説明

フライヤー用電場処理装置

【課題】 フライヤー用電場処理装置において、食材の全方向に立体的に電場を形成する。
【解決手段】 油槽2に揺動自在に開閉されるフライヤー側蓋体5を設けたフライヤー本体1と、上記油槽内に絶縁素材からなる支持部材12を介して収容される外部から高電圧が印加される導電性素材からなる揚げ籠10を有し、上記揚げ籠を多数の貫通孔を穿設した筐体状の籠本体11と籠本体に対し揺動自在に開閉される籠側蓋体16により構成し、フライヤー側蓋体と籠側蓋体の揺動方向を一致させると共に、フライヤー側蓋体の裏側と籠側蓋体の表側を可撓性条体18で連結することにより、フライヤー側蓋体の開閉に伴って籠側蓋体が開閉するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フライヤー内に高電圧の電場を形成することにより、油槽内の油や食材を電場処理するフライヤー用電場処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フライヤー内に高電圧の電場を形成することにより、油槽内の油の酸化を抑制できることが広く知られている(例えば、特許文献1、2など)。上記の作用は同時に水分子集団を小さくすることを意味し、中をジューシーに外をからっとさせて食材を揚げることを可能とする作用を生じる。
【0003】
ただし、前記の後者の作用を発揮させるためには揚げ物の対象となる食材のすみずみを電場処理しなくてはならない。すなわち、一方向からの電場処理では足りない。そのために本願出願人は多数の貫通孔を穿設した六面体からなる金属製の揚げ籠をフライヤーの油槽内に設置し、その中に食材を収容して揚げ籠に高電圧が印加することにより食材の全方向に立体的に電場を形成することを提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−113761号公報
【特許文献2】特開2002ー136430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の揚げ籠は六面を覆っているので、食材の出し入れのための蓋体が必要となり、そのために、多数の貫通孔を穿設した筐体状の籠本体と籠本体に対し揺動自在に開閉される籠側蓋体により揚げ籠を構成している。そこで、食材をフライヤーで揚げるに際しては、先ず蓋体を開けてから内部に食材を収容し、その後蓋体を閉める作業と、蓋体を開けてから揚げ上がった食材を取り出す作業を要した。
【0006】
前記の場合、揚げ籠の蓋体の開け閉めは揚げ箸やトングなどで蓋体を摘んで行なう。しかしながら、食材を揚げ箸やトングなどで摘んで油の中に投入する作業と異なり、重量のある蓋体を摘んで引き上げる作業は難しく、誤って摘み損なった場合は勢いよく油槽内に落下した蓋体により高温の油が飛び散って思わぬ火傷を引き起こす危険があった。また、揚げ籠に高電圧が印加されている場合は揚げ箸やトングを介して感電事故を引き起こす危険があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は前記の問題を解消したフライヤー用電場処理装置を提供することを目的としたものであり、油槽に揺動自在に開閉されるフライヤー側蓋体を設けたフライヤー本体と、上記油槽内に絶縁素材からなる支持部材を介して収容される導電性素材からなる揚げ籠を有し、上記揚げ籠には外部から高電圧が印加されるフライヤー用電場処理装置において、上記揚げ籠を多数の貫通孔を穿設した筐体状の籠本体と籠本体に対し揺動自在に開閉される籠側蓋体により構成し、フライヤー側蓋体と籠側蓋体の揺動方向を一致させると共に、フライヤー側蓋体の裏側と籠側蓋体の表側を可撓性条体で連結することにより、フライヤー側蓋体の開閉に伴って籠側蓋体が開閉するようにしたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、前記の発明において、フライヤー側蓋体と籠側蓋体を結ぶ可撓性条体を金属製の鎖により構成すると共に、上記鎖の他端を絶縁素材からなる取り付け部材を介してフライヤー側蓋体に接続したことを特徴とする。
【0009】
また、請求項3記載の発明は、前記の発明において、フライヤー側蓋体と籠側蓋体を結ぶ可撓性条体を金属製の鎖により構成すると共に、上記鎖の他端をフライヤー側蓋体の裏側に設けたポケットに着脱自在とした絶縁素材からなる取り付け部材を介してフライヤー側蓋体に接続したことを特徴とする。
【0010】
また、請求項4記載の発明は、以上の発明において、フライヤー側蓋体の開閉状態を検出する部材を設け、フライヤー側蓋体の被蓋時以外は揚げ籠への通電が停止されるように制御したことを特徴とする。
【0011】
また、請求項5記載の発明は、以上の発明において、揚げ籠および籠側蓋体の外側全面または一部を絶縁素材でコーティングしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上の構成よりなるこの発明によれば、多数の貫通孔を穿設した六面体からなる金属製の揚げ籠をフライヤーの油槽内に設置し、その中に食材を収容して揚げ籠に高電圧を印加することにより食材の全方向に立体的に電場を形成できるので、単に油槽内の油の酸化を抑制できるのみでなく、中をジューシーに外をからっとさせて食材を揚げることが可能となる。
【0013】
前記の揚げ籠においては、食材を出し入れするために蓋体が不可欠となり、その開閉操作を要する。これに関し、この発明においてはフライヤー側蓋体の開閉に伴って可撓性条体で連結された籠側蓋体が開閉する。従って、籠側蓋体に一切触れないでその開閉が自動的に行なわれるので、蓋体が不用意に落下するおそれがなく、感電事故を引き起こしたり、高温の油が飛び散って思わぬ火傷を引き起こしたりする危険がない。
【0014】
また、請求項2記載の発明によれば、フライヤー側蓋体と籠側蓋体を結ぶ可撓性条体を金属製の鎖により構成しても、鎖の他端は絶縁素材からなる取り付け部材を介してフライヤー側蓋体に接続されるので、可撓性条体を通じて電場がフライヤー側蓋体にリークすることが防止される。一方、可撓性条体として高温の油に晒しても問題がない金属製の鎖を採用することが可能となる。
【0015】
また、請求項3記載の発明によれば、鎖の他端をフライヤー側蓋体の裏側に設けたポケットに着脱自在とした絶縁素材からなる取り付け部材を介してフライヤー側蓋体に接続するので、揚げ籠や籠側蓋体をフライヤーから容易に分離することが可能となり、メインテナンスが容易となる。
【0016】
また、請求項4記載の発明によれば、フライヤー側蓋体の被蓋時以外は揚げ籠への通電が停止されるので感電事故が防止される。
【0017】
また、請求項5記載の発明によれば、揚げ籠および籠側蓋体の外側全面または一部を絶縁素材でコーティングすることにより、揚げ籠内での電場の形成がより効率よく行なわれることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明のフライヤー用電場処理装置を実施したフライヤーのフライヤー側蓋体の閉止状態の一部切り欠き側面図。
【図2】同上、フライヤー側蓋体の開放状態の一部切り欠き側面図。
【図3】同上、揚げ籠の正面図。
【図4】同上、揚げ籠の背面図。
【図5】同上、揚げ籠の平面図。
【図6】同上、揚げ籠の底面図。
【図7】同上、揚げ籠の籠側蓋体の底面図。
【図8】同上、揚げ籠の籠側蓋体の側面図。
【図9】図5のA−A線断面図。
【図10】図5のB−B線断面図。
【図11】この発明のフライヤー用電場処理装置を実施したフライヤーのフライヤー側蓋体のポケット箇所の斜視図。
【図12】この発明のフライヤー用電場処理装置を実施したフライヤーのフライヤー側蓋体のポケット箇所の斜視図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明の具体的実施例を添付図面に基づいて説明する。図1および2はこの発明のフライヤー用電場処理装置を実施したフライヤー1を示す図である。このフライヤー1は油槽2内に加熱装置3を内装した構成よりなり、油槽には枢軸部4を揺動中心として上下に揺動するフライヤー側蓋体5が被蓋される。図中符号6はフライヤー側蓋体5の先端に延設される開閉用の持ち手である。
【0020】
図中符号10は前記油槽2に収容される揚げ籠である。この揚げ籠10はステンレスなどの導電性の素材により構成され、筐体状の籠本体11と、この籠本体に対し揺動自在に開閉される籠側蓋体16により構成されるものであり、籠本体および蓋体には多数の貫通孔11A、16Aが穿設される。図中符号15は籠側蓋体16の両端から突設される揺動軸、14はこの揺動軸を回転自在に支持するために籠本体16の上端に切り欠かれる軸受けである。上記揚げ籠10には図示しない電源回路から微弱電流の高電圧が印加される。
【0021】
上記揚げ籠10はフライヤー1に対し絶縁状態を保って、その油槽2内に収容されるものであり、ここでは底部の四隅に設けた絶縁素材(ここではテフロン−登録商標−を採用している)からなる脚状の支持部材12を油槽内の加熱装置3上に載置することにより絶縁状態を保っている。加熱装置3は油槽2内の油を加熱する公知の構造のものであり、例えばステンレス管などの金属パイプの中にニクロム線などの発熱コイルを収容したものが想定できる。図中符号13は油槽2の側壁との絶縁状態を保つために揚げ籠の籠本体11の側壁に突設される絶縁素材(ここではテフロン−登録商標−を採用している)からなる隔離部材である。
【0022】
前記の揚げ籠10はフライヤー側蓋体4と籠側蓋体16の揺動方向を一致させる向きを保って油槽2内に配され、フライヤー側蓋体の裏側と籠側蓋体の表側が可撓性条体18で連結される。その結果、フライヤー側蓋体5を開放方向に引き上げると、可撓性条体18に引っ張られて籠側蓋体16が引き上げられて開放することとなる(図2参照)。また、フライヤー側蓋体5を閉止方向に引き下げると籠側蓋体16も自重により閉止方向に下降するが、可撓性条体18により引っ張られているので、それ単独が勢いよく油槽内に落下することはない。
【0023】
前記の可撓性条体18としてはワイヤーや鎖が想定できるが、高温の油への耐久性を考慮した場合、金属製の鎖が望ましい。この発明においては上記の可撓性条体18の他端をフライヤー側蓋体5に接続するに際し、絶縁素材からなる取り付け部材20を介して接続することにより可撓性条体を通じて電場がフライヤー側蓋体にリークすることを防止している。
【0024】
図11〜12は前記の取り付け部材20の詳細を示す図である。ここでは取り付け部材20をテフロン−登録商標−により構成し、その表面に可撓性条体18との金属製の接続金具19を固着している。なお、籠側蓋体16の表側には可撓性条体18の他端が接続される接続金具17が固着される。
【0025】
ここでは前記取り付け部材20をフライヤー側蓋体5の裏側に設けたポケット7内に着脱自在としている。上記ポケット7は側壁7Bと天板7Aからなるものであり、この側壁と天板からなる空間7C内に、天板に設けた切り欠きから接続金具19が露出した状態でブロック状に構成した取り付け部材20が挿入されることとなる。
【0026】
図中符号21は、フライヤー側蓋体5の開閉状態を検出する部材となるマイクロスイッチである。このマイクロスイッチ21は作動子を上側に向けてフライヤー本体1の正面壁に取り付けられるものであり、フライヤー側蓋体5の被蓋時にそれにより作動子が押し下げられるようにセットすることにより、フライヤー側蓋体の開閉状態を検出する。上記マイクロスイッチ21は揚げ籠10への通電回路に挿入されることにより、フライヤー側蓋体の被蓋時以外は揚げ籠への通電がされないように制御される。
【0027】
なお、揚げ籠および籠側蓋体の外側はテフロン−登録商標−、セラミックスなどの絶縁素材でコーティングしてもよい。このコーティングは六面全面の他、一部の面でもよく、こうすることにより揚げ籠内での電場の形成がより効率よく行なわれることとなる。
【符号の説明】
【0028】
1 フライヤー本体
2 油槽
5 フライヤー側蓋体
10 揚げ籠
11 揚げ籠本体
16 籠側蓋体
18 可撓性条体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油槽に揺動自在に開閉されるフライヤー側蓋体を設けたフライヤー本体と、上記油槽内に絶縁素材からなる支持部材を介して収容される導電性素材からなる揚げ籠を有し、上記揚げ籠には外部から高電圧が印加されるフライヤー用電場処理装置において、上記揚げ籠を多数の貫通孔を穿設した筐体状の籠本体と籠本体に対し揺動自在に開閉される籠側蓋体により構成し、フライヤー側蓋体と籠側蓋体の揺動方向を一致させると共に、フライヤー側蓋体の裏側と籠側蓋体の表側を可撓性条体で連結することにより、フライヤー側蓋体の開閉に伴って籠側蓋体が開閉するようにしたことを特徴とするフライヤー用電場処理装置。
【請求項2】
金属製の鎖により可撓性条体を構成すると共に、上記鎖の他端を絶縁素材からなる取り付け部材を介してフライヤー側蓋体に接続した請求項1記載のフライヤー用電場処理装置。
【請求項3】
鎖の他端の絶縁素材からなる取り付け部材を、フライヤー側蓋体の裏側に設けたポケット内に着脱自在とした請求項1または2記載のフライヤー用電場処理装置。
【請求項4】
フライヤー側蓋体の開閉状態を検出する部材を設け、フライヤー側蓋体の被蓋時以外は揚げ籠への通電が停止されるように制御する請求項1から3のいずれかに記載のフライヤー用電場処理装置。
【請求項5】
揚げ籠および籠側蓋体の外側全面または一部を絶縁素材でコーティングした請求項1から4のいずれかに記載のフライヤー用電場処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−5851(P2013−5851A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139065(P2011−139065)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(510291002)株式会社電子光学 (1)
【Fターム(参考)】