説明

フッ素電解装置

【課題】運搬が容易で、必要なときにすぐに所望の量だけフッ素を発生させるコンパクトな、運転操作の容易なフッ素電解装置を得る。
【解決手段】フッ素電解装置は、フッ化水素含有溶融塩を収納し電気分解する円筒形で電解電極としての陰極である電解槽本体10と、陽極30とを有する。陽極30は、陽極上部31と陽極下部32が一体的に炭素から形成され、陽極上部は、円筒状に形成され、その上端が電解槽から外部に突出して装着され、陽極下部は、円柱上又は円筒状に形成される。陽極を囲む円筒状の隔壁20が設けられ、電解槽本体10の外周には電気ヒーター17と断熱材が巻き付けられ、フッ化水素含有溶融塩は常温で固体であり、電気ヒーターにより加熱されると液体となり、加熱されたフッ化水素含有溶融塩の液面を検出する液面センサー61を設けることを特徴としたフッ素電解装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ化水素含有溶融塩を電気分解し、フッ素を発生させるフッ素電解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素ガスは、半導体の製造分野において必要不可欠なガスであり、そのフッ素ガスは、フッ化水素含有溶融塩、即ち、フッ化カリウムとフッ化水素等の混合溶融塩を電解液として電気分解するフッ素電解装置を使用して製造されている。
このフッ素ガスの製造は、通常、大型のフッ素電解装置を使用して製造されているが、製造されたフッ素ガスは、例えば、ボンベ等に充填されて、半導体の製造工場に運搬されている。そして、半導体の製造工程において、半導体のエッチングに使用されるために、半導体の製造設備の付近に供給されている。
【0003】
しかしながら、フッ素ガスは、反応性が高く、高い毒性と腐食性のため、不活性ガス雰囲気のボンベに充填して使用している。そして、使用状態においては高度に安全で腐食に耐える高価な供給ラインと減圧弁を使用してフッ素ガスの供給ラインを構築する必要があった。また、ボンベ中に、毒性のあるフッ素ガスを低圧、又は不活性ガス(He、Ar、N)で希釈して貯蔵するため、ボンベの1本あたりの貯蔵量を多くすることができなかった。一方、半導体の製造工程において、フッ素ガスの欠乏から製造が停止することを防止するため、多量のフッ素ガスボンベを保管しておく場合があった。
【0004】
また、フッ素ガスは高価なため、多量のフッ素ガスを貯蔵しておくこともコストアップの要因となり、好ましくなかった。そして、フッ素ガスは、不純物の極めて少ない高純度のガスが必要とされているため、保管においてこの純度を維持することも必要とされている。
さらに、フッ素ガス製造のためのフッ素電解装置によるフッ素の製造には、非常に高い毒性及び腐食性を持つ無水フッ化水素(HF)が不可欠であり、この無水フッ化水素(HF)を取り扱う設備には、その安全性を確保するために高度の配慮が必要であり、頻繁で定期的な点検と維持管理が必要である。
そのため、危険なフッ素ガスを事業所に保管することなく、現場で必要な時に、必要な量だけを供給できる装置が要求されている。
【0005】
そして、半導体の製造工程等の現場において、製造に必要な量だけ、フッ素ガスを適時供給することが望まれていた。これに応じて、それぞれの半導体の製造工程等の現場に近接してフッ素電解装置を設置するには、コンパクトな、操作が簡単で、保守の容易な装置が必要であった。
【0006】
また、フッ素ガスの製造として、フッ化カリウムとフッ化水素の混合溶融塩を電解するためには、陽極として炭素が使用され、陰極は電解槽の金属が使用されている。
大型のフッ素電解装置においては、電極も大型となり、電極を保持する部材や、陽極の炭素板は、電解中に破損や破壊しないように強度が大きいものが必要とされ、また、いわゆる陽極効果の発生を防止する必要もあった。
【0007】
従来のフッ化カリウムとフッ化水素の混合溶融塩を電解する電解槽101は、図8に示すように、電解槽本体110に上蓋145を取り付け、上蓋145にカーボン電極130を取り付け、そのカーボン電極130の周囲に隔壁120を取り付けている。さらに、上蓋145には、フッ素ガス取出し孔146と水素ガス取出し孔144が設けられると共に、フッ化カリウムとフッ化水素の混合溶融塩を供給する供給パイプ147が取り付けられている。
また、電解槽本体110の内部には陰極117設けられている。
【0008】
さらに、電解槽本体110の周囲には、フッ化カリウムとフッ化水素の混合溶融塩を溶融状態に維持するために、温水パイプ162が巻きつけられて、この温水パイプ162に温水を供給する温水加熱装置163と温水送水管161が取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。
このため、電解槽101は全体としてコンパクトにすることが難しく、運転操作も簡単ではなかった。
【特許文献1】特許第3634858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、フッ素ガスを使用する場所の付近へ運搬が容易で、必要なときにすぐに所望の量だけフッ素を発生させるコンパクトな、運転操作の容易なフッ素電解装置が必要とされていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1の本発明は、フッ化水素含有溶融塩を電気分解しフッ素を発生させるフッ素電解装置において、
フッ素電解装置は、フッ化水素含有溶融塩を収納し電気分解する円筒形で電解電極としての陰極である電解槽本体と、電解電極としての陽極とを有し、
陽極は、陽極上部と陽極下部が一体的に炭素から形成され、陽極上部は、円筒状に形成され、その上端が電解槽の上部外壁から外部に突出して装着され、陽極下部は、円柱上又は円筒状に形成され、
陽極の周囲を囲む円筒状の隔壁が設けられ、隔壁には多数の貫通孔が形成され、
電解槽本体の外周には電気ヒーターが装着され、電気ヒーターの外側は断熱材が取付けられ、電解槽本体中のフッ化水素含有溶融塩は常温で固体であり、電気ヒーターにより加熱されると液体となり、加熱されたフッ化水素含有溶融塩の液面を検出する液面センサーを設けることを特徴としたフッ素電解装置である。
【0011】
請求項1の本発明では、フッ素電解装置は、フッ化水素含有溶融塩を収納し電気分解する円筒形で電解電極としての陰極である電解槽本体と、電解電極としての陽極とを有しているため、収納されるフッ化水素含有溶融塩の量を少なくし、溶融塩が電極に接触する面積を大きくし、電解槽、陽極と陰極との全体の体積をコンパクトにすることができる。
【0012】
陽極は、陽極上部と陽極下部が一体的に炭素から形成されるため、陽極は炭素のみで形成され、陽極において接合部分がないため、強度も強く、電解槽内に陽極とその保持部材との接触部分がなく、電気的接触抵抗が生ずることがない。
陽極上部は、円筒状に形成され、その上端が電解槽の上部外壁から外部に突出して装着されるため、電解槽の上部外壁と陽極上部との間のシールが容易である。電解槽の上部外壁から外部に突出した陽極上部で電解電流を受電することができるため、炭素電極の受電部分が電解槽内になく、フッ化水素等にさらされることなく、接触抵抗が増加することはない。
【0013】
陽極下部は、円柱上又は円筒状に形成されるため、電解槽本体を円筒形に形成して、全体の体積をコンパクトにすることができると共に、フッ化水素含有溶融塩を液化したり固化したりすることを繰り返しても、炭素から形成された陽極にストレスがかかることが少なく、耐久性を向上させることができる。
【0014】
陽極の周囲を囲む円筒状の隔壁が設けられ、隔壁には多数の貫通孔が形成される。このため、円筒形の陽極を完全に、コンパクトに囲むことができ、フッ素ガスは、不純物を少なくして取出すことができる。隔壁に形成された多数の貫通孔によりフッ化水素含有溶融塩とそのイオンを素早く陽極と陰極に周囲に移動させることができ、電解効率を向上させることができる。
【0015】
電解槽本体の外周には電気ヒーターが装着され、電気ヒーターの外側は断熱材が取付けられるため、電解槽本体をコンパクトな装置で、簡単に加熱することができ、電流量を制御することにより容易に温度管理が可能であり、操作が容易である。また、断熱材で保温ができ、温度管理と取り扱いが容易である。
【0016】
電解槽本体中のフッ化水素含有溶融塩は常温で固体であり、電気ヒーターにより加熱されると液体となるため、電解槽を使用しないときは、内部の溶融塩は固体であり、電解槽を運搬するときに、溶融塩が漏れ出すことがなく、取扱が容易である。電解槽を使用して電気分解をするときは、電気ヒーターにより加熱されて、素早く電解操作をすることができる。
【0017】
請求項2の本発明は、加熱されたフッ化水素含有溶融塩の液面を検出する液面センサーを設けたフッ素電解装置である。
【0018】
請求項2の本発明では、加熱されたフッ化水素含有溶融塩の液面を検出する液面センサーを設けたため、電解槽本体にフッ化水素含有溶融塩を充填する量を一定量にすることができると共に、電気分解したフッ化水素含有溶融塩の量を測定して、電気分解可能なフッ化水素含有溶融塩の量を知るとともに、フッ素電解装置の交換時期を検知することができる。
【0019】
請求項3の本発明は、電解槽本体は、上部が下部よりも直径が大きく形成され、直径が大きな電解槽本体上部に位置する範囲で、電解槽本体中のフッ化水素含有溶融塩の液面の上限と下限を液面センサーで検出し、制御して電気分解を行うフッ素電解装置である。
【0020】
請求項3の本発明では、電解槽本体は、上部が下部よりも直径が大きく形成され、電解槽本体中のフッ化水素含有溶融塩の液面が、直径が大きな電解槽本体上部に位置する範囲で電気分解を行う。このため、電気分解をするフッ化水素含有溶融塩の量を多くすることができ、電気分解のために電極と接触するフッ化水素含有溶融塩の量を少なくして、電気分解の効率を上げることができ、フッ化水素含有溶融塩の全体の量を少なくすることができる。また、フッ化水素含有溶融塩の液面の制御を容易にすることができる。
【0021】
直径が大きな電解槽本体上部に位置する範囲で、電解槽本体中のフッ化水素含有溶融塩の液面の上限と下限を液面センサーで検出し、電気分解を行うため、フッ化水素含有溶融塩の液面の上限と下限を管理することにより、電気分解中のフッ化水素含有溶融塩の組成をコントロールして、フッ化水素含有溶融塩の融点を制御して常温では固体で、加熱すると液体にすることができる。
【0022】
請求項4の本発明は、フッ化水素含有溶融塩は、フッ化カリウム(KF)とフッ化水素(HF)の混合物であり、そのモル比は、KF:HFの比が1.00:2.10〜1.00:1.70の範囲で電気分解が行われるフッ素電解装置である。
【0023】
請求項4の本発明では、フッ化水素含有溶融塩は、フッ化カリウム(KF)とフッ化水素(HF)の混合物であり、そのモル比は、KF:HFの比が1.00:2.10〜1.00:1.70の範囲で電気分解が行われる。このため、フッ化水素含有溶融塩の溶融状態の温度を70℃〜100℃程度にすることができ、温度管理が容易であると共に、フッ化水素の蒸気圧を低くすることができ、安全性が高い。また、電極や電解槽の腐食も最低限にすることができる。
【0024】
請求項5の本発明は、フッ素電解装置には、不活性ガス又は窒素ガスを供給する供給ラインとフッ素ガスと水素ガスを排出する排出ラインがそれぞれバルブを介して着脱自在に接続されたフッ素電解装置である。
【0025】
請求項5の本発明では、フッ素電解装置には、不活性ガス又は窒素ガスを供給する供給ラインとフッ素ガスと水素ガスを排出する排出ラインがそれぞれバルブを介して着脱自在に接続されたため、フッ素を使用する工場において、フッ素電解装置の交換が容易であり、コンパクトなフッ素電解装置を、フッ素を使用する半導体等の製造ラインのすぐ近くに置くことができる。
【0026】
請求項6の本発明は、陽極上部は、フッ素系高分子のVパッキンで電解槽本体の上部を覆う蓋との間がシールされているフッ素電解装置である。
【0027】
請求項6の本発明では、陽極上部は、フッ素系高分子のVパッキンで電解槽本体の上部を覆う蓋との間がシールされているため、電解槽と陽極との間のシールを確実にすることができ、安全性が高い。
【0028】
請求項7の本発明は、陽極上部は、少なくとも電解槽の上部外壁から外部に突出した部分が金属メッキされているフッ素電解装置である。
【0029】
請求項7の本発明では、陽極上部は、少なくとも電解槽の上部外壁から外部に突出した部分が金属メッキされているため、腐食しない金属の膜で、陽極の上部の炭素面を覆うことができ、腐食性の強いフッ素又はフッ化水素が炭素の陽極に侵入して、フッ素電解装置の外に流出することを防止することができる。
【0030】
請求項8の本発明は、陽極の下部と隔壁の下部は、電気絶縁体で形成された保持台で保持されたフッ素電解装置である。
【0031】
請求項8の本発明では、陽極の下部と隔壁の下部は、電気絶縁体で形成された保持台で保持されたため、フッ素電解装置を移動するときに、陽極と隔壁の振動を防止して、陽極と隔壁の破損を防止し、耐久性を向上させることができる。
【0032】
請求項9の本発明は、隔膜は、モネルで形成されるとともに、多数の貫通孔が形成され、貫通孔の直径が2mm〜7mmであるフッ素電解装置である。
【0033】
請求項9の本発明では、隔膜は、モネルで形成されたため、腐食に強く、フッ化水素浴中でも長時間使用することができ、引張強さも強く陽極の形状に応じた加工ができ、フッ素電解装置をコンパクトに形成することができる。多数の貫通孔が形成され、貫通孔の直径が2mm〜7mmであるため、フッ化水素含有溶融塩が移動可能であるとともに、フッ素を純粋に取出すことができる。
【0034】
請求項10の本発明は、電解槽本体の底面には、陽極と隔壁を保持する保持台が取付けられているフッ素電解装置である。
【0035】
請求項10の本発明では、電解槽本体の底面には、陽極と隔壁を保持する保持台が取付けられているため、フッ素電解装置の組立てや、掃除の時に、容易に陽極(カーボン電極)、陰極(電解槽本体)、隔壁の間の間隔を正確に維持することができるとともに、フッ素電解装置を移動させる場合に、陽極(カーボン電極)と隔壁を固定することができ、この破損を防止することができる。
【発明の効果】
【0036】
陽極下部は、円柱上又は円筒状に形成されるため、全体の体積をコンパクトにすることができると共に、炭素から形成された陽極にストレスがかかることが少なく、耐久性を向上させることができる。
電解槽本体の外周には電気ヒーターが巻き付けられるため、電解槽本体をコンパクトな装置で、簡単に加熱することができ、電流量を制御することにより容易に温度管理が可能であり、操作が容易である。
電解槽を使用しないときは、内部の溶融塩は固体であり、電解槽を運搬するときに、溶融塩が漏れ出すことがなく、取扱が容易である。電解槽を使用して電気分解をするときは、電気ヒーターにより加熱されて、素早く電解操作をすることができる。
加熱されたフッ化水素含有溶融塩の液面を検出する液面センサーを設けたため、電気分解可能なフッ化水素含有溶融塩の量を知るとともに、フッ素電解装置の交換時期を検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の実施の形態を、図1〜図7に基づき説明する。
図1は、本発明の実施の形態であるフッ素電解装置の模式図である。図2は、電解槽1の一部断面図であり、図3は、電解槽1の外周を構成する電解槽本体10の断面図である。図4は、電解槽本体10の内部に取り付けられる隔壁20の断面図であり、図5は、隔壁20の内部に取り付けられ陽極を構成するカーボン電極30の正面図である。図6は、電解槽本体10の上部を塞ぐ電解槽蓋40の平面図であり、図7は電解槽蓋40に取り付けられ陽極であるカーボン電極30を取り付ける電極取付蓋50の断面図である。
【0038】
本発明の電解槽1は、上述のように、電解槽本体10と、電解槽本体10の内部に取り付けられる隔壁20と、隔壁20の内部に同心円状に取付けられるカーボン電極30と、電解槽本体10、隔壁20の上面を塞ぐ電解槽蓋40と、カーボン電極30の上部を保持し電解槽蓋40の中央部を塞ぐ電極取付蓋50から構成されている。
まず、それぞれの構造を説明し、その後、電解槽1によるフッ素ガスの電気分解製造について説明する。
【0039】
電解槽本体10は、図3に示すように、略円筒形に形成され、電解槽本体10の電解槽本体上部11が電解槽本体下部12よりも直径が大きく形成されている。電解槽本体上部11の先端は横方向にフランジ部13が形成され、フランジ部13には取付孔13aが形成され、後述する電解槽蓋40と電解槽本体10をネジ止めしている。
【0040】
電解槽本体下部12は、底面14が形成され、フッ化水素含有溶融塩を電解槽本体10内部に保管することができる。電解槽本体下部12の側壁15には図1に示すように、電気ヒーター17が巻きつくように取付けられている。電気ヒーター17は、電解槽本体下部12の側壁15ばかりでなく、電解槽本体上部11にも取り付けることが好ましい。電気ヒーター17の外側は、断熱材で覆うことが好ましい。
【0041】
隔壁20は、図4に示すように、円筒状に側壁21が形成され、側壁21の略中央部よりも下の部分には貫通孔23が多数形成されている。貫通孔23の大きさは、直径が2mm〜7mm程度であるが、5mm程度が好ましい。隔壁の底面24は、壁は形成されていなく、電解槽本体10中のフッ化水素含有溶融塩は自由に出入できる。また、側壁21の貫通孔23を通ってもフッ化水素含有溶融塩は自由に出入できる。
側壁の上端にはフランジ部22が形成されており、図2に示すように、後述する電解槽蓋40と電極取付蓋50により挟持されて保持される。
【0042】
隔壁20の上部には、貫通孔23が形成されていないため、貫通孔23はフッ化水素含有溶融塩の液面よりも上に出ることがなく、隔壁20は、カーボン電極30と陰極である電解槽本体10からそれぞれ発生する電解ガスが混合しないように装着される。
隔膜は12、モネルで形成されたため、腐食に強く、フッ化水素浴中でも長時間使用することができ、引張強さも強くカーボン電極30の形状に応じた加工ができ、フッ素電解装置をコンパクトに形成することができる。
【0043】
陽極であるカーボン電極30は、図5に示すように、カーボン電極下部31とカーボン電極上部32が形成され、それぞれ円柱状に一体的に形成されている。カーボン電極30は、カーボン電極上部32とカーボン電極下部31が一体的に炭素のみから形成されているため、カーボン電極30において接合部分がなく、強度も強く、カーボン電極30相互の接触部分がなく電気的接触抵抗が生ずることがない。カーボン電極上部32と、後述するカーボン電極下部31は、一体に形成されて、1個の炭素のブロックから削りだすことにより形成することができる。
【0044】
カーボン電極30の上部で電解用の電源が接続され、電解槽本体10の内部で、金属製の端子でカーボン電極30を保持する場合と比べて、カーボン電極30と金属の接触部分が電解槽本体10の内部に存在しなく、カーボン電極30とその保持部分が腐食性の強いフッ化水素等にさらされることなく、接触抵抗が増加することはない。
【0045】
カーボン電極上部32は、少なくとも電解槽1の電極取付蓋50から外部に突出した部分がニッケル等の金属により金属メッキされていることが好ましい。カーボン電極上部32が金属メッキされると、腐食しない金属の膜で、カーボン電極上部32の炭素面を覆うことができ、腐食性の強いフッ素が陽極のカーボン電極30に侵入して、フッ素電解装置の外に流出することを防止することができる。
金属メッキは、カーボン電極30がフッ化水素含有溶融塩の液面から出る部分、即ち、カーボン電極上部32からカーボン電極下部31の上の部分まで施してもよい。その場合は、一層フッ化水素が陽極のカーボン電極30に侵入することを防止できる。
【0046】
カーボン電極下部31と隔壁20の下部は、図2に示すように、テフロン(登録商標)等の電気絶縁体で形成された保持台25で保持されている。このため、容易に、カーボン電極(陽極)30、電解槽本体(陰極)10、隔壁20の間の間隔を正確に維持できるとともに、電解槽1を移動するときに、カーボン電極30と隔壁20の振動を防止して、カーボン電極30と隔壁20の破損を防止し、耐久性を向上させることができる。
【0047】
次に、図6に基づき、電解槽蓋40について説明する。電解槽蓋40は円盤状に形成され、中央部には後述する電極取付蓋50が取付けられるように孔が形成されている。電解槽蓋40の外周付近のフランジ部41には円周状に取付孔42が多数形成されている。この取付孔42と電解槽本体10のフランジ部13の取付孔13aとが一致するように形成され、図2に示すように、取付孔42と取付孔13aを貫通して取付ネジ46が挿入されて、電解槽蓋40と電解槽本体10が固着され、電解槽本体10の上面を覆うことができる。
【0048】
電解槽蓋40の内側には、不活性ガス又は窒素ガス導入孔43と不活性ガス又は窒素ガスと水素ガス混合ガス取出孔44が形成されている。これは、陰極である電解槽本体10から発生する水素を電解槽1から排出するために、不活性ガス又は窒素ガス導入孔43から不活性ガス又は窒素ガスを電解槽1内に吹き込んで、発生した水素ガスを不活性ガス又は窒素ガスとの混合物として取出すためである。そのため、不活性ガス又は窒素ガス導入孔43と不活性ガス又は窒素ガスと水素ガス混合ガス取出孔44は、電解槽蓋40を電解槽1に取付けたときに、隔壁20と電解槽本体10との間に位置するように設けられている。
電解槽蓋40の内周側には円周状に電解槽蓋取付孔45が多数形成されている。
【0049】
次に、電極取付蓋50について、図7に基づき説明する。電極取付蓋50も略円盤状に形成され、中央部にはカーボン電極上部32を保持する円筒状の電極保持部51が取付けられている。電極保持部51の内部には、カーボン電極保持孔53が形成され、カーボン電極保持孔53の内面にはVパッキン保持溝54が形成されている。
【0050】
カーボン電極上部32をカーボン電極保持孔53に挿入するときに、図2に示すように、テフロン(登録商標)製のVパッキン55がVパッキン保持溝54に取付けられて、カーボン電極上部32が電極保持部51にねじ込まれて、Vパッキン55を押圧して、カーボン電極30と電極取付蓋50との間をシールする。カーボン電極上部32は、Vパッキン55で電解槽本体10の上部を覆う電極取付蓋50との間がシールされているため、電解槽1とカーボン電極30との間のシールを確実にすることができ、安全性が高く、絶縁性も高い。
【0051】
電極取付蓋50の中央部に円周状にフッ素ガス取出孔52が形成されている。フッ素ガス取出孔52はカーボン電極30と隔壁20との間に位置するように形成される。フッ素ガス取出孔52にはフッ素ガス供給ライン71が取付けられる。
電極取付蓋50の外周付近には円周状に取付孔57が多数形成されている。この取付孔57と電解槽蓋40の内周に形成された電解槽蓋取付孔45とが一致するように形成され、図2に示すように、取付孔57と電解槽蓋取付孔45を貫通して取付ネジ58が挿入されて、電解槽蓋40と電極取付蓋50が固着され、電解槽本体10の上面を覆うことができる。
【0052】
次に、電解槽1におけるフッ化水素含有溶融塩の電解によるフッ素発生について説明する。
図1に示すように、電解槽本体10内にフッ化水素含有溶融塩16を電解槽本体10の電解槽本体上部11に形成した上限線18まで入れる。このとき上限線18には液面センサー61が設けられているため、確実にフッ化水素含有溶融塩16を所定量だけ電解槽1内に充填することができる。
なお、電解槽本体上部11には、下限線19も形成されており、液面センサー61により液面が検出される。また、フッ化水素含有溶融塩の温度を測定するために温度センサー62が取付けられている。
【0053】
電解槽本体10中のフッ化水素含有溶融塩の液面が、直径が大きな電解槽本体上部11に位置する範囲で電気分解を行う。このため、電気分解をするフッ化水素含有溶融塩の量を多くすることができる。そして、電解槽本体下部12の電気分解のために電極と接触するフッ化水素含有溶融塩の量を少なくして、電気分解の効率を上げることができ、フッ化水素含有溶融塩の全体の量を少なくすることができる。また、フッ化水素含有溶融塩の液面の制御を容易にすることができる。
【0054】
電解に当たってはまず、電解槽本体10の側壁15に取付けられた電気ヒーター17でフッ化水素含有溶融塩を加熱して、固体から液体に変える。電気ヒーター17で加熱できるため、電解槽本体10をコンパクトな装置で、簡単に加熱することができ、電流量を制御することにより容易に温度管理が可能であり、操作が容易である。電気ヒーター17の外側を断熱材で覆っているため、加熱と温度管理が容易である。
【0055】
電気分解前の電解槽本体10中のフッ化水素含有溶融塩は常温で固体であり、電気ヒーター17により加熱されると液体となるため、電解槽1を使用しないときは、内部の溶融塩は固体である。このため、電解槽1を運搬するときに、溶融塩が漏れ出すことがなく、取扱が容易である。電解槽1を使用して電気分解をするときは、電気ヒーター17により加熱されて、溶融し素早く電解操作をすることができる。
【0056】
フッ化水素含有溶融塩の電気分解がはじまると、フッ素ガスがカーボン電極30の周囲から発生し、電極取付蓋50のフッ素ガス取出孔52からフッ素ガス供給ライン71に排出される。フッ素ガス供給ライン71の先端には、電解槽1のフッ素ガス取出孔52から延設されたパイプと接続するフッ素ガスバルブ73が取付けられている。
【0057】
また、電解槽本体10が陰極として作用するため、電解槽本体10の内面付近から水素ガスが発生し、電解槽蓋40の不活性ガス又は窒素ガスと水素ガス混合ガス取出孔44から水素ガス供給ライン72に排出される。水素ガス供給ライン72の先端には、電解槽1の不活性ガス又は窒素ガスと水素ガス混合ガス取出孔44から延設されたパイプと接続する水素ガスバルブ74が取付けられている。
【0058】
フッ化水素含有溶融塩は、フッ化カリウム(KF)とフッ化水素(HF)の混合物であり、そのモル比は、KF:HFの比が1.00:2.10〜1.00:1.70の範囲で電気分解が行われる。このため、フッ化水素含有溶融塩の溶融状態の温度を70℃〜100℃程度にすることができ、温度管理が容易であると共に、フッ化水素の蒸気圧を低くすることができ、安全性が高い。また、電極や電解槽の腐食も最低限にすることができる。
【0059】
フッ化カリウム(KF)とフッ化水素(HF)のモル比は、電気分解の開始時は、KF:HFの比が1.00:2.10程度であるが、フッ化水素含有溶融塩の電気分解が進むとフッ化水素(HF)が分解して、そのモル比は、KF:HFの比が1.00:1.70に低下する。モル比がこれ以上低下すると電気分解の効率が低下するため、好ましくない。
【0060】
フッ化水素含有溶融塩を上記の上限線18まで入れた場合に、フッ化水素含有溶融塩の液面が下限線19まで低下すると、KF:HFのモル比が1.00:1.70にまで低下することとなる。そこで、液面センサー61がフッ化水素含有溶融塩の液面下限値を検出して、電気分解を停止する。
【0061】
そして、フッ素ガスバルブ73と水素ガスバルブ74を止め、センサーの配線や、電気分解の電源配線を外して、新しい電解槽1と交換する。電解槽1はコンパクトであり、容易にフッ素ガスバルブ73と水素ガスバルブ74の接続や、センサーの配線と電気分解の電源配線を接続することができる。
【0062】
電解槽本体10中のフッ化水素含有溶融塩の液面を、直径が大きな電解槽本体上部11に位置する範囲で、フッ化水素含有溶融塩の上限と下限を液面センサー61で検出し、電気分解を行うため、フッ化水素含有溶融塩の液面の上限と下限を管理することにより、電気分解中のフッ化水素含有溶融塩の組成をコントロールして、フッ化水素含有溶融塩の融点を制御して常温では固体で、加熱すると液体にすることができる。
【0063】
本発明の電解槽1における電気分解は、カーボン電極30と電解槽本体10の間に、5〜15Vの電圧で、カーボン電極30の表面積あたり0.1〜10A/dmの電流を流して行うことができる。これによって、フッ素ガスを1〜200cm/分程度発生させることができる。したがって、例えば半導体の製造工程で、個々の工程ごとにフッ素電解装置を設置して、製造工程に合わせてフッ素ガスを発生させることができ、製造工程において多量のボンベを保管する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態であるフッ素電解装置の模式図である。
【図2】本発明の実施の形態である電解槽の断面図である。
【図3】本発明の実施の形態である電解槽本体の断面図である。
【図4】本発明の実施の形態である隔壁の断面図である。
【図5】本発明の実施の形態である陽極の正面図である。
【図6】本発明の実施の形態である電解槽蓋の平面図である。
【図7】本発明の実施の形態である電極取付蓋の断面図である。
【図8】従来の電解槽の断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 電解槽
10 電解槽本体
11 電解槽本体上部
12 電解槽本体下部
17 電気ヒーター
20 隔壁
30 カーボン電極
40 電解槽蓋
50 電極取付蓋
55 Vパッキン
61 液面センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化水素含有溶融塩を電気分解しフッ素を発生させるフッ素電解装置において、
上記フッ素電解装置は、フッ化水素含有溶融塩を収納し電気分解する円筒形で電解電極としての陰極である電解槽本体と、電解電極としての陽極とを有し、
該陽極は、陽極上部と陽極下部が一体的に炭素から形成され、上記陽極上部は、円筒状に形成され、その上端が上記電解槽の上部外壁から外部に突出して装着され、上記陽極下部は、円柱上又は円筒状に形成され、
上記陽極の周囲を囲む円筒状の隔壁が設けられ、該隔壁には多数の貫通孔が形成され、
上記電解槽本体の外周には電気ヒーターが装着され、該電気ヒーターの外側は断熱材が取付けられ、上記電解槽本体中の上記フッ化水素含有溶融塩は常温で固体であり、上記電気ヒーターにより加熱されると液体となることを特徴としたフッ素電解装置。
【請求項2】
上記電解槽本体に、加熱された上記フッ化水素含有溶融塩の液面を検出する液面センサーを設けた請求項1に記載のフッ素電解装置。
【請求項3】
上記電解槽本体は、上部が下部よりも直径が大きく形成され、直径が大きな電解槽本体上部に位置する範囲で、上記電解槽本体中のフッ化水素含有溶融塩の液面の上限と下限を上記液面センサーで検出し、制御して電気分解を行う請求項2に記載のフッ素電解装置。
【請求項4】
上記フッ化水素含有溶融塩は、フッ化カリウム(KF)とフッ化水素(HF)の混合物であり、そのモル比は、KF:HFの比が1.00:2.10〜1.00:1.70の範囲で電気分解が行われる請求項1乃至請求項3に記載のフッ素電解装置。
【請求項5】
上記フッ素電解装置には、フッ素電解装置には、不活性ガス又は窒素ガスを供給する供給ラインとフッ素ガスと水素ガスを排出する排出ラインがそれぞれバルブを介して着脱自在に接続された請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のフッ素電解装置。
【請求項6】
上記陽極上部は、フッ素系高分子のVパッキンで上記電解槽本体の上部を覆う蓋との間がシールされている請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のフッ素電解装置。
【請求項7】
上記陽極上部は、少なくとも上記電解槽の上部外壁から外部に突出した部分が金属メッキされている請求項6に記載のフッ素電解装置。
【請求項8】
上記陽極の下部と上記隔壁の下部は、電気絶縁体で形成された保持台で保持された請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のフッ素電解装置。
【請求項9】
上記隔膜は、モネルで形成されるとともに、多数の貫通孔が形成され、該貫通孔の直径が2mm〜7mmである請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のフッ素電解装置。
【請求項10】
上記電解槽本体の底面には、上記陽極と隔壁を保持する保持台が取付けられている請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載のフッ素電解装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−215578(P2009−215578A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−57891(P2008−57891)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(304027349)国立大学法人豊橋技術科学大学 (391)
【出願人】(506279218)株式会社豊橋キャンパスイノベーション (2)
【Fターム(参考)】