説明

フューエルキャップ

【目的】 防塵耐久性を向上させるとともに、防塵効果を一層向上させたフューエルキャップを提供すること。
【構成】 クロージャ3は、筒状部4と、流路孔12を有して筒状部内周を塞ぐ天板部10と、を備える。筒状部のフランジ部7は、クロージャを覆うシェル20との間に配置させた空気流路8を備える。天板部10は、第1堰板部14を有する凸部11を備えて、筒状部内周面との間に第1塵溜め凹部13を形成する。防塵板21は、凸部11の上方に配置され、基板部22の外周縁から延びる第2堰板部23を備える。第1堰板部14と第2堰板部23との間には、基板部22から延びる第3堰板部24が形成される。第3堰板部24は、第1堰板部14の上端より下方に位置する流入口25を備え、第1堰板部14と第3堰板部24との間に環状の第2塵溜め凹部27を形成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、自動車における燃料タンクのフィラーネックに装着されるフューエルキャップ(以下、単にキャップとする)に関し、特に、燃料タンク内の圧力低下時、空気をタンク外からタンク内へ流入させ、燃料タンク内の圧力低下を防止する負圧弁を備えたフューエルキャップに関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】従来、この種のキャップでは、弁作動時に流入する空気に混入された塵等を、負圧弁に付着させないようにしたものとして、実開昭63−86481号公報に記載されたものが知られている。
【0003】上記公報記載のキャップでは、負圧弁までの空気の流路中に防塵板を配置させ、空気の流れを屈曲させて、空気内に混入した塵を落下させ、防塵効果を得るものである。
【0004】しかし、この公報記載のキャップでは、落下した塵が溜る部位のスペースが小さく、防塵の耐久性に改善の余地があった。
【0005】この発明は、防塵耐久性を向上させるとともに、防塵効果を一層向上させたキャップを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明に係るキャップは、燃料タンクのフィラーネックに下部を取り付ける筒状部と、該筒状部における上下方向の略中間位置の内周を塞ぐように配置されて流路孔を有する天板部と、を具備するクロージャを備え、前記天板部の流路孔直下には、前記筒状部内への空気の流入時に作動する負圧弁が配置され、前記天板部の上面側の前記流路孔の周囲には、防塵板が配置され、前記クロージャの筒状部における上部には、外方へ延びるフランジ部が形成され、該フランジ部には、前記クロージャの上方を覆うシェルが取り付けられるとともに、該シェルとの間に前記空気の空気流路が形成されているキャップであって、前記天板部が、前記筒状部内周面との間に環状の第1塵溜め凹部を形成するように、前記流路孔の周囲を上方へ隆起させる凸部を備え、かつ、前記流路孔の周囲から上方へ延びる筒状の第1堰板部を備え、前記防塵板が、前記凸部の上方を覆う基板部を備えるとともに、該基板部の外周縁から前記凸部の外周縁付近まで延びる筒状の第2堰板部を備え、前記第1堰板部と第2堰板部との間に、前記天板部の凸部若しくは前記防塵板の基板部から上下方向に延びる筒状の第3堰板部が形成され、該第3堰板部が、前記第1堰板部の上端より下方に位置する流入口を備えて、前記第1堰板部と第3堰板部との間に環状の第2塵溜め凹部を形成することを特徴とする。
【0007】
【発明の作用・効果】この発明に係るキャップでは、負圧弁の作動時、空気は、まず、シェルとクロージャのフランジ部との間の空気流路から、キャップ内に流入する。
【0008】そして、空気は、下降してから上方へ反転し、その後、水平方向に方向を変えて、防塵板の第2堰板部と天板部の凸部との間を経て、第2堰板部と第3堰板部との間のスペース内に流入する。その際、空気に混入していた塵は、自重と慣性力とによって、天板部の凸部と筒状部内周面との間における第1塵溜め凹部の内周面に衝突し、第1塵溜め凹部に貯溜される。
【0009】その後、空気は、第3堰板部の流入口を経て、第3堰板部と天板部の第1堰板部との間のスペース内に流入する。
【0010】そしてさらに、第3堰板部の流入口が天板部の第1堰板部の上端より下方に配置されているため、空気が、上方に方向を変えて、第1堰板部と防塵板の基板部との間を経て、第1堰板部の内部に流入する。その際、除去されずに残っていた塵は、第1堰板部の外周面に衝突し、自重と慣性力とによって、第1堰板部と第3堰板部との間の第2塵溜め凹部に貯溜される。
【0011】そして、混入された塵が除去された空気は、天板部の流路孔を経て、負圧弁側に流入される。
【0012】すなわち、この発明に係るキャップでは、天板部に凸部を設けて、凸部外周面とクロージャの筒状部内周面との間に、環状の第1塵溜め凹部を形成するように構成したことから、第2塵溜め凹部とあいまって、塵の貯溜量を大きく確保することができ、防塵耐久性を向上させることができる。
【0013】また、この発明に係るキャップでは、天板部の凸部と第1・2・3堰板部とで、キャップ内に流入する空気の流れを、積極的に上下方向に方向転換させ、特に、第1塵溜め凹部において、重力の作用方向と逆に反転させることができるものである。そのため、空気内に混入されている塵の大部分が、第1塵溜め凹部内で除去され、その後の第3・2堰板部での除去とあいまって、防塵効果を向上させることができる。
【0014】
【実施例】以下、この発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0015】実施例のキャップ2は、図1に示すように、自動車の燃料タンクの補給用として開口するフィラーネックに取り付けるものであり、ポリアセタール等の合成樹脂から形成されるクロージャ3と、クロージャ3の上部を覆ってナイロン等の合成樹脂から形成されるシェル20と、を備えて構成されている。
【0016】クロージャ3は、略円筒状の筒状部4と、筒状部の上下方向の略中間位置の内周を塞ぐように配置されて、中央に流路孔12を備えた天板部10と、から構成されている。
【0017】筒状部4の下部外周には、フィラーネック1に螺合するねじ5が形成され、また、筒状部4の上部外周には、シェル20を係止するフランジ部7が形成されている。
【0018】フランジ部7には、図2に示すように、先端に上方に突出する爪部7bを備えてクロージャ3の軸方向へ変形可能な弾性フィンガー7aが形成されている。そして、これらの弾性フィンガー7aの周囲とシェル20との間が、キャップ2内へ空気を流入させる空気流路8となる。また、フランジ部7の下面には、シールリング9が装着されている。
【0019】なお、シェル20の下面には、各弾性フィンガー7aの爪部7bと係合して、キャップ2のフィラーネック1への締め付けトルクを規制するための、ラチェット凸部20bが、多数形成されている。また、20aは、キャップ2をフィラーネック1へ締め付けて取り付ける際の、把持部である。
【0020】筒状部4内における天板部10の下面側には、負圧弁を構成する弁体16が配置されている。この弁体16は、コイルばね18により上方へ付勢される弁体保持プレート17に保持されている。
【0021】コイルばね18は、その下端が、クロージャ3内に形成された円筒状の取付突起6に係止されたばね座プレート19に支持されている。
【0022】なお、弁体保持プレート17とばね座プレート19とは、ポリアセタール等の合成樹脂から形成されている。
【0023】そして、このキャップ2の天板部10は、流路孔12の周囲を上方へ隆起させた凸部11を備えて、凸部11の外周面と筒状部4の内周面との間に、塵を溜めるための、円環状の第1塵溜め凹部13を構成している(図2参照)。
【0024】また、凸部11は、流路孔12の周囲から上方へ延びる円筒状の第1堰板部14を備えている。さらに、凸部11は、第1堰板部14と凸部11の外周縁との間の、凸部11の外周縁側に、上方へ延びる円筒状の突条15を備えている。この突条15は、防塵板21を固着させる部位となる。
【0025】防塵板21は、天板部10の上方側における流路孔12の周囲を覆うもので、ポリアセタール等の合成樹脂から形成されている。そして、この防塵板21は、図1・3に示すように、凸部11の外径と略同一の直径とした略円板状の基板部22を備えている。
【0026】基板部22下面には、基板部22の外周縁から下方へ延び、凸部11の外周縁付近まで延びる円筒状の第2堰板部23が形成されている。また、基板部22下面には、第2堰板部23の内部側に、下方へ延びる円筒状の第3堰板部24が形成されている。
【0027】この第3堰板部24は、下端全周に、凸部11の突条15と嵌合する凹溝26を備え、この凹溝26を突条15に嵌合させて、超音波溶着を利用して凸部11に固着される部位となる。
【0028】なお、防塵板21は、第3堰板部24を凸部11に固着させた後、基板部22と第1堰板部14との間や、第2堰板部23と凸部11の外周縁との間に、空気を通過可能な間隙29・28が形成されるように構成されている。
【0029】さらに、この第3堰板部24には、第3堰板部24を凸部11に固着させた際、凸部11から延びる第1堰板部14の上端より下方の位置に、複数(実施例では対称位置の二箇所)の流入口25が形成されている。
【0030】そして、第3堰板部24を凸部11に固着させた際、この流入口25が形成された第3堰板部24の内周面と、第1堰板部14の外周面と、の間に、塵を貯溜させる第2塵溜め凹部27が形成されることとなる。
【0031】実施例のキャップ2をフィラーネック1の取り付けた後、負圧弁が作動する際の態様について述べると、つぎのようである。
【0032】まず、燃料タンク内の圧力が低下すると、弁体16が、コイルばね18の付勢力に抗して、弁体保持プレート17ごと下方へ下がり、天板部10下面側の流路孔12の周囲から離れ、キャップ2内へ空気が流入することとなる。
【0033】その際、空気は、図4・1に示すように、まず、シェル20と、クロージャ3のフランジ部7における弾性フィンガー7aと、の間の空気流路8から、キャップ2内に流入する。
【0034】そして、空気は、下降してから上方へ反転し、その後、水平方向に方向を変えて、防塵板21の第2堰板部23と天板部10の凸部11との間隙28を経て、第2堰板部23と第3堰板部24との間のスペース内に流入する。その際、空気に混入していた塵Dは、自重と慣性力とによって、凸部11外周面と筒状部4内周面との間における第1塵溜め凹部13の内周面に衝突し、第1塵溜め凹部13に貯溜される。
【0035】その後、空気は、第3堰板部24の各流入口25を経て、第3堰板部24と第1堰板部14との間のスペース(第2塵溜め凹部27)内に流入する。
【0036】そしてさらに、第3堰板部24の流入口25が第1堰板部14の上端より下方に配置されているため、空気が、上方に方向を変えて、第1堰板部14と防塵板21の基板部22との間隙29を経て、第1堰板部14の内部に流入する。その際、除去されずに残っていた塵Dは、第1堰板部14の外周面に衝突し、自重と慣性力とによって、第1堰板部14と第3堰板部24との間の第2塵溜め凹部27に貯溜される。
【0037】そして、混入された塵Dが除去された空気は、天板部10の流路孔12を経て、負圧弁側に流入されることとなる。
【0038】したがって、実施例のキャップ2では、天板部10に凸部11を設けて、凸部11外周面とクロージャ3の筒状部4内周面との間に、環状の第1塵溜め凹部13を形成するように構成したことから、第2塵溜め凹部27とあいまって、塵の貯溜量を大きく確保することができ、防塵耐久性を向上させることができる。
【0039】また、実施例のキャップ2では、天板部10の凸部11と第1・2・3堰板部14・23・24とで、キャップ2内に流入する空気の流れを、積極的に上下方向に方向転換させ、特に、第1塵溜め凹部13において、重力の作用方向と逆に反転させている。そのため、空気内に混入されている塵の大部分が、第1塵溜め凹部13内で除去され、その後の第3・2堰板部での除去とあいまって、防塵効果を向上させることができ、既述の発明の作用・効果の欄で述べたと同様な効果を奏する。
【0040】なお、実施例では、第3堰板部24を防塵板21から延ばして形成する場合を示したが、この第3堰板部24を、天板部10の凸部11側から上方へ延ばして構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例のキャップの断面図である。
【図2】同実施例のクロージャの平面図である。
【図3】同実施例の防塵板の底面図である。
【図4】同実施例の使用時における空気の流れを示す図である。
【符号の説明】
1…フィラーネック、
2…(フューエル)キャップ、
3…クロージャ、
4…筒状部、
7…フランジ部、
8…空気流路、
10…天板部、
11…凸部、
12…流路孔、
13…第1塵溜め凹部、
14…第1堰板部、
16…(負圧弁)弁体、
20…シェル、
21…防塵板、
22…基板部、
23…第2堰板部、
24…第3堰板部、
25…流入口、
27…第2塵溜め凹部、
D…塵。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 燃料タンクのフィラーネックに下部を取り付ける筒状部と、該筒状部における上下方向の略中間位置の内周を塞ぐように配置されて流路孔を有する天板部と、を具備するクロージャを備え、前記天板部の流路孔直下には、前記筒状部内への空気の流入時に作動する負圧弁が配置され、前記天板部の上面側の前記流路孔の周囲には、防塵板が配置され、前記クロージャの筒状部における上部には、外方へ延びるフランジ部が形成され、該フランジ部には、前記クロージャの上方を覆うシェルが取り付けられるとともに、該シェルとの間に前記空気の空気流路が形成されているフューエルキャップであって、前記天板部が、前記筒状部内周面との間に環状の第1塵溜め凹部を形成するように、前記流路孔の周囲を上方へ隆起させる凸部を備え、かつ、前記流路孔の周囲から上方へ延びる筒状の第1堰板部を備え、前記防塵板が、前記凸部の上方を覆う基板部を備えるとともに、該基板部の外周縁から前記凸部の外周縁付近まで延びる筒状の第2堰板部を備え、前記第1堰板部と第2堰板部との間に、前記天板部の凸部若しくは前記防塵板の基板部から上下方向に延びる筒状の第3堰板部が形成され、該第3堰板部が、前記第1堰板部の上端より下方に位置する流入口を備えて、前記第1堰板部と第3堰板部との間に環状の第2塵溜め凹部を形成することを特徴とするフューエルキャップ。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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