説明

フラットカードまたはローラカードのローラおよび/またはシリンダ用の鋸歯全鋼針布

【課題】耐用年数にわたって高いレベルの機能性を維持する鋸歯全鋼針布を提供する。
【解決手段】フラットカードまたはローラカードのローラおよび/またはシリンダ用の鋸歯全鋼針布は、細長い脚部とそれに隣接するブレードとを有し、ブレードには、歯背部と2つの側面を切断することによって、歯前部を有する歯が形成されており、互いに順に配置された2つの歯の歯背部と歯前部との間に凹部が設けられ、歯は第1の部分51と第2の部分51からなり、歯先端の所に位置する第1の部分51が正の、または少なくとも垂直な作用角α1を有し、歯先端と、第1の部分51と第2の部分51との間の移行領域との間の部分が技術的有効領域を形成している。歯前部の第1の部分51は針布1の移動方向に凸になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットカードまたはローラカードのローラおよび/またはシリンダ用の鋸歯全鋼針布であって、細長い脚部領域(脚部)とそれに隣接する歯領域(ブレード)とを有し、歯領域(ブレード)には、歯背部と2つの側面を切断することによって、歯前部を有する歯が形成されており、互いに順に配置された2つの歯の歯背部と歯前部との間に凹部が設けられ、歯は少なくとも2つの部分からなり、歯先端の所に位置する第1の部分が正の、または少なくとも垂直な作用角(正面角)を有し、歯先端と、第1の部分と第2の部分との間の移行領域との間の部分が技術的有効領域を形成している鋸歯全鋼針布に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットカードまたはローラカードのシリンダ針布は製造工程によって磨耗していく。元々は鋭い先端は丸められていき、歯の前側の部分は摩損される。歯前部の磨耗は、頂部に向かい、歯先端に向かう方向にいくほど激しくなり、その結果、垂直方向に対する歯の前側の角度(前部角)は継続的に小さくなっていく。針布を鋭くし直すことによって針布の元々の機能性を回復させることが試みられている。その結果は、良くても、針布の先端が元通り鋭くなるだけである。前部の角度の低下、および丸められた歯側面はそのままとされ、それによって、機能性が継続的に損なわれていき、その結果、製造される繊維材料の品質が低下する。
公知の針布(特許文献1)の場合、歯前部の第1の領域は直線の形状になっている。鋭くし直した後、歯は、機能性の大幅な低下を示す。
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1657328号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、既述の不利を回避し、特に、耐用年数にわたって高いレベルの機能性を維持する、冒頭に記載する種類の鋸歯全鋼針布を提供するという課題に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
既述の課題は、請求項1の特徴とする構成によって解決される。
【0006】
歯前部の第1の部分が、針布の移動方向に凸またはほぼ凸なので、磨耗によって引き起こされる前部角の低下が低減され、または同一に保たれ、または拡大されさえする。その結果、鋭くし直されていない丸まった歯側面、および磨耗によって引き起こされる前部角αの低下によって生じさせられる機能性の低下を軽減し、または埋め合わせることができる。したがって、製造される製品の品質が変動させられるのが抑制される。
【0007】
それは、シリンダおよびローラカード針布で普通である、歯を鋭くし直すことの結果として起こる。その措置では、歯先端は、鋭い作用縁が先端の所に元通り形成されるまで、頂部から研磨される。針布が研磨されると常に生じる高さの低下によって、歯前部の、結果として生じる歯先端は、常に少し下方に移動させられる。本発明の場合、歯の特別な形状のため、原理的に、前部角の増加という結果になる。したがって、シリンダおよびローラカード針布で通常磨耗によって引き起こされる正面角の低下が軽減され、または発生しない。
【0008】
請求項2から9は本発明の有利な発展態様を含んでいる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面に示す例示的な実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。
【0010】
図1a,1bは、本発明による鋸歯ワイヤ1を示す側面図と断面図であり、鋸歯ワイヤ1は、一体になった細長い脚領域(脚部2)と、それに隣接するブレード領域(ブレード3)とからなっている。歯背部6と2つの側面7a,7b(図1b参照)を切断することによってブレード3に、歯前部5を有する歯4が形成されている。互いに順に配置された2つの歯4の歯背部6と歯正面5の間には、凹部8がそれぞれ設けられている。歯4、すなわち歯正面5は2つの部分からなっており、歯先端9の所に位置する第1の部分51は正の作用角αを有している。作用角α(前部角)は、凸に湾曲した第1の部分51の歯先端9の所での接線と、ワイヤの底(歯4の脚部2の下面)に対して垂直な軸線との間の角度である。歯先端9と、歯正面5(歯前部)の第1の部分51と第2の部分52との間の移行領域との間の部分は技術的有効領域を形成している。歯前部5の第1の部分51は、針布1の移動方向に凸に湾曲している。歯前部5の第2の部分52は凹に湾曲している。
【0011】
以下は図1bに示されている。
【表1】

【0012】
6はブレードの高さを示しており、差h1−h2から得られる。b4は、凹部8の切り込みの最も奥の点でのブレードの幅を示している。
【0013】
図2aは、新しい状態の、凸状に湾曲した第1の部分51と第2の部分52の一部を有する、歯前部5の部分図である。
【0014】
フラットカードまたはローラカードの針布1は、製造工程によってある程度の磨耗を受ける。元々は鋭い先端9(図1a)は丸められていき、歯4の側面7a,7bは丸められていき、歯5の前側の部分は継続的に摩損される。歯前部5の磨耗は、頂部に向かい、歯先端9の方向にいくほど激しくなり、その結果、前部の角度αは、針布1の全耐用年数にわたって継続的に小さくなっていく。
【0015】
本発明による針布1を鋭くし直すことによって、針布1の元々の機能性が回復する。図2bでは、図2aによる元々の外形が鎖線によって示されており、研ぎ直された針布1の外形が実線によって示されている。図2aでの作用角α1は、図2bでの作用角α2よりも小さい。
【0016】
図2aにおいて、Rは第1の部分51の曲率半径を示している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1a】本発明による鋸歯全鋼針布の模式的な側面図である。
【図1b】本発明による鋸歯全鋼針布の模式的な断面図である。
【図2a】新しい状態の、凸に湾曲した第1の部分と第2の部分の一部を示す、歯前部の部分図である。
【図2b】鋭くし直した後の、凸に湾曲した第1の部分と第2の部分の一部を示す、図2aに対応する歯の部分図である。
【符号の説明】
【0018】
1 針布
4 歯
5 歯前部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラットカードまたはローラカードのローラおよびシリンダの少なくとも一方用の鋸歯全鋼の針布であって、細長い脚部領域(脚部)と該脚部領域(脚部)に隣接する歯領域(ブレード)とを有し、該歯領域(ブレード)には、歯背部と2つの側面を切断することによって、歯前部を有する歯が形成されており、互いに順に配置された2つの前記歯の前記歯背部と前記歯前部との間に凹部が設けられ、前記歯は少なくとも2つの部分からなり、歯先端の所に位置する第1の部分が正の、または少なくとも垂直な作用角(正面角)を有し、歯先端と、前記第1の部分と第2の部分との間の移行領域との間の部分が技術的有効領域を形成している針布において、
前記歯前部(5)の前記第1の部分(51)は前記針布(1)の移動方向(A)に凸であり、またはほぼ凸であることを特徴とする針布。
【請求項2】
前記歯前部の前記第2の部分は、前記針布の移動方向(A)に凹に、またはほぼ凹に湾曲していることを特徴とする、請求項1に記載の鋸歯全鋼の針布。
【請求項3】
前記第1の部分は弓形である、請求項1または2に記載の鋸歯全鋼の針布。
【請求項4】
前記第1の部分は前記第2の部分へと次第に移行している、請求項1から3のいずれか1項に記載の鋸歯全鋼の針布。
【請求項5】
磨耗によって引き起こされる前記作用角(前部角)の低下が低減される、請求項1から4のいずれか1項に記載の鋸歯全鋼の針布。
【請求項6】
磨耗によって引き起こされる前記作用角(前部角)の低下が同一に保たれる、請求項1から5のいずれか1項に記載の鋸歯全鋼の針布。
【請求項7】
磨耗によって引き起こされる前記作用角(前部角)の低下が拡大される、請求項1から6のいずれか1項に記載の鋸歯全鋼の針布。
【請求項8】
前記作用角(前部角)の低下、拡大、または保持が、前記針布を鋭くし直した時に有効になる、請求項1から7のいずれか1項に記載の鋸歯全鋼の針布。
【請求項9】
ローラまたはシリンダ上に取り付けられた鋸歯針布が、請求項1から8のいずれか1項にしたがって構成されていることを特徴とするフラットカードまたはローラカード。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【公開番号】特開2009−150040(P2009−150040A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323204(P2008−323204)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(590002323)ツリュツラー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (85)
【Fターム(参考)】