説明

フラックス塗布装置およびその方法

【課題】装置コストを比較的安価にでき、フラックスの消費量を低減でき、作業効率の高いフラックス塗布装置を提供する。
【解決手段】基板100を保持する基板保持板2と、基板100の下方に配置され、フラックスFLを収容するフラックス容器40と、フラックスFLを塗布すべき塗布領域Crの形状に合致した接触面をもち、フラックスFLを吸収保持するスポンジ部材50と、接触面が塗布領域Crに対向する対応する位置にスポンジ部材50を保持し、スポンジ部材50を下降させてフラックス容器40内のフラックスFLに浸漬させ、スポンジ部材50を上昇させて基板100に対して下方から接触面を押し当てることにより、基板の塗布領域にフラックスを塗布する可動板10、ガイドロッド11およびアクチュエータ20からなる移動機構とを有する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フラックス塗布装置およびフラックス塗布方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
たとえば、プリント基板のパターンに電子部品をはんだ付けする場合には、パターンにフラックスを塗布することが行われている。このフラックスは、化学反応により表面酸化膜を除去し、はんだがはんだ付け対象物(母材)と良好に濡れるようにはんだ付け時の濡れ性を確保する役割を果たす。
フラックス塗布装置としては、種々のタイプのものが知られているが、たとえば、スプレー式、発泡式、スポンジ式等の塗布方式のものが知られている。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−7930号公報
【特許文献2】
特開平5−21679号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、スプレー式や発泡式のフラックス塗布装置では、塗布現場に大型の排気装置が必要となり、装置コストが高くなるという問題がある。また、スプレー式や発泡式のフラックス塗布装置では、プリント基板にフラックスを全面的に塗布するため、フラックスの消費量が多いという問題もある。
一方、スポンジ式のフラックス塗布装置は、大型の排気装置が必要なく、フラックスの消費量も比較的少ないが、フラックスをスポンジに供給する作業と、フラックスを吸収したスポンジをプリント基板等に接触させる作業とが必要であり作業効率が低いという問題があった。
【0005】
本発明は、上記した問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、装置コストを比較的安価にでき、フラックスの消費量を低減でき、作業効率の高いフラックス塗布装置およびフラックス塗布方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のフラックス塗布装置は、はんだ付けする母材の所望の領域にフラックスを塗布するフラックス塗布装置であって、母材を保持する母材保持手段と、前記母材の下方に配置され、フラックスを収容するフラックス容器と、フラックスを塗布すべき塗布領域の形状に合致した接触面をもち、フラックスを吸収保持するフラックス吸収保持部材と、前記接触面が前記塗布領域に対向する対応する位置に前記フラックス吸収保持部材を保持し、前記フラックス吸収保持部材を下降させて前記フラックス容器内のフラックスに浸漬させ、前記フラックス吸収保持部材を上昇させて前記母材に対して下方から前記接触面を押し当てることにより、前記母材の塗布領域にフラックスを塗布する移動機構とを有する。
【0007】
好適には、本発明のフラックス塗布装置は、複数の前記フラックス吸収保持部材を有し、前記移動機構は、複数の前記フラックス吸収保持部材を一括して昇降させる。
【0008】
本発明のフラックス塗布方法は、はんだ付けする母材の所望の領域にフラックスを塗布するフラックス塗布方法であって、フラックスを塗布すべき塗布領域の形状に合致した接触面をもつフラックス吸収保持部材を下降させ、母材の下方に配置されたフラックス容器内のフラックスに浸漬させてフラックスを吸収保持させ、前記フラックス吸収保持部材を前記母材に向けて上昇させ、前記母材に対して下方から前記接触面を押し当てることにより、前記母材の塗布領域にフラックスを塗布する。
【0009】
好適には、本発明のフラックス塗布方法は、複数の前記フラックス吸収保持部材を一括して昇降させて、フラックスの吸収および塗布を行う。
【0010】
本発明では、フラックス吸収保持部材を下降させると、フラックス容器に収容されたフラックスにフラックス吸収保持部材が浸漬され、フラックスがフラックス吸収保持部材に吸収保持される。
この状態のフラックス吸収保持部材を母材に向けて上昇させると、フラックス吸収保持部材の接触面が母材に押し当てられ、フラックス吸収保持部材に保持されたフラックスが母材に塗布される。このとき、接触面はフラックスを塗布すべき塗布領域の形状に合致しているので、母材の塗布領域へのフラックスの塗布がフラックス吸収保持部材の接触面を母材へ押し当てるだけで行われる。
このように、本発明では、フラックス吸収保持部材を母材の下方に配置し、さらにフラックス吸収保持部材の下方にフラックスを供給するフラックス容器を配置し、母材とフラックス容器との間でフラックス吸収保持部材を昇降させるだけで、フラックスの供給および塗布が行われる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るフラックス塗布装置の概略構成を示す一部が破断した斜視図である。また、図2は、図1のフラックス塗布装置の断面図である。
図1において、フラックス塗布装置1は、基板保持板2と、可動板10と、ガイドロッド11と、アクチュエータ10と、フラックス容器40と、スポンジ部材50とを有する。なお、基板保持板2は、本発明の母材保持手段の一実施態様であり、スポンジ部材50は本発明のフラックス吸収保持部材の一実施態様である。また、可動板10、ガイドロッド11およびアクチュエータ10は、本発明の移動機構を構成している。
【0012】
基板保持板2は、上面側に母材としての基板100を保持する。この基板保持板2は、図2に示すように、中央部に開口2aを有しいる。この開口2a通じて基板100の裏面側(下側)からフラックスの塗布が可能となる。
また、基板保持板2は、図示しないが、基板100を所定の位置に位置決めする位置決め機構および基板100を固定する固定機構を備えている。
【0013】
基板100は、本発明の母材の一実施態様であり、この基板100には、プリント配線やスルーホールが形成されている。図1および図2に示すように、基板100を基板保持板2の上面側に保持させた状態で、基板100の裏面側の複数の塗布領域Crにフラックスが塗布される。
なお、基板保持板2上への基板100の搬送は、たとえば、ハンドリングロボット等によって自動的に行われる。
【0014】
ガイドロッド11は、基板保持板2の四隅を支持しており、ベースBS上に立設されている。
【0015】
可動板10は、上面側に複数のスポンジ部材50を保持している。この可動板10の四隅には、ガイドロッド11が貫通している。可動板10は、ガイドロッド11に沿って矢印A1およびA2で示す鉛直方向に移動可能となっている。
【0016】
アクチュエータ10は、ベースBS上に設置されており、ロッド21の先端部が可動板10に連結されている。このアクチュエータ10には、たとえば、エアシリンダ装置が用いられる。ロッド21の伸縮により、可動板10は鉛直方向に移動位置決めされる。
【0017】
フラックス容器40は、ベースBS上に設置され、基板保持板2および可動板10の下方に配置されている。このフラックス容器40は、可動板10の外形よりも大きい外形を有し、可動板10を内部に収容可能となっている。また、フラックス容器40の内部には、常時、フラックスFLが収容されている。
【0018】
スポンジ部材50は、基板100の裏面(下面)に対向する上面が基板100に接触する接触面となっている。この接触面は、基板100の各塗布領域Crに合致した形状を有する。また、各スポンジ部材50は、可動板10上の基板100の各塗布領域Crに対応する位置に配置されている。
【0019】
図3は、上記のスポンジ部材50の構造の一例を示す図である。
図3に示すように、スポンジ部材50は、基板100に接触する接触部51と、主に、フラックスFLを吸収保持する吸収保持部52とを有する。
接触部51は、基板100に接触する接触面51sが、たとえば、波状や凹凸状に形成されている。これは、接触面51sを基板100の表面に押し当てたときに、接触面51sが均等に接触するようにするためである。
【0020】
吸収保持部52は、接触部51よりも大きく、かつ、接触部51と一体的に接続されている。この吸収保持部52は、フラックスFLを吸収しやすく、これを安定的に保持できるスポンジ材料で形成するのが好ましい。吸収保持部52は、接触部51へフラックスFLを安定して供給する役割を果たす。
【0021】
次に、上記構成のフラックス塗布装置1を用いた基板へのフラックスの塗布方法を図4および図5を参照して説明する。
まず、フラックス塗布装置1の基板保持板2の上に基板100をセットする。また、図4に示すように、可動板10をフラックス容器40内に下降させ、可動板10の上面に設けられたスポンジ部材50をフラックス容器40内のフラックスFLに浸漬する。
これにより、スポンジ部材50は、フラックスFLを吸収する。
【0022】
スポンジ部材50をフラックスFLに浸漬したとき、スポンジ部材50の沈下量に応じて、スポンジ部材50が吸収保持するフラックスFLは変化する。したがって、図4に示すように、フラックスFLの液面からの可動板10の沈下量をDとすると、この沈下量Dを適宜調整することにより、スポンジ部材50に吸収保持させるフラックスFLの量を調整する。沈下量Dを調整するには、アクチュエータ20の駆動量を調整すればよい。
【0023】
スポンジ部材50を所定の沈下量DでフラックスFLに浸漬したのち、図5に示すように、可動板10を基板100に向けて上昇させる。
可動板10は、スポンジ部材50の接触面51sが基板100の裏面の各塗布領域Crに接触する予め決められた位置まで上昇する。
これにより、基板100の裏面の各塗布領域CrにフラックスFLが塗布される。
【0024】
スポンジ部材50の基板100への押しつけ力に応じて、基板100へのフラックスFLの塗布量は変化する。すなわち、フラックスFLを吸収保持したスポンジ部材50を基板100ヘ強く押しつけると、多くのフラックスFLが塗布され、スポンジ部材50の基板100ヘの押しつけ力が小さいと、少ないフラックスFLが塗布される。
このため、可動板10の上昇位置を適宜調整することにより、基板100へのフラックスFLの塗布量を調整することができる。
【0025】
すなわち、上記のフラックスFLの液面からの可動板10の沈下量Dと、スポンジ部材50の基板100への押しつけ力とを適宜調整することにより、基板100へのフラックスFLの塗布を最適化することができる。
【0026】
以上のように、本実施形態によれば、スポンジ部材50を基板100の下方に配置された可動板10上に保持し、さらに、可動板10の下方にフラックスFLを供給するフラックス容器40を配置し、基板100とフラックス容器40との間でスポンジ部材50を昇降させるだけで、フラックスFLをスポンジ部材50に吸収保持させるとともに、基板100の塗布領域CrへのフラックスFLが可能となる。この結果、装置構成を簡素化できるとともに、塗布作業効率が非常に高まる。
【0027】
また、本実施形態によれば、可動板10のフラックス容器40への沈下量およびスポンジ部材50の基板100への押し付け力を適宜調整することにより、基板10へのフラックスFLの塗布量を調整することができる。すなわち、可動板10の位置決めのみで、基板10へのフラックスFLの塗布量を調整することができる。
【0028】
また、本実施形態によれば、基板100の塗布領域Crの形状に合わせたスポンジ部材50を用意すればよいため、簡易にかつ精度良く塗布領域CrへのフラックスFLの塗布が可能となる。
【0029】
また、本実施形態によれば、基板100の下面側からスポンジ部材50を押しつけてフラックスFLを塗布するため、基板100に形成されたスルーホールにフラックスFLが進入することがなく、基板100の品質を低下させることがない。
さらに、本実施形態によれば、基板100の複数の塗布領域に一括してフラックスFLを塗布することができるため、塗布作業効率が非常に向上する。
また、本実施形態によれば、基板100への塗布条件を常に一定にすることができるため、基板100毎の塗布品質のばらつきが発生しにくい。
【0030】
本発明は上述した実施形態に限定されない。
上述した実施形態では、本発明の母材として、プリント配線基板の場合を例に挙げて説明したが、はんだ付けの必要な対象物であればプリント配線基板以外の対象物にも本発明を適用することができる。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、装置コストおよびフラックスの消費量を低減でき、フラックスの塗布作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るフラックス塗布装置の概略構成を示す一部が破断した斜視図である。
【図2】図1のフラックス塗布装置の断面図である。
【図3】スポンジ部材の構造の一例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るフラックス塗布装置の動作の一例を説明するための図であって、スポンジ部材をフラックスに浸漬している状態を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るフラックス塗布装置の動作の一例を説明するための図であって、スポンジ部材を基板に押し当てている状態を示す図である。
【符号の説明】
1…フラックス塗布装置、2…基板保持板、10…可動板、11…ガイドロッド、20…アクチュエータ、21…ロッド、40…フラックス容器、50…スポンジ部材、2FL…フラックス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ付けする母材の所望の領域にフラックスを塗布するフラックス塗布装置であって、
母材を保持する母材保持手段と、
前記母材の下方に配置され、フラックスを収容するフラックス容器と、
フラックスを塗布すべき塗布領域の形状に合致した接触面をもち、フラックスを吸収保持するフラックス吸収保持部材と、
前記接触面が前記塗布領域に対向する対応する位置に前記フラックス吸収保持部材を保持し、前記フラックス吸収保持部材を下降させて前記フラックス容器内のフラックスに浸漬させ、このフラックス吸収保持部材を上昇させて前記母材に対して下方から前記接触面を押し当てることにより、前記母材の塗布領域にフラックスを塗布する移動機構と
を有するフラックス塗布装置。
【請求項2】
複数の前記フラックス吸収保持部材を有し、
前記移動機構は、複数の前記フラックス吸収保持部材を一括して昇降させる
請求項1に記載のフラックス塗布装置。
【請求項3】
はんだ付けする母材の所望の領域にフラックスを塗布するフラックス塗布方法であって、
フラックスを塗布すべき塗布領域の形状に合致した接触面をもつフラックス吸収保持部材を下降させ、母材の下方に配置されたフラックス容器内のフラックスに浸漬させてフラックスを吸収保持させ、
前記フラックス吸収保持部材を前記母材に向けて上昇させ、前記母材に対して下方から前記接触面を押し当てることにより、前記母材の塗布領域にフラックスを塗布する
フラックス塗布方法。
【請求項4】
複数の前記フラックス吸収保持部材を一括して昇降させて、フラックスの吸収および塗布を行う
請求項3に記載のフラックス塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2004−130318(P2004−130318A)
【公開日】平成16年4月30日(2004.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−294707(P2002−294707)
【出願日】平成14年10月8日(2002.10.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】