説明

フライアイレンズ、及びこれを用いた照明装置

【課題】 虚像を発生させることなく均一照度の光を照射することのできるフライアイレンズを提供する。
【解決手段】 フライアイレンズ23を構成する各レンズ部23bの境界に沿って、遮光板23cを格子状に埋設する。この遮光板23cによって、フライアイレンズ23に入射した光が複数のレンズ部23b間を通過することを禁止することで、虚像を発生させることなく、特定の照射領域Alに均一な光を照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源からそれぞれ入射した光を特定の照射領域で互いに重畳させる複数のレンズ部を備えたフライアイレンズ、及びこれを用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車載のマップランプ等の照明装置は、特定の照射領域に均一照度の光を照射する必要がある。このような特定の照射領域に対する均一照度の光の照射は、例えば、特許文献1に開示されているように、光源からの光を、複数のレンズ部がマトリクス状に配列されたフライアイレンズに入射させることで実現が可能である。
【特許文献1】2001−337204公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、この種の照明装置において、フライアイレンズに入射した入射角の大きい光(すなわち、斜入射光)は、隣接する複数のレンズ部内を通過する場合がある。そして、このように複数のレンズ部内を通過した光がフライアイレンズから出射すると、本来フライアイレンズで得ようとする照射像の上下左右に別の照射像(虚像)が出現する現象、すなわち、虚像現象(光漏れ)が発生する。
【0004】
本発明は、虚像を発生させることなく均一照度の光を照射することのできるフライアイレンズ、及びこれを用いた照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のフライアイレンズは、マトリクス状に配列する複数のレンズ部と、前記各レンズ部の境界に位置し、互いに隣接する前記レンズ部間の光学的な接続を遮断する遮光手段と、を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、虚像を発生させることなく均一照度の光を照射することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図面は本発明の一実施形態に係わり、図1は照明装置の要部断面図、図2は照明装置の分解斜視図、図3はフライアイレンズを入射側から見た平面図、図4はフライアイレンズが形成する照射像の説明図、図5はフライアイレンズ成形用金型と遮光板を示す斜視図、図6はフライアイレンズの変形例を示す断面図である。
【0008】
図1において、符号1は、例えば車載のマップランプ等に好適な照明装置を示す。この照明装置1は、例えば、表面実装型の発光ダイオード(LED)12を光源とする光源ユニット10と、この光源ユニット10に冠設するレンズ光学系ユニット20とを有する。
【0009】
図1,2に示すように、光源ユニット10は、LED基板11を有する。LED基板11は、その中央部に半田付け等によってLED12を保持し、さらに、保持したLED12を図示しない電源と電気的に接続する。ここで、LED12の発光効率を向上するため、LED基板11の裏面には、放熱フィン13が固着している。
【0010】
また、レンズ光学系ユニット20は、レンズ筐体21と、このレンズ筐体21に収容保持されるコリメーションレンズ22、及び、フライアイレンズ23を有する。
【0011】
図2に示すように、本形態において、レンズ筐体21は、略角筒形状をなし、その光軸方向の一端にLED挿入口30が開口している。また、レンズ筐体21の光軸方向の他端には、LED挿入口30に対向する位置に、照明光の出射口31が開口している。そして、図1に示すように、レンズ筐体21は、光源ユニット10に冠設した際に、LED挿入口30を通じてLED12を内部に露呈させ、LED12の出射平面12aを出射口31に対向させる。
【0012】
また、レンズ筐体21は、一側に開口するレンズ挿入口33を有し、このレンズ挿入口33に隣接する各側壁の内面に、LED挿入口30側から順に、互いに対向するコリメーションレンズ保持溝35、及び、フライアイレンズ保持溝36を有する。さらに、コリメーションレンズ保持溝35よりもLED挿入口30側において、レンズ筐体21は、内部をLED挿入口30側と出射口31側とに区画する遮光板38を有し、この遮光板38には後述するコリメーションレンズ22のレンズ部22bに対応する開口部38aが開口している。
【0013】
コリメーションレンズ22は、例えば、コリメーションレンズ保持溝35に挿入保持される平面略矩形形状のレンズ基板22aの出射側に、レンズ部22bが一体形成されたレンズ部材である。そして、コリメーションレンズ22は、遮光板38の開口部38aを通じてLED12から入射する光を、レンズ部22bで略平行光に変換して出射する。
【0014】
フライアイレンズ23は、フライアイレンズ保持溝36に挿入支持される平面略矩形形状のレンズ基板23a上に、例えば下方に突出する入射面と上方に突出する出射面とを備えた複数(例えば、5×5個)のレンズ部23bがマトリクス状に一体形成されたレンズ部材である。そして、フライアイレンズ23は、コリメーションレンズ22から各レンズ部23bにそれぞれ入射する光を互いに重畳させることにより、被照射面50上の特定の照射領域Al(図4参照)に均一照度の光を照射する。
【0015】
また、フライアイレンズ23には、遮光手段としての遮光板23cが、各レンズ部23bの境界に沿って格子状に埋設している。この遮光板23cは、互いに隣接する各レンズ部23b間の光学的な接続を遮断するためのもので、少なくとも入射面側において各レンズ部23b間を遮光することが望ましく、さらに、レンズ部23bの入射面側から可能な限り出射面側に延設されていることが望ましい。なお、遮光板23cは、例えば、表面に光吸収膜を配した金属または樹脂製の薄板材を、格子状に組み合わせることにより形成が可能である。そして、この遮光板23cは、例えば、上下一対の成形用金型55,56によってフライアイレンズ23を射出成型する際に、図5に示すように、下型56のレンズ面成型部56a上に位置決め載置することにより、フライアイレンズ23内に一体的に埋設することが可能である。
【0016】
ここで、図2中符号40は側板であり、この側板40は、各レンズ22,23をレンズ筐体21内に収容後に、例えば粘着テープ等による貼着によって、レンズ筐体21のレンズ挿入口33を閉塞する。
【0017】
このような構成において、遮光板23cは、光軸に対して広い入射角度の光がフライアイレンズ23に入射した場合にも、当該入射光が、隣接する複数のレンズ部23b間を通過して出射することを禁止する(図4中の2点鎖線参照)。なお、本形態において、光軸に対して広い入射角度でレンズ部23bに入射する光とは、例えば、コリメーションレンズ22によって十分な平行光に変換されなかった光である。そして、遮光板23cによって、レンズ部23bに入射した光が隣接するレンズ部23bを通過して出射することを禁止することにより、フライアイレンズ23は、被照射面50上に虚像I(図4参照)を発生させることなく、照射領域Alを均一照度の照射像を形成する。
【0018】
このような形態によれば、フライアイレンズ23に埋設した遮光板23cによってレンズ部23b間での光の通過を禁止することができるので、虚像を発生させることなく、特定の照射領域Alに均一な光を照射することができる。
【0019】
この場合、特に、LED12から出射する光をコリメーションレンズ22で厳密な平行光に変換してフライアイレンズ23に入射させる必要がなくなるため、コリメーションレンズ22に対する光学特性等の要求を緩和することができ、照明装置1の小型化を容易に実現することができる。すなわち、例えば、照明装置1の小型化を実現すべく、LED12からコリメーションレンズ22までの距離を、コリメーションレンズ22で厳密な平行光を生成するのに必要な距離以下に短縮した場合にも、フライアイレンズ23に埋設した遮光板23cの作用によって虚像の発生を防止することができる。
【0020】
さらに、本形態の照明装置1において、LED12から出射する光の出射角度が比較的小さい場合には、LED12とフライアイレンズ23との光路上に配設するコリメーションレンズ22を省略することも可能である。そして、このようにコリメーションレンズ22を省略すれば、照明装置1のさらなる小型化を実現することができる。
【0021】
ここで、例えば、図6に示すように、本形態のフライアイレンズ23としては、遮光板23cを埋設したものに代えて、例えば、入射面側に、各レンズ部23bの境界に沿って格子状に凹設した溝部23dを遮光手段として設けたものを採用してもよい。このような構成においても、入射光のレンズ部23b間での光の通過を防止して、虚像の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】照明装置の要部断面図
【図2】照明装置の分解斜視図
【図3】フライアイレンズを入射側から見た平面図
【図4】フライアイレンズが形成する照射像の説明図
【図5】フライアイレンズ成形用金型と遮光板を示す斜視図
【図6】フライアイレンズの変形例を示す断面図
【符号の説明】
【0023】
1…照明装置、12…発光ダイオード(光源)、23…フライアイレンズ、23b…レンズ部、23c…遮光板(遮光手段)、23d…凹溝(遮光手段)、Al…照射領域
代理人 弁理士 伊 藤 進

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に配列する複数のレンズ部と、
前記各レンズ部の境界に位置し、互いに隣接する前記レンズ部間の光学的な接続を遮断する遮光手段と、
を具備したことを特徴とするフライアイレンズ。
【請求項2】
前記遮光手段は、前記各レンズ部の境界に沿って格子状に形成した遮光板又は溝部であることを特徴とする請求項1記載のフライアイレンズ。
【請求項3】
光源と、
請求項1または請求項2に記載のフライアイレンズと、
を具備したことを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−145995(P2006−145995A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−337951(P2004−337951)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)