説明

フラットケーブル

【課題】巻いた状態での保管時において、導体を被覆している絶縁体どうしの融着が抑えられたフラットケーブルを提供すること。
【解決手段】互いに離間されて平行に並べられている複数の導体12,12,12・・・の外周に絶縁体14が被覆されており、絶縁体14の少なくとも一方の面には、軸方向に沿って突条16が形成され、突条16が形成された面において、突条16が形成されている部分の面積を、突条16が形成されていない部分の面積よりも小さくする。突条16は、導体12上の絶縁体14表面に形成されていると良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の導体が平行に平面状に配列されたフラットケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、図10に示すように、複数の導体32、32・・・が平行に平面状に配列され、複数の導体32の周りを絶縁体34によって被覆されてなるフラットケーブル30が知られている(例えば特許文献1)。また、このようなフラットケーブルにおいては、所定の導体本数ずつ容易に分割できるようにするために、表面の所定位置に切れ込みを有するフラットケーブルも知られている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−323928号公報
【特許文献2】特開2007−42512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フラットケーブルは、通常、長尺であるため、ドラム等に巻き付けた状態や、ドラム等を用いないで渦状に巻いた状態で保管される場合がある。従来のフラットケーブルは、表面が平らになっているため、巻いた状態にすると、一方の面と他方の面とが面で密着する。そうすると、例えば保管時の温度が高くなった場合には、密着した面で、一方の面の絶縁体と他方の面の絶縁体とが融着するおそれがあった。
【0005】
特許文献1のフラットケーブル30は、一方の面全体および他方の面全体で密着しやすく、特に融着するおそれが大きい。また、特許文献2のフラットケーブルは、切り欠きにより面の一部に密着しない部分はあるものの、なお密着する部分が多いため、融着するおそれが大きい。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、巻いた状態での保管時において、導体を被覆している絶縁体どうしの融着が抑えられたフラットケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るフラットケーブルは、互いに離間されて平行に並べられた複数の導体の外周に絶縁体を被覆してなるフラットケーブルであって、少なくとも一方の面には、軸方向に沿って突条が形成され、前記突条が形成された面において、前記突条が形成されている部分の面積が、前記突条が形成されていない部分の面積よりも小さいことを要旨とするものである。
【0008】
本発明に係るフラットケーブルにおいては、突条が導体上の絶縁体表面に形成されていることが望ましい。突条は、フラットケーブルの一方の面のみに形成されていても良いし、両方の面に形成されていても良い。突条が両方の面に形成されている場合には、一方の面において突条が形成されている部分の面積と他方の面において突条が形成されている部分の面積との和が、一方の面において突条が形成されていない部分の面積と他方の面において突条が形成されている部分の面積との差よりも小さいことが好ましい。また、一方の面に形成された突条のパターンと他方の面に形成された突条のパターンとが異なっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るフラットケーブルによれば、少なくとも一方の面に、軸方向に沿って突条が形成され、この突条が形成された面において、突条が形成されている部分の面積が、突条が形成されていない部分の面積よりも小さくなるようにされているため、巻いた状態で保管されている時に、フラットケーブルの一方の面と他方の面との接触面積が小さい。これにより、例えば保管時の温度が高くなった場合に、導体を被覆している絶縁体どうしの融着が抑えられる。
【0010】
この際、導体上の絶縁体表面に突条が形成されていると、突条の下には導体よりなる芯部があるため、突条を支持する力が大きい。これにより、突条が潰れにくくなり、突条における接触面積の上昇が抑えられる。また、突条が潰れにくくなることによって、突条以外の面で一方の面と他方の面とが接触するおそれも低減される。
【0011】
そして、突条がフラットケーブルの両方の面に形成されている場合においては、一方の面において突条が形成されている部分の面積と他方の面において突条が形成されている部分の面積との和が、一方の面において突条が形成されていない部分の面積と他方の面において突条が形成されている部分の面積との差よりも小さいと、巻いた状態で保管されている時に、フラットケーブルの一方の面と他方の面との接触面積が小さい。これにより、例えば保管時の温度が高くなった場合に、導体を被覆している絶縁体どうしの融着が抑えられる。
【0012】
また、突条がフラットケーブルの両方の面に形成されている場合においては、一方の面に形成された突条のパターンと他方の面に形成された突条のパターンとが異なっていると、一方の面と他方の面との区別がつきやすい。これにより、ねじれが生じないように確認しながらフラットケーブルを配索することができる。
【0013】
また、突条がフラットケーブルの一方の面のみに形成されている場合にも、一方の面と他方の面との区別がつきやすい。そのため、ねじれが生じないように確認しながらフラットケーブルを配索することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第一実施形態に係るフラットケーブルを表す斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係るフラットケーブルを表す横断面図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係るフラットケーブルが巻かれた状態にされ、一方の面と他方の面とが接触している状態を示した横断面図である。
【図4】他の突条の形状を示した横断面拡大図である。
【図5】他の絶縁体の形状を示した横断面図である。
【図6】他の導体の形状を示した横断面図である。
【図7】本発明の第二実施形態に係るフラットケーブルを表す横断面図である。
【図8】他の突条のパターンを示した横断面図である。
【図9】本発明の第二実施形態に係るフラットケーブルが巻かれた状態にされ、一方の面と他方の面とが接触している状態を示した横断面図である。
【図10】従来のフラットケーブルを表す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について図を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係るフラットケーブルを表す斜視図である。また、図2は、図1に示すフラットケーブル10の軸方向と直交する方向における断面を表わした横断面図である。
【0016】
図1および図2に示すように、第一実施形態に係るフラットケーブル10は、互いに離間されて平行に並べられた複数の導体12、12・・・の外周に、絶縁体14を被覆したものから構成されている。
【0017】
フラットケーブル10の一方の面には、軸方向に沿って突条16が形成されている。突条16とは、図2に示すように、突条16が形成された絶縁体14表面において、平行に平面状に並べられた複数の導体12によって形成される平面Aからの距離が最も短い部分bを含み平面Aと平行となる平面Bから突出している部分である。突条16は、軸方向に沿って突形状が連続するものであり、突形状が不連続のものと比較して、押出成形等により連続的に製造できるため、製造しやすいという利点がある。
【0018】
この際、突条16が形成された面において、突条16が形成されている部分の面積は、突条16が形成されていない部分の面積よりも小さくなっていることが重要である。フラットケーブル10の形状は、軸方向に連続しているため、突条16が形成されている部分の面積の大きさおよび突条16が形成されていない部分の面積の大きさは、軸方向と直交する方向の断面における長さにより説明できる。
【0019】
図2に示すフラットケーブル10の断面で説明すると、突条16が形成されている部分の面積に対応する軸方向と直交する方向における長さはX、Xであり、突条16が形成されていない部分の面積に対応する軸方向と直交する方向における長さはY、Y、Yである。したがって、図2で示すと、(X+X)<(Y+Y+Y)となる。
【0020】
フラットケーブル10は、長尺のものであり、通常、ドラム等に巻き付けられた状態や、ドラム等を用いないで渦状に巻いた状態で保管される。そのため、図3に示すように、フラットケーブル10は、一方の面と他方の面とが接触された状態で保管される。フラットケーブル10には突条16が形成され、突条16が形成されている部分の面積は、突条16が形成されていない部分の面積よりも小さくなっているため、突条16が形成されていないときと比べて、一方の面と他方の面との接触面積は小さくなる。これにより、例えば保管時の温度が高くなった場合に、導体12を被覆している絶縁体14どうしの融着が抑えられる。
【0021】
突条16は、導体12上の絶縁体14表面に形成されていることが好ましい。この場合、突条16の下には導体12よりなる芯部が存在するため、導体12が存在しない領域における絶縁体14表面に形成されているものと比較して、突条16を支持する力が大きい。そうすると、例えば保管時において巻き付け力が強くて、他方の面から、突条16が形成されている一方の面に強い圧縮力が作用する場合にも、突条16は潰れにくく、突条16部分における接触面積の上昇が抑えられる。また、突条16が潰れにくくなることによって、突条16部分以外で一方の面と他方の面とが接触するおそれも低減される。これにより、一方の面と他方の面との接触面積の上昇が抑えられる。
【0022】
フラットケーブル10においては、一方の面のみに突条16が形成されている。そのため、一方の面と他方の面との区別がしやすい。そうすると、フラットケーブルの配索時に、一方の面あるいは他方の面であることが確認できるため、フラットケーブル10のねじれが生じにくく、正しい向きで配索できる。
【0023】
突条16の形状は、図1に示すように、横断面が半円状であっても良いし、図4(a)〜(d)に示すように、横断面が四角形状、三角形状、台形状、いわゆるキノコ形状等の種々の形状であっても良い。また、これらの形状の組み合わせであっても良い。突条16の形状は、図1、図4(b)に示すように、絶縁体14の表面付近よりも表面から離れた部分のほうが小さい先細形状であっても良いし、図4(c)、(d)に示すように、絶縁体14の表面付近よりも表面から離れた部分のほうが大きい先太形状であっても良い。突条16の形状が先細形状の場合には、一方の面と他方の面との接触面積を特に小さくできる。この場合、絶縁体14どうしの融着が抑えられやすい。
【0024】
絶縁体14の形状は、特に限定されるものではない。絶縁体14の形状は、図1に示すように、横断面が角を有する四角形状であっても良いし、図5に示すように、横断面が角を有しない楕円形状などであっても良い。
【0025】
導体12の形状は、特に限定されるものではない。導体12の形状は、図1に示すように、1つの平角材により構成される平角形状であっても良いし、複数本の素線を組み合わせて構成される平形状であっても良い。複数本の素線は、隣り合う素線どうしが接触されていると良い。素線の形状としては、丸形状が好ましい。
【0026】
複数本の素線を組み合わせて構成される平形状としては、例えば、図6(a)に示すように、複数本の素線12aを平行に平面状に並べた形状(例えば図6(a)では、素線12aを5本並べている。)、図6(b)に示すように、素線12aを平行に平面状に並べた形状を2層に積層した形状、図6(c)に示すように、複数本の素線12aを撚り合わせて形成される撚線12bを平行に平面状に並べた形状(例えば図6(c)では、撚線12bを6本並べている。)、図6(d)に示すように、撚線12bを平行に平面状に並べた形状を2層に積層した形状等を挙げることができる。また、素線12aや撚線12bを平行に平面状に並べた形状を3層以上に積層した形状であっても良い。
【0027】
特に、撚線16bを構成する1本1本の素線12aの径をより細くして(例えば、素線径を0.60mm以下とするなど)、撚線16bを2層以上に積層したものは、細線化による柔軟性、屈曲性の向上と、積層化に伴う導体幅の低減化による配索スペースの低減が実現できる。また、素線を細くした場合でも撚線を用いることにより、導体サプライの数を低減することができる。さらに、既存の丸素線を用いることにより、生産性を向上できる。
【0028】
次に、第二実施形態に係るフラットケーブルについて説明する。図7に示すように、第二実施形態に係るフラットケーブル20は、複数の導体12、12・・・の外周に絶縁体14を被覆したものから構成され、両方の面に、軸方向に沿って突条16が形成されている。フラットケーブル20においても、一の面において、突条16が形成されている部分の面積は、突条16が形成されていない部分の面積よりも小さくなっていることが重要である。また、突条16は、導体12上の絶縁体14表面に形成されていることが好ましい。
【0029】
フラットケーブル20においては、一方の面に形成された突条16のパターンと他方の面に形成された突条16のパターンとは、同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0030】
各々の面に形成された突条16のパターンが同じである場合には、フラットケーブル20を巻いた際に一方の面の突条16と他方の面の突条16とが接触しやすいため、一方の面と他方の面との接触部分は突条16部分のみとなりやすい。すなわち、他方の面にも突条16を形成して、一方の面のみに突条16を有するフラットケーブル10よりも向かい合った一方の面と他方の面との間にある突条16の数が増えても、接触箇所の数は変わらないため、接触面積は増大しにくい。したがって、他方の面にも突条16を形成したことによる接触面積の上昇が抑えられる。
【0031】
各々の面に形成された突条16のパターンが異なる場合には、一方の面と他方の面との区別がしやすく、フラットケーブル20を正しい向きで配索しやすくなる。この観点からいえば、好ましくは、各々の面に形成された突条16のパターンが異なる場合である。
【0032】
突条16のパターンとは、一の面内において、突条16の数、突条16の配置、突条16の形状、またはこれらの組み合わせにより構成されるものである。これらが全て同じである場合には、突条16のパターンは同じであり、これらのうちのいずれか1つでも異なっている場合には、突条16のパターンは異なる。
【0033】
例えば図7では、一方の面と他方の面のそれぞれに、横断面が半円状の突条16が2つずつ、両端部に形成されている。すなわち、図7では、一方の面と他方の面とでは、突条16の数、突条16の配置、突条16の形状が全く同じであるため、突条16のパターンは同じである。また、例えば図8では、一方の面には、横断面が半円状の突条16が1つ、中央部に形成されているのに対し、他方の面には、断面が半円状の突条16が2つ、両端部に形成されている。すなわち、図8では、一方の面と他方の面とでは、突条16の形状は同じであるが、突条16の数および突条16の配置が異なっているため、突条16のパターンは異なっている。
【0034】
フラットケーブル20においても、通常、ドラム等に巻き付けられた状態や、ドラム等を用いないで渦状に巻かれた状態で保管される。そうすると、フラットケーブル20においても、一方の面と他方の面とが接触された状態で保管される。フラットケーブル20には突条16が形成されており、一の面において、突条16が形成されている部分の面積は、突条16が形成されていない部分の面積よりも小さくなっているため、突条16が形成されていないときと比べて、一方の面と他方の面との接触面積は小さくなる。これにより、例えば保管時の温度が高くなった場合に、導体12を被覆している絶縁体14どうしの融着が抑えられる。
【0035】
また、この際、一方の面において突条16が形成されている部分の面積と他方の面において突条16が形成されている部分の面積との和が、一方の面において突条16が形成されていない部分の面積と他方の面において突条16が形成されている部分の面積との差よりも小さいことが好ましい。これにより、フラットケーブルの一方の面と他方の面との接触面積が小さくできるため、例えば保管時の温度が高くなった場合に、導体12を被覆している絶縁体14どうしの融着が抑えられる。
【0036】
フラットケーブル10と同様、フラットケーブル20の形状も、軸方向に連続しているため、突条16が形成されている部分の面積の大きさおよび突条16が形成されていない部分の面積の大きさは、軸方向と直交する方向の断面における長さにより説明できる。
【0037】
これを、フラットケーブル20が巻かれた状態にされ、一方の面と他方の面とが接触している状態を示した横断面図(図9)で説明すると、一方の面において、突条16が形成されている部分の面積に対応する軸方向と直交する方向における長さはX、Xであり、突条16が形成されていない部分の面積に対応する軸方向と直交する方向における長さはY、Y、Yである。そして、他方の面において、突条16が形成されている部分の面積に対応する軸方向と直交する方向における長さはZである。したがって、図9で示すと、(X+X+Z)<(Y+Y+Y−Z)となることが好ましい。
【0038】
フラットケーブル20においては、突条16の形状、絶縁体14の形状、導体12の形状としては、フラットケーブル10において挙げた形状と同様の形状を挙げることができる。
【0039】
本発明においては、導体12の材料は特に限定されるものではない。導体12の材料としては、一般的な銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金を挙げることができる。銅、銅合金としては、例えば、無酸素銅、タフピッチ銅、リン青銅などを例示することができる。導体12は、軟質のものでも良いし、硬質のものでも良い。導体12には、スズやニッケルなどの金属めっきが施されていても良い。
【0040】
導体12の厚みは特に限定されるものではないが、0.02〜5mmの範囲内が好ましい。さらには、0.03〜3mmの範囲内が好ましい。導体12の厚みが薄くなれば押出被覆しにくい。一方、厚みが厚くなればフラットケーブルの屈曲性が低下しやすい。また、導体12の幅は、目的に応じて適宜定めると良い。
【0041】
導体12の厚みが例えば1mm以上の場合には、屈曲性の低下を抑えるなどの観点から、複数本の素線を組み合わせて導体を構成することが好ましい。複数本の素線を組み合わせることにより、各素線の断面積を小さくできるため、素線1本当たりの応力が低減でき、柔軟性および屈曲性が向上するからである。この際、複数本の素線は、撚線を構成していても良い。すなわち、複数本の素線よりなる撚線を1本または2本以上並べて導体を構成しても良い。この場合にも、全体としてみれば、導体は複数本の素線で構成されている。
【0042】
絶縁体14を構成する材料は、導体12の外周を押出被覆可能なものであれば良い。例えば、樹脂やゴムなどの高分子を挙げることができ、特に限定されるものではない。樹脂やゴムは、1種のみを用いても良く、2種以上を組み合わせても良い。このとき、樹脂とゴムとを組み合わせることもできる。
【0043】
絶縁体14を構成する樹脂としては、合成樹脂でも天然樹脂でも良い。好ましくは、熱可塑性樹脂である。好適なものとしては、オレフィン系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、エンジニアリングプラスチック、熱可塑性エラストマー、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。
【0044】
オレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、エチレン−アクリル酸メチル(EMA)、エチレン−アクリル酸エチル(EEA)、エチレン−アクリル酸ブチル(EBA)、エチレン−メタクリル酸メチル(EMMA)、エチレン−酢酸ビニル(EVA)等が挙げられる。
【0045】
エンジニアリングプラスチックとしては、ポリアミド系樹脂(PA)、ポリエステル系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)系樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)系樹脂、ポリカーボネート(PC)等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。
【0046】
熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系エラストマー(TPO)、スチレン系エラストマー(SEBS等)、アミド系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、アイオノマー、フッ素系エラストマー、1,2−ポリブタジエン、トランス−1,4−ポリイソプレン等が挙げられる。
【0047】
ゴムとしては、エチレン−プロピレンゴム(EPR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)等が挙げられる。
【0048】
上記樹脂やゴムには、各種物性を高めるために、官能基を導入(変性)しても良い。例えば、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルケニル環状イミノエーテル基、シラン基などの官能基を導入することができる。
【0049】
絶縁体14を構成する材料が、例えばシラン変性オレフィン系樹脂の場合には、水蒸気を接触させることにより、シラン架橋できる。絶縁体14の表面には突条16が形成されているため、フラットケーブルを巻いた状態では、積層されたケーブル間に空隙が形成される。したがって、この場合には、巻いた状態で、シラン変性オレフィン系樹脂をシラン架橋することができる。
【0050】
上記樹脂やゴムには、必要に応じて難燃剤などのフィラーを添加することができる。フィラーとしては、金属粉、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化アンチモン、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラス繊維、チタン酸カルシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、窒化アルミニウム、炭化珪素、木材繊維、フラーレン、カーボンナノチューブ、メラミンシアヌレートなどを例示することができる。これらは1種のみを用いても良く、2種以上を組み合わせても良い。
【0051】
絶縁体14中には、一般的に成形材料に使用される添加剤を配合しても良い。このような添加剤としては、酸化防止剤、金属不活性化剤(銅害防止剤)、紫外線吸収剤、紫外線隠蔽剤、加工助剤(滑剤、ワックス等)、着色用顔料などを例示することができる。
【0052】
絶縁体14の厚みは、特に限定されるものではないが、導体12の表面から0.02〜5mmにすることが好ましい。0.02mm未満では、厚みが薄いので、絶縁体としての信頼性が低下しやすく、一方、5mmより大きくすると、厚みが厚いので、フラットケーブルの屈曲性が低下しやすい。
【0053】
本発明に係るフラットケーブルは、例えば、複数の導体12を平行に並べ、その外周を絶縁体14で被覆することによって製造することができる。導体12の外周を絶縁体14で被覆する方法としては、押出成形法でも良いし、ラミネート法でも良い。好ましくは、製造工程を少なくできるなどの観点から、押出被覆法である。絶縁体14の突条16は、例えば押出成形法においては、ダイスの形状を所望の形状にすることにより、容易に形成できる。本発明に係るフラットケーブルは、押出被覆法、ラミネート法のいずれの方法によっても、連続製造ラインでの製造が可能である。
【0054】
絶縁材料をシラン架橋する場合には、例えば押出成形法においては、押出直後に連続的に水蒸気を接触させても良いし、押出後に、ドラム等に巻き取るか、あるいは、ドラム等を用いないで渦状に巻いた状態で、水蒸気を接触させても良い。
【0055】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0056】
10、20 フラットケーブル
12 導体
12a 素線
12b 撚線
14 絶縁体
16 突条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離間されて平行に並べられた複数の導体の外周に絶縁体を被覆してなるフラットケーブルであって、
少なくとも一方の面には、軸方向に沿って突条が形成され、
前記突条が形成された面において、前記突条が形成されている部分の面積が、前記突条が形成されていない部分の面積よりも小さいことを特徴とするフラットケーブル。
【請求項2】
前記突条は、前記導体上の絶縁体表面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフラットケーブル。
【請求項3】
前記突条は、両方の面に形成されており、一方の面において突条が形成されている部分の面積と他方の面において突条が形成されている部分の面積との和が、一方の面において突条が形成されていない部分の面積と他方の面において突条が形成されている部分の面積との差よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載のフラットケーブル。
【請求項4】
前記突条は、両方の面に形成されており、一方の面に形成された突条のパターンと他方の面に形成された突条のパターンとが異なっていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のフラットケーブル。
【請求項5】
前記突条は、一方の面のみに形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のフラットケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−257729(P2010−257729A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105919(P2009−105919)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】