説明

フライヤにおける材料搬送装置

【課題】多品種少量生産の用途にも好適に使用可能にする。
【解決手段】水平循環経路に沿って走行する無端のチェーン11と、チェーン11に所定の間隔ごとに装着するエプロン12、12…とを備え、エプロン12、12…は、チェーン11の外側の油槽21内に垂下して油中の材料を搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高品質のフライや天ぷらなどの揚げ物を揚げ加工することができるフライヤにおける材料搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
天ぷらなどの揚げ物を能率よく大量生産するためのフライヤは、長い油槽内に高温の揚げ油を満たし、油槽の一端から材料を投入して他端から揚げ加工済みの製品を排出する。そこで、油槽内には、たとえばネットコンベヤのような材料搬送コンベヤが配設されている(特許文献1)。
【0003】
従来の材料搬送コンベヤは、材料を投入する上流側から、製品を排出する下流側まで一方向に材料を搬送するために、油槽内においてネットコンベヤを上下に循環走行させ、ネットコンベヤの上面を搬送面として使用する。なお、材料搬送コンベヤの下流側に排出用のコンベヤを付設し、製品の排出を自動化することも可能である。
【特許文献1】特開2002−159406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる従来技術によるときは、材料の投入位置、製品の排出位置が長い油槽の両端に固定されるため、大量生産の用途に適しているとしても、揚げ加工時間の調節が材料搬送コンベヤの走行速度だけに依存するため、揚げ加工条件の多様な設定が困難であり、多種少量生産の用途に対して必ずしも使い勝手がよくないという問題があった。
【0005】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、水平循環経路を有するチェーンに外向きのエプロンを装着することによって、多種少量生産の用途にも好適に使用することができるフライヤにおける材料搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、一端に斜め上向きの斜行部分を有する水平循環経路に沿って走行する無端のチェーンと、チェーンに対して所定の間隔ごとに着脱自在に装着する複数のエプロンとを備えてなり、エプロンは、チェーンの外側に形成する油槽内に垂下し、油中の材料をチェーンの走行方向に搬送することをその要旨とする。
【0007】
なお、エプロンは、斜行部分において、油槽に形成するスロープに沿って材料を油面上に搬出することができる。
【0008】
また、エプロンには、材料を投入する揚げ枠を着脱自在に付設してもよく、油の流通孔を設けてもよい。
【発明の効果】
【0009】
かかる発明の構成によるときは、エプロンは、水平循環経路に沿って走行する無端のチェーンに対して所定の間隔ごとに装着され、チェーンの外側に形成する油槽内に垂下して油中の材料を搬送する。また、搬送された材料は、斜め上向きの斜行部分を通過すると、揚げ加工済みの製品として外部に排出される。そこで、材料は、チェーンの水平循環経路の任意の位置において、隣接する2枚のエプロン間の油中に投入すればよく、材料の揚げ加工時間は、水平循環経路のいずれの位置で油中に投入するかにより、任意に調節することができる。また、投入位置を選択することにより、揚げ加工時間が異なる複数の材料を同時に並行して揚げ加工することも可能である。加えて、チェーンの走行速度は、無段階に連続可変することができ、連続運転、間欠運転も可能であるから、多種多様な揚げ加工条件を速やかに設定し、多種少量生産における生産製品の切替に即応することができる。ただし、この発明において、チェーンは、上下左右に屈曲可能な、いわゆる三次元チェーンを使用するものとする。
【0010】
エプロンは、チェーンの水平循環経路の斜行部分において、油槽に形成するスロープに沿って材料を油面上に搬送することにより、製品を外部に容易に自動排出することができる。また、このとき、スロープの上部に油切り用のメッシュまたはスリット付きの油切り部を設けることにより、製品の油切りをすることができる。
【0011】
エプロンに付設する揚げ枠は、エプロンを介して油中の材料を搬送するとき、材料の形崩れを防ぎ、製品の仕上り形態を向上させることができる。なお、揚げ枠は、かき揚げやえび天などのような形崩れし易い材料ごとに専用の形状を定めることができる。
【0012】
エプロンは、油の流通孔を設けることにより、油中を進行するときの抵抗を小さくすることができる。なお、流通孔は、板材に任意の形状に開口させることができるが、たとえばエプロン自体をパンチングメタル材や金網材により形成してもよい。ただし、金網材のエプロンは、機械的な変形を防ぐために、外周に補強枠を設けることが好ましい。また、油の流通孔は、油中に浮かぶ揚滓によって目詰りすることがないように、十分大きくすることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0014】
フライヤにおける材料搬送装置は、水平循環経路に沿って走行する無端のチェーン11に対し、所定の間隔ごとに外向きのエプロン12、12…を着脱自在に装着してなる(図1、図2)。なお、エプロン12、12…は、チェーン11の外側に形成するフライヤ20の油槽21内に垂下し、チェーン11の走行により、油槽21内の油中を進行する。
【0015】
フライヤ20は、油槽21を形成する横長のテーブル22に対し、脚23、23…を付設して片袖机形に構成されている。ただし、一方の袖机形の脚23には、制御ボックス23aが組み込まれており、図1には、他方の一対の脚23、23の1本のみが図示され、図2には、脚23、23…の図示が省略されている。テーブル22の一端側は、斜め上向きに高くなっており、油槽21は、両端を円弧状にして長円形に形成するとともに、テーブル22の形状に合わせて斜め上向きのスロープ21aが一端に形成されている。また、テーブル22の長手方向の一辺には、前面板22aが立設されている。
【0016】
スロープ21aの上部は、油切り用の目皿を装着する油切り部21bと、製品を排出するための排出孔21cとに分割されており、油切り部21b、排出孔21cの下は、図示しない油受けトレイ、製品トレイを着脱自在に挿着するトレイスペース24、24としてフライヤ20の側端面に開口されている。なお、図1の油切り部21bの目皿は、チェーン11用の一方のスプロケット13と同心の多数の円弧状のスリットが形成されている。
【0017】
チェーン11は、両端のスプロケット13、13に巻き掛けられている。ただし、スロープ21a側のスプロケット13は、スロープ21aと平行に傾いており、他方のスプロケット13は、駆動軸13aを介し、減速機13b付きの駆動モータ13cに連結されている。なお、駆動モータ13cは、無段階に変速可能な可変速モータであり、連続運転、間欠運転が選択可能である。そこで、チェーン11は、駆動モータ13cを介し、図1の矢印K1 方向に循環走行させることができる。
【0018】
チェーン11は、駒11aに対し、上下左右のリンク片11b、11b…を回転自在に連結する基本ユニットを多数連結することにより(図3)、前後左右に屈曲可能な三次元チェーンとして構成されている。ただし、図3(A)は、基本ユニット部分の模式分解斜視図であり、同図(B)は、スロープ21a側のスプロケット13に対するチェーン11の巻掛け部分の要部斜視図である。
【0019】
球状の駒11aは、互いに直交する2本の軸孔を貫通させるとともに、各軸孔に垂直な対称形の切欠き面を互いに接するように球の表面に形成し、上下左右のリンク片11b、11b…は、各切欠き面に対応するようにして逆方向に連結されている。なお、各駒11aには、軸孔に挿着する連結ピンを介し、駒11a、11a…の2ピッチごとに、上下方向または左右方向のローラ11c、11cが交互に付設されている。そこで、スプロケット13は、このようなチェーン11の上下方向のローラ11c、11c…に係合する上下のギヤ歯を有し、左右方向のローラ11c、11c…の内向きのものを収納する溝をギヤ歯の間に有する2重スプロケットに形成されている。
【0020】
チェーン11の水平走行部分と、スロープ21aに沿う斜行部分との間には、チェーン11を上下に屈曲させる断面逆L字形のガイド14、14が油槽21の上縁に沿って配設されている(図2、図4)。ただし、ガイド14、14は、スロープ21a側のスプロケット13に向けて進行する側、スプロケット13と逆方向に進行する側にそれぞれ配設されているものとし、図2には、その一方のみが図示されている。各ガイド14のスロープ21a側の先端には、スロープ21aと平行な斜め上向きのガイド片14aが突設されている(図4(A))。そこで、ガイド14は、ガイド片14aとともに、チェーン11の内向きのローラ11c、11c…に対して上から係合することにより、チェーン11を水平走行部分と斜行部分との間に円滑に走行させることができる。なお、図4(B)は、同図(A)のX−X線矢視相当断面図である。
【0021】
エプロン12、12…は、チェーン11に対し、支持棒12c、ブラケット12bを介して所定の間隔ごとに外向きに装着されている(図1、図5)。
【0022】
チェーン11は、所定の間隔ごとの隣接する上向きのローラ11c、11c用の連結ピンを延長して、エプロン12用の延長軸11d、11dが形成されている。逆L字状のブラケット12bの上辺には、延長軸11d、11dを挿入する丸孔12b1 、長孔12b2 が形成されており、垂直辺の下部には、エプロン12を旗状に垂下させる支持棒12cが突設されている。なお、支持棒12cの先端には、ローラ12dが装着されている。また、ブラケット12bの垂直辺の裏面側には、門形の係合片12b3 が付設されている(図6)。
【0023】
ブラケット12bは、チェーン11の延長軸11d、11dを丸孔12b1 、長孔12b2 に挿入し、外向きのローラ11cを係合片12b3 に係合させることにより、旗状のエプロン12を油槽21内に安定に片支持することができる。なお、ブラケット12bには、チェーン11の進行方向後方側につまみ状の突出部12b4 が形成されており、突出部12b4 には、門形の係合片12b3 に係合させるローラ11cの後方に隣接する他のローラ11c用の連結ピンの先端が当接する(図5の二点鎖線)。そこで、エプロン12は、油の抵抗によりチェーン11の進行方向後方側に傾くおそれがない。ただし、エプロン12には、油の抵抗を緩和するために、縦長の油の流通孔12a、12a…が列設して形成されている。なお、ブラケット12bの長孔12b2 は、各ガイド14の位置でチェーン11が上下に屈曲し、延長軸11d、11dの間隔が狭くなっても(図2)、一方の延長軸11dの移動を許容し、ブラケット12bをチェーン11上に安定に支持することができる。
【0024】
油槽21には、油の排出口21d、供給口21eが形成されている(図2)。排出口21d、供給口21eの間には、図示しない油の加熱循環装置が配設されており、したがって、油槽21内には、所定の油面Wとなるように所定温度の油を満たすことができる。また、チェーン11は、外向きのローラ11c、11c…を油槽21の内側の上縁のガイド材21fに支持させるとともに(図5)、各支持棒12cの先端のローラ12dを油槽21の外側の上縁に支持させることにより(図1)、油槽21を横切るようにしてエプロン12、12…の姿勢を正しく保ちながら、エプロン12、12…を循環進行させることができる(図1の矢印K1 方向)。なお、各エプロン12は、チェーン11の水平走行部分において、油の流通孔12a、12a…を開口する下側約半分が油面Wより低くなって油中に没し、下辺が油槽21の底面近くに位置するものとする。
【0025】
そこで、チェーン11を循環走行させながらテーブル22の手前側の適当な位置において材料を隣接するエプロン12、12間の油中に投入すると(図1の矢印A1 、A2 …方向)、各エプロン12は、油中の材料をチェーン11の走行方向に搬送しながら揚げ加工することができる。また、チェーン11の水平走行部分の最後において、各エプロン12は、スロープ21aに沿って油中の揚げ加工済みの材料を油面W上に搬出し、油切り部21bの目皿を介して油切りした後、排出孔21c内に落下させることにより、トレイスペース24内の製品トレイ上に製品として自動排出することができる。
【0026】
なお、材料は、図1の矢印A1 、A2 …の投入位置を選択することにより、全体の揚げ加工時間を調節することができ、したがって、揚げ加工時間が異なる製品を同時に揚げ加工することも可能である。また、駆動モータ13cの速度を可変し、必要に応じて連続運転、間欠運転を切り換えることにより、チェーン11の走行速度を設定して任意の揚げ加工時間を実現することができる。
【他の実施の形態】
【0027】
各エプロン12には、チェーン11の走行方向後方側に、ブラケット16を介して揚げ枠15を着脱自在に付設することができる(図7)。
【0028】
ブラケット16は、エプロン12に対し、油の流通孔12a、12aを利用してねじ止めされており、両端に上向きのフック16a、16aを有する。そこで、揚げ枠15は、係合片15a、15aをフック16a、16aに掛けることにより、エプロン12に取り付けることができる。材料を油中の揚げ枠15内に投入することにより、材料の形崩れを防ぐことができる。
【0029】
なお、揚げ枠15は、材料の形状に合わせて任意の形状に作ることができる。たとえば図8の揚げ枠15は、えび天用であり、衣(バッタ)を付けないえびの尾部分だけを外側に突出させるための切欠き15bを一端に形成するとともに、衣付きの頭部から腹部を収納するために全体幅を斜めに変化させている。
【0030】
以上の説明において、エプロン12は、全面に油の流通孔を形成するパンチングメタルにより形成してもよく、周囲に補強枠を有する金網製としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】フライヤの全体構成斜視図
【図2】図1の要部縦断面図
【図3】要部拡大説明図(1)
【図4】要部拡大説明図(2)
【図5】要部拡大分解斜視図(1)
【図6】要部拡大分解斜視図(2)
【図7】要部拡大分解斜視図(3)
【図8】要部斜視図
【符号の説明】
【0032】
W…油面
11…チェーン
12…エプロン
12a…流通孔
15…揚げ枠
21…油槽
21a…スロープ

特許出願人 アサヒ装設株式会社
代理人 弁理士 松 田 忠 秋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に斜め上向きの斜行部分を有する水平循環経路に沿って走行する無端のチェーンと、該チェーンに対して所定の間隔ごとに着脱自在に装着する複数のエプロンとを備えてなり、該エプロンは、前記チェーンの外側に形成する油槽内に垂下し、油中の材料を前記チェーンの走行方向に搬送することを特徴とするフライヤにおける材料搬送装置。
【請求項2】
前記エプロンは、前記斜行部分において、油槽に形成するスロープに沿って材料を油面上に搬出することを特徴とする請求項1記載のフライヤにおける材料搬送装置。
【請求項3】
前記エプロンには、材料を投入する揚げ枠を着脱自在に付設することを特徴とする請求項1または請求項2記載のフライヤにおける材料搬送装置。
【請求項4】
前記エプロンには、油の流通孔を設けることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか記載のフライヤにおける材料搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−34391(P2006−34391A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215198(P2004−215198)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 2004国際食品工業展、社団法人 日本食品機械工業会、平成16年6月8日から6月11日まで
【出願人】(591109094)アサヒ装設株式会社 (7)
【Fターム(参考)】