説明

フマル酸ジエステル類の製造方法

【課題】 本発明は、嵩高い置換基を有するフマル酸ジエステル類を収率良く且つ純度良く得る製造方法を提供することにある。
【解決手段】フマル酸ハロゲン化物と、第三級アルコールを原料としフマル酸ジエステル類を製造する方法において、塩基を共存させることを特徴とするフマル酸ジエステル類の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嵩高い置換基を有するフマル酸ジエステル類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フマル酸ジエステル類は、可塑剤、樹脂の改質剤としてだけではなく、フマル酸ジエステル類重合体の高透明性、高耐熱性などの性質から、機能性高分子材料の原料としても注目を集めている。そのため、これらを工業的に大規模に製造するための簡便かつ安価な製造方法の開発が望まれている。
【0003】
一般的なエステル合成方法としては、対応するカルボン酸に過剰量のアルコールを酸触媒下で反応させる方法が知られている。しかしこの方法は、メタノールやエタノール等の第一級アルコールを用いるメチルエステルやエチルエステル等の合成に限定され、反応性に乏しい第二級アルコールや第三級アルコールでは、この方法で対応するエステル化合物、例えばシクロヘキシルエステルやターシャリーブチルエステルを合成することは通常、困難である。これは第二級アルコールや第三級アルコールの反応性が第1級アルコールに比べて劣るため、カルボン酸との反応が進行しにくく、また生成したエステル化合物が酸性条件下で非常に不安定で、エステル置換基が脱離する逆反応が進行してしまうためである。
【0004】
そのため、ターシャリーブチルエステルや、ターシャリーアミルエステル、アダマンチルエステルなどの嵩高い置換基を有するエステル化合物の合成方法として、アルコールを用いない方法(例えば特許文献1参照)、エステル交換反応(例えば特許文献2参照)、カップリング剤を使用する反応(例えば非特許文献1参照)などが提案されている。
【0005】
特許文献1では、フマル酸とイソブテンを酸性条件下で反応させる方法が提案されている。しかしながらこのような方法では、フマル酸の溶媒への溶解性の悪さから、反応時間が長くなり工業的生産には不向きである。特許文献2では、ジアルキルフマレートあるいはジアルキルマレートと、第三級アルコールを、触媒としてアルカリ金属またはアルカリ土類金属のアルコラートと、リチウム塩との混合物を用いて反応させる方法が提案されている。しかしながら、このような方法では収率が良くなく、工業的生産には不向きである。また、非特許文献1では、フマル酸モノエステルと第三級アルコールをカップリング剤存在下で反応させる方法が提案されている。しかしながらこのような方法では、収率は良いが、当量以上のカップリング剤を使用するために、コスト的に工業生産には不向きである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−240754号公報
【特許文献2】特開平8−40982号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Org.Synth.,63,183(1985)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の目的とするところは、嵩高い置換基を持つフマル酸ジエステル類を、簡便な方法で収率よく且つ純度良く得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意検討した結果、嵩高い置換基を有するフマル酸ジエステル類を製造する方法において、フマル酸ハロゲン化物と対応する第三級アルコールとを反応させる際に塩基を用いることで、短時間の反応で収率良くフマル酸ジエステル類を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、フマル酸ハロゲン化物と、第三級アルコールを原料としフマル酸ジエステル類を製造する方法において、塩基を共存させることを特徴とするフマル酸ジエステル類の製造方法に関するものである。
【0011】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の製造方法に用いるフマル酸ハロゲン化物は、フマル酸ハロゲン化物として入手したものを用いてもよく、またフマル酸と塩化チオニルの反応、あるいは、フマル酸と臭化チオニルの反応など、周知の方法により製造したものを用いてもよい。
【0013】
該フマル酸ハロゲン化物としては、例えばフマル酸ジフルオリド、フマル酸ジクロリド、フマル酸ジブロミド、フマル酸ジヨード等が挙げられ、その中でも入手が容易である、また合成が容易である点から、フマル酸ジクロリドが好適に用いられる。
【0014】
本発明の製造方法に用いる第三級アルコールとしては、例えば、ターシャリーブタノール、ターシャリーアミルアルコール、2,3‐ジメチル‐2‐ブタノール、2‐メチル2‐ペンタノール、3‐メチル‐3‐ペンタノール、3‐エチル‐3‐ペンタノール、3‐エチル‐2‐メチル‐3‐ペンタノール、2,3‐ジメチル‐2‐ペンタノール、2,3‐ジメチル‐3‐ペンタノール、2,3、4‐トリメチル‐3‐ペンタノール、3,4、4‐トリメチル‐3‐ペンタノール、2‐メチル‐2‐ヘキサノール、2,3‐ジメチル‐2‐ヘキサノール、3‐メチル‐3‐ヘキサノール、3‐エチル‐3‐ヘキサノール、3,4‐ジメチル‐3‐ヘキサノール、2‐メチル‐2‐ヘプタノール、3‐メチル‐3‐ヘプタノール、3‐エチル‐3‐ヘプタノール、1‐アダマンタノール、3,5‐ジメチル‐1‐アダマンタノール、2‐トリフルオロメチル‐2‐プロパノール、1,1,1,3,3,3‐ヘキサフルオロ‐2‐メチル‐2‐プロパノール、ノナフルオロターシャリーブタノール、等を挙げることができ、その中でもターシャリーブタノール、ターシャリーアミルアルコール、2,3‐ジメチル‐2‐ブタノール、2‐メチル‐2‐ペンタノール、3‐メチル‐3‐ペンタノール、3‐エチル‐3‐ペンタノール、3‐エチル‐2‐メチル‐3‐ペンタノール、2,3‐ジメチル‐2‐ペンタノール、2,3‐ジメチル‐3‐ペンタノール、2,3、4‐トリメチル‐3‐ペンタノール、3,4、4‐トリメチル‐3‐ペンタノール、2‐メチル‐2‐ヘキサノール、2,3‐ジメチル‐2‐ヘキサノール、3‐メチル‐3‐ヘキサノール、3‐エチル‐3‐ヘキサノール、3,4‐ジメチル‐3‐ヘキサノール、1‐アダマンタノール、3,5‐ジメチル‐1‐アダマンタノール等が好ましく、特にターシャリーブタノール、ターシャリーアミルアルコール、2,3‐ジメチル‐2‐ブタノール、2‐メチル‐2‐ペンタノール、3‐メチル‐3‐ペンタノール、3‐エチル‐3‐ペンタノール、3‐エチル‐2‐メチル‐3‐ペンタノール、2,3‐ジメチル‐2‐ペンタノール、2,3‐ジメチル‐3‐ペンタノール、2,3、4‐トリメチル‐3‐ペンタノール、3,4、4‐トリメチル‐3‐ペンタノール、1‐アダマンタノール、3,5‐ジメチル‐1‐アダマンタノール等が好ましい。
【0015】
該第三級アルコールの量は、フマル酸ハロゲン化物の2当量以上20当量以下用いることが好ましく、更には、5当量以上15当量以下用いることが好ましく、特に7当量以上12当量以下用いることがより好ましい。
該第三級アルコールは、市販のものあるいは製造したものを、特に処理をせずそのまま用いても良いが、脱水処理をしてから用いても良い。脱水方法としては、蒸留精製する方法や、モレキュラーシブス等の脱水剤を作用させる方法などを用いることができる。
【0016】
本発明の製造方法における塩基としては、公知のものならばいかなるものを用いてもよい。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基;第三級アミン等の有機塩基が挙げられ、特に、第三級アミンが好ましい。該第三級アミンとしては、公知のものならばいかなるものを用いてもよく、例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソプロピルアミン、N,N‐ジイソプロピルエチルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N,N‐ジメチル‐p‐トルイジン等が挙げられ、その中でもトリエチルアミン、トリプロピルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N‐ジメチル‐p‐トルイジン、等が好ましく、特にトリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジンが好ましい。またこれら塩基の量は、フマル酸ハロゲン化物の1当量以上5当量以下用いることが好ましく、更には2当量以上3.5当量以下用いることが好ましい。
【0017】
本発明の製造方法におけるフマル酸ハロゲン化物、第三級アルコール、塩基を加え反応させる方法としては、特に限定はなく、例えば、フマル酸ハロゲン化物と塩基の混合溶液に第三級アルコールを加える方法、フマル酸ハロゲン化物の溶液に塩基と第三級アルコールの混合溶液を加える方法、第三級アルコールと塩基の混合溶液にフマル酸ハロゲン化物を加える方法、第三級アルコールの溶液に塩基とフマル酸ハロゲン化物の混合溶液を加える方法、塩基の溶液にフマル酸ハロゲン化物と第三級アルコールの混合溶液を加える方法、フマル酸ハロゲン化物と第三級アルコールの混合溶液に塩基の溶液を加える方法などで反応させることでができ、これらに特に制限はない。
【0018】
本発明の製造方法における、フマル酸ハロゲン化物、塩基、第三級アルコールの3種類を混合する際の温度としては、−78℃以上20℃以下が好ましく、特に0℃以上15℃以下が好ましい。3種類の混合溶液を加える時間としては、0.5時間以上、5時間以下が好ましい。さらに、0.5時間以上、3時間以下がより好ましい。
【0019】
本発明の製造方法においては、3種類を混合した後昇温し反応させるものであり、反応させる温度は、0℃以上200℃以下が好ましく、特に20℃以上150℃以下が好ましく、特に反応系が還流する温度がより好ましく、該還流する温度は、使用する第三級アルコール、塩基またそれらの比率によって適宜調整すればよい。
【0020】
本発明の製造方法における反応時間としては、0.5時間以上6.0時間以下が好ましく、特に1.0時間以上5.0時間以下が好ましく、さらに2.0時間以上4.0時間以下が好ましい。
【0021】
本発明の製造方法においては、反応に対し不活性な溶剤を用いて反応を行うことができる。該不活性な溶剤としては、例えばヘプタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジターシャリーブチルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等の塩素系溶剤;あるいはこれらの混合溶剤が挙げられる。
【0022】
該溶剤の量は、フマル酸ハロゲン化物の100当量以下用いるのが好ましく、特に50当量以下用いるのが好ましい。
【0023】
本発明の製造方法においては、公知の重合禁止剤を添加してもよい。該重合禁止剤の量は一般的に用いられる量、例えば数%から数ppm程度添加すればよい。
【0024】
本発明の製造方法において、反応終了後、精製することが好ましく、該精製の方法は公知の方法に従えばよく、特に限定されるものではない。該精製方法としては、例えば中和、抽出、水洗、カラムクロマトグラフィー等が挙げられる。これら精製を行った後に蒸留によりさらに精製する方法や、中和、抽出、水洗等を行わず、直接蒸留により精製してもよい。蒸留方法に特に制限はなく、公知の蒸留方法に従えばよい。
【0025】
得られるフマル酸ジエステル類が固体である場合は、中和、抽出、水洗等を行った後、再結晶あるいは昇華により精製を行っても良い。再結晶の際に用いる溶剤としては、フマル酸ジエステル類が可溶な溶剤であればいかなるものを用いても良く、例えばヘプタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の炭化水素系溶剤;イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤が好適に用いられる。
【0026】
得られたフマル酸ジエステル類に昇華性がある場合は昇華による精製を行ってもよく、該昇華方法としては、一般的な昇華装置を用いればよい。また昇華条件としては、フマル酸ジエステル類の昇華する温度、圧力にて行えばよい。
【0027】
本発明の製造方法においては、中和、抽出、水洗等を行い乾燥の後、脱色剤を用い脱色を行うことが好ましく、脱色を行うことで高純度のフマル酸ジエステル類を得ることができる。脱色の際に用いる溶剤としては、フマル酸ジエステル類が可溶であればいかなるものでも良く、例えばヘプタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の炭化水素系溶剤が好適である。
【0028】
脱色の際に用いる脱色剤としては、公知のものを用いることができ、例えば活性炭、活性白土、酸性白土、シリカゲル等が挙げられ、特にシリカゲル、活性炭等が好適に用いられる。更に、これらの脱色剤を組み合わせて使用することが好ましい。組み合わせ方法としては、2種類の脱色剤、例えばシリカゲルと活性炭を同時に使用する方法、シリカゲルで脱色した後に活性炭で脱色する方法などが挙げられ、その中でもシリカゲルで脱色した後に活性炭で脱色する方法が高純度のフマル酸ジエステル類が得られるため、より好適である。
【0029】
また、脱色剤を使用する際に、脱色後に脱色剤を濾過で除去する際の濾過性を向上させるために、濾過助剤を用いてもよい。濾過助剤としては、公知のものであればいかなるものを用いてもよい。また濾過助剤の使用方法にも何ら制限はなく、例えば脱色剤と共に脱色を行う溶液に投入してもよく、濾過する際の濾紙あるいは濾布等に均一に塗布する方法等を用いてもよい。またこれらの方法を組み合わせて使用しても何ら問題はない。
【0030】
脱色後、得られたフマル酸ジエステル類は、更に精製することもできる。精製方法としては、蒸留、再結晶、昇華等が挙げられる。蒸留方法に特に制限はなく、公知の蒸留方法に従えばよい。再結晶の際に用いる溶剤としては、フマル酸ジエステル類が可溶な溶剤であればいかなるものを用いても良く、例えばヘプタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の炭化水素系溶剤;イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤が好適に用いられる。
【0031】
昇華方法としては、一般的な昇華装置を用いればよい。また昇華条件としては、フマル酸ジエステル類の昇華する温度、圧力にて行えばよい。
【0032】
本発明の製造方法によりフマル酸ジエステル類を製造することができ、本発明の製造方法はフマル酸エスエル類の中でも嵩高い置換基を有するフマル酸ジエステル類、特にフマル酸ジターシャリーブチル、フマル酸ジターシャリーアミル、フマル酸ジ(2,3‐ジメチル‐2‐ブチル)、フマル酸ジ(2‐メチル2‐ペンチル)、フマル酸ジ(3‐メチル‐3‐ペンチル)、フマル酸ジ(3‐エチル‐3‐ペンチル)、フマル酸ジ(3‐エチル‐2‐メチル‐3‐ペンチル)、フマル酸ジ(2,3‐ジメチル‐2‐ペンチル)、フマル酸ジ(2,3‐ジメチル‐3‐ペンチル)、フマル酸ジ(2,3、4‐トリメチル‐3‐ペンチル)、フマル酸ジ(3,4、4‐トリメチル‐3‐ペンチル)、フマル酸ジ(1‐アダマンチル)、フマル酸ジ(3,5‐ジメチル‐1‐アダマンチル)等の製造に好適に用いることができる製造方法である。
【発明の効果】
【0033】
本発明の製造方法を用いることで、高純度かつ着色のないフマル酸ジエステル類が得られる。
【実施例】
【0034】
以下に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら制限されるものではない。
【0035】
以下、実施例の評価・測定に用いた方法を示す。
【0036】
〜純度の測定〜
ガスクロマトグラフィー(GC)(島津製作所製、商品名GC−14A)を用い、フマル酸ジエステル類をトルエンに溶解したものを測定し、下記式を用いて、面積比で純度を算出した。
【0037】
(フマル酸ジエステル類のGC面積)/(全GC面積)× 100 = 純度(%)
実施例1
攪拌機、窒素導入菅、排気管、温度計および還流管のついた1Lフラスコに、ターシャリーブタノール1.1kg(15mol)、N,N−ジメチルアニリン0.45kg(3.75mol)を仕込み、20℃以下まで冷却した。攪拌しながら、フマル酸ジクロライド0.11kg(0.75mol)を加えた(フマル酸ジクロライド1当量に対し、ターシャリーブタノール20当量、N,N−ジメチルアニリン5当量)。その後、85℃まで昇温し還流を4時間行った。反応後、30℃以下まで冷却し、6N硫酸0.1Lを加え10分攪拌した後、ジイソプロピルエーテル0.2Lで抽出を2回行った。更に6N硫酸0.15Lを加え洗浄し、その後、純水0.2Lで2回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液0.2kgで1回、飽和食塩水0.2kgで1回洗浄した。
【0038】
得られた溶液に無水硫酸ナトリウムを0.06kg加え2時間攪拌後、一晩静置させた。溶液を濾過し、濾液から溶媒を除去し、真空乾燥させた。得られた粗生成物をヘキサン1.0Lに溶解させ、脱色剤としてシリカゲル0.05kgを加え1時間攪拌し濾過した後に、脱色剤として活性炭0.02kgを加え1時間攪拌し濾過した。得られた濾液から溶媒を除去し、真空乾燥させることで着色無くフマル酸ジターシャリーブチルを0.085kg得た。収率は50%、純度は99.0%であった。
【0039】
実施例2
実施例1において、反応容器を2Lにし、ターシャリーブタノールを0.11kg(1.5mol)、N,N−ジメチルアニリンを0.09kg(0.75mol)(フマル酸ジクロライド1当量に対し、ターシャリーブタノール2当量、N,N−ジメチルアニリン1当量)とした以外は同様の操作を行い、着色無くフマル酸ジターシャリーブチルを0.11kg得た。収率は64%、純度は99.1%であった。
【0040】
実施例3
実施例1において、N,N−ジメチルアニリンの代わりに、トリエチルアミンを0.38kg(3.75mol)(フマル酸ジクロリド1当量に対し、5当量)用い、フマル酸クロライドを加える前の冷却を5℃以下に変更した以外は同様の操作を行い、着色無くフマル酸ジターシャリーブチルを0.1kg得た。収率は59%、純度は99.1%であった。
【0041】
実施例4
実施例1において、ターシャリーブタノールの代わりに、ターシャリーアミルアルコール1.3kg(15mol)(フマル酸ジクロリド1当量に対し、20当量)を用いた以外は同様の操作を行い、着色無くフマル酸ジターシャリーアミルを0.11kg得た。収率は57%、純度は99.1%であった。
【0042】
比較例1
実施例1において、N,N−ジメチルアニリンを使用しなかった以外は同様の操作を行い、フマル酸ジターシャリーブチルを0.02kg得た。収率は11.5%、純度は90%であった。
【0043】
塩基を用いなかったことから、収率が低く、工業的生産には適したものではなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フマル酸ハロゲン化物と、第三級アルコールを原料としフマル酸ジエステル類を製造する方法において、塩基を共存させることを特徴とするフマル酸ジエステル類の製造方法。
【請求項2】
塩基が、第三級アミンであることを特徴とする請求項1に記載のフマル酸ジエステル類の製造方法。
【請求項3】
塩基の量が、フマル酸ハロゲン化物の1当量以上5当量以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフマル酸ジエステル類の製造方法。
【請求項4】
第三級アルコールの量が、フマル酸ハロゲン化物の2当量以上20当量以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフマル酸ジエステル類の製造方法。
【請求項5】
フマル酸ハロゲン化物、塩基、第三級アルコールの3種類を混合する際の温度が−78℃以上20℃以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフマル酸ジエステル類の製造方法。
【請求項6】
反応後、脱色剤により脱色することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のフマル酸ジエステル類の製造方法。
【請求項7】
脱色剤が、シリカゲル及び活性炭であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のフマル酸ジエステル類の製造方法。
【請求項8】
脱色を、シリカゲルで脱色した後に、活性炭で脱色することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のフマル酸ジエステル類の製造方法。

【公開番号】特開2012−1518(P2012−1518A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140342(P2010−140342)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】