説明

フラットパネルディスプレイ部材形成用組成物

【課題】良好なチキソトロピー性を有し、優れた成膜性の得られるフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物を提供すること。
【解決手段】フラットパネルディスプレイ部材形成用組成物は、(A)シリカ粒子、(B)特定の構造を有する少なくとも1種のオルガノシラン、当該オルガノシランの加水分解物および当該オルガノシランの縮合物、並びに下記式(2)で表わされる平均組成を有するポリシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種類のシラン化合物、(C)増粘剤および(D)水を含有し、(D)水の含有割合が組成物全体に対して0.1〜1.0質量%であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルディスプレイのパネル部材を形成するための材料として用いられるフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物に関し、更に詳しくはシリカ粒子を含有するペースト状の組成物よりなるフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、平板状の蛍光表示体として、プラズマディスプレイおよびフィールドエミッションディスプレイ(以下、「FED」ともいう。)などのフラットパネルディスプレイ(以下、「FPD」ともいう。)が注目されている。
図1は交流型のプラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」ともいう。)の断面形状を示す模式図であり、図2はFEDのパネル部材の断面形状を示す説明図である。
図1において、1および2はガラス基板、3および11は隔壁、4は透明電極、5はバス電極、6はアドレス電極、7は蛍光体、8および9は誘電体層、10は保護膜である。また、図2において、201および202はガラス基板、203は絶縁層、204は透明電極、205はエミッタ、206はカソード電極、207は蛍光体、208はゲート、209はスペーサである。
【0003】
このようなFPDを構成するフラットパネルディスプレイ部材(FPD部材)、具体的には、例えば誘電体、隔壁、電極、蛍光体、カラーフィルターおよびブラックストライプ(ブラックマトリックス)の製造方法としては、例えば基板の表面に無機粒子およびバインダー樹脂を含有してなる無機粒子含有ペースト組成物を塗布し、その塗膜を乾燥することによって無機粒子含有樹脂層を形成し、この無機粒子含有樹脂層を焼成する方法(特許文献1参照)が知られている。
一方、FPD部材を形成するための材料としては、近年のFPDに対するコスト低減等の要請から、比較的低温の処理によって部材の形成が可能な組成物の検討も行われている(特許文献2および特許文献3参照)。
【0004】
しかしながら、このようなFPD部材の形成材料として用いられる無機粒子含有ペースト組成物は、基板に塗布する際に、良好なチキソトロピー性を有しないものである場合には、十分な塗工性が得られず、また塗布することによって得られる塗膜に乾燥ムラが生じやすい、という問題がある。
なお、チキソトロピー性を有さない液体を塗布液として用いる場合には、その粘度を高いものとするか低いものとするかのいずれかが必要とされるが、高粘度とした場合には、基板に塗布する際において、基板表面に対して十分に塗れ広がらずに良好な塗工性得ることができず、一方、低粘度とした場合には、基板に塗布する際には液だれが生じ、また塗布することによって得られた塗膜においても、乾燥させるための風の影響や塗布液自体の流動性などに起因して膜厚が変化して乾燥ムラが生じる、などの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−102273号公報
【特許文献2】特開平9−71403号公報
【特許文献3】国際公開第200171761号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の事情に基づいてなされたものであって、その目的は、良好なチキソトロピー性を有し、優れた成膜性の得られるフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物は、
(A)シリカ粒子、
(B)下記式(1)で表わされる少なくとも1種のオルガノシラン、当該オルガノシランの加水分解物および当該オルガノシランの縮合物、並びに下記式(2)で表わされる平均組成を有するポリシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種類のシラン化合物、
(C)増粘剤および
(D)水
を含有し、
(D)水の含有割合が組成物全体に対して0.1〜1.0質量%であることを特徴とする。
【0008】
【化1】

【0009】
〔式中、R1 は、炭素数1〜8の1価の有機基を示し、R1 が2個以上存在する場合には、それらは互いに同じであっても異なっていてもよい。R2 は、それぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基を示す。nは0〜3の整数である。〕
【0010】
【化2】

【0011】
〔式中、R3 は、炭素数1〜8の有機基を示し、複数個存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよい。R4 は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアシル基およびフェニル基からなる群から選択される有機基を示し、複数個存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよい。このR3 およびR4 は、同じであっても異なっていてもよい。Yは、ハロゲン原子または水素原子を示す。a、b、c、d、eは、それぞれ独立に、0以上4以下であり、かつa+2b+c+d+e=4を満たす。〕
【0012】
本発明のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物においては、(A)シリカ粒子と(B)シラン化合物との合計100質量部に対する(C)増粘剤の質量比が0.05〜30であることが好ましい。
【0013】
本発明のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物においては、(A)シリカ粒子を固形物換算で65質量部以上100質量部未満および(B)シラン化合物を完全加水分解縮合物換算で0質量部を超えて35質量部以下(但し、(A)シリカ粒子の固形物換算量と(B)シラン化合物の完全加水分解縮合物換算量との合計を100質量部とする。)の割合で含有することが好ましい。
【0014】
本発明のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物においては、(C)増粘剤が、アクリル系重合体よりなることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物は、含有されている水分量を特定の範囲とすることによって良好なチキソトロピー性を有するものとなるよう調整されたものであり、塗工時においては十分な流動性を有する液状態とすることができることから優れた塗工性が得られ、その上、塗布することによって形成された塗膜においてはゲル状態を呈することとなることから乾燥ムラが生じることが抑制されるため、優れた成膜性が得られる。
従って、本発明のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物は、良好なチキソトロピー性を有し、優れた成膜性が得られるものであることから、所望のフラットディスプレイ部材を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一般的なPDPを示す模式的断面図である。
【図2】一般的なFEDを示す説明用断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物について詳細に説明する。
本発明のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物は、フラットパネルディスプレイ部材(FPD部材)の形成材料として用いられるものであり、シリカ粒子よりなるA成分と、シラン化合物よりなるB成分と、増粘剤よりなるC成分と共に、D成分として水を含有し、このD成分としての水の含有割合(以下「含有水分量」ともいう。)が組成物全体に対して0.1〜1.0質量%であるペースト組成物である。
ここに、本発明のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物中の水の含有割合は、カールフィッシャー法によって測定されるものである。
【0018】
本発明のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物においては、含有水分量は、0.1質量%以上で1.0質量%以下であることが必要とされるが、0.3〜0.6質量%であることが好ましく、特に0.45〜0.55質量%であることが好ましい。
【0019】
含有水分量が過小である場合には、ゲル化された状態における流動性が大きくなることから、形成される塗膜において乾燥ムラの発生を抑制することができなくなる。
一方、含有水分量が過大である場合には、液化された状態における流動性が小さくなる、またはチキソトロピー性が得られなくなることから、高い成膜性を得ることができなくなる。
【0020】
本発明のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物において、含有水分量を調整する手法としては、組成物を調製する過程において、A成分としてのシリカ粒子、B成分としてのシラン化合物およびC成分としての増粘剤と共にD成分としての水とを混合する際に、D成分の含有割合(含有水分量)が所望の範囲となるように計量して混合に供する方法、あるいは予めA成分としてのシリカ粒子、B成分としてのシラン化合物およびC成分としての増粘剤を混合し、その混合物における水分量を、カールフィッシャー法によって測定した後、その測定値に基づいてD成分としての水を添加する方法などを用いることができる。
このように水を添加することによって含有水分量を調整する場合においては、イオン交換水、純粋あるいは超純水のうちの温度25℃における抵抗率が17MΩ・cm以上となる水を用いることが好ましい。なお、このような低効率を有する水は、市販の純粋製造装置を用いることによって容易に入手することが可能なものである。
【0021】
以下、本発明のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物の構成成分のうちの水以外の各成分ついて説明する。
【0022】
〔(A)シリカ粒子〕
本発明のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物において、A成分としてシリカ粒子が含有されていることにより、特に、当該フラットパネルディスプレイ部材形成用組成物を誘電体形成材料として用いた場合において、得られる誘電体を誘電率の低いものとすることができる。
【0023】
本発明に係るシリカ粒子の原料としては、粉体形状のものの他、水に分散した状態の水系のゾルもしくはコロイド、またはイソプロピルアルコールなどの極性溶媒やトルエンなどの非極性溶媒に分散した状態の溶媒系のゾルもしくはコロイドなどの形態のものを用いることができる。
ここに、溶媒系のゾルもしくはコロイドの形態のものを用いる場合には、分散系に対して更に水や溶媒を添加して希釈することによってシリカ粒子の分散状態を調整することができ、また、シリカ粒子の分散性を向上させることを目的としてシリカ粒子として表面処理を施したものを用いることができる。また、この溶媒系のゾルもしくはコロイドの形態のものにおいては、その固形分濃度は、通常、0質量%を超えて50質量%以下であり、好ましくは0.01質量%以上40質量%以下である。
なお、A成分としてのシリカ粒子の原料として、シリカ粒子が有機溶剤に分散した状態のコロイダルシリカを用いた場合には、得られる硬化体(FPD部材)が優れた透明性および耐熱性を有するものとなる。
【0024】
また、本発明に係るシリカ粒子は、粒子径が0.03〜0.3μmの範囲にある粒子を体積基準で通常50%以上、好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上含有したものであることが好ましい。
ここに、本明細書中において、シリカ粒子の粒子径分布は、シリカ粒子を有機溶媒へ分散した状態において粒度分布測定装置(例えば、日機装社製のナノトラック粒度分布測定装置「UPA−150」)を用いてレーザー回折法によって測定されてなるものである。
【0025】
シリカ粒子が、粒子径が0.03μm以下の粒子を含有し、それに伴って粒子径が0.03〜0.3μmの範囲にある粒子の含有割合が体積基準で50%未満となった場合には硬化体(FPD部材)を形成するための成膜時、および形成した硬化体(FPD部材)が高温下に置かれることにより、クラックが生じるおそれがある。一方、粒子径が0.3μm以上の粒子を含有し、それに伴って粒子径が0.03〜0.3μmの範囲にある粒子の含有割合が体積基準で50%以下となった場合には、硬化体(FPD部材)に十分な透明性が得られなくなるおそれがある。
なお、本発明に係るシリカ粒子においては、粒子径が0.03〜0.3μmの範囲にある粒子の含有割合が体積基準で50%以上であればよく、この条件を満たす範囲内において複数の粒子径分布を有する粒子を混合したものであってもよい。
【0026】
本発明に係るシリカ粒子の原料の具体例としては、粉体形状のものとして、例えば日本アエロジル社製の「#150」、「#200」および「#300」等のその表面に対して表面処理が施されていないもの、日本アエロジル社製の「R972」、「R974」、「R976」、「RX200」、「RX300」、「RY200S」、「RY300」および「R106」、東ソー社製の「SS50A」、富士シリシア社製の「サイロホービック100」等のその表面に対して疎水化処理が施されてなるものなどが挙げられる。また、溶剤分散のコロイダルシリカとして、例えば日産化学工業社製のイソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤分散コロイダルシリカ、メチルイソブチル等のケトン系溶剤分散コロイダルシリカ、トルエン等の非極性溶剤分散コロイダルシリカ等が挙げられる。
なお、A成分としてのシリカ粒子の原料として、コロイダルシリカを用いる場合には、本発明のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物を調製する際に、他の成分(具体的には、少なくともB成分としてのシラン化合物およびC成分としての増粘剤)と共に混合してもよく、また、後述するB成分としてのシラン化合物を得るための加水分解および縮合反応の反応系に添加することもできる。
【0027】
ここに、本発明のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物においては、シリカ粒子と共にシリカ粒子以外の無機粒子を用いることもできる。
【0028】
シリカ粒子と併用することのできる無機粒子としては、ZrO2 、Al2 3 、AlGaAs、Al(OH)3 、Si3 4 、Sn−In2 3 、Sb−In2 3 、MgF、CeF3 、CeO2 、3Al2 3 ・2SiO2 、BeO、SiC、AlN、Fe、Co、Co−FeOx 、CrO2 、Fe4 N、BaTiO3 、BaO−Al2 3 −SiO2 、Baフェライト、SmCO5 、YCO5 、CeCO5 、PrCO5 、Sm2 CO17、Nd2 Fe14B、Al4 3 、α−Si、SiN4 、CoO、Sb−SnO2 、Sb2 5 、MnO2 、MnB、Co3 4 、Co3 B、LiTaO3 、MgO、MgAl2 4 、BeAl2 4 、ZrSiO4 、ZnSb、PbTe、GeSi、FeSi2 、CrSi2 、CoSi2 、MnSi1.73、Mg2 Si、β−B、BaC、BP、TiB2 、ZrB2 、HfB2 、Ru2 Si3 、TiO3 、PbTiO3 、Al2 TiO5 、Zn2 SiO4 、Zr2 SiO4 、2MgO2 −Al2 3 −5SiO2 、Nb2 5 、Li2 O−Al2 3 −4SiO2 、Mgフェライト、Niフェライト、Ni−Znフェライト、Liフェライト、Srフェライトなどよりなるものが挙げられる。
これらの無機粒子は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができ、また無機化合物の複合体よりなる粒子を使用することもできる。
【0029】
上記の無機粒子の含有割合は、A成分としてのシリカ粒子と、当該無機粒子との合計を100質量部に対して40質量部未満であることが好ましく、より好ましくは30質量部未満である。
上記の無機粒子の含有割合が上記範囲内であることにより、光学特性に悪影響を及ぼす可能性を小さくすることができる。
【0030】
〔(B)シラン化合物〕
本発明のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物に用いられるB成分としてのシラン化合物は、上記式(1)で表わされるオルガノシラン(以下、「(b1)成分」ともいう。)、当該式(1)で表わされるオルガノシランの加水分解物、および当該オルガノシランの縮合物、並びに上記式(2)で表わされる平均組成を有するポリシロキサン(以下、これらの加水分解物、縮合物およびポリシロキサンをまとめて「(b2)成分」ともいう。)からなる群から選択される化合物である。
このB成分としてのシラン化合物は、少なくとも(b1)成分または(b2)成分を含有するものであればよく、また、(b1)成分を構成するオルガノシランが1種であっても2種以上であってもよく、(b2)成分を構成する加水分解物および縮合物、並びに式(2)で表わされる平均組成を有するポリシロキサンが、各々、1種であっても2種以上であってもよい。
【0031】
((b1)成分)
(b1)成分を構成するオルガノシランを示す式(1)において、R1 は、炭素数1〜8の1価の有機基であり、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基などのアルキル基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ベンゾイル基、トリオイル基、カプロイル基などのアシル基;
ビニル基、アリル基、シクロヘキシル基、フェニル基、エポキシ基、グリシジル基、(メタ)アクリルオキシ基、ウレイド基、アミド基、フルオロアセトアミド基、イソシアネート基などが挙げられる。
更に、基R1 としては、これらの有機基の置換誘導体などが挙げられる。
基R1 を示す置換誘導体の置換基としては、例えばハロゲン原子、無置換もしくは置換基を有するアミノ基、水酸基、メルカプト基、イソシアネート基、グリシドキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、(メタ)アクリルオキシ基、ウレイド基、アンモニウム塩基などが挙げられる。但し、基R1 がこれらの置換基を有する置換誘導体からなる場合において、当該置換誘導体の炭素数は、置換基を構成する炭素原子を含めて8以下であることが好ましい。
また、式(1)中において、R1 が複数個(具体的には、2または3個)存在する場合には、これらは互いに同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0032】
また、式(1)において、R2 は、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基を示す。
ここに、式(1)中において、R2 は複数個(具体的には、2〜4個)存在するが、これらはすべてが同一のものであっても異なるものであってもよい。
基R2 を示す炭素数1〜5のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基などが挙げられる。
基R2 を示す炭素数1〜6のアシル基としては、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、カプロイル基などが挙げられる。
【0033】
このような(b1)成分としてのオルガノシランの具体例としては、トリメチルモノメトキシシラン、トリメチルモノエトキシシラン、トリエチルモノエトキシシラン、トリ−n−プロピルモノメトキシシラン、トリ−n−プロピルモノエトキシシラン、トリ−i−プロピルモノメトキシシラン、トリ−i−プロピルモノエトキシシラン、トリ−n−ブチルモノメトキシシラン、トリ−n−ブチルモノエトキシシラン、ジ−メチル−フェニルモノメトキシシラン、ジ−エチル−フェニルモノエトキシシランなどのモノアルコキシシラン類(式(1)においてn=3);
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン類(式(1)においてn=0);
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのトリアルコキシシラン類(式(1)においてn=1);
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジエトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジメトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジエトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどのジアルコキシシラン類(式(1)においてn=2);
メチルトリアセチルオキシシラン(式(1)においてn=1)、ジメチルジアセチルオキシシラン(式(1)においてn=2)などが挙げられる。
これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
((b2)成分)
この(b2)成分には、前述の(b1)成分を構成する式(1)で表わされるオルガノシランの加水分解物、および当該式(1)で表わされるオルガノシランから得られるポリシロキサン(オルガノシランの縮合物)と共に、ハロゲン化シランから得られるポリシロキサンが包含される。
【0035】
(オルガノシランの加水分解物および縮合物)
(b2)成分を構成するオルガノシランの加水分解物は、前述の(b1)成分を構成する式(1)で表わされるオルガノシランを加水分解することによって生成する加水分解物であり、また(b2)成分を構成するオルガノシランの縮合物は、前述の(b1)成分を構成する式(1)で表わされるオルガノシランを加水分解することによって生成する加水分解物において、この加水分解物の原料である式(1)で表わされるオルガノシランを構成するOR2 基が加水分解することによって形成されるシラノール基が縮合してSi−O−Si結合が形成されてなるものである。
この(b2)成分を構成するオルガノシランの加水分解物においては、原料である式(1)で表わされるオルガノシランを構成する1〜4個のOR2 基のうちの少なくとも1個が加水分解されていればよく、具体的には、例えば1個のOR2 基が加水分解されたもの、2個以上のOR2 基が加水分解されたもの、あるいはこれらが混合されてなるものであってもよい。また、オルガノシランの縮合物においては、加水分解によって生成されたシラノール基は、そのすべてが縮合している必要はなく、一部のシラノール基が縮合したもの、大部分(全部を含む)のシラノール基が縮合したもの、あるいはこれらが混合されてなるものであってもよい。
【0036】
(加水分解縮合触媒)
上記オルガノシランの加水分解物およびオルガノシランの縮合物(以下、これらをまとめて「オルガノシランの加水分解物・縮合物」ともいう。)を得るための加水分解反応および縮合反応に使用する触媒(加水分解縮合触媒)としては、塩基性化合物、酸性化合物、有機金属化合物および/またはその部分加水分解物(以下、この「有機金属化合物および/またはその部分加水分解物」をまとめて、「有機金属化合物類」という。)が挙げられる。
【0037】
(塩基性化合物)
上記塩基性化合物としては、アンモニア(アンモニア水溶液を含む);有機アミン化合物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属のアルコキシドが挙げられる。これらのうちでは、アンモニアおよび有機アミン化合物が好ましい。
【0038】
有機アミン化合物としては、アルキルアミン、アルコキシアミン、アルカノールアミン、アリールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイドおよびピリジンなどが挙げられる。
これらのうちでは、アルキルアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイドおよびピリジンが好ましい。
【0039】
アルキルアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミンなどの炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアミンなどが挙げられる。
【0040】
上記塩基性化合物は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、塩基性化合物としては、前述のようにアンモニアおよび有機アミン化合物を用いることが好ましいが、これらのうちでも、有機アミン化合物として例示した、トリエチルアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイドおよびピリジンを用いることが特に好ましい。
【0041】
(酸性化合物)
上記酸性化合物としては、有機酸および無機酸が挙げられ、特に、マレイン酸、無水マレイン酸、メタンスルホン酸および酢酸が好ましい。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
(有機金属化合物類)
上記有機金属化合物類としては、例えば下記式(3)で表わされる化合物(以下、「有機金属化合物(3)」ともいう。)、1個のスズ原子に炭素数1〜10のアルキル基が1個または2個結合した4価のスズの有機金属化合物(以下、「有機スズ化合物」という。)およびこれらの部分加水分解物(具体的には、有機金属化合物(3)の部分加水分解物および有機スズ化合物の部分加水分解物)などが挙げられる。
【0043】
【化3】

【0044】
〔式中、Mは、ジルコニウム原子、チタン原子、アルミニウム原子およびナトリウム原子からなる群から選択される1種の金属原子を示し、R10およびR11は、それぞれ独立に、炭素数1〜6の1価の炭化水素基を示し、R12は、炭素数1〜6の1価の炭化水素基または炭素数1〜16のアルコキシル基を示す。rおよびsは、それぞれ独立に、0〜4の整数であって、(r+s)=(Mの原子価)の関係を満たす。〕
【0045】
この式(3)において、R10およびR11、並びにR12を示す炭素数1〜6の1価の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基などが挙げられる。
また、基R12を示す炭素数1〜16のアルコキシル基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ラウリルオキシ基、ステアリルオキシ基などが挙げられる。
【0046】
上記有機スズ化合物の具体例としては、例えばカルボン酸型有機スズ化合物、メルカプチド型有機スズ化合物、スルフィド型有機スズ化合物、クロライド型有機スズ化合物、有機スズオキサイドおよびこれらの有機スズオキサイドと、シリケート、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フタル酸ジオクチルなどのエステル化合物との反応生成物などが挙げられる。
【0047】
上記加水分解縮合触媒の使用量は、オルガノシランモノマー(原料である式(1)で表わされるオルガノシラン)の合計(完全加水分解縮合物換算)100質量部に対して、通常、0.001〜20質量部、好ましくは0.01〜10質量部、更に好ましくは0.1〜5質量部である。
ここに、オルガノシランモノマー(式(1)で表わされるオルガノシラン)に係る完全加水分解縮合物とは、オルガノシランモノマー中に含まれるOR2 基のすべて(100%)が加水分解してOH基となってSi−OH基を形成し、更に当該Si−OH基が完全に縮合することによってシロキサン構造が形成されたものをいう。
【0048】
(加水分解反応・縮合反応)
上記オルガノシランの加水分解物・縮合物を得るためには、原料である式(1)で表わされるオルガノシラン(以下、「オルガノシランモノマー」ともいう。)に水を添加して加水分解反応および縮合反応させることによって当該オルガノシランモノマーを加水分解・縮合させる。
【0049】
このオルガノシランモノマーの加水分解反応および縮合反応に供される水の使用量(添加量)は、オルガノシランモノマーの合計(完全加水分解縮合物換算)100質量部に対して、通常、10〜500質量部、好ましくは20〜200質量部、より好ましくは30〜100質量部である。
水の使用量が上記範囲にあることにより、加水分解反応および縮合反応が十分に進行すると共に、反応が完了した後に除去すべき水の量が少なくなるため好ましい。
【0050】
(溶剤)
また、オルガノシランモノマーの加水分解反応および縮合反応は、有機溶剤中において行われることが好ましい。
このオルガノシランモノマーの加水分解反応および縮合反応の反応系において用いられる有機溶媒としては、例えばアルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類などが挙げられる。
これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、これらのうち、反応を促進する観点からは、アルコール類以外の有機溶剤、具体的には、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレンなどを使用することが好ましい。
更に、これらは、予め脱水処理を施すことによって水分を除去した状態で使用することが好ましい。
【0051】
このような有機溶剤は、オルガノシランモノマーの加水分解反応および縮合反応をコントロールすることなどを目的として適宜使用することができ、その使用量は、所望の条件に応じて適宜設定することができる。
【0052】
(反応条件)
このようなオルガノシランモノマーの加水分解反応および縮合反応においては、その反応条件は、反応温度が、好ましくは10〜100℃、より好ましくは15〜80℃、特に好ましくは20〜70℃である。また、反応時間は、好ましくは0.3〜48時間、より好ましくは0.5〜24時間、特に好ましくは1〜12時間である。
【0053】
また、このオルガノシランモノマーの加水分解反応および縮合反応の反応系には、A成分としてのシリカ粒子が含有されていてもよい。特にオルガノシランモノマーの加水分解反応および縮合反応の反応系に、シリカ粒子の原料として、コロイダルシリカが含有されている場合には、このコロイダルシリカに、その製造時に使用される酸が残存しているのであれば、この酸が加水分解触媒としても作用することから、必要に応じて触媒の添加量を低減してもよい。
【0054】
(中和)
また、オルガノシランモノマーの加水分解反応および縮合反応によって得られた反応生成物としてのシラン化合物は、貯蔵安定性の点から、加水分解反応および縮合反応の反応生成物に対して脱触媒処理として水洗を行うことが好ましい。特に加水分解縮合触媒として塩基性化合物を使用した場合には、加水分解反応および縮合反応の反応生成物に対して酸性化合物による中和を行った上で、水洗を行うことがより好ましい。
【0055】
加水分解反応および縮合反応の反応生成物を中和するための酸性化合物としては、オルガノシランの加水分解物および縮合物を得るための加水分解縮合触媒として例示した上記酸性化合物が挙げられる。
酸性化合物の使用量は、加水分解反応および縮合反応に触媒として使用した塩基性化合物1規定に対し、通常、0.5〜2規定、好ましくは0.8〜1.5規定、更に好ましくは0.9〜1.3規定である。
また、酸性化合物としては、中和後に行われる水洗時において水層に抽出されやすいとの観点から、水溶性のものを用いることが好ましい。
また、水溶性の酸性化合物を水に溶解して用いる場合には、この酸性化合物の水に対する添加量は、水100質量部に対して、通常、0.5〜100質量部、好ましくは1〜50質量部、より好ましくは2〜10質量部である。
【0056】
脱触媒処理としての水洗は、水洗の対象体に対して水を添加して十分に撹拌した後に静置し、水相と有機溶媒相とが相分離したことを確認し、その後、下層の水分を除去することによって行う。このような水洗の回数は、好ましくは1回以上、更に好ましくは2回以上である。その後、溶媒を留去することにより、目的のオルガノシランの加水分解物および縮合物を得る。
ここに、水洗の対象体は、加水分解反応および縮合反応の反応生成物に対して酸性化合物による中和を行った場合には、中和が終了した系を十分に撹拌した後に静置し、水相と有機溶媒相とが相分離したことを確認し、その後、下層の水分を除去することによって得られた中和後の反応生成物であり、一方、中和を行わなかった場合には、加水解反応および縮合反応の反応生成物自体である。
【0057】
水洗に係る水の使用量は、使用した全オルガノシランモノマー、すなわち加水分解反応および縮合反応に供したオルガノシランモノマー100質量部に対して、通常、10〜500質量部、好ましくは20〜300質量部、より好ましくは30〜200質量部である。
【0058】
(重量平均分子量)
上記オルガノシランモノマーの加水分解反応および縮合反応により得られる、(b2)成分としてのオルガノシランの加水分解物・縮合物の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算値で800〜50,000であり、好ましくは1,000〜40,000である。
(b2)成分としてのオルガノシランの加水分解物・縮合物の重量平均分子量(Mw)が上記範囲にあることにより、FPD部材を形成するための成膜時および、形成したFPD部材が高温下に置かれることによってクラックが生じることを抑制することができる。
【0059】
このようなB成分に係るシラン化合物としては、ハロゲン化シランから得られるポリシロキサンを用いることもできる。このポリシロキサンは、原料であるハロゲン化シランに由来のハロゲン基のすべてが脱離して縮合している必要はなく、一部のハロゲン基が脱離して縮合したもの、大部分(全部を含む)のハロゲン基が脱離して縮合したもの、ハロゲン基がアルコールによってアルコキシ基に変性されてなるもの、ハロゲン基が水によってシラノール基に部分加水分解されてなるものであってもよく、更には、これらが混合されてなるものであってもよい。
【0060】
(ポリシロキサン)
(b2)成分を構成する、式(2)で表わされる平均組成を有するポリシロキサンには、前述の式(1)で表わされるオルガノシロキサンの縮合物のいくつかの種類と同様のものが含有されている。
【0061】
(b2)成分を構成するポリシロキサンを示す式(2)において、R3 は、炭素数1〜8の1価の有機基であり、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基などのアルキル基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ベンゾイル基、トリオイル基、カプロイル基などのアシル基;
ビニル基、アリル基、シクロヘキシル基、フェニル基、エポキシ基、グリシジル基、(メタ)アクリルオキシ基、ウレイド基、アミド基、フルオロアセトアミド基、イソシアネート基などが挙げられる。
更に、基R3 としては、これらの有機基の置換誘導体などが挙げられる。
基R3 を示す置換誘導体の置換基としては、例えばハロゲン原子、無置換もしくは置換基を有するアミノ基、水酸基、メルカプト基、イソシアネート基、グリシドキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、(メタ)アクリルオキシ基、ウレイド基、アンモニウム塩基などが挙げられる。但し、基R3 がこれらの置換基を有する置換誘導体からなる場合において、当該置換誘導体の炭素数は、置換基を構成する炭素原子を含めて8以下であることが好ましい。
また、式(2)中において、R3 が複数個存在する場合には、これらは互いに同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0062】
また、式(2)において、R4 は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアシル基およびフェニル基からなる群から選択される有機基を示す。
ここに、式(2)中において、R4 は複数個する場合には、これらは互いに同一のものであっても異なるものであってもよい。
基R4 を示す炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基などを挙げることができ、
基R4 を示す炭素数1〜6のアシル基としては、例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、トリオイル基、カプロイル基などが挙げられる。
【0063】
この式(2)で表わされる平均組成を有するポリシロキサンとしては、当該式(2)において、aが、通常、0以上2以下、好ましくは0以上1.8以下であるものが好ましい。
式(2)におけるaが上記範囲にあることにより、硬化体(FPD部材)の製造過程において形成される塗膜を優れた耐熱性を有するものとすることができる。
なお、この式(2)におけるaの値は、原料として用いるオルガノシランモノマーやハロゲン化シランの種類およびその配合割合を適宜調整することにより調整して設定することができる。
【0064】
このポリシロキサンの重量平均分子量(Mw)は、前述の式(1)で表わされるオルガノシランの加水分解物・縮合物と同様に、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算値で800〜50,000であり、好ましくは1,000〜40,000である。
【0065】
このような構成を有する本発明に係る(b2)成分としては、例えば三菱化学(株)製の「MKCシリケート」、コルコート社製のエチルシリケート、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のシリコーンレジン、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の末端ヒドロキシポリシロキサンレジン(例えば商品名「YR3370」)、信越化学工業(株)製のシリコーンレジンなどの市販品(ポリシロキサン)を用いることができる。
【0066】
本発明に係るB成分としてのシラン化合物の好ましい具体例としては、ジメチルジメトキシシランの加水分解・縮合物、メチルトリメトキシシランの加水分解・縮合物、およびジメチルジメトキシシランとメチルトリメトキシシランの共加水分解・縮合物などが挙げられる。
【0067】
((A)シリカ粒子と(B)シラン化合物との含有量)
本発明のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物中におけるA成分としてのシリカ粒子の含有割合、およびB成分としてのシラン化合物の含有割合は、A成分としてのシリカ粒子の固形物換算の質量とB成分としてのシラン化合物の完全加水分解縮合物換算の質量との合計を100質量部とした場合において、上記A成分としてのシリカ粒子の含有割合が固形物換算で65質量部以上100質量部未満であることが好ましく、特に好ましくは70質量部以上98質量部以下である。一方、B成分としてのシラン化合物の含有割合は完全加水分解縮合物換算で0質量部を超えて35質量部以下であることが好ましい。
A成分としてのシリカ粒子とB成分としてのシラン化合物との関係において、シリカ粒子の割合を65質量部以上、すなわちシラン化合物の割合を35質量部以下とすることにより、硬化体(FPD部材)の製造過程において形成される塗膜を優れた耐熱性を有するものとすることができる。
一方、B成分としてのシラン化合物の割合が35質量部を超える、すなわちA成分としてのシリカ粒子の割合が65質量部未満である場合には、硬化体(FPD部材)を形成するための成膜時および、形成した硬化体(FPD部材)が高温下に置かれることによってクラックが生じるおそれがある。
ここに、本明細書中において、シラン化合物に係る完全加水分解縮合物換算とは、シラン化合物中に含まれる、式(1)に係るOR2 基、式(2)に係るOR4 基およびY基のすべて(100%)が加水分解することによってSi−OH基を形成し、更に当該Si−OH基が完全に縮合することによってシロキサン構造が形成されたものをいう。
【0068】
〔(C)増粘剤〕
本発明のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物に用いられるC成分としての増粘剤は、例えばスリットコーターなどを用いることによって成膜する際の塗布液の粘度を上げて成膜性を向上させるために含有されるものである。
【0069】
C成分としての増粘剤としては、重合体、界面活性剤、有機フィラー、無機フィラーなどが挙げられるが、特に重合体を用いることが好ましい。
また、重合体としては、硬化体(FPD部材)形成時の焼成処理温度(400〜650℃)によって完全に酸化除去される物質が特に好ましく、例えば、700℃以下で分解若しくは揮発する(共)重合体(以下、「特定重合体」ともいう。)を挙げることができる。
【0070】
(特定重合体)
上記特定重合体としては、例えばアクリル系重合体;セルロース誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールおよびその共重合体;ウレタン系重合体;メラミン系重合体;乳酸の単独重合体;乳酸と共重合性単量体との共重合体などが挙げられる。これらは単独でまたは2種類以上組み合わせて用いることができる。
これらのうちでは、、アクリル系重合体、セルロース誘導体、エチレングリコール−プロピレングリコールのランダム共重合体が好ましく、特に好ましくはアクリル系重合体である。
【0071】
ここに、上記アクリル系重合体としては、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物の単独重合体、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物の2種以上の共重合体、および下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物と他の共重合性単量体との共重合体が包含される。
【0072】
【化4】

【0073】
〔式中、R21は水素原子またはメチル基を示し、R22は1価の有機基を示す。〕
【0074】
一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;
フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレート;
2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−プロポキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシブチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;
ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート;
ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0075】
これらのうちでは、一般式(1)におけるR22が、アルキル基またはアルコキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基であるものが好ましい。
具体的に、特に好ましい(メタ)アクリレート化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレートおよび2−エトキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0076】
一般式(1)で表わされる(メタ)アクリレート化合物との共重合に供される他の共重合性単量体としては、当該(メタ)アクリレート化合物と共重合可能な化合物であれば特に制限はなく、例えば(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、ビニルフタル酸などの不飽和カルボン酸類;ビニルベンジルメチルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレンなどのビニル基含有ラジカル重合性化合物が挙げられる。
【0077】
セルロース誘導体としては、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、2−ヒドロキシエチルセルロース、2−ヒドロキシプロピルセルロース、2−ヒドロキシエチル・メチルセルロース、2−ヒドロキシエチル・エチルセルロース、2−ヒドロキシプロピル・メチルセルロース、2−ヒドロキシプロピル・エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
【0078】
ポリアルキレングリコールおよびその共重合体としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール・プロピレングリコールの共重合体などが挙げられるが、その分子量は、20万以上であることが好ましく、50万以上であることが特に好ましい。
【0079】
本発明のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物中におけるC成分としての増粘剤の含有割合は、A成分としてのシリカ粒子とB成分としてのシラン化合物の合計100質量部に対する質量比、具体的には、下記数式(1)によって算出される質量比で0.05〜30、好ましくは1〜20の範囲である。
C成分としての増粘剤の含有割合が過小、すなわちA成分としてのシリカ粒子とB成分としてのシラン化合物との合計に対する質量比が0.05以下である場合には、成膜後にクラックが発生しやすくなるおそれがある。一方、C成分としての増粘剤の含有割合が過大、すなわちA成分としてのシリカ粒子とB成分としてのシラン化合物との合計に対する質量比が30以上である場合には、硬化体が増粘剤が残留することに起因して着色したものとなってFPD部材として好適に用いることができなくなるおそれがある。
【0080】
【数1】

【0081】
〔式中、WA は、フラットパネルディスプレイ部材形成用組成物中のA成分としてのシリカ粒子の質量を示し、WB は、フラットパネルディスプレイ部材形成用組成物中のB成分としてのシラン化合物の質量を示し、WC は、フラットパネルディスプレイ部材形成用組成物中のC成分としての増粘剤の質量を示す。〕
【0082】
〔(E)有機溶剤〕
本発明のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物には、当該組成物の全固形分濃度および粘度の調整、または硬化体(FPD部材)の厚みを調整することなどを目的として、E成分として有機溶剤が含有されていてもよい。
また、このE成分としての有機溶剤が含有されていることにより、フラットパネルディスプレイ部材形成用組成物の分散安定性および保存安定性が一層優れたものとなる。
【0083】
E成分としての有機溶剤の使用量は、所望の条件に応じて適宜設定することができるが、例えばフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物の全固形分濃度が、好ましくは5〜99質量%、より好ましくは7〜95質量%、特に好ましくは10〜90質量%となる量である。
ここに、「固形分濃度」とは、フラットパネルディスプレイ部材形成用組成物中に占めるE成分としての有機溶剤以外の組成の濃度を示す。
【0084】
E成分としての有機溶剤としては、上記B成分としてのシラン化合物の製造に用いられる有機溶剤として例示した、アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類などを挙げることができる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0085】
上記E成分としての有機溶剤においては、1気圧における沸点が、100℃以上300℃以下であることが好ましく、150℃以上250℃以下であることが特に好ましい。
1気圧における沸点が100℃未満である場合には、塗布操作において塗布された組成物(フラットパネルディスプレイ部材形成用組成物)が急激に乾燥されることに起因して、乾固物が被塗工面に付着したり、塗りムラが発生したりするおそれがある。一方、1気圧における沸点が300℃を越える場合には、焼成処理を経ることによって得られる硬化体(FPD部材)中にE成分としての有機溶剤が残留しやすくなり、それに起因して当該硬化体の強度低下や表面の荒れを引き起こされるおそれがある。
【0086】
上記アルコール類としては、例えば1−ペンタノール、2−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−エチルブタノール、n−ヘキサノール(n−ヘキシルアルコール)、2−エチルヘキサノール、2−オクタノール、ターピネオール、i−ブチルアルコール、n−ブチルアルコール、、n−オクチルアルコール、2−ヘプチルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル(2−ブトキシエタノール)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレンモノメチルエーテルアセテート、ジアセトンアルコールなどが挙げられる。
また、上記芳香族炭化水素類としては、トルエン、キシレンなどが挙げられ、上記エーテル類としては、ジエチルアセタール、ジブチルエーテル、ジオキサンなどが挙げられ、上記ケトン類としては、アセチルアセトン、エチル−n−ブチルケトン、ジアセトンアルコール、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、ジイソプロピルケトンなどが挙げられ、上記エステル類としては、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸メチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸ジエチル、乳酸メチル、乳酸エチル、マレイン酸ジブチル、などが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0087】
このような有機溶剤の好ましい具体例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、n−ヘキサノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−ブトキシエタノールなどが挙げられる。
【0088】
〔フラットパネルディスプレイ部材形成用組成物の製造方法〕
本発明のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物は、例えばE成分としての有機溶剤に、A成分としてのシリカ粒子と、B成分としてのシラン化合物と、C成分としての増粘剤と、必要に応じて、塩基性化合物、酸性化合物または有機金属化合物類よりなる加水分解縮合触媒とを添加し、A成分としてのシリカ粒子をE成分としての有機溶剤中に分散させ、必要に応じてD成分としての水を添加することにより調製することができる。
このようなフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物の製造方法においては、A成分としてのシリカ粒子等の分散性に応じて、例えばボールミル、サンドミル(ビーズミル,ハイシェアビーズミル)、ホジナイザー、超音波ホモジナイザー、ナノマイザー、プロペラミキサー、ハイシェアミキサー、ペイントシェーカーなどの公知の分散機を用いることが好ましく、特に高分散性能を有する微粒子分散体ボールミル、サンドミル(ビーズミル,ハイシェアビーズミル)が好適に使用される。
【0089】
以上のような本発明のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物は、含有されている水分量を特定の範囲とすることによって良好なチキソトロピー性を有するものとなるよう調整されたものであり、塗工時においては十分な流動性を有する液状態とすることができることから、塗工対象面に対して十分に塗れ広がり、優れた塗工性が得られ、その上、塗布することによって形成された塗膜においてはゲル状態を呈することとなることから、乾燥させるための風の影響や塗布液自体の流動性などに起因して膜厚が変化して乾燥ムラが生じることが抑制されるため、優れた成膜性が得られる。
従って、本発明のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物は、良好なチキソトロピー性を有し、優れた成膜性が得られるものであることから、塗工工程を経ることによって形成される部材の形成材料として用いることができ、所望の形状の部材を容易に製造することができる。具体的には、所望のフラットディスプレイ部材を容易に製造することができる。
【0090】
このように、本発明のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物は、具体的に、誘電体形成材料、隔壁形成材料、電極形成材料、抵抗体形成材料、蛍光体形成材料、カラーフィルター形成材料およびブラックマトリックス形成材料などのフラットディスプレイ部材の形成材料として用いることができるが、優れた成膜性を有するものであることから、得られる硬化体を高い平滑性を有するものとすることができることなどから、誘電体形成材料として好適に用いることができる。
【0091】
〔フラットパネルディスプレイ部材の製造方法〕
本発明のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物によれば、例えば本発明のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物を基板上に塗布し、成膜することによってFPD部材を得ることができる。
また、形成すべきFPD部材に応じて、基板上に形成した塗膜を所定の形状にパターニングすることにより、パターンを有する部材を形成することもできる。
【0092】
本発明のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物を塗布する方法としては、例えば刷毛、ロールコーター、バーコーター、フローコーター、遠心コーター、超音波コーター、(マイクロ)グラビアコーターなどを用いて塗布する手法;ディップコート法;流し塗り法;スプレー法;スクリーンプロセス法;電着法;蒸着法などが挙げられる。
【0093】
FPD部材の製造方法の具体的な一例としては、本発明のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物を、例えばスリットコーターなどを用いることによってガラス基板の表面に塗布して塗膜を形成し、この塗膜を乾燥することによって膜形成材料層を形成し、その後、得られた膜形成材料層を焼成することによって有機物質(溶剤等)を分解して除去すると共に焼結することにより、硬化体よりなるFPD部材を形成することができる。
ここに、塗膜の乾燥条件は、例えば40℃〜150℃で1〜60分間とされる。また、膜形成材料層の厚さは、例えば5〜250μmとされる。
また、膜形成材料層の焼成条件は、加熱温度(焼成処理温度)は、例えば400〜650℃であり、焼成時間は、例えば1〜360分間である。
【0094】
本発明のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物によれば、1回塗りによっては厚さ(乾燥膜厚)が0.05〜40μm程度の硬化体(FPD部材)を形成することができ、2回塗りによっては厚さ(乾燥膜厚)が0.1〜80μm程度の硬化体(FPD部材)を形成することができる。
ここに、「1回塗り」とは、フラットパネルディスプレイ部材形成用組成物を基板上に塗布する際に、塗布操作と、当該塗布操作によって得られる塗布膜の乾燥操作とを1サイクルのみ実施することを意味し、「2回塗り」とは、塗布操作と、当該塗布操作によって得られる塗布膜の乾燥操作を2回繰り返して実施することを意味する。
【実施例】
【0095】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。
但し、本発明は、これらの実施例になんら制約されるものではない。
なお、実施例および比較例中の「部」および「%」は、特記しない限り、質量基準である。
【0096】
実施例および比較例における各種の測定および評価は、下記の方法により行なった。
【0097】
(1)GPC測定
シラン化合物の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより下記条件で測定したポリスチレン換算値である。
装置:HLC−8120C(東ソー社製)
カラム:TSK−gel MultiporeHXL−M(東ソー社製)
溶離液:THF、流量0.5mL/min、負荷量5.0%、100μL
【0098】
(2)粒度分布測定
シリカ粒子の粒度分布測定は、測定装置として日機装社製の粒度分布測定装置(ナノトラック粒度分布測定装置「UPA−150」)を用い、次のようにして行った。
まず、サンプルセル内にイソプロピルアルコールを注入しバックグランドの測定を行い、次いで、イソプロピルアルコール中にシリカ粒子が分散した分散液よりなるサンプルを、サンプル濃度が装置の適正濃度範囲に入るようにしてサンプルセルに注入する。計測条件を選択して、測定時間60秒間、測定回数1回の条件にて測定を行い、体積基準による粒度分布を得た。
【0099】
(3)組成物における含有水分量
含有水分量は、カールフィッシャー法によって測定した。
【0100】
(4)粘度
粘度は、測定装置としてTAインスツリメント社製の粘弾性測定装置「アレス100」を用い、測定温度25℃、パラレルプレート間隙1mmの条件にてずり速度1000s-1で20秒間の予備回転を行った後、ずり速度1s-1および1000s-1の条件の回転を1分間行ってこの1分間のうちの最後の10秒間における粘度を測定し、その平均値を各ずり速度に係る粘度とした。
【0101】
(5)塗工性の評価
塗工性の評価は、ガラス製の平板上にギャップ200μmのアプリケーターを用いて組成物の塗布を行い、得れらた塗膜を目視にて観察し、ガラス製の平板の表面全体にアプリケーターの幅に対応する幅を有する塗膜が均一に形成されている場合を良好として「○」、ガラス製の平板の表面上において、ところどころに塗膜が形成されていない箇所が線状に存在し、その塗膜のない部分によって線模様が形成されている場合を不良として「△」、ガラス製に平板の表面全体に複数の線状の塗膜によって線模様が形成されている場合を最不良として「×」と評価した。
【0102】
(6)乾燥ムラの評価
乾燥ムラの評価は、ガラス製の平板上にギャップ200μmのアプリケーターを用いて組成物の塗布を行い、得られた塗膜を、オーブンを用いて温度100℃の条件で20分間かけて乾燥させ、得られた乾燥膜(膜形成材料層)を目視にて観察し、乾燥膜に年輪状の模様が形成されていない場合を良好として「◎」、乾燥膜の端部にわずかな年輪模様が形成されている場合を実用上問題がないとして「○」、乾燥膜の半分以下の領域に年輪模様が形成されている場合を実用上可能として「△」、乾燥膜の全体に年輪模様が形成されている場合を不良として「×」と評価した。
【0103】
〔シラン化合物の調製例1〕
メチルトリメトキシシラン142部およびジメチルジメトキシシラン49部(3官能/2官能=70/30(質量比):完全加水分解縮合物換算)と、溶媒としてメチルイソブチルケトン763部と、水152部と、触媒としてトリエチルアミン19部とを混合し、60℃で3時間にわたって加水分解縮合反応を行なった。得られた反応生成物を室温まで冷却した後、6%シュウ酸水溶液156部を加えて室温で1時間かけて中和反応を行なった。その後、水層を分離し、有機相を水150部で洗浄した。この水洗操作を3回行なった後、溶媒を留去することにより、重量平均分子量(Mw)が5,000のシラン化合物(B−1)を得た。
【0104】
〔シリカ粒子の粒度分布測定〕
シリカ粒子の原料として、オルガノシリカゾル「IPA−ST−ZL」(イソプロピルアルコール分散シリカゾル、日産化学工業株式会社製)と、オルガノシリカゾル「IPA−ST−L」(イソプロピルアルコール分散シリカゾル、日産化学工業株式会社製)とを用意し、これらを固形分比で8:2の割合で混合した。
この混合ゾルについて、粒度分布を測定したところ、粒子径0.03〜0.3μmの粒子を体積基準で50%含有するものであった。
【0105】
〔実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例4〕
混合ゾルの溶剤をイソプロピルアルコールから2−エチル−1−ヘキサノールと2−ブトキシエタノールとの混合溶液に変換したもの(固形分濃度28.94質量%)328.3部と、シラン化合物(B−1)5部とを混合し、十分撹拌して溶解させた。更にi−ブチル(メタ)アクリレートと2−エトキシエチル(メタ)アクリレートとの共重合体9部と、2−エチル−1−ヘキサノール166.7部とを添加した。得られた組成物について、含有水分量を測定し、必要に応じて水(25℃における抵抗率が17MΩ・cmのイオン交換水)を添加することにより、各々、表1に示す含有水分量の組成物を得た。
得られた組成物の各々について、粘度を確認すると共に、塗工性および乾燥ムラの評価を行った。結果を表1に示す。
ここに、比較例4に係る組成物については、塗工性および乾燥ムラの評価を行うことが不能であったことから、表1には、「−」の符号を付した。
【0106】
【表1】

【符号の説明】
【0107】
1 ガラス基板
2 ガラス基板
3 隔壁
4 透明電極
5 バス電極
6 アドレス電極
7 蛍光体
8 誘電体層
9 誘電体層
10 保護膜
11 隔壁
201 ガラス基板
202 ガラス基板
203 絶縁層
204 透明電極
205 エミッタ
206 カソード電極
207 蛍光体
208 ゲート
209 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シリカ粒子、
(B)下記式(1)で表わされる少なくとも1種のオルガノシラン、当該オルガノシランの加水分解物および当該オルガノシランの縮合物、並びに下記式(2)で表わされる平均組成を有するポリシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種類のシラン化合物、
(C)増粘剤および
(D)水
を含有し、
(D)水の含有割合が組成物全体に対して0.1〜1.0質量%であることを特徴とするフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物。
【化1】

〔式中、R1 は、炭素数1〜8の1価の有機基を示し、R1 が2個以上存在する場合には、それらは互いに同じであっても異なっていてもよい。R2 は、それぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基を示す。nは0〜3の整数である。〕
【化2】

〔式中、R3 は、炭素数1〜8の有機基を示し、複数個存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよい。R4 は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアシル基およびフェニル基からなる群から選択される有機基を示し、複数個存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよい。このR3 およびR4 は、同じであっても異なっていてもよい。Yは、ハロゲン原子または水素原子を示す。a、b、c、d、eは、それぞれ独立に、0以上4以下であり、かつa+2b+c+d+e=4を満たす。〕
【請求項2】
(A)シリカ粒子と(B)シラン化合物との合計100質量部に対する(C)増粘剤の質量比が0.05〜30であることを特徴とする請求項1に記載のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物。
【請求項3】
(A)シリカ粒子を固形物換算で65質量部以上100質量部未満および(B)シラン化合物を完全加水分解縮合物換算で0質量部を超えて35質量部以下(但し、(A)シリカ粒子の固形物換算量と(B)シラン化合物の完全加水分解縮合物換算量との合計を100質量部とする。)の割合で含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物。
【請求項4】
(C)増粘剤が、アクリル系重合体よりなることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−192378(P2010−192378A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37776(P2009−37776)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】