説明

フラクタルループを含む放射構造を有する漏洩波アンテナ

アンテナが、GPS、GLONASS、GALILEO及びOmniSTAR(商標)を含む種々の衛星測距システムからのRF信号を受信するために提供される。アンテナ構成は、フラクタルループで終端されたマルチアームスパイラルスロットの放射構造を有する。漏洩波マイクロストリップスパイラル給電ネットワークが、アンテナの放射構造を励起するために使用される。アパーチャ結合スロットの固定ビームフエーズドアレーは、右回り偏光信号を受信するように最適化される。提案されたアンテナは、単一のPCBボードから作成される。アンテナは、1.15〜1.65GHzにわたってアジマス面において極めて均一の位相及び振幅パターンを有し、それゆえ、GPS、GLONASS、GALILEO及びOmniSTAR(商標)の周波数において一貫した性能を提供する。アンテナはまた、1175MHz〜1610MHzの種々の周波数において共通の位相中心を有し、ほぼ同じ放射パターン及び軸比特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面型スパイラルスロットアンテナに関し、より詳しくは、広帯域の平面型スパイラルスロットアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナの設計要件は、アンテナの特定の用途によって異なる。最近は、種々の衛星測距システムからのRF信号を受信する能力を有するアンテナに対する需要がある。たとえば、衛星測距システムには、米国の全地球測位システム(グローバル・ポジショニング・システム:GPS)、ロシア連邦のGLONASSシステム、欧州のGALILEOシステム、衛星を経由してGPS拡張データを提供するOmniSTAR(商標)システムなどの商用サービスがある。
【0003】
種々の衛星測距システムは、1175MHz〜1610MHzにわたる異なる周波数帯域の信号を使用する。したがって、種々の測距システムからの信号を受信するように設計されたアンテナ、特に、全ての測距システムで使用するために設計されたアンテナには、広帯域が要求される。
【特許文献1】米国特許第6,452,560号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
広帯域アンテナとしていくつか既知のものがあるが、それらのアンテナは、個別の平面型アンテナを多層構造にしたものや複雑なパッチアンテナ構造からなる三次元アーキテクチャを有する。どちらの場合も、三次元構造の特性のために、形状因子が小さいことを重要な特徴または望ましい特徴とする航空機やその他の用途には適さない目立つアンテナ(厚手のアンテナ)になってしまう。
【0005】
ロープロファイル(薄型)の物理的構造に加えて、マルチモード測距用途(すなわち、GPS、GLONASS、GALILEO、OmniSTAR(商標)-L5)アンテナが、種々の周波数(たとえば、1175MHz〜1610MHzまでの周波数)における入力信号に対して共通の位相中心を有することが非常に望ましい。このことは重要である。なぜなら、種々の測距システムからの位置測定値は、アンテナの位相中心に関連して計算されるからである。アンテナの幾何学的位相中心とそのアンテナの電気的位相中心がずれたときに、位相中心の変化を補正するための処理として既知のものがいくつかあるが、そのようなずれは、高精度のマルチモード測距用途の場合には最小でなければならない。たとえば、多くの用途では、測地測量はミリメートルレベルの精度でなければならない。しかしながら、典型的には、上述した広帯域の三次元アンテナ構造によれば、共通の位相中心に提供される誤差は、許容可能な範囲内のものですらない。
【0006】
2002年9月17日にKunyszに対して発行された、「SLOT ARRAY ANTENNA WITH REDUCED EDGE DIFFRACTION」と題する共同所有に係る米国特許第6,452,560(当該特許の内容をこの参照によって本明細書に組み込むものとする)には、幾何学的位相中心と電気的位相中心が位置合わせされたロープロファイルのスロットアレイアンテナが記載されている。アンテナの前面の導電層は溝付き開口部のアレイを有する。電磁信号が伝送ラインの一方の端部に送られて、溝付き開口部に連続的に結合すると、対応する信号が、アンテナから、実質的にアンテナ軸の方向に放射される。アンテナの前面は、また、溝付きのアレイを囲む表面波抑制領域と、周辺エッジにおける放射信号の回折を低減するための、表面波抑制領域とアンテナの周辺エッジとの間に配置された複数の貫通孔とを有する。このアンテナは、その溝付き開口部が、L1とL2の周波数帯の両方を受信するように調整される場合に特に、米国のGPSに有用である。しかしながら、このアンテナは、前述した他のシステムからの衛視測距信号を含むより広帯域の信号を受信するようには設計されていなかった。
【0007】
アンテナ設計では、マルチパス除去(multipath rejection)を依然として維持しつつ、低仰角信号(または低エレベーション信号)において改善された利得を提供することも重要である。信号の変動を低減することもまた、1520〜1560MHzの範囲のLバンド(L-band)信号の場合に、低仰角のアジマス面において重要である。
【0008】
したがって、本発明の1つの目的は、広帯域であり、かつ、対象とする周波数帯にわたって共通の位相中心を有するアンテナを提供することである。さらに、本発明の1つの目的は、アジマス面における信号の変動を低減し、かつ、低仰角における低利得、及び、改善された偏光純度(polarization purity)を提供することである。
【0009】
本発明のその他の目的は、以下の詳細な説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従来技術の問題点は、GPS、GLONASS、GALILEO、及び、OmniSTAR(商標)などの関連する商用拡張プロバイダーを含む複数の衛星測距システムからのRF信号を受信する広帯域アンテナを提供する本発明によって克服される。本発明のアンテナは、相互接続されたスロット(溝)のマルチアーム(多腕)放射構造を含む平面型スロットアレイアンテナであり、各スロットは、スパイラル(螺旋)及びフレアで開始してフラクタルロープ構成をなすようになる。漏洩波マイクロストリップマルチプルターンスパイラル給電ネットワーク(leaky wave microstrip multiple turn spiral feed network)が、アンテナの放射構造を励起(起動)するために使用される。
【0011】
より具体的には、アンテナは、金属被膜された上部表面を有する、非導電性のほぼ平坦なプリント回路基板(PCB)から構成される。放射構造は、基板の金属被膜された上部表面にエッチングされる。前述したように、放射構造は、相互接続されたスロットのネットワーク(たとえば網目状に配列したもの)であり、それらのスロットは、それぞれの端部において螺旋状スロット及びフレア(張り出し)で始まってフラクタルループ構成をなすような形状とされている。各スロットの端部におけるフラクタルループ構成は、隣接するスロットのフラクタルループ構成に結合される。相互接続されたアパーチャ(開口)の放射構造によって、帯域を拡げて広帯域性能とするための多くのRF経路が生成される。
【0012】
スロットアーム(スロットの腕)のフレア(張り出し)によって、アームの端部におけるインピーダンスが増加する。アームの端部におけるインピーダンスを増加させることによって、存在したかもしれない以前のインピーダンス不連続の大きさが低減され、これによって、アンテナ全体における電流分布がよりなめらかになる。この連続的に変化するスロット幅と、隣接するスロットアーム同士の相互接続によって、さらに、アンテナのアジマス面における振幅及び位相パターンがなめらかになる。放射構造によって、対象とする周波数帯について共通の位相中心がもたらされる。
【0013】
マイクロストリップマルチプルターン(複数回転)スパイラル伝送ラインは、基板の下部表面に配置される。伝送ラインの螺旋形状によって、アンテナの帯域性能が改善され、また、スパイラル給電マイクロストリップが各スロットと2回交差し、したがって、各スロットからのエネルギーを2回収集することができるという点でアンテナの効率が改善される。本発明の一側面によれば、スパイラル給電マイクロストリップは2回転の螺旋である。マイクロストリップ給電伝送ラインの螺旋形状は、円形給電構造に比べて帯域幅が広い。
【0014】
浅い金属製のグランド面は、基板の下部表面に隣接して配置されるが、これによって、比較的ロープロファイル(薄型)の構造が可能となる。RF吸収用に、アンテナ基板とグランド面の間に第2のPCBボードを配置することができる。
【0015】
本発明のアンテナは、また、表面波の回折を引き起こすアンテナの周辺エッジに沿った、金属被膜された開口部のアレイを有する表面波抑制領域を備えることができる。
【0016】
以下、添付の図面を参照して本発明を説明する。
【実施例】
【0017】
図1は、PCB材料からなる基板4を説明する、本発明のアンテナ2の略図である。基板4の上部表面6は金属被膜されているかまたはメッキされている。放射スロット構造10は、標準的なPCB技術を用いて、金属被膜された上部表面6にエッチングされる。本発明によれば、放射スロット構造10は、自己相補的構造をなすN個の螺旋状のスロットアームを具備する、多腕(マルチアーム)アパーチャ結合ネットワークであり、各スロットアームは、フラクタルスロット幾何学形状で終端している。これによって、右回り偏光信号を受信するために最適化されたアパーチャ結合スロットの固定ビームフエーズドアレイ(fixed beam phased array)が生成される。
【0018】
より具体的には、放射スロット構造10は、複数の螺旋状スロットアーム12〜38を有する。図1の例示的な実施形態では、14の螺旋状スロットアームがある。しかしながら、本発明の他の用途では、後述するように、放射スロット構造は、異なる数の螺旋状スロットアームを含むことができ、または、異なる構成及び/または大きさを有するアパーチャ(開口)を含むことができ、これらも、本発明の範囲内にある。
【0019】
螺旋状スロットアーム12〜38は、アンテナの位相中心50のまわりに配列される。放射スロット構造はN個の螺旋状スロットアームからなり、2つの連続するそれぞれの螺旋状スロットアーム、たとえば、アーム12と14の間の場所的な相違(隔置距離)は、好ましくは2π/N(Nは、螺旋状スロットアームの数)である。
【0020】
個々のスロットアームの大きさと隣接するアーム間の相互接続は、アンテナによって受信されることになる所望のRF周波数帯により、本発明にしたがって決定される。本明細書で使用する「対象とする周波数帯」という用語は、アンテナによって受信されることになる種々の衛星測距システムによって使用される1つ以上の周波数帯を意味する。これらの周波数帯には、GPS、GLONASS、GALILEO、及び、OmniSTAR(商標)などの関連する商用拡張プロタイダーのうちの1つ以上が含まれる。そのような全てのシステムからの周波数帯を対象とする場合には、全体の帯域は、1175MHzから1610MHzの範囲におよぶ。さらに、かかる範囲外の他の周波数も使用される場合があるが、それらの周波数も、本発明にしたがって構成された適切な大きさのアンテナを用いて受信することが可能である。
【0021】
本発明を十分に説明するために、放射スロット構造10の大きさがいくつか例示された本発明の特定の実施形態を提示する。しかしながら、以下の説明は解説のためのものであって、本発明を限定するものではない。
【0022】
図1の例示的な実施形態において、放射スロット構造10は、フラクタルループ構成に終端された14の螺旋状アームを有する。図1の例示的な実施形態では、アンテナ2は、種々の衛星測距システムの全ての周波数を受信することが意図されている。これらの周波数は、1175MHzから1610MHzの範囲におよぶ。
【0023】
より具体的には、この実施形態及び用途では、放射スロット構造の大きさは、図1のスロット12に関連して(またはスロット12を基準として)与えられ、最初の測定値はスロットの開始部から取得され、そのポイントは、「開始」とラベル表示された矢印によって図1に示されている。螺旋状スロットアーム12は、フレア状の螺旋(張り出した螺旋部)で開始して、その遠方側の端部でフラクタルループ構成60を有する。フラクタルループ60が開始するポイントは、そのスロットが隣接する内側のスロット38と相互接続するポイントと同じであり、参照番号61で示されている。本発明によれば、スロットの開始(「開始」)から参照番号61までの距離は、対象とするOmniSTAR(商標)の周波数帯の半波長(λ/2)である(これはLバンド内にある)。「開始」ポイントからフラクタルループ60が開始するポイント(このポイントは、スロット12が隣接する外側のスロット14と相互接続するポイントと同じである)までの螺旋状スロットアーム12の外側エッジに沿った距離が参照番号62によって示されている。参照番号62までのこの距離は、この用途において対象とされる最も低い周波数帯(この例ではL5、E5)の1/4波長(λ/4)である。
【0024】
「開始」ポイントから、スロット12が2つのアームに分岐し、隣接するフラクタルループを分離するポイントまでの螺旋状スロット12に沿った距離は、参照番号63によって示されており、その距離は、対象とする最も高い周波数帯(この例ではGlonass L1または「G1」)の半波長(λ/2)である。「開始」ポイントから、分岐した左アームが終了するポイント(本明細書では「ブーツ」と呼ぶ)までの螺旋状スロット12に沿った距離は参照番号64によって示されており、それは、対象とする最も低い周波数帯(この例では、L5、E5)の半波長(λ/2)である。
【0025】
「開始」ポイントから、分岐した右アームがフラクタルループ60で終了するポイントまでの螺旋状スロット12に沿った距離は参照番号65によって示されており、この距離65は、対象とする2番目に低い周波数帯(L2)の半波長(λ/2)である。フラクタルループ60の周囲長は、参照番号66に関連付けられた矢印によって概略的に示されている。この例では、周囲長66は、対象とする全ての周波数帯の中間周波数(例示的な実施形態では約1.395GHz)の半波長(λ/2)である。この例では、最低周波数は1.175GHz(L5、E5)であり、最高周波数はG1(1.61GHz)であることに留意されたい。
【0026】
本発明によれば、螺旋状スロットアームは、また、連続的に変化する幅を有する。例示的な実施形態では、螺旋状スロット12の幅は、「開始」ポイントにおいて0.3mmで始まり、分岐点(63)における約2mmまで連続的に広がる。
【0027】
前述したように、相互接続されたアパーチャ及びフラクタルループ形状を具備する本発明独特の放射スロット構造10は、入力信号に対して、複数の変化するRF経路を提供することにより、アンテナ2全体の放射帯域幅を広げる。適切な環境の下では、より高次のフラクタルループを放射構造設計において使用することができる。
【0028】
図2は、本発明のアンテナ2の断面図であり、図1と同様の要素には同じ参照番号を付している。アンテナ2は、誘電性PCB材料または他の非導電性PCB材料からなる基板4から構成される。上述したように、金属被膜された導電層206が基板4の上部表面6に配置される。上部表面6は、周辺エッジ(周辺端部)208によって境界が画されている。この断面図からわかるように、溝(スロット)が付けられた開口部(溝付き開口部)12〜18の各々(これらのスロットは図1を参照して詳細に説明したものである。説明をわかりやすくするためにこれら以外のスロットは図示していない)は、上部表面6から基板4の上面210まで延在する。基板4は、下部表面212を有しており、この下部表面に、参照番号220で全体的に示された給電ネットワークが配置される。
【0029】
次に図3Aを参照して、アンテナの給電ネットワーク220について詳細に説明する。本発明によれば、給電ネットワーク220は、漏洩波スパイラルマイクロストリップ伝送ライン302から構成される。基板4の下部表面212に配置された伝送ライン302は、実質的に螺旋状であり、電磁信号を受信するための入力端部304と、負荷インピーダンス(不図示)に電気的に接続可能な終端端部305を有する。伝送ライン302は、伝送ライン302と溝付きアーム12〜38間で電磁エネルギーを結合する。
【0030】
給電ネットワーク220の電気位相長(electrical phase length)は、およそ2π/Nに設定される。ここでNは、アンテナの放射スロット構造における螺旋状スロットアームの数である。給電ネットワークの2π/N近似は、スロットの下にマルチターンスパイラルマイクロストリップライン302を構成することによって達成され、これによって、周波数の広い範囲において、隣接するスロット間のマイクロストリップライン電気位相長の要求された推移が提供される。したがって、この給電ネットワーク220を用いて、広い周波数範囲にわたって安定した位相中心及びすぐれた円偏光が達成される。給電ネットワーク220はまた、全てのスロットに対してほぼ均一の振幅加振(amplitude excitation)を維持する。
【0031】
給電ネットワークと放射スロット構造間の相互接続については、スロット12〜38と、給電ネットワーク220のマイクロストリップ給電ライン302が示された図3Bを参照して理解することができる。図3Bから、マイクロストリップ給電ライン302は各スロットと2回交差することがわかる。たとえば、スロット12については、マイクロストリップ給電ラインは、領域306でスロット12と交差し、領域310で再びスロット12と交差する。したがって、伝送ライン302と溝付き開口部12との電磁結合は、2つの領域で生じ、これによって、情報を2回収集することが可能となるので、より正確な測定を行うことができる。
【0032】
図4には、本発明にしたがって構成された代替のアンテナの上部表面の概略が示されており、この上部表面には、14の螺旋状スロットアームと、オプションの表面波抑制領域420を含む周辺エッジ410がある。表面波抑制領域は、導電性の金属被膜された層206内に配置されたフォトニックバンドギャップ(PBG)材料から構成される。表面波抑制領域420は、単位波長毎に既定数の開口部が存在するように隔置された複数の開口部422〜424を備える。これらの開口部は、表面波を回折させる固体壁を形成するために1/10λよりも小さい間隔で配置されるのが好ましい。これらの開口部は、アンテナ受信の帯域幅には影響しない。表面波抑制特性によって、厚いPCB基板が使用されているときに特に、アンテナの性能が改善される。アンテナ2を適用装置(または圧着装置)に固定または取り付けるために、より大きな開口部450が使用される。
【0033】
図5は、アンテナのグランド面を例示する側面図である。図5に示すように、アンテナ基板4は、それの上部表面6に放射スロット構造10を有する。基板4は、基板4の下部表面212に隣接して配置された浅い(または薄い)金属製のグランド面502によって裏打ちされている。キャビティ(空隙)506が、グランド面502と下部表面212の間に形成されている。キャビティ506の深さは15mmであり、これは、対象とする周波数帯に対してλ/16〜λ/12に相当する。これによって、標準的なλ/4(1/4波長)のキャビティ深さを使用する他のキャビティアンテナに比べてロープロファイルのアンテナが可能となる。追加のPCB層とすることが可能な10mm厚のRFフォームアブソーバ(RF foam absorber)512を、基板4とグランド面502の間に配置して、アンテナ2からの交差偏光信号の漏れが生じにくいようにすることができる。
【0034】
グランド面502を含む本発明のアンテナ2は、その重さが約0.45キログラム(kg)である点で軽量であり、かつ、直径が5.5インチであって小さい。
【0035】
代替の放射スロット構造が図6及び図7に示されている。図6に示すように、放射スロット構造602は、外側リング610を形成するように相互接続されたフラクタルループにおいて(またはフラクタルループをなして)終端されたN個の螺旋状アームから構成される。
【0036】
図7は、他の変形例を示しており、アンテナの放射スロット構造702は、フラクタルループにおいて(またはフラクタルループをなして)終端された螺旋状アームを有するが、その端部においてより長い尾部712を有する。
【0037】
図6及び図7の代替実施形態は、より低い周波数で大きな利得が所望される(但し、これは、より高い周波数における利得が小さくなることと引き換えになされる)他の用途で使用される。したがって、放射スロット構造の設計は、本発明の特定の用途に必要とされるパラメータ及び仕様に依存して選択されることになる。
【0038】
シミュレーションとテスト結果
本発明のアンテナ構成を、高周波構成シミュレーション(または、高周波3次元電磁界シミュレーション:HFSS)を用いて詳細な電磁シミュレーションを実行することにより試験した。種々のGNSS帯について測定された位相中心位置を表1に示す。表1は、対象とする全ての周波数帯について位相中心の変動が2mmを超えない単一のアンテナ要素を得ることが可能であること示している。したがって、このアンテナによって導入される測距誤差は、GPS、GLONASS及びGALILEO測位衛星システムの組み合わせを使用するときに最小になる。
【0039】
【表1】

【0040】
本発明のアンテナの性能は、HFSSを用いて電磁シミュレーションを実行することによって試験された。アンテナの反射減衰量についてのすぐれた性能が図8に示されている。図8の800は、横軸にギガヘルツ(GHz)単位の周波数をとり、縦軸にデシベル(dB)単位のシミュレートされた反射係数値(S11として知られている)をとってプロットしたものである。曲線810は、対象とする周波数範囲にわたるリターンループ(return loop)を示している。
【0041】
アンテナのピーク利得は、図9に示すようにシミュレートされた。図9は、周波数(単位:GHz)に対してアンテナのピーク利得(ボアサイト:照準合わせ)(単位:dB/c)をプロットしたものである。曲線910は、このアンテナの右円偏光(RHCP)のピーク利得を示し、曲線920は、このアンテナの左円偏光(LHCP)のピーク利得を示す。
【0042】
1227.6MHzの周波数でシミュレーションしたときの垂直方向の放射パターンを図10Aに示す。1575.4MHzの周波数でアンテナをシミュレーションしたときの垂直方向の放射パターンを図10Bに示す。各周波数における放射パターンの対称性がグラフから明らかである。
【0043】
本発明のアンテナはまた、無響室測定(anechoic chamber measurement。または電波暗室測定)を実施することによって試験された。無響室測定は、対象とする全ての周波数帯にわたる放射パターン特性と位相中心の変動を決定するために使用された。図11にアンテナの軸比を示す。
【0044】
これらのテスト及びシミュレーションは、本発明のアンテナが、対象とする周波数帯の範囲にわたって、アンテナの反射減衰量、利得、軸比、前後比(Front-Back Ratio。または前後電界比)及び、アジマス面における振幅変動の面ですぐれた性能を有するということを示している。このアンテナは、対象とする周波数帯にわたって一貫した性能を提供する。
【0045】
本発明のアンテナは、正確な位置決め用途に対して有利である。このアンテナは、全ての周波数帯にわたって均一な性能結果を保証するマルチ周波数性能を有する。アンテナのロープロファイル性は、自動車、航空機、ミサイル、ロケットなどの用途や、その他の強い衝撃をうける多くの用途に適している。アンテナの対象とする全ての周波数にわたって位相中心が安定しており、かつ、位相放射パターンが均一であることによって、リアルタイムの運動学的な位置決め用途に対処できる。軸比及び前後比は、高度なマルチパス環境において良好な性能を提供する。本発明のアンテナは、製造するのが簡単であり、また、過酷な環境要件にも容易に適合することができるので、海洋や北極域における用途にも適する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明によるアンテナの上部表面の図である。
【図2】本発明のアンテナの断面図である。
【図3A】本発明のマルチターンスパイラルマイクロストリップ給電構造を示すアンテナの下部表面の図である。
【図3B】本発明のアンテナの上部表面の図であり、放射構造のスロットアームに結合されたマイクロストリップ給電線を示す。
【図4】表面波抑制領域を示す、図1のアンテナの上部層の略図である。
【図5】グランド面を見ることができる、本発明のアンテナの側面図である。
【図6】代替の放射構造を示す、本発明の代替実施形態である。
【図7】更なる代替の放射構造を示す本発明の別の実施形態である。
【図8】本発明のアンテナの反射減衰量のグラフであり、縦軸にS11をデシベル単位でとり、横軸に周波数をとったものである。
【図9】本発明のアンテナについて、右円偏光(右旋円偏波)信号と左円偏光(左旋円偏波)信号の周波数に対するアンテナのピーク利得を示すグラフである。
【図10A】1227.6MHzにおける本発明のアンテナのシミュレートされた放射パターンである。
【図10B】1575.4MHzにおける本発明のアンテナのシミュレートされた放射パターンである。
【図11】1575.4MHzにおける本発明のアンテナの測定された軸比パターンである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象とする周波数帯における複数の電磁信号を受信するのに適したアンテナであって、前記電磁信号の各々は、それぞれ独自の波長λを有し、
上部表面と下部表面を有する、非導電性でほぼ平坦な基板と、
前記上部表面に配置された導電性の金属被膜された層であって、前記層は、それ自体にエッチングされた放射スロット構造を有し、該放射スロット構造は、複数の相互接続された螺旋状スロットアームを有し、各スロットアームが、フラクタルループ構成において終端される、金属被膜された層と、
前記基板の前記下部表面に配置されたマルチターンスパイラル伝送ラインと、
前記基板の前記下部表面に隣接する金属被膜されたグランド面であって、前記基板と前記グランド面の間にキャビティを形成するグランド面
を備えるアンテナ。
【請求項2】
フラクタルループ構成の各々は、隣接するスロットアームの少なくとも1つの隣接するフラクタルループ構成と相互接続される、請求項1のアンテナ。
【請求項3】
前記フラクタルループ構成の各々は、また、前記アンテナの周辺エッジに向かって前記フラクタルループ構成を超えて延在する尾部を有する、請求項2のアンテナ。
【請求項4】
各2つの連続する螺旋状スロットアーム間の隔置距離は2π/Nであり、Nは、螺旋状スロットアームの数である、請求項1のアンテナ。
【請求項5】
各スロットアームが、内側エッジと外側エッジを有し、前記スロットアームの幅が、前記内側エッジと前記外側エッジの間の距離として定義され、各スロットアームは、アンテナの中心点に最も近い第1の端部において第1の幅を有し、前記幅は、それのフラクタルループ構成が開始するポイントにおいてより大きくなるように広がる、請求項1のアンテナ。
【請求項6】
前記スロットアームの開始から、前記フラクタル構成が始まるポイントまでの、各スロットアームの内側エッジに沿った距離は、Lバンドにおける対象とするOmniSTAR(商標)周波数帯の約半波長(λ/2)である、請求項5のアンテナ。
【請求項7】
前記スロットアームの開始から、前記フラクタルループ構成が始まるポイントまでの、前記スロットアームの外側エッジに沿った距離は、前記スロットアームが隣接する外側のスロットと相互接続するポイントまでの距離である、請求項5のアンテナ。
【請求項8】
前記スロットアームの開始から、前記フラクタルループ構成が始まるポイントまでの、前記スロットアームの外側エッジに沿った距離は、対象とする最も低い周波数帯の約1/4波長(λ/4)である、請求項7のアンテナ。
【請求項9】
各スロットアームは2つのアームに分岐し、隣接するフラクタルループが分離する、請求項5のアンテナ。
【請求項10】
前記スロットアームの開始から、前記スロットアームが2つのアームに分岐して、隣接するフラクタルループが分離するポイントまでの、前記スロットアームに沿った距離は、対象とする最も高い周波数帯の約1/2波長(λ/2)である、請求項9のアンテナ。
【請求項11】
前記スロットアームの開始から、前記尾部の端部までの、前記スロットアームに沿った距離は、対象とする最も低い周波数帯の約1/2波長(λ/2)である、請求項3のアンテナ。
【請求項12】
前記スロットアームの開始から、分岐した右アームが前記フラクタルループにおいて終わるポイントまでの、前記スロットアームに沿った距離は、対象とする2番目に低い周波数帯の約1/2波長(λ/2)である、請求項5のアンテナ。
【請求項13】
前記フラクタルループ構成の周囲長は、対象とする全ての周波数帯の中間周波数の約1/2の波長である、請求項1のアンテナ。
【請求項14】
前記伝送ラインの電気位相長は2π/Nに設定される、請求項1のアンテナ。
【請求項15】
前記スパイラル伝送ラインは2回転のスパイラルである、請求項1のアンテナ。
【請求項16】
少なくとも約1175MHz〜1610MHzまでの広帯域幅を有する、請求項1のアンテナ。
【請求項17】
GPS、GLONASS、GALILEO、及びOmniSTAR(商標)システムのうちの1つ以上からの信号を受信するように構成された請求項1のアンテナ。
【請求項18】
前記基板の下部表面とグランド面の間に配置されたRFアブソーバをさらに有する、請求項1のアンテナ。
【請求項19】
前記RFアブソーバは、実質的にPCB材料からなる円状のコンポーネントである、請求項18のアンテナ。
【請求項20】
前記アンテナの周辺エッジが表面波抑制領域を有する、請求項1のアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【公表番号】特表2009−502058(P2009−502058A)
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521754(P2008−521754)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【国際出願番号】PCT/CA2006/001127
【国際公開番号】WO2007/009216
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(598093381)ノヴァテル・インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】