説明

フューエルリッド構造

【課題】ロックピンが係止孔に進入することによって閂状にロックされたフューエルリッドが車体に向かって押圧されても、係止孔からロックピンが外れることがないようにする。
【解決手段】係止孔の内周壁に第二係止孔を形成し、フューエルリッドが車体に向かって押圧されたときに、ロックピンに形成された凸部が第二係止孔に係合するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車のフューエルリッド構造に関し、詳しくは閂ロック装置をもつフューエルリッド構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
給油口まわりの車体外板には凹状のフューエルフィラーボックスが形成され、そこには、フューエルフィラーボックスを開閉可能にフューエルリッドがヒンジ結合されている。このフューエルリッドは、フューエルフィラーボックスを閉止する閉止位置とフューエルフィラーボックスを開放する開放位置とを取り得る。開放位置において給油口からの給油が可能となり、閉止位置においてはフューエルリッドの表面と車体表面とが連続した意匠表面を構成して外観品質を高めている。また閉止位置では、車体側から突出するロックピンがフューエルリッドの裏面側に形成された係止部の係止孔に閂状に貫入することで、フューエルリッドは閉状態にロックされる。
【0003】
ところが単純な閂ロックでは、フューエルリッドと車体外板との間の隙間から針金や板状部材を挿入してロックピンの先端を押圧すれば、ロックピンが係止孔から外れてフューエルリッドを開放状態とすることができる場合があった。そこで特開2001−063388号公報、あるいは特開2002−240581号公報には、係止孔から突出するロックピンの先端まわりを遮蔽したフューエルリッド構造が提案されている。このようにすることで上記不具合を回避することができ、燃料の盗難を防止することができる。
【0004】
また特開2007−210562号公報には、ロックを解除する方向へロックピンが移動する動作に伴って、フューエルリッドが開く側へ移動する機構をもつフューエルリッド構造が提案されている。このようにすることで、フューエルリッドが凍結した場合でもフューエルリッドを開動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−063388号公報
【特許文献2】特開2002−240581号公報
【特許文献3】特開2007−210562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところがロックピンによって閂状にロックされたフューエルリッドであっても、フューエルリッドを車体に向かって何度か押圧すると、フューエルリッドの動きによってロックピンが係止孔から外れ、フューエルリッドが不用意に開く場合があることが明らかとなった。
【0007】
本発明はこの問題を解決するためになされたものであり、ロックピンによって閂状にロックされたフューエルリッドが車体に向かって押圧されても、係止孔からロックピンが外れることがないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明のフューエルリッド構造の特徴は、給油口まわりの車体外板に設けた凹状のフューエルフィラーボックスにヒンジ結合されフューエルフィラーボックスを閉止する閉止位置とフューエルフィラーボックスを開放する開放位置とを取り得るフューエルリッドと、フューエルリッドの裏面側に形成され係止孔をもつ係止部と、閉止位置において係止孔に貫入することでフューエルリッドを閉状態にロックするロックピンと、を備えたフューエルリッド構造であって、
閉止位置において該フューエルリッドを車体に向かってさらに押圧したときに、係止部に形成された第1係合部とロックピンに形成された第2係合部とが互いに係合することにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明のフューエルリッド構造によれば、閉止位置においてフューエルリッドを車体に向かってさらに押圧したときに、係止部に形成された第1係合部とロックピンに形成された第2係合部とが互いに係合するので、係止孔からロックピンが外れることがない。したがって閉止位置においてフューエルリッドが不用意に開くのを確実に防止することができる。
【0010】
閉止位置では、第1係合部と第2係合部とは互いに係合していないことが望ましい。このようにすることで、ロック解除する際には係止孔からロックピンを容易に抜くことができ、ロック解除には支障がない。
【0011】
また第1係合部と第2係合部とは凹凸係合によって互いに係合し、凹凸係合の係合方向が閉止位置においてフューエルリッドを車体に向かってさらに押圧する方向と略平行であることが望ましい。このようにすることで、閉止位置においてフューエルリッドを車体に向かって押圧したときに係止孔からロックピンが外れるのをさらに確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例に係るフューエルリッド構造の斜視図である。
【図2】本発明の一実施例に係るフューエルリッド構造を示し、フューエルリッドの閉止位置における要部断面図である。
【図3】図2の要部を拡大して示す要部断面図である。
【図4】本発明の一実施例に係るフューエルリッド構造を示し、フューエルリッドを閉止位置から車体に向かって押圧した状態の要部断面図である。
【図5】本発明の第二の実施例に係るフューエルリッド構造を示し、フューエルリッドの閉止位置における要部断面図である。
【図6】本発明の第二の実施例に係るフューエルリッド構造を示し、フューエルリッドを閉止位置から車体に向かって押圧した状態の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
フューエルリッドは、フューエルフィラーボックスを開閉するものであり、表面には車体と同じ意匠表面をもつ金属製の外板が配置されている。またその裏面には、係止孔をもつ係止部が形成されている。この係止部は、板金から形成したものをフューエルリッドの裏面に溶接することもできるが、フューエルリッドを金属製のアウタと樹脂製のインナとの二層構造とし、インナの成形時に係止部を一体成形することが望ましい。また、フューエルリッドを樹脂製のアウタとインナで構成してもよい。
【0014】
この係止部は、フューエルリッドと車体外板との間の隙間から針金や板状部材を挿入したときに、係止孔に係合しているロックピンが押圧されないような構造とすることが望ましい。そのようにするには、特許文献1,2のような障壁を形成した構造、係止孔を非貫通孔とした構造、係止孔からロックピンの先端が突出しないように係止孔を深くした構造、などとすることができる。
【0015】
係止部には第1係合部が形成され、ロックピンには第2係合部が形成されている。この第1係合部と第2係合部とは、閉止位置においてフューエルリッドを車体に向かってさらに押圧したときに互いに係合する。この係合によって、ロックピンが係止孔から抜けるのが防止されている。
【0016】
第1係合部と第2係合部とは、例えば凹凸係合とすることができる。例えば第1係合部として、係止部に係止孔の中心軸方向に対して交差する中心軸をもつ第二係止孔を形成し、第2係合部として、閉止位置においてロックピンに第二係止孔に向かって突出する凸部を形成する。このようにすることで、閉止位置においてフューエルリッドを車体に向かってさらに押圧すると、凸部が第二係止孔と係合するので、ロックピンが係止孔から抜けるのを防止することができる。
【0017】
係止孔の中心軸方向はロックピンの移動方向と略同軸方向とされるので、第二係止孔の中心軸方向は係止孔の中心軸方向に対して交差していればよい。第二係止孔と凸部との係合を確実なものとするには、凸部の根元と係合する第二係止孔の周壁形状において、周壁端面と周壁内周面とがなす角度を直角又は鋭角とすることが望ましい。また第二係止孔と凸部との係合をさらに確実なものとするには、ロックピンに形成された凸部の突出方向及び第二係止孔の中心軸方向は、閉止位置からフューエルリッドを車体に向かってさらに押圧する方向と平行な方向とすることが望ましい。
【0018】
また、第1係合部として係止部に突起を形成し、第2係合部としてロックピンに凹部を形成することもできる。このようにすることで、閉止位置においてフューエルリッドを車体に向かってさらに押圧すると、突起が凹部と係合するので、ロックピンが係止孔から抜けるのを防止することができる。
【0019】
フューエルリッドは、フューエルフィラーボックスにヒンジ結合されている。その結合方法は特に制限されず、従来と同様に行うことができる。またフューエルリッドを開方向又は閉方向に付勢するトーションスプリングを用いることも好ましい。また、閉止位置においてフューエルリッドを車体に向かってさらに押圧したときに付勢力が蓄えられ、フューエルリッドの押圧を解除したときに蓄えられた付勢力によってフューエルリッドが移動して閉止位置に復帰するようなスイッチ機構を設けることも好ましい。このようなスイッチ機構をもつフューエルリッド構造では、閉止位置においてフューエルリッドを車体に向かってさらに押圧したときのフューエルリッドの移動量が大きくなるので、第1係合部と第2係合部との係合距離を大きくすることができ、ロックピンが係止孔から抜けるのを効果的に防止することができる。
【0020】
以下、図面を参照しながら、実施例により本発明の実施態様を具体的に説明する。
【実施例1】
【0021】
本実施例のフューエルリッド構造において、給油時などにフューエルリッドを開いた状態の斜視図を図1に示す。このフューエルリッド構造は、車体外板に設けた凹状のフューエルフィラーボックス1と、フューエルリッド2とを備えている。フューエルリッド2は、ヒンジ部3を介してフューエルフィラーボックス1の縁部に揺動可能にヒンジ結合されている。
【0022】
フューエルフィラーボックス1の底部には給油口10が表出し、給油口10は図示しないキャップによって気密に閉止される。またフューエルリッド2の揺動端部が当接する部位には、スイッチ11が設けられている。このスイッチ11は、図示されないスプリングと突出制御機構とが内蔵されている。そしてフューエルフィラーボックス1から突出する先端を押圧し、押圧を解除する度に、その先端の突出量が二段階に交互に切り替えられるようになっている。またフューエルフィラーボックス1の側壁には、後述のロックピン4が出入する出入開口12が形成されている。
【0023】
図2には、閉止位置における要部断面図を示している。フューエルリッド2は、車体外板と同様の意匠表面をもつ金属製のアウタ部材20と、樹脂製のインナ部材21とからなり、アウタ部材20とインナ部材21とは一体に結合されている。アウタ部材20の表面には、車体外板と同様の塗装が施されている。
【0024】
インナ部材21には、閉止位置においてフューエルフィラーボックス1に向かって突出する係止部22が一体に形成されている。この係止部22には、係止部22を貫通し閉止位置において出入開口12と同軸となる係止孔23が形成されている。そして係止孔23を構成する周壁の一部には、その周壁を貫通して係止孔23に表出する長方形状の第二係止孔24が形成されている。
【0025】
第二係止孔24の中心軸は、閉止位置においてフューエルリッド2が車体に向かってさらに押圧される方向と略平行であり、係止孔23の中心軸に対して略直交している。第二係止孔24の周壁形状において、図3に拡大して示すように、フューエルリッド2の揺動端部側に位置する後端壁24aの先端面と内周面とがなす角度αは直角に近い鋭角に形成されている。また係止部22の近傍には、同様に閉止位置においてフューエルフィラーボックス1に向かって突出する突起25が形成されている。
【0026】
ヒンジ部3には、図示されないトーションスプリングが配置され、フューエルリッド2を開く方向及び閉じる方向へ付勢する。すなわち閉止位置からフューエルリッド2を開く方向へ回動させると、所定の位置まではトーションスプリングに付勢力が蓄えられ、所定の位置を超えるとその付勢力によってフューエルリッド2が開く方向へ付勢される。また開放位置からフューエルリッド2を閉じる方向へ回動させると、所定の位置まではトーションスプリングに付勢力が蓄えられ、所定の位置を超えるとその付勢力によってフューエルリッド2が閉じる方向へ付勢される。
【0027】
そして車体には、図示しない電磁アクチュエータによって駆動が制御された樹脂製のロックピン4が設けられ、ロックピン4はフューエルフィラーボックス1に形成された開口12からフューエルフィラーボックス1内へ出入する。このロックピン4は、フューエルリッド2の閉止位置において、開口12から突出して係止孔23内に進入することでフューエルリッド2をロックする。そして給油時には、係止孔23から退避することでロックが解除される。ロックピン4は略円柱形状をなし、その先端にはテーパ面40が形成されている。テーパ面40の後端には、閉止位置において第二係止孔24に向かって突出する凸部41が形成され、凸部41に隣接し図2の紙面に垂直方向に延びる溝部42が形成されている。
【0028】
以下、本実施例のフューエルリッド装置の作動を説明する。
【0029】
先ずフューエルリッド2がフューエルフィラーボックス1を開いた開放位置では、ロックピン4は図2に一点鎖線で示す退避位置にあり、支障なく給油口10から給油することができる。またスイッチ11は、フューエルフィラーボックス1の開口に向かって最大に突出した第一位置となっている。給油後、図示しないキャップで給油口10を閉止し、フューエルリッド2を閉じる方向へ回動させる。このとき図示しないトーションスプリングが作動し、所定の位置まではトーションスプリングに付勢力が蓄えられ、所定の位置を超えるとその付勢力によってフューエルリッド2が閉じる方向へ付勢される。そしてフューエルリッド2の突起25がスイッチ11に当接して停止した位置では、フューエルリッド2の表面は車体外板の表面より僅かに高い位置となっている。なおこのとき、ロックピン4は図2に一点鎖線で示す退避位置にある。
【0030】
その後にさらにフューエルリッド2を車体に向かって押圧すると、突起25によってスイッチ11が押し込まれ内蔵されたスプリングに付勢力が蓄えられる。スイッチ11が所定距離まで押し込まれると、突出制御機構のクリック音が発音される。それを聞いた操作者が押圧を解除すると、スプリングの付勢力によってスイッチ11が第一位置より突出距離が小さな第二位置まで突出し、フューエルリッド2は表面が車体外板表面と連続した閉止位置で停止する。それと同時にあるいはその後の操作により、図示しない電磁アクチュエータが駆動され、ロックピン4が前進して開口12から係止孔23内に進入し、フューエルリッド2がロックされる。この状態では、凸部41は第二係止孔24とは係合していない。
【0031】
この状態でフューエルリッド2を車体に向かってさらに押圧すると、図4に示すように凸部41が第二係止孔24と係合し、第二係止孔24の後端壁24aが溝部42に係合する。上述したように後端壁24aの先端面と内周面とがなす角度αは鋭角となっているため、後端壁24aは溝部42又は凸部41の根元と確実に係合する。したがってロックピン4が係止孔23から外れるのが防止されている。またロックピン4の先端は係止孔23の内部に位置しているので、フューエルリッド2と車体外板との間の隙間から針金や板状部材を挿入してロックピンの先端を押圧することが困難となり、燃料の盗難を未然に防止することができる。
【0032】
閉止位置からフューエルリッド2を開く場合には、乗員の操作、ドアの開閉などによって図示しない電磁アクチュエータが駆動され、ロックピン4が係止孔23から退避してロックが解除される。このとき、凸部41は第二係止孔24とは係合していないので、ロックピン4の退避は支障なく行われる。
【0033】
その状態でフューエルリッド2を車体に向かってさらに押圧すると、突起25によってスイッチ11が押圧されて付勢力が蓄えられる。スイッチ11が所定距離まで押し込まれると、突出制御機構のクリック音が発音される。それを聞いた操作者が押圧を解除すると、内蔵スプリングの付勢力によってスイッチ11は第一位置となって、フューエルリッド2は閉止位置から僅かに開いた位置となる。したがってフューエルリッド2の揺動端部に指を掛けることが可能となり、フューエルリッド2を容易に開く方向へ回動させることができる。このとき、図示しないトーションスプリングが作動し、所定の位置まではトーションスプリングに付勢力が蓄えられ、所定の位置を超えるとその付勢力によってフューエルリッド2が開く方向へ付勢される。
【実施例2】
【0034】
本実施例のフューエルリッド構造を図5に示す。このフューエルリッド構造は、第二係止孔24に代えて係止孔23内に向かって突出し紙面に垂直方向に延びる突条26を係止部22に形成し、ロックピン4の一部に紙面に垂直方向に延びる凹溝43を形成したこと以外は実施例と同様の構成である。
【0035】
図5に示す閉止位置では、突条26は凹溝43と係合していないので、ロックピン4の係止孔23からの退避には支障がない。しかし閉止位置でフューエルリッド2を車体に向かってさらに押圧すると、図6に示すように突条26が凹溝43と係合する。したがってロックピン4が係止孔23から外れるのが確実に防止されている。
【符号の説明】
【0036】
1:フューエルフィラーボックス 2:フューエルリッド
3:ヒンジ部 4:ロックピン
22:係止部 23:係止孔
24:第二係止孔(第1係合部) 41:凸部(第2係合部)
26:突条(第1係合部) 43:凹溝(第2係合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給油口まわりの車体外板に設けた凹状のフューエルフィラーボックスにヒンジ結合され該フューエルフィラーボックスを閉止する閉止位置と該フューエルフィラーボックスを開放する開放位置とを取り得るフューエルリッドと、該フューエルリッドの裏面側に形成され係止孔をもつ係止部と、該閉止位置において該係止孔に貫入することで該フューエルリッドを閉状態にロックするロックピンと、を備えたフューエルリッド構造であって、
該閉止位置において該フューエルリッドを車体に向かってさらに押圧したときに、該係止部に形成された第1係合部と該ロックピンに形成された第2係合部とが互いに係合することを特徴とするフューエルリッド構造。
【請求項2】
前記閉止位置では、前記第1係合部と前記第2係合部とは互いに係合していない請求項1に記載のフューエルリッド構造。
【請求項3】
前記第1係合部と前記第2係合部とは凹凸係合によって互いに係合し、該凹凸係合の係合方向が前記閉止位置において前記フューエルリッドを車体に向かってさらに押圧する方向と略平行である請求項1に記載のフューエルリッド構造。
【請求項4】
前記第1係合部は前記係止孔の中心軸方向に対して交差する中心軸をもつ第二係止孔の周壁であり、前記第2係合部は前記閉止位置において該第二係止孔に向かって突出する凸部である請求項3に記載のフューエルリッド構造。
【請求項5】
前記第二係止孔の周壁の少なくとも一部では先端面と内周面とがなす角度が直角又は鋭角であり、該周壁の一部が前記凸部の根元と係合する請求項4に記載のフューエルリッド構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−112144(P2013−112144A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259731(P2011−259731)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】