説明

フッ素系界面活性剤、それを用いたコーティング組成物及びレジスト組成物

【課題】炭素原子数6以下のフッ素化アルキル基を有する界面活性剤であっても、炭素原子数8以上のフッ素化アルキル基を有する界面活性剤と同等以上のレベリング性を有し、かつ優れた消泡性を有するフッ素系界面活性剤を提供する。また、このフッ素系界面活性剤を用いたコーティング組成物及びレジスト組成物を提供する。
【解決手段】炭素原子数6以下のフッ素化アルキル基(酸素原子によるエーテル結合を有するものも含む。)を有する単量体(m1)及び非フッ素系単量体(m2)を必須の単量体成分として、前記単量体(m1)及び(m2)の共存下でリビングラジカル重合することにより製造されたものであることを特徴とするフッ素系界面活性剤を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高度な表面平滑性が求められる各種塗料分野、あるいは精密塗工が要求され、スピンコーティング、スプレーコーティングの様な高速、高剪断力のかかる塗工方法を必要とするコーティング分野、例えば、紫外線、遠紫外線、エキシマレーザー光、X線等の放射線に感応するフォトレジストを使用するフォトリソグラフィー工程、詳しくはLSI、IC等の半導体製造工程、液晶、サーマルヘッド等の基板の製造、各種磁気ディスク、CD、DVD等の記録媒体の製造、PS版の製造、その他のフォトファブリケーション工程で好適に使用でき、かつ環境及び生体への蓄積性が低い含フッ素界面活性剤及びその組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より各種コーティング分野において、得られる塗膜の均質性及び平滑性を向上させる目的で、炭化水素系、シリコーン系、フッ素系等の様々なレベリング剤と称される界面活性剤が使用されている。その中でもフッ素系界面活性剤は、その表面張力低下能が高いこと、塗工後の汚染が少ないことから幅広く用いられている。
【0003】
このようなフッ素系界面活性剤としては、水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換された炭素原子数20以下のアルキル基を有する重合単位を有する重合体を利用する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特に、炭素原子数8以上のパーフルオロアルキル基を利用する界面活性剤が、その表面張力低下能に起因するレベリング剤としての性能に優れることが示されているが、炭素原子数が6以下のパーフルオロアルキル基を有する界面活性剤ではその性能を維持することは難しく、炭素原子数が少なくなるにつれてさらに表面張力低下能は低くなる問題があった。
【0004】
しかし、近年、炭素原子数8のパーフルオロアルキル基を有する化合物は分解することにより、環境及び生体への蓄積性が高いパーフルオロオクタンスルホン酸(以下、「PFOS」と略記する。)又はパーフルオロオクタン酸(以下、「PFOA」と略記する。)を生成し得ることが明らかになった。また、炭素原子数が8よりもさらに多いパーフルオロアルキル基を有する化合物は、さらに環境及び生体への蓄積性が高い化合物を生成し得ることも明らかになった。また、炭素原子数8のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤は、各種塗料に配合して均一に撹拌混合する際に、フッ素系界面活性剤の作用で起泡し、その泡が長時間消えないという問題もあった。
【0005】
上記のような状況の下、市場では、構造上、環境及び生体への蓄積性が高いPFOS又はPFOAを生成するリスクがなく、界面活性剤本来の性能である優れたレベリング性を有し、かつ起泡性が低く、起泡しても短時間で消泡する高い消泡性を有する界面活性剤が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−230154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、炭素原子数6以下のフッ素化アルキル基を有する界面活性剤であっても、炭素原子数8以上のフッ素化アルキル基を有する界面活性剤と同等以上のレベリング性を有し、かつ優れた消泡性を有するフッ素系界面活性剤を提供することである。また、このフッ素系界面活性剤を用いたコーティング組成物及びレジスト組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究した結果、炭素原子数6以下のフッ素化アルキル基を有する単量体と、非フッ素系単量体とを共存下でリビングラジカル重合で共重合した共重合体からなるフッ素系界面活性剤は、構造上、環境及び生体への蓄積性が高いPFOS又はPFOAを生成するリスクがなく、界面活性剤本来の性能である優れたレベリング性を有し、かつ起泡性が低く、起泡しても短時間で消泡する優れた消泡性を有することを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、炭素原子数6以下のフッ素化アルキル基(酸素原子によるエーテル結合を有するものも含む。)を有する単量体(m1)及び非フッ素系単量体(m2)を必須の単量体成分として、前記単量体(m1)及び(m2)の共存下でリビングラジカル重合することにより製造されたものであることを特徴とするフッ素系界面活性剤に関する。
【0010】
また、本発明は、上記フッ素系界面活性剤を含有するコーティング組成物及びレジスト組成物に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフッ素系界面活性剤は、炭素原子数8以上のフッ素化アルキル基を有さないため環境及び生体への蓄積性の低い安全な製品である。また、本発明のフッ素系界面活性剤をコーティング組成物やレジスト組成物にレベリング剤として添加すると、優れたレベリング剤として効果が得られ、消泡性も高いため、ハンドリング性に極めて優れる。また、スピンコーティング、ロールコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、プレードコーティング、スリットコーティング、カーテンコーティング、グラビアコーティング等の多様な塗工方法に適応でき、高度な表面平滑性を有する塗膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は実施例1で合成したフッ素系界面活性剤(1)のIRスペクトルのチャート図である。
【図2】図2は実施例1で合成したフッ素系界面活性剤(1)のGPCのチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のフッ素系界面活性剤は、炭素原子数6以下のフッ素化アルキル基(酸素原子によるエーテル結合を有するものも含む。)を有する単量体(m1)及び非フッ素系単量体(m2)を必須の単量体成分として、前記単量体(m1)及び(m2)を共存下でリビングラジカル重合することにより製造されたものである。
【0014】
本発明で用いる炭素原子数6以下のフッ素化アルキル基(酸素原子によるエーテル結合を有するものも含む。)を有するフッ素系単量体(m1)としては、分子中に炭素原子数6以下のフッ素化アルキル基(酸素原子によるエーテル結合を有するものも含む。)と重合性不飽和基とを有する化合物であれば、特に制限なく用いることができる。また、前記炭素原子数6以下のフッ素化アルキル基とは、炭素原子数1〜6のパーフルオロアルキル基又は水素原子の一部をフッ素原子とした部分フッ素化アルキル基であり、炭素原子数6以下とはフッ素原子と結合している炭素原子数が6以下であることを意味する。また、これらのフッ素化アルキル基の中でも、界面活性剤としての効果が高いことからパーフルオロアルキル基が好ましい。さらに、炭素原子数は多いほど好ましく、炭素原子数4〜6のものが特に好ましい。
【0015】
前記フッ素系単量体(m1)が有する重合性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、マレイミド基等が挙げられる。これらの中でも、原料の入手容易性、各種コーティング組成物中の配合成分に対する相溶性を制御することの容易性、あるいは重合反応性が良好であることから、(メタ)アクリロイル基が好ましい。この(メタ)アクリロイル基を有する具体としては、一般式(1)で表される単量体が挙げられる。また、前記フッ素系単量体(m1)は、1種類だけ使用しても2種以上を併用しても構わない。
【0016】
【化1】

(上記一般式(1)中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基、シアノ基、フェニル基、ベンジル基又は−C2n−Rf’(nは1〜8の整数を表し、Rf’は下記式(Rf−1)〜(Rf−7)のいずれか1つの基を表す。)を表し、Xは、下記式(X−1)〜(X−10)のいずれか1つの基を表し、Rfは下記式(Rf−1)〜(Rf−7)のいずれか1つの基を表す。)
【0017】
【化2】

(上記式(X−1)、(X−3)、(X−5)、(X−6)及び(X−7)中のnは1〜8の整数を表す。上記式(X−8)、(X−9)及び(X−10)中のmは1〜8の整数を表し、nは0〜8の整数を表す。上記式(X−6)及び(X−7)中のRf’’は下記式(Rf−1)〜(Rf−7)のいずれか1つの基を表す。)
【0018】
【化3】

(上記式(Rf−1)及び(Rf−2)中のnは1〜6の整数を表す。上記式(Rf−3)中のnは2〜6の整数を表す。上記式(Rf−4)中のnは4〜6の整数を表す。上記式(Rf−5)中のmは1〜5の整数であり、nは0〜4の整数であり、かつm及びnの合計は1〜5である。上記式(Rf−6)中のmは0〜4の整数であり、nは1〜4の整数であり、pは0〜4の整数であり、かつm、n及びpの合計は1〜5である。)
【0019】
前記フッ素系単量体(m1)のより具体的な例として、下記式(m1−1)〜(m1−15)で表される化合物等が挙げられる。
【0020】
【化4】

【0021】
また、本発明で用いる前記フッ素系単量体(m1)としては、レベリング性と消泡性のバランスが良いことから、炭素原子数4のフッ素化アルキル基を有する単量体と炭素原子数6のフッ素化アルキル基を有する単量体を併用することが好ましい。
【0022】
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸とアクリル酸の一方又は両方をいう。
【0023】
本発明で用いる非フッ素系単量体(m2)としては、例えば、オキシアルキレン基を有する単量体(m2−1)、アルキル基を有する単量体(m2−2)等が挙げられる。ここで、前記非フッ素系単量体(m2)が有する重合性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、マレイミド基等が挙げられるが、前記フッ素系単量体(m1)が有する重合性不飽和基が(メタ)アクリロイル基である場合は、共重合性が良好となることから、前記非フッ素系単量体(m2)が有する重合性不飽和基も(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。
【0024】
前記オキシアルキレン基を有する単量体(m2−1)としては、下記一般式(2)で表される単量体が挙げられる。
【0025】
【化5】

(式中、Rは水素原子又はメチル基であり、X及びYはそれぞれ独立のアルキレン基であり、n及びmはそれぞれ0または1以上の整数であり、かつnとmとの合計は1以上であり、Rは水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基である。)
【0026】
上記一般式(2)中のX及びYはアルキレン基であるが、このアルキレン基には、置換基を有しているものも含まれる。−O−(XO)n−(YO)m−部分の具体例としては、繰返し単位数nが1でmが0であり、かつXがエチレンであるエチレングリコール残基、繰返し単位数nが1でmが0であり、かつXがプロピレンであるプロピレングリコール残基、繰返し単位数nが1でmが0であり、かつXがブチレンであるブチレングリコール残基、繰返し単位数nが2以上の整数でmが0であり、かつXがエチレンであるポリエチレングリコール残基、繰返し単位数nが2以上の整数でmが0であり、かつXがプロピレンであるポリプロピレングリコール残基、繰返し単位数n及びmがともに1以上の整数であり、かつX又はYがエチレンで他方がプロピレンであるエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体の残基等のポリアルキレングリコールの残基が挙げられる。
【0027】
前記ポリアルキレングリコールの重合度、すなわち一般式(2)中のn及びmの合計が1〜100の範囲のものが好ましく、2〜80の範囲のものがより好ましく、3〜50の範囲のものがより好ましい。なお、Xを含む繰返し単位及びYを含む繰返し単位は、ランダム状に配置されてもブロック状に配置されても構わない。
【0028】
上記一般式(2)中のRは、水素又は炭素原子数1〜6のアルキル基である。Rが水素の場合は、単量体は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステルとなり、Rが炭素原子数1〜6の場合は、アルキレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステルの(メタ)アクリル酸エステルではない末端が炭素原子数1〜6のアルキル基によって封止されたものとなる。
【0029】
前記オキシアルキレン基を有する単量体(m2−1)の中でも、複数のオキシアルキレン基からなるポリ(オキシアルキレン)基を有する単量体が好ましく、具体的な例としては、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリトリメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール・テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール・ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール・テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール・ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール・ブチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール・ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール・ブチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール・ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(テトラエチレングリコール・ブチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリテトラエチレングリコール・ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール・トリメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール・ポリトリメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール・トリメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール・ポリトリメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(トリメチレングリコール・テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリトリメチレングリコール・ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(ブチレングリコール・トリメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコール・ポリトリメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、「ポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)」は、エチレングリコールとプロピレングリコールとのランダム共重合物を意味し、「ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール」は、エチレングリコールとプロピレングリコールとのブロック共重合物を意味する。他の物も同様である。これらのオキシアルキレン基を有する単量体の中でも、本発明のコーティング組成物中の他の成分との相溶性が良好となることから、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0030】
また、オキシアルキレン基を有する単量体(m2−1)の市販品としては、例えば、新中村化学工業株式会社製の「NKエステルM−20G」、「NKエステルM−40G」、「NKエステルM−90G」、「NKエステルM−230G」、「NKエステルAM−90G」、「NKエステルAMP−10G」、「NKエステルAMP−20G」、「NKエステルAMP−60G」、日油株式会社製の「ブレンマーPE−90」、「ブレンマーPE−200」、「ブレンマーPE−350」、「ブレンマーPME−100」、「ブレンマーPME−200」、「ブレンマーPME−400」、「ブレンマーPME−4000」、「ブレンマーPP−1000」、「ブレンマーPP−500」、「ブレンマーPP−800」、「ブレンマー70PEP−350B」、「ブレンマー55PET−800」、「ブレンマー50POEP−800B」、「ブレンマー10PPB−500B」、「ブレンマーNKH−5050」、「ブレンマーAP−400」、「ブレンマーAE−350」等が挙げられる。これらのオキシアルキレン基を有する単量体(m2−1)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0031】
上記非フッ素系単量体(m2)として用いることができる前記アルキル基を有する単量体(m2−2)としては、下記一般式(3)で表される単量体が挙げられる。
【0032】
【化6】

(式中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素原子数1〜18の直鎖状、分岐状又は環構造を有するアルキル基である。)
【0033】
なお、上記一般式(3)中のRは炭素原子数1〜18の直鎖状、分岐状又は環構造を有するアルキル基であるが、このアルキル基は、脂肪族又は芳香族の炭化水素基、水酸基等の置換基を有していてもよい。上記アルキル基を有する単量体(m2−2)の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の炭素原子数が1〜18のアルキルエステル;ジシクロペンタニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の炭素原子数1〜18の橋架け環状アルキルエステルなどが挙げられる。これらのアルキル基を有する単量体(m2−2)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0034】
本発明のフッ素系界面活性剤は、フッ素系単量体(m1)及び非フッ素系単量体(m2)を必須の単量体成分として、前記単量体(m1)及び(m2)を共存下でリビングラジカル重合することで得ることができる。
【0035】
ここで、一般にリビングラジカル重合においては、活性重合末端が原子又は原子団により保護されたドーマント種が可逆的にラジカルを発生させてモノマーと反応することにより生長反応が進行し、第一のモノマーが消費されても生長末端が活性を失うことなく、逐次的に追加される第二モノマーと反応してブロック共重合体を得ることができる。しかし、本発明では、第一のモノマーと第二モノマーとの共存下でリビングラジカル重合することを特徴としており、リビングラジカル重合を用いるが、得られる共重合体は規則性が乱れたランダム共重合体である。
【0036】
上記のリビングラジカル重合の例としては、原子移動ラジカル重合(以下、「ATRP」と略記する。)、可逆的付加−開裂型ラジカル重合(RAFT)、ニトロキシドを介するラジカル重合(NMP)、有機テルルを用いるラジカル重合(TERP)等が挙げられる。これらのうちどの方法を使用するかは特に制約はないが、制御の容易さなどから上記ATRPが好ましい。ATRPは、有機ハロゲン化物、又はハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤、遷移金属化合物と配位子からなる金属錯体を触媒として重合される。
【0037】
上記ATRPで使用する重合開始剤には、有機ハロゲン化化合物を用いることができる。具体的には、1−フェニルエチルクロライド及び1−フェニルエチルブロマイド、クロロホルム、四塩化炭素、2−クロロプロピオニトリル、α,α’−ジクロロキシレン、α,α’−ジブロモキシレン、ヘキサキス(α−ブロモメチル)ベンゼン、炭素原子数1〜6の2−ハロゲン化カルボン酸(例えば2−クロロプロピオン酸、2−ブロモプロピオン酸、2−クロロイソ酪酸、2−ブロモイソ酪酸など)の炭素原子数1〜6のアルキルエステル等が挙げられる。また、炭素原子数1〜6の2−ハロゲン化カルボン酸の炭素原子数1〜6のアルキルエステルのより具体的な例としては、例えば、2−クロロプロピオン酸メチル、2−クロロプロピオン酸エチル、2−ブロモプロピオン酸メチル、2−ブロモイソ酪酸エチル等が挙げられる。
【0038】
上記ATRPで使用する遷移金属化合物は、Mn+で表されるものである。遷移金属であるMn+は、Cu、Cu2+、Fe2+、Fe3+、Ru2+、Ru3+、Cr2+、Cr3+、Mo、Mo、Mo2+、Mo3+、W2+、W3+、Rh3+、Rh4+、Co、Co2+、Re2+、Re3+、Ni、Ni、Mn3+、Mn4+、V2+、V3+、Zn、Zn2+、Au、Au2+、Ag及びAg2+からなる群から選択することができる。また、Xは、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルコキシル基、(S01/2、(P01/3、(HP01/2、(HP0)、トリフラート、ヘキサフルオロホスフェート、メタンスルホネート、アリールスルホネート(好ましくはベンゼンスルホネート又はトルエンスルホネート)、SeR、CN及びRCOOからなる群から選択することができる。ここで、Rは、アリール、直鎖状又は分岐状の炭素原子数1〜20(好ましくは炭素原子数1〜10)のアルキル基を表し、Rは、水素原子、ハロゲンで1〜5回(好適にはフッ素もしくは塩素で1〜3回)置換されていてもよい直鎖状又は分岐状の炭素原子数1〜6のアルキル基(好ましくはメチル基)を表す。さらに、nは、金属上の形式電荷を表し、0〜7の整数である。
【0039】
上記遷移金属錯体としては特に限定されないが、好ましいものとして、7、8、9、10、11族の遷移金属錯体が、さらに好ましいものとして、0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄又は2価のニッケルの錯体が挙げられる。
【0040】
上記の遷移金属と配位結合可能な配位子を有する化合物としては、遷移金属とσ結合を介して配位できる1つ以上の窒素原子、酸素原子、リン原子又は硫黄原子を含む配位子を有する化合物、遷移金属とπ結合を介して配位できる2つ以上の炭素原子を含む配位子を有する化合物、遷移金属とμ結合又はη結合を介して配位できる配位子を有する化合物が挙げられる。
【0041】
上記配位子を有する化合物の具体例としては、例えば、中心金属が銅の場合は2,2’−ビピリジル及びその誘導体、1,10−フェナントロリン及びその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミン等のポリアミン等の配位子との錯体が挙げられる。また2価のルテニウム錯体としては、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリブチルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ(シクロオクタジエン)ルテニウム、ジクロロベンゼンルテニウム、ジクロロp−シメンルテニウム、ジクロロ(ノルボルナジエン)ルテニウム、シス−ジクロロビス(2,2’−ビピリジン)ルテニウム、ジクロロトリス(1,10−フェナントロリン)ルテニウム、カルボニルクロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム等が挙げられる。さらに2価の鉄錯体としては、ビストリフェニルホスフィン錯体、トリアザシクロノナン錯体等が挙げられる。
【0042】
また、上記リビングラジカル重合においては、溶媒を使用することが好ましい。使用する溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒などが挙げられる。また、これらの溶媒は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0043】
本発明のフッ素系界面活性剤の製造にあたっては、重合開始剤、遷移金属化合物、該遷移金属と配位結合可能な配位子を有する化合物、及び溶媒の存在下で、フッ素系単量体(m1)及び非フッ素系単量体(m2)を加えてリビングラジカル重合させることが好ましい。
【0044】
上記リビングラジカル重合の際の重合温度は、室温から120℃の範囲が好ましい。
【0045】
また、本発明のフッ素系界面活性剤をリビングラジカル重合により製造する際に、該フッ素系界面活性剤中に、重合で用いた遷移金属化合物に起因する金属が残留することがある。そこで、金属が残留すると問題を生じるフォトレジスト組成物等の半導体用途に用いる場合には、重合反応後に活性アルミナ等を用いて残留金属を除去することが好ましい。
【0046】
本発明のフッ素系界面活性剤の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、レベリング性及び消泡性をより優れたものにできることから、3,000以上が好ましく、4,000〜100,000の範囲がより好ましく、5,000〜50,000の範囲がさらに好ましい。また、本発明のフッ素系界面活性剤の分散度(Mw/Mn)は、レベリング性及び消泡性に優れたものとするため、3以下が好ましく、1.0〜2.5の範囲がより好ましく、1.0〜2.2の範囲がさらに好ましい。
【0047】
ここで、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する。)測定に基づきポリスチレン換算した値である。なお、GPCの測定条件は以下の通りである。
【0048】
[GPC測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HHR−H」(6.0mmI.D.×4cm)
+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)
+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)
+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)
+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)
検出器:ELSD(オルテックジャパン株式会社製「ELSD2000」)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン(THF)
流速 1.0ml/分
試料:樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(5μl)。
標準試料:前記「GPC−8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0049】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
東ソー株式会社製「F−288」
東ソー株式会社製「F−550」
【0050】
本発明のフッ素系界面活性剤中のフッ素原子含有率は、塗布ムラの少ない良好なレベリング性が得られ、消泡性に優れることから、4〜40質量%の範囲が好ましく、5〜35質量%の範囲がより好ましく、6〜30質量%の範囲がさらに好ましい。なお、フッ素原子含有率は、燃焼イオンクロマトグラフィーにより測定できる。
【0051】
本発明のコーティング組成物は、上記の本発明のフッ素系界面活性剤を添加剤として用いたものである。コーティング組成物中の該フッ素系界面活性剤の添加量は、コーティング樹脂の種類、塗工方法、目的とする膜厚等によって異なるが、コーティング組成物のうち固形分100質量部に対して0.0001〜10質量部が好ましく、0.001〜5質量部がより好ましく、0.01〜2質量部がさらに好ましい。フッ素系界面活性剤がこの範囲の添加量であれば、十分に表面張力を低下させることができ、目的とするレベリング性が得られ、塗工時の泡立ち等不具合の発生を抑制できる。
【0052】
コーティング組成物の添加剤として、本発明のフッ素系界面活性剤を用いることで、従来の炭素原子数8以上のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤に比べ、環境及び生体に対する蓄積性の低く、かつ従来の炭素原子数8以上のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤の同等以上、すなわち高速、高剪断力を伴う塗工方法においても、高度なレベリング性を発現させるコーティング組成物を提供することが可能である。このようなコーティング組成物としては、有用なコーティング組成物として、例えば、各種塗料用組成物や感光性樹脂組成物が挙げられる。
【0053】
上記塗料用組成物としては、例えば、石油樹脂塗料、セラック塗料、ロジン系塗料、セルロース系塗料、ゴム系塗料、漆塗料、カシュー樹脂塗料、油性ビヒクル塗料等の天然樹脂を用いた塗料;フェノール樹脂塗料、アルキッド樹脂塗料、不飽和ポリエステル樹脂塗料、アミノ樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ビニル樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、シリコーン樹脂塗料、フッ素樹脂塗料等の合成樹脂を用いた塗料などが挙げられる。
【0054】
また、上記塗料用組成物中には必要に応じて、顔料、染料、カーボン等の着色剤;シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム等の無機粉末;高級脂肪酸、ポリアクリル樹脂、ポリエチレン等の有機微粉末;耐光性向上剤、耐候性向上剤、耐熱性向上剤、酸化防止剤、増粘剤、沈降防止剤等の各種添加剤を適宜添加することが可能である。さらに、塗工方法については、公知公用の塗工方法であればいずれの方法も使用でき、例えば、ロールコーター、静電塗装、バーコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、デイッピング塗布、スプレー塗布等の方法が挙げられる。
【0055】
上記感光性樹脂組成物は、可視光、紫外光等の光を照射することにより樹脂の溶解性、粘度、透明度、屈折率、伝導度、イオン透過性等の物性が変化するものである。この感光性樹脂組成物の中でも、レジスト組成物(フォトレジスト組成物、カラーフィルター用のカラーレジスト組成物等)は、高度なレベリング性が要求される。通常、半導体又は液晶に関するフォトリソグラフィーにおいては、レジスト組成物を高剪断力の伴うスピンコーティングによって、厚さが1〜2μm程度になるようにシリコンウェハー又は各種金属を蒸着したガラス基板上に塗布するのが一般的である。この際、塗布膜厚が振れたり、一般にストリエーションといわれる塗布ムラが発生したりすると、パターンの直線性や再現性が低下し、目的とする精度を有するレジストパターンが得られないという問題が生じる。また、最近はそれ以外にも滴下跡、全体ムラ、中心部に比較しエッジ部が膜厚化するビード現象等の様々なレベリングに関与する問題点がクローズアップされている。半導体素子の高集積化に伴うレジストパターンの微細化又はシリコンウェハーの大口径化、液晶用ガラス基板の大型化が進む現在、このような塗布膜厚の振れやストリエーションの発生を抑えることが重要な課題となっている。また近年、半導体、液晶素子の生産性向上、高機能化等の観点から、上記塗布膜厚の振れやストリエーションの発生の抑制を厳密にコントロールする必要がある。
【0056】
ここで、本発明のフッ素系界面活性剤は、この感光性樹脂組成物、特にレジスト組成物の添加剤として用いることで、高度なレベリング性を発揮し、均一な塗膜を形成することができるため、上記のような問題を解決することができる。
【0057】
通常、レジスト組成物は、界面活性剤とフォトレジスト剤からなり、このフォトレジスト剤は、(1)アルカリ可溶性樹脂、(2)放射線感応性物質(感光性物質)、(3)溶剤、そして必要に応じて(4)他の添加剤とからなる。
【0058】
本発明のレジスト組成物に用いられる(1)アルカリ可溶性樹脂としては、レジストのパターン化時に使用する現像液であるアルカリ性溶液に対して可溶な樹脂が挙げられる。上記アルカリ可溶性樹脂の例としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、フロログリシノール、ハイドロキノン等の芳香族ヒドロキシ化合物及びこれらのアルキル置換又はハロゲン置換芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド化合物とを縮合して得られるノボラック樹脂、o−ビニルフェノール、m−ビニルフェノール、p−ビニルフェノール、α−メチルビニルフェノール等のビニルフェノール化合物及びこれらのハロゲン置換化合物の重合体又は共重合体、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸系又はメタアクリル酸系重合体もしくは共重合体、ポリビニルアルコール、更に上記各種樹脂の水酸基の一部を介してキノンジアジド基、ナフトキノンアジド基、芳香族アジド基、芳香族シンナモイル基等の放射性線感応性基を導入した変性樹脂等が挙げられる。これらのアルカリ可溶性樹脂は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0059】
さらに、アルカリ可溶性樹脂としては、分子中にカルボン酸やスルホン酸等の酸性基を含むウレタン樹脂を用いることが可能であり、またこのウレタン樹脂を上記のアルカリ可溶型樹脂と併用することも可能である。
【0060】
本発明のレジスト組成物に用いられる(2)放射性感応性物質(感光性物質)としては、上記アルカリ可溶性樹脂と混合し、紫外線、遠紫外線、エキシマレーザー光、X線、電子線、イオン線、分子線、γ線、等を照射することにより、アルカリ可溶性樹脂の現像液に対する溶解性を変化させる物質であれば用いることができる。
【0061】
上記放射線感応性物質としては、キノンジアジド系化合物、ジアゾ系化合物、ジアジド系化合物、オニウム塩化合物、ハロゲン化有機化合物、ハロゲン化有機化合物と有機金属化合物との混合物、有機酸エステル化合物、有機酸アミド化合物、有機酸イミド化合物、そして特開昭59−152号公報に記載されているポリ(オレフィンスルホン)化合物等が挙げられる。
【0062】
上記キノンジアジド系化合物としては、例えば、1,2−ベンゾキノンアジド−4−スルホン酸エステル、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,1−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,1−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、その他1,2−ベンゾキノンアジド−4−スルホン酸クロライド、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸クロライド、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロライド、2,1−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸クロライド、2,1−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロライド等のキノンジアジド誘導体のスルホン酸クロライド等が挙げられる。
【0063】
上記ジアゾ化合物としては、p−ジアゾジフエニルアミンとホルムアルデヒド又はアセトアルデヒドとの縮合物の塩、例えばヘキサフルオロ燐酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、過塩素酸塩又は過ヨウ素酸塩と上記縮合物との反応性生物であるジアゾ樹脂無機塩、USP3,300,309号明細書に記載されているような、上記縮合物とスルホン酸類との反応生成物であるジアゾ樹脂有機塩等が挙げられる。
【0064】
上記アジド化合物及びジアジド化合物としては、特開昭58−203438号公報に記載されているようなアジドカルコン酸、ジアジドベンザルメチルシクロヘキサノン類及びアジドシンナミリデンアセトフェノン類、日本化学会誌No.12、p1708−1714(1983年)記載の芳香族アジド化合物又は芳香族ジアジド化合物等が挙げられる。
【0065】
上記ハロゲン化有機化合物としては、有機化合物のハロゲン化物であれば用いることができるが、具体例としては、ハロゲン含有オキサジアゾール系化合物、ハロゲン含有トリアジン系化合物、ハロゲン含有アセトフェノン系化合物、ハロゲン含有ベンゾフェノン系化合物、ハロゲン含有スルホキサイド系化合物、ハロゲン含有スルホン系化合物、ハロゲン含有チアゾール系化合物、ハロゲン含有オキサゾール系化合物、ハロゲン含有トリゾール系化合物、ハロゲン含有2−ピロン系化合物、ハロゲン含有脂肪族炭化水素系化合物、ハロゲン含有芳香族炭化水素系化合物、その他のハロゲン含有ヘテロ環状化合物、スルフェニルハライド系化合物等の各種化合物、更に例えばトリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジブロモ−3−クロロプロピル)ホスフェート、クロロテトラブロモメタン、ヘキサクロロベンゼン、ヘキサブロモベンゼン、ヘキサブロモシクロドデカン、ヘキサブロモビフェニル、トリブロモフェニルアリルエーテル、テトラクロロビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、ビス(ブロモエチルエーテル)テトラブロモビスフェノールA、ビス(クロロエチルエーテル)テトラクロロビスフェノールA、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン等のハロゲン系難燃剤として使用されている化合物、ジクロロフェニルトリクロロエタン等の有機クロロ系農薬として使用されている化合物等も挙げられる。
【0066】
上記有機酸エステルとしては、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル等が挙げられる。また、上記有機酸アミドとしては、カルボン酸アミド、スルホン酸アミド等が挙げられる。さらに、上記有機酸イミドとしては、カルボン酸イミド、スルホン酸イミド等が挙げられる。これらの放射線感応性物質は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0067】
本発明のレジスト組成物において、放射線感応性物質の配合割合は、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して1〜100質量部の範囲が好ましく、3〜50質量部の範囲がより好ましい。
【0068】
本発明のレジスト組成物に用いられる(3)溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、シクロヘプタノン、2−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、ブチロラクトン等のケトン類;メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコ−ル、tert−ブチルアルコール、ペンタノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール等のアルコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等のアルコールエーテル類;蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−オキシプロピオン酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸ブチル等のモノカルボン酸エステル類;セロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のセロソルブエステル類;プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール類;ジエチレルグリコールモノメチルエーテル、ジエチレルグリコールモノエチルエーテル、ジエチレルグリコールジメチルエーテル、ジエチレルグリコールジエチルエーテル、ジエチレルグリコールメチルエチルエーテル等のジエチレングリコール類;トリクロロエチレン、フロン溶剤、HCFC、HFC等のハロゲン化炭化水素類;パーフロロオクタンの様な完全フッ素化溶剤類、トルエン、キシレン等の芳香族類;ジメチルアセチアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の極性溶剤など、成書「溶剤ポケットハンドブック」(有機合成化学協会編、オ−ム社)に記載されている溶剤が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0069】
本発明のレジスト組成物の塗布方法としては、スピンコーティング、ロールコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、プレードコーティング、カーテンコーティング、グラビアコーティング等の方法が挙げられ、塗布前にレジスト組成物をフィルターによって濾過して、固形の不純物を取り除くこともできる。
【0070】
上記の通り、本発明のフッ素系界面活性剤は、コーティング組成物(塗料用組成物、感光性樹脂組成物等)の添加剤として有用であり、特にレジスト組成物に有用であるが、その他の用途として、ハロゲン化写真感光材料の製造、平版印刷版の製造、カラーフィルター用材料等の液晶関連製品の製造、PS版の製造、その他のフォトファブリケーション工程等の単層、あるいは多層コーティング組成物に用いられる各種樹脂へ添加することでピンホール、ゆず肌、塗りムラ、ハジキ等の無い優れた平滑性を発現するレベリング剤としても用いることができる。
【0071】
さらに、本発明のフッ素系界面活性剤は、フッ素樹脂を含有する塗料、コーティング材に配合すると、フッ素化アルキル基の作用により該フッ素樹脂の分散性を向上させ、単にレベリング性だけでなく、フッ素樹脂の分散剤としての機能も期待できる。
【実施例】
【0072】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。また、下記実施例において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、下記の条件でGPC測定により求めた。
【0073】
[GPC測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HHR−H」(6.0mmI.D.×4cm)
+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)
+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)
+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)
+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)
検出器:ELSD(オルテックジャパン株式会社製「ELSD2000」)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン(THF)
流速 1.0ml/分
試料:樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(5μl)。
標準試料:前記「GPC−8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0074】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
東ソー株式会社製「F−288」
東ソー株式会社製「F−550」
【0075】
(実施例1)
窒素置換した反応容器に、メタノール67質量部、2,2’−ビピリジル0.961質量部、塩化第一銅0.305質量部を仕込み、室温で60分撹拌した。その後、2−(ノナフルオロブチル)エチルメタクリレート(以下、「NFMA」と略記する。)3.37質量部、2−(トリデカフルオロヘキシル)エチルメタクリレート(以下、「TFMA」と略記する。)3.33質量部、ポリ(1,2−オキシブチレン)オキシプロピレンモノメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマー10PPB−500B」;オキシブチレンの平均繰り返し数6)13.3質量部、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマーPE−200」;オキシエチレンの平均繰り返し数4.5)20質量部及び2−ブロモイソ酪酸エチル0.6質量部を加え、窒素気流下、60℃で10時間反応させた。次いで、得られた反応物に、活性アルミナ30質量部を加えて攪拌した。活性アルミナを濾過後、溶媒を減圧留去してランダム共重合体であるフッ素系界面活性剤(1)を得た。このフッ素系界面活性剤(1)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)17,000、数平均分子量(Mn)13,000、分散度(Mw/Mn)1.31であった。また、得られたフッ素系界面活性剤(1)中のフッ素原子含有量を燃焼イオンクロマトグラフィーで測定したところ9.1質量%であった。
【0076】
(実施例2)
窒素置換した反応容器に、メタノール26.68質量部、2,2’−ビピリジル0.961質量部、塩化第一銅0.305質量部を仕込み、室温で60分撹拌した。その後、NFMA7.04質量部、ポリ(1,2−オキシブチレン)オキシプロピレンモノメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマー10PPB−500B」)13.2質量部、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマーPE−200」;オキシエチレンの平均繰り返し数4.5)19.76質量部及び2−ブロモイソ酪酸エチル0.6質量部を加え、窒素気流下、60℃で10時間反応させた。次いで、得られた反応物に、活性アルミナ30質量部を加えて攪拌した。活性アルミナを濾過後、溶媒を減圧留去してランダム共重合体であるフッ素系界面活性剤(2)を得た。このフッ素系界面活性剤(2)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)34,300、数平均分子量(Mn)16,600、分散度(Mw/Mn)2.07であった。また、得られたフッ素系界面活性剤(2)のフッ素原子含有量を燃焼イオンクロマトグラフィーで測定したところ9.1質量%であった。
【0077】
(実施例3)
窒素置換した反応容器に、メタノール26.68質量部、2,2’−ビピリジル0.961質量部、塩化第一銅0.305質量部を仕込み、室温で60分撹拌した。その後、TFMA6.36質量部、ポリ(1,2−オキシブチレン)オキシプロピレンモノメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマー10PPB−500B」;オキシブチレンの平均繰り返し数6)13.46質量部、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマーPE−200」;オキシエチレンの平均繰り返し数4.5)20.18質量部及び2−ブロモイソ酪酸エチル0.6質量部を加え、窒素気流下、60℃で10時間反応させた。次いで、得られた反応物に、活性アルミナ30質量部を加えて攪拌した。活性アルミナを濾過後、溶媒を減圧留去してランダム共重合体であるフッ素系界面活性剤(3)を得た。このフッ素系界面活性剤(3)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)27,800、数平均分子量(Mn)15,400、分散度(Mw/Mn)1.81であった。また、得られたフッ素系界面活性剤(3)のフッ素原子含有量を燃焼イオンクロマトグラフィーで測定したところ9.1質量%であった。
【0078】
(実施例4)
窒素置換した反応容器に、メタノール60質量部、2,2’−ビピリジル0.961質量部、塩化第一銅0.305質量部を仕込み、室温で60分撹拌した。その後、NFMA5.56質量部、TFMA6.67質量部、ポリ(1,2−オキシブチレン)オキシプロピレンモノメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマー10PPB−500B」;オキシブチレンの平均繰り返し数6)11.57質量部、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマーPE−200」;オキシエチレンの平均繰り返し数4.5)16.21質量部及び2−ブロモイソ酪酸エチル0.6部を加え、窒素気流下、60℃で10時間反応させた。次いで、得られた反応物に、活性アルミナ30質量部を加えて攪拌した。活性アルミナを濾過後、溶媒を減圧留去してランダム共重合体であるフッ素系界面活性剤(4)を得た。このフッ素系界面活性剤(4)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)15,600、数平均分子量(Mn)12,300、分散度(Mw/Mn)1.27であった。また、得られたフッ素系界面活性剤(4)のフッ素原子含有量を燃焼イオンクロマトグラフィーで測定したところ15質量%であった。
【0079】
(比較例1)
窒素置換した反応容器に、メチルイソブチルケトン(以下、「MIBK」と略記する。)600質量部を仕込み、攪拌しながら100℃に昇温した。その後、NFMA50.52質量部、TFMA49.98質量部、ポリ(1,2−オキシブチレン)オキシプロピレンモノメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマー10PPB−500B」;オキシブチレンの平均繰り返し数6)199.5質量部、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマーPE−200」;オキシエチレンの平均繰り返し数4.5)300質量部及びジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(大塚化学株式会社製「MAIB」)6質量部をMIBK484.2質量部に溶解させた溶液を3時間かけて滴下し、さらに100℃で15時間反応させた。次いで、得られた反応物に、活性アルミナ30質量部を加えて攪拌した。活性アルミナを濾過後、溶媒を減圧留去してランダム共重合体であるフッ素系界面活性剤(C1)を得た。このフッ素系界面活性剤(C1)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)25,200、数平均分子量(Mn)3,500、分散度(Mw/Mn)7.20であった。また、得られたフッ素系界面活性剤(C1)のフッ素原子含有量を燃焼イオンクロマトグラフィーで測定したところ9.1質量%であった。
【0080】
(比較例2)
窒素置換した反応容器に、MIBK100質量部を仕込み、攪拌しながら100℃に昇温した。その後、NFMA27.79質量部、TFMA27.49質量部、ポリ(1,2−オキシブチレン)オキシプロピレンモノメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマー10PPB−500B」;オキシブチレンの平均繰り返し数6)17.89質量部、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマーPE−200」;オキシエチレンの平均繰り返し数4.5)26.89質量部及びジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(大塚化学株式会社製「MAIB」)1質量部をMIBK80.7質量部に溶解させた溶液を3時間かけて滴下し、さらに100℃で15時間反応させた。次いで、溶媒を減圧留去してランダム共重合体であるフッ素系界面活性剤(C2)を得た。このフッ素系界面活性剤(C2)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)16,000、数平均分子量(Mn)4,700、分散度(Mw/Mn)3.40であった。また、得られたフッ素系界面活性剤(C2)のフッ素原子含有量を燃焼イオンクロマトグラフィーで測定したところ30質量%であった。
【0081】
(比較例3)
窒素置換した反応容器に、MIBK100質量部を仕込み、攪拌しながら100℃に昇温した。その後、NFMA37.05質量部、TFMA36.65質量部、ポリ(1,2−オキシブチレン)オキシプロピレンモノメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマー10PPB−500B」;オキシブチレンの平均繰り返し数6)10.5質量部、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマーPE−200」;オキシエチレンの平均繰り返し数4.5)15.8質量部及びジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(大塚化学株式会社製「MAIB」)1質量部をMIBK80.7質量部に溶解させた溶液を3時間かけて滴下し、さらに100℃で15時間反応させた。次いで、溶媒を減圧留去してランダム共重合体であるフッ素系界面活性剤(C3)を得た。このフッ素系界面活性剤(C3)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)17,300、数平均分子量(Mn)5,600、分散度(Mw/Mn)3.09であった。また、得られたフッ素系界面活性剤(C3)のフッ素原子含有量を燃焼イオンクロマトグラフィーで測定したところ40質量%であった。
【0082】
(比較例4)
窒素置換した反応容器に、メタノール49.44質量部、2,2’−ビピリジル0.961質量部、塩化第一銅0.305質量部を仕込み、室温で60分撹拌した。その後、ポリ(1,2−オキシブチレン)オキシプロピレンモノメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマー10PPB−500B」;オキシブチレンの平均繰り返し数6)13.2質量部、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマーPE−200」;オキシエチレンの平均繰り返し数4.5)19.76質量部及び2−ブロモイソ酪酸エチル0.6質量部を加え、窒素気流下、60℃で5時間反応させた後、NFMA7.04質量部を加え、さらに12時間反応させた。次いで、得られた反応物に、活性アルミナ30質量部を加えて攪拌した。活性アルミナを濾過後、溶媒を減圧留去してブロック共重合体であるフッ素系界面活性剤(C4)を得た。このフッ素系界面活性剤(C4)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)16,300、数平均分子量(Mn)12,300、分散度(Mw/Mn)1.33であった。また、得られたフッ素系界面活性剤(C4)のフッ素原子含有量を燃焼イオンクロマトグラフィーで測定したところ9.1質量%であった。
【0083】
(比較例5)
窒素置換した反応容器に、メタノール50.46質量部、2,2’−ビピリジル0.961質量部、塩化第一銅0.305質量部を仕込み、室温で60分撹拌した。その後、ポリ(1,2−オキシブチレン)オキシプロピレンモノメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマー10PPB−500B」;オキシブチレンの平均繰り返し数6)13.46質量部、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマーPE−200」;オキシエチレンの平均繰り返し数4.5)20.18質量部及び2−ブロモイソ酪酸エチル0.6質量部を加え、窒素気流下、60℃で5時間反応させた後、TFMA6.36質量部を加え、さらに12時間反応させた。次いで、得られた反応物に、活性アルミナ30質量部を加えて攪拌した。活性アルミナを濾過後、溶媒を減圧留去してブロック共重合体であるフッ素系界面活性剤(C5)を得た。このフッ素系界面活性剤(C5)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)17,000、数平均分子量(Mn)12,700、分散度(Mw/Mn)1.34であった。また、得られたフッ素系界面活性剤(C5)のフッ素原子含有量を燃焼イオンクロマトグラフィーで測定したところ9.1質量%であった。
【0084】
(比較例6)
窒素置換した反応容器に、イソプロピルアルコール352.6質量部、2−(ヘプタデカフルオロオクチル)エチルメタクリレート(以下、「HFMA」と略記する。)18.5質量部、ポリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製「NKエステル4G」;オキシエチレンの平均繰り返し数4)4.4質量部、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノアクリレート(オキシエチレンの平均繰り返し数22、オキシプロピレンの平均繰り返し数22)57.2質量部、3−トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート(チッソ株式会社製「サイラプレーンTM−0701」;以下、「Si−MA」と略記する。)12質量部、メチルメタクリレート(以下、「MMA」と略記する。)7.8質量部、n−ドデシルメルカプタン(花王株式会社製「チオカルコール20」)1.2質量部及びアゾビスイソブチロニトリル0.4質量部を仕込み、攪拌して溶解させた後、75℃で6時間反応させた後、80℃で12時間反応させた。次いで、溶媒を減圧留去してランダム共重合体であるフッ素系界面活性剤(C6)を得た。このフッ素系界面活性剤(C6)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)37,400、数平均分子量(Mn)6,600、分散度(Mw/Mn)5.67であった。また、得られたフッ素系界面活性剤(C6)のフッ素原子含有量を燃焼イオンクロマトグラフィーで測定したところ11.5質量%であった。
【0085】
上記の実施例1〜4及び比較例1〜6で得られたフッ素系界面活性剤(1)〜(4)及び(C1)〜(C6)の原料である単量体の種類、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、フッ素原子含有量及び生体蓄積安全性について、表1にまとめた。なお、生体蓄積安全性は下記の判断基準で評価した。
【0086】
[生体蓄積安全性の評価]
以下の判断基準で、各フッ素系界面活性剤の生体蓄積安全性を評価した。
○:炭素原子数8以上のパーフルオロアルキル基を含まず、生体に蓄積する可能性が低く、安全性が高い。
×:炭素原子数8以上のパーフルオロアルキル基を含み、生体に蓄積する可能性が高く、安全性が低い。
【0087】
【表1】

【0088】
表1中の略号「BO−PO」、「EO」、「EO−DMA」及び「EO−PO」は、それぞれ下記のものを意味する。
BO−PO:ポリ(1,2−オキシブチレン)オキシプロピレンモノメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマー10PPB−500B」;オキシブチレンの平均繰り返し数6)
EO:ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマーPE−200」;オキシエチレンの平均繰り返し数4.5)
EO−DMA:ポリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製「NKエステル4G」;オキシエチレンの平均繰り返し数4)
EO−PO:ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノアクリレート(オキシエチレンの平均繰り返し数22、オキシプロピレンの平均繰り返し数22)
【0089】
(実施例5)
上記の実施例1で得られたフッ素系界面活性剤(1)を用いて、下記の通り、レジスト組成物を調製し、塗布ムラの評価及び消泡性試験を行った。なお、消泡試験については、フッ素系界面活性剤のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を調製し、その溶液を起泡させた後、消泡するまでの時間を測定することで行った。
【0090】
2,3,4−トリヒドロキシベゾフェノンとオルトナフトキシジアジド−5−スルホニルクロライドとの縮合物27質量部と、クレゾ−ルとホルムアルデヒドとを縮合して得られたクレゾ−ルノボラック樹脂100質量部とをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」と略記する。)400質量部に溶解して溶液を調製し、これに実施例1で得られたフッ素系界面活性剤(1)を上記縮合物及びクレゾ−ルノボラック樹脂の合計100質量部に対して0.1質量部添加し、孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製フィルターで精密濾過してレジスト組成物を調製した。
【0091】
[塗布ムラの評価]
上記で得られたレジスト組成物を直径8インチの表面がクロム処理されたガラス基板上に、回転数500rpmでスピンコ−ティングした後、110℃で3分間加熱乾燥し、膜厚が1.5μmのレジスト膜を有するウェハーを得た。得られたレジスト膜の表面を、ナトリウムランプを用いる目視により塗膜表面の凹凸を観察して、以下の基準で塗布ムラを評価した。
◎:塗布ムラが観察されなかった。
○:塗布ムラがわずかに観察される(塗布ムラとなった面積が全体の10%未満)。
△:塗布ムラが一部観察される(塗布ムラとなった面積が全体の10%以上30%未満)。
×:塗布ムラが多く観察される(塗布ムラとなった面積が全体の30%以上)。
【0092】
[消泡性試験及びその評価]
実施例1で得られたフッ素系界面活性剤(1)の含有量が1質量%となるように添加したPGMEA溶液50gを100mlサンプル管に入れ、20秒間振とうした後、液面の発生した泡の消失により液面の面積の90%以上が露出するまでの時間を消泡時間として測定した。測定した消泡時間から、下記の基準で消泡性を評価した。なお、測定時間は600秒までとし、600秒経過後も液面の面積の90%以上が露出しなかったものについてはそれ以上の測定を行わなかった。
◎:液面の面積の90%以上が露出するのに要した時間が60秒未満である。
○:液面の面積の90%以上が露出するのに要した時間が60秒以上360秒未満である。
△:液面の面積の90%以上が露出するのに要した時間が360秒以上600秒未満である。
×:液面の面積の90%以上が露出するのに要した時間が600秒以上である。
【0093】
(実施例6〜8及び比較例7〜12)
上記の実施例5と同様に、実施例2〜4及び比較例1〜6で得られたフッ素系界面活性剤(2)〜(4)及び(C1)〜(C6)を用いて、塗布ムラの評価及び消泡性試験を行った。
【0094】
上記の実施例5〜8及び比較例7〜12で得られた評価及び試験結果を表2に示す。なお、消泡時間の「>600」との表記は、600秒経過後も液面の面積の90%以上が露出しなかったことを意味する。
【0095】
【表2】

【0096】
表2に示した実施例5〜8の結果から、実施例1〜4で得られた本発明のフッ素化界面活性剤(1)〜(4)を用いたレジスト組成物は、塗布ムラが少なく平滑な塗膜が得られたことから、レベリング性に優れることが分かった。また、PGMEA溶液での消泡性も優れることが分かった。特に、実施例2で得られたフッ素系界面活性剤(2)は、非常に優れた消泡性を有していた。
【0097】
表2に示した比較例7の結果から、リビングラジカル重合ではなく、フリーラジカル重合で製造した比較例1のフッ素化界面活性剤(C1)は、フッ素原子含有量が実施例1〜3で得られた本発明のフッ素化界面活性剤(1)〜(3)と同程度であるが、塗布ムラを生じてレベリング性が不十分であることが分かった。
【0098】
表2に示した比較例8及び9の結果から、リビングラジカル重合ではなく、フリーラジカル重合で製造した比較例2及び3のフッ素化界面活性剤(C2)及び(C3)は、フッ素原子含有量を30質量%及び40質量%と高くしたものであるが、塗布ムラは少なく良好なレベリング性を有していたが、起泡した泡がすぐに消泡せず消泡性に問題があることが分かった。
【0099】
表2に示した比較例10及び11の結果から、本発明と同様にリビングラジカル重合で製造したが、ランダム共重合ではなく、ブロック共重合とした比較例4及び5のフッ素化界面活性剤(C4)及び(C5)は、塗布ムラは少なく優れたレベリング性を有していたが、起泡した泡がすぐに消泡せず消泡性に問題があることが分かった。
【0100】
表2に示した比較例12の結果から、炭素原子数が8のフッ素化アルキル基を有する単量体を用いて製造した比較例6のフッ素化界面活性剤(C6)は、塗布ムラをやや生じレベリング性が良好でなく、起泡した泡がすぐに消泡せず消泡性に問題があることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素原子数6以下のフッ素化アルキル基(酸素原子によるエーテル結合を有するものも含む。)を有する単量体(m1)及び非フッ素系単量体(m2)を必須の単量体成分として、前記単量体(m1)及び(m2)の共存下でリビングラジカル重合することにより製造されたものであることを特徴とするフッ素系界面活性剤。
【請求項2】
上記フッ素系単量体(m1)が、下記一般式(1)の少なくとも1つから選ばれる単量体である請求項1記載のフッ素系界面活性剤。
【化1】

(上記一般式(1)中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基、シアノ基、フェニル基、ベンジル基又は−C2n−Rf’(nは1〜8の整数を表し、Rf’は下記式(Rf−1)〜(Rf−7)のいずれか1つの基を表す。)を表し、Xは、下記式(X−1)〜(X−10)のいずれか1つの基を表し、Rfは下記式(Rf−1)〜(Rf−7)のいずれか1つの基を表す。)
【化2】

(上記式(X−1)、(X−3)、(X−5)、(X−6)及び(X−7)中のnは1〜8の整数を表す。上記式(X−8)、(X−9)及び(X−10)中のmは1〜8の整数を表し、nは0〜8の整数を表す。上記式(X−6)及び(X−7)中のRf’’は下記式(Rf−1)〜(Rf−7)のいずれか1つの基を表す。)
【化3】

(上記式(Rf−1)及び(Rf−2)中のnは1〜6の整数を表す。上記式(Rf−3)中のnは2〜6の整数を表す。上記式(Rf−4)中のnは4〜6の整数を表す。上記式(Rf−5)中のmは1〜5の整数であり、nは0〜4の整数であり、かつm及びnの合計は1〜5である。上記式(Rf−6)中のmは0〜4の整数であり、nは1〜4の整数であり、pは0〜4の整数であり、かつm、n及びpの合計は1〜5である。)
【請求項3】
上記非フッ素系単量体(m2)が、下記一般式(2)で表されるオキシアルキレン基を有する単量体である請求項1又は2記載のフッ素系界面活性剤。
【化4】

(式中、Rは水素原子又はメチル基であり、X及びYはそれぞれ独立のアルキレン基であり、n及びmはそれぞれ0または1以上の整数であり、かつnとmとの合計は1以上であり、Rは水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基である。)
【請求項4】
上記非フッ素系単量体(m2)が、上記一般式(2)で表されるオキシアルキレン基を有する単量体及び下記一般式(3)で表される単量体である請求項3記載のフッ素系界面活性剤。
【化5】

(式中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素原子数1〜18の直鎖状、分岐状又は環構造を有するアルキル基である。)
【請求項5】
前記リビングラジカル重合が原子移動ラジカル重合である請求項1〜4のいずれか1項記載のフッ素系界面活性剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載のフッ素系界面活性剤を含有することを特徴とするコーティング組成物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項記載のフッ素系界面活性剤を含有するレジスト組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−6928(P2013−6928A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139431(P2011−139431)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】