説明

フューザー部材および組成物

【課題】剥離剤/フューザー油を用いないフューザー部材を提供する。
【解決手段】このフューザーは、特定の分子構造の、網目構造のシロキシフルオロカーボンポリマーの層を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、本件と同時に出願され、本明細書に参考として組み込まれる、同一出願人による同時係属中の出願番号(案件番号20100635−US−NP、XRX−0027)、FUSER MEMBERに関する。
【0002】
本開示は、一般的に、デジタル、多重画像型などを含む電子写真用画像形成装置で有用なフューザー部材に関する。さらに、本明細書に記載のフューザー部材を、固体インクジェット印刷機の転写固定装置で用いることもできる。
【背景技術】
【0003】
電子写真式印刷プロセスにおいて、トナー画像は、フューザーローラーを用いて支持板(例えば、紙シート)に固定されてもよく、融合されてもよい。従来の融合技術は、フューザーローラーからの良好な剥離性を維持するために、融合操作中にフューザーローラーに剥離剤/フューザー油を塗布する。例えば、油を用いた融合技術は、エントリーモデルの製品およびカラー製品の市場におけるすべての高速製品で用いられている。
【0004】
油を用いない融合技術を、画質、部品のコスト、信頼性、構成要素の寿命が長いことなどのような一連の厳しいシステム要求事項を満たしつつ、例えば、毎分100ページ(ppm)またはこれ以上の高速プリンターに拡張することには、依然として技術的な課題がある。
【0005】
優れた剥離性を得るために、フューザーローラーおよびフューザーベルトの多くのトップコート配合物でペルフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA)が現時点で用いられているが、表面の割れ、へこみ、剥離といった問題が、PFAローラーおよびPFAベルトの寿命を制限している。優れた剥離性を付与しつつ、表面の割れ、へこみ、剥離を低減したフューザーローラーおよびフューザーベルトのための材料の組み合わせを見つけることが望ましいだろう。それに加え、PFA外側層を用いるとき、中間層と外側層との接着性が問題となる場合もある。接着層またはプライマー層を必要としない材料の組み合わせを見つけることが望ましいだろう。
【発明の概要】
【0006】
一実施形態によれば、フューザー部材が提供される。フューザー部材は、網目構造のシロキシフルオロカーボンポリマーの層を備えている。
【0007】
別の実施形態によれば、末端がシロキサンのフルオロカーボンおよび溶媒の溶液中で反応させ、網目構造のシロキシフルオロカーボンを作成することを含む、ポリマーを製造する方法が開示されている。網目構造のシロキシフルオロカーボンポリマーは、フッ素含有量が約30重量%〜約70重量%である。
【0008】
別の実施形態によれば、フューザー部材が提供される。フューザー部材は、基板と、基板に配置される弾性層とを備える。網目構造のシロキシフルオロカーボンポリマーを含む接着層が、弾性層に配置されている。フルオロポリマーを含む剥離層が、接着層に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本教示にかかる円柱状基板を備える例示的なフュージング部材を示す。
【図2】図2は、本教示にかかるベルト基板を備える例示的なフュージング部材を示す。
【図3A】図3Aは、本発明の教示にかかる、図1に示したフューザーローラーを用いた例示的なフュージング構造を示す。
【図3B】図3Bは、本発明の教示にかかる、図1に示したフューザーローラーを用いた例示的なフュージング構造を示す。
【図4A】図4Aは、本発明の教示にかかる、図2に示したフューザーベルトを用いた別の例示的なフュージング構造を示す。
【図4B】図4Bは、本発明の教示にかかる、図2に示したフューザーベルトを用いた別の例示的なフュージング構造を示す。
【図5】図5は、転写固定装置を用いる例示的なフューザー構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
固定部材は、その上に1つ以上の機能性層が形成された基板を備えていてもよい。基板としては、例えば、円柱またはベルトを挙げることができる。1つ以上の機能性層は、ケイ素で加工された特徴を作成することによって、疎水性および/または撥油性;超疎水性および/または超撥油性;または非常に優れた疎水性および/または非常に優れた撥油性である表面濡れ性を有する、最も外側または上側がケイ素加工された表面を備えている。画像支持材料(例えば、紙のシート)の上にある融合したトナー画像からのトナー剥離性が良好であり、この性質を維持し、さらに、紙をはがしやすくするために、このような固定部材を、高速高品質の電子写真印刷のための油を用いないフュージング部材として用いてもよい。別の実施形態では、ケイ素で加工された表面によって、油を用いない固定プロセスのための、油を用いない(例えば、ワックスを用いない)トナーを設計することができる。
【0011】
種々の実施形態では、固定部材は、例えば、その上に1つ以上の機能性中間層が形成された基板を備えていてもよい。基板は、例えば、図1および図2に示されるように、特定の構造に依存して、非導電性または導電性の適切な材料を用い、円柱(例えば、円筒管)、円柱状のドラム、ベルト、または膜のような種々の形状で作成されてもよい。
【0012】
特定的には、図1は、本教示にかかる円柱状基板110を備える例示的な固定部材またはフュージング部材100を示し、図2は、本教示にかかるベルト基板210を備える、別の例示的な固定部材またはフュージング部材200を示す。図1に示されている固定部材またはフュージング部材100および図2に示されている固定部材またはフュージング部材200は、一般化された概略をあらわしており、他の層/基板を加えてもよく、存在する層/基板を除去するか、または代えてもよいことは、当業者には容易に明らかになるはずである。
【0013】
図1において、例示的な固定部材100は、その上に1つ以上の機能性層120と外側層130とが形成された円柱状基板110を備えるフューザーローラーであってもよい。種々の実施形態では、円柱状基板110は、円筒管の形(例えば、内部に加熱ランプを備える中空構造を有するもの、または中身が詰まった円筒状のシャフト)をしていてもよい。図2において、例示的な固定部材200は、その上に1つ以上の機能性層(例えば、220)と外側表面230とが形成されたベルト基板210を備えていてもよい。ベルト基板210および円柱状基板110は、当業者には知られているように、剛性および構造保全性を維持するために、例えば、ポリマー材料(例えば、ポリイミド、ポリアラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフタルアミド、ポリアミド−イミド、ポリケトン、ポリフェニレンスルフィド、フルオロポリイミドまたはフルオロポリウレタン)、金属材料(例えば、アルミニウムまたはステンレス鋼)から作られていてもよい。
【0014】
機能性層120および220の例としては、フルオロシリコーン、シリコーンゴム、例えば、室温加硫(RTV)シリコーンゴム、高温加硫(HTV)シリコーンゴム、低温加硫(LTV)シリコーンゴムが挙げられる。これらのゴムは既知であり、商業的に簡単に入手可能であり、例えば、SILASTIC(登録商標)735ブラックRTVおよびSILASTIC(登録商標)732 RTV(いずれもDow Corning製);106 RTV Silicone Rubberおよび90 RTV Silicone Rubber(いずれもGeneral Electric製);JCR6115CLEAR HTVおよびSE4705U HTVシリコーンゴム(Dow Corning Toray Silicones製)である。他の適切なシリコーン材料としては、シロキサン(例えば、ポリジメチルシロキサン);フルオロシリコーン(例えば、Silicone Rubber 552)(Sampson Coating(リッチモンド、バージニア)から入手可能));液体シリコーンゴム、例えば、ビニル架橋した熱硬化性ゴム、またはシラノールを室温で架橋した材料などが挙げられる。別の特定の例は、Dow Corning Sylgard 182である。市販のLSRゴムとしては、Dow Corning製のDow Corning Q3−6395、Q3−6396、SILASTIC(登録商標)590 LSR、SILASTIC(登録商標)591 LSR、SILASTIC(登録商標)595 LSR、SILASTIC(登録商標)596 LSR、SILASTIC(登録商標)598 LSRが挙げられる。機能性層は、弾力性を付与し、必要な場合には、例えば、SiCまたはAlのような無機粒子と混合してもよい。
【0015】
また、機能性層120および220の例としては、フルオロエラストマーも挙げられる。フルオロエラストマーは、(1)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンのうち、2つのコポリマー;(2)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンのターポリマー;(3)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、キュアサイトモノマーのテトラポリマーといった種類に由来する。これらのフルオロエラストマーは、種々の名称、例えば、VITON A(登録商標)、VITON B(登録商標)、VITON E(登録商標)、VITON E 60C(登録商標)、VITON E430(登録商標)、VITON 910(登録商標)、VITON GH(登録商標);VITON GF(登録商標);VITON ETP(登録商標)で商業的に知られている。VITON(登録商標)という名称は、E.I.DuPont de Nemours,Incの商標である。キュアサイトモノマーは、4−ブロモペルフルオロブテン−1,1,1−ジヒドロ−4−ブロモペルフルオロブテン−1,3−ブロモペルフルオロプロペン−1,1,1−ジヒドロ−3−ブロモペルフルオロプロペン−1、または任意の他の適切な既知のキュアサイトモノマー(例えば、DuPontから市販されているもの)であってもよい。他の市販されているフルオロポリマーとしては、FLUOREL 2170(登録商標)、FLUOREL 2174(登録商標)、FLUOREL 2176(登録商標)、FLUOREL 2177(登録商標)、FLUOREL LVS 76(登録商標)が挙げられ、FLUOREL(登録商標)は、3M Companyの登録商標である。さらなる市販材料としては、AFLASTMというポリ(プロピレン−テトラフルオロエチレン)、FLUOREL II(登録商標)(LII900)というポリ(プロピレン−テトラフルオロエチレンビニリデンフルオリド)(これらも、3M Companyから入手可能)、FOR−60KIR(登録商標)、FOR−LHF(登録商標)、NM(登録商標)FOR−THF(登録商標)、FOR−TFS(登録商標)、TH(登録商標)、NH(登録商標)、P757(登録商標)TNS(登録商標)T439(登録商標)、PL958(登録商標)、BR9151(登録商標)、TN505(登録商標)として特定されるTecnoflons(Ausimontから入手可能)が挙げられる。
【0016】
3種類の既知のフルオロエラストマーの例は、(1)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンのうち、2つのコポリマー類、例えば、VITON A(登録商標)として商業的に知られているもの;(2)VITON B(登録商標)として商業的に知られている、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンのターポリマー類;(3)VITON GH(登録商標)またはVITON GF(登録商標)として商業的に知られている、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、キュアサイトモノマーのテトラポリマー類である。
【0017】
フルオロエラストマーであるVITON GH(登録商標)およびVITON GF(登録商標)は、フッ化ビニリデンの量が比較的少ない。VITON GF(登録商標)およびVITON GH(登録商標)は、約35重量%のフッ化ビニリデンと、約34重量%のヘキサフルオロプロピレンと、約29重量%のテトラフルオロエチレンと、約2重量%のキュアサイトモノマーとを有している。
【0018】
ローラー構造の場合、機能性層の厚みは、約0.5mm〜約10mm、または約1mm〜約8mm、または約2mm〜約7mmであってもよい。ベルト構造の場合、機能性層は、約25μm〜約2mm、または約40μm〜約1.5mm、または約50μm〜約1mmであってもよい。
【0019】
剥離層130または230の例示的な実施形態は、フルオロポリマー粒子を含む。本明細書に記載の配合物で使用するのに適したフルオロポリマー粒子は、フッ素含有ポリマーを含む。これらのポリマーは、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、およびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマー繰り返し単位を含むフルオロポリマーを含む。フルオロポリマーは、直線または分枝したポリマー、架橋したフルオロエラストマーを含んでいてもよい。フルオロポリマーの例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA);テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー;ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とフッ化ビニリデン(VDFまたはVF2)とのコポリマー;テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VDF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)のターポリマー;テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VF2)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)のテトラポリマー、およびこれらの混合物が挙げられる。フルオロポリマー粒子は、化学薬品および熱に安定であり、表面エネルギーが低い。フルオロポリマー粒子は、融点が約255℃〜約360℃、または約280℃〜約330℃である。これらの粒子が融解して剥離層を形成する。
【0020】
フューザー部材200の場合、外側表面層または剥離層230の厚みは、約10μm〜約100μm、または約20μm〜約80μm、または約40μm〜約60μmであってもよい。
【0021】
添加剤およびさらなる導電性フィラーまたは非導電性フィラーが、中間層の基板層110および210、中間層220および230、剥離層130および230中に存在していてもよい。種々の実施形態では、他のフィラー材料または添加剤(例えば、無機粒子を含む)を、コーティング組成物に用いてもよく、その後に形成される表面層に用いてもよい。本明細書で用いられる導電性フィラーとしては、カーボンブラック、グラファイト、フラーレン、アセチレンブラック、フッ素化カーボンブラックなどのようなカーボンブラック;カーボンナノチューブ;金属酸化物およびドープされた金属酸化物、例えば、酸化スズ、二酸化アンチモン、アンチモンがドープされた酸化スズ、二酸化チタン、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、インジウムがドープされた三酸化スズなど、およびこれらの混合物を挙げることができる。特定のポリマー、例えば、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ(p−フェニレンスルフィド)、ピロール、ポリインドール、ポリピレン、ポリカルバゾール、ポリアズレン、ポリアゼピン、ポリ(フッ素)、ポリナフタレン、有機スルホン酸塩、リン酸エステル、脂肪酸エステル、アンモニウム塩またはホスホニウム塩、およびこれらの混合物を、導電性フィラーとして用いてもよい。種々の実施形態では、当業者に知られている他の添加剤を入れ、開示されているコンポジット材料を作成することもできる。
【0022】
場合により、任意の既知の接着層および入手可能な適切な接着層が、外側層または外側表面、機能性層、基板の間に配置されていてもよい。接着層は、約2nm〜約10,000nm、または約2nm〜約1,000nm、または約2nm〜約5000nmの厚みで基板または外側層にコーティングされてもよい。接着剤を、スプレーコーティングまたはワイピングを含む既知の任意の適切な技術によってコーティングしてもよい。
【0023】
図3A〜4Bおよび図4A〜4Bは、本発明の教示にかかる融合プロセスのための例示的なフュージング構造を示す。図3A〜3Bに示されているフュージング構造300A〜B、および図4A〜4Bに示されているフュージング構造400A〜Bが、一般化された模式的な図を示しており、他の部材/層/基板/構造を追加してもよく、または、すでに存在している部材/層/基板/構造を取り除くか、または変えてもよいことが当業者には容易に明らかになるはずである。本明細書では電子写真式プリンターを記載しているが、開示されている装置および方法を、他の印刷技術に応用してもよい。例としては、オフセット印刷およびインクジェット機および固体転写固定機が挙げられる。
【0024】
図3A〜3Bは、本教示にかかる、図1に示されるフューザーローラーを用いたフュージング構造300A〜Bを示す。構造300A〜Bは、フューザーローラー100(すなわち、図1の100)を備えていてもよく、このローラーは、加圧機構335(例えば、図3Aの加圧ローラーまたは図3Bの加圧ベルト)とともに、画像支持材料315のためのフューザー用爪を形成する。種々の実施形態では、加圧機構335を、加熱ランプ337と組み合わせて用い、トナー粒子を画像支持材料315の上で融合させるプロセスのために圧力と熱を両方加えてもよい。それに加え、構造300A〜Bは、図3Aおよび図3Bに示されているように、1つ以上の外部熱ローラー350を、例えば、クリーニングウェブ360とともに備えていてもよい。
【0025】
図4A〜4Bは、本教示にかかる、図2に示されるフューザーベルトを用いたフュージング構造400A〜Bを示す。構造400A〜Bは、フューザーベルト200(すなわち、図2の200)を備えていてもよく、このベルトは、加圧機構435(例えば、図4Aの加圧ローラーまたは図4Bの加圧ベルト)とともに、媒体基板415のためのフューザー用爪を形成する。種々の実施形態では、加圧機構435を、加熱ランプと組み合わせて用い、トナー粒子を媒体基板415の上で融合させるプロセスのために圧力と熱を両方加えてもよい。それに加え、構造400A〜Bは、フューザーベルト200を動かし、媒体基板415の上でトナー粒子を融合させ、画像を作成するような機械システム445を備えていてもよい。機械システム445は、1つ以上のローラー445a〜cを備えていてもよく、必要な場合には、これらを加熱ローラーとして用いてもよい。
【0026】
図5は、ベルト、シート、膜などの形態であってもよい、転写固定部材7の一実施形態の図を示す。転写固定部材7は、上述のフューザーベルト200と似た構成である。現像した画像12が中間転写体1の上にあり、ローラー4および8を介して転写固定部材7と接触し、転写固定部材7に転写される。ローラー4および/またはローラー8は、これらに関連して熱を帯びていてもよいし、帯びていなくてもよい。転写固定部材7は、矢印13の方向に進む。複写基板9がローラー10と11との間を進むにつれて、現像した画像が複写基板9に転写され、融合する。ローラー10および/または11は、これらに関連して熱を帯びていてもよいし、帯びていなくてもよい。
【0027】
本明細書には、上述のいずれかの層に網目構造のシロキシフルオロカーボンポリマーを含むフューザー部材が開示されている。網目構造のシロキシフルオロカーボンポリマーは、ゾルゲル化学によって作られる。シロキシフルオロカーボンモノマーは、ゾルゲル化学によって架橋され、アルコキシド基またはヒドロキシド基の加水分解および縮合が起こり、高温で硬化させると、融合表面で用いられるコーティングが生じる。網目構造のシロキシフルオロカーボンポリマーは、中間層、外側層または接着層のうち1つ以上に存在していてもよい。網目構造のシロキシフルオロカーボンポリマーは、高温状態でも溶融したり分解したりせずに耐えることができ、融合条件下で機械的に剛性であり、融合条件で良好な剥離性を示す。網目構造のシロキシフルオロカーボン(SFC)ポリマーは、フューザーローラーまたはフューザーベルトのための接着層として役立たせるのに十分に適している。網目構造のSFCポリマー層は、シリコーンゴムおよびフュージングトップコートと結合する。SFCを接着層として用いると、剥離による欠陥の発生率が低下し、シリコーンゴムの周囲に網目構造の強化層を作成することによって、処理中に生じる欠陥を抑制する。
【0028】
一官能、二官能または三官能のシラン末端基を用い、網目構造のシロキシフルオロカーボンポリマーを調製してもよい。シロキシフルオロカーボンモノマーは、以下の構造によってあらわされ、
【化1】


式中、Cは、脂肪族または芳香族のフルオロカーボン鎖であり;Lは、C2nリンカー基であり、nは、0〜約10の数であり;X、XおよびXは、反応性ヒドロキシド官能基、反応性アルコキシド官能基、炭素原子が約1〜約10個の非反応性脂肪族官能基、炭素原子が約1〜約10個の非反応性芳香族官能基である。
【0029】
上に列挙したモノマーに加え、網目構造のシロキシフルオロカーボンポリマーを、以下の構造を有するモノマーを用いて調製してもよく、
【化2】


式中、Cは、フルオロカーボン鎖をあらわし、このフルオロカーボン鎖は、脂肪族、芳香族であってもよく、脂肪族フルオロカーボン鎖または芳香族フルオロカーボン鎖の混合物を含んでいてもよく;Lは、C2nリンカー基であり、nは、0〜約10の数であり(最もありそうなのは0〜2);X、XおよびXは、反応性ヒドロキシド官能基、反応性アルコキシド官能基、または非反応性官能基(脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素)であってもよい。
【0030】
上に列挙したモノマーに加え、網目構造のシロキシフルオロカーボンポリマーを、ケイ素テトラアルコキシドおよび分岐ペンタシリルクロリドからなる群から選択されるフッ素化していないシランモノマーを含むモノマーを用いて調製してもよい。ケイ素テトラアルコキシドおよび分岐ペンタシリルクロリドは、それぞれの構造によってあらわされる。
【化3】

【0031】
網目構造のシロキシフルオロカーボンポリマーは、フッ素含有量が約30重量%〜約70重量%、または約40重量%〜約70重量%、または約50重量%〜約70重量%である。網目構造のシロキシフルオロカーボンポリマー中の重量基準でのケイ素含有量は、ケイ素が約1重量%〜約20重量%、または約1.5重量%〜約15重量%、または約2重量%〜約10重量%である。
【0032】
モノマーは、硬化したコーティング中、酸化ケイ素結合(Si−O−Si)を介してすべてのモノマーが分子単位で結合しているような網目構造である。したがって、このコーティングは、1つの系になるように架橋しているため、網目構造のシロキシフルオロカーボンポリマーとしての分子量を得ることはできない。
【0033】
シロキシフルオロカーボン前駆体のゾルゲル処理および層のコーティングに用いられる溶媒としては、有機炭化水素溶媒、フッ素化溶媒が挙げられる。溶液中でゾルゲル反応を促進するために、典型的には、メタノール、エタノール、イソプロパノールのようなアルコールが用いられる。溶媒のさらなる例としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトンが挙げられる。溶媒の混合物を用いてもよい。溶媒系は、少量の水を加えることを含み、例えば、シロキシフルオロカーボン前駆体または末端がシロキサンのフルオロカーボンに対し、約1モル当量〜約10モル当量、または約2モル当量〜約4モル当量の水を加えることを含んでいた。
【0034】
ゾルゲル前駆体の溶液に水を加えると、アルコキシ基が水と反応し、縮合して、部分的に網目構造になった凝集物を形成し、これをゾルと呼ぶ。部分的に網目構造のゾルを基板にコーティングすると、乾燥時にゲルを生成し、その後に加熱処理すると、完全に網目構造のSFCコーティング(網目構造のシロキシフルオロカーボンポリマー)が基板表面(フューザー基板)上に生成する。
【0035】
溶媒(例えば、ケトン、塩素化溶媒、エーテルなど)にさらしても、網目構造のシロキシフルオロカーボンポリマーは溶解せず、350℃までの温度では分解せず、系によってはもっと高温でも安定である。網目構造のシロキシフルオロカーボンポリマーは、トナーまたは他の混入物質にさらされると、良好な剥離性を示し、その結果、トナーおよび他の印刷に関連する物質は、フュージング部材に付着しない。
【0036】
セラミック材料は、その強度および耐久性から、よく知られている。しかし、セラミック材料は弾性がなく、脆い傾向がある。したがって、セラミック単独ではフュージング材料として用いるのに理想的ではない。金属アルコキシドゾルゲル要素を用いることで、セラミック領域をハイブリッド系に化学的に組み込むことができる。系に柔軟性を導入し、かつ、良好な剥離性のために高いフッ素含有量を維持するために、ゾルゲル要素とフルオロカーボン鎖とをカップリングすることが望ましい。
【0037】
一実施形態では、フルオロカーボン鎖の間の架橋要素として金属アルコキシド(M=Si、Al、Tiなど)官能基を用いてもよい。コンポジット全体に効率よく架橋させるために、二官能フルオロカーボン鎖を用いる。フッ素含有量を高めるために、一官能フルオロカーボン鎖を加えてもよい。末端がCFの鎖は、融合表面に整列し、表面エネルギーを下げ、剥離性を高める。
【0038】
コンポジット系を生成するのに使用可能な前駆体の例としては、ケイ素テトラアルコキシドおよび末端がシロキサンのフルオロカーボン鎖が挙げられ、これらを以下に示す。シロキサン系のゾルゲル前駆体は、市販されている。ケイ素テトラアルコキシド(例えば、以下のケイ素テトラアルコキシド)を加えると、材料に過剰の架橋が導入され、剛性になるが、ゾルゲル/フルオロカーボンコンポジット系を作成するのに必須ではない。
【化4】

【0039】
フルオロカーボン鎖としては、容易に入手可能なジアルケン前駆体が挙げられ、この前駆体をヒドロシリル化によってシランに変換することができる(反応1)。一官能フッ素化シロキサン鎖は、メチルシロキサンまたはエチルシロキサンとして市販されており、または、クロロシラン前駆体またはジアルケン前駆体から変換してもよい。
【化5】


反応1:フルオロカーボン鎖/ケイ素アルコキシド前駆体の調製
【0040】
以下に示すのは、市販されているいくつかのフッ素化前駆体およびシロキサン前駆体である。フルオロカーボン材料およびシロキサン材料は、Gelest、Synquest、Apollo Scientific、Fluorochem、TCI America、Anachemica、Lancaster Synthesis Inc.、Polysciences Incを含む種々の業者から入手可能である。
【化6】

【0041】
一官能および二官能のフッ素化シロキサン鎖を組み込んだ、架橋したコンポジット系の代表例を、構造1に示す。この実施例では、機械特性およびフッ素含有量を、一官能前駆体と二官能前駆体の比率を調節することによって変えることができる。
【化7】


構造1:ゾルゲル/フルオロカーボンコンポジット系の代表例
【0042】
有機−無機ハイブリッド材料は、J.Mater.Chem.2008、18、579−585に記載される三官能シロキサン基、フッ素化ビス−フェノール−Aを用い、可とう性光導波路用途のために調製されてきた。得られた材料は、硬いが柔軟性があり、欠けがないことが報告された。この種のハイブリッド材料は、フッ素化材料の望ましい屈折率の特性と、セラミックの機械強度をあわせもつために、光導波路用途で引用されることが多い。しかし、これらの材料は、機械強度、可とう性、低い表面エネルギーが必要なフューザー用途には適していない。
【0043】
シリコーン基板上の、網目構造のシロキシフルオロカーボンポリマー:ジシロキシペルフルオロヘキサントップコート
網目構造のシロキシフルオロカーボンポリマーのコーティングを、シリコーンゴム基板の上にプライマーを用いずに直接塗布した。ジシロキシペルフルオロヘキサン(SFC)の構造を以下に示す。
【化8】

【0044】
2グラムのSFCをエタノール12mLに溶解し(濃度0.268M)、0.174グラムのHOと7ミリグラムのNaOHを加えてトップコート層溶液を調製した。
【0045】
フローコーティングプロセスにおいて、1通過分のSFCトップコート層溶液をむき出しのOlympiaローラーに加え、風乾した。218℃までの温度で熱処理を行い、トップコート層を確実に網目構造にした。
【0046】
外側のSFCトップコートは、スパチュラを用いてもこすり落とすことができず、シリコーンゴム表面からはがすこともできなかった。それに対して、プライマーを用いたOlympiaコントロールローラーのPFAトップコートは、シリコーン基板からはがすことができる。それに加え、スパチュラまたは硬い先端で押しても、PFAトップコートについて観察される程度の、取り扱い中に生じるであろう表面損傷を模倣するような圧縮された領域は生じなかった。SFCトップコートを用いて行った融合試験から、ワックスを含むトナーを用いると、トップコート層とトナー/紙表面との間を油の障壁で補助する必要なく、トナーの剥離が起こることが示される。
【0047】
ある割合のシロキシ官能基が、網目構造のシロキシフルオロカーボンポリマー内で結合し、さらに、トナーを剥離することができる程度まで他のフュージング層に結合してもよく、残りのシロキシ官能基は、表面汚染が生じないような少量で存在する。
【0048】
冷オフセット温度および熱オフセット温度のような融合の測定値は、シロキシフルオロカーボントップコートのフルオロカーボン鎖の長さや、フッ素含有量によって影響を受ける。熱オフセット温度は、SFC網目構造ポリマーに組み込まれている(CFフルオロカーボン鎖のnが大きくなるにつれて、高くなる。
【0049】
PFAテフロントップコートを有する、網目構造のシロキシフルオロカーボンポリマー:ジシロキシペルフルオロヘキサンプライマー層
10重量%の網目構造のシロキシフルオロカーボンポリマーを含むペルフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA)のコーティングを、網目構造のシロキシフルオロカーボンポリマーで構成されるプライマー層の上に塗布した。ジシロキシペルフルオロヘキサン(SFC)の構造を以下に示す。
【化9】

【0050】
1.17グラムのSFCをエタノール7mLに溶解し(濃度0.268M)、0.102グラムのHOと4ミリグラムのNaOHを加えてプライマー層溶液を調製した。2.16グラムのPFAと8.64グラムのエタノールをはげしく撹拌してPFAトップコート分散物を調製し、1.2mLのプライマー溶液を加え、PFAトップコート分散物中に10重量%SFCを含有するものを得た。
【0051】
フローコーティングプロセスにおいて、1通過分のプライマー層溶液をむき出しのOlympiaローラーに加え、風乾した。直後に、4回通過分のPFAトップコート分散物を、通過と通過の間を5分あけて表面に塗布した。218℃までの温度で熱処理を行い、プライマー層を確実に網目構造にした後、350℃の乾燥機で15分間熱処理し、PFAトップコートを硬化させた。
【0052】
外側のPFAコーティングは、スパチュラを用いてもこすり落とすことができず、シリコーンゴム表面からはがすこともできなかった。それに対して、プライマーを用いたOlympiaコントロールローラーのPFAトップコートは、シリコーン基板からはがすことができる。外側PFAトップコートの割れは見られなかった。
【0053】
10重量%のSFCを含むPFAトップコートは、SFCプライマー層を加えないと、シリコーンゴムに強く付着しないだろう。25重量%SFC/75重量%PFAのコンポジットコーティングは、力を加えるとシリコーン基板からはがすことができることが示された。10重量%のSFCのみを含むPFAにSFCプライマーを加えると、強く結合するトップコートが製造された。
【0054】
プライマー層への接着性を高めるために、少量のSFC網目構造ポリマーをトップコート配合物に加えてもよい。SFCは、約0.1重量%〜約10重量%、または約1重量%〜約5重量%、または約2重量%〜約4重量%の量で加えられてもよい。フローコーティングされたSFC(ジシロキシペルフルオロヘキサン)の表面エネルギーは、表1に示されており、この値は、Vitonの表面エネルギーに匹敵する値であり、少量でトナーの剥離に影響を与えるはずはない。
【表1】

【0055】
接着層の塗布は、スプレーコーティング、フローコーティング、または他のコーティング方法によって行われてもよい。典型的には、3〜4当量の水と、触媒量の酸または塩基を加え、SFC材料をエタノールまたは別のアルコール、またはアルコールを含有する混合物に溶かした溶液を調製し、網目構造の形成を開始させてもよい。風乾後、トップコート層を塗布してもよい。SFCプライマー層は、熱処理によって、完全に網目構造にすることができ、シリコーンおよびトップコート層の両方に接着させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
網目構造のシロキシフルオロカーボンポリマーの層を含む、フューザー部材。
【請求項2】
前記網目構造のシロキシフルオロカーボンポリマーが、以下の構造によってあらわされるシロキシフルオロカーボンモノマーから作られ、
【化1】

式中、Cは、脂肪族または芳香族のフルオロカーボン鎖であり;Lは、C2nリンカー基であり、nは、0〜約10の数であり;X、XおよびXは、反応性ヒドロキシド官能基、反応性アルコキシド官能基、炭素原子が約1〜約10個の非反応性脂肪族官能基、炭素原子が約1〜約10個の非反応性芳香族官能基である、請求項1に記載のフューザー部材。
【請求項3】
フッ素含有量が約30重量%〜約70重量%の網目構造のシロキシフルオロカーボンポリマーを含む、ポリマー。
【請求項4】
末端がシロキサンのフルオロカーボンおよび溶媒の溶液中で反応させ、網目構造のシロキシフルオロカーボンを作成することによって作られ、この末端がシロキサンのフルオロカーボンが、以下の構造によってあらわされ、
【化2】

式中、Cは、脂肪族または芳香族のフルオロカーボン鎖であり;Lは、C2nリンカー基であり、nは、0〜約10の数であり;X、XおよびXは、反応性ヒドロキシド官能基、反応性アルコキシド官能基、炭素原子が約1〜約10個の非反応性脂肪族官能基、炭素原子が約1〜約10個の非反応性芳香族官能基である、請求項3に記載のポリマー。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2012−133355(P2012−133355A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−269470(P2011−269470)
【出願日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】