説明

フューザー部材

【課題】熱硬化性ポリイミドに匹敵する耐熱性をもち、製造サイクル時間が短縮可能な、フューザー部材の提供。
【解決手段】フュージング部材または転写固定部材200は、熱可塑性ポリイミドポリマーとポリベンズイミダゾールとから作られているベルト基板210、その上に形成されたシコーンおよびフルオロエラストマーからなる群から選択された材料を含む1つ以上の機能性中間層220、およびフルオロポリマーを含む剥離層である外側表面層230により構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、デジタル、多重画像型などを含む電子写真式画像形成装置で有用なフューザー部材に関する。それに加え、本明細書に記載のフューザー部材を、固体インクジェット印刷機の転写固定装置で使用することもできる。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性ポリイミド(PI)は、ガラス転移点Tが高い(約370℃)ため、一般的にフューザーベルト基材として用いられるが、非常に高価であり、硬化プロセスが長く(少なくとも3時間)、エネルギーを消費する(300℃より高い温度で硬化)。
【0003】
したがって、ポリイミドから作られるフューザー基材に関連して、単位製造コストが高い。コストを下げる必要がある。
【0004】
熱可塑性ポリイミドは、熱硬化性ポリイミドの性質をもっていない。利用可能な熱可塑性ポリイミド材料の最も高いTは、約300℃である。フューザー基材に使用される他の材料は、脆くなることがあり、受け入れられない性能を生じてしまうことがある。
【0005】
製造サイクルにかかる時間と費用を減らすために、フューザーベルト基材のための熱硬化性ポリイミドに代わる新規材料を探求する必要性が常に存在する。
【0006】
それに加え、ポリイミドフューザーベルトは、4,000MPaより大きな弾性率を必要とする。いくつかの実施形態では、分解開始温度は、400℃より高くなければならない。このような要求と、製造コストの低減を合わせて満たすことが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一実施形態によれば、フューザー部材が提供される。フューザー部材は、熱可塑性ポリイミド/ポリベンズイミダゾールブレンドを含む基板層を備えている。
【0008】
別の実施形態によれば、熱可塑性ポリイミド/ポリベンズイミダゾールブレンドを含む基材層を含むフューザー部材が記載されている。基材層の上に、シリコーンおよびフルオロエラストマーからなる群から選択される材料を含む中間層が配置されている。中間層の上に、フルオロポリマー剥離層が配置されている。
【0009】
別の実施形態によれば、熱可塑性ポリイミド/ポリベンズイミダゾールブレンドを含む基材層を含むフューザー部材が提供され、ここで、熱可塑性ポリイミドは、以下の構造
【化1】

によってあらわされ、Rは、約6〜約36個の炭素原子を含むアリールであり、nは、約50〜約2,000の繰り返し単位の数であり、ポリベンズイミダゾールは、以下の構造
【化2】

によってあらわされ、式中、nは、約30〜約500の繰り返し部分の数をあらわす。フューザー部材は、シリコーンおよびフルオロエラストマーからなる群から選択される材料を含む中間層と、中間層に配置された、フルオロポリマーを含む剥離層とを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本教示のベルト基板を備える例示的なフューザー部材を示す。
【図2A】図2Aは、本教示の図1に示したフューザー部材を用いた例示的なフュージング構造を示す。
【図2B】図2Bは、本教示の図1に示したフューザー部材を用いた例示的なフュージング構造を示す。
【図3】図3は、転写固定装置を用いるフューザー構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
フューザー部材または固定部材は、その上に1つ以上の機能性中間層が形成された基板を備えていてもよい。本明細書で記載の基板としては、ベルトが挙げられる。1つ以上の中間層としては、緩衝層、剥離層が挙げられる。画像支持材料(例えば、紙のシート)の上にある溶融したトナー画像からのトナー剥離性が良好であり、この性質を維持し、さらに、紙をはがしやすくするために、このようなフューザー部材を、高速高品質の電子写真印刷のための油を用いないフュージング部材として用いてもよい。
【0012】
種々の実施形態では、フューザー部材としては、例えば、その上に1つ以上の機能性中間層が形成された基板が挙げられる。基板は、例えば、図1に示されるように、特定の構造に依存して非導電性または導電性である適切な材料を用い、種々の形状(例えば、ベルトまたは膜)で作られてもよい。
【0013】
図1において、例示的な実施形態のフュージング部材または転写固定部材200は、その上に1つ以上の機能性中間層(例えば、220)および外側表面層230が形成されたベルト基板210を備えていてもよい。外側表面層230は、剥離層とも呼ばれる。ベルト基板210についてさらに記載するが、熱可塑性ポリイミドポリマーとポリベンズイミダゾールとから作られている。
【0014】
(機能性中間層)
機能性中間層220(緩衝層または中間層とも呼ばれる)に用いられる材料の例としては、フルオロシリコーン、シリコーンゴム、例えば、室温加硫(RTV)シリコーンゴム、高温加硫(HTV)シリコーンゴム、低温加硫(LTV)シリコーンゴムが挙げられる。これらのゴムは既知であり、商業的に簡単に入手可能であり、例えば、SILASTIC(登録商標)735ブラックRTVおよびSILASTIC(登録商標)732 RTV(いずれもDow Corning製);106 RTV Silicone Rubberおよび90 RTV Silicone Rubber(いずれもGeneral Electric製);JCR6115CLEAR HTVおよびSE4705U HTVシリコーンゴム(Dow Corning Toray Silicones製)である。他の適切なシリコーン材料としては、シロキサン(例えば、ポリジメチルシロキサン);フルオロシリコーン(例えば、Silicone Rubber 552(Sampson Coatings(リッチモンド、バージニア)から入手可能));液体シリコーンゴム、例えば、ビニル架橋した熱硬化性ゴム、またはシラノールを室温で架橋した材料などが挙げられる。別の特定の例は、Dow Corning Sylgard 182である。市販のLSRゴムとしては、Dow Corning製のDow Corning Q3−6395、Q3−6396、SILASTIC(登録商標)590 LSR、SILASTIC(登録商標)591 LSR、SILASTIC(登録商標)595 LSR、SILASTIC(登録商標)596 LSR、SILASTIC(登録商標)598 LSRが挙げられる。機能性層は、弾力性を付与し、必要な場合には、例えば、SiCまたはAlのような無機粒子と混合してもよい。
【0015】
機能性中間層220として用いるのに適した材料の他の例としては、フルオロエラストマーも挙げられる。フルオロエラストマーは、(1)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンのうち、2つのコポリマー類、例えば、VITON A(登録商標)として商業的に知られているもの;(2)VITON B(登録商標)として商業的に知られている、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンのターポリマー類;(3)VITON GH(登録商標)またはVITON GF(登録商標)として商業的に知られている、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、キュアサイトモノマーのテトラポリマーといった種類に由来する。これらのフルオロエラストマーは、上に列挙したもののような種々の名称で商業的に知られているものに加え、VITON E(登録商標)、VITON E 60C(登録商標)、VITON E430(登録商標)、VITON 910(登録商標)、VITON ETP(登録商標)で商業的に知られている。VITON(登録商標)という名称は、E.I.DuPont de Nemours,Incの商標である。キュアサイトモノマーは、4−ブロモペルフルオロブテン−1、1,1−ジヒドロ−4−ブロモペルフルオロブテン−1、3−ブロモペルフルオロプロペン−1、1,1−ジヒドロ−3−ブロモペルフルオロプロペン−1、または任意の他の適切な既知のキュアサイトモノマー(例えば、DuPontから市販されているもの)であってもよい。他の市販されているフルオロポリマーとしては、FLUOREL 2170(登録商標)、FLUOREL 2174(登録商標)、FLUOREL 2176(登録商標)、FLUOREL 2177(登録商標)、FLUOREL LVS 76(登録商標)が挙げられ、FLUOREL(登録商標)は、3M Companyの登録商標である。さらなる市販材料としては、AFLAS(商標)というポリ(プロピレン−テトラフルオロエチレン)、FLUOREL II(登録商標)(LII900)というポリ(プロピレン−テトラフルオロエチレンビニリデンフルオリド)(いずれも、3M Companyから入手可能)、FOR−60KIR(登録商標)、FOR−LHF(登録商標)、NM(登録商標)FOR−THF(登録商標)、FOR−TFS(登録商標)、TH(登録商標)、NH(登録商標)、P757(登録商標)TNS(登録商標)T439(登録商標)、PL958(登録商標)、BR9151(登録商標)、TN505(登録商標)として特定されるTecnoflon(Ausimontから入手可能)が挙げられる。
【0016】
フルオロエラストマーであるVITON GH(登録商標)およびVITON GF(登録商標)は、フッ化ビニリデンの量が比較的少ない。VITON GF(登録商標)およびVITON GH(登録商標)は、約35重量%のフッ化ビニリデンと、約34重量%のヘキサフルオロプロピレンと、約29重量%のテトラフルオロエチレンと、約2重量%のキュアサイトモノマーとを有している。
【0017】
機能性中間層220の厚みは、約30ミクロン〜約1,000ミクロン、約100ミクロン〜約800ミクロン、または約150ミクロン〜約500ミクロンである。
【0018】
(剥離層)
剥離層230の例示的な実施形態は、フルオロポリマー粒子を含む。本明細書に記載の配合物で使用するのに適したフルオロポリマー粒子は、フッ素含有ポリマーを含む。これらのポリマーは、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、およびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマー繰り返し単位を含むフルオロポリマーを含む。フルオロポリマーは、直鎖または分枝鎖のポリマー、架橋したフルオロエラストマーを含んでいてもよい。フルオロポリマーの例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA);テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー;ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とフッ化ビニリデン(VDF(登録商標)またはVF2)とのコポリマー;テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VDF(登録商標))、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)のターポリマー;テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VF2)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)のテトラポリマー、およびこれらの混合物が挙げられる。フルオロポリマー粒子は、化学薬品および熱に安定であり、表面エネルギーが低い。フルオロポリマー粒子は、融点が約255℃〜約360℃、または約280℃〜約330℃である。これらの粒子が融解して剥離層を形成する。
【0019】
フューザー部材200の場合、外側表面層または剥離層230の厚みは、約10ミクロン〜約100ミクロン、約20ミクロン〜約80ミクロン、または約40ミクロン〜約60ミクロンであってもよい。
【0020】
(接着層)
場合により、任意の既知の接着層および入手可能な適切な接着層(プライマー層とも呼ばれる)が、剥離層230、機能性中間層220、基板210の間に配置されていてもよい。適切な接着剤の例としては、アミノシランのようなシラン類(例えば、Dow Corning製のHV Primer 10)、チタネート、ジルコネート、アルミネートなど、およびこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、約0.001%溶液〜約10%溶液中の接着剤が基板にワイピングされてもよい。接着層は、約2nm〜約2,000nm、または約2nm〜約500nmの厚みで基板または外側層にコーティングされてもよい。接着剤を、スプレーコーティングまたはワイピングを含む既知の任意の適切な技術によってコーティングしてもよい。
【0021】
図2Aおよび2Bは、本教示のフュージングプロセスのための例示的なフュージング構造を示す。それぞれ図2A〜2Bに示されているフュージング構造300Bおよび400Bが、一般化された模式的な図を示しており、他の部材/層/基板/構造を追加してもよく、または、すでに存在している部材/層/基板/構造を取り除くか、または変えてもよいことが当業者には容易に明らかになるはずである。本明細書では電子写真式プリンターを記載しているが、開示されている装置および方法を、他の印刷技術に応用してもよい。例としては、オフセット印刷およびインクジェット機および固体転写固定機が挙げられる。
【0022】
図2Aは、本教示の図1に示されるフューザーベルトを用いたフュージング構造300Bを示す。構造300Bは、図1のフューザーベルトを備えていてもよく、このベルトは、加圧機構335(例えば、加圧ベルト)とともに、画像支持材料315のためのフューザー用爪を形成する。種々の実施形態では、加圧機構335を、加熱ランプ(示していない)とともに用い、トナー粒子を画像支持材料315の上で溶融させるプロセスのために圧力と熱を両方加えてもよい。それに加え、構造300Bは、図2Aに示されているように、1つ以上の外部熱ロール350を、例えば、クリーニングウェブ360とともに備えていてもよい。
【0023】
図2Bは、本教示の図1に示されるフューザーベルトを用いたフュージング構造400Bを示す。構造400Bは、フューザーベルト(すなわち、図1の200)を備えていてもよく、このベルトは、加圧機構435(例えば、図2Bの加圧ベルト)とともに、媒体基板415のためのフューザー用爪を形成する。種々の実施形態では、加圧機構435を、加熱ランプとともに用い、トナー粒子を媒体基板415の上で溶融させるプロセスのために圧力と熱を両方加えてもよい。それに加え、構造400Bは、フューザーベルト200を動かし、トナー粒子を溶融し、媒体基板415の上に画像を形成するような機械システム445を備えていてもよい。機械システム445は、1つ以上のロール445a〜cを備えていてもよく、必要な場合には、これらを加熱ロールとして用いてもよい。
【0024】
図3は、ベルト、シート、膜などの形態であってもよい、転写固定部材7の一実施形態の図を示す。転写固定部材7は、上述のフューザーベルトと似た構成である。現像した画像12が中間転写体1の上にあり、ローラー4および8を介して転写固定部材7と接触し、転写固定部材7に転写される。ローラー4および/またはローラー8は、これらに関連して熱を伴ってもよいし、伴わなくてもよい。転写固定部材7は、矢印13の方向に進む。複写基板9がローラー10と11との間を進むにつれて、現像した画像が複写基板9に転写され、溶融する。ローラー10および/または11は、これらに関連して熱を伴ってもよいし、伴わなくてもよい。
【0025】
(基板層)
本明細書に開示されている基材層210は、熱可塑性ポリイミドとポリベンズイミダゾールとを含む組成物である。
【0026】
フューザー部材の調製に利用されるポリイミドは、ポリイミドホモポリマー、ポリイミドコポリマー、高次ポリイミドポリマー、またはこれらの混合物であってもよい。例えば、熱可塑性ポリイミド(HP Polymers Incorporatedから入手可能)は、以下の構造
【化3】

によってあらわすことができ、式中、Rは、例えば、約6〜約36個の炭素原子、約6〜約24個の炭素原子、約6〜約12個の炭素原子、または約12〜約24個の炭素原子を含むアリールまたはその置換誘導体であり、nは、繰り返し単位または繰り返し部分の数をあらわす。例えば、nは、約50〜約2,000、約100〜約1,000、約275〜約700、約400〜約600、または約150〜約400の数であってもよい。
【0027】
本明細書に記載のフューザー部材を作成するために選択される特定の適切な熱可塑性ポリイミドの例としては、以下の構造
【化4】

によってあらわされるものが挙げられ、式中、nは、本明細書に示されるとおりの数であるか、または、例えば、約50〜約2,000、約100〜約1,000、約275〜約450、または約100〜約375である。
【0028】
フューザー部材のために選択することができる熱可塑性ポリイミドコポリマーの例は、以下の構造
【化5】

によってあらわされ、式中、nおよびmは、それぞれ、約50〜約2,000、または約100〜約1,000の繰り返し単位または繰り返し部分をあらわす。
【0029】
開示されている熱可塑性ポリイミドの数平均分子量は、例えば、約5,000〜約50,000、約10,000〜約35,000、約10,000〜約25,000、または約15,000〜約25,000であってもよく、ポリイミドの重量平均分子量は、例えば、約10,000〜約300,000、約10,000〜200,000、約20,000〜約150,000、または約50,000〜約100,000であってもよく、重量平均分子量および数平均分子量は、既知の方法(例えば、GPC分析)によって決定される。
【0030】
ガラス転移点は、本明細書に示すポリイミドの既知のDSC分析によって決定される場合、例えば、約275℃〜約335℃、約275℃〜約315℃、または約290℃〜約305℃である。
【0031】
本明細書に記載のフューザー部材は、ポリイミドとブレンドまたは混合されるポリベンズイミダゾールも含む。フューザー部材がポリベンズイミダゾールである場合、任意の適切なポリベンズイミダゾール、または2種、3種またはそれ以上の異なるポリベンズイミダゾールの混合物を選択することができる。
【0032】
フューザー部材混合物のために選択することができる適切なポリベンズイミダゾール(PBI)の例は、以下の構造
【化6】

によってあらわされ、式中、nは、例えば、約10〜約800、約30〜約700、約30〜約625、約30〜約500、約100〜約400、約100〜約300、約200〜約300、または約200〜約700の数である。
【0033】
市販のポリベンズイミダゾール(PBI)は、Boedeker Plastics,Inc.(シャイナー、TX)から商品名CELAZOLE(登録商標)から得ることができ、例えば、PBIの26重量%N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)溶液を含む。
【0034】
一実施形態では、ポリベンズイミダゾールは、以下の反応スキームにしたがって調製することができ、nの値は、本明細書に示されるとおりである。
【化7】

【0035】
ポリベンズイミダゾールの数平均分子量は、例えば、約2,000〜約40,000、約3,000〜約40,000、約10,000〜約25,000、約5,000〜約20,000、約9,000〜約15,000、または約7,000〜約15,000であってもよく、ポリベンズイミダゾールの重量平均分子量は、例えば、約9,000〜約150,000、約30,000〜約120,000、約20,000〜約120,000、約50,000〜約100,000、または約60,000〜約90,000であってもよく、重量平均分子量および数平均分子量は、既知の方法(例えば、GPC分析)によって決定される。
【0036】
ポリベンズイミダゾールのガラス転移点(T)は、既知のDSC分析によって決定する場合、例えば、約390℃〜約420℃、約400℃〜約415℃、約380℃〜約420℃、または約395℃〜約410℃であってもよい。
【0037】
ポリイミドおよびポリベンズイミダゾールをブレンドした混合物を含むフューザー部材の場合、ポリイミドは、合計固形分を基準として約1〜約99重量%、約1〜約95重量%、約25〜約75重量%、約40〜約60重量%、約2〜約80重量%、約10〜約70重量%、または約50重量%の量で存在してもよく、ポリベンズイミダゾールは、合計固形分を基準として約99〜約1重量%、約95〜約1重量%、約80〜約2重量%、約70〜約10重量%、約75〜約25重量%、約60〜約40重量%、または約50重量%の量で存在してもよい。
【0038】
本開示のいくつかの実施形態では、本明細書に示されるフューザー部材は、任意要素のさらなるポリマーバインダーをさらに含んでいてもよい。さらなるポリマーバインダーが、ポリイミドおよびポリベンズイミダゾールの混合物中に含まれていてもよい。適切なさらなるポリマーバインダーの例としては、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン−コ−ポリテトラフルオロエチレンなど、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0039】
さらなるポリマーバインダーをポリイミドおよびポリベンズイミダゾールの混合物に加える場合、任意の望ましい有効な量で含まれていてもよい。例えば、さらなるポリマーバインダーは、合計固形分を基準として約1〜約25重量%、約1〜約15重量%、または約1〜約10重量%の量で存在してもよい。
【0040】
開示されている熱可塑性ポリイミド/ポリベンズイミダゾール基材層210は、ヤング弾性率が約4,000MPa〜約10,000MPa、または約5,000MPa〜約9,000MPa、または約6,000MPA〜約8,000MPa、分解開始温度が約400℃〜約600℃、または約425℃〜約575℃、または約450℃〜約550℃である。
【0041】
ポリイミドおよびポリベンズイミダゾールの混合物成分を、任意の適切な方法によってフューザー部材に配合することができる。例えば、既知の粉砕プロセスを用い、フューザー部材混合物の均一な分散物を得ることができ、次いで、既知のドローバーコーティング方法を用い、個々の金属部材(例えば、ステンレス鋼基材)、ガラス板などにコーティングすることができる。例えば、約100℃〜約250℃、または約150℃〜約220℃で適切な時間(例えば、約20〜約120分、または約40〜約60分)加熱することによって、得られた個々の1つ以上の膜を基材の上に維持しつつ、硬化し、乾燥させてもよい。乾燥させ、室温(約23℃〜約25℃)まで冷却した後、得られた膜を既知のプロセスによって(例えば、手で剥がすことによって)基材から外してもよい。得られた膜は、厚みが、例えば、約15〜約150ミクロン、約20〜約100ミクロン、約40〜約80ミクロン、または約25〜約75ミクロンであってもよい。
【0042】
ポリイミドを蓄積させるために選択される金属基材、また、本明細書に開示されているポリベンズイミダゾールを含有する混合物および1種類以上のフィラーとして、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、銅、およびこれらのアロイ、または他の従来の材料を選択してもよい。使用可能な他の適切な基材としては、ガラス板などが挙げられる。
【0043】
ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、任意要素のフィラー成分を作成するために選択される溶媒の例としては、ハロゲン化アルキレン、例えば、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、トルエン、モノクロロベンゼン、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、これらの混合物などが挙げられ、溶媒は、コーティング分散物の合計固形分の約60〜約95重量%、または約70〜約90重量%の量で選択されてもよい。
【0044】
添加剤およびさらなる導電性フィラーまたは非導電性フィラーが、上述の組成物中に存在してもよい。種々の実施形態では、コーティング組成物のため、また、その後に作成される表面層のために、例えば、無機粒子を含む他のフィラー材料または添加剤を使用してもよい。本明細書で使用されるフィラーとしては、カーボンブラック、例えば、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、グラファイト、グラフェン、銅フレーク、ナノダイヤモンド、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、金属酸化物、ドープされた金属酸化物、金属フレーク、およびこれらの混合物が挙げられる。種々の実施形態では、開示されているコンポジット材料を作成するために、当業者に知られている他の添加剤も含まれていてもよい。
【実施例】
【0045】
実験的に、NMP/DMAc中、熱可塑性ポリイミド/PBIの比率が約70/30であり、固形分が約18重量%である熱可塑性ポリイミド/PBI溶液を調製した。この溶液をドローバーコーターを用いてガラス板にコーティングし、その後、190℃で1時間硬化させた。得られた熱可塑性ポリイミド/PBI膜は、厚みが約80μmであった。
【0046】
熱可塑性ポリイミド/PBIベルトについて、ヤング弾性率、分解開始温度をさらに試験した。弾性率は、約6,600MPaであり、分解開始温度は、約520℃であった。比較として、市販の熱硬化性ポリイミドベルトは、弾性率が約6,000MPaであり、分解開始温度が約530℃である。
【0047】
もっと高価な熱硬化性ポリイミドフューザーベルト基材の硬化プロセスと比較すると(少なくとも3時間、硬化時間は320℃を超える)、開示されている熱可塑性ポリイミド/PBIブレンドのフューザーベルト基材を190℃で1時間硬化させると、製造コストおよびサイクル時間が顕著に減る。本明細書に記載するフューザー部材は、熱硬化性ポリイミドフューザーベルト基材に代わる代替物を提供する。本明細書に記載するフューザー部材は、熱硬化性ポリイミドベルトに匹敵する性質をもち、製造コストを下げ、サイクル時間を短縮させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリイミド/ポリベンズイミダゾールブレンドを含む基材層を備えるフューザー部材。
【請求項2】
前記熱可塑性ポリイミドが、以下の構造
【化1】

によってあらわされ、式中、Rは、約6〜約36個の炭素原子を含むアリールであり、nは、約50〜約2,000の繰り返し単位の数である、請求項1に記載のフューザー部材。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリイミドが、以下の構造
【化2】

のいずれかによってあらわされるものからなる群から選択され、式中、nおよびmは、それぞれ、約50〜約2,000の繰り返し単位の数をあらわし、前記ポリベンズイミダゾールは、以下の構造
【化3】

によってあらわされ、式中、nは、約30〜約500の繰り返し部分の数をあらわす、請求項1に記載のフューザー部材。
【請求項4】
前記ポリベンズイミダゾールが、以下の構造
【化4】

によってあらわされ、式中、nは、約30〜約500の繰り返し部分の数をあらわす、請求項1に記載のフューザー部材。
【請求項5】
前記熱可塑性ポリイミドが、前記基材層の約1〜約95重量%の量で存在し、前記ポリベンズイミダゾールが、前記基材層の約1〜約95重量%の量で存在する、請求項1に記載のフューザー部材。
【請求項6】
熱可塑性ポリイミド/ポリベンズイミダゾールブレンドを含む基材層と、
シリコーンおよびフルオロエラストマーからなる群から選択される材料を含む中間層と、
中間層の上に配置された、フルオロポリマーを含む剥離層と
を備える、フューザー部材。
【請求項7】
前記中間層または前記基板層の上に配置された接着層をさらに備える、請求項6に記載のフューザー部材。
【請求項8】
熱可塑性ポリイミド/ポリベンズイミダゾールブレンドを含む基材層(この熱可塑性ポリイミドが、以下の構造
【化5】

によってあらわされ、式中、Rが、約6〜約36個の炭素原子を含むアリールであり、nは、約50〜約2,000の繰り返し単位の数であり、前記ポリベンズイミダゾールは、以下の構造
【化6】

によってあらわされ、式中、nは、約30〜約500の繰り返し部分の数をあらわす)と、
シリコーンおよびフルオロエラストマーからなる群から選択される材料を含む中間層と、
中間層の上に配置された、フルオロポリマーを含む剥離層と
を備える、フューザー部材。
【請求項9】
前記熱可塑性ポリイミドが、前記基材層の約1〜約95重量%の量で存在し、前記ポリベンズイミダゾールが、前記基材層の約1〜約95重量%の量で存在する、請求項8に記載のフューザー部材。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−103500(P2013−103500A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−233109(P2012−233109)
【出願日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】