説明

フラッシングプロセスで製造した親油化処理微粒子酸化チタン分散組成物及びそれを配合した化粧料

【課題】
微粒子酸化チタン粉体粒子の性能を紫外線遮蔽、透明感、使用感触及び経時分散安定性を付与できる、ローコスト・ハイパフォーマンスな粉体分散組成物、及びそれを配合した化粧料を提供する。
【解決手段】
微粒子酸化チタンの含水湿潤ケーキまたはスラリーを特定の親油化表面処理剤で被覆し、化粧料で使用可能な油剤によりフラッシング処理をして得た親油化処理微粒子酸化チタン分散組成物であって、親油化処理微粒子酸化チタン含有量を50重量%から85重量%とした、化粧料で使用可能な油剤を含む親油化処理微粒子酸化チタン分散組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラッシングプロセスよって作製された親油化処理微粒子酸化チタン分散組成物と前記分散組成物を配合した化粧料に関する。さらに詳しくは、本発明の親油化処理微粒子酸化チタン分散組成物は、微粒子酸化チタンの含水湿潤ケーキまたはスラリーを親油化処理した後、化粧料で使用できる油剤でフラッシングすることにより分散組成物を得ることができ、各種油剤系に対して微粒子酸化チタン粒子の紫外線遮蔽効果と透明性を最大限に発揮できるハイパフォーマンス・ローコストな親油化処理微粒子酸化チタン分散組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(1)一般に化粧料製剤に使用される粉体は使用感や化粧効果、化粧持続性をより高めるために親油化処理して化粧料製剤に配合される。この親油化処理のもう一つの目的は化粧料製剤を製造するプロセスでの系への粉体の分散性や親和性を向上させる目的や経時での分散安定性や保存安定性を確保するためのでもある。粉体の親油化処理方法としては、シリコーン類、脂肪酸類、アシル化アミノ酸類等による表面処理が種々提案されている(特許文献1)。しかしながら、使用される粉体が微粒子酸化チタンの場合は、一次粒子径が小さいために非常に強固な凝集体を形成しており、一次粒子表面を均一に親油化表面処理することは難しい。また、化粧料で使用できるシリコーン系油剤、炭化水素系油剤、エステル系油剤、またそれらの混合油剤のどの油剤系に対しても高い分散性を持つような表面処理剤の種類については考慮されていないので、配合できる化粧料にも制限がある。
【0003】
(2)分散安定性が良好で皮膚に塗布したとき透明感を有する微粒子酸化亜鉛については以下の提案がされている。すなわち、該微粒子酸化亜鉛は、水中で微粒子酸化亜鉛粒子を生成後、アニオン活性剤を添加して生成粒子を親油性に置換したのち、有機溶媒を添加してフラッシングし該有機溶媒を乾燥除去して乾燥微粒子酸化亜鉛粉体を得るものである(特許文献2)。しかしながら、溶剤を留去する乾燥工程において、微粒子粉体の凝集は避けられず、作製された微粒子粉体を化粧料に使用するため溶媒に分散する場合、充分に満足できる分散性を得る事は難しい。
【0004】
(3)サンスクリーン製剤に配合される微粒子酸化チタンは、系への分散性と紫外線遮蔽効果を向上させるため、製剤で使用する油剤中に親油化処理された粉体をメディアミル等の分散機により分散させ配合している(特許文献3)。
【0005】
(4)親油化処理粉体を配合する乳化化粧料は、親油化処理粉体を予め油相部に配合し、界面活性剤を添加し水相部を加え乳化して得る方法が一般的である。親油化粉体の油相への分散性や親和性を高めるために、予め粉体をホモミキサーやメディアミル等の分散機を使用し油相成分と混合分散して組成物を得る製法も提案されている(特許文献4)。しかしながら、メディアミル等の分散機で分散しても、非常に小さく凝集力が強い微粒子酸化チタン粉体は充分には分散できず、またより微粒化するためには多くの時間とコストを有する。
【0006】
(5)親油化処理粉体を予め分散した組成物を油相に配合する場合、化粧料などの組成物に配合して混合する際のせん断力により表面処理部分が削り取られ、油相中での粉体の分散性が低下してしまう場合がある。この課題を解決する方法として、油相部に未疎水化粉体及び表面処理剤を配合分散し、粉体を疎水化処理した後、乳化剤と水相部を添加し乳化する工程が提案されている(特許文献5)。 しかしながら、微粒子酸化チタンの分散は充分ではなく、充分に分散した時に発揮できる紫外線遮蔽効果や透明感に比較して、まだまだ改良の余地があり満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001―72527号公報
【特許文献2】特許1859002号公報
【特許文献3】特開2006−1886号公報
【特許文献4】特開平09−208438号公報
【特許文献5】特許4054520号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は合成した微粒子酸化チタン粒子を凝集させることなく親油化処理し、化粧料に使用されるシリコーン系油剤、炭化水素系油剤、エステル系油剤、またそれらの混合油剤中において、優れた紫外線遮蔽効果、高透明感、使用感触、及び分散安定性を化粧料で充分に発揮させることが可能なハイパフォーマンスな親油化処理微粒子酸化チタンを分散させた親油化処理微粒子酸化チタン分散組成物を提供することにある。もう一方の視点において、本発明の製法により製造コストを大幅に低減することが可能なローコストな親油化処理微粒子酸化チタン分散組成物を提供する。また、これら分散組成物を配合した化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、微粒子酸化チタンの含水湿潤ケーキまたはスラリーを特定の親油化表面処理剤で被覆し、化粧料で使用可能な油剤によりフラッシング処理をして得た親油化処理微粒子酸化チタン分散組成物であって、親油化表面処理微粒子酸化チタン含有量を50重量%から85重量%とした、化粧料で使用可能な油剤を含む親油化処理微粒子酸化チタン分散組成物に関する。
【0010】
以下に、本発明の好ましい態様について記載するが、その任意の組み合わせも特に矛盾がない限り、本発明の好ましい態様である。
(1)微粒子酸化チタンの含水湿潤ケーキまたはスラリーに含まれる微粒子酸化チタンの電子顕微鏡で測定した一次粒子径が、1nm〜800nmである。
(2)親油化表面処理剤が(A)アシル化アミノ酸、脂肪酸(金属塩を含む)、水添レシチン、酸性エステル油、からなる群より選択される1種以上の化合物と、(B)反応性オルガノポリシロキサン、アルキルシラン、有機チタネートからなる群より選択される1種以上の化合物とを少なくとも含み、該表面処理剤の量は、(A)と(B)の処理剤量合計が、微粒子酸化チタン100重量%に対して5〜35重量%である。
(3)フラッシングに使用する油剤が、化粧料に使用できるシリコーン系油剤、炭化水素系油剤、エステル系油剤のうち少なくとも1種以上の油剤からなる。
本発明は、さらに上記のいずれかに記載の親油化処理微粒子酸化チタン分散組成物を配合した化粧料に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る親油化処理微粒子酸化チタン分散組成物は、親油化処理微粒子酸化チタンを50重量%〜85重量%含むが、微粒子酸化チタン粒子同士は凝集することがなく、優れた紫外線遮蔽効果、透明感、使用感触、及び経時分散安定性を化粧料製剤中で充分に発揮させることが可能となっている。また、本発明に係る親油化処理微粒子酸化チタン分散組成物を製造するコストを大幅に低減することが可能となる。これらの分散組成物を配合した化粧料は、優れた紫外線遮蔽効果、透明感、使用感触、及び分散安定性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらのものに限定されるものではない。
【0013】
(1)微粒子酸化チタンの含水湿潤ケーキまたはスラリー
微粒子酸化チタンの含水湿潤ケーキまたはスラリーとは、硫酸法又は塩素法で水中または低級アルコール溶媒中(水と低級アルコールの混合でも可)で合成して粒子生成する製法による微粒子酸化チタン粉体を、フィルタープレスや遠心分離等による脱水法により得られた含水湿潤ケーキのことを言い、またスラリーとは、その脱水前の状態のことを言い、一般的には微粒子酸化チタンメーカーの製造プロセス中間品に当たるものである。
【0014】
これら前記微粒子酸化チタン粒子の形状は、板状、球状、キュービック状、花びら状、バタフライ状、繭状、不定形でも繊維状でもよい。またその粒子径は1nm〜800nm程度の範囲のものが好ましく、化粧料に配合が可能であればよい。
【0015】
また前記微粒子酸化チタン粒子は、アルミニウム、シリカ、及びジルコニウムなどで、少なくとも1種の酸化物又は含水酸化物で被覆されていてもよい。
【0016】
(2)親油化表面処理剤
親油化表面処理剤としては、親水性の微粒子酸化チタン表面を親油化し、化粧料で使用する油剤への親和性を高め、分散性の向上、表面活性を抑制し、微粒子酸化チタン粒子同士は凝集することがなく、紫外線遮蔽効果、透明感、使用感触、及び経時分散安定性を化粧料製剤中で充分に発揮させることを可能とするとの観点から選択する。
【0017】
本発明で使用する親油化表面処理剤の好適な例としては、(A)アシル化アミノ酸、脂肪酸(金属塩を含む)、水添レシチン、酸性エステル油、からなる群より選択される1種以上の化合物と、(B)反応性オルガノポリシロキサン、アルキルシラン、有機チタネートからなる群より選択される1種以上の化合物とを少なくとも含み、この表面処理剤の量は、(A)と(B)の処理剤量合計が、微粒子酸化チタン重量に対して5〜35重量%であることが好ましい。表面処理剤量が5重量%以下の場合は、フラッングさせることが困難となる可能性があり、また分散組成物の粘度が高くなり、親油化表面処理微粒子酸化チタン分散組成物の含有量を高くする事ができない。また表面処理剤が35重量%以上の場合は、微粒子酸化チタン分散組成物中の酸化チタンの含有量が低く好ましくない。 また、表面処理剤を(A)と(B)を組み合わせることにより、フラッシングを簡便にさせることができ、化粧料で使用できる油剤のシリコーン系油剤、炭化水素系油剤、エステル系油剤、またその混合油剤に対して、どの油剤系に対しても高い分散性を持つ親油化表面処理微粒子酸化チタン分散組成物を得る事ができる。
【0018】
本発明に用いられるアシル化アミノ酸としては、炭素数12以上20以下である飽和脂肪酸とアスパラギン酸、グルタミン酸、アラニン、リジン、グリシン、サルコシン、プロリン、ヒドロキシプロリンより選ばれるアミノ酸のアシル化化合物又は小麦やえんどう豆、キビ等の植物由来のペプチドやシルクペプチド、動物由来のペプチド等の全加水分解物であり、アミノ酸のカルボキシル基は遊離体か、又はK、Na、Fe、Zn、Ca、Mg、Al、Zr、Ti等の塩がある。好ましくは、遊離体か、K、Naの水溶性塩が使用できる。水溶性塩でない場合はアルカリによりケン化して水溶性塩にして使用できる。
【0019】
具体的には、味の素社より市販されているアミソフトHS−21P、アミホープLL(ラウロイルリジン)等、川研ファインケミカル社より市販されているソイポンSLP、ソイポンSCA、アラノンAMP、フランスSEPPIC社より市販されているSEPILIFT DPHP等、日光ケミカル社より市販されているサルコシネートMN等、旭化成社より市販されているペリセア(Pellicer)アミノフォーマー、アミノサーファクタント、アミノコート等を挙げることができる。これらのアシル化アミノ酸は脂肪酸との組成物の形態でもよい。アシル化リポアミノ酸組成物としては、SEPPIC社より市販されているSEPIFEEL ONE(パルミトイルプロリン、パルミトイルサルコシン、パルミトイルグルタミン酸、パルミチン酸の4成分よりなる組成物)が挙げられる。
【0020】
本発明に用いられる脂肪酸としては、炭素数が12〜22までの直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和脂肪酸で、例えば、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、2−エチルヘキサン酸、イソトリデカン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、イソベヘン酸等の脂肪酸またはその塩で、例えば、KまたはNa、Fe、Zn、Ca、Mg、Al、Zr、Ti等の塩が挙げられる。
【0021】
本発明に用いられる水添レシチンとしては、卵黄、大豆、コーン、菜種等から抽出された天然のレシチン、及び合成レシチンを水素添加したもので、ヨウ素価が15以下の水添レシチンであり、リン酸基を有するグリセライドである。塩の形態にあるものとしては、Al、Mg、Ca、Zn、Zr、Ti等の水不溶性水添レシチン金属塩が好ましい。50℃以上の融点を有する水添レシチン(塩の形態にあるものを含む。)が特に好ましい。例えば、特開昭60−184571号公報、特開昭60−190705号公報、特公平4−58443号公報に記載の公知の化合物で、例えば、旭化成工業社の水添卵黄油No.5や日清オイリオグループ社の水素添加大豆リン脂質ベイシスLS−60HR等が挙げられる。
【0022】
本発明で用いられる酸性エステル油としては、炭素数1〜36の1種又は2種以上のアルコールと、炭素数1〜36の1種又は2種以上のカルボン酸とを反応させて得ることができる、総炭素数16以上のエステル化合物を含み、酸価15以上である化合物が好適である。特開2004−51945号公報に示される公知の化合物で具体的には、日清オイリオグループ社より市販されているサラコスMIS(セバシン酸イソステアリル)、サラコスMOD(アゼライン酸オクチドデカノール)、サラコス1A(アジピン酸オクチルドデカノール)、サラコスHD(ダイマー酸オクチルドデカノール)等が挙げられる。これら酸性エステル油のカルボン酸をKまたはNaの水溶性塩にしたものが好ましい。
【0023】
本発明に用いられる反応性オルガノポリシロキサンとしては、側鎖又は両末端若しくは片末端に官能基を有するリニア構造を有するオルガノポリシロキサンが選択でき、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0024】
(R2SiO)(R1SiO)(R1SiO)(SiR2) (1)
【0025】
上記式(1)においてR1は相互に独立していて、それぞれ炭素数1〜4の低級アルキル基又は水素原子を表す。複数存在するR2は全て同様に相互に独立していて、それぞれ水素原子、水酸基及び炭素数1〜4の低級アルコキシ基の何れかを、mとnは1以上の整数をそれぞれ表し、m+nは2〜10000の整数である。
【0026】
反応性オルガノポリシロキサンとして、具体的には、信越化学工業社より市販されているKF99、KF9901、X−24−9171やX−24−9221等が挙げられる。その他としては、トリメチルシロキシケイ酸、側鎖にジメチル基やアルキル基、反応性基を有するシリコーン、アクリルシリコーン、シリコーンアクリル等も使用できる。信越化学工業社より市販されているものとしてはKF−9908(トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)やKF−9909(トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン)、KP−541、KP−545、KP−575、KP−561、KP−574、KF―7312F、KF−7312J、KF−7312K、KF―9001等も使用できる。また、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン等の環状のメチルハイドロジェンシリコーンも使用可能である。
【0027】
本発明に用いられるアルキルシランとしては、RSiX4−n構造を基本骨格とするものが選択される。ここでRは直鎖状又は分岐状のアルキル基で、Xは水素、アルコキシ基、アミノ基、又はハロゲン原子である。アルキル鎖の長さとして、炭素数で1〜18であるものであってもよく、具体的にはメチルトリエトキシシランやオクチルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0028】
本発明に用いられる有機チタネートとしては、Ti(OR3)構造を基本骨格とするものが選択される。ここでR3は互いに独立していてアルキル基又は有機カルボニル基である。市販のものとしてはイソプロピルトリイソステアロイルチタネート(プレンアクトKR−TTS;味の素社)などが挙げられる。
【0029】
(3)フラッシングプロセス及びフラッシングに使用する油剤
フラッシングプロセスとは、分散組成物の製造する公知の方法の一つである。その方法として例えば、(a)タンクフラッシング法として乳化したワニス中に顔料スラリーを加え、早いスピードで攪拌してフラッシングさせる方法や、(b)ポットフラッシング法として、ポニーミキサー等に親油ワニスと含水湿潤ケーキを入れてフラッシングさせる方法、(c)ケミカルフラッシングとして、含水湿潤ケーキ中の水をイソプロピルアルコールで置換した後に、樹脂ワニスと混合してフラシングさせる方法など様々な方法が知られている(参考文献:PIGMENT
HANDBOOK VOLUMEIII 著者:TEMPLE C PATTON)。その中、本発明のフラッシングプロセスは、何れの方法を用いてもよい。
本発明で用いる化粧料で使用できる油剤としては、化粧料に使用可能な油剤であれは良く、大別するとシリコーン系油剤、炭化水素系油剤、エステル系油剤あるいはこれらの混合油剤である。具体的には、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロテトラシロキサン、メチルトリメチコン、カプリリルメチコン等のシリコーン類、流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、スクワレン、ワセリン、パラフィン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、オクタン酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリカプリル酸グリセリル、カプリル・カプリン酸グリセリル、2-エチルヘキサン酸グリセリル、C12−15アルキルベンゾエート、等のエステル類が挙げられる。その他としては、サフラワー油、大豆油、月見草油、ブドウ種子油、ローズヒップ油、ククイナッツ油、アルモンド油、ゴマ油、コムギ胚芽油、トウモロコシ油、綿実油、アボガド油、オリーブ油、ツバキ油、パーシック油、ヒマシ油、ラッカセイ油、ヘーゼルナッツ油、マカデミアナッツ油、メドフォーム油、カカオ脂、シア脂、木ロウ、ヤシ油、パーム油、パーム核油、牛脂、馬脂、ミンク油、乳脂、卵黄油、タートル油等の油脂類、ミツロウ、鯨ロウ、ラノリン、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ホホバ油等のロウ類、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、ウンデシレン酸、ヒドロキシステアリン酸、ラノリン脂肪酸等の脂肪酸、パーフルオロポリエーテルオイル、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル等のフッ素系油剤、油溶性紫外線吸収剤等が例示される。高級アルコールは乳化助剤能があるためフラッシング剤に適さない。
【0030】
(親油化表面処理微粒子酸化チタン含有量)
本発明に係る親油化処理微粒子酸化チタン分散組成物は、親油化表面処理粉体含有量が50重量%〜85%重量%である。親油化表面処理粉体含有量が50重量%以下の場合は、化粧料に分散組成物を多量配合しにくくなり、85%重量以上の場合は、親油化処理微粒子酸化チタンが凝集しやすく分散安定性に欠ける。本発明に係る親油化処理微粒子酸化チタン分散組成物、従来の分散組成物と比較して特に流動性に優れるので、親油化処理微粒子酸化チタン含有量を従来のものより高くすることができる。本発明の親油化処理微粒子酸化チタン分散組成物は、フラッシングし離液して水を排出した後、必要によりフラッシングした親水化処理微粒子酸化チタン分散組成物を減圧下で加熱混合して、残存する水分の除去や、フラッシング油剤の一部除去をすることによって、また必要によりさらに化粧品に使用可能な油剤を加えることによって、親油化表面処理粉体含有量を50重量%〜85%重量%とすることにより得られる。なお、フラッシングするための化粧品に使用可能な油剤と必要により加える化粧品に使用可能な油剤とは同一でも良く、また、特に不都合がなければ異なったものでも良い。
【0031】
(化粧料)
本発明の化粧料には、化粧料の種類および剤型によって異なるが、本発明の親油化処理微粒子酸化チタン分散組成物を化粧料全体の0.1〜90%配合できる。本発明で得られる親油化処理微粒子酸化チタン分散組成物を配合する化粧料としては、メークアップ化粧料としては、化粧下地、パウダーファンデーション、リキッドファンデーション、油性ファンデーション、スティックファンデーション、プレストパウダー、フェイスパウダー、白粉、口紅、口紅オーバーコート、リップグロス、コンシーラー、頬紅、アイシャドウ、アイブロウ、アイライナー、マスカラ、ネイルエナメル、乳化型ネイルエナメル、エナメルトップコート、エナメルベースコート等、スキンケア化粧料としてはエモリエントクリーム、コールドクリーム、美白クリーム、乳液、化粧水、美容液、パック、カーマインローション、液状洗顔料、洗顔フォーム、洗顔クリーム、洗顔パウダー、メイククレンジング、ボディグロス、日焼け止め又は日焼け用クリームやローション等、頭髪化粧料としては、ヘアーグロス、ヘアクリーム、ヘアーシャンプー、ヘアリンス、ヘアカラー、ヘアブラッシング剤等、制汗化粧料としてはクリームやローション、パウダー、スプレータイプのデオドラント製品等を挙げることができる。
【0032】
本発明の効果を損なわない範囲で、通常の化粧料等に用いられる顔料分散剤、水性成分、油剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、防腐剤、酸化防止剤、皮膜形成剤、保湿剤、増粘剤、染料、顔料、各種薬剤、香料等を適宜配合することができる。
【実施例】
【0033】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
(微粒子酸化チタン含水湿潤ケーキ及びスラリーの製造例)
四塩化チタン水溶液の加水分解により得られた含水酸化チタンを酸化チタン換算で100g/Lのスラリーとし、このスラリー2Lに48%水酸化ナトリウム水溶液1.4kgを加えて95℃で120分間加熱後、ろ過し、十分に洗浄してケーキを得た。次にその洗浄ケーキを水にて酸化チタン換算で100g/Lになるようにスラリー化し、そのスラリー2Lに35%塩酸水溶液760gを加えて95℃まで加熱し、90分間熟成し、ルチル型結晶の平均長径0.1μm、平均短径0.01μmの紡錘状微粒子酸化チタンスラリーを得た。次に得られた微粒子酸化チタンスラリーに対してAl2O3として8重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液を添加し、硫酸水溶液でpHを7.0にして水酸化Alを被覆し、微粒子酸化チタン5%のスラリーを得た。次に、そのスラリーをろ過し、十分に洗浄して、微粒子酸化チタン固形分36%含水湿潤ケーキを得た。
【0035】
(実施例1)タンクフラッシング
タンクに微粒子酸化チタン含水湿潤スラリー(水酸化Al被覆微粒子酸化チタン 固形分5%)を7.2kg仕込み、ディスパーで高速攪拌しながら80℃に加熱し、表面処理剤としてアシル化アミノ酸(味の素ヘルシーサプライ社製:HS−21P)を42.4g、オクチルトリエトキシシラン(東レ・ダウコーニング社製:Z−6341)を42.2g添加して60分間攪拌した後、1N−HClを38g加え、次にカプリリルメチコン(東レ・ダウコーニング社製:FZ−3196)を140g投入し、水を分離排出した。次に、ニーダにて60分間加熱減圧(60−100℃、700mmHg)した後、加熱残分(120℃で2時間乾燥後の残分)が50%になるようにカプリリルメチコンを投入して、更に10分間攪拌混合し、加熱残分が50%の親油化処理微粒子酸化チタン分散組成物を得た。
【0036】
(実施例2)ポットフラッシング
トリミックス(井上製作所社製)に微粒子酸化チタン含水湿潤ケーキ(水酸化Al被覆微粒子酸化チタン 固形分36%)を1kg仕込み、80℃まで加熱し、表面処理剤としてミリスチン酸カリウム(日油社製:MK−1)を45gと反応性オルガノポリシロキサン(信越化学工業社製:X−24−9171)を45g添加して60分間混合した後、シクロメチコン(信越化学工業社製:KF−995)を200g投入し、離水してきた水を排出後に60分間加熱減圧(60−100℃、700mmHg)した後、冷却を行い10分間攪拌混合後に、加熱残分(120℃で2時間乾燥後の残分)が65%になるようにシクロメチコンを投入して、更に10分間攪拌混合し、65%の親油化処理微粒子酸化チタン分散組成物を得た。
【0037】
(実施例3)ポットフラッシング
ニーダに微粒子酸化チタン含水湿潤ケーキ(水酸化Al被覆微粒子酸化チタン 固形分36%)を1.0kg仕込み、攪拌混合しながら80℃まで加熱し、表面処理剤としてミリスチン酸カリウム(日油社製:MK−1)を45g、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート(;味の素社製:プレンアクトKR−TTS)22.5gを添加して60分間攪拌した後、1N−HClを38g加え、次にカプリリルメチコン(東レ・ダウコーニング社製:FZ−3196)を200g投入し、分離してきた水を排出した。次に、イオン交換水600g投入して10分間攪拌混合し、水を排出後に60分間加熱減圧(60−100℃、700mmHg)した後、冷却を行い10分間攪拌混合後に、加熱残分(120℃で2時間乾燥後の残分)が50%になるようにシクロメチコンを投入して、更に10分間攪拌混合し、50%の親油化処理微粒子酸化チタン分散組成物を得た。
【0038】
(比較例1)
ヘンシェルミキサーに微粒子酸化チタン粉体(石原産業社製;水酸化Al被覆微粒子酸化チタンTTO−S−3)を2kg入れ、反応性オルガノポリシロキサンA(信越化学工業社製:X−24−9171)111g及び反応性オルガノポリシロキサンB(信越化学工業社製:KF−99P)111gを添加して20分間攪拌混合した後、熱風乾燥機にて130℃で9時間乾燥して粉砕し、親油化表面処理粉体を得た。次にディスパーで、この親油化表面処理粉体500gとシクロメチコン500gを攪拌混合して、ビーズミル(WAB社製:DYNO−MILL)にて15分間循環分散して加熱残分(120℃で3時間乾燥後の残分)が50%の親油化処理微粒子酸化チタン分散組成物を得た。
【0039】
(試験方法)
(1)分散組成物の分散性評価方法
表面処理微粒子酸化チタン分散組成物の粉体濃度を加熱残分(120℃で3時間乾燥後の残分)が20%になるようにシクロメチコン(信越化学工業社:KF995)で調整し、バーコータ#3にてTAC透明フィルムに塗布し、乾燥後、SPFアナライザー(オプトメトリック社製SPF−290)にてin―vitroSPF値、分光光度計(島津製作所製 UV−3150)にて560nm透過率を測定した。微粒子酸化チタンの分散組成物の分散性が高い程、紫外線遮蔽効果であるin―vitroSPF値及び塗布時の透明感である560nm透過率は高い数値を示す。
【0040】
【表1】

【0041】
表1より、本発明の親油化処理微粒子酸化チタン分散組成物は、比較品よりも、in−viroSPF値及び560nm透過率が高く、分散性に極めて優れている。以上より、本発明品は、高い紫外線遮蔽効果と塗布時の透明感(白くならない)を併せ持った親油化処理微粒子酸化チタン分散組成物であった。
【0042】
(2)化粧料で使用可能な油剤に対する分散安定性評価試験
油剤200gに親油化表面処理微粒子酸化チタン分散組成物100gを混合し、ホモミキサー(ロボミックス)にて3000rpmで3分間攪拌した。その後、室温下で1ヶ月間静置後の上澄み(透明層)容積を目視にて判定した。
判定基準: 上澄み容積が5%以下◎、5−10%○、
10−20%△、20%以上×
【0043】
【表2】

【0044】
表2より、本発明の親油化処理微粒子酸化チタン分散組成物は、比較品よりも、化粧料で使用できるシリコーン系油剤、炭化水素系油剤、エステル系油剤のどの油剤に対しても高い分散安定性を持つ親油化処理微粒子酸化チタン分散組成物であった。このことより、本発明品は、様々な油性成分が配合される化粧料への配合に対して、高い分散安定性を保ち、高い紫外線遮蔽効果と透明感を期待できる。
【0045】
製造例1:乳化型サンスクリーンクリームの製造
表3に示す組成の乳化型サンスクリーンクリームを下記の方法により製造した。
【0046】
【表3】

【0047】
(製法)
成分(1)〜(8)の油相成分を75℃で溶解した後、成分(9)を添加して攪拌した。成分(10)〜(14)の水相成分を75℃で溶解し、均一化したものを油相成分に添加しホモミキサーで乳化した。最後に成分(15)を加え冷却しサンスクリーンクリームを製造した。
【0048】
本発明の組成物を配合した化粧料のIn-vitro SPF値は20で、従来品を配合したものはIn-vitro SPF値は12であり、本発明品は高い紫外線遮蔽効果を発揮した。また、本発明の組成物を配合した化粧料は、特に透明感に優れ、使用感、化粧持続性、化粧品の安定性についても優れていた。
【0049】
製造例2:乳化型サンスクリーンクリームの製造
表4示す組成の乳化型サンスクリーンクリームを下記の方法により製造した。
【0050】
【表4】

【0051】
成分(1)〜(9)の油相成分を75℃で溶解した。成分(10)〜(14)の水相成分を75℃で溶解し、均一化したものを油相成分に添加しホモミキサーで乳化して、これに成分(15)を加え冷却しサンスクリーンクリームを製造した。
【0052】
本発明の組成物を配合した化粧料のIn-vitro SPF値は45で、従来品は30で、高い紫外線遮蔽効果があった。また、本発明の組成物を配合した化粧料は、透明性、使用感、持続性、化粧料の安定性にも優れていた。
【0053】
製造例3:乳化型O/Wサンスクリーンクリームの製造
表5示す組成の乳化型サンスクリーンクリームを下記の方法により製造した。
【0054】
【表5】

【0055】
成分(1)と(2)の油相成分を均一になるまで攪拌する。成分(3)〜(9)の水相成分を80℃で溶解し、30分間以上攪拌後、60℃まで冷却してから、油成分を徐々に添加してホモミキサーで乳化し、これに(10)を加えてゆっくりと攪拌しながら冷却してサンスクリーンクリームを製造した。
【0056】
本発明の組成物を配合した化粧料のin-vitro SPF値は10で、比較品はin-vitro SPF値は5で高い紫外線遮蔽効果があった。また、本発明品を配合した化粧料は、肌への塗布後の透明感に優れ、使用感、化粧持続性、化粧料の安定性にも優れていた。
【0057】
製造例4:乳化型W/Oリッキトファンデーションの製造
表6示す組成の乳化型サンスクリーンクリームを下記の方法により製造した。
【0058】
【表6】

【0059】
製法:
成分(9)〜(13)を予め混合し粉砕した。70℃にて成分(1)〜(8)を均一に溶解混合した油相に予め粉砕した成分(9)〜(13)の混合物を加えホモディスパーで均一に分散した。成分(14)〜(19)を70℃で均一に混合溶解した水相を前記油相に徐添し、ホモミキサーで均一分散後、冷却し成分(17)を加え乳化粒子を整え乳化型W/Oリキッドファンデーションを製造した。
【0060】
本発明の組成物を配合した化粧料のin-vitro SPF値は45で、比較品はin-vitro SPF値は30で高い紫外線遮蔽効果があった。また、本発明品を配合した化粧料は、使用感、化粧持続性、化粧料の安定性にも優れていた。
【0061】
製造例5:2WAYパウダーファンデーションの製造
表7示す組成の2WAYパウダーファンデーションを下記の方法により製造した。
【0062】
【表7】

【0063】
(製法)
成分(1)〜(6)を混合し粉砕機を通して粉砕した。これを高速ブレンダーに移し、成分(7)〜(11)を加熱混合し均一にしたものを加えて更に混合し均一にした。これを粉砕機に通し、フルイをかけ粒度を揃えた後、アルミ皿に表面プレス圧10MPaで圧縮成形して2WAYパウダーファンデーションを製造した。
【0064】
本発明の組成物を配合した化粧料のin-vitro SPF値は18で、比較品はin-vitro SPF値は10であり、本発明品は高い紫外線遮蔽効果があった。また、本発明品を配合した化粧料は、使用感、化粧持続性、化粧料の安定性にも優れていた。
【0065】
製造例6:湿式成型パウダーファンデーションの製造
表8示す組成の2WAYパウダーファンデーションを下記の方法により製造した。
【0066】
【表8】

【0067】
(製法)
成分(7)と(8)を75℃に加熱し、均一に溶解する(成分Aとする)。成分(1)〜(6)をミキサーで混合してアトマイザー粉砕後、ミキサーで攪拌しながら成分Aを添加し均一分散し、100重量部に対して、イソドデカン100重量部を添加し、均一混合してスラリー状とする。そのスラリーを、アルミ皿に充填し、表面に吸い取り紙を置き加圧してイソドデカンの一部を除去した後、50℃の恒温槽に24時間放置し、イソドデカンを完全に除去して、湿式成型パウダーファンデーションを製造した。
【0068】
本発明の組成物を配合した化粧料のin-vitro SPF値は25で、比較品はin-vitro SPF値は19であり、本発明品は高い紫外線遮蔽効果があった。また、本発明品を配合した化粧料は、使用感、化粧持続性、化粧料の安定性にも優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子酸化チタンの含水湿潤ケーキまたはスラリーを特定の親油化表面処理剤で被覆し、化粧料で使用可能な油剤によりフラッシング処理をして得た親油化処理微粒子酸化チタン分散組成物であって、親油化処理微粒子酸化チタン含有量を50重量%から85重量%とした、化粧料で使用可能な油剤を含む親油化処理微粒子酸化チタン分散組成物。
【請求項2】
微粒子酸化チタンの含水湿潤ケーキまたはスラリーに含まれる微粒子酸化チタンの電子顕微鏡で測定した一次粒子径が、1nm〜800nmである請求項1に記載の製法からなる粉体分散組成物。
【請求項3】
親油化表面処理剤が(A)アシル化アミノ酸、脂肪酸(金属塩を含む)、水添レシチン、酸性エステル油、からなる群より選択される1種以上の化合物と、(B)反応性オルガノポリシロキサン、アルキルシラン、有機チタネートからなる群より選択される1種以上の化合物とを少なくとも含み、該表面処理剤の量は、(A)と(B)の処理剤量の合計が、微粒子酸化チタン重量100重量%に対して5〜35重量%である請求項1または2に記載の粉体分散組成物。
【請求項4】
フラッシングに使用する油剤が化粧料に使用できるシリコーン系油剤、炭化水素系油剤、エステル系油剤のうち少なくとも1種以上である請求項1〜3の何れか一項に記載の粉体分散組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の粉体分散組成物を配合した化粧料。

【公開番号】特開2011−93826(P2011−93826A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247458(P2009−247458)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(391024700)三好化成株式会社 (17)
【Fターム(参考)】