説明

フッ素置換オレフィンを含有する組成物

【課題】オゾン破壊、毒性、可燃性、熱伝達特性、潤滑剤適合性、等の性能において優れた性質を有する熱伝達組成物を提供する。
【解決手段】1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)を含む組成物であって、該組成物は発泡剤として使用され、ポリスチレン気泡材料、ポリエチレン気泡材料、ポリウレタン気泡材料、ポリイソシアヌレート気泡材料及び熱可塑性気泡材料から選ばれるポリマー気泡材料組成物を形成するために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に冷却装置(refrigeration systems)を含む、多くの応用に用途を有する組成物、およびその組成物を利用する方法と装置に関する。好ましい面において、本発明は、本発明の少なくとも一つの多フッ素化オレフィンを含む冷媒組成物を対象とする。
【背景技術】
【0002】
フルオロカーボン系の流体は、多くの商業上および工業上の応用において広範囲にわたる用途が見出されている。例えば、フルオロカーボン系の流体は、空調、熱ポンプおよび冷却への適用などの装置における作動流体として、しばしば用いられる。蒸気圧縮サイクルは、冷却装置における冷却または加熱を達成するために最も一般的に用いられるタイプの方法のうちの一つである。蒸気圧縮サイクルに通常含まれる工程は、比較的低い圧力での熱の吸収による液体相から蒸気相への冷媒の相変化、そして次に比較的低い圧力と温度での熱の取り出しによる蒸気相から液体相への相変化、比較的高い圧力への蒸気の圧縮、この比較的高い圧力と温度での熱の取り出しによる蒸気の液体相への凝縮、そして次にサイクルを再び開始するための圧力の低減、である。
【0003】
冷却の主な目的は、比較的低い温度で物体またはその他の流体から熱を取り去ることであるが、熱ポンプの主な目的は、周囲よりも高い温度で熱を加えることである。
特定のフルオロカーボン類は、多くの適用において長年の間、冷媒などの多くの熱交換流体において好ましい成分のものであった。例えば、クロロフルオロメタンやクロロフルオロエタンの誘導体などのフルオロアルカン類は、それらの化学特性と物理特性の独特な組み合わせのために、空調や熱ポンプの適用を含む適用における冷媒として広範囲にわたる用途があった。蒸気圧縮装置において一般に利用される冷媒の多くのものは、単一成分の流体と共沸混合物のいずれかである。
【0004】
地球の大気と気候に害を与える可能性について近年関心が高まっていて、この点について特定の塩素系化合物が特に問題のあるものであることが確認されている。空調装置や冷却装置における冷媒としての塩素含有組成物(例えば、クロロフルオロカーボン類(CFCs)、ヒドロクロロフルオロカーボン類(HCFCs)、その他同種類のもの)の使用は、それら化合物の多くのものと関連するオゾン破壊性のために、嫌われるようになっている。従って、冷却と熱ポンプの適用のための代替物を提供する新しいフルオロカーボンおよびヒドロフルオロカーボン化合物および組成物に対する要求が増大している。例えば、塩素含有冷媒を、ヒドロフルオロカーボン類(HFCs)などのオゾン層を破壊しないであろう塩素非含有冷媒化合物で置き換えることによって、塩素含有冷却装置を改造するのが望ましいとされている。
【0005】
しかし、代替の冷媒として可能性のあるいかなるものであっても、最も広範囲にわたって用いられている流体の多くのものにおいて存在する特性、中でも、優れた熱伝達特性、化学的安定性、低い毒性または非毒性、不燃性、および潤滑剤適合性のような特性も備えていなければならない、ということが重要であると一般に考えられる。
【0006】
多くの適用において潤滑剤適合性が特に重要であるということを、出願人は認識するに至った。特に、大部分の冷却装置において用いられる圧縮機ユニットにおいて利用される潤滑剤と適合することが、冷却流体について非常に望ましい。あいにくと、HFCsを含む多くの塩素非含有冷却流体は、CFCsおよびHFCsとともに慣用的に用いられるタイプの潤滑剤(例えば鉱油、アルキルベンゼンまたはポリ(アルファ-オレフィン))に比較的不溶性および/または不混和性である。圧縮冷却、空調および/または熱ポンプの装置の中で冷却流体と潤滑剤の組み合わせを望ましいレベルの効率で機能させるためには、潤滑剤は、広い範囲の操作温度にわたって冷却液に十分に溶解できるものでなければならない。そのような溶解性は潤滑剤の粘性を低下させ、そしてそれを装置の全体にわたって容易に流動させる。そのような溶解性が無い場合、潤滑剤は冷却装置、空調装置または熱ポンプ装置の蒸発器の蛇管(coil)の中に留まりやすくなり、装置の他の部品においても同様であり、従って装置の効率を低下させる。
【0007】
使用効率に関して、冷媒の熱力学的性能またはエネルギー効率の低下は、電気エネルギーに対する需要が増大することから生じる化石燃料の使用の増大によって環境への二次的な影響をもたらすであろう、ということに注目することが重要である。
【0008】
さらに、CFC冷媒の代替物については、CFC冷媒を用いて現在使用されている在来の蒸気圧縮技術に対して大きな工学的設計変更を行なわずに実施されることが望ましいと、一般に考えられる。
【0009】
多くの適用について、可燃性はもう一つの重要な特性である。すなわち、特に熱伝達への適用を含む多くの適用において、不燃性の組成物を用いることが重要であり、また必須であるとも考えられる。従って、不燃性の組成物や化合物を用いることがしばしば有益である。本明細書において、「不燃性」という用語は、2002年の ASTM規格E-681(これは本明細書中に参考文献として援用される)に従って測定されて不燃性であると判定される化合物または組成物を意味する。あいにくと、多くのHFCsは、その他の点では冷媒組成物において用いるのに望ましいかもしれないのであるが、不燃性ではない。例えば、フルオロアルカンジフルオロエタン(HFC-152a)とフルオロアルケン1,1,1,-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf)はそれぞれ可燃性であり、従って多くの適用において用いるのに実行可能ではない。
【0010】
高級フルオロアルケン、すなわち少なくとも5個の炭素原子を有するフッ素置換アルケンが、冷媒として用いるために提案された。米国特許第4,788,352号(Smutny)は、少なくともある程度の不飽和を有するフッ素化C5〜C8化合物の製造を対象とする。Smutny特許は、そのような高級オレフィンが、冷媒、農薬、絶縁性流体、熱伝達流体、溶剤、および様々な化学反応における中間体として有用であることが知られることを確認している(第1欄、11〜22行を参照)。
【0011】
Smutnyに記載されたフッ素化オレフィンは、熱伝達への適用においてある程度の有効性を有するかもしれないが、そのような化合物は一定の不利益も有すると考えられる。例えば、これらの化合物の幾つかのものは、支持体、特にアクリル樹脂やABS樹脂などの一般的な用途のプラスチックを侵食しやすいかもしれない。さらに、Smutnyに記載された高級オレフィン化合物は、Smutnyにおいて指摘された農薬の活性の結果として生じるであろうそのような化合物の潜在的なレベルの有毒性のために、特定の適用においてやはり望ましくないかもしれない。また、そのような化合物は、特定の適用においてそれらを冷媒として有用なものにするには高すぎる沸点を有するかもしれない。
【0012】
ブロモフルオロメタンとブロモクロロフルオロメタンの誘導体、特にブロモトリフルオロメタン(Halon 1301)とブロモクロロジフルオロメタン(Halon 1211)は、航空機の室内やコンピューター室などの閉鎖空間において消火剤として広範囲にわたる用途を有している。しかし、様々なハロンの使用は、それらの高いオゾン破壊性のために、段階的に廃止されている。さらに、ハロンは人間が存在する領域においてしばしば用いられるので、炎を抑えるかまたは消すのに必要な濃度において適当な代替品を用いることが人間にとって安全なはずである。
【0013】
従って出願人は、組成物、特に熱伝達組成物、消火用組成物または鎮火用組成物、発泡剤、溶剤組成物、および相溶剤であって、蒸気圧縮加熱装置と冷却装置およびそのための方法を含む多くの適用において有用である可能性があり、その一方で上述の不利益のうちの一つ以上が避けられるものに対する必要性を認識するに至った。
【発明の概要】
【0014】
出願人は、上述の要求およびその他の要求は、1以上のC3またはC4フルオロアルケン、好ましくは次の式Iを有する化合物を含む組成物によって満足させうることを見出した:
XCF3−z (I)
ここでXはC2またはC3不飽和置換または非置換アルキル基であり、Rはそれぞれ独立してCl、F、Br、IまたはHであり、そしてZは1〜3である。式Iの化合物の中で非常に好ましいものは、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)のシスおよびトランス異性体である。
【0015】
本発明はまた、熱伝達、発泡、溶媒和、香味および芳香の抽出および/または放出、およびエアゾールの生成のための方法と装置を含む、本発明の組成物を利用する方法と装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例5で使用した容器の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
好ましい態様の詳細な説明
組成物
本発明は、3〜4個の炭素原子、好ましくは3個の炭素原子、および少なくとも一つの炭素−炭素二重結合を含む少なくとも一つのフルオロアルケンを含む組成物を対象とする。本発明のフルオロアルケン化合物はしばしば、本明細書中で便宜上の目的により、それらが少なくとも一つの水素を含んでいる場合は、ヒドロフルオロ-オレフィンまたは「HFOs」と称される。本発明のHFOsは二つの炭素−炭素二重結合を含むかもしれないと考えられるが、そのような化合物は現時点においては好ましいものであるとは考えられない。
【0018】
上述したように、本発明の組成物(composition)は式Iに従う1以上の化合物(compound)を含む。好ましい態様において、その組成物は次の式IIの化合物を含む:
【0019】
【化1】

【0020】
ここでRはそれぞれ独立してCl、F、Br、IまたはHであり、R’ は(CR2)nYであり、YはCRF2であり、そしてnは0または1である。非常に好ましい態様において、YはCF3であり、nは0であり、そして残りのRのうちの少なくとも一つはFである。
【0021】
一般に、上で確認した式IおよびIIの化合物は、本発明の冷媒組成物、発泡剤組成物、相溶剤、エアゾール、噴射剤、香味配合物、芳香配合物、および溶剤組成物において概ね効果的であり、そして有用であると出願人は考える。しかし出願人は、驚くべきことに、そして予期せざることに、上記の式に従う構造を有する化合物の特定のものは、そのような化合物の他のものと比較して、非常に望ましい低いレベルの毒性を示すことを見出した。容易に認識できるように、この発見は、冷媒組成物のみならず、上記の式を満足する特定の比較的毒性のある化合物であるいかなる全ての組成物の配合のためにも、非常に有利かつ有益である可能性がある。特に、比較的低い毒性レベルは式IIの化合物と関連していて、好ましくはYがCF3であり、不飽和末端炭素についた少なくとも一つのRがHであり、そして残りのRのうちの少なくとも一つはFであるときに、低い毒性レベルと関連している、と出願人は考える。出願人はまた、そのような化合物の全ての構造異性体、幾何異性体および立体異性体は有効で有益な低い毒性を有する、と考える。
【0022】
非常に好ましい態様において、特に上記の低い毒性の化合物を含む態様において、nは0である。特定の非常に好ましい態様において、本発明の組成物は1以上のテトラフルオロプロペンを含む。「HFO-1234」という用語は、ここでは全てのテトラフルオロプロペンを指すものとして用いられる。テトラフルオロプロペンの中で、シス-およびトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)は両者とも特に好ましい。HFO-1234zeという用語はここでは、それがシス形であるかトランス形であるかにかかわらず、1,3,3,3-テトラフルオロプロペンを指すものとして包括的に用いられる。「シスHFO-1234ze」および「トランスHFO-1234ze」という用語はそれぞれ、ここでは、シス形およびトランス形の1,3,3,3-テトラフルオロプロペンを記述するものとして用いられる。従って、「HFO-1234ze」という用語は、その範囲の中に、シスHFO-1234ze、トランスHFO-1234ze、およびこれらの全ての組み合わせおよび混合物を含む。
【0023】
シスHFO-1234zeおよびトランスHFO-1234zeの特性は少なくとも幾つかの点で異なるけれども、これらの化合物の各々は、ここで説明している適用、方法および装置のそれぞれに関して、それ単独で用いるために、またはその立体異性体を含む他の化合物とともに用いるために適合可能であると考えられる。例えば、トランスHFO-1234zeは、その比較的低い沸点(−19℃)のために、特定の冷却装置において用いるのに好ましいかもしれないが、しかしながら、沸点が+9℃であるシスHFO-1234zeも本発明の特定の冷却装置において有用であると考えられる。従って、「HFO-1234ze」という用語および1,3,3,3-テトラフルオロプロペンは両方の立体異性体を指し、そしてこの用語の使用は、特に断らない限り、シス形とトランス形のそれぞれが、説明している目的のために適用され、および/または有用であるということを示すことが意図されている、と理解されるべきである。
【0024】
HFO-1234化合物は公知の物質であり、ケミカルアブストラクツデータベースに載っている。様々な飽和および不飽和ハロゲン含有C3化合物の接触蒸気相フッ素化によるCF3CH=CH2などのフルオロプロペンの製造は、米国特許第2,889,379号、第4,798,818号および第4,465 ,786号に記載されていて、それらの各々は本明細書中に参考文献として援用される。同様に本明細書中に参考文献として援用される欧州特許(EP)第974,571号も、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)を、高温において蒸気相中でクロム系触媒と接触させることによって、あるいは液体相中でKOH、NaOH、Ca(OH)2またはMg(OH)2のアルコール溶液と接触させることによって、1,1,1,3-テトラフルオロプロペンを調製することを開示している。さらに、本発明に従う化合物を製造するための方法は、「フルオロプロペンを製造するための方法」と題する係属中の米国特許出願(代理人整理番号(H0003789(26267))に関連して概略記載されていて、この文献も本明細書中に参考文献として援用される。
【0025】
本組成物、特にHFO-1234zeを含む組成物は、幾つかの重要な理由から、有利な特性を有していると考えられる。例えば、少なくとも一部は数学的モデル化に基づいて、本発明のフルオロオレフィンは、幾つかの他のハロゲン化種と比較してオゾンの破壊にはほとんど寄与しないために、大気の化学的性質には本質的に有害な影響を与えないだろうと、出願人は考える。従って、本発明の好ましい組成物は、オゾンの破壊には実質上寄与しないという利点を有する。その好ましい組成物はまた、現在使用されている多くのヒドロフルオロアルカンと比較して、地球温暖化には実質上寄与しない。
【0026】
特定の好ましい形態において、本発明の組成物は、約1000以下の、より好ましくは約500以下の、そしてさらに好ましくは約150以下の地球温暖化係数(Global Warming Potential:GWP)を有する。特定の態様において、本組成物のGWPは約100以下であり、そしてさらに好ましくは約75以下である。本明細書において用いられている「GWP」は、二酸化炭素について100年の時間範囲で測定されたものであり、それは「オゾン破壊の科学的評価、2002年、世界気象協会の地球オゾン調査と監視プロジェクトの報告(The Scientific Assessment of Ozone Depletion, 2002, a report of the World Meteorological Association’s Global Ozone Research and Monitoring Project)」において定義されたものであり、この文献は本明細書中に参考文献として援用される。
【0027】
特定の好ましい形態において、本組成物はまた、好ましくは0.05以下の、より好ましくは0.02以下の、そしてさらに好ましくは約0のオゾン破壊係数(Ozone Depletion Potential:ODP)を有する。本明細書において用いられている「ODP」は、「オゾン破壊の科学的評価、2002年、世界気象協会の地球オゾン調査と監視プロジェクトの報告(The Scientific Assessment of Ozone Depletion, 2002, a report of the World Meteorological Association’s Global Ozone Research and Monitoring Project)」において定義されたものであり、この文献は本明細書中に参考文献として援用される。
【0028】
本組成物中に含まれる式Iの化合物、特にHFO-1234の量は、特定の適用に応じて広範囲に変化してもよく、この化合物を痕跡量よりも多く含む組成物と100%未満含む組成物は本発明の広い範囲内のものである。さらに、本発明の組成物は共沸性のもの、共沸性に類似のもの、あるいは非共沸性のものであってよい。好ましい態様において、本組成物はHFO-1234、好ましくはHFO-1234zeを、約5重量%から約99重量%まで、さらに好ましくは約5%から約95%までの量で含む。多くの追加の化合物が本組成物中に含まれていてもよく、全てのそのような化合物の存在は本発明の広い範囲内のものである。特定の好ましい態様において、本組成物は、HFO-1234zeに加えて、下記のものの1以上を含む:
ジフルオロメタン(HFC-32)
ペンタフルオロエタン(HFC-125)
1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)
1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)
ジフルオロエタン(HFC-152a)
1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ea)
1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236fa)
1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)
1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC-365mfc)

CO2
上記の成分のいずれの相対的な量、および本組成物に含むことのできるいかなる追加の成分の相対的な量も、組成物についての特定の適用に従って、本発明の包括的な広い範囲内で広範囲に変えることができ、全てのそのような相対的な量が本発明の範囲内であると考えられる。
【0029】
熱伝達組成物
本発明の組成物は本発明の化合物を広く変化する量で含むことができると考えられるが、本発明の冷媒組成物は、式Iに従う化合物、より好ましくは式IIに従う化合物、そしてさらに好ましくはHFO-1234zeを、組成物の少なくとも約50重量%、より好ましくは少なくとも約70重量%の量で含むのが一般的に好ましい。多くの態様において、本発明の熱伝達組成物はトランスHFO-1234zeを含むのが好ましい。特定の好ましい態様において、本発明の熱伝達組成物は、シスHFO-1234zeとトランスHFO-1234zeの組み合わせをシス:トランスの重量比率で約1:99から約10:99までの範囲で、より好ましくは約1:99から約5:95までの範囲で、そしてさらに好ましくは約1:99から約3:97までの範囲で含む。
【0030】
本発明の組成物は、組成物に特定の機能性を与えるかまたはそれを高める目的で、あるいは、ある場合には組成物のコストを下げるために、他の成分を含んでいてもよい。例えば、本発明に従う冷媒組成物、特に蒸気圧縮装置において用いられる組成物は、潤滑剤を、一般に組成物の約30〜約50重量%の量で含む。さらに、本組成物は、相溶剤(例えばプロパン)を、潤滑剤の相溶性および/または溶解性を高める目的で含んでいてもよい。プロパン、ブタンおよびペンタンを含むそのような相溶剤は、好ましくは組成物の約0.5〜約5重量%の量で存在する。油の溶解性を高めるために、界面活性剤と可溶化剤を組み合わせたものを本組成物に添加してもよく、このことは米国特許第6,516,837号に開示されていて、その開示は本明細書中に参考文献として援用される。一般に用いられる冷却潤滑剤でヒドロフルオロカーボン(HFC)冷媒とともに冷却機械類において用いられるポリオールエステル(POEs)、ポリアルキレングリコール(PAGs)、シリコーン油、鉱油、アルキルベンゼン(ABs)およびポリ(アルファ-オレフィン)(PAO)などを、本発明の冷媒組成物とともに用いてもよい。
【0031】
多くの現行の冷却装置は現在、現行の冷媒と関連して用いることに適合しているが、本発明の組成物は、装置に改造を施すかまたは施さずに、多くのそのような装置において用いるように適合させうると考えられる。多くの適用において、本発明の組成物は、現在は比較的高い容量を有する冷媒を用いている装置における代替物として、有利なものになるであろう。さらに、例えばコスト上の理由から、高い容量の冷媒に代えて本発明の低容量の冷媒組成物を用いるのが望ましいような態様においては、本発明の組成物のそのような態様は有利なものになる可能性がある。従って、特定の態様においては、本発明の組成物、特にトランスHFO-1234zeをかなりの割合で含む組成物、そして幾つかの態様においては本質的にトランスHFO-1234zeからなる組成物を、HFC-134aなどの現行の冷媒の代替物として用いるのが好ましい。特定の適用においては、本発明の冷媒は大きな排気量の圧縮機を使用する利益をもたらす可能性があり、それによってHFC-134aなどの他の冷媒よりも高いエネルギー効率が得られる。従って、本発明の冷媒組成物、特にトランスHFO-1234zeを含む組成物は、冷媒を置き換える適用についてのエネルギーを基礎とすることに関して、競争力のある利益をもたらす可能性がある。
【0032】
本組成物、特にHFO-1234zeを含む組成物はまた、商業用の空調装置に関して典型的に用いられる冷却機(チラー:chiller)において、(もともとの装置における場合とR-12やR-500などの冷媒の代替物として用いられる場合のいずれも)利点を有すると考えられる。そのような態様の特定のものにおいては、このHFO-1234ze組成物の中に、CF3Iなどの燃焼抑制剤を約0.5〜約5%含むのが好ましい。
【0033】
従って、本方法、装置および組成物は、自動車の空調装置と機器、商業用の冷却装置と機器、冷却機(chiller)、住宅用の冷蔵庫と冷凍庫、一般の空調装置、熱ポンプなどと関連して用いるように適合させることができる。
【0034】
発泡剤、気泡材料および発泡性組成物
発泡剤もまた、本組成物の1以上を含むか、あるいはそれを構成していてよい。上述したように、本発明の組成物は本発明の化合物を、広く変化する量で含むことができる。しかしながら、本発明に従う発泡剤として用いるための好ましい組成物については、式Iに従う化合物、より好ましくは式IIに従う化合物が、組成物の少なくとも約5重量%、より好ましくは少なくとも約15重量%の量で存在するのが一般的に好ましい。特定の好ましい態様において、本発明の発泡剤組成物は、HFO-1234(好ましくはHFO-1234ze)に加えて、下記の成分の1以上を共発泡剤、充填剤、蒸気圧調節剤として、あるいはその他のあらゆる目的で含んでいる:
ジフルオロメタン(HFC-32)
ペンタフルオロエタン(HFC-125)
1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)
1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)
ジフルオロエタン(HFC-152a)
1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ea)
1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236fa)
1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)
1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC-365mfc)

CO2
本発明の発泡剤組成物は、シスHFO-1234ze、トランスHFO-1234zeまたはこれらの組み合わせを含んでいてもよいと考えられる。特定の好ましい態様において、本発明の発泡剤組成物は、シスHFO-1234zeとトランスHFO-1234zeの組み合わせをシス:トランスの重量比率で約1:99から約10:99までの範囲で、より好ましくは約1:99から約5:95までの範囲で含む。
【0035】
別の態様において、本発明は、本発明の組成物を用いて調製される発泡性組成物、そして好ましくはポリウレタン、ポリイソシアヌレートおよび押出し熱可塑性気泡材料組成物を提供する。そのような気泡材料の態様において、本組成物の1以上のものが、発泡性組成物中に発泡剤として、あるいは発泡剤の一部として含まれ、その発泡性組成物は好ましくは、気泡材料または気泡構造を形成するのに適当な条件下で反応および/または発泡しうる1以上の追加の成分を含み、このことは当分野において周知である。本発明はまた、本発明の組成物を含む発泡剤を含むポリマー気泡材料配合物から調製される気泡材料、そして好ましくは独立気泡の気泡材料に関する。さらに別の態様において、本発明は、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレンテレフタレート(PET)の気泡材料などの熱可塑性気泡材料またはポリオレフィン気泡材料、好ましくは低密度気泡材料を含む発泡性組成物を提供する。
【0036】
特定の好ましい態様において、本発明の発泡剤組成物の中に、分散助剤、気泡安定化剤、界面活性剤およびその他の添加剤も含有させてもよい。界面活性剤は任意であるが、しかし気泡安定化剤として役立つように添加するのが好ましい。幾つかの典型的な材料は、DC-193、B-8404、およびL-5340の名称で販売されていて、これらは概してポリシロキサン-ポリオキシアルキレンブロック共重合体であって、例えば米国特許第2,834,748号、第2,917,480号および第2,846 ,458号に開示されているものであり、これらの文献の各々は本明細書中に参考文献として援用される。発泡剤混合物のためのその他の任意の添加剤としては、トリ(2-クロロエチル)ホスフェート、トリ(2-クロロプロピル)ホスフェート、トリ(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェート、トリ(1,3-ジクロロプロピル)ホスフェート、リン酸二アンモニウム、様々なハロゲン化芳香族化合物、酸化アンチモン、アルミニウム三水和物、ポリ塩化ビニル、およびこれらの類似物などの難燃剤がある。
【0037】
噴射剤およびエアゾール組成物
別の面において、本発明は、本発明の組成物を含むかまたは本質的にこの組成物からなる噴射剤組成物を提供し、そのような噴射剤組成物は好ましくは霧化しうる組成物である。本発明の噴射剤組成物は好ましくは、噴射されるべき材料と、本発明に従う組成物を含む(あるいは本質的にその組成物からなる、またはその組成物からなる)噴射剤とを含む。不活性成分、溶剤、およびその他の物質も、霧化可能混合物中に存在していてもよい。好ましくは、この霧化しうる組成物はエアゾール(aerosol)である。噴射されるべき適当な材料としては、限定するものではないが、消臭剤、香料、ヘアスプレー、クレンザーなどの化粧品、および磨き剤、さらには抗喘息成分、口臭除去成分、および好ましくは吸入することが意図される他の全ての薬物または薬剤を含む他の全ての薬品などの医薬物質がある。薬物またはその他の治療剤は、組成物中に治療量で存在するのが好ましく、組成物の残りの本質的な部分は本発明の式Iの化合物、好ましくはHFO-1234、さらに好ましくはHFO-1234zeを含む。
【0038】
工業用途、消費者または医療用途のためのエアゾール製品は典型的に、1種以上の噴射剤とともに、1種以上の有効成分、不活性成分または溶剤を含む。噴射剤は、製品をエーロゾル化した形態で排出する力を与える。エアゾール製品の幾つかのものは、二酸化炭素、窒素、亜酸化窒素、さらには空気のような圧縮気体を用いて噴射されるが、大部分の市販用のエアゾールは液化ガスの噴射剤を用いる。最も一般的に用いられる液化ガス噴射剤は、ブタン、イソブタン、およびプロパンなどの炭化水素である。ジメチルエーテルとHFC-152a(1,1-ジフルオロエタン)も、単独で、または炭化水素の噴射剤と混合して用いられる。あいにくと、これらの液化ガス噴射剤の全てがかなり可燃性なので、それらをエアゾール配合物の中に組み入れることによって、可燃性のエアゾール製品がしばしば得られるだろう。
【0039】
出願人は、エアゾール製品に配合するための不燃性の液化ガス噴射剤に対する継続的な要求を認識するに至った。本発明は、本発明の組成物、特にそして好ましくはHFO-1234、さらに好ましくはHFO-1234zeを含む組成物であって、例えばスプレー式クリーナーや潤滑剤、およびそれらの類似物を含む特定の工業用エアゾール製品、および例えば薬品を肺や粘膜に供給するためのものを含む医薬用エアゾールにおいて用いるための組成物を提供する。この例としては、喘息やその他の慢性肺障害疾患の治療のためや接近可能な粘膜または鼻腔内に薬物を供給するための計量投与吸入器(MDIs)がある。従って、本発明は、(人間や動物などの)生物の病気、疾病および類似の健康に関連する問題を治療するための方法を含み、この方法は、治療が必要な生物に薬物またはその他の治療成分を含む本発明の組成物を適用することを含む。特定の好ましい態様において、本組成物を適用する工程は、本発明の組成物を含有するMDIを用意すること(例えば、その組成物をMDIの中に導入すること)、そして次に、本組成物をMDIから放出することを含む。
【0040】
本発明の組成物、特にHFO-1234zeを含むかあるいは本質的にHFO-1234zeからなる組成物は、地球温暖化に実質的に寄与しない不燃性の液化ガス噴射剤およびエアゾールを提供することができる。本組成物は、コンタクトクリーナー、ダスター、潤滑剤スプレー、および類似物などの様々な工業用エアゾールまたはその他のスプレー可能な組成物や、個人用ケア製品、家財製品および自動車用製品などの消費者用エアゾールを配合するために用いることができる。HFO-1234zeは、計量投与吸入器などの医薬用エアゾールのための噴射剤組成物の重要な成分として用いるのに特に好ましい。多くの適用における本発明の医薬用エアゾールおよび/または噴射剤および/またはスプレー可能な組成物は、式(I)または(II)の化合物(好ましくはHFO-1234ze)に加えて、ベータ作用薬、コルチコステロイドまたはその他の薬物、および任意に、界面活性剤、溶剤、他の噴射剤、香味剤およびその他の賦形剤などその他の成分を含む。本発明の組成物は、これらの適用においてこれまで用いられた多くの組成物とは異なり、良好な環境特性を有し、地球温暖化に寄与する可能性があるとは考えられない。従って、本組成物は、特定の好ましい態様において、非常に低い地球温暖化係数を有する本質的に不燃性の液化ガス噴射剤を提供する。
【0041】
香味剤および芳香剤
本発明の組成物は、香味配合物および芳香配合物の一部として、そして特にこれらのためのキャリヤーとして用いられるときにも利点を提供する。この目的のための本組成物の適性は、0.39グラムのジャスモンを厚肉のガラス管の中に入れる試験手順によって例証された。1.73グラムのR-1234zeがガラス管に添加された。次いで、管は冷凍され、そして密封された。管が解凍したとき、混合物は一つの液体相を有していた。その溶液は20wt.%のジャスモンと80wt.%のR-1234zeを含んでいて、従ってエアゾールおよびその他の配合物において、香味配合物のための供給系のキャリヤーとして、あるいはその供給系の一部として用いるのに有利であることが確認された。また、植物から抽出されるものを含めて、芳香の抽出剤としての可能性も確認された。
【0042】
方法と装置
本発明の組成物は、冷却装置、空調装置および熱ポンプ装置において用いられる冷媒など、熱を伝達するための方法と装置における熱伝達流体としての用途を含めて、多くの方法と装置に関して有用である。本組成物はまた、エアゾールを発生させる装置と方法、好ましくはそのような装置と方法におけるエアゾール噴射剤を含むかまたはそれからなるエアゾールを発生させる装置と方法において用いるのに有利である。気泡材料を形成する方法および炎を消しそして抑える方法も、本発明の特定の面に含まれる。本発明はまた、特定の面において、そのような方法と装置において本組成物が溶剤組成物として用いられている物品から残留物を除去する方法も提供する。
【0043】
熱伝達方法
好ましい熱伝達方法は、概して言えば、本発明の組成物を用意し、そして組成物の相を変化させるその組成物へ、またはその組成物から、伝達させるべき熱を発生させることを含む。例えば、本方法は、冷却されるべき物体または流体の近くで、その流体または物品から熱を吸収することによって、好ましくは本冷媒組成物を蒸発させることによって本組成物を含む蒸気を生成し、それによって冷却することを提供する。好ましくは、その方法は冷媒の蒸気を圧縮するさらなる工程を含み、これは通常、比較的高い圧力において本組成物の蒸気を生成するために、圧縮機または類似の装置を用いて行なわれる。一般に、蒸気を圧縮する工程によって蒸気に熱が加えられ、従って比較的高い圧力の蒸気の温度は上昇する。好ましくは、本方法は、この比較的高い温度と圧力の蒸気から、蒸発と圧縮の工程によって加えられた熱の少なくとも一部を取り出すことを含む。熱を取り出す工程は好ましくは、蒸気が比較的高い圧力の条件にあるときに、高温高圧の蒸気を凝縮し、それによって本発明の組成物を含む比較的高い圧力の液体を生成することを含む。このとき、この比較的高い圧力の液体は、好ましくは、圧力の名目上の等エンタルピー低下を受け、それによって比較的低い温度で低い圧力の液体が生成する。このような態様においては、この温度の低下した冷媒液体は、次に、冷却されるべき物体または流体から伝達される熱によって蒸発する。
【0044】
本発明の別の方法の態様においては、本発明の組成物は、加熱されるべき液体または物体の近くで本組成物を含む冷媒を凝縮することを含む、加熱を行なうための方法において用いることができる。そのような方法は、上述したように、上で説明した冷却サイクルの逆のサイクルであることが多い。
【0045】
気泡材料を発泡させる方法
本発明の一つの態様は、気泡材料を形成する方法、そして好ましくはポリウレタンおよびポリイソシアヌレートの気泡材料を形成する方法に関する。その方法は、概して言えば、本発明の発泡剤組成物を用意し、その発泡剤組成物を(直接または間接に)発泡性組成物に添加し、そして気泡材料または気泡構造物が形成されるのに有効な条件下で発泡性組成物を反応させることを含み、この工程は当分野で周知である。例えば「ポリウレタンの化学と技術(Polyurethanes Chemistry and Technology)」Volumes I and II, Saunders and Frisch, 1962, John Wiley and Sons, New York, NY, (この記載は本明細書中に参考文献として援用される)に記載されているような、当分野で周知のいかなる方法も、本発明の気泡材料の態様に従って用いるために、使用するかあるいは適合させることができる。一般に、そのような好ましい方法は、イソシアネート、ポリオールまたはポリオールの混合物、発泡剤または本発明の組成物を1以上含む発泡剤の混合物、および触媒、界面活性剤、そして任意に難燃剤、着色剤またはその他の添加剤などの他の材料を組み合わせることによって、ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートの気泡材料を調製することを含む。
【0046】
多くの適用において、ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートの気泡材料のための成分をプレブレンド配合において用意するのが好都合である。最も典型的には、気泡材料配合物はプレブレンドされて、二つの成分にされる。イソシアネートと任意の特定の界面活性剤と発泡剤は第一の成分を構成し、これは通常「A」成分と呼ばれる。ポリオールまたはポリオールの混合物、界面活性剤、触媒、発泡剤、難燃剤、およびその他のイソシアネート反応性成分は第二の成分を構成し、これは通常「B」成分と呼ばれる。従って、AおよびBの副成分を、小さな調製物を得るための手混合によって、そして好ましくはブロック、スラブ、ラミネート、現場注入パネル、およびその他の物品、スプレーされたフォーム、フロス(泡:froths)および類似物を形成するための機械混合法によって混合することにより、ポリウレタンまたはポリイソシアヌレートの気泡材料が容易に調製される。任意に、難燃剤、着色剤、補助発泡剤、およびさらに他のポリオールなどの他の成分を、混合頭部(mix head)または反応位置に第三の流れとして添加することができる。しかし、最も好ましくは、これらは全て上記の一つのB成分の中に組み込まれる。
【0047】
また、本発明の組成物を用いて熱可塑性気泡材料を製造することもできる。例えば、一般的なポリスチレンやポリエチレン配合物を通常の方法で組成物に添加し、それにより硬質の気泡材料を製造することができる。
【0048】
洗浄方法
本発明はまた、製品、部材、部品、基板、またはその他のあらゆる物品またはその部分から、その物品に本発明の組成物を適用することによって、汚染物質を除去する方法を提供する。便宜上の目的から、「物品」という用語は、本明細書においては、そのようなあらゆる製品、部材、部品、基板、および類似物を意味するものとして用いられ、またさらには、あらゆる表面またはその部分を意味することが意図されている。さらに、「汚染物質」という用語は、物品の上に存在するあらゆる望ましくない材料または物質を意味することが意図されていて、そのような物質が物品の上に意図的に置かれている場合であっても、そうである。例えば、半導体デバイスの製造においては、基板の上にフォトレジスト材料を堆積してエッチング工程のためのマスクを形成し、次いでフォトレジスト材料を基板から除去するのが一般的である。ここで用いられる「汚染物質」という用語は、そのようなフォトレジスト材料に適用され、そしてそれを含むことが意図されている。
【0049】
本発明の好ましい方法は、本組成物を物品に適用することを含む。多くの様々な洗浄法において本発明の組成物を良好に用いることができると考えられるが、本組成物を超臨界洗浄法(supercritical cleaning techniques)に関して用いるのが、特に有利であると考えられる。超臨界洗浄は米国特許第6,589,355号に開示されていて、これは本発明の譲受人に譲渡されたが、この特許は本明細書中に参考文献として援用される。超臨界洗浄の適用については、特定の態様においては、HFO-1234(好ましくはHFO-1234ze)に加えて、1以上の追加の成分、例えば超臨界洗浄の適用に関する使用のために知られているCO2やその他の追加の成分などを、本洗浄組成物の中に含めるのが好ましい。また、特定の態様においては、特定の蒸気脱脂法や溶剤洗浄法に関連して本洗浄組成物を用いることができて、そしてそれが望ましいかもしれない。
【0050】
可燃性低減方法
特定の他の好ましい態様によれば、本発明は流体の可燃性を低減するための方法を提供し、前記方法は、前記流体に本発明の化合物または組成物を添加することを含む。広い範囲で可燃性を有する流体のいかなるものに関する可燃性も、本発明に従って低減するだろう。例えば、エチレンオキシド、可燃性ヒドロフルオロカーボン、およびHFC-152a、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a)、ジフルオロメタン(HFC-32)、プロパン、ヘキサン、オクタン、および類似物を含めた炭化水素などの流体に関する可燃性は、本発明に従って低減させることができる。本発明の目的に関して、可燃性流体とは、例えばASTM E-681などのあらゆる標準的で一般的な試験方法によって測定されて空気中で可燃性範囲を示すあらゆる流体であろう。
【0051】
本発明に従って流体の可燃性を低減するために、いかなる適当な量の本化合物または組成物も添加することができるだろう。当業者であれば認識できるであろうが、添加する量は、少なくとも一部は、対象の流体の可燃性の程度、およびその可燃性がどの程度まで低減されるのが望ましいか、に依存するだろう。特定の好ましい態様においては、可燃性流体に添加される化合物または組成物の量は、得られる流体を実質的に不燃性にするのに有効な量である。
【0052】
鎮火方法
本発明はさらに、炎を抑える方法を提供し、その方法は、炎に本発明の化合物または組成物を含む流体を接触させることを含む。炎を本組成物と接触させるために、いかなる適当な方法を用いてもよい。例えば、本発明の組成物を炎の上にスプレーしたり、注ぎ込むなどすることができ、あるいは炎の少なくとも一部を組成物に浸漬してもよい。ここでの教示を考慮して、当業者であれば、本発明において用いるための様々な一般的な鎮火装置と鎮火方法を容易に適用することができるだろう。
【0053】
滅菌方法
多くの物品、装置、および材料、特に医療分野で用いられるものは、患者や病院職員の健康と安全などの健康上と安全上の理由から、使用する前に滅菌されなければならない。本発明は、滅菌されるべき物品、装置または材料を、1以上の滅菌剤と組み合わせて、式Iの化合物、好ましくはHFO-1234、そしてさらに好ましくはHFO-1234zeを含む本発明の化合物または組成物と接触させることを含む、滅菌方法を提供する。当分野で多くの滅菌剤が知られていて、それらを本発明に関して用いるために適用することができると考えられるが、特定の好ましい態様においては、滅菌剤は、エチレンオキシド、ホルムアルデヒド、過酸化水素、二酸化塩素、オゾン、およびこれらの組み合わせを含む。特定の態様においては、エチレンオキシドが好ましい滅菌剤である。本明細書に含まれる教示に鑑みて、当業者であれば、本滅菌組成物および方法に関して用いられるべき本化合物と滅菌剤の相対的な割合を容易に決定することができるだろう。そしてそのような割合の全ての範囲が、本発明の広い範囲に含まれる。当業者には知られているように、エチレンオキシドなどの特定の滅菌剤は比較的可燃性の高い成分であるが、本発明に従う化合物は、組成物中に存在する他の成分とともに、滅菌組成物の可燃性を許容可能なレベルまで低減させるのに有効な量で、本組成物中に含まれる。
【0054】
本発明の滅菌方法は高温または低温の滅菌のいずれでもよいが、本発明の方法は、約250°Fから約270°Fまでの温度で、好ましくは実質的に密封された空間内で、本発明の化合物または組成物を使用することを含む。そのプロセスは通常、約2時間未満で完了させうる。しかし、プラスチック物品や電気部品など、ある物品はそのような高温に耐えることができないので、低温の滅菌を必要とする。低温滅菌方法においては、滅菌されるべき物品は、ほぼ室温から約200°Fまでの温度で、より好ましくはほぼ室温から約100°Fまでの温度で、本発明の組成物を含む流体にさらされる。
【0055】
本発明の低温滅菌は好ましくは、実質的に密封された、好ましくは気密の空間内で行なわれる少なくとも二工程のプロセスである。第一の工程(滅菌工程)において、洗浄されて気体透過性の袋の中に包まれた物品は、空間(chamber)内に置かれる。次いで、真空引きすることによって、あるいは空気を蒸気と置換することによって、空間から空気が排出される。特定の態様においては、空間内に蒸気を噴射することによって、好ましくは約30%〜約70%の範囲の相対湿度を達成するのが好ましい。そのような湿度は滅菌剤の滅菌効果を最大にするだろう。滅菌剤は、所望の相対湿度が達成された後に空間内に導入される。滅菌剤が包装を透過して物品の隙間に到達するのに十分な一定の時間が経過した後、滅菌剤と蒸気が空間から排出される。
【0056】
プロセスの好ましい第二の工程(通気工程)において、残留した滅菌剤を除去するために、物品は通気される。そのような残留物を除去することは、毒性のある滅菌剤の場合に特に重要であるが、本発明の実質的に非毒性の化合物が用いられるような場合には、その工程は任意である。典型的な通気プロセスには、空気洗浄(air wash)、連続的な通気、およびこれら二つの組み合わせが含まれる。空気洗浄は回分操作(バッチプロセス)であり、通常は空間内を比較的短い時間(例えば12分間)排気することと、次いで空間内に空気を大気圧以上で導入することを含む。このサイクルは、滅菌剤の所望の除去が達成されるまで、何回でも繰り返される。連続的な通気は典型的には、空間の一方の側にある入口を通して空気を導入することと、次いで、空間の他方の側にある出口を通して、この出口にわずかな真空を適用することによって空気を抜き出すことを含む。これら二つの方法は、しばしば組み合わされる。例えば、一般的なやり方は、空気洗浄を行い、次いで通気サイクルを行うことを含む。
【実施例】
【0057】
以下の実施例は本発明を例証する目的で提示されるが、しかし本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1
成績係数(coefficient of performance:COP)は、一般に認められている冷媒性能の尺度であり、冷媒の蒸発または凝縮を含む特定の加熱または冷却のサイクルにおける冷媒の相対的な熱力学的効率を表わすのに特に有益である。冷却工学において、この用語は、蒸気を圧縮する際に圧縮機によって加えられたエネルギーに対する有用な冷却の比率を表わす。冷媒の能力(capacity)は冷媒が与える冷却または加熱の量を表わし、それは、冷媒の所定の容積流量に対して圧縮機が熱量を与える性能の尺度を与える。言い換えると、特定の圧縮機があるとき、冷媒の能力が大きいほど、その冷媒はより大きな冷却能力または加熱能力を伝えるだろう。特定の操作条件における冷媒のCOPを評価するための一つの手段は、標準冷却サイクル分析法を用いる冷媒の熱力学的特性からのものである(例えば、R.C. Downing, FLUOROCARBON REFRIGERANTS HANDBOOK(フルオロカーボン冷媒便覧), Chapter 3, Prentice-Hall, 1988を参照されたい)。
【0058】
冷却/空調サイクル装置が用意され、このとき、圧縮機の入口温度を約50°Fとする名目上の等エントロピー圧縮の下で、凝縮器の温度は約150°Fであり、蒸発器の温度は約−35°Fであった。1.00のCOP 値と1.00の能力値および175°Fの排出温度を有するHFC-134aを基にして、ある範囲の凝縮器温度と蒸発器温度にわたって、本発明の幾つかの組成物についてCOPが測定され、これを下の表Iに報告する。
【0059】
【表1】

【0060】
この実施例は、本組成物において用いるための好ましい化合物の特定のものはそれぞれ、HFC-134aよりも良好なエネルギー効率を有し(1.00と比較して1.02、1.04および1.13)、そして本冷媒組成物を用いる圧縮機は有利な排出温度をもたらすであろう(175と比較して158、165および155)、ということを示す。というのは、この排出温度の結果は、補修管理の問題の低減をもたらすと考えられるからである。
【0061】
実施例2
様々な冷却潤滑剤とのHFO-1225yeおよびHFO-1234zeの混和性が試験された。試験された潤滑剤は、鉱油(C3)、アルキルベンゼン(Zerol 150)、エステルオイル(Mobil EAL 22ccおよびSolest 120)、ポリアルキレングリコール(PAG)オイル(134a系のためのGoodwrench Refrigeration Oil)、およびポリ(アルファ-オレフィン)オイル(CP-6005-100)である。それぞれの冷媒/オイルの組み合わせについて、三つの組成物が試験された。すなわち、5、20および50重量パーセントの潤滑剤と、各々の残りは試験に供された本発明の化合物である。
【0062】
潤滑剤組成物は厚肉のガラス管の中に置かれた。ガラス管が排気され、本発明に従う冷媒化合物が添加され、次いで管は密封された。次いで、ガラス管は空気浴環境の容器内に置かれた。容器内の温度は約−50℃から70℃まで変えられた。およそ10℃の間隔で、一つ以上の液体相の存在について、管の内容物の目視観察が行なわれた。一つを越える液体相が観察された場合、混合物は不混和性であるとされる。一つだけの液体相が観察された場合、混合物は混和性であるとされる。二つの液体相が観察されたが、しかし液体相のうちの一つが非常に少ない容積だけを占めている場合、混合物は部分的に混和性であるとされる。
【0063】
ポリアルキレングリコールとエステルオイル潤滑剤は、試験された全ての割合において、全ての温度範囲にわたって混和性であると判定されたが、ただしポリアルキレングリコールとHFO-1225yeの混合物については、その冷媒混合物は−50℃から−30℃の温度範囲においては不混和性であると認められ、そして−20℃から50℃の範囲では部分的に混和性であった。60℃での冷媒中の50重量パーセントの濃度のPAGにおいて、その冷媒/PAG混合物は混和性であった。70℃において、冷媒中の5重量パーセントの潤滑剤から冷媒中の50重量パーセントの潤滑剤まで、それは混和性であった。
【0064】
実施例3
本発明の冷媒化合物および組成物のPAG潤滑オイルとの適合性が、冷却装置と空調装置において用いられる金属と接触している状態で、350°Fにおいて試験された。この温度は、多くの冷却や空調の適用において見出される条件よりもずっと厳しい条件を表わす。
【0065】
アルミニウム、銅および鋼の試験片(クーポン)が、厚肉のガラス管の中に置かれた。2グラムのオイルが管の中に添加された。次いで、ガラス管を排気し、そして1グラムの冷媒が添加された。ガラス管を炉の中に350°Fにおいて一週間入れ、そして目視観察が行なわれた。曝露期間の最後にガラス管を取り出した。
【0066】
この手順は、オイルと本発明の化合物の下記の組み合わせについて行なわれた:
a)HFO-1234zeとGM Goodwrench PAGオイル
b)HFO-1243zfとGM Goodwrench PAGオイル
c)HFO-1234zeとMOPAR-56 PAGオイル
d)HFO-1243zfとMOPAR-56 PAGオイル
e)HFO-1225yeとMOPAR-56 PAGオイル。
【0067】
全てのケースにおいて、ガラス管の内容物の外観に極少の変化があった。このことは、本発明の冷媒化合物と組成物は、冷却装置と空調装置およびこれらのタイプの装置においてその組成物の中に含まれるかあるいはその組成物とともに用いられることの多いタイプの潤滑オイルにおいて見出されるアルミニウム、鋼および銅と接触したときに安定である、ということを示す。
【0068】
比較例
アルミニウム、銅および鋼の試験片が、鉱油およびCFC-12とともに厚肉のガラス管の中に置かれ、実施例3におけると同様に、350°Fにおいて一週間加熱された。曝露期間の最後にガラス管を取り出し、そして目視観察が行なわれた。液体の内容物が黒色に変化したのが観察され、このことは、管の内容物が激しく分解したことを示す。
【0069】
CFC-12と鉱油はこれまで、多くの冷却系と冷却方法において組み合わせて選択されてきた。従って、本発明の冷媒化合物と組成物は、多くの一般的に用いられている潤滑オイルと一緒に用いるときに、広く用いられている先行技術の冷媒−潤滑オイルの組み合わせよりも、かなり良好な安定性を有する。
【0070】
実施例4−ポリオール気泡材料
本実施例は、本発明の好ましい態様のうちの一つに従う発泡剤の使用、すなわちHFO-1234zeの使用、および本発明に従うポリオール気泡材料の製造を例証する。ポリオール気泡材料配合物の成分は下記の表に従って調製された。
【0071】
【表2】

【0072】
(*)Voranol 490はスクロース系のポリオールであり、Voranol 391はトルエンジアミン系のポリオールであり、それぞれDow Chemicalから得られる。B-8462はDegussa-Goldschmidtから入手できる界面活性剤である。Polycat触媒は第三アミン系のものであり、Air Productsから入手できる。イソシアネートM-20SはBayer LLCの製品である。
【0073】

気泡材料は、発泡剤を添加せずに、成分を最初に混合することによって調製された。二つのフィッシャー・ポーター管のそれぞれに、約52.6グラムの(発泡剤を含まない)ポリオール混合物を充填し、密封し、次いで冷蔵庫の中に置いて冷却し、そしてわずかな真空を形成した。ガスビュレットを用いて、約17.4グラムのHFO-1234zeを各々の管に添加し、次いで温水中の超音波浴中に管を置き、そして30分間放置した。得られた溶液は曇っていて、室温において測定した蒸気圧は約70psigの蒸気圧を示し、このことは、発泡剤が溶液中に溶解していないことを示す。次いで、管を冷凍室の中に27°Fにおいて2時間置いた。蒸気圧を再び測定すると14psigであった。約87.9グラムのイソシアネート混合物を金属容器の中に入れ、そして冷蔵庫の中に置いて約50°Fまで冷却した。次いで、ポリオールの管を開け、金属の混合容器の中に秤量した(約100グラムのポリオールブレンドを用いた)。次いで、冷却した金属容器からイソシアネートをすぐにポリオールの中に注ぎ、そして二つのプロペラを有するエアミキサーを用いて3000RPM(回転/分)で10秒間混合した。この配合物は攪拌するとすぐに泡立ち始め、次いでこれを8x8x4インチの箱の中に注ぎ込み、そして発泡させた。泡立ちが起こったため、クリーム時間は測定することができなかった。気泡材料は4分間のゲル化時間と5分間の不粘着時間を有していた。次いで、気泡材料を室温において二日間硬化させた。次いで、気泡材料を、物理的特性を測定するのに適した試料に切断し、それは2.14pcfの密度を有していた。Kファクターが測定され、次の通りであった。
【0074】
【表3】

【0075】
実施例5−ポリスチレン気泡材料
本実施例は、本発明の二つの好ましい態様に従う発泡剤の使用、すなわちHFO-1234zeおよびHFO-1234yfの使用、およびポリスチレン気泡材料の製造を例証する。特定の発泡剤とポリマーで気泡材料を製造することができるか否か、およびその気泡材料の性質を決定するための手助けになるように、試験装置と試験手順が決定された。粉砕したポリマー(Dow Polystyrene 685D)と本質的にHFO-1234zeからなる発泡剤が、容器内で配合された。容器の略図を、あとの方に示す。容器の容積は200cm3で、それは二つのパイプフランジと直径2インチで長さ4インチのスケジュール40ステンレス鋼パイプの部分から成っている(図1を参照)。容器を炉中に置き、温度を約190°Fから約285°Fまで、好ましくはポリスチレンについて265°Fに設定し、そこで温度が平衡に達するまで放置した。
【0076】
次いで、容器内の圧力が開放され、発泡したポリマーが直ちに生成した。発泡剤は、それがポリマーに溶解したときにポリマーを可塑化する。この方法を用いてこのように製造された二つの気泡材料の得られた密度を、トランスHFO-1234zeおよびHFO-1234yfを用いて製造された気泡材料の密度として、表1に示す。データは、本発明に従って気泡材料のポリスチレンを得ることができることを示す。ポリスチレンを伴うR1234zeについてのダイ温度は約250°Fであった。
【0077】
【表4】

【0078】
発明の態様
[1]
熱伝達組成物であって、
(a)式Iで表わされる少なくとも1つのフルオロアルケン:
XCF3−z (I)
(ここでXはC2またはC3不飽和置換または非置換アルキル基であり、Rは独立してCl、F、Br、IまたはHであり、そしてZは1〜3である)を含み、
約1000以下の地球温暖化係数(GWP)を有する、前記組成物。
[2]
前記少なくとも1つのフルオロアルケンは式IIで表わされる化合物であり、
【0079】
【化2】

【0080】
ここでRはそれぞれ独立してCl、F、Br、IまたはHであり、R’ は(CR2)nYであり、YはCRF2であり、そしてnは0または1である、1に記載の熱伝達組成物。
[3]
前記少なくとも1つのフルオロアルケンは、少なくとも1つのテトラフルオロプロペン(HFO-1234)を含む、1に記載の熱伝達組成物。
[4]
前記少なくとも1つのHFO-1234はHFO-1234yfを含む、3に記載の熱伝達組成物。
[5]
前記少なくとも1つのHFO-1234はHFO-1234zeを含む、3に記載の熱伝達組成物。
[6]
式IIで表わされる前記組成物を少なくとも約50重量%含む、2に記載の熱伝達組成物。
[7]
前記少なくとも1つのフルオロアルケンは、少なくとも1つのテトラフルオロプロペン(HFO-1234)を含む、2に記載の熱伝達組成物。
[8]
前記少なくとも1つのHFO-1234はHFO-1234yfを含む、7に記載の熱伝達組成物。
[9]
前記少なくとも1つのHFO-1234は本質的にHFO-1234yfからなる、7に記載の熱伝達組成物。
[10]
前記少なくとも1つのHFO-1234はHFO-1234zeを含む、7に記載の熱伝達組成物。
[11]
HFO-1234を約5重量%から約99重量%まで含む、7に記載の熱伝達組成物。
[12]
HFO-1234を約5重量%から約95重量%まで含む、7に記載の熱伝達組成物。
[13]
前記HFO-1234は、HFO-1234yf、HFO-1234zeおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される、12に記載の熱伝達組成物。
[14]
前記HFO-1234は、トランスHFO-1234とシスHFO-1234zeを、シス:トランスの重量比率で約1:99から約10:99までの範囲で含む、13に記載の熱伝達組成物。
[15]
式Iで表わされる前記組成物を、ほぼ痕跡量よりも多い量から約100重量%未満まで含む、1に記載の熱伝達組成物。
[16]
HFO-1234yfを約5重量%から約95重量%まで含む、15に記載の熱伝達組成物。
[17]
HFO-1234zeを約5重量%から約95重量%まで含む、15に記載の熱伝達組成物。
[18]
前記HFO-1234zeは、少なくとも約90重量%のトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(トランスHFO-1234ze)を含む、17に記載の熱伝達組成物。
[19]
ジフルオロメタン(HFC-32)、ペンタフルオロエタン(HFC-125)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)、ジフルオロエタン(HFC-152a)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ea)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236fa)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC-365mfc)、水、CO2 、およびこれらの2以上の組み合わせからなる群から選択される1以上の化合物をさらに含む、1に記載の熱伝達組成物。
[20]
1以上の潤滑剤をさらに含む、1に記載の熱伝達組成物。
[21]
1以上の潤滑剤を、熱伝達組成物の約30重量%から約50重量%までの量でさらに含む、1に記載の熱伝達組成物。
[22]
1以上の鎮火剤をさらに含む、1に記載の熱伝達組成物。
[23]
1以上の鎮火剤を、熱伝達組成物の約0.5重量%から約5重量%までの量でさらに含む、1に記載の熱伝達組成物。
[24]
前記鎮火剤はCF3Iを含む、1に記載の熱伝達組成物。
[25]
冷却装置に含まれる現行の冷媒を取り替える方法であって、
前記現行の冷媒の少なくとも一部を前記装置から取り替えることと、そして
式Iで表わされる少なくとも1つのフルオロアルケン:
XCF3−z (I)
(ここでXはC2またはC3不飽和置換または非置換アルキル基であり、Rは独立してCl、F、Br、IまたはHであり、そしてZは1〜3である)を含む冷媒組成物を前記装置に導入することによって前記現行の冷媒の少なくとも一部を取り替えること、
を含む、前記方法。
[26]
前記現行の冷媒はHFC-134aを含む、25に記載の方法。
[27]
前記現行の冷媒はR-12を含む、25に記載の方法。
[28]
前記現行の冷媒はR-500を含む、25に記載の方法。
[29]
前記現行の冷却装置は、少なくとも1つの比較的大きな排気量の圧縮機を含む、25に記載の方法。
[30]
前記現行の冷却装置は、商業用の空調装置において用いられる冷却機である、25に記載の方法。
[31]
前記現行の冷却装置は、住宅用の空調装置において用いられる冷却機である、25に記載の方法。
[32]
前記冷媒は約1000以下の地球温暖化係数(GWP)を有する、25に記載の方法。
[33]
前記冷媒はHFO-1234zeを約5重量%から約95重量%まで含む、25に記載の方法。
[34]
前記冷媒はHFO-1234yfを約5重量%から約95重量%まで含む、25に記載の方法。
[35]
前記現行の冷却装置は、商業用の空調装置において用いられる冷却機である、34に記載の方法。
[36]
流体または物体へ、または流体または物体から熱を伝達する方法であって、
流体または物体を、式Iで表わされるフルオロアルケン:
XCF3−z (I)
(ここでXはC2またはC3不飽和置換または非置換アルキル基であり、Rはそれぞれ独立してCl、F、Br、IまたはHであり、そしてZは1〜3である)を含む組成物と接触させることを含み、
前記組成物は1000以下の地球温暖化係数(GWP)を有する、前記方法。
[37]
前記組成物は約500以下のGWPを有する、36に記載の方法。
[38]
式Iで表わされる前記フルオロアルケンはHFO-1234yfを含む、36に記載の方法。
[39]
式Iで表わされる前記フルオロアルケンはHFO-1234zeを含む、36に記載の方法。
[40]
前記接触させる工程は、自動車の空調装置の中で前記組成物を循環させることを含む、36に記載の方法。
[41]
前記接触させる工程は、商業用の冷却装置の中で前記組成物を循環させることを含む、36に記載の方法。
[42]
前記接触させる工程は、冷却機の中で前記組成物を循環させることを含む、36に記載の方法。
[43]
前記接触させる工程は、住宅用の冷蔵庫と冷凍庫の中で前記組成物を循環させることを含む、36に記載の方法。
[44]
前記接触させる工程は、熱ポンプの中で前記組成物を循環させることを含む、36に記載の方法。
[45]
発泡性組成物であって、
発泡性ポリマーまたはプレポリマーと、式Iで表わされる少なくとも1つのフルオロアルケン:
XCF3−z (I)
(ここでXはC2またはC3不飽和置換または非置換アルキル基であり、Rは独立してCl、F、Br、IまたはHであり、そしてZは1〜3である)を含む発泡剤とを含み、
前記発泡剤は約1000以下の地球温暖化係数(GWP)を有する、前記組成物。
[46]
45に記載の発泡性組成物から製造された気泡材料。
[47]
気泡材料のプレミックス組成物であって、
ポリマーまたはプレポリマーと、式Iで表わされる少なくとも1つのフルオロアルケン:
XCF3−z (I)
(ここでXはC2またはC3不飽和置換または非置換アルキル基であり、Rはそれぞれ独立してCl、F、Br、IまたはHであり、そしてZは1〜3である)を含む発泡剤とを含む、前記組成物。
[48]
約1000以下の地球温暖化係数(GWP)を有する、47に記載の気泡材料のプレミックス組成物。
[49]
鎮火剤をさらに含む、48に記載の気泡材料のプレミックス組成物。
[50]
組成物であって、
(a)式Iで表わされる少なくとも1つのフルオロアルケン:
XCF3−z (I)
(ここでXはC2またはC3不飽和置換または非置換アルキル基であり、Rはそれぞれ独立してCl、F、Br、IまたはHであり、そしてZは1〜3である)、および
(b)ポリオールプレミックス成分、香味剤、芳香剤、およびこれらの2以上の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの補助剤、
を含む前記組成物。
[51]
約1000以下の地球温暖化係数(GWP)を有する、50に記載の組成物。
[52]
噴射剤組成物であって、
(a)式Iで表わされる少なくとも1つのフルオロアルケン:
XCF3−z (I)
(ここでXはC2またはC3不飽和置換または非置換アルキル基であり、Rは独立してCl、F、Br、IまたはHであり、そしてZは1〜3である)を含み、
約1000以下の地球温暖化係数(GWP)を有する、前記組成物。
[53]
発泡剤であって、
(a)式Iで表わされる少なくとも1つのフルオロアルケン:
XCF3−z (I)
(ここでXはC2またはC3不飽和置換または非置換アルキル基であり、Rは独立してCl、F、Br、IまたはHであり、そしてZは1〜3である)を含み、そして
約1000以下の地球温暖化係数(GWP)を有する、前記発泡剤。
[54]
鎮火剤をさらに含む、53に記載の発泡剤。
[55]
植物から香味化合物または芳香化合物を抽出する方法であって、
前記植物を、式Iで表わされる少なくとも1つのフルオロアルケン:
XCF3−z (I)
(ここでXはC2またはC3不飽和置換または非置換アルキル基であり、Rは独立してCl、F、Br、IまたはHであり、そしてZは1〜3である)を含む抽出剤と接触させることを含む、前記方法。
[56]
前記抽出剤はHFO-1234を含む、55に記載の方法。
[57]
前記抽出剤はHFO-1234zeを含む、55に記載の方法。
[58]
約0.05以下のオゾン破壊係数(ODP)を有する、1に記載の熱伝達組成物。
[59]
約0.02以下のオゾン破壊係数(ODP)を有する、1に記載の熱伝達組成物。
[60]
約0(ゼロ)のオゾン破壊係数(ODP)を有する、1に記載の熱伝達組成物。
[61]
相溶剤をさらに含む、1に記載の組成物。
[62]
前記相溶剤は、組成物の約0.5重量%から約5重量%までの量で存在する、62に記載の組成物。
[63]
洗浄すべき物品を1に記載の組成物と接触させることを含む、超臨界洗浄方法。
[64]
1に記載の前記組成物はさらにCO2を含む、63に記載の超臨界洗浄方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)の発泡剤としての使用。
【請求項2】
前記発泡剤が少なくとも約5重量%のHFO-1234zeを含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
ポリオール、及び
1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)を含む発泡剤
を含む発泡性組成物。
【請求項4】
ポリウレタン気泡材料及びポリイソシアヌレート気泡材料から選ばれる気泡材料を形成するために発泡性である、請求項3に記載の発泡性組成物。
【請求項5】
熱可塑性気泡材料を形成するために発泡性であり、発泡剤として1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)を含む発泡性組成物。
【請求項6】
熱可塑性気泡材料がポリスチレン気泡材料及びポリエチレン気泡材料から選ばれる、請求項5に記載の発泡性組成物。
【請求項7】
発泡剤を含むポリマー気泡材料組成物を含む気泡材料であって、前記発泡剤が1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)を含む、気泡材料。
【請求項8】
独立気泡の気泡材料である請求項7に記載の気泡材料。
【請求項9】
前記ポリマー気泡材料組成物がポリウレタン気泡材料、ポリイソシアヌレート気泡材料及び熱可塑性気泡材料から選ばれる、請求項7に記載の気泡材料。
【請求項10】
(A)イソシアネートを含む第1の成分、及び
(B)ポリオールまたはポリオール混合物、及び1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)を含む発泡剤を含む第2の成分
を含むプレブレンド組成物。
【請求項11】
(1)1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)を含む発泡剤を提供し、
(2)前記発泡剤を発泡性組成物に加え、
(3)前記発泡性組成物を気泡材料または気泡構造を形成するのに有効な条件下で反応させる
ことを含む気泡材料を形成する方法。
【請求項12】
請求項10に記載の第1の成分及び第2の成分を共に混合することによってポリウレタンまたはポリイソシアヌレート気泡材料を成形する方法。
【請求項13】
イソシアネート;ポリオールまたはポリオール混合物;1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)を含む発泡剤;並びに少なくとも1つの触媒及び/または少なくとも1つの界面活性剤を混合することを含むポリウレタンまたはポリイソシアヌレート気泡材料を形成する方法。
【請求項14】
前記気泡材料が少なくとも1つのブロック、スラブ、ラミネート、現場注入パネル、スプレーされたフォーム、及びフロスを形成するために使用される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
請求項12または13に記載の方法によって得られるブロック、スラブ、ラミネート、現場注入パネル、スプレーされたフォーム、またはフロス。
【請求項16】
前記発泡剤が少なくとも約15重量%のHFO-1234zeを含む、請求項1に記載の使用。
【請求項17】
前記第2の成分が界面活性剤、触媒及び難燃剤からなる群から選ばれる少なくとも1つの成分をさらに含む、請求項10に記載のプレブレンド組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2010−265471(P2010−265471A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−165520(P2010−165520)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【分割の表示】特願2007−511024(P2007−511024)の分割
【原出願日】平成17年4月29日(2005.4.29)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】