説明

フライトレコーダ及びフライトレコーダシステム

【課題】 地上のセンサーデータ解析装置の負荷を軽減できるフライトレコーダ及びフライトレコーダシステムを提供する。
【解決手段】 センサーデータ信号処理部11′は、センサーデータをセンサーデータ記憶部12とセンサーデータ解析判定部13に出力すると共にセンサーデータから飛行時間等を選択して飛行管理記録部14に出力し、センサーデータ解析判定部13は、入力されたデータが予め設定された条件に照らして異常データを含むかどうかを判定し、異常データを含めば判定結果表時部15に異常データを含むことを表示し、センサーデータ解析装置2′が異常データを含む時にセンサーデータ記録部12から全センサーデータをダウンロードし、異常データを含まない時に飛行管理データ記録部14から飛行管理データのみをダウンロードするフライトレコーダ及びフライトレコーダシステムである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フライト状況を記録するフライトレコーダシステムに係り、特に、地上解析装置の負荷を軽減できるフライトレコーダ及びフライトレコーダシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】航空機には、航空機事故を未然に防止する目的で、整備に必要な情報として、部品等の使用状況及び劣化状況を調査するための各種のセンサーが取り付けられており、それらセンサーからのデータを常に記録している。記録されたデータは、基地に帰還後、1つの基地に一台程度の割合で備え付けられたセンサーデータを解析する装置によって解析され、整備情報として利用されている。
【0003】従来のフライトレコーダシステムについて図2を使って説明する。図2は、従来のフライトレコーダシステムの構成ブロック図である。従来のフライトレコーダシステムは、図2に示すように、機体に装着されている各種のセンサーから得られる情報を記録する機上のフライトレコーダ1と、フライトレコーダ1で記録されたセンサーデータを解析して、異常なセンサーデータの発生回数及び発生時間と、部品の使用時間と、飛行時間とを解析する地上のセンサーデータ解析装置2とから構成されている。
【0004】また、機上のフライトレコーダ1は、センサーデータ信号処理部11と、センサーデータ記録部12とから、センサーデータ解析装置2は、センサーデータ解析部21からそれぞれ主に構成されている。
【0005】次に、従来のフライトレコーダシステムの各部の働きを具体的に説明する。まず、フライトレコーダ1において、センサーデータ信号処理部11は、各種センサーからの情報を処理して、解析可能な形のデータに変換するものである。例えば、アナログデータは、デジタルデータに変換される。センサーデータ記録部12は、センサーデータ信号処理部11で処理されたデータを記録するようになっている。
【0006】また、地上のセンサーデータ解析装置2について図3を用いて説明する。図3は、センサーデータ解析装置2の処理の流れを示す説明図である。センサーデータ解析部21は、図3に示すように、フライトレコーダ1のセンサーデータ記録部12からダウンロードされたデータを解析して、異常なセンサーデータの発生回数及び発生時間とを出力し、一方、部品の使用時間と、飛行時間とをそれぞれの機体と部品ごとに管理して、保存しているものである。
【0007】次に、従来のフライトレコーダシステムの動作について説明する。フライト中にセンサーがデータを検出すると、センサーデータ信号処理部11は、その信号を解析可能なデータに変換してセンサーデータ記録部12に出力する。センサーデータ記録部12は、そのデータを格納する。この際にセンサーデータ記録部12に記録されているデータの量は、1機体の1フライトあたり、数メガバイトから数十メガバイトになる。
【0008】センサーデータ記録部12に格納されているデータは、航空機が基地に帰還してからセンサーデータ解析装置2にダウンロードされる。センサーデータ解析部21は、ダウンロードされたデータを解析して、そのデータ中に異常なデータがあれば、異常なデータの発生回数及び発生時間を出力する。
【0009】また、センサーデータ解析部21は、各機体、各部品ごとに部品の使用時間と、飛行時間とを管理し、保存する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来のフライトレコーダシステムでは、実際に必要なデータが各部品の使用時間と、飛行時間と、異常が発生した際の異常データの発生回数及び発生時間のみであるにもかかわらず、基地に帰還する全機体のすべてのセンサーデータを、一台のセンサーデータ解析装置が解析するようにしているために、センサーデータ解析装置が処理しなければならないデータの量が膨大になり、地上での処理の負荷が大きくなるという問題点があった。
【0011】本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、地上のセンサーデータ解析装置で処理すべきデータの量を削減し、地上のセンサーデータ解析装置の負荷を軽減できるフライトレコーダ及びフライトレコーダシステムを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記従来例の問題点を解決するための請求項1記載の発明は、航空機に取り付けられた各種のセンサーが検知するセンサーデータを記録するフライトレコーダにおいて、解析可能に変換してセンサーデータを出力すると共に前記センサーデータの中から飛行管理データを選択して別に出力するセンサーデータ信号処理部と、前記センサーデータ信号処理部から出力されるセンサーデータを記録するセンサーデータ記録部と、前記センサーデータ信号処理部から出力される飛行管理データを記録する飛行管理データ記録部と、前記センサーデータ信号処理部から出力されるセンサーデータを予め設定された条件に合致するかどうかを検査し、その結果の信号を出力するセンサーデータ解析判定部と、前記センサーデータ解析判定部からの信号によって判定結果を出力する判定結果出力部とを有することを特徴としており、判定結果出力部の結果内容が正常であれば飛行管理データ記録部からデータをダウンロードし、結果内容が異常であればセンサーデータ記録部からデータをダウンロードして解析すれば、センサーデータ解析装置の負荷を軽減できる。
【0013】上記従来例の問題点を解決するための請求項2記載の発明は、フライトレコーダシステムにおいて、請求項1記載のフライトレコーダと、判定結果出力部の結果内容によりセンサーデータ記録部又は飛行管理データ記録部のいずれかからデータをダウンロードするセンサーデータ解析装置とを有することを特徴としており、判定結果出力部の結果内容が正常であれば飛行管理データ記録部からデータをダウンロードし、結果内容が異常であればセンサーデータ記録部からデータをダウンロードして解析すれば、センサーデータ解析装置の負荷を軽減できる。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態に係るフライトレコーダシステム(本システム)ついて図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施の形態に係るフライトレコーダシステムの構成ブロック図である。本システムは、センサーデータを機上で記録する際に異常なデータでないかどうかを検査し、異常なデータであれば、その旨を表示することによって、ユーザにすべてのセンサーデータをダウンロードするように指示するが、データが正常であれば、ユーザに飛行管理データのみをダウンロードすればよいように指示することによって、すべてのセンサーデータをセンサーデータ解析装置にダウンロードする必要をなくし、地上のセンサーデータ解析装置の負荷を軽減するものである。
【0015】本システムは、図1に示すように、フライトレコーダ1′と、センサーデータ解析部21′とを有するセンサーデータ解析装置2′とから構成されている。また、フライトレコーダ1′は、センサーデータ信号処理部11′と、センサーデータ記録部12と、センサーデータ解析判定部13と、飛行管理データ記録部14と、判定結果表示部15とから構成されている。
【0016】次に機上のフライトレコーダ1′の各部を具体的に説明する。センサーデータ信号処理部11′は、まず、従来のセンサーデータ信号処理部11と同様に各種のセンサーからの信号を解析可能なデータに変換し、このデータをセンサーデータ記録部12と、センサーデータ解析判定部13とに出力するものである。
【0017】また、センサーデータ信号処理部11′は、解析可能に変換したデータからエンジンスタート及びエンジンストップ及びフライトスタート及びフライトストップ等の時刻と、各部品の使用時間を算出するために必要なデータを選択して、飛行管理記録部14に出力するものである。
【0018】飛行管理データ記録部14は、エンジンスタート及びエンジンストップ及びフライトスタート及びフライトストップ等の飛行時間と、各部品の使用時間を算出するために必要なデータを格納するものである。
【0019】センサーデータ解析判定部13は、センサーデータ信号処理部11′から入力されたデータを解析し、あらかじめ設定された条件に従ってデータを検査するものである。
【0020】ここで、条件とは、例えば、オーバートルク、エンジン過回転、低回転等の限界値を超過していないかどうかを、また、エンジン回転数が増加している間にエンジン油温があらかじめ設定された値を超過していないか等である。
【0021】センサーデータ解析判定部13は、この処理において、データに異常が発見されれば、判定結果表示部15に信号を出力するものである。また、この処理において、データに異常が発見されなければ、センサーデータ解析判定部13は、判定結果表示部15に信号を出力しないものである。
【0022】判定結果表示部15は、センサーデータ解析判定部13から信号が入力されると、LED等を点灯して、センサーデータ記録部12に異常なデータが格納されていることをユーザに知らせるものである。
【0023】また、判定結果表示部15は、センサーデータ記録部に異常なデータが格納されていることをユーザに知らせることができればよいので、LEDでなくて、例えば、パイロットランプ、又はディスプレイ等の表示装置若しくは、ブザー等の音によるものであっても構わない。つまり、判定結果を出力する出力部であればよい。尚、センサーデータ記録部12は、従来のものと同様でセンサーデータを記録するものであるので、その具体的説明を省略する。
【0024】次に、地上側のセンサーデータ解析装置2′の各部について説明する。センサーデータ解析部21′は、ユーザの指示によって、飛行管理データ記録部14に格納されているデータ、又は、センサーデータ記録部12に格納されているデータのどちらかを選択してダウンロードするものである。
【0025】ここで、上記選択の基準は、判定結果表示部15が異常を表示しているかどうかによって決まるものである。つまり、判定結果表示部15が異常を表示していればセンサーデータ記録部12からデータをダウンロードし、判定結果表示部15が異常を表示していいなければ飛行管理データ記録部14からデータをダウンロードするものである。
【0026】次に、本システムの動作について説明する。まず、センサーが正常なデータを検知した場合について説明すると、そのデータは、センサーデータ信号処理部11′を介して解析可能な形に変換され、センサーデータ記録部12に格納され、同時にセンサーデータ解析判定部13において、あらかじめ設定された情報に基づいて検査される。このデータは正常なので、センサーデータ解析判定部13は、なにもしない。
【0027】一方、センサーが異常なデータを検知した場合、そのデータは、センサーデータ信号処理部11′を介して解析可能な形に変換され、センサーデータ記録部12に格納され、同時にセンサーデータ解析判定部13において、あらかじめ設定された情報に基づいて検査される。このデータは異常なので、センサーデータ解析判定部13は、判定結果表示部15に信号を出力する。判定結果表示部15は、LED等を点灯して、センサーデータ記録部に異常なデータが格納されていることをユーザに知らせる。
【0028】また、センサーが検知したデータが正常/異常を問わず、エンジンスタート又は、エンジンストップ又は、フライトスタート又は、フライトストップである場合には、そのデータを受け取ったセンサーデータ信号処理部11′は、そのデータを飛行管理データ記録部14にも格納する。
【0029】そして、ユーザは、判定結果表示部15のLEDが点灯していなければ、飛行管理記録部14に格納されているデータをセンサーデータ解析部21′にダウンロードし、点灯していれば、センサーデータ記録部12に格納されているデータをセンサーデータ解析部21′にダウンロードする。
【0030】本システムによれば、異常なデータを機上のフライトレコーダ1′が検出し、異常があればLED等を点灯するようにしているので、ユーザがセンサーデータに異常があったかどうかをダウンロードする以前に知ることができ、従って地上のセンサーデータ解析装置2′にすべてのデータをダウンロードする必要がなくなり、地上のセンサーデータ解析装置2′の負荷を軽減できる効果がある。
【0031】
【発明の効果】請求項1,2記載の発明によれば、センサーデータをセンサーデータ記録部で記録し、センサーデータにおける飛行管理データを飛行管理データ記録部で記録し、センサーデータをセンサーデータ解析判定部で予め設定した条件に合致するかどうか判定し、その結果を判定結果出力部が出力するフライトレコーダと、判定結果出力部の結果内容でセンサーデータ記録部又は飛行管理データ記録部からデータをダウンロードするセンサーデータ解析装置とを有するフライトレコーダシステムとしているので、判定結果出力部の結果内容が正常であれば飛行管理データ記録部からデータをダウンロードし、結果内容が異常であればセンサーデータ記録部からデータをダウンロードして解析すれば、センサーデータ解析装置の負荷を軽減できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るフライトレコーダシステムの構成ブロック図である。
【図2】従来のフライトレコーダシステムの構成ブロック図である。
【図3】従来のセンサーデータ解析装置2の処理の流れを示す説明図である。
【符号の説明】
1,1′…フライトレコーダ、 2,2′…センサーデータ解析装置、 11,11′…センサーデータ信号処理部、 12…センサーデータ記録部、 13…センサーデータ解析判定部、 14…飛行管理データ記録部、 15…判定結果表示部、 21,21′…センサーデータ解析部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 航空機に取り付けられた各種のセンサーが検知するセンサーデータを記録するフライトレコーダにおいて、解析可能に変換してセンサーデータを出力すると共に前記センサーデータの中から飛行管理データを選択して別に出力するセンサーデータ信号処理部と、前記センサーデータ信号処理部から出力されるセンサーデータを記録するセンサーデータ記録部と、前記センサーデータ信号処理部から出力される飛行管理データを記録する飛行管理データ記録部と、前記センサーデータ信号処理部から出力されるセンサーデータを予め設定された条件に合致するかどうかを検査し、その結果の信号を出力するセンサーデータ解析判定部と、前記センサーデータ解析判定部からの信号によって判定結果を出力する判定結果出力部とを有することを特徴とするフライトレコーダ。
【請求項2】 請求項1記載のフライトレコーダと、判定結果出力部の結果内容によりセンサーデータ記録部又は飛行管理データ記録部のいずれかからデータをダウンロードするセンサーデータ解析装置とを有することを特徴とするフライトレコーダシステム。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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