説明

フツリン酸塩光学ガラスの製造方法および光学素子の製造方法

【課題】ガラス原料を熔融し、熔融したガラスを清澄、均質化してから急冷するにおいて、高温に設定された清澄槽から低温に設定された作業槽へと流しても、ガラス中に泡を生じさせないフツリン酸塩光学ガラスの製造方法を提供する。
【解決手段】ガラス原料に含まれるFeまたはCuの量をFe2O3に換算したFeの含有量とCuOに換算したCuの含有量の合計を20ppm以上とし、得られるフツリン酸塩光学ガラスの透過率特性が、厚さ10mmに換算したときの内部透過率が少なくとも400〜500nmの波長域で98%以上となるように前記FeおよびCuの含有量を管理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フツリン酸塩光学ガラスの製造方法、およびフツリン酸塩光学ガラスからなる光学素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フツリン酸塩光学ガラスは、低分散性と異常分散性を有し、高次の色収差補正用の光学材料として利用価値の高いガラスである。フツリン酸塩ガラスは、ガラス原料を加熱、熔融し、得られた熔融ガラスを急冷して生産される。特許文献1、2には熔融法による代表的なフツリン酸塩ガラスの生産技術が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されている方法は、バッチ原料と呼ばれる未ガラス化原料を用いてガラスを熔融する方法であり、特許文献2に開示されている方法は、カレット原料と呼ばれる一旦ガラス化した原料を加熱、熔融する方法である。
特許文献1には、好ましい態様の一つとして、バッチ原料を熔融容器内で熔融し、得られた熔融ガラスを清澄槽へと送って脱泡処理し、さらに作業槽へ送って撹拝、均質化する工程を備えたフツリン酸塩ガラスの製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、好ましい態様の一つとして、カレット原料を熔融容器内に導入し、加熱、熔融して熔融ガラスとした後、ガラスの温度を上昇させて清澄を行い、泡を切った後、攪拌、均質化する工程を備えたフツリン酸塩ガラスの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−59021
【特許文献2】特開2010−59022
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した清澄槽で脱泡処理した熔融ガラスを作業槽へ送って均質化する方法でフツリン酸塩ガラスを量産する場合、次のような問題が生じることがある。
【0007】
清澄槽では脱泡の効率を高めるため、熔融ガラスの温度を上昇させることが好ましい。一方、作業槽では熔融ガラスの温度を低下させ、ガラス中に僅かに残存するガスに対する溶解度を増加させ、ガスをガラス中に取り込ませることによりガス成分が泡として残らないようにするための操作が行われる。
熔融ガラスは、清澄槽で脱泡処理に要する時間、滞在した後、高温に設定された清澄槽から低温に設定された作業槽へと流れるが、このとき作業槽で多量の泡が発生し、製造したガラス中に泡が残って光学的な均質性を悪化させるという問題が発生する。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、高品質のフツリン酸塩光学ガラスを安定して量産するためのフツリン酸塩光学ガラスの製造方法、および前記方法により作製したフツリン酸塩光学ガラスを用いて高品質な光学素子を製造する光学素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
フツリン酸塩ガラスには、可視域の広い範囲にわたって高い透過率を示す高次の色収差補正に適したフツリン酸塩光学ガラス、カラードガラスと呼ばれる特定の波長域の光の吸収を高めたガラス、Tbなどを添加して紫外線を可視化するための蛍光ガラスなどがある。カラードガラスの代表的なものとして、近赤外線吸収フィルター用に銅を添加して近赤外線吸収を高めた銅含有近赤外線吸収ガラスがある。カラードガラスは可視域の広い範囲にわたって高透過率を得ることができず、蛍光ガラスも可視域に吸収を有することに加え、紫外線照射によって蛍光を発生するため、いずれのガラスとも色収差補正用のガラス材料としては不適当なものである。
【0010】
ところで、銅含有近赤外線吸収ガラスを熔融し、清澄槽で脱泡処理した後、作業槽で均質化するケースでは、フツリン酸塩光学ガラスの製造時に見られた作業槽での泡発生の問題はほとんど起きない。
【0011】
本発明者は、フツリン酸塩光学ガラスとカラードガラスの生産過程における上記相違について検討し、次のような仮説を立てた。
一般に熔融ガラスにおけるガスの溶解度は、高温で大きく、低温で小さい。フツリン酸ガラスは比較的、ガスの溶解度が大きいガラスである。そのため、清澄工程における熔融ガラスには多量のガスが溶解している。このように多量のガスを溶解している熔融ガラスの温度を低下させると熔融ガラスに溶け込んでいるガスが過飽和状態になる。過飽和状態を維持しつつ、均質化を行った後、ガラスを急冷すれば、発泡を抑えることができるが、高温に設定した清澄槽から低温に設定した作業槽(均質化領域)ヘガラスを移すと、ガラスは急激な温度変化に晒され、これが刺激となって過飽和状態が維持できなくなり、一気に発泡がおきると考えられる。
【0012】
銅含有近赤外線吸収ガラスの生産において、上記現象がおきないのは、熔融ガラス中の銅イオンが高温のガラスが放出する熱輻射を吸収し、熔融ガラスの実効的な降温速度を減少させることによる考えられる。
【0013】
フツリン酸塩光学ガラスには、銅イオンのようにガラスを着色させる添加剤が含まれていないため、熱輻射の放出によって熱エネルギーが外部へと放出されるので、大きな温度変化に晒されることになる。
【0014】
フツリン酸塩光学ガラスの優れた透過率特性を損なうことなしに、熱輻射を吸収する物質をガラス中に加えれば、銅含有近赤外線吸収ガラスと同じように清澄後の発泡を抑制することができると、本発明者は考えた。
そこで、銅イオンと同様、熱輻射を吸収する働きのある鉄(Fe)をガラスに導入することにより清澄後の発泡を抑制し、鉄による着色が問題にならないよう、鉄の添加量の上限をガラスの透過率特性に基づき制限すれば、フツリン酸塩光学ガラスとしての特長を損なうことなしに気泡が抑制された高品質な光学ガラスを安定して生産することができる。また、銅についても光学ガラスとして使用可能な添加量の上限をガラスの透過率特性に基づき制限することにより、鉄と同様、高品質な光学ガラスを安定して生産することができる。
【0015】
本発明のフツリン酸塩光学ガラスの製造方法は、上記知見に基づき完成した発明であり、ガラス原料を熔融して熔融ガラスを得て、前記熔融ガラスを清澄、均質化してから急冷してフツリン酸塩光学ガラスを作製するフツリン酸塩光学ガラスの製造方法において、ガラス原料を熔融して熔融ガラスを得て、前記熔融ガラスを清澄、均質化してから急冷してフツリン酸塩光学ガラスを作製するフツリン酸塩光学ガラスの製造方法において、ガラス原料を熔融してFeまたはCuの少なくとも一方を含む熔融ガラスを得、前記熔融ガラスを清澄、均質化することを特徴とするものである。
【0016】
Fe2O3に換算したFeの含有量とCuOに換算したCuの含有量の合計を20ppm以上とすること、
ならびに、得られるフツリン酸塩光学ガラスの透過率特性が、厚さ10mmに換算したときの内部透過率が少なくとも400〜500nmの波長域で98%以上となるように前記FeおよびCuの含有量を管理することを特徴とする。
以下、Feの含有量とは、Fe2O3に換算した値を意味し、Cuの含有量とは、CuOに換算した値を意味する。
【0017】
なお、本発明におけるCuの含有については、近赤外線吸収ガラスにおけるCu含有量よりも低レベルのもの、すなわち、光学ガラスとして支障を来たすような着色をもたらさないレベルであって、本発明において対象となるフツリン酸塩光学ガラスは、近赤外線吸収ガラスとは明確に区別される。
【0018】
熔融ガラス中の艶の含有量とCuの含有量の合計、すなわち、本発明の製造方法により作製されるガラス中のFeの含有量とCuの含有量の合計が20ppm未満であると、発泡の抑制を効果的に行うことが難しくなる。したがって、Feの含有量とCuの含有量の合計を20ppm以上とする。Feの含有量とCuの含有量の合計の好ましい下限は25ppm、より好ましい下限は30ppmである。
【0019】
一方、熔融ガラス中のFeの含有量とCuの含有量の合計の上限については、光学ガラスの透過率特性に基づき管理する。Feの含有量を増加させていくと、Feの光吸収により可視域の短波長側の透過率が次第に減少し、短波長の可視光を通さなくなる。このようになるとフツリン酸塩光学ガラスの特長が損なわれるため、ガラスの透過率特性は上記条件を満たすようにFeの含有量を管理する。Cuについても同様である。すなわち、Feの含有量とCuの含有量の合計の上限は、ガラスの透過率特性を管理することにより間接的に定められる。Feの含有量とCuの含有量の合計の上限の目安は2000ppmと考えることもできる。
【0020】
本発明において使用する透過率特性は内部透過率である。内部透過率は、入射側および出射側における表面反射損失を除いた透過率であり、当該技術分野において周知のものであるが、その測定は以下のように行う。
【0021】
同一組成のガラスからなり、厚さの異なる一対の平板状試料を用意する。平板状試料の両面は互いに平行かつ光学研磨された平面とする。第1の試料の光学研磨された面に垂直に入射する入射光の強度をIin(1)・反対側の面から出射する出射光の強度をIout(1)としたとき、第1の試料の表面反射損失を含む透過率T1は、強度比Iout(1)/Iin(1)となる。同様に、第2の試料の光学研磨された面に垂直に入射する入射光の強度をIin(2)、反対側の面から出射する出射光の強度をIout(2)としたとき、第2の試料の表面反射損失を含む透過率T2は、強度比Iout(2)/Iin(2)となる。
【0022】
第1の試料の厚みをd1[mm]、第2の試料の厚みをd2[mm]、ただしd1<d2とすると、厚さd.[mm]での内部透過率τは次式(1)により算出することができる。

τ= exp[−d×(lnT1−lnT2〕/Δd ] 式(1)

ただし、Δd=d2−d1であり、lnは自然対数を意味する。
本発明は厚さ10mmに換算したときの内部透過率を指標とするから、

τ(10mm)= exp[−10×(lnT1−lnT2)/Δd ] 式(2)

となる。
本発明において、厚さ10mmに換算したときの内部透過率が上記範囲にあれば、FeあるいはCuを含んでいても、レンズ、プリズムなどの光学素子を作るための材料、すなわち、光学ガラスとして問題なく使用することができる。
【0023】
可視域における光吸収が、赤外線の吸収より強すぎると発泡抑制効果を得つつ優れた可視光透過性を得ることが難しくなる。しかし、Fe、Cuは少量の添加で優れた赤外線吸収を示すため、Fe、Cuの含有により、優れた可視光透過性を損なうことなく、優れた発泡抑制効果を得ることができる。
さらに、Fe、Cuの含有量が上記範囲の内部透過率に対応する量であれば、ガラスの耐失透性を低下させることはなく、その他、ガラスの諸特性にも悪影響を及ぼすことはない。
なお、本発明におけるフツリン酸塩光学ガラスには、カラードガラス、蛍光ガラスは含まれない。すなわち波長500nmを超え1000nm以下の範囲における内部透過率τ(10mm)も高い値を示し、好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、さらに好ましくは93%以上、一層好ましくは95%以上、より一層好ましくは96%以上、さらに一層好ましくは97%以上、なお一層好ましくは98%以上となる。また本発明におけるフツリン酸塩光学ガラスは、Tb、Eu、Er、Ndなどの蛍光物質を含まない。
【0024】
本発明は、融液状態で大きな温度変化が伴う製造プロセスを有する場合に特に有効である。このような観点から、熔融ガラスを清澄領域において清澄した後、均質化領域へと流し、清澄領域における清澄工程と均質化領域における均質化工程を連続して行う方怯に、本発明は特に有効である。一例として、清澄領域を清澄槽とし、均質化領域を作業槽とし、清澄槽と作業槽をパイプで連結したガラス製造装置によって、上記好ましい態様を説明する。
【0025】
清澄槽、作業槽、両槽を連結するパイプは、それぞれ内部の熔融ガラスの温度をコントロールするための温調機能を備える。上記パイプのガラス流入口と流出口は、各槽内のガラス液位より下になるよう取り付けられており、両槽内のガラス液位は略同じ高さとなる。高温の清澄槽から低温の作業槽にパイプ内を通ってガラスが流れる間に、ガラスとパイプの熱交換によってガラスが降温される。パイプ中におけるガラスの滞在時間は短いため、短時間でガラスの温度は低下する。本発明の方法によれば、このような大きな温度変化に対しても作業槽中における発泡を有効に抑制することができる。
【0026】
なお、本発明は、上記好ましい態様に限定されるものではなく、一つの槽内で熔融ガラスを清澄、均質化する方法においても有効である。例えば、生産性を向上させるため、清澄工程終了後、速やかにガラスの温度を低下させて均質化工程を行う場合でも、降温によって発泡が生じることを防止することができる。
【0027】
また、本発明は、ガラス原料として未ガラス化原料(バッチ原料)のみを用いる方法、カレット原料のみを用いる方法、バッチ原料とカレット原料を併用する方法のいずれの方法にも適用することができる。
【実施例】
【0028】
(実施例1)
熔融槽、清澄槽、作業槽をこの順序にパイプで連結し、作業槽の底部にはガラスを流出するパイプを連結する。各槽、各パイプは白金合金で構成され、それぞれ独立して温度調整が可能なように温調機能を備えている。
このガラス製造装置を使用し、次のようにしてフツリン酸塩光学ガラスを製造した。
まず、2リン酸塩などのリン酸塩、フッ化物、酸化物などの化合物原料を不純物としてFe(Cu)を含むものとし、各化合物原料のFe(Cu)混入量に注意しながら、所望の光学特性が得られるようにバッチ原料の調合を行った。ガラス中に導入されるFe(Cu)の量は、各化合物原料中のFe(Cu)混入量とバッチ原料中の各化合物原料の割合によって決まる。バッチ原料中の各化合物の割合はガラス組成によって決まるため、Fe(Cu)混入量が異なる化合物原料、すなわち、純度が異なる化合物原料を用意し、その中から所要量のFe(Cu)を導入するために適切な純度レベルの化合物原料を選定した。選定した化合物原料を調合した後、十分混合してバッチ原料を用意した。バッチ原料中のFe(Cu)含有量を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
なお、光学ガラスの諸特性は、以下に示す方法により測定した。
(1)内部透過率τ(10mm)の最小値
波長400〜500nmの範囲で10mm厚に換算した内部透過率τ(10mm)を測定し、前記波長域における内部透過率τ(10mm)の最小値を求めた。
(2)屈折率nd、アッベ数νd
降温速度−30℃/時間で降温して得られたガラスについて、日本光学硝子工業会規格の屈折率測定法により、屈折率nd、アッベ数νdを測定した。
(3)ガラス転移温度Tg
株式会社リガク製の熱機械分析装置(TMA)を使用し、昇温速度を10℃/分にして測定した。
また、光学ガラス1〜3の波長500nmを超え1000nmの範囲における10mm厚に換算した内部透過率τ(10mm)は98%以上であった。
【0031】
次に、純度を超高純度に変えた以外は、上記と全く同じ種類の化合物原料を用いて、所望の光学特性が得られるように調合を行い、上記Fe(Cu)含有量と同じになるよう適量のFe2O3(CuO)を調合原料に混ぜ、十分混合してバッチ原料を用意した。バッチ原料中のFe(Cu)含有量を表2に示す。
【0032】
【表2】

【0033】
さらに、これらバッチ原料を熔融槽内に投入し、加熱、熔融して、熔融ガラス化した。熔融槽内でガラス化された熔融ガラスは、パイプ内を通って清澄槽中へと流入する。パイプ中を通る際、熔融ガラスはパイプとの熱交換によって昇温される。清澄槽の温度は熔融槽よりも高温に設定され、脱泡処理が促進するようになっている。清澄槽内で脱泡処理された熔融ガラスはパイプ中を通って降温され、清澄槽や熔融槽より低い温度に設定された作業槽中へと流入する。
【0034】
作業槽内では攪拌具により熔融ガラスを攪拌し、均質化した後、底部に取り付けたパイプにより熔融ガラスを流出させ、パイプ流出口の下方に配置した鋳型に連続して流し込み、急冷する。鋳型内で板状に成形したガラスを水平方向に連続的に引き出し、そのままアニール炉内を通過させてアニールし、一定の幅と厚みをもつフツリン酸塩光学ガラスからなるガラス板を作製した。
【0035】
次に上記ガラス板を切断、研削、研磨してガラス試料を作製した。このガラス試料を用いて屈折率nd、アッペ数νd、分光透過率を測定するとともに、ガラス試料中の泡の有無を確認した。
得られた屈折率nd、アッベ数νdは表1に示した値と同じであった。得られた分光透過率を表2に示す。また、ガラス試料中を目視および光学顕微鏡を用いて拡大観察したところ、泡や結晶は認められず、均質で高品質な光学ガラスが得られたことを確認した。
【0036】
次に、純度の低い化合物原料を用いた以外は上記実施例と同様にしてフツリン酸塩ガラスを作製し、分光透過率を測定したところ、可視域の短波長における透過率の低下が認められた。測定結果を表3に示す。
【0037】
【表3】

【0038】
分光透過率の測定結果からガラス中のFe(Cu)含有量が過剰と判断されるため、分光透過率がフツリン酸塩光学ガラスとして適切と判断された上記実施例で使用したバッチ原料に変更してフツリン酸塩光学ガラスを作製した。このガラスにおいて、発泡や失透が認められないことを確認した。
このように、Fe(Cu)の含有量をガラスの分光透過率により管理することにより、発泡を抑え、均質かつ着色のないフツリン酸塩光学ガラスを安定して製造することができる。
【0039】
(比較例)
超高純度の化合物原料のみを使用し、上記実施例と同様にガラスを作製したところ、ガラス中に気泡が認められた。気泡が存在する部分は光学ガラスとしての均質性を満たしていない。
【0040】
(実施例2)
実施例1において作製した泡を含まず、可視域の広い範囲にわたって高い透過率を示すフツリン酸塩光学ガラスからなるガラス板を切断、研削、研磨して各種球面レンズ、プリズムを作製した。
次に、実施例1において作製した泡を含まず、可視域の広い範囲にわたって高い透過率を示すガラスを熔融状態でプレス成形型に供給し、プレス成形してレンズブランクを作製した。レンズブランクをアニールして歪を除去するとともに、所望の屈折率に精密に一致させた後、研削、研磨して各種球面レンズを作製した。
さらに・実施倒1において作製した泡を含まず、可視域の広い範囲にわたって高い透過率を示すガラスを研削、研磨して精密プレス成形用プリフォームを作製し、このプリフォームを加熱、精密プレス成形し、各種非球面レンズを作製した。
上記各レンズは他のガラスレンズとの組合せにより優れた色収差補正を可能にした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス原料を熔融して熔融ガラスを得て、前記熔融ガラスを清澄、均質化してから急冷してフツリン酸塩光学ガラスを作製するフツリン酸塩光学ガラスの製造方法において、
ガラス原料を熔融してFeまたはCuの少なくとも一方を含む熔融ガラスを得、前記熔融ガラスを清澄、均質化すること、
Fe2O3に換算したFeの含有量とCuOに換算したCuの含有量の合計を20ppm以上とすること、
ならびに、得られるフツリン酸塩光学ガラスの透過率特性が、厚さ10mmに換算したときの内部透過率が少なくとも400〜500nmの波長域で98%以上となるように前記FeおよびCuの含有量を管理することを特徴とするフツリン酸塩光学ガラスの製造方法。
【請求項2】
熔融ガラスを清澄領域において清澄した後、均質化領域へと流し、清澄領域における清澄工程と均質化領域における均質化工程を連続して行うことを特徴とする請求項1に記載のフツリン酸塩光学ガラスの製造方法。
【請求項3】
均質化領域からの熔融ガラスを鋳型に鋳込んで急冷し、ガラス成形体に成形する請求項1または2に記載のフツリン酸塩光学ガラスの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法により作製されたフツリン酸塩光学ガラスを用いて光学素子を作製する光学素子の製造方法。

【公開番号】特開2012−91950(P2012−91950A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239174(P2010−239174)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】