説明

フラットケーブルの配策構造

【課題】本発明は、レールの形状に左右されることなく全ての車輌に搭載できるとともに、多回路に対応したフラットケーブルの配策構造を提供することを目的とする。
【解決手段】フラットケーブル配策構造1、1´は、レール3の端部に配置されたケース41と、ケースに、車体フロアに垂直な仮想中心軸を有して回動自在に収容され、フラットケーブル2が巻き付けられる回転体45と、を有するフラットケーブル巻取り部4と、レールの外側面に沿って配置され、該レールの垂直な側壁32と平行な一対の壁部61a、61bと、一対の壁部を連結する底壁62と、を有し、レールの長手方向に延びたフラットケーブル収容部6、6A、6´と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体フロアに配置されたレールに可動体をスライド自在に取り付け、車体フロアから可動体にフラットケーブルを配策したフラットケーブルの配策構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のスライドシート(可動体)には、乗員が着座しているか否かを検出する着座センサ等の電子機器が取り付けられている。このため、スライドシートが設けられた自動車には、車体フロアからスライドシートにワイヤハーネスを配索する種々のスライドシート用給電装置が用いられてきた(例えば特許文献1、特許文献2を参照。)。
【0003】
特許文献1に記載されたスライドシート用給電装置は、ハーネス収容部を有するケースとしてのレールと、レールに沿って進退する可動体(スライドシート)と、可動体(スライドシート)に一端部を支持し、レールに他端部を支持して、ハーネス収容部内で屈曲するワイヤハーネスと、を備えている。この従来のスライドシート用給電装置は、ハーネス収容部にワイヤハーネスを屈曲した状態で収容するので、該ハーネス収容部が大型化する傾向にあった。
【0004】
そこで、上記問題を解決するために、図12、図13に示された従来のスライドシート用給電装置が提案されている。図12は、従来のスライドシート用給電装置を一部断面で示す平面図である。図13は、図12に示された従来のスライドシート用給電装置の要部を示す斜視図である。同図に示すように、従来のスライドシート用給電装置101は、スライドシート109が取り付けられるレール103と、レール103の端部に設けられ、フラットケーブル102が巻き付けられる巻取り装置104と、を備えている。上記レール103は内側にフラットケーブル102が配策される。レール103及び巻取り装置104は、車体フロア192の表面から凹の凹溝191の底面に配置されている。この従来のスライドシート用給電装置101は、巻取り装置104によってフラットケーブル102の余長部分が巻き取られるので、特許文献1に記載されたハーネス収容部をなくすことで小型化を図っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−59745号公報
【特許文献2】仏国特許公報FR2790236
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来のスライドシート用給電装置101は以下に示す問題点があった。即ち、従来のスライドシート用給電装置101は、フラットケーブル102がレール103の内側に配策されるので、レール103の形状によってフラットケーブル102を配策できないという問題があった。また、フラットケーブル102がレール103の内側に配策されるので、多くの回路に対応するためにフラットケーブル102の幅寸法を増加することができないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題にかかる問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、レールの形状に左右されることなく全ての車輌に搭載できるとともに、多回路に対応したフラットケーブルの配策構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の本発明は、車体フロアに配置されたレールに可動体をスライド自在に取り付け、前記車体フロアから前記可動体にフラットケーブルを配策したフラットケーブル配策構造であって、前記レールの端部に配置されたケースと、前記ケースに、前記車体フロアに垂直な仮想中心軸を有して回動自在に収容され、前記フラットケーブルが巻き付けられる回転体と、を有するフラットケーブル巻取り部と、前記レールの外側面に沿って配置され、該レールの垂直な側壁と平行な一対の壁部と、前記一対の壁部を連結する底壁と、を有し、前記レールの長手方向に延びたフラットケーブル収容部と、を備えたことを特徴とするフラットケーブルの配策構造である。
【0009】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載されたフラットケーブルの配策構造において、前記ケースは、前記車体フロアに配置される水平な基壁と、前記基壁に立設された周壁と、前記基壁に立設され前記仮想中心軸線を有する貫通孔に挿通される軸部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載のフラットケーブルの配策構造において、前記フラットケーブルのうち、前記レールを横断して前記フラットケーブル収容部から前記可動体に配策された部分を覆うプロテクタを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の本発明は、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載のフラットケーブルの配策構造において、前記フラットケーブル収容部は、前記一対の壁部の上端側の各縁から内向きに互いに近付く方向に延びた鍔部を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の本発明は、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載のフラットケーブルの配策構造において、前記一対の壁部間に設けられ、各壁部と平行な仕切り壁と、前記底壁と対向し、前記一対の壁部のうちいずれか一方と前記仕切り壁とを連結する天壁と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の本発明によれば、車体フロアに配置されたレールに可動体をスライド自在に取り付け、前記車体フロアから前記可動体にフラットケーブルを配策したフラットケーブル配策構造であって、前記レールの端部に配置されたケースと、前記ケースに、前記車体フロアに垂直な仮想中心軸を有して回動自在に収容され、前記フラットケーブルが巻き付けられる回転体と、を有するフラットケーブル巻取り部と、前記レールの外側面に沿って配置され、該レールの垂直な側壁と平行な一対の壁部と、前記一対の壁部を連結する底壁と、を有し、前記レールの長手方向に延びたフラットケーブル収容部と、を備えたので、フラットケーブルがレールの外側に配策されることとなり、そのためにレールの形状に左右されることなく全ての車輌に搭載できるとともに、フラットケーブルの幅寸法を増やすことで多回路に対応したフラットケーブル配策構造を提供することができる。
【0014】
請求項2記載の本発明によれば、前記ケースは、前記車体フロアに配置される水平な基壁と、前記基壁に立設された周壁と、前記基壁に立設され前記仮想中心軸線を有する貫通孔に挿通される軸部と、を備えたので、乗員によってフラットケーブル巻取り部が足踏みされた場合でも、回転体が破損するのを防止することができる。
【0015】
請求項3記載の本発明によれば、前記フラットケーブルのうち、前記レールを横断して前記フラットケーブル収容部から前記可動体に配策された部分を覆うプロテクタを備えたので、前記フラットケーブルのうち、前記レールを横断して前記フラットケーブル収容部から前記可動体に配策された部分を保護できる。
【0016】
請求項4記載の本発明によれば、前記フラットケーブル収容部は、前記一対の壁部の上端側の各縁から内向きに互いに近付く方向に延びた鍔部を備えたので、液体や砂などの異物が前記フラットケーブル収容部内に侵入を防止することができる。
【0017】
請求項5記載の本発明によれば、前記一対の壁部間に設けられ、各壁部と平行な仕切り壁と、前記底壁と対向し、前記一対の壁部のうちいずれか一方と前記仕切り壁とを連結する天壁と、を備えたので、液体や砂などの異物が前記フラットケーブル収容部内に侵入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のフラットケーブルの配策構造を備えた給電装置の第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示された給電装置を構成するフラットケーブルを示す斜視図である。
【図3】図2に示されたフラットケーブルにコネクタが取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図4】図1に示されたフラットケーブルの配策構造を構成するフラットケーブル巻取り部を示す斜視図である。
【図5】図4に示されたフラットケーブル巻取り部の分解斜視図である。
【図6】図4中のA−A線に沿う断面図である。
【図7】図1に示されたフラットケーブルの配策構造を構成するフラットケーブル収容部を示す斜視図である。
【図8】図1に示されたフラットケーブルの配策構造の一部を拡大して示す斜視図である。
【図9】図7に示されたフラットケーブル収容部の他の一例を示す斜視図である。
【図10】本発明の第2実施形態にかかるフラットケーブルの配策構造を示す斜視図である。
【図11】図10に示されたフラットケーブルの配策構造を構成するフラットケーブル収容部の他の一例を示す斜視図である。
【図12】従来のスライドシート用給電装置を一部断面で示す平面図である。
【図13】図12に示されたスライドシート用給電装置の要部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態にかかるフラットケーブルの配策構造1を備えた給電装置10を図1ないし図8を参照して説明する。上記給電装置10は、車体フロアからスライドシート(図示しない)に配策される複数(図示例では3枚)のフラットケーブル2と、3枚のフラットケーブル2の両端に取り付けられる一対のコネクタ24a、24bと、フラットケーブルの配策構造1と、を備えている。スライドシートは、特許請求の範囲に記載された「可動体」に相当する。
【0020】
図1に示すように、フラットケーブルの配策構造1は、車体フロアに配置されたレール3にスライドシートをスライド自在に取り付け、車体フロアからスライドシートにフラットケーブル2を配策するための構造である。
【0021】
また、図1中の矢印Zは、スライドシートのスライド方向、即ちレール3の長手方向、を表している。また、図1中の矢印Xは、レール3の幅方向を表している。また、図1中の矢印Yは、矢印Zと矢印Xとの双方に対して直交する、レール3の高さ方向を表している。
【0022】
上記各フラットケーブル2は、図2に示すように、互いに平行な複数(図示例では3つ)の芯線21と、各芯線21を被覆する絶縁性の被覆部22と、互いに隣り合う被覆部22を連結する絶縁性の連結部23と、を備えている。上記芯線21は複数の導線が撚られて構成されている。上記被覆部22と上記連結部23とは、合成樹脂から構成され互いに一体に成形されている。各フラットケーブル2は、上述した芯線21と被覆部22と連結部23とを備えて帯状に形成されている。図2は、3枚のうち1枚のフラットケーブル2のみを示している。
【0023】
3枚にフラットケーブル2は互いに重ねられた(積層された)状態で、両端に一対のコネクタ24a、24bが取り付けられる。図1、図3に示すように、一対のコネクタ24a、24bのうち、一方のコネクタ24aは電源側の回路に接続され、他方のコネクタ24bは負荷(スライドシート)側の回路に接続される。
【0024】
上記フラットケーブルの配策構造1は、図1に示すように、レール3の端部に配置され、フラットケーブル2の余長部分が巻き付けられるフラットケーブル巻取り部4と、レール3の長手方向(矢印Z方向)に延びたフラットケーブル収容部6と、フラットケーブル2の、フラットケーブル収容部6からスライドシートに配策される部分を覆うプロテクタ7と、を備えている。
【0025】
上記レール3は、長尺の帯状金属板が所定の長さで切断され、切断された金属板にロール成形加工等が施されることにより得られるものである。このレール3は、図1に示すように、車体フロアの表面に重ねられる水平な底壁(図示しない)と、底壁の幅方向(矢印X方向)の両端部それぞれから立設した一対の側壁32と、各側壁32の上端から互いに近付く方向に延びて底壁と相対する一対の相対壁33a、33bと、各相対壁33a、33bの側壁32から離れた端部それぞれから底壁側に延びた一対の内壁34と、で構成されている。上記一対の側壁32は底壁に対して垂直である。また、レール3は、長手方向(矢印Z方向)の一端部から他端部に亘って断面形状が等しく形成されている。
【0026】
また、一対の内壁34は互いに間隔を空けている。このため、一対の内壁34間には、レール3の上面側、即ちスライドシート側、に開口し、レール3の長手方向(矢印Z方向)の一端部から他端部に亘って延びたスリット30が形成されている。
【0027】
また、レール3、フラットケーブル巻取り部4、及びフラットケーブル収容部6は、車体フロアとスライドシートとの間に配置されている。即ち、レール3、フラットケーブル巻取り部4、及びフラットケーブル収容部6は、車体フロアの表面に配置されているが、レール3、フラットケーブル巻取り部4、及びフラットケーブル収容部6は、車体フロアの表面から凹の凹溝の底面に配置されてもよい。
【0028】
上記フラットケーブル巻取り部4は、図4に示すように、有底筒状のロアケース41と、前記ロアケース41に回動自在に収容され、前記フラットケーブル2が巻き付けられる回転体45と、ロアケース41の開口を覆うアッパーケース49と、回転体45をフラットケーブル2の巻取り方向(時計周り方向)に付勢する図示しない付勢手段と、を備えている。ロアケース41、アッパーケース49、及び回転体45は合成樹脂から構成されている。また、ロアケース41は、特許請求の範囲に記載された「ケース」に相当する。
【0029】
上記ロアケース41は、図5、図6に示すように、車体フロアの表面に重ねられる水平な基壁42と、基壁42の周縁から立設された周壁43と、基壁42の中央に立設され回転体45の貫通孔55に挿通される、円柱状の大径軸部44と、を備えている。上記周壁43は内周面が円形に形成されている。また、周壁43は、当該周壁43の一部が切欠形成されているとともに、当該周壁43の上端側の縁が開口したハーネス導出口53を有している。また、周壁43と大径軸部44とは同じ高さに形成されている。上記大径軸部44は矢印Yに沿っている。また大径軸部44には、互いに積層された3枚のフラットケーブル2が挿入されるスリット54が設けられている。上記スリット54は大径軸部44の中央に設けられている。また、スリット54は矢印Yに沿って大径軸部44の上端から下端まで設けられている。また、スリット54はその長手方向の縁が大径軸部44の上端から下端まで開口している。この大径軸部44は、3枚のフラットケーブル2の一端側が矢印Y方向にL字状に曲げられた状態でスリット54内に挿入固定される。図6では、大径軸部44のスリット54は省略されている。
【0030】
上記回転体45は、図5に示すように、ロアケース41の基壁42に重ねられる円板部46と、円板部46に立設された円柱状の6つの軸部47a、47b、47c、47d、47e、47fと、6つの軸部47a、47b、47c、47d、47e、47fのうちの1つおきの3つの軸部47a、47c、47eに回動自在に装着される3つの分割ローラ48と、を備えている。上記円板部46はその中心に、矢印Yに沿う仮想中心軸を有する貫通孔55を有している。即ち貫通孔55は矢印Yに沿っている。上記6つの軸部47a、47b、47c、47d、47e、47fは仮想中心軸を中心とした同心円上の周方向に等間隔をあけて設けられている。各軸部47a、47b、47c、47d、47e、47fの大きさは同一である。上記3つの分割ローラ48は円筒状に形成されている。また、各分割ローラ48は内周面と同心な外周面を有している。また、各分割ローラ48の大きさは同一である。
【0031】
上記アッパーケース49は、図5に示すように、ロアケース41の開口を覆う蓋部50と、蓋部50の周縁から立設し、ロアカバーの周壁43に重ねられる重なり壁51と、を備えている。
【0032】
3枚のフラットケーブル2の一端側は積層された状態で、ロアケース41における大径軸部44のスリット54に挿通固定され、ロアケース41の基壁42に設けられた図示しない孔部を通されて、ロアケース41の外部に導出される。また、3枚のフラットケーブル21、22、23は、図4に示すように、その他端側が一枚ずつ独立して配策される。3枚のうち1枚のフラットケーブル21は、大径軸部44から、軸部47aに装着された分割ローラ48に沿って折り返され、該分割ローラ48の反時計周り方向に隣接された軸部47b、軸部47cに装着された分割ローラ48、軸部47d、軸部47eに装着された分割ローラ48に、順次掛け渡されて反時計周り方向に配策される。フラットケーブル22は、大径軸部44から、軸部47cに装着された分割ローラ48に沿って折り返される。フラットケーブル23は、大径軸部44から、軸部47eに装着された分割ローラ48に沿って折り返される。一枚ずつ独立したフラットケーブル21、22、23は大径軸部44を中心とした反時計周りに配策され、互いに積層されてハーネス導出口53から導出される。
【0033】
上記フラットケーブル収容部6は、図7に示すように、レール3の側壁32と平行な一対の壁部61a、61bと、前記一対の壁部61a、61bの下端側の縁同士を連結する底壁62と、を備えている。上記一対の壁部61a、61bは互いに間隔をあけている。また、一対の壁部61a、61bのうち一方の壁部61aはレール3の側壁32に重ねられる。または、フラットケーブル収容部6は、その長手方向がレール3の長手方向(矢印Z方向)に沿って配置され、一対の壁部61a、61bのうち一方の壁部61aがレール3の側壁32の近傍に配置されてもよい。即ち、本明細書では、フラットケーブル収容部6は、一方の壁部61aがレール3の側壁32に重ねられること、または、フラットケーブル収容部6はその長手方向が、レール3の長手方向に沿って配置され、一対の壁部61a、61bのうち一方の壁部61aがレール3の側壁32の近傍に配置されることは、「フラットケーブル収容部6がレール3の外側面に沿って配置される」ことを意味する。
【0034】
このフラットケーブル収容部6は、その内側にハーネス導出口53から導出されたフラットケーブル2の他端側が収容される。また、フラットケーブル収容部6は長手方向(矢印Z方向)の長さがレール3と等しく形成されている。フラットケーブル収容部6は、その長手方向の一端部から他端部に亘って断面形状が等しく形成されている。フラットケーブル収容部6は合成樹脂から構成されている。
【0035】
上記プロテクタ7は、図1、図8に示すように、フラットケーブル2の、フラットケーブル収容部6からスライドシートに配策される部分を覆うプロテクタ本体71と、プロテクタ本体71を、スライドシートを構成するシートフレームに固定する固定部72と、を備えている。プロテクタ7は、フラットケーブル2のフラットケーブル収容部6からスライドシートに配策された部分にインサート成形されている。図1では固定部72は省略されている。
【0036】
上記プロテクタ本体71は、図1、図8に示すように、レール3における、フラットケーブル収容部6側の一方の相対壁33bと対向する水平部73と、前記水平部73の矢印X方向の一端に連なり、フラットケーブル収容部6の一対の壁部61a、61b間に位置付けられる第1垂直部74と、水平部73の他端に連なり、第1垂直部74と平行な第2垂直部75と、によってクランプ状に形成されている。プロテクタ本体71(プロテクタ7)はレール3を横断している。
【0037】
上記第1垂直部74は、3枚のフラットケーブル2の一端側におけるL字状に曲げられた部分を覆っている。
【0038】
上記固定部72は、図8に示すように、第2垂直部75におけるフラットケーブル巻取り部4側の、水平部73から離れた端部に設けられている。固定部72は板状に形成されており中央部にボルト通し孔76が設けられている。固定部72は、シートフレームに形成された孔部(図示しない)とボルト通し孔76とが連通され、孔部及びボルト通し孔76にボルトがねじ込まれることにより、プロテクタ本体71をシートフレームに固定する。
【0039】
次に、上述した構成の給電装置10の組み立て手順について説明する。まず始めに3枚のフラットケーブル2を重ね(積層し)て、該3枚のフラットケーブル2のフラットケーブル収容部6からスライドシートに配策される部分にプロテクタ7を取り付けて、レール3の長手方向の端部にフラットケーブル巻取り部4を配置し、フラットケーブル収容部6の壁部61aをレール3の側壁32に重ねる。
【0040】
次に、3枚のフラットケーブル2の一端側をロアケース41における大径軸部44のスリット54に挿通固定し、ロアケース41の基壁42に設けられた孔部に挿通して、ロアケース41の外部に導出する。そして、ロアケース41から導出したフラットケーブル2の一端にコネクタ24aを取り付けてコネクタ24aを電源側の回路に接続する。
【0041】
次に、3枚のフラットケーブル2の他端側を一枚ずつ独立して各分割ローラ48に沿って折り返し、該分割ローラ48の反時計周り方向に隣接した軸部47に掛け渡し、反時計周り方向に配策し、ハーネス導出口53から導出する。この際、ハーネス導出口53から導出した3枚のフラットケーブル2は互いに重ねられている(積層されている)。そして、 次に、互いに重ねられた3枚のフラットケーブル2の他端側をフラットケーブル収容部6に収容し、プロテクタ7の水平部73をレール3の相対壁33bに重ねて、プロテクタ7の第1垂直部74をフラットケーブル収容部6に挿入し該第1垂直部74をフラットケーブル収容部6の内側に位置付ける。最後に、フラットケーブル2の他端にコネクタ24bを取り付けて、コネクタ24bを負荷(スライドシート)側の回路に接続する。こうして給電装置10を組み立てる。
【0042】
上述した実施形態によれば、前記レール3の端部に配置されたケースとしてのロアケース41と、前記ロアケース41に、前記車体フロアに垂直な仮想中心軸を有して回動自在に収容され、前記フラットケーブル2が巻き付けられる回転体45と、を有するフラットケーブル巻取り部4と、前記レール3の外側面に沿って配置され、該レール3の垂直な側壁と平行な一対の壁部61a、61bと、前記一対の壁部61a、61bを連結する底壁62と、を有し、前記レール3の長手方向(矢印Z方向)に延びたフラットケーブル収容部6と、を備えたので、フラットケーブル2がレール3の外側に配策されることとなり、そのためにレール3の形状に左右されることなく全ての車輌に搭載できる。また、フラットケーブルの配策構造1においては、各フラットケーブル2は3つの芯線21を備えているが、本発明はこれに限ったものではなく、例えば3つ以上の芯線21を備えてフラットケーブル2の幅寸法を増やすことで多回路に対応することができる。
【0043】
また、前記ロアケース41は、前記車体フロアに配置される水平な基壁42と、前記基壁42に立設された周壁43と、前記基壁42に立設され前記仮想中心軸線を有する貫通孔55に挿通される軸部47と、を備えたので、乗員によってフラットケーブル巻取り部4が足踏みされた場合でも、回転体45が破損するのを防止することができる。
【0044】
また、前記フラットケーブル2のうち、前記レール3を横断して前記フラットケーブル収容部6からスライドシートに配策された部分を覆うプロテクタ7を備えたので、前記フラットケーブル2のうち、前記レール3を横断して前記フラットケーブル収容部6から前記スライドシートに配策された部分を保護できる。
【0045】
なお、上述した実施形態では、フラットケーブル収容部6は一対の壁部61a、61bと底壁62とによって構成されていたが、本発明はこれに限ったものではなく、図9に示すように、フラットケーブル収容部6Aは、一対の壁部61a、61bと、底壁62と、前記一対の壁部61a、61bの上端側の各縁から互いに近付く方向に延び、一対の壁部61a、61b間の開口を覆う一対の内向き鍔部63と、前記一対の壁部61a、61bの上端側の各縁から互いに離れる方向に延びた一対の外向き鍔部64a、64bと、を備えてもよい。上記一対の内向き鍔部63及び上記一対の外向き鍔部64a、64bは、弾性を有する合成樹脂(例えば、ゴム)から構成されていてもよい。また、一対の内向き鍔部63及び一対の外向き鍔部64a、64bは、一対の壁部61a、61にインサート成形されていてもよい。また、一対の内向き鍔部63は、特許請求の範囲に記載された「鍔部」に相当する。また、図9では、上述した実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
また、上述した実施形態では、フラットケーブル収容部6Aは、一対の壁部61a、61bと、底壁62と、一対の内向き鍔部63と、一対の外向き鍔部64a、64bと、を備えているが、本発明はこれに限ったものではなく、一対の外向き鍔部64a、64bはなくてもよい。即ち、フラットケーブル収容部6Aは、一対の壁部61a,61bと、底壁62と、一対の内向き鍔部63と、を備えていればよい。
【0047】
上述した実施形態によれば、前記フラットケーブル収容部6Aは、内向き鍔部63を備えたので、液体や砂などの異物が前記フラットケーブル収容部6A内に侵入を防止することができる。
【0048】
(第2実施形態)
上記フラットケーブルの配策構造1´は、図10に示すように、レール3の端部に配置され、フラットケーブル2の余長部分が巻き付けられるフラットケーブル巻取り部4と、レール3の側壁32に重ねられ、レール3の長手方向に延びたフラットケーブル収容部6´と、フラットケーブル2のうち、フラットケーブル収容部6´からスライドシートに配策される部分を覆うプロテクタ7´と、を備えている。また、図10では、上述した実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0049】
上記フラットケーブル収容部6´は、レール3の側壁32と平行な一対の壁部61a、61bと、前記一対の壁部61a、61bの下端側の縁同士を連結する底壁62と、一対の壁部61a、61b間に設けられ、各壁部61a、61bと平行な仕切り壁65と、底壁62と対向し、一対の壁部61a、61bのうち一方の壁部61bと仕切り壁65との上端側の縁同士を連結する天壁66と、一対の壁部61a、61bの上端側の各縁から互いに近付く方向に延び、一対の壁部61a、61b間の開口を覆う一対の内向き鍔部63と、一対の壁部61a、61bの上端側の各縁から互いに離れる方向に延びた一対の外向き鍔部64a、64bと、を一体に備えている。上記一対の外向き鍔部64a、64bのうち一方の外向き鍔部64aは、レール3の相対壁33bと対向している。フラットケーブル収容部6´は、弾性を有する合成樹脂(例えば、ゴム)から構成されている。
【0050】
上記プロテクタ7´は、フラットケーブル2の、フラットケーブル収容部6からスライドシートに配策された部分を覆うプロテクタ本体71´と、プロテクタ本体71´を、スライドシートを構成するシートフレームに固定する固定部72と、を備えている。
【0051】
上記プロテクタ本体71´は、一方の外向き鍔部64aと対向する水平部73と、前記水平部73の矢印X方向の一端に連なり、フラットケーブル収容部6の一方の壁部61aと仕切り壁65との間に位置付けられる第1垂直部74と、水平部73の他端に連なり、第1垂直部74と平行な第2垂直部75と、第1垂直部74と間隔をあけて平行な、フラットケーブル収容部6の他方の壁部61bと仕切り壁65との間に位置付けられる第3垂直部77と、第1垂直部74と第3垂直部77とを連結する連結部78と、を備えている。上記第3垂直部77は、3枚のフラットケーブル2の他端側におけるL字状に曲げられた部分を覆っている。
【0052】
上述した実施形態によれば、前記一対の壁部61a、61b間に設けられ、各壁部61a、61bと平行な仕切り壁65と、前記底壁62と対向し、前記一対の壁部61a、61bのうちいずれか一方と前記仕切り壁65とを連結する天壁66と、を備えたので、液体や砂などの異物が前記フラットケーブル収容部6´内に侵入を防止することができる。
【0053】
なお、上述した実施形態では、フラットケーブルの配策構造1、1´は、フラットケーブル巻取り部4と、フラットケーブル収容部6、6A、6´と、プロテクタ7、7´と、を備えているが、本発明はこれに限ったものではなく、プロテクタ7、7´はなくてもよい。即ち、フラットケーブルの配策構造1、1´は、フラットケーブル巻取り部4と、フラットケーブル収容部6、6A、6´と、を備えていればよい。
【0054】
また、上述した実施形態では、フラットケーブル収容部6´は、一対の壁部61a、61bと、底壁62と、仕切り壁65と、天壁66と、一対の内向き鍔部63と、一対の外向き鍔部64a、64bと、を備えているが、本発明はこれに限ったものではなく、図11に示すように、一対の内向き鍔部63及び一対の外向き鍔部64a、64bはなくてもよい。即ち、フラットケーブル収容部6´は、一対の壁部61a、61bと、底壁62と、仕切り壁65と、天壁66と、を備えていればよい。また、図11では、上述した実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0055】
また、上述した実施形態では、フラットケーブルの配策構造1、1´は、車体フロアに配置されたレール3にスライドシート(可動体)をスライド自在に取り付け、前記車体フロアから前記スライドシートにフラットケーブル2を配策するための構造であるが、本発明はこれに限ったものではなく、フラットケーブルの配策構造1、1´は、車体フロアに配置されたレール3にスライドドア(可動体)をスライド自在に取り付け、前記車体フロアから前記スライドドアにフラットケーブル2を配策するための構造であってもよい。
【0056】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0057】
1、1´ フラットケーブルの配策構造
2 フラットケーブル
3 レール
32 側壁
4 フラットケーブル巻取り部
41 ロアケース(ケース)
42 基壁
43 周壁
44 大径軸部(軸部)
45 回転体
55 貫通孔
6、6A、6´ フラットケーブル収容部
61a、61b 一対の壁部
62 底壁
63 内向き鍔部(鍔部)
65 仕切り壁
66 天壁
7、7´ プロテクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フロアに配置されたレールに可動体をスライド自在に取り付け、前記車体フロアから前記可動体にフラットケーブルを配策したフラットケーブル配策構造であって、
前記レールの端部に配置されたケースと、前記ケースに、前記車体フロアに垂直な仮想中心軸を有して回動自在に収容され、前記フラットケーブルが巻き付けられる回転体と、を有するフラットケーブル巻取り部と、
前記レールの外側面に沿って配置され、該レールの垂直な側壁と平行な一対の壁部と、前記一対の壁部を連結する底壁と、を有し、前記レールの長手方向に延びたフラットケーブル収容部と、を備えたことを特徴とするフラットケーブルの配策構造。
【請求項2】
前記ケースは、前記車体フロアに配置される水平な基壁と、前記基壁に立設された周壁と、前記基壁に立設され前記仮想中心軸線を有する貫通孔に挿通される軸部と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載のフラットケーブルの配策構造。
【請求項3】
前記フラットケーブルのうち、前記レールを横断して前記フラットケーブル収容部から前記可動体に配策された部分を覆うプロテクタを備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフラットケーブルの配策構造。
【請求項4】
前記フラットケーブル収容部は、前記一対の壁部の上端側の各縁から内向きに互いに近付く方向に延びた鍔部を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載のフラットケーブルの配策構造。
【請求項5】
前記一対の壁部間に設けられ、各壁部と平行な仕切り壁と、
前記底壁と対向し、前記一対の壁部のうちいずれか一方と前記仕切り壁とを連結する天壁と、を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載のフラットケーブルの配策構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−238497(P2012−238497A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107075(P2011−107075)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)