説明

フライングディスク

【課題】飛翔体として遊戯者が投げ合うことのできるフライングディスクであって、熟達者でなくても有る程度の飛距離を出すことができ、水平移動のスピードが落ちた場合にゆっくりと下降してキャッチがしやすいフライングディスクを提供すること。
【解決手段】中央に開口を設けた上壁部および当該上壁部の外周囲に下方に向かう湾曲面若しくは傾斜面を形成した円盤本体と、前記開口の中央部に配置されたプロペラおよび当該プロペラを回転させる駆動装置と、前記プロペラの回転によって生じる下降気流を受けて円盤本体に回転力を付与するように、前記プロペラとは異なる角度で取り付けられた翼状部材を設けたことを特徴とするフライングディスク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛翔体として飛ばすことができるフライングディスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、円盤状の浮遊体として特許文献1記載の飛行体が知られている。当該飛行体は、空気を軸流方向に圧送する回転羽根からなる上部送風装置と、上記の上部送風装置から圧送された空気を遠心方向に圧送する回転羽根からなる下部送風装置を互いに逆方向に回転するよう同軸上に配した構成よりなるものである。そして、上部送風装置側のターボファンにおいては遠心方向から吸気した空気を貫通穴を介して軸流方向に圧送し、下部送風装置側のターボファンにおいては貫通穴を介して吸気した空気を遠心方向に圧送するというものである。
また、特許文献2記載の円盤のように、手に持って遠くに飛ばすフライングディスクが知られている。当該フライングディスクには動力がなく、放出時に与えた回転によって姿勢を保持させつつ、与えられた初速に応じて滞空時間、到達距離が定まるものである。
また、環状弾性線材によって円形の外周を構成するとともに、内部に当該環状弾性線材の回転によって浮力を生じさせる羽根を設けた特許文献3記載の飛行遊戯具が知られている。
また、主動力と本体を互いに反転させて浮力を得る、ダブルローターを用いて水平移動する特許文献4記載の飛翔具が知られている。
【0003】
上記特許文献1記載の飛行体はファンの発生する空気の流れによって上に向かって上昇する浮力を発生するものであるが、機体上部に設けた上部送風装置と機体内に設けた下部送風装置を相対的に逆方向に回転させることで、機体を回転させないようになっている。したがって、当該飛行体は水平方向に投擲して遠方まで到達させるフライングディスクのような飛翔体としては使用することができないものである。
また、上記特許文献2記載の円盤は、動力を持たない一般的なフライングディスクの一種であり、投擲時の方向、初速、回転数、姿勢に応じていろいろな軌跡を描きながら飛行をさせることができるものである。そして、水平飛行させる場合には、到達させる距離に応じてある程度の初速で投擲されるので、フライングディスクをキャッチする場合にも比較的速度が速い状態で受け取らなくてはならないものである。特許文献3記載の飛行遊戯具も同様である。
また、上記特許文献4記載のプロペラ飛翔具は、2つのプロペラによって上方向と水平方向の推進力を発生するように構成したものである。そして、フライングディスクとは異なり対人間で投げ合うものではなく、このようなプロペラ飛翔具を投擲動作を前提とするフライングディスクに搭載した例は見受けられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−137527号公報
【特許文献2】特開昭59−88173号公報
【特許文献3】実用新案登録公報第3083654号公報
【特許文献4】特開2002−172277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、フライングディスクとして安定した姿勢で遠方まで到達させることができる飛翔体を提供することを目的としたものである。すなわち、飛翔体として遊戯者が投げ合って使用することができるフライングディスクであって、熟達者でなくても有る程度の飛距離を出すことができ、水平移動のスピードが落ちた場合にゆっくりと下降して相手がキャッチしやすいフライングディスクを提供することを課題とするものである。さらに、当該課題の実現のために、プロペラの回転に伴う反力を利用した機体の回転によって、浮力の増加と姿勢の安定、さらに駆動力の維持を図ることができる構造を提供することを課題とするものである。
また、投擲の際に遊戯者の手を離れたときに浮力を発生するプロペラが回転し、その状態が空中で維持され、飛翔の終了とともにプロペラの回転を停止する機構を有したフライングディスクを提供することを課題とするものである。その他、プロペラの回転開始もしくは回転停止を、自動もしくは使用者の任意の操作によって行わせる各種手段を提供することを課題とするものである。
なお、本発明は、上記課題の全て若しくは選択された単独または何れかを組み合わせた課題を解決することを目的とした発明である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願発明に係るフライングディスクは以下の構成を有する。
すなわち、遊戯者の手によって投擲されるフライングディスクであって、
中央に開口を設けた上壁部および当該上壁部の外周囲に下方に向かう湾曲面若しくは傾斜面を形成した円盤本体と、前記開口の中央部に配置されたプロペラおよび当該プロペラを回転させる駆動装置と、前記プロペラの回転によって生じる下降気流を受けて、前記プロペラとは反対回りの方向の回転力を円盤本体に付与する翼状部材を設けたことを特徴とする。
当該フライングディスクは、プロペラの回転によって浮力を有するので、同じ初速で放出された従来のフライングディスクよりも滞空時間が長くなり、水平方向の速度を失って受け取る側に到達する際にゆっくりと降下するような飛行を行うものである。また、翼状部材は、プロペラが発生する気流によって円盤本体に回転力を与えるので、投擲時に使用者によって付与された円盤本体の回転が維持される作用を有している。そして、円盤本体が回転することによるジャイロ的な作用によって、飛行中の姿勢が安定するとともに飛行距離の延長にも効果を有するものとなっている。
【0007】
また、遊戯者の手によって投擲されるフライングディスクであって、
中央に開口を設けた上壁部および当該上壁部の外周囲に下方に向かう湾曲面若しくは傾斜面を形成した円盤本体と、前記開口の中央部に配置されたプロペラおよび当該プロペラを回転させる駆動装置と、前記プロペラの回転によって生じる下降気流を受けて円盤本体に回転力を付与するように、前記プロペラとは異なる角度で取り付けられた翼状部材を設けたことを特徴とする。
当該フライングディスクは、上記当該フライングディスクと同様に、プロペラによって生じた気流を受けた翼状部材が円盤本体に回転力を与えるので、投擲時に使用者によって付与された円盤本体の回転を維持する作用を有している。そして、円盤本体の回転によるジャイロ的な作用によって飛行中の姿勢を維持するとともに飛行距離の延長にも寄与するものとなっている。そして、円盤本体の滞空時間を長く保ち、水平方向の速度を失った場合にゆっくりと降下させる作用を有するものである。
【0008】
また、遊戯者の手によって投擲されるフライングディスクであって、
中央に開口を設けた上壁部および当該上壁部の外周囲に下方に向かう湾曲面若しくは傾斜面を形成した円盤本体と、前記開口の中央部に配置されたプロペラおよび当該プロペラを回転させる駆動装置と、前記プロペラの回転によって生じる下降気流を受けて円盤本体に回転力を付与するように、前記プロペラとは異なる角度で取り付けられた翼状部材を設け、前記駆動装置を前記開口の中央付近に架設されたアームによって支持するとともに、当該アームに前記翼状部材を設けたことを特徴とする。
当該フライングディスクは、上記当該フライングディスクと同様の作用および効果を有するものであり、駆動装置を支持するためのアームに翼状部材を設けることによって構造の簡素化と軽量化を行うことができるようになっている。
【0009】
また、遊戯者の手によって投擲されるフライングディスクであって、
中央に開口を設けた上壁部および当該上壁部の外周囲に下方に向かう湾曲面若しくは傾斜面を形成した円盤本体と、前記開口の中央部に配置されたプロペラおよび当該プロペラを回転させる駆動装置と、前記プロペラの回転によって生じる下降気流を受けて円盤本体に回転力を付与するように、前記プロペラとは異なる角度で取り付けられた翼状部材を設け、前記駆動装置を前記開口の中央付近に架設されたアームによって支持するとともに、前記翼状部材を当該アームの形状によって形成したことを特徴とする。
当該フライングディスクは、上記当該フライングディスクと同様の作用および効果を有するものであり、駆動装置を支持するためのアームを翼として機能する形状に形成することによって構造が簡素化しフライングディスクの軽量化に寄与するものとなっている。
【0010】
また、遊戯者の手によって投擲されるフライングディスクであって、
中央に開口を設けた上壁部および当該上壁部の外周囲に下方に向かう湾曲面若しくは傾斜面を形成した円盤本体と、前記開口の中央部に配置されたプロペラおよび当該プロペラを回転させる駆動装置を、前記開口の中央付近に架設されたアームに支持するとともに、前記プロペラの回転によって生じる下降気流を受けて円盤本体に回転力を付与する翼状部材を前記アームに設け、前記円盤本体の上面に、前記プロペラの外周もしくは上方を覆う保護部材を設けたことを特徴とする。
当該フライングディスクは、上記当該フライングディスクと同様の作用および効果を有するものであり、保護部材を設けることによってプロペラが使用者に接触するのを防止するものとなっている。また、プロペラが使用者に接触するのを防止する保護部材を通気性のある素材によって形成した場合には、飛翔時の空気抵抗を低減することができるものである。
【0011】
また、遊戯者の手によって投擲されるフライングディスクであって、
中央に開口を設けた上壁部および当該上壁部の外周囲に下方に向かう湾曲面若しくは傾斜面を形成した円盤本体と、前記開口の中央部に配置されたプロペラおよび当該プロペラを回転させる駆動装置を有し、前記プロペラの回転方向とは異なる方向に生じる反力を、前記円盤本体に伝達されるように構成したことを特徴とする。
当該フライングディスクは、上記当該フライングディスクと同様の作用および効果を有するものであり、プロペラが回転する反力を円盤本体の回転を補助する動力として使用できるようになっている。そして、翼状部材を設けた場合には、当該プロペラの反力に加えてさらに円盤本体の回転を持続的なものとすることができるものである。
【0012】
また、遊戯者の手によって投擲されるフライングディスクであって、前記駆動装置に接続されたプロペラを回転させるスイッチもしくはセンサを有したことを特徴とする。また、当該スイッチもしくはセンサを、飛行開始を検知して自動的に前記プロペラを回転させるように構成したことを特徴とする。
フライングディスクは軽量であることが望ましいため、大容量のバッテリーを搭載することができない。このため、飛行中以外に発生する電力の消費を抑制するために、プロペラの駆動を制御するスイッチやセンサが必要となっている。また、飛行開始や飛行終了を検知することができるセンサを用いてプロペラの駆動開始、駆動停止を自動制御する場合には、さらに電力の無駄な消費を防止することができるようになっている。
【0013】
また、遊戯者の手によって投擲されるフライングディスクであって、
前記円盤本体の回転に伴って通電し、前記駆動装置に接続されたプロペラを回転させるように構成した遠心力スイッチを有し、飛翔に伴う円盤本体の回転によってプロペラを回転させ、飛翔終了に伴う円盤本体の回転数の低下若しくは停止によって前記プロペラの回転を停止させるように構成したことを特徴とする。
本発明は、飛行開始や飛行終了を検知することができるセンサの一手段として遠心力を感知して回路を閉じるスイッチを設けたものである。当該遠心力スイッチを用いてプロペラの駆動開始、駆動停止を制御することによって、電力の無駄な消費を防止することができるようになっている。
当該フライングディスクは、プロペラの回転によって浮力を有するので、同じ初速で放出された従来のフライングディスクよりも滞空時間が長くなり、受け取る側に到達する際にゆっくりと降下するような飛行を行うものである。また、プロペラの回転開始および停止を飛行と連動させることができるので、スイッチ操作の煩わしさが無く、消費電力を軽減してバッテリーの消費を押さえることができるようになっている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るフライングディスクはプロペラを有しており、当該プロペラの回転によって浮力を発生しつつ略水平方向に飛翔するものである。投擲時の初速が同じ場合、飛行距離は滞空時間に比例して長くなる。本発明に係るフライングディスクはプロペラを有しているので、滞空時間が長くなり、プロペラを有していないフライングディスクと比較して、遠方まで飛行することができるものである。
また、プロペラのスイッチングを、飛翔に伴う円盤本体の回転と同期させているので、飛行中は遠心力によってスイッチの通電状態を維持することでプロペラの回転を維持させることができ、さらに手動でスイッチを入れたり切ったりといった煩雑な操作を無用なものとしている。
また、本発明に係るフライングディスクは、飛行終了間際まで有る程度の高さで飛行を行い、水平移動の速度低下に伴ってゆっくり下降するような飛び方をする。したがって、飛行してきたフライングディスクのキャッチが容易であるという効果を有している。
さらに、円盤本体の回転は、空中での飛行姿勢維持のために不可欠であるが、プロペラの回転に伴う反力と空気の流れを受けた翼状部材によって円盤本体が回転を持続するようになっている。このため本願発明に係るフライングディスクは、ほぼ失速して降下するまで円盤本体が回転を続けるので、最後まで姿勢を保ったままの状態で飛行を終了することができるという効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】フライングディスクの平面(上面)図である。
【図2】フライングディスクの側面(一部図1のX−X’断面)である。
【図3】フライングディスクの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明を実施するための形態を図を用いて説明する。
各図において、1は本発明に係るフライングディスクを示している。フライングディスク1は、外形20〜30cm程度の皿を伏せたような形状の円盤本体2と当該円盤本体2の上面から突出した位置で回転するプロペラ3によって構成されている。
円盤本体2は、最適な形態として直径23cm、高さが略3cmの剛性を有する薄肉の構造体として形成されたものである。本実施の形態における円盤本体2は、合成樹脂によって格子状に形成した薄肉のフレーム4と、当該フレーム4を覆う樹脂フィルム5によって形成されている。なお、円盤本体2は当該構造に限らず、他の構造を採用しても差し支えないものである。
【0017】
円盤本体2は、中央に円形の開口6を形成した皿を伏せたような外形形状を成しており、略平坦に形成した上壁部の外周囲に、当該円盤本体2の高さを大凡の半径とするような曲率で下方に湾曲した形状の側壁7を設けた形状を有している。なお、側壁7の形状は、湾曲面に限らず直線的な要素を含む傾斜面として形成する等、飛行効率等を考慮して適宜の形状を採用するものである。
上記構造の円盤本体2は、回転させながら水平方向に放出した場合に、外周部位の形状および開口6を除く上壁部によって浮力を保持しつつ、慣性飛行するようになっている。
【0018】
円盤本体2は、一例として形状を維持するためのフレーム4と、当該フレーム4を覆う樹脂フィルム5によって形成されている。フレーム4は円盤形状を維持することができる薄肉、細幅の格子状に形成されており、全体を樹脂フィルム5で覆うことによって格子間に形成される窓のような開口を塞ぐようになっている。樹脂フィルム5は、一例として熱収縮フィルムが用いられ、フレーム4全体を覆った後に加熱して収縮させ、フレーム4に密着させるようになっている。なお、フレーム4および樹脂フィルム5によって構成した
部分を、一つの一体的な部材として形成しても差し支えがないものである。
円盤本体2を上記のように形成したのは、円盤としての形状を維持しつつ軽量に形成するためである。なお、上記フレーム4は、開口を有する格子状に形成したが、開口に相当する領域を閉じた薄膜に形成し、フィルムを張ったものと同様の作用を有するように構成しても差し支えがないものである。
【0019】
開口6の中央には、前記プロペラ3の取付板8が設けられている。取付板8は、前記フレーム4と一体を成す部位であって、上壁面中央部から外周側に向かって伸びたスポーク状のアーム11によって支えられた円形の部位である。
取付板8の裏面には、前記プロペラ3を回転させる駆動部9が設けられている。駆動部9は、内部に電池、モーター、モーター軸に連結されたギア群およびこれらを収容したケースによって構成されている。当該駆動部9は、後述する遠心力スイッチ12が閉じるとモーターが回転し、ギア群を介して取付板8の上方に突出した駆動軸10を回転させるようになっている。駆動軸10には前記プロペラ3が取り付けられており、駆動軸10の回転によってプロペラ3が回転するようになっている。
上記のようにプロペラ3は円盤本体2の中央に形成した開口6の中央部に配置されているものであるが、プロペラ3が配置された開口6の中央部とは開口6の中心点に限定された狭い範囲をいうものではない。すなわち、円盤本体2の中心軸上におけるある程度の範囲をもった領域をいうのであって、開口6を介して上方から下方へ気流を通過させる作用を発揮するプロペラの配置を開口6の中央部というのである。
したがって、プロペラが配置される前記開口6の中央部とは、上述した駆動軸10を突出させた取付板8の上方のみならず、本発明に係るフライングディスクの特徴を発揮して飛行するように形成されている限り、前記取付板8と略同一の円盤本体2の上壁面と同じ高さにプロペラを配置する場合や、円盤本体2の上壁面よりも低い位置にプロペラを配置する場合も含むものである。なお、プロペラ3は、図示したように円盤本体2の上壁面よりもやや高い位置に設けることが望ましく、浮力を発生するプロペラ3によって円盤本体2を吊り下げるような配置にすることで飛行姿勢を安定させやすくなっている。
【0020】
本実施の形態では、前記取付板8を支持しているスポーク状のアーム11(11a、11b、11c、11d)が4本設けられている。4本のうちの一つのアーム11aの裏面には、遠心力スイッチ12が取り付けられている。
遠心力スイッチ12は、一定の方向に遠心力等が生じた場合に回路を閉じるように構成されたスイッチである。本実施の形態で使用する遠心力スイッチ12は、内部に収容された鉄球が遠心力によって内部の接点を押圧して通電させるようになっているものであり、遠心力の消失とともに通電を解除するように構成されたものである。
【0021】
上記遠心力スイッチ12は、中心から外周に亘って設けられたアーム11aに沿って設けられており、円盤本体2の回転に伴う遠心力によって通電するようになっている。遠心力スイッチ12は、前記駆動部9に内蔵したモーターと電池を結ぶ回路を閉じ、モーターを回転させプロペラ3を回転させるようになっている。すなわち、円盤本体2の回転に伴ってプロペラを回転させるようになっている。当該プロペラ3は、上から見た平面視において反時計方向に回転するようになっている。
なお、アーム11aの対角位置にあるアーム11cには、遠心力スイッチ12との重量バランスをとるための錘15が取り付けられている。
【0022】
また、上下に連通した開口6に面した各アーム11a、11b、11c、11dには、それぞれ傾斜面を形成した翼(翼状部材)13(13a、13b、13c、13d)が設けられている。各翼13は、前記プロペラ3によって生じた下降気流を受けて、円盤本体2を反プロペラ方向に回転させる力を生じるようになっている。翼13は移動(回転)方向に向かって傾斜した傾斜板として形成されている。
なお、翼状部材には、前記アーム11を細幅の板状に形成して角度を付与する(捩じる)等の方法で、前記翼13と同様にプロペラの気流を受けて円盤本体2に回転力を付与するような構成も含むものである。したがって、羽の形状や取り付け場所等については図示した構造に限らないものである。
【0023】
投擲に伴う円盤本体2の回転は、円盤本体2が保持する慣性力によって維持されるが、フレーム4の露出した部位や表面を覆う樹脂フィルム5の空気抵抗によって次第に減衰する。
円盤本体2の回転は、飛翔時に機体の姿勢を安定させるというジャイロ的な効果がある。このため、円盤本体2を回転させることは、投擲型のフライングディスクには重要な要素となっている。
プロペラ3による下降気流を受けた翼13は、プロペラ3と反対の方向に円盤本体2を回転させる回転力を発生する。翼13は、空気抵抗によって減衰する円盤本体2の回転力を補って回転を持続させるように作用するものである。円盤本体2の回転は、飛行の安定性および浮力の維持と進行方向に対する空気抵抗を低減させる作用を有するものである。本実施の形態に係るフライングディスクは、プロペラの反力を円盤本体2の回転に利用することで安定的な飛行姿勢と飛行距離の確保を行うことができるようになっているものである。
また、プロペラ3は円盤本体2に取り付けられているので、プロペラ3が回転するとその反力が円盤本体2に作用し、円盤本体2を回転させようとする。前記特許文献1は、この反力による機体の回転を防止する手段を有するものであるが、本実施の形態に係るフライングディスク1は当該反力を打ち消さず円盤本体2に伝達させる構造を有している。本実施の形態に係るフライングディスクは、プロペラの回転に伴う反力も、円盤本体2の回転に利用することで、前記飛行の安定性等に効果を有するものとなっている。
【0024】
一方、プロペラ3の回転は水平方向に対する推進力を発生するものでは無いが、円盤本体2を上昇させようとする浮力を有する。本実施の形態に用いるプロペラ3および駆動部9は、静止した円盤本体2を持ち上げて上昇させる程の浮力は無いものの、落下しようとする円盤本体2を静かに降下させる程度の力を有するように調整されている。
【0025】
なお、本実施の形態に係るフライングディスク1には、円盤本体2の上面にプロペラ3の外周を覆うように筒状の保護部14が設けられている。当該保護部14は、側面から見ると円盤本体2の上面に突出した台形状の隆起のように見える部位であり、速度の速いプロペラ3の先端部が使用者に接触しないように設けたものである。また、この場合プロペラ3によって生じる気流を上から下に向かって流れるように誘導する作用を有している。保護部14は、軽量に形成されている。
また、上記保護部を網状の部材によって形成しても差し支えがないものである。網状の部材によって保護部を形成する場合には、上記保護部14のように筒状に形成する場合の他、上部のみあるいは上部を含む全周囲を覆うようにしても差し支えがないものである。当該網状部材を使用した場合には、飛行時の空気抵抗を低減しつつ人体に対するプロペラの接触を防止することができるようになっている。
【0026】
また、本実施の形態に係るフライングディスク1は、一例としてプロペラ3の起動手段として前述した遠心力スイッチ12を用いることで、飛行開始に伴ってプロペラ3の回転を開始し、飛行終了によってプロペラ3の回転を停止するようになっている。しかしながら、プロペラ3のスイッチングは当該例に限らないものである。
例えば、フライングディスク1の投擲開始に伴って円盤本体に生じる振動、音、歪、加速度等の物理量もしくは変化をセンサによって検出し、当該検出された信号に基づいて回路を駆動して、プロペラ3を回転させてもよいものである。また、これらの制御には、一定時間の経過にともなって強制的にプロペラ3を停止させるタイマー手段を併設し、センサによって飛行終了を判定できなった場合にプロペラ3を停止させることもできる。
また、タイマーによってプロペラ3を停止させる場合には、物理量の検出センサによることなく、前記遠心力スイッチ12を含め機械式のスイッチによってプロペラ3の回転を開始させるようにしてもよいものである。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、フライングディスクといわれる飛翔体に利用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 フライングディスク
2 円盤本体
3 プロペラ
4 フレーム
5 樹脂フィルム
6 開口
7 側壁
8 取付板
9 駆動部9
10 駆動軸
11(11a、11b、11c、11d) アーム
12 遠心力スイッチ
13(13a、13b、13c、13d) 翼
14 保護部
15 錘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に開口を設けた上壁部および当該上壁部の外周囲に下方に向かう湾曲面若しくは傾斜面を形成した円盤本体と、
前記開口の中央部に配置されたプロペラおよび当該プロペラを回転させる駆動装置と、
前記プロペラの回転によって生じる下降気流を受けて、前記プロペラとは反対回りの方向の回転力を円盤本体に付与する翼状部材を設けたことを特徴とするフライングディスク。
【請求項2】
中央に開口を設けた上壁部および当該上壁部の外周囲に下方に向かう湾曲面若しくは傾斜面を形成した円盤本体と、
前記開口の中央部に配置されたプロペラおよび当該プロペラを回転させる駆動装置と、
前記プロペラの回転によって生じる下降気流を受けて円盤本体に回転力を付与するように、前記プロペラとは異なる角度で取り付けられた翼状部材を設けたことを特徴とするフライングディスク。
【請求項3】
中央に開口を設けた上壁部および当該上壁部の外周囲に下方に向かう湾曲面若しくは傾斜面を形成した円盤本体と、
前記開口の中央部に配置されたプロペラおよび当該プロペラを回転させる駆動装置と、
前記プロペラの回転によって生じる下降気流を受けて円盤本体に回転力を付与するように、前記プロペラとは異なる角度で取り付けられた翼状部材を設け、
前記駆動装置を前記開口の中央付近に架設されたアームによって支持するとともに、当該アームに前記翼状部材を設けたことを特徴とするフライングディスク。
【請求項4】
中央に開口を設けた上壁部および当該上壁部の外周囲に下方に向かう湾曲面若しくは傾斜面を形成した円盤本体と、
前記開口の中央部に配置されたプロペラおよび当該プロペラを回転させる駆動装置と、
前記プロペラの回転によって生じる下降気流を受けて円盤本体に回転力を付与するように、前記プロペラとは異なる角度で取り付けられた翼状部材を設け、
前記駆動装置を前記開口の中央付近に架設されたアームによって支持するとともに、前記翼状部材を当該アームの形状によって形成したことを特徴とするフライングディスク。
【請求項5】
中央に開口を設けた上壁部および当該上壁部の外周囲に下方に向かう湾曲面若しくは傾斜面を形成した円盤本体と、
前記開口の中央部に配置されたプロペラおよび当該プロペラを回転させる駆動装置を、前記開口の中央付近に架設されたアームに支持するとともに、
前記プロペラの回転によって生じる下降気流を受けて円盤本体に回転力を付与する翼状部材を前記アームに設け、
前記円盤本体の上面に、前記プロペラの外周もしくは上方を覆う保護部材を設けたことを特徴とするフライングディスク。
【請求項6】
中央に開口を設けた上壁部および当該上壁部の外周囲に下方に向かう湾曲面若しくは傾斜面を形成した円盤本体と、
前記開口の中央部に配置されたプロペラおよび当該プロペラを回転させる駆動装置を有し、
前記プロペラの回転方向とは異なる方向に生じる反力を、前記円盤本体に伝達されるように構成したことを特徴とするフライングディスク。
【請求項7】
前記駆動装置に接続されたプロペラを回転させるスイッチもしくはセンサを有したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項記載のフライングディスク。
【請求項8】
前記駆動装置に接続されたプロペラを回転させるスイッチもしくはセンサを設け、
当該スイッチもしくはセンサによって飛行開始を検知して自動的に前記プロペラを回転させるように構成したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項記載のフライングディスク。
【請求項9】
前記円盤本体の回転に伴って通電し、前記駆動装置に接続されたプロペラを回転させるように構成した遠心力スイッチを有し、
飛翔に伴う円盤本体の回転によってプロペラを回転させ、飛翔終了に伴う円盤本体の回転数の低下若しくは停止によって前記プロペラの回転を停止させるように構成したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項記載のフライングディスク。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−6010(P2013−6010A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232018(P2011−232018)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(592184418)株式会社エムエスシ− (4)
【出願人】(593152454)有限会社ジェノイド・プロトデザイン (8)
【Fターム(参考)】