説明

フユボダイジュ花のエタノール抽出物を有効成分とする血中グルコース低下剤、内臓脂肪蓄積抑制剤、TG低下剤、糞中脂肪排泄促進剤

【課題】本発明は、高カロリーを摂取しても、肥満などの健康阻害を抑制することができ
る剤を提供することを課題とする。
【解決手段】フユボダイジュ花のエタノール抽出物を有効成分とする血中グルコース低下
剤、内臓脂肪蓄積抑制剤、TG低下剤、糞中脂肪排泄促進剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギーの過剰摂取に伴う肥満等の健康阻害要因を改善する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本人の生活様式の欧米化に伴い、脂質摂取が増加する一方である。国民栄養調査によると、エネルギー摂取量は年々減少しているにもかかわらず、その脂質エネルギー比は適正比率である25%を超え、中性脂肪値やコレステロール値が高い人の割合は60歳以上で5〜6割に認められたといわれている。
【0003】
一方、肥満は現代社会における成人の最も重大な疾病をもたらす原因の1つであるが、その主たる要因はカロリー摂取の増加であり、さらには上述した脂質の過剰摂取である。 また、脂肪の過剰摂取は、肥満のみならず、特に、肥満に起因する糖尿病、高脂血症、高血圧、動脈硬化等を発症させる。肥満を疾患とみなして治療対象とする考え方が普及してきている。このような目的の治療薬として、国内では、食欲抑制剤のマジンドールRが唯一承認されている。マジンドール(Mazindol、販売名:サノレックス(R))は、日本において唯一製造販売(ノバルティスファーマ)承認されている食欲抑制薬である(高度肥満症にのみ保険適応)。食欲中枢への直接作用と脳内でのアドレナリン、ドパミン、セロトニンの神経細胞による再取り込み抑制という2種類の機序により、消費エネルギー促進とともに食欲を抑制する交感神経作用アミンであり、薬理学的特性はアンフェタミンと類似している。しかし問題点として覚醒剤であるアンフェタミンと特性の類似が見られることにより、依存性、および短期間での耐性発現が見られることが既に知られており、投与は短期間(3か月を限度)に限られる欠点がある。副作用としては、前述の依存性のほか、肺高血圧症が重要なものとして報告されており、そのほかには各種精神神経症状が見られる。また、口渇、便秘、胃部不快感、悪心・嘔吐等の副作用が報告されている(臨床評価 1985; 13(2): 419-459 、臨床評価 1985; 13(2): 461-515 )。また、海外においては、リパーゼ阻害活性により腸管からの脂肪吸収の抑制作用を持つゼニカルRが肥満改善薬として市販されている。ゼニカルは一般名称をオルリスタット(Orlistat。オーリスタット、オリスタットとし、販売名Xenical(R)(ゼニカル)およびAlli(R)(アライまたはアリ))とされている。ゼニカルは、日本において合法的に(医師による処方あるいは個人輸入できる)入手できる医薬品のうち、唯一中枢神経系に作用しない肥満治療薬である。アメリカ合衆国における治験の結果、本薬の1年間の投与により60%の成人で5%の体重減少が、27%の成人で10%の体重減少が観察されている。一方、プラセボ群では5%体重減少が31%、10%体重減少が11%である。なお、食欲は抑制しない。経口服用により腸内のリパーゼに作用し、結果的に腸管からの脂肪の吸収を阻害する。吸収されなかった脂肪は、大便として肛門を介して排泄される。副作用として脂溶性ビタミンであるA、D、E、K、βカロテンの吸収も阻害されるので、これらビタミン類の摂取量を増やす必要がある。特に、βカロテンとビタミンEでは、血漿中濃度が統計的に有意に減少したため、オルリスタットとともに毎日脂溶性ビタミン補助剤を服用しなければならない。
【0004】
肥満を予防するためには、食事制限により摂取カロリーを減らすことが有効な手段ではある。しかし日常生活においての実行は困難である場合が多い。そこで、食事由来の脂肪が体内に吸収されることを安全かつ健康的に抑制することは、肥満及びそれに関連する疾患の治療あるいは健康増進の目的で、現実的で有用な方策であると考えられる。
【0005】
このような背景のもと、安全でかつヒトに対する有効性が証明されている特定保健用食品の開発が注目されている。今までに食後の血清中性脂肪値の上昇を抑える食品素材としては、膵リパーゼ阻害により脂肪吸収を抑制するグロビン蛋白分解物(J. Nutr. 1988; 128: 56-60, 、日本臨床・食糧学会誌 1999; 52(2): 71-77 、健康・栄養食品研究 2002; 5(3): 131-144)、トリアシルグリセロールとは異なる消化吸収特性を持つジアシルグリセロール(J. Am. Coll. Nutr. 2000; 19(6): 789-796 、Clin. Chim. Acta. 2001; 11(2): 109-117)、魚油より精製されたエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ウーロン茶ポリフェノール、茶カテキンなどが特定保健用食品として発売されている。
【0006】
一方、フユボダイジュ花の脂質改善効果を示した報告はほとんど知られていない。唯一、本出願人が出願した特願2001−389511(特開2003−192605)(特許文献1)において、西洋ボダイジュの熱水抽出物にウシすい臓リパーゼの阻害活性が存在することが記載されているだけである。しかし、この方法は、10kgに水3Lを加え、1500psi(約103気圧)で20分間加熱するなど現実的ではない方法で抽出しており、本発明者らが追試したところこの抽出方法では抽出が困難であった。またこの原料が花由来であるのか、葉由来であるのか、或いは樹皮由来であるのか定かではない。さらにまた、このリパーゼ阻害作用の本質成分については一切明らかにされていない。
西洋ボダイジュ(Tilia×vulgaris Hyne)の花は芳香性が高く、西洋ではストレス緩和のハーブティーの原料として広く普及しているが、その薬効は殆ど知られていない。セイヨウボダイジュはヨーロッパに自生する夏ボダイジュ(Tiliaplatyphylla)とフユボダジュ(Tilia cordata)の交雑種である。セイヨウボダイジュの一方の親であるフユボダイジュの薬効については全く知られていなかった。
これまでは西洋ボダイジュの花については、ハーブティーとしての用途や高血圧、動脈系疾患の治療用途が知られているだけである(デニー・バウン著 ハーブ大百科、363ページ、株式会社誠文堂新光社、1997年)(非特許文献1)上記以外の西洋ボダイジュの薬効についての特許出願としては、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(特開2000−256206号)(特許文献2)、西洋ボダイジュ抽出物の呈味性改良法(特開2001−86941号)(特許文献3)、ダニアレルゲンの不活化剤(特開2005−343981号)(特許文献4)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−192605号公報
【特許文献2】特開2000−256206号公報
【特許文献3】特開2001−86941号公報
【特許文献4】特開2005−343981号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】デニー・バウン著 ハーブ大百科、363ページ、株式会社誠文堂新光社、1997年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、高カロリーを摂取しても、肥満などの健康阻害を抑制することができる剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本出願人は、先に特願2009−228330号にフユボダイジュ花の水溶性抽出物を水と混合しない極性溶媒と接触させることにより得られた当該極性溶媒溶解抽出成分を利用したリパーゼ活性阻害剤、および脂肪吸収阻害活性を有する医薬並びに肥満予防治療機能を有する飲食品を提案した。さらに、研究開発を進めた結果、フユボダイジュエタノール抽出物を有効成分とする血中グルコース低下作用、内臓脂肪蓄積抑制作用、TG低下作用、糞中脂肪排泄促進作用を見出したので、提案する。
(1)フユボダイジュ花のエタノール抽出物を有効成分とする血中グルコース低下剤。
(2)フユボダイジュ花のエタノール抽出物を有効成分とする内臓脂肪蓄積抑制剤。
(3)フユボダイジュ花のエタノール抽出物を有効成分とする血中トリグリセリド低下剤。
(4)フユボダイジュ花のエタノール抽出物を有効成分とする糞中脂肪排泄促進剤。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の剤からなる飲食品用添加剤。
(6)(5)記載の添加剤を含有する飲食品。
(7)健康食品または健康飲料である(6)の飲食品。
(8)錠剤又はカプセル剤の形態である(7)の飲食品。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、フユボダイジュ花のエタノール抽出物を有効成分とする血中グルコース低下作用、内臓脂肪蓄積抑制作用、TG低下作用、糞中脂肪排泄促進作用を発揮することができ、高カロリーを摂取しても、肥満などの健康阻害を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】糞便からの脂質抽出(Folch法)フローを示す図。
【図2】精巣周囲脂肪組織重量と体重1gあたりの相対重量を示す図である。
【図3】血漿のTG濃度を示す図。
【図4】血漿のグルコース濃度を示す図。
【図5】糞便中のTG含量を示す図
【図6】糞便中のTC濃度を示す図。
【図7】被験試料投与後の血中中性脂肪値の推移を示すグラフ。
【図8】摂取後6時間の血漿中性脂肪の総量を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明で用いるユフボダイジュ抽出物は、花柄付き花部又は花の乾燥物の50%エタノール水溶液抽出物である。フユボダイジュとはシナノキ属のTilia cordataである。本発明は、フユボダイジュ抽出物が血中グルコース低下作用、内臓脂肪蓄積抑制作用、TG低下作用、糞中脂肪排泄促進作用を発揮することを見出し、フユボダイジュ抽出物を有効成分とする血中グルコース低下剤、内臓脂肪蓄積抑制剤、TG低下剤、糞中脂肪排泄促進剤である。フユボダイジュ抽出物を摂取することにより、高カロリーを摂取しても、肥満などの健康阻害を抑制することができる。
【0014】
本発明で使用する、フユボダイジュ抽出物は、水溶性の性質を有している。
前処理 終了後の原料、例えばフユボダイジュ花の乾燥物を必要に応じて細切し、水により適宜抽出する。あるいは含水エタノールにより抽出する。本発明で使用するフユボダイジュ抽出物は、フユボダイジュの花柄付き花部の乾燥物を50容量% エタノールに浸漬し、還流下加熱し、ろ過した抽出液を、減圧下に濃縮して得た濃縮液を減圧下で乾燥してフユボダイジュ50%エタノール抽出物を得る。
【0015】
フユボダイジュ抽出物は、ハーブティーとして古くから用いられてきたものの成分に含まれており、飲食品に任意の量で添加しても香味が損なわれず、多量に摂取してもカフェインの過剰摂取にはならない。フユボダイジュ花由来であり、安全性が高い。そのため、飲食品に添加すること、また、連日または日常的に摂取して、目指す効果を持続的に発揮させることが可能である。一回の摂取分(例えば飲料として摂取する場合を想定すると約250ml)あたり、50mg以上摂取できるよう飲食品に添加するとよい。
【0016】
フユボダイジュ抽出物を添加する飲食品の例として、飲料には、液状強壮剤、健康飲料、栄養補給飲料、スポーツドリンク等があげられる。食品としては、健康食品、栄養補給食品等があげられる。
【0017】
本発明の組成物または剤は、少量でその目的である食後血糖値の上昇を抑制するため、食品に添加しても苦味・渋味が発現しないため、食品の風味を損なうことがなく、誰でも容易に摂取することができる。
【0018】
さらに、本発明の剤は、飲食品に添加して、食後血糖値の上昇を抑制し、食事由来の脂肪の吸収を抑制し、血中中性脂肪の上昇を抑制し、および/または肥満を防止するための添加剤として使用できる。本発明のフユボダイジュ抽出物は、天然由来の物質であるから、安全性も大きく、長期間にわたり、定期的に(例えば、数日おき、毎日もしくは食事毎に)摂取してその効果を発揮させることが可能である。
【0019】
さらに、本発明の組成物は食後血糖値の上昇を抑制し、食事由来の脂肪の吸収を抑制し、血中中性脂肪の上昇を抑制し、および/または肥満を防止するための医薬品にも関する。医薬品は好ましくは経口投与に適する剤形、例えば、そのまま服用しても水に溶解して飲んでもよい、粉末剤、散剤もしくは顆粒剤、あるいは錠剤、丸剤、ピル、カプセル剤、トローチ、キャンデー、もしくはチョコレートの形状とすることができる。医薬品中の本発明の組成物または抽出物の量は、例えば、一回摂取あたり10〜5000mgである。
【0020】
以下に実施例を示し、本発明を詳細に説明するが、実施例に本発明が限定されるものではないことは、いうまでもない。
【0021】
[フユボダイジュの抽出]
ボダイジュの花柄付き花部の乾燥物100gを1.5Lの50容量%エタノールに浸漬し、還流下で1時間加熱した。
次いで、ろ過して残渣を再び1.5Lの50容量% エタノールで同様に処理した。
上記2回の処理により得られた抽出液を、合わせて減圧下に濃縮し、濃縮液を得た。
この濃縮液を減圧下で乾燥し、29.6gのボダイジュ50%エタノール抽出物を得た。
【実施例1】
【0022】
フユボダイジュ抽出物を摂取することによる作用機序をマウス試験により確認する。本試験では、フユボダイジュ抽出物含有高脂肪食の長期摂取がマウスの脂質代謝に及ぼす影響について試験した。
上記した抽出法と同様の方法により得られたフユボダイジュ抽出物としてボダイジュエキスパウダーMF(丸善製薬製)(以下、BE)を用いた。本試薬はin vitro試験にて、膵リパーゼ活性阻害作用が強く確認され、in vivoでの単回強制経口投与試験においてもコーン油投与(8ml/kg BW)後の血漿脂質濃度を大きく抑制することが確認されている。(500mg/kg BW投与時)。試験結果を[0032]以降に後述する。
【0023】
1−1実験動物の処置
4週齢のC57BL/6J系の雄性マウス32匹(搬入時の体重13〜18g)を日本エスエルシー株式会社より搬入し、室温約22℃、湿度約40%、明期12時間(8:00〜20:00)に設定した動物飼育室(鶴見リーディングベンチャープラザ内)で飼育を行った。搬入後10日間は馴化期間として、固形飼料CRF−1(オリエンタル酵母株式会社)、水を自由に摂取させた。
馴化期間終了時、体重を測定後、健康状態が良好なマウスを本実験に用いた。
上記マウスを各群の匹数、体重が等しくなるように3群(HF、B1.0、B3.0)に分け、表1に示した組成の高脂肪食(HF食)、1.0%、および3.0%のBEを添加した高脂肪食(それぞれB1.0食、B3.0食)を49日間自由に摂取させた。試験期間中、2日あるいは3日置きに摂餌量、および体重を測定し、食餌を交換した。
【0024】
【表1】

【0025】
試験最終日の18:00より解剖まで絶食状態とし、体重推移の経過より、HF群、B1.0群、B3.0群を以後の実験に用いることとした。
解剖日10:00より1.5gの2.2.2−トリブロモエタノール(和光純薬(株))を1mlのイソプロパノール(和光純薬(株))に溶解させ、生理食塩水で80mlにメスアップした溶液を適量(B.W.×0.02+0.05ml)腹腔内投与し、麻酔後、開腹し、心臓より採血した。3,000r.p.m.で10分間遠心分離を行い、血漿を分離した後、分析まで−80℃で保存した。その後、肝臓、精巣周囲脂肪組織を摘出し、肝臓については0.9%(w/v)生理食塩水を用いて灌流脱血後、重量を測定し、血漿と同様に分析まで−80℃で保存した。また、試験終了3日前より糞を全量採取し、−20℃で分析まで保存した。
【0026】
[血漿生化学検査]
解剖時に得られた血漿を実験に使用した。血漿グルコース濃度はグルコースC−IIテストワコー、血漿TG濃度はトリグリセリドEテストワコー(以上、和光純薬(株))を用いて測定した。
【0027】
[糞便脂質濃度の測定]
解剖時に得られた血漿を実験に使用した。血漿グルコース濃度はグルコースC−IIテストワコー、血漿TG濃度はトリグリセリドEテストワコー(以上、和光純薬(株))を用いて測定した。
試験終了前3日間の糞便の湿重量、および凍結乾燥後の湿重量を測定後、フードミル(形式:TML17 TESCOM(株))にて粉砕した。粉砕した糞便約100mgからFolch法により脂質を抽出し、窒素ガスにて乾固した後、イソプロパノールにて溶解し、試料溶液とした。糞TG含量はトリグリセリドEテストワコー、糞TC含量はコレステロールEテストワコーを用いて測定した(図1)。
【0028】
統計処理
結果は、平均値±標準誤差で表した。統計処理にはStatView Ver. 5.0(SAS Institute Inc., Cary, NC, USA)を用いて分散分析を実施後、Fisher-PLSD法にて有意差検定を行い、p値が0.05未満で有意であると判定した。
精巣周囲脂肪組織の湿重量、および体重1gあたりの相対重量を図2に示した。
【0029】
[血漿生化学分析]
血漿のグルコース濃度を図3、血漿のTG濃度を図4に示した。
図3より、血漿TG濃度はHF群と比較し、BE1.0%、3.0%添加群にて有意に低下したことが明らかとなった。また、図4より血漿グルコース濃度においてはHF群と
比較し、BE1.0%添加群にて有意に低下したことが明らかとなった。
【0030】
[糞便脂質分析]
本飼育最終3日間の糞便中のTG含量を図5に示し、TC濃度を図6に示した。
図5、6より、糞便中のTG、TC含量はLF群と比較してHF群で有意に高値となり、BE3.0%添加群ではHF群、およびB1.0群と比較して有意に高値となった。TC含量において同様の結果が明らかとなった。
【0031】
[結果のまとめと考察]
本実験では、膵リパーゼ阻害作用に伴う食事脂質吸収抑制作用において強い効果が見られたBEを精製高脂肪食に1.0、3.0%混合させた混合飼料をC57BL/6Jマウスに49日間摂取させた場合の内臓脂肪蓄積、血漿生化学パラメーターへの影響について検討を行った。
BE添加により、内臓脂肪組織の一つである精巣周囲脂肪組織の重量は用量依存性が確認され、体重1gあたりのB3.0群の精巣周囲脂肪組織重量はHF群と比較して有意に低値を示した。(図2(a)(b))。
先行試験より、BEには強い膵リパーゼ阻害作用がin vitro試験にて確認されており、in vivoでの油脂単回投与試験においてもコーン油(8ml/kgBW)投与後の血中TG濃度の上昇をBE(500mg/kgBW)が有意に抑制することが確認でき、糞便中に脂質が排出されていることが推測されている。本実験においても、試験最終3日間に排泄された糞を回収し、糞量、糞中脂質含量を測定した。糞便中のTG、およびTC含量において、B3.0群はHF群と比較して有意に糞中TG含量、およびTC濃度が増加しており(図5、6)、BEが膵リパーゼ活性を阻害し、腸管からの脂質の吸収を抑制していることが内臓脂肪蓄積抑制効果の一つであると示唆された。
また、血漿生化学分析の結果、血漿TG濃度において、HF群と比較してB3.0群は絶食下での血中TG濃度の低下作用を有することが確認できた(図3)。また、血漿グルコース濃度において、HF群と比較してB1.0群は絶食下での血中グルコース濃度の低下作用を有することが確認できた(図4)。
以上より、BEの長期摂取は血中グルコース濃度、およびTG濃度の低下作用、内臓脂肪の蓄積抑制効果、脂肪の糞排泄促進作用を有することが確認された。
【0032】
[フユボダイジュエキス(FB)の脂肪吸収抑制単回投与試験]
<試験方法>
・実験動物 ・・・ 8 weeks ddy系雄性マウス 18匹
・環境 ・・・明期08:00~20:00の12時間明暗周期、4〜5匹/ケージ
温度23±1℃
・ 被験試料
対照群 :コーン油 8ml/kg (Control) + 蒸留水 16.7 ml/kg
フユボダイジュ 500mg/kg 群:コーン油 8ml/kg + フユボダイジュ 500mg/16.7 ml/kg (FB 500 mg/kg)
・ 採血(測定)
血漿を用いて、トリグリセライドE-テストワコー(和光純薬株式会社)で測定した。
Student’s t testにて有意差検定を実施した。(p<0.05にて有意な差があるとみなした。)

<測定結果>
被験試料投与後に採血した血液中の血中中性脂肪値を6時間測定した。その結果を、図7、図8に示す。
図7は、被験試料投与後の血中中性脂肪値を示している。コントロールもフユボダイジュ抽出液添加試料も3時間後までは上昇し、その後低下する傾向は同じであるが、フユボダイジュ抽出液添加試料は、全体を通して、血中中性脂肪値が低く推移している。統計値的には、摂取後1時間、2時間が有意に低いことが示されており、摂取直後の上昇が抑制されることが顕著に認められる。
図8は、図7に示す曲線下の面積を示している。摂取後6時間の血漿中性脂肪の総量を示していると見なすことができ、コントロールに対してフユボダイジュ添加試料では、59%に止まっており、総量としても血中中性脂肪が少なく抑えられていることが示されている。
この結果は、「単回強制経口投与試験においてもコーン油投与(8ml/kg BW)後の血漿脂質濃度を大きく抑制する」と[0022]に前述したとおりである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フユボダイジュ花のエタノール抽出物を有効成分とする血中グルコース低下剤。
【請求項2】
フユボダイジュ花のエタノール抽出物を有効成分とする内臓脂肪蓄積抑制剤。
【請求項3】
フユボダイジュ花のエタノール抽出物を有効成分とする血中トリグリセリド低下剤。
【請求項4】
フユボダイジュ花のエタノール抽出物を有効成分とする糞中脂肪排泄促進剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の剤からなる飲食品用添加剤。
【請求項6】
請求項5記載の添加剤を含有する飲食品。
【請求項7】
健康食品または健康飲料である請求項6の飲食品。
【請求項8】
錠剤又はカプセル剤の形態である請求項7の飲食品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−246434(P2011−246434A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271964(P2010−271964)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(593106918)株式会社ファンケル (310)
【Fターム(参考)】