説明

フライアイレンズ、及びこれを用いた照明装置

【課題】 簡単な構成で、歪曲した照射像の形状を補正することのできるフライアイレンズを提供する。
【解決手段】 フライアイレンズ23を構成する各レンズ部23bの出射側に突設するレンズ曲面部24bの形状を四隅を欠いた平面略矩形形状に形成し、レンズ曲面部24bの四隅に当該レンズ曲面部24bと光学的に不連続な平面部24dを連設する。これにより、照射像51の形状に特に影響を与える部分の光束をカットすることができ、被照射面50上で結像する照射像51は、四隅が外方に延びることなく矩形に近い形状となる。その際、平面部24dに出射光を散乱させるための微細な凹凸を施すことにより、照射像51上で光漏れが発生することを的確に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源からそれぞれ入射した光を特定の照射領域で互いに重畳させる複数のレンズ部を備えたフライアイレンズ、及びこれを用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車載のマップランプ等の照明装置は、特定の照射領域に均一照度の光を照射する必要がある。このような特定の照射領域に対する均一照度の光の照射は、例えば、特許文献1に開示されているように、光源からの光を、複数のレンズ部がマトリクス状に配列されたフライアイレンズに入射させることで実現が可能である。
【特許文献1】2001−337204公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、この種の照明装置では、フライアイレンズを構成する各レンズ部の収差に起因して、特に、照射像の四隅が歪曲して外方に延びる等の現象が発生し、ユーザに違和感を感じさせる場合がある。
【0004】
これに対処し、フライアイレンズの各レンズ部を歪曲補正を考慮した非球面に加工することも考えられるが、特に、車載のマップランプ等に用いるフライアイレンズは個々のレンズ部が小型なものとなるため、このような小型な各レンズ部に緻密な非球面加工を施すことは困難であり、製造コストの高騰等を招く。
【0005】
その一方で、歪曲を補正するためのレンズを照明装置の光路上に別途設けることも考えられるが、新たなレンズを追加することは構造の複雑化や照明装置の大型化等を招く。
【0006】
本発明は、簡単な構成で、歪曲した照射像の形状を補正することのできるフライアイレンズ、及びこれを用いた照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のフライアイレンズは、少なくとも出射側に、四隅を欠いたレンズ曲面部と、当該レンズ曲面部の四隅にそれぞれ連設し前記レンズ曲面部と光学的に不連続な平面部とを具備した複数のレンズ部をマトリクス状に配列したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡単な構成で、歪曲した照射像の形状を補正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図面は本発明の第1の実施形態に係わり、図1は照明装置の要部断面図、図2は照明装置の分解斜視図、図3はフライアイレンズを出射側から見た平面図、図4はフライアイレンズに配列したレンズ部の一部を切り出して示す斜視図、図5はレンズ部が照射する照射像の説明図、図6は平面部の面積を変化させた際の各照射像の説明図、図7はフライアイレンズ成形用金型の半体を示す斜視図、図8は平面部の変形例を示す斜視図である。
【0010】
図1において、符号1は、例えば車載のマップランプ等に好適な照明装置を示す。この照明装置1は、例えば、表面実装型の発光ダイオード(LED)12を光源とする光源ユニット10と、この光源ユニット10に冠設するレンズ光学系ユニット20とを有する。
【0011】
図1,2に示すように、光源ユニット10は、LED基板11を有する。LED基板11は、その中央部に半田付け等によってLED12を保持し、さらに、保持したLED12を図示しない電源と電気的に接続する。ここで、LED12の発光効率を向上するため、LED基板11の裏面には、放熱フィン13が固着している。
【0012】
また、レンズ光学系ユニット20は、レンズ筐体21と、このレンズ筐体21に収容保持されるコリメーションレンズ22,及び、フライアイレンズ23を有する。
【0013】
図2に示すように、本実施形態において、レンズ筐体21は、略角筒形状をなし、その光軸方向の一端にLED挿入口30が開口している。また、レンズ筐体21の光軸方向の他端には、LED挿入口30に対向する位置に、照明光の出射口31が開口している。そして、図1に示すように、レンズ筐体21は、光源ユニット10に冠設した際に、LED挿入口30を通じてLED12を内部に露呈させ、LED12の出射平面12aを出射口31に対向させる。
【0014】
また、レンズ筐体21は、一側に開口するレンズ挿入口33を有し、このレンズ挿入口33に隣接する各側壁の内面に、LED挿入口30側から順に、互いに対向するコリメーションレンズ保持溝35、及び、フライアイレンズ保持溝36を有する。さらに、コリメーションレンズ保持溝35よりもLED挿入口30側において、レンズ筐体21は、内部をLED挿入口30側と出射口31側とに区画する遮光板38を有し、この遮光板38には後述するコリメーションレンズ22のレンズ部22bに対応する開口部38aが開口している。
【0015】
コリメーションレンズ22は、例えば、コリメーションレンズ保持溝35に挿入保持される平面略矩形形状のレンズ基板22aの出射側に、レンズ部22bが一体形成されたレンズ部材である。そして、コリメーションレンズ22は、遮光板38の開口部38aを通じてLED12から入射する光を、レンズ部22bで略平行光に変換して出射する。
【0016】
フライアイレンズ23は、フライアイレンズ保持溝36に挿入支持される平面略矩形形状のレンズ基板23a上に、平面矩形形状をなす複数(例えば、5×5個)のレンズ部23bがマトリクス状に一体形成されたレンズ部材である。そして、フライアイレンズ23は、コリメーションレンズ22から各レンズ部23bにそれぞれ入射する光を互いに重畳させることにより、被照射面上の特定の照射領域に均一照度の光を照射する。
【0017】
図1,4に示すように、本実施形態において、各レンズ部23bは、入射側と出射側にそれぞれレンズ曲面部24a,24bが突設する両突のレンズ部である。各レンズ曲面部24a,24bは、四隅を欠いた平面略矩形形状をなし(図3,4参照)、レンズ曲面部24a側から入射した光をレンズ曲面部24b上で合焦させる設定となっている(図5参照)。
【0018】
さらに、レンズ部23bは、入射側及び出射側の四隅でレンズ曲面部24a,24bにそれぞれ連設する平面部24c,24dを有し、これら平面部24c,24dは、レンズ曲面部24a,24bとそれぞれ光学的に不連続となっている。
【0019】
ここで、図4に示すように、少なくとも各平面部24dは、レンズ部23bの光軸に対して垂直に形成することが望ましく、その表面には出射光を散乱させるための微細な凹凸加工(フロスト加工)を施すことが望ましい。また、各平面部24dの面積Sはレンズ曲面部24bの曲率や屈折率等の諸元に応じて適宜設定されるものであるが、その平面視形状は、図3に示すように、略直角三角形に形成することが望ましい。
【0020】
なお、このようなフライアイレンズ23は、例えば上下一対の成形用金型を用いた射出成型によって成型することが可能である。その際、例えば図7に示すように、金型45内に凹設した各レンズ曲面部成型部46の四隅の頂部を切り欠いて平面部成型部47を一体形成することにより、各レンズ部23bに平面部24c,24dを形成することが可能となる。さらに、各平面部成型部47に微細な凹凸を予め形成しておくことにより、フライアイレンズ23の射出成型と同時に、平面部24dに微細な凹凸加工を施すことが可能となる。
【0021】
ここで、図2中符号40は側板であり、この側板40は、各レンズ22,23をレンズ筐体21内に収容後に、例えば粘着テープ等による貼着によって、レンズ筐体21のレンズ挿入口33を閉塞する。
【0022】
このような照明装置1による照明光の照射時において、フライアイレンズ23の各レンズ部23bは、図5に示すように、主としてレンズ曲面部24bから出射する光束51aによって、被照射面50上に照射像51を形成する。この場合、レンズ曲面部24bは、四隅を欠いた略矩形形状であり、照射像51の形状に特に影響を与える部分の光束がカットされているため、被照射面50上で結像する照射像51は、四隅が外方に延びることなく矩形に近い形状となる。
【0023】
同時に、レンズ部23bの各平面部24dからも光が出射するが、平面部24dはレンズ曲面部24bと光学的に不連続であり、また、平面部24dはレンズ部23bの光軸(レンズ曲面部24bの光軸)に直交しているため、平面部24dから出射した光は、照射像51上で重畳され、照射像51の形状に影響を与えることがない。その際、特に、平面部24dの表面に設けた微細な凹凸によって、出射光を散乱させることにより、照射像51上での光漏れの発生を抑制することが可能となる。ここで、光漏れとは、所望の領域外へ照射される光のことである。
【0024】
ここで、短辺寸法がA、長辺寸法がBの本実施形態のレンズ部23bにおいて、図6(a)は各平面部24dの面積がS=0である場合に得られる照射像51シミュレーション結果であり、図6(b)は各平面部24dの面積がS=0.004ABである場合に得られる照射像51のシミュレーション結果である。また、図6(c)は各平面部24dの面積がS=0.01ABである場合に得られる照射像51のシミュレーション結果であり、図6(d)は各平面部24dの面積がS=0.02ABである場合に得られる照射像51のシミュレーション結果である。これらの図からも明らかなように、レンズ部23bにおいて、出射側のレンズ曲面部24bの四隅を数%ずつ平面部24dに置換することにより、照射像51の形状を矩形に近づけることが可能となる。なお、平面部24dの各辺の長さa,bの比は、レンズ部23bの各辺の長さA,Bの比に応じて適宜設定されるものである。
【0025】
このような実施形態によれば、フライアイレンズ23を構成する各レンズ部23bの出射側に突設するレンズ曲面部24bの形状を四隅を欠いた平面略矩形形状に形成し、レンズ曲面部24bの四隅に当該レンズ曲面部24bと光学的に不連続な平面部24dを連設しただけの簡単な構成により、歪曲した照射像51の形状を補正して矩形に近い形状とすることができる。
【0026】
その際、平面部24dに出射光を散乱させるための微細な凹凸を施すことにより、照射像51上で光漏れが発生することを的確に防止することができる。
【0027】
ここで、本実施形態において、平面部24dの表面には、微細な凹凸に代えて、遮光膜25を設けることも可能である。このように、平面部24dに遮光膜25を設けて当該平面部24dからの光の出射を禁止すれば、より的確に、照射像51上での光漏れの発生を防止することが可能となる。
【0028】
なお、上述の実施形態では、両突のレンズ部を用いてフライアイレンズを構成し、各レンズ部の入射側及び出射側の四隅に平面部を設けた一例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、少なくとも、レンズ部の出射側の四隅に、レンズ曲面部に連設する平面部を有していればよい。
【0029】
次に、図9乃至図11は本発明の第2の実施形態に係わり、図9はフライアイレンズを出射側から見た平面図、図2はレンズ部を出射側から見た平面図、図11は平面部を変化させた際の各照射像の説明図である。なお、本実施形態では、各レンズ部上に形成するレンズ曲面部と平面部の平面視形状が、上述の第1の実施形態に対し主として異なる。その他、同様の構成については同符号を付して説明を省略する。
【0030】
図9に示すように、本実施形態において、フライアイレンズ123は、レンズ基板123a上に、平面矩形形状をなす複数(例えば、7×5個)のレンズ部123bが一体形成されたレンズ部材である。
【0031】
図9,10に示すように、本実施形態のレンズ曲面部124bは、少なくとも出射側において、その平面視形状が、レンズ部123bに対して四隅を欠いたいわゆる樽形形状となっている。そして、各レンズ部123b上において、各レンズ曲面部124bの四隅には、当該レンズ曲面部124bとは光学的に不連続な平面部124dがそれぞれ連設している。
【0032】
ここで、レンズ曲面部124bの各辺(すなわち、レンズ曲面部124bと平面部124dとの境界)は、レンズ部123bの各短辺の中点αを通る所定曲率の各円弧と、レンズ部123bの各長辺の中点γを通る所定曲率の各円弧とに沿って形成されるものである。なお、各円弧の曲率は、レンズ曲面部124bの曲率や屈折率等の諸元に応じて適宜設定されるものであり、各円弧の交点βは、各円弧の曲率が大きくなる程内側に移動し、曲率が小さくなる程外側に移動する。
【0033】
このようなフライアイレンズ123を用いた照明装置1による照明光の照射時において、フライアイレンズ123の各レンズ部123bは、主としてレンズ曲面部124bから出射する光束によって、被照射面50上に照射像51を形成する。この場合、レンズ曲面部124bは、四隅を欠いており、しかも、各辺が所定曲率の円弧で規定される樽形形状をなすため、上述の第1の実施形態で得られる照射像に比して、より矩形に近い形状とすることが可能となる。
【0034】
ここで、図11は、短辺寸法がA=3.0mm、長辺寸法がB=4.2mmに設定されたレンズ部123bにおいて、レンズ部123bの長辺から各円弧の交点βまでの距離aと、レンズ部123bの短辺から各円弧の交点βまでの距離bとを各種設定した際のシミュレーション結果である。具体的には、図11(a)はレンズ部123b上の各距離をa=b=0.05mmに設定した場合に得られる照射像51のシミュレーション結果であり、図11(b)は各距離をa=b=0.10mmに設定した場合に得られる照射像51のシミュレーション結果であり、図11(c)は各距離をa=b=0.15mmに設定した場合に得られる照射像51のシミュレーション結果である。
【0035】
これらシミュレーション結果からも明らかなように、レンズ部123b上の各距離a,bを増加させるにつれて(すなわち、レンズ曲面部124bの各辺の曲率を大きく設定するにつれて)、照射像51の形状は、糸巻き形から矩形に変化し、さらに樽形に変化する。そして、レンズ曲面部124bの各辺の曲率を適切に設定することにより、照明装置1は、略完全な矩形形状の照射像51を得ることが可能となる。
【0036】
なお、上述の各実施形態では、単一のLED12を光源として光源ユニット10を構成した一例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数のLED12を光源ユニット10に配設してもよい。この場合、コリメーションレンズ22のレンズ基板22a上には、各LED12に対応して複数のレンズ部22bが形成されることは勿論である。
【0037】
〔付記〕
〔付記項1〕
少なくとも出射側に、四隅を欠いたレンズ曲面部と、当該レンズ曲面部の四隅にそれぞれ連設し前記レンズ曲面部と光学的に不連続な平面部とを具備した平面矩形形状をなす複数のレンズ部をマトリクス状に配列したことを特徴とするフライアイレンズ。
【0038】
〔付記項2〕
前記レンズ曲面部と前記平面部との境界を、前記レンズ部の各辺の中点を通る各円弧に沿って形成したことを特徴とする付記項1記載のフライアイレンズ。
【0039】
〔付記項3〕
前記平面部の表面に、微細な凹凸加工を施したことを特徴とする付記項1または付記項2記載のフライアイレンズ。
【0040】
〔付記項4〕
前記平面部の表面に、遮光膜を設けたことを特徴とする付記項1または付記項2記載のフライアイレンズ。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施形態に係わり、照明装置の要部断面図
【図2】同上、照明装置の分解斜視図
【図3】同上、フライアイレンズを出射側から見た平面図
【図4】同上、フライアイレンズに配列したレンズ部の一部を切り出して示す斜視図
【図5】同上、レンズ部が照射する照射像の説明図
【図6】同上、平面部の面積を変化させた際の各照射像の説明図
【図7】同上、フライアイレンズ成形用金型の半体を示す斜視図
【図8】同上、平面部の変形例を示す斜視図
【図9】本発明の第2の実施形態に係わり、フライアイレンズを出射側から見た平面図
【図10】同上、レンズ部を出射側から見た平面図
【図11】同上、平面部を変化させた際の各照射像の説明図
【符号の説明】
【0042】
1…照明装置、12…発光ダイオード(光源)、23…フライアイレンズ、23b…レンズ部、24b…レンズ曲面部、24d…平面部、25…遮光膜、123…フライアイレンズ、123b…レンズ部、124b…レンズ曲面部、124d…平面部
代理人 弁理士 伊 藤 進

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも出射側に、四隅を欠いたレンズ曲面部と、当該レンズ曲面部の四隅にそれぞれ連設し前記レンズ曲面部と光学的に不連続な平面部とを具備した平面矩形形状をなす複数のレンズ部をマトリクス状に配列したことを特徴とするフライアイレンズ。
【請求項2】
前記レンズ曲面部と前記平面部との境界を、前記レンズ部の各辺の中点を通る各円弧に沿って形成したことを特徴とする請求項1記載のフライアイレンズ。
【請求項3】
光源と、
請求項1または請求項2に記載のフライアイレンズと、
を具備したことを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−145994(P2006−145994A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−337950(P2004−337950)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)