説明

フラットガスケット

少なくとも1つの層を含み該少なくとも1つの層が少なくとも1つの貫通孔を備えるフラットガスケット、特にシリンダヘッドガスケットまたはエグゾーストフランジガスケットであって、貫通孔は、環状の矩形断面線材として構成され弾性的に変形可能な少なくとも1つの矩形断面部材を収容しており、矩形断面部材は半径方向において互いに異なる材料厚さを有するとともに、少なくとも1つの支持体と有効に接続されているフラットガスケット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフラットガスケットに関し、特にシリンダヘッドガスケットまたはエグゾーストフランジガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の層で構成されるシリンダヘッドガスケットにおいて、適切な接合方法(たとえばクリンチ、溶接、リベット止め)によって、異なる層を相互に接合することが知られている。外側または内側に追加で設けられるリング、層、または型押しによって形成されるいわゆるストッパ部材を用いて、燃焼室縁部の、フラットガスケットの他の面領域に対する必要な高低差が調整される。
【0003】
欧州特許出願公開第0538628A2号公報により、シリンダヘッドと、エンジンブロックと、シリンダライナとを含む内燃機関のためのシール構造が公知である。シリンダライナはエンジンブロックの孔に挿入されてこれに支持されるとともに、中空の円筒状部分と、円筒状部分から半径方向外側に向かって延びる環状のシールカラーと、ピストンボアと、実質的にシリンダヘッドのほうを向いているカラーシール面と、を有している。さらにこのシール構造は、ピストンボアから燃焼ガスが外に漏れるのを防ぐために、カラーシール面とこれに対応するシリンダヘッドシール面とに係合するシール手段を含んでいる。両方のシール面のうち少なくとも一方のシール面は円錐台状に構成されており、半径方向内側の周回領域から、半径方向外側の周回領域へと連続的に延びている。半径方向内側の領域は半径方向外側の領域よりも、他方のシール面に対して間隔があけられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、シール部材としてだけでなく、押圧制限部材またはストッパ部材としても機能することができる代替構成のシール部材が用いられる、フラットガスケットのための新規なシールコンセプトを提供することにある。
【0005】
さらに別の目的は、通常はねじ力によって引き起こされるシールシステム内部における力の分布を、的確に調整できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、少なくとも1つの層を含み該少なくとも1つの層が少なくとも1つの貫通孔を備えるフラットガスケット、特にシリンダヘッドガスケットまたはエグゾーストフランジガスケットであって、貫通孔は、環状の矩形断面線材として構成され弾性的に変形可能な少なくとも1つの矩形断面部材を収容しており、矩形断面部材は半径方向において互いに異なる材料厚さを有するとともに、少なくとも1つの支持体と有効に接続されているフラットガスケットによって達成される。
【0007】
本発明の主題の好ましい他の態様は、従属請求項に記載されている。
【0008】
支持体は、少なくとも1つのスペーサディスクとして構成することができる。
【0009】
あるいは支持体は、間隔をおく2つのスペーサディスクからなる縁部として、あるいは実質的にU字型の断面を含み矩形断面部材を取り囲む縁部として構成することが可能である。
【0010】
それぞれの支持体の層側に設けられた端部は、その層側の端部領域で、それぞれの層と接合されていてよい。その場合、従来式の摩擦接合、嵌合接合(formschluessig)、または材料的な接合技術、たとえばクリンチ、溶接、またはリベット止めなどが適している。
【0011】
本発明のさらに別の概念によると、支持体としてスペーサディスクを使用する場合、スペーサディスクは、支持体と層とが1つの水平面に設けられるように、層に対して相対的に配置することができる。この場合、層と支持体を共通の支持体の上に載置させることができ、必要に応じて、層及び/または支持体がたとえば突合せ溶接によって支持体と接合される。
【0012】
本発明のさらに別の概念によると、層は、使用される支持体の少なくとも1つの脚部を少なくとも部分的に収容する段差領域、たとえば型押しされた領域を、矩形断面部材側に備えることができる。支持体の材料厚さは、少なくとも1つの段差領域の段深さよりも大きくすることができる。
【0013】
あるいは同様に、少なくとも1つの支持体の脚部の自由端を、材料厚さに関して、当該脚部が層の平面内を延びるように構成することも考えられる。矩形断面部材側では、必要に応じて、少なくとも1つのハーフビードを支持体に一体成形することができる。
【0014】
提案される他の構造的な方策によって、シールシステムの内部で最適な力分布を調整することができる。構造に関する実施形態から分かるように、この最適な力分布は通常、燃焼室ガスケットと媒体ガスケット(Mediendichtung)との間の高低差によって実現される。媒体ガスケットと燃焼室ガスケットが同じ高さを有していれば(これに加わる前提条件として、使用するガスケットがいずれも同じ強度と剛性を有していれば)、負荷の分布も同じであると考えることができる。媒体ガスケットと燃焼室ガスケットの高さが相違していると、その割合に応じて、高い負荷がガスケットの要素へ導入される。製造公差があるために、両方のシール部材が等しい高さを有しているケースは統計的には偶然である。しかし、シール機能を常に確保するために、燃焼室ガスケットがねじ力を高い比率で、たとえばねじ力の60%を担えるようにするために、一般的には燃焼室ガスケットのいわゆる突出部が設けられる。このことは、燃焼室ガスケットが媒体ガスケットよりも若干高く構成されていなくてはならないことを意味している。本発明の主題の代替実施態様は、そのために好適である。
【0015】
本発明の対象は図面に図示されており、以下に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】縁部を備える矩形断面部材を示す図である。
【図2】溶接された縁部を備える矩形断面部材を示す図である。
【図3】スペーサディスクを備える矩形断面部材を示す図である。
【図4】接合されたスペーサディスクを備える矩形断面部材を示す図である。
【図5】図1から図4の矩形断面部材を予備組付けされた状態で示す図である。
【図6】図1から図4の矩形断面部材を全圧縮の状態で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、少なくとも1つの貫通孔2を有する、詳しくは図示しないシリンダヘッドガスケットの、概略的にのみ図示された層1を示している。層1はあるいは、エグゾーストフランジガスケットの一部であってもよい。貫通孔2の内部には、ほぼバナナ形の幾何学形状を有する、矩形断面線材(Profildraht)として構成された矩形断面部材(Profilkoerper)3が位置している。矩形断面線材3の中央領域は材料断面積が最大となっている(中心領域)。これに対して端部領域4,5は、いわゆる湾曲領域を形成しており、丸められた形状で存在している。矩形断面線材3は、ほぼU字型断面の縁部6によって包囲されている。本実施形態では層1は金属層として構成されており、貫通孔2の領域に、型押しによって形成された段差領域7,8を備えている。縁部6の脚部の自由端9,10はこの段差領域7,8で終端している。
【0018】
概略的にのみ図示されているように、層1はビード、特にハーフビード11を備えている。すでに説明したとおり、本発明の主題によって、ねじが締め付けられたときに定められた力の分布が生じる。この目的のために、脚部の自由端9,10における縁部6の材料厚さは、段差領域7,8の段深さよりも大きくなっており、それによって、層1の表面1’からある程度突出する部分が生じている。層1の段差領域7,8とともに、縁部6の自由端9,10の厚みによって、燃焼ガスケットと媒体ガスケットとの間の高低差が調整される。必要な場合、縁部6の自由端9,10を適切な接合方法によって層1と接合することができる。ただし、これは機能上必要なわけではない。
【0019】
図2は、図1の矩形断面部材3を示している。図1とは異なり、ここでは閉じた縁部は設けられておらず、代わりに2つのスペーサディスク12,13が設けられている。矩形断面部材3はこれらの間に位置している。各スペーサディスク12,13はビード領域14,15を備えており、各スペーサディスク12,13のそれぞれの自由端16,17は、たとえば溶接線18によって、層1の段差領域7,8と接合されている。
【0020】
さらに、図1,2に示す接合の形式は、矩形断面部材3を必ずしも環状体をなすように接合しなくてもよいという可能性を提供する。すなわちこの場合、ピストンリングと同様に、場合によっては両方の端部が相互に固定的に接合されることなく互いにゆるく突き合わされた環状体を使用することができる。
【0021】
図3は、貫通孔2及びその中に挿入された矩形断面部材3とともに、層1を示している。本実施形態では、下側のスペーサディスク13が1つ設けられているだけである。スペーサディスク13の材料厚さと段差8の段深さは同じであり、それによって、層1とスペーサディスク13は同一の水平面に配置されている。さらに、層1の部分とスペーサディスク13は両方とも共通の支持体19(防護層)に載置されている。防護層19は、本例では、適切な接合方法(点溶接20)によって層1と接合されている。同様に、スペーサディスク13も点溶接21によって防護層19と接合されている。
【0022】
図4は図3と同じように見えるが、例外は、防護層が設けられておらず、スペーサディスク13だけが層1の水平面に設けられていることである。
【0023】
矩形断面部材として構成された矩形断面線材3は、層1と部分的または全面的に接合することができ、あるいは貫通孔2の内部に、半径方向に動けるように設けることができる。層1自体は金属で構成することができるが、そうでなくてもよい。図1から図4に示す実施形態では、矩形断面部材3はエンジンブロックもしくはシリンダヘッドまたはその他のフランジ面と直接接触しておらず、それによって、各フランジもしくは各エンジンブロックまたはシリンダブロックの表面への矩形断面部材3のいわゆる埋め込み(Eingrabungen)が回避されるという利点が得られる。
【0024】
図5,6は、図1から図4に示す矩形断面部材3を詳細に示しており、一方は予備組付けされた状態(図5)、他方は全圧縮の状態(図6)で示している。
【0025】
湾曲領域を形成する弾性作用のある端部4,5の間に、いわゆる中心領域3’が形成されている。図5では、シリンダヘッド22及びエンジンブロック23だけが示されている。たとえばねじを締めることによって力Fが印加されると、各湾曲領域4,5は半径方向に変形するのに対して、全圧縮(図6)の場合には中心領域3’がシール面22’,23’の間に挟み込まれ、それによってストッパ領域が形成される。これに応じて一種の3点支持部4,5,3’が形成され、湾曲領域4,5は弾性変形可能なままに保たれ、したがって、動的なシール部の振動にも追随することができる。
【0026】
図示していないが、各支持体6,12,13を、円周方向において互いに異なる厚みもしくは剛性で構成するという選択肢は権利保護範囲に含まれる。この方策によって的確なトポグラフィを調整することができる。たとえばねじの領域で支持体6,12,13の厚みを小さくすることは、貫通孔2の円周全体にわたって見たときの負荷の均等化につながることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの層(1)を含み該少なくとも1つの層(1)が少なくとも1つの貫通孔(2)を備えるフラットガスケット、特にシリンダヘッドガスケットまたはエグゾーストフランジガスケットであって、前記貫通孔(2)は、環状の矩形断面線材として構成され弾性的に変形可能な少なくとも1つの矩形断面部材(3)を収容しており、該矩形断面部材は半径方向において互いに異なる材料厚さを有するとともに、少なくとも1つの支持体(6,12,13)と有効に接続されているフラットガスケット。
【請求項2】
前記支持体(6,12,13)は前記層(1)と接合されていることを特徴とする、請求項1に記載のフラットガスケット。
【請求項3】
前記支持体(12,13)はスペーサディスクとして構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のフラットガスケット。
【請求項4】
前記矩形断面部材(3)は、その両面の突き出た面の領域が、少なくとも1つの支持体(12,13)によって少なくとも部分的に囲まれていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のフラットガスケット。
【請求項5】
前記支持体(6)は前記矩形断面部材(3)を取り囲む縁部として構成されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のフラットガスケット。
【請求項6】
前記層(1)は貫通孔側に、前記層(1)の厚みを低減させる少なくとも1つの段差領域(7,8)を備えており、前記支持体(6,12,13)の半径方向外側の脚部端部(9,10,16,17)は該段差領域で終端していることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載のフラットガスケット。
【請求項7】
前記支持体(13)は前記層(1)とともに共通の支持面を形成していることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載のフラットガスケット。
【請求項8】
前記支持体(13)と前記層(1)は共通の支持体(19)に載置されており、必要に応じ、該支持体と接合されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載のフラットガスケット。
【請求項9】
前記支持体(6,12,13)の材料厚さは前記層(1)の少なくとも1つの段差領域(7,8)の段深さよりも大きいことを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載のフラットガスケット。
【請求項10】
前記支持体(12,13)は前記矩形断面部材側に、少なくとも1つのハーフビード(14,15)を備えていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載のフラットガスケット。
【請求項11】
前記矩形断面部材(3)は前記層(1)と接合されていることを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載のフラットガスケット。
【請求項12】
前記矩形断面部材(3)は、前記層(1)の前記貫通孔(2)の内部に、半径方向に動くことができるように設けられていることを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載のフラットガスケット。
【請求項13】
前記矩形断面部材(3)は開いた環状体または閉じた環状体として構成されていることを特徴とする、請求項1から12のいずれか1項に記載のフラットガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−525226(P2011−525226A)
【公表日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513867(P2011−513867)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【国際出願番号】PCT/DE2009/000841
【国際公開番号】WO2009/152814
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(595157503)フェデラル−モーグル シーリング システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (21)
【氏名又は名称原語表記】Federal−Mogul Sealing Systems GmbH
【Fターム(参考)】