説明

フラットパネルディスプレイ装置

【目的】 本発明は、フラットパネルディスプレイ(実施例はPDP)における主に駆動用ICの搭載構造に関するもので、装置としてのより小型化、軽量化、コスト低減を図ることを目的とするものである。
【構成】 前記目的のため本発明は、駆動用IC11をガラス基板2の裏面にベアチップとして搭載するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、フラットパネルディスプレイ装置(実施例ではプラズマディスプレイパネル(PDPと称す))における、主としてアノード、カソードを駆動する回路を有する半導体装置(以下ICあるいはICチップと記す)を搭載する構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】フラットパネルディスプレイ装置の中でも最も多く使われているのはプラズマディスプレイパネルであり、その構造は周知のものであり、特に図示しないが、本発明の実施例の説明のための図である図2(e)を参考にして、以下に概略説明しておく。
【0003】この装置は、前記図2(e)に示すように、一ガラス基板(前面(図では上面)アノードガラス、材料は一般にソーダライムガラス)1の一つの面に多数の板状(図では紙面の奥方向へ伸びている)のアノード3(一般に材料はITO(酸化インジュウム錫))と該アノード3の間に隔壁(バリアリブと言い、一般に材料は誘電ガラス(厚膜ガラスペースト))5が形成されており、もう一方のガラス基板(背面(図では下面)カソードガラス)2の一つの面に板状のカソード(材料は一般にニッケル)4が形成されており、この二つのガラス基板1と2とを、前記アノード3とカソード4とが直交するように向き合わせ、ガス(一般にネオンアルゴンガス)を閉じ込め、周辺をシールガラス(通常鉛ガラス)9で焼封止してある。また、前記アノード3とカソード4とに電圧を与え駆動するためのICと電気的に接続するための接続端子(いわゆる配線パターンであり、一般に印刷技術で形成)6が前記カソード4とアノード3の端(ガラス基板1、2の端でもある。図ではカソード4側のみ表示されている)に形成されている。
【0004】ところで、そのICの搭載であるが、従来の形態は、図5に示し以下に説明するようになっている。同図は前述したIC搭載部分のみ略図で示したものであり、二通りの形態をそれぞれ同図(a)(b)に示している。
【0005】第1の形態は図5(a)に示すように、QFP(Quad Flat Panel、モールドタイプ)IC22を搭載したフレキシブル基板(無論、配線パターンが形成されている)21のIC22が搭載されている側でない側を前述したガラス基板(図では背面ガラス)27上の端子25に半田付けあるいは異方性導電膜などの方法で電気的接続を行ない、前記フレキシブル基板21をガラス基板27の裏面側に折り曲げて、その裏面側にIC22がくるようにしたものである。
【0006】第2の形態は図5(b)に示すように、基板(またはフィルム)24にIC22を搭載したCOB(Chip on Board)型の装置を、ヒートシール23などを用いてガラス基板27の端子25に電気的接続をし、前記同様ガラス基板27裏面に折り曲げるようにしたものである。
【0007】以上の形態が、従来一般的であった。無論このIC22によってアノード3、カソード4が駆動されて、ガス放電することによってディスプレイとしての可視表示をさせる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前述した従来の形態では、電気的接続をし、且つ重いICが搭載された基板等を、機械的に強固に固定する等の目的で、ある程度長い端子を設ける為のエリヤをガラス基板上に必要とした。
【0009】又、コスト面に於てもIC以外にフレキシブル基板、COB基板、ヒートシール等接続材料を必要とする等の不利があった。
【0010】本発明は、以上述べた欠点を除去するため、ICをガラス基板裏面に搭載するようにして、小型、軽量、薄型のフラットパネルディスプレイにおけるICの実装形態を提供すると共に、使用材料を削減した安価な実装方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は前記目的のため、フラットパネルディスプレイのガラス基板(実施例では背面板)裏面に直接ICのベアチップ(裸のIC、即ちパッケージ化されてないIC)を搭載(COG(Chip on Glass)、COBと同じ方式で)するための配線(以下COGパターンと記す)を形成すると共に、前記ベアチップをワイヤーボンド、バンプ等一般的方式により結線搭載するようにしたものである。
【0012】
【作用】本発明は前述したように、ガラス基板に直接ICのベアチップを搭載するようにしたので、フラットパネル全体の面積を小さくでき、小型・軽量・薄型のフラットパネルディスプレイを実現でき、また、フレキシブル基板等の材料を削減でき、安価なフラットパネルディスプレイを製造出来るものである。
【0013】
【実施例】図1に本発明の実施例の構造の部分の概略図を示すとともに、図2にその製造方法を断面図で示し、以下に説明する。なお、本実施例はプラズマディスプレイパネル(PDP)の場合である。
【0014】図1(a)は本実施例のコーナー部の斜視図であり、同図(b)は前記(a)図に示したA側から見た図、(c)図は同B側から見た図である。
【0015】図1(b)(c)に示すように本実施例は、カソード用IC11aとアノード用IC11bとは、背面板(カソードを形成したガラス即ちカソードガラス)2の裏面(カソードを形成しない側の面)に搭載してある。このICは前述したようにカソードおよびアノードの駆動回路を有するベアチップのICであり、周知のようにカソード、アノードは数百本あり、その40ないし48本程度に1個のICが必要とされる。なお、この図ではカソード、アノードは外からは見えないので省略してある。
【0016】前記IC11a、11bをカソードガラス2の裏面に搭載するためには、後述する製造方法に示すように、配線パターン(COGパターン)がその搭載部に印刷されており、それとIC11a、11bの端子とは結線されている。その配線パターン(COGパターン)とカソードガラス2の表面(カソード形成側)の端子6(および図示されてないがアノードガラス1の端子)とは、それぞれヒートシール(配線パターンが形成されている)などによるコネクタ10a、10bでガラス基板1、2の端部で接続されている。
【0017】以上の構造の製造方法を図2に示し、以下に説明することにより、より詳細な構造が理解されるであろう。
【0018】まず、図2(a)に示すように、カソードガラス2の一つの面にカソード4を形成し、その端部に接続端子6を形成する。また、アノードガラス1の一つの面にアノード3と隔壁(バリアリブ)5を形成し、これも図示してないが端部には接続端子を設ける。以上の形成は従来と同じであるのでその材料や形成方法は改めて説明することは割愛する。ただ、前記接続端子6は従来10mmであったが、本実施例では後述するコネクタは単にガラス基板の表裏の配線パターンを接続するためだけ(ICを支えるような強度は必要でないから)でよいので5mm程度で十分である。
【0019】前記形成に続いて、図2(b)のように、カソードガラス2の裏面端部にCOGパターン7を厚膜印刷法により形成する。COGパターン7は周知のように、IC(この場合、ベアチップ)を搭載し、該ICの端子との結線をするための配線パターンであり、搭載するICの部分は当然空けてあり(その周囲に配線パターンがある)、そこにICを接着搭載して前記結線を行なうものである。このCOGパターン7は当然カソード用ICに対するものとアノード用ICに対するものとがあり、図2(c)に示すように、カソードガラス2の裏面から平面的に見ると、長方形の1辺(図では縦方向)の端部にカソードIC用、それに直交する1辺(図では横方向)の端部に複数個のICが搭載できるように長い長方形状に形成する。
【0020】本実施例では、Agペーストを用いて形成して乾燥させ、その後、530℃、ピーク保持時間10分にて焼成した。焼成に際しては、清浄なセラミック板の上に前記COGパターン部7を上に向けて焼成炉に投入して行なった。
【0021】続いて、図2(d)に示すように、前記COGパターン7の上にオーバーコートガラス8を厚膜印刷にて形成し、前記同様の条件で焼成する。無論、ICの端子とワイヤーボンドなどで電気的接続を行なう部分は開口してある。
【0022】このように形成したカソードガラス2と前記アノード3、隔壁5が形成されたアノードガラス1とを、図2(e)のように従来同様、アノード3とカソード4とが直交するように合わせ、低融点ガラス(シールガラス)9により前記ガラス1、2の周辺部シールし密閉する(本実施例では460℃、ピーク保持時間10分の条件)。勿論不活性ガスを封入する。これで一応パネルは完成する。
【0023】その後、図2(f)に示すように、ICチップ11を前記COGパターン7の所定位置に搭載接着(いわゆるダイスボンド)し、そのICチップ11の端子とCOGパターン7とをワイヤーボンドにて結線し、その上をシリコンシール材12でコーティングする。
【0024】次いで、COGパターン7の端部とカソードガラス2の場合その表面(カソード形成側)の接続端子6とを、配線パターンが形成されているヒートシールによるコネクタ10で接続する。アノード側は図示してないが、同様の方法でアノードガラス1側の接続端子図1R>1(b)の10bのような形状で接続する。
【0025】以上説明したように本実施例は、PDPにおけるIC搭載をガラス基板裏面に直接行なうようにしたので、従来のようにICを搭載したフレキシブル基板やヒートシールを用いることによる支えのために接続端子を長くする必要はなく、短くでき、小型化、軽量化ができるとともに、使用材料も従来に比べ少なくてすみコスト低減にも寄与する。
【0026】以下に、前述したCOGパターンの他の形成方法とコネクタ部とCOGパターンとを一体化する形成方法を述べておく。
【0027】まず、COGパターンについて述べる。前記実施例では、COGパターンは厚膜印刷法で行なったが、この印刷法は微細化に限度(幅100μm程度まで)がある。そこで、より微細なパターンを形成したい場合、図3に示し以下に説明するオフセット印刷とメッキによる方法を行なえば実現できる。
【0028】オフセット印刷は一般的な既知な方式ではあるが、ここで簡単に説明する。基本構造としては図3(a)に示すように、目的とするパターンが凹形状になった版32と、その凹部にパターン材料から成るペーストインクを塗り込む装置と、凹部に塗り込まれたペーストインクをパターン形状そのままに受け取る転写ローラー33とからなる。この転写ローラー33が被印刷物35の表面をころがることにより、パターンが被印刷物35に印刷される仕組みである。
【0029】オフセット印刷は一般的方式であり、特にメーカー等を規定するものではないが、実施例に於てはT.O.Pシステム(田中貴金属工業株式会社製)及びAgペーストインクを用いて、前述のCOGパターンを作成した。この場合、導体膜厚は0.1〜1μm程度となる。
【0030】本実施例に於るCOGパターンの場合、配線抵抗から換算した各金属膜の厚さは表1の通りであり、オフセット印刷だけではとうてい満足出来ない。
【0031】
【表1】


【0032】従って、オフセット印刷後、メッキによるパターン被覆を行なう(図3(b)参照)。
【0033】基本的には、電解又は無電解メッキの前処理及びメッキ処理方法でよい。
【0034】無電解メッキの工程と条件例を示す。
【0035】■強アルカリ液ディップ(5〜10%NaOH 又は同量のNaCN添加してもよい) 40〜50℃、1分■弱塩酸液ディップ 3〜5%、5〜10秒、常温■メッキ液 Ni(日本カニゼン(株)シューマ) 90℃、1分〜5分■乾燥なお、各工程間は無論純水洗浄が行なわれる。COGパターンの場合、独立パターン(結線出来ない離ればなれのパターン)が有る為、無電解メッキが適当であったが、結線可能なパターンでは電解メッキ、又は電解、無電解メッキの組み合せでも無論さしつかえない。
【0036】以上のようにオフセット印刷を基本にすれば、100〜30μm程度の微細パターン形成が可能であり、微細パターンに於ても、通電時、所望の低抵抗、大容量化が出来る。
【0037】次に、前述したコネクタ部を含めた別の配線形成方法を図4に示し、以下に説明しておく。これは、より安価で工程数の少ない方法である。
【0038】まず、図4(a)に示すように、ガラス基板の配線側切断面(端面)を曲面加工する。
【0039】次いで、図4(b)のように、ガラス基板端部の配線に必要な所望のエリヤにITOペーストをスプレー塗布し、乾燥、焼成を行なう(例えば、塗布タイプITO成膜:河口湖精密(株))。
【0040】さらに、図4(c)のように、所望のエリヤに、図示しないが、ITO専用フォトレジストを成膜する。(例えば、ITO専用フォトレジスト:東京応化社製.PMER P−4000)。
【0041】膜厚 1.5μmプレベーク 110℃、3分そして、露光・現像・エッチングして配線パターンを形成する。フォトマスクは通常のフィルムマスクを使用するが、図4(c)の如き合せを行なう為、ガラス厚に合わせて曲げ加工してある。ただし、フィルムに折れ線がつかない様注意を要する。配線パターンは、ガラス基板の裏面部にはCOGパターンを形成し、そのパターンからガラス基板の表面にかけてカソード、アノードとの接続端子と接続するパターンとするのは言うまでもない。つまり、前述のヒートシールによるコネクタ(図1、図2R>2の10)をも、ガラス基板上に形成して、COGパターンと一体化した形となっている。本実施例でのホトリソグラフィの条件は下記の通りとした。
【0042】露光:(10mW/cm2 −405nm)
現像:東京応化(株) P−3現像液、25℃、45秒エッチング:HCl:塩化第2鉄:水=1:2:1(重量比)
以後、通常工程でのPDP基板作成工程の為、説明は省略する。
【0043】最終工程として、シール迄完成したPDPパネルのITOCOGパターン部を無電解メッキして、表裏の結線パターン及びCOGパターンの同時形成が終了する。
【0044】以上のような形成方法で配線パターンを形成すると、ヒートシール等のコネクタ部材を使用する必要がなく、スルーホール等高価、困難な工程を必要としないし、ガラス基板の表裏の位置合せが不要となり、安価で、信頼性、生産性の高い配線を形成できる。
【0045】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、フラットパネルディスプレイ装置において、ICをガラス基板の裏面に直接搭載するようにした(いわゆるCOG化)ので、装置の軽量化、薄型化、小型化ができるとともに、使用部材も従来より削減でき、コスト面でも安価な装置を実現できる。
【0046】このことは、これを組み込む装置にも、より大きい表示面積の画面を安価に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の部分図
【図2】本発明の実施例の製造工程
【図3】COGパターン形成例
【図4】コネクタ形成例
【図5】従来例
【符号の説明】
1 前面板(アノードガラス)
2 背面板(カソードガラス)
3 アノード
4 カソード
5 隔壁
6 接続端子
7 COGパターン
8 オーバーコートガラス
9 シールガラス
10 ヒートシール(コネクタ)
11 ICチップ
12 シリコンシール

【特許請求の範囲】
【請求項1】 カソードを形成した基板と、アノードとバリアリブとを形成した基板とを、該アノードとカソードが直交するように合わせ封じ込んであり、前記アノードとカソードに電圧を与えて放電させ可視表示させるようになっているフラットパネルディスプレイ装置において、前記カソードとアノードに電圧を与え駆動する回路を有する半導体装置が、前記基板の前記カソードあるいはアノードが形成されてない面に直接搭載してあり、前記半導体装置と前記アノードおよびカソードとの電気的接続をするための配線パターンが前記基板の表裏にわたって設けられていることを特徴とするフラットパネルディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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