説明

フラグが取り付けられるフードを備えた自動車

【課題】フラグポールがフードに取り付けられたときは、そのフラグポールを強固に支持することができ、しかもフラグの非使用時にフードに人体が当ったときは、そのフードが大きく塑性変形して、エネルギーを効率よく吸収し、人体に与える衝撃を小さく留めることのできるフードを提供する。
【解決手段】フラグの使用時には、ポール受入部材13の固定されたベース部材14がフード1のインナパネル3に固定され、そのポール受入部材13にフラグポール12を螺着し、フラグが使用されないときは、ポール受入部材13の固定されたベース部材14がフード1から取り外され、フード1に形成された貫通孔21には、軟質なキャップが嵌着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラグが取り付けられるフードを備えた自動車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体に回動開閉可能に支持されたフードに、必要に応じて、フラグの取り付けられたフラグポールを固定できるようにした自動車は従来より周知である。フードを備えた自動車については、特許文献1参照。
【0003】
図1は、フードにフラグポールが取り付けられた自動車の一例を示す斜視図であり、図5は従来のフードを図1におけるA−A線に沿って切断した拡大断面図である。各図における符号Frは自動車の前進方向を示し、符号Wは車幅方向を示している。
【0004】
図5に示すように、フード1は、アウタパネル2とそのアウタパネル2に固定されたインナパネル3を有し、かかるフード1は、前部エンジンルームERの上部開口を閉鎖した閉位置と、その上部開口を開放した開位置との間を図示していないヒンジを介して回動開閉可能に車体4(図1)に支持されている。図1及び図5はフード1が閉位置を占めたときの様子を示している。
【0005】
図5に示すように、フード1のアウタパネル2とインナパネル3の間には、アッパパネル5と、そのアッパパネル5に固着されたロアパネル6より成る閉断面形状の補強部材7と、そのアッパパネル5に固着された補強パネル8が配置されている。補強部材7のロアパネル6はインナパネル3に固着され、補強パネル8はシーラ9を介してアウタパネル2に固定されている。また補強部材7のロアパネル6にはストライカ10が固着され、フード1が閉位置を占めたとき、ストライカ10が車体4に取り付けられた図示していないロック装置のロック部材に係合して、フード1が閉位置にロックされる。
【0006】
上述したフード1には、図1に示すように、必要に応じてフラグ(旗)11が取り付けられる。このフラグ11は、フラグポール12に取り付けられていて、そのフラグポール12が、次に説明するポール受入部材13とベース部材14を介して、フェンダ1に固定される。
【0007】
図5に一例として示したベース部材14は、鋼板より成るベースプレート15と、そのベースプレート15に一体に固着された鋼板より成る台座16と、その台座16に固着された鋼板より成る円筒状のカラー17とを有し、ベースプレート15と台座16はフード1のインナパネル3に溶接によって一体に固着されている。円筒状のカラー17と、台座16に形成された取付孔18には、その上方からポール受入部材13が挿入され、該ポール受入部材13の下部外周面に形成された雄ねじにナット19が螺着されて締め付けられている。これによりポール受入部材13がベース部材14に固定される。このとき、ポール受入部材13の上部が、補強パネル8とアウタパネル2に形成された貫通孔20,21を貫通し、その上部がアウタパネル2の外面よりも上方に突出している。
【0008】
また、図5に示すように、フード1のアウタパネル外面には、ガーニッシュ22が例えば接着剤によって強固に固定されていて、該ガーニッシュ22に形成された孔23にポール受入部材13の上部が嵌合している。
【0009】
上述したポール受入部材13には、内周面に雌ねじの形成されたねじ孔24が貫通形成され、フラグポール12の下部の外周面には雄ねじが形成されていて、ねじ孔24にフラグポール12の下部がねじ込まれている。このようにして、フラグポール12が、ポール受入部材13とベース部材14とを介してフード1に固定されている。
【0010】
フラグ11を使用しないときは、フラグポール12がポール受入部材13のねじ孔24から上方に抜き出され、図6に示すように、ポール受入部材13のねじ孔24には、その上方より金属製のボルトより成るキャップ25が螺着され、これによりエンジンルームER内のシール性が確保される。
【0011】
上述のように、フラグポール12は、フード1に固着されたベース部材14と、そのベース部材14に固定されたポール受入部材13を介して、フード1に強固に固定されているので、フラグポール12をフード1に対して安定状態で固定することができる。従って、フラグ11の取り付けられた自動車が高速で悪路などを走行したときも、フラグポール12がフード1から外れることはない。このように、フラグポール12をフード1に強固に固定するために、ポール受入部材13と、ベース部材14が必要となるが、これらの部材をフード1に固定すると、これらの部材が取り付けられたフード部分の剛性と強度が高められる。ところが、このようにポール受入部材13とベース部材14の取り付けられたフード部分の強度が高くなると、次に示す欠点を免れない。
【0012】
図6に示したように、フラグポール12をベース部材13から外し、ポール受入部材13にキャップ25を螺着して自動車を走行させたときに、事故が発生し、人体がフード1に当ったものとする。このとき、外力の加えられたフード部分を大きく塑性変形させて、エネルギーを効率よく吸収し、人体に与える衝撃を小さく留めることが好ましい。ところが、従来の自動車においては、上述のようにポール受入部材13とベース部材14が固着されたフード部分の強度が高くなっているので、図6に矢印Pで示したようにそのフード部分に人体が当ったとき、当該フード部分が容易に塑性変形することができず、エネルギーの吸収効率が低下する。フラグ11の非使用時には、ポール受入部材13のねじ孔24にボルトより成るキャップ25が螺着されているので、外力の加えられたフード部分は一層変形し難くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−296796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述した認識に基づきなされたものであって、その目的とするところは、フラグポールがフードに取り付けられたときは、そのフラグポールを強固に支持することができ、しかもフラグの非使用時にフードに人体が当ったときは、そのフードが大きく塑性変形して、エネルギーを効率よく吸収し、人体に与える衝撃を小さく留めることのできる自動車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記目的を達成するため、アウタパネル及び該アウタパネルに固定されたインナパネルを有していて、車体に回動開閉可能に支持されたフードと、フラグが取り付けられたフラグポールと、該フラグポールの下部がねじ込まれるねじ孔を備えたポール受入部材と、該ポール受入部材に固定されたベース部材とを具備する自動車において、前記ベース部材を前記フードのインナパネルに着脱可能に固定するベース固定手段を具備し、前記フラグを使用するときは、前記ベース部材を、前記ベース固定手段によって前記フードのインナパネルに固定して、該ベース部材に固定されたポール受入部材の上部を、前記フードのアウタパネルに形成された貫通孔に挿通させると共に、該ポール受入部材のねじ孔に前記フラグポールの下部をねじ込んで、該フラグポールを前記フードに対して固定し、前記フラグを使用しないときは、前記ベース部材を前記フードのインナパネルから離脱して、前記アウタパネルに形成された貫通孔を、弾性材料より成るキャップによって閉鎖することを特徴とする自動車を提案する(請求項1)。
【0016】
その際、前記フードのアウタパネル外面に着脱可能に固定されるガーニッシュを有し、該ガーニッシュには、前記フラグの使用時に、ポール受入部材の上部が嵌合する孔が形成され、前記フラグが使用されないときは、前記ガーニッシュは前記フードのアウタパネルから離脱されるように構成されていると有利である(請求項2)。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、フラグの使用時には、ポール受入部材の固定されたベース部材がフードのインナパネルに固定されるので、そのポール受入部材に螺着されたフラグポールを安定した状態で強固に支持することができる。これに対し、フラグが使用されないときは、ポール受入部材の固定されたベース部材がフードから取り外され、しかもフードに形成された貫通孔には、軟質なキャップが嵌着されているので、そのキャップ部分ないしはその近傍のフード部分に大きな外力が加えられたとき、そのフード部分は大きく塑性変形して、効率よくエネルギーを吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】フードにフラグが取り付けられたときの自動車の外観斜視図であって、従来技術の説明と本発明の実施形態の説明に供した図である。
【図2】フラグ非使用時の自動車の外観斜視図であって、本発明の一実施形態を示した図である。
【図3】本発明一実施形態を示す、図1のA−A線に沿う拡大断面図である。
【図4】ポール受入部材と、ベース部材と、ガーニッシュをフードから取り外した状態を示す、図3と同様な断面図である。
【図5】従来のフードを、図1のA−A線に沿って切断した断面図である。
【図6】フラグ非使用時の従来のフードを示す、図5と同様な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態例を図面に従って詳細に説明する。
【0020】
本実施形態例におけるフラグ使用時の自動車の外観は、図1に示したところと変わりはない。よって、本実施形態例の説明にも図1を参照することにする。
【0021】
図1乃至図4に示すように、本例の自動車のフード1自体は、図5及び図6に示した従来の自動車のフードと実質的に変わりはない。すなわち、本例の自動車のフード1も、図3に示すように、鋼板より成るアウタパネル2と、そのアウタパネル2に固定された鋼板より成るインナパネル3とを有していて、かかるフード1が、図示していないヒンジを介して、車体4に回動開閉可能に支持されている。また、図1に示すように、フラグ11は、フラグポール12に取り付けられていて、図3に示すように、フラグポール12の下部が、ポール受入部材13のねじ孔24にねじ込まれて、フラグポール12がポール受入部材13に固定され、さらにそのポール受入部材13にナット19によってベース部材14が固定されていることも、図5に示した従来の自動車と変わりはない。このように、本例の自動車もアウタパネル2及びそのアウタパネル2に固定されたインナパネル3とを有していて、車体4に回動開閉可能に支持されたフード1と、フラグ11が取り付けられたフラグポール12と、フラグポール12の下部がねじ込まれるねじ孔24を備えたポール受入部材13と、そのポール受入部材13に固定されたベース部材14とを有している。
【0022】
ポール受入部材13自体の構成、ベース部材14自体の構成、フード1自体の構成も、下記に示す点を除き、実質的に図5に示した従来の自動車と変わりはない。よって、図1乃至図4における従来の自動車の各部と同一又は対応する部分には、図5及び図6に付した符号と同一の符号を付して、これ以上の重複した説明は省略する。
【0023】
図1乃至図4に示した自動車が、図5及び図6に示した自動車と異なるところは、先ずベース部材14が、フード1のインナパネル3に溶接によって一体に固着されているのではなく、そのベース部材14がフード1のインナパネル3に着脱可能に固定される点である。このように、本例の自動車は、ベース部材14をフード1のインナパネル3に着脱可能に固定するベース固定手段を有しているのである。図に一例として示したベース固定手段は、図3及び図4に示すように、フード1のインナパネル3に溶接により固着されたウェルドボルト26と、ナット27とによって構成されている。
【0024】
また、本例の自動車が従来の自動車と異なる第2の点は、フード1のアウタパネル外面にガーニッシュ22が着脱可能に固定される点である。具体的には、ガーニッシュ22の下面とアウタパネル2の外面に、図示していない面ファスナーがそれぞれ固定され、両方の面ファスナーを係合させることにより、ガーニッシュ22をアウタパネル外面に固定することができる。両方の面ファスナーを互いに剥がすことにより、ガーニッシュ22をアウタパネル2から離脱することができる。或いは、図示していないクリップによってガーニッシュ22をアウタパネル2の外面に着脱可能に固定するように構成することもできる。
【0025】
ここで、図1に示したようにフラグ11を使用するときは、ベース部材14をベース固定手段によってフード1のインナパネル3に固定する。すなわち、図4に示したように、ナット19によってポール受入部材13が固定されたベース部材14を矢印Q方向に持ち上げて、ポール受入部材13をインナパネル3に形成された孔28に挿入すると共に、ベース部材14に形成された取付孔29にウェルドボルト26を挿通させ、そのウェルドボルト26に図3に示したようにナット27を螺着してこれを締め付ける。これにより、ベース部材14を、ポール受入部材13と共にインナパネル3に固定することができる。このとき、図3から明らかなように、ベース部材14に固定されたポール受入部材13の上部が、補強パネル8とフード1のアウタパネル2に形成された貫通孔20,21に挿通される。
【0026】
次いで、図3に示したように、ガーニッシュ22を下方に下げ、そのガーニッシュ22に形成された孔23にポール受入部材13の上部を嵌合させると共に、該ガーニッシュ22をアウタパネル外面に固定する。このように、本例の自動車には、フード1のアウタパネル外面に着脱可能に固定されるガーニッシュ22を有し、該ガーニッシュ22には、フラグ11の使用時に、ポール受入部材の上部が嵌合する孔23が形成されているのである。
【0027】
次いで、図3に示したように、ポール受入部材13のねじ孔24にフラグポール12の下部をねじ込んで、そのフラグポール12をフード1に対して固定する。これにより、図1に示したように、フラグ11がフード1に取り付けられ、この状態で自動車を走行させることができる。このとき、フラグポール12は、従来と同様に、フード1のインナパネル3に固定されたベース部材14とそのベース部材14に固定されたポール受入部材13を介して、フード1に固定されているので、フラグポール12をフード1に対して強固に固定することができる。従ってフラグポール12をフード1に安定した状態に強固に支持でき、自動車の走行時にフラグポール12がフード1から外れることはない。
【0028】
一方、フラグ11を使用しないときは、フラグポール12をポール受入部材13のねじ孔24から抜き出すと共に、図4に示すように、ガーニッシュ22をフード1のアウタパネル2から離脱し、ベース部材14をフード1のインナパネル3から離脱する。すなわち、図3に示したナット27を回して、これをウェルドボルト26から外すと共に、ベース部材14を、ポール受入部材13と共に、図4に示した矢印Qと反対の方向に移動させて、ベース部材14をインナパネル3から取り外すのである。また、ガーニッシュ22を外した後に、アウタパネル2と補強パネル8に形成された貫通孔20,21は、図2に実線で示し、かつ図4に二点鎖線で示したように、例えばエラストマーなどの弾性材料より成るキャップ30によって閉鎖される。このように、フラグ11の非使用時には、硬質材より成るポール受入部材13とベース部材14がフード1から外され、しかもアウタパネル2の貫通孔21は軟質なキャップ30により閉鎖されているので、事故発生時に、そのキャップ30ないしはその近傍のフード部分に人体が当ったとき、フード1は大きく塑性変形して、エネルギーを効率よく吸収し、人体に与える衝撃を小さく留めることができる。
【0029】
再びフラグ11を使用するときは、図4に示したキャップ30を取り外し、前述のように、ポール受入部材13と共にベース部材14を、ベース固定手段によってインナパネル3に固定すると共に、ガーニッシュ22をアウタパネル2の外面に固定して、そのポール受入部材13にフラグポール12の下部を螺着する。
【符号の説明】
【0030】
1 フード
2 アウタパネル
3 インナパネル
4 車体
11 フラグ
12 フラグポール
13 ポール受入部材
14 ベース部材
21 貫通孔
22 ガーニッシュ
23 孔
24 ねじ孔
25 キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウタパネル及び該アウタパネルに固定されたインナパネルを有していて、車体に回動開閉可能に支持されたフードと、フラグが取り付けられたフラグポールと、該フラグポールの下部がねじ込まれるねじ孔を備えたポール受入部材と、該ポール受入部材に固定されたベース部材とを具備する自動車において、前記ベース部材を前記フードのインナパネルに着脱可能に固定するベース固定手段を具備し、前記フラグを使用するときは、前記ベース部材を、前記ベース固定手段によって前記フードのインナパネルに固定して、該ベース部材に固定されたポール受入部材の上部を、前記フードのアウタパネルに形成された貫通孔に挿通させると共に、該ポール受入部材のねじ孔に前記フラグポールの下部をねじ込んで、該フラグポールを前記フードに対して固定し、前記フラグを使用しないときは、前記ベース部材を前記フードのインナパネルから離脱して、前記アウタパネルに形成された貫通孔を、弾性材料より成るキャップによって閉鎖することを特徴とする自動車。
【請求項2】
前記フードのアウタパネル外面に着脱可能に固定されるガーニッシュを有し、該ガーニッシュには、前記フラグの使用時に、ポール受入部材の上部が嵌合する孔が形成され、前記フラグが使用されないときは、前記ガーニッシュは前記フードのアウタパネルから離脱される請求項1に記載の自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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