる1種以上の基であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のフッ素系ポリマー。
【請求項8】
式(5)における、a2〜h2の総和が5〜10であることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のフッ素系ポリマー。
【請求項9】
上記式(1)で示される構造単位と、上記式(3)で示される構造単位とを有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のフッ素系ポリマー。
【請求項10】
上記式(3)で示される構造単位が、下記式(6)で示される構造単位であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のフッ素系ポリマー。

式(6)
(式(6)中、X60〜X69はそれぞれ独立に−Fで示される基または−CF3で示される基を表す。E2は前記と同義である。a3、d3およびg3はそれぞれ独立に0または1を表し、b3、e3およびh3はそれぞれ独立に1〜8の整数を表し、c3およびf3はそれぞれ独立に0〜8の整数を表す。)
【請求項11】
式(6)における、a5〜h5の総和が5〜10であることを特徴とする請求項10に記載のフッ素系ポリマー。
【請求項12】
1が−S−で示される基、−S+=で示される基および−SO−で示される基からなる群より選ばれる1種以上の基を含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のフッ素系ポリマー。
【請求項13】
Ar1が環状構造を有し、該環内に−S−で示される基、−S+=で示される基、および−SO−で示される基からなる群より選ばれる1種以上の基を有し、且つ、該環内に窒素原子を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のフッ素系ポリマー。
【請求項14】
Ar1が下記式(7)で示される炭化水素系芳香族基であることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のフッ素系ポリマー。

(式(7)中、R2〜R9はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、ホルミル基、メルカプト基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のモノアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のジアリールアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数4〜20のアロイル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基または置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基を表わす。)
【請求項15】
下記式(8)で示される構造単位と、下記式(9)で示される構造単位および下記式(10)で示される構造単位からなる群より選ばれる1種以上の構造単位とを有することを特徴とするフッ素系ポリマー前駆体。


式(8)
(式(8)中、X30〜X42はそれぞれ独立に−Fで示される基または−CF3で示される基を表す。Q1は−Clで示される基、−Brで示される基または−Iで示される基を表す。a3、d3およびg3はそれぞれ独立に0または1を表し、b3、e3およびh3はそれぞれ独立に1〜8の整数を表し、c3,f3,およびh3はそれぞれ独立に0〜8の整数を表し、a3〜h3の整数の総和は5〜10である。)


式(9)
(式(9)中、X43〜X55はそれぞれ独立に−Fで示される基または−CF3で示される基を表す。E3はイオン交換基またはイオン交換前駆基を表す。a4、d4およびg4はそれぞれ独立に0または1の整数を表し、b4、e4およびh4はそれぞれ独立に1〜8の整数を表し、c4、f4およびh4はそれぞれ独立に0〜8の整数を表し、a4〜h4の整数の総和は5〜10である。)

(式(10)中、X56、X57、X58はそれぞれ独立に−Fで示される基または−CF3で示される基を表す。Rf4は、直接結合、炭素数1〜100のパーフルオロアルキレン基または炭素数1〜100のパーフルオロアルキレン基と−O−とからなる2価の基を表す。E4は−Fで示される基または−CF3で示される基を表す。)
【請求項16】
30〜X32およびX43〜X45が全て−Fで示される基であることを特徴とする請求項15に記載のフッ素系ポリマー前駆体。
【請求項17】
3がスルホ基またはその塩の基であることを特徴とする請求項15または16に記載のフッ素系ポリマー前駆体。
【請求項18】
請求項15〜17のいずれかに記載のフッ素系ポリマー前駆体と下記式(2−a)〜(2−g)で示される化合物からなる群より選ばれる1種以上とを反応させることを特徴とするフッ素系ポリマーの製造方法。

(式(2−a)〜(2−g)中、Ar1は芳香族基を表す。)
【請求項19】
請求項1〜14のいずれかに記載のフッ素系ポリマーを含有することを特徴とする高分子電解質。
【請求項20】
請求項19に記載の高分子電解質と炭化水素系高分子電解質とを含有することを特徴とする高分子電解質組成物。
【請求項21】
請求項19に記載の高分子電解質および請求項20に記載の高分子電解質組成物からなる群より選ばれる1種以上を含有することを特徴とする高分子電解質膜。
【請求項22】
請求項19に記載の高分子電解質および請求項20に記載の高分子電解質組成物からなる群より選ばれる1種以上と、触媒成分とを含有することを特徴とする触媒組成物。
【請求項23】
請求項21に記載の高分子電解質膜および請求項22に記載の触媒組成物からなる群より選ばれる1種以上を有することを特徴とする膜電極接合体。
【請求項24】
請求項23に記載の膜電極接合体を有することを特徴とする固体高分子形燃料電池。

【公開番号】特開2012−12464(P2012−12464A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149332(P2010−149332)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】