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フラビンアデニンジヌクレオチド依存性グルコースデヒドロゲナーゼの比活性を向上するための方法
説明

フラビンアデニンジヌクレオチド依存性グルコースデヒドロゲナーゼの比活性を向上するための方法

【課題】公知のフラビンアデニン依存性グルコースデヒドロゲナーゼの欠点を克服し、比活性が向上した改変型フラビンアデニン依存性グルコースデヒドロゲナーゼを提供する。
【解決手段】アスペルギルス・オリゼ由来の野生型FADGDH、熱安定性が向上した改変型FADGDHのアミノ酸配列、410位のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されているタンパク質、または、前記野生型、改変型FADGDHのアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列において、前記野生型、改変型FADGDHアミノ酸配列の410位と同等の位置のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されているタンパク質。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Aspergillus oryzae由来フラビンアデニンジヌクレオチド依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(以下、フラビンアデニンジヌクレオチド依存性グルコースデヒドロゲナーゼを、FADGDHとも表す。)のアミノ酸配列を他のアミノ酸に置換して得られる比活性が向上した改変型FADGDHに関するものである。
本発明はまた、該改変型FADGDHをコードする遺伝子、該遺伝子を含むベクター、該ベクターで形質転換された形質転換体、および、該形質転換体を培養して改変型FADGDHを製造する方法に関する。
さらに本発明は、該改変型FADGDHの、グルコース測定試薬等への種々の適用に関する。
【背景技術】
【0002】
血糖自己測定(SMBG:Self−Monitoring of Blood Glucose)は糖尿病患者が自己の血糖値を管理し、治療に活用するために重要である。SMBGに関しては、多くの方法で実用化が進んでおり、検体の微量化、測定時間の短縮、装置の小型化の点で電気化学的なセンシングが有利である。
【0003】
血糖測定技術におけるセンシングの手法としては血液中のグルコースを基質とする酵素が利用される。そのような酵素の例としては、例えばグルコースオキシダーゼ(EC 1.1.3.4)が挙げられる。グルコースオキシダーゼはグルコースに対する選択性の高さや熱に対する安定性が高いという利点があった。しかしながら、グルコースオキシダーゼを利用したグルコースセンサはグルコースを酸化してD−グルコノ−δ−ラクトンに変換する過程で生じる電子がメディエーターを介して電極に流れることで測定されるが、反応で生じたプロトンを血液中の溶存酸素に渡しやすいため測定値に影響してしまうという問題があった。
【0004】
このような問題を回避するために、ピロロキノリンキノン依存型グルコースデヒドロゲナーゼ(以下、PQQGDHとも表す。)(EC1.1.5.2(旧EC1.1.99.17))がグルコースセンサ用酵素として用いられている。PQQGDHは溶存酸素の影響を受けない点で優位であるが、マルトースやラクトースといったグルコース以外の糖類にも作用するため測定値の正確性を損ねてしまうという欠点がある。
【0005】
そこで、溶存酸素の影響を受けず、なおかつ基質特異性に優れたグルコースデヒドロゲナーゼ(以下、GDHとも表す。)としてフラビンアデニンジヌクレオチド依存性グルコースデヒドロゲナーゼがグルコースセンサ用酵素としての応用が期待されている。FADGDHは非特許文献1〜6に記載されており、古くから知られている。
また、特許文献1にはAspergillus terreus(アスペルギルス・テレウス)由来FADGDHの遺伝子配列、アミノ酸配列並びにFADGDHを用いたグルコースセンサについて記載されている。特許文献2にはAspergillus oryzae由来FADGDHの遺伝子配列、アミノ酸配列並びに製造方法が記載されている。特許文献3にはAspergillus oryzae由来FADGDHのアミノ酸配列の一部を他のアミノ酸に置換することで得られる熱安定性が向上した改変型FADGDHが記載されている。特許文献4にはAspergillus oryzae由来FADGDHおよびAspergillus terreus由来FADGDHのアミノ酸配列を置換することで得られる熱安定性および、又はキシロース作用性を改善した改変型FADGDHが記載されている。また特許文献5にはAspergillus oryzae由来FADGDHのアミノ酸配列を他のアミノ酸に置換することで得られる比活性および、又は基質に対する親和性が改善した改変型FADGDHが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2004/058958
【特許文献2】特開2007−289148
【特許文献3】特開2008−237210
【特許文献4】WO2008/059777
【特許文献5】WO2010/053161
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Biochim Biophys Acta.1967 Jul 11;139(2):265−76
【非特許文献2】Biochim Biophys Acta.1967 Jul 11;139(2):277−93
【非特許文献3】Biochim Biophys Acta.146(2):317−27
【非特許文献4】Biochim Biophys Acta.146(2):328−35
【非特許文献5】J Biol Chem (1967)242:3665−3672
【非特許文献6】Appl Biochem Biotechnol (1996)56:301−310
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、公知のグルコースセンサ用酵素と比較して、実用面において有利な血糖測定用試薬に使用可能な酵素を提供することである。さらに、詳しく述べれば蛋白質工学的手法により、FADGDHのアミノ酸配列を他のアミノ酸に置換することで得られる比活性の向上した改変型FADGDHを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
特許文献2あるいは特許文献3に開示された公知のFADGDHは溶存酸素の影響をうけず、グルコースに対して高い選択性を有することから、グルコースオキシダーゼやPQQGDHに変わる次世代のグルコースセンサ用酵素としての応用が期待されている。しかしながら、本FADGDHは臨床検査薬用酵素としては比活性が低いため、臨床検査では高濃度の酵素を添加しなければならないという欠点があった。
【0010】
本発明者らは上記FADGDHの欠点を克服するために鋭意研究を重ねた結果、FADGDHの特定のアミノ酸を他のアミノ酸に置換することで、改変前のFADGDHよりも比活性が向上した改変型FADGDHを見出し、本発明に完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は以下のような構成からなる。
[項1]
以下の(a)〜(c)のいずれかで表されるタンパク質。
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、410位のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されているタンパク質。
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、410位のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されているタンパク質。
(c)配列番号1または配列番号2の少なくともいずれかと60%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列において、「配列番号1の410位」、または、「配列番号2の410位」と同等の位置のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されているタンパク質。
[項2]
項1に記載のタンパク質において、アミノ酸が置換された位置以外の位置において、さらに、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加(挿入)されたアミノ酸配列からなり、かつグルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質。
[項3]
項1に記載のタンパク質において、410位のアラニンまたはそれと同等の位置におけるアミノ酸置換がバリンであるタンパク質。
[項4]
項1に記載のタンパク質において、410位のAをVに置換することで得られる、改変前と比較して、比活性が1割以上向上したタンパク質。
[項5]
項1〜4のいずれかに記載のタンパク質をコードする遺伝子。
[項6]
項5に記載の遺伝子を含むベクター。
[項7]
項6に記載のベクターで形質転換された形質転換体。
[項8]
項7に記載の形質転換体を培養し、グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質を採取することを特徴とする、グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質を生産する方法。
[項9]
項1〜4のいずれかに記載のタンパク質を含むグルコースアッセイキット。
[項10]
項1〜4のいずれかに記載のタンパク質を含むグルコースセンサ。
[項11]
項1〜4のいずれかに記載のタンパク質を含むグルコース測定法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により臨床検査薬用酵素として有用な、比活性の向上した新規な改変型FADGDHを創出し、工業的に大量に該FADGDHを生産できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】アスペルギルス・オリゼ野生株由来のFADGDHのアミノ酸配列と、アスペルギルス・テレウス野生株由来のFADGDHのアミノ酸配列を比較。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0015】
フラビンアデニンジヌクレオチド依存性グルコースデヒドロゲナーゼはフラビンアデニンジヌクレオチド(以下、フラビンアデニンジヌクレオチドをFADとも記載する。)を補酵素として使用し、グルコースを選択的に酸化する酵素である。
【0016】
本願明細書において、アミノ酸配列はアルファベット1文字または3文字で表記する。また、アミノ酸の変異の位置については次のように表記する。例えば、「A410V」は410位のアラニン(Ala)がバリン(Val)に置換することを意味する。なお、配列番号1、配列番号2、配列番号3における、アミノ酸の表記はメチオニン(Met)を1として番号付けされている。
【0017】
本願発明の一実施形態は、以下の(a)または(b)で表されるタンパク質である。
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、410位のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されているタンパク質。
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、410位のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されているタンパク質。
【0018】
ここで、配列番号1は、野生株のアスペルギルス・オリゼ由来のFADGDHのアミノ酸配列であり、配列番号2は、配列番号1のアミノ酸配列における163位のGをRに、および、551位のVをCに、それぞれ置換したことで熱安定性が向上した改変型FADGDHのアミノ酸配列である。
これらのアミノ酸配列は、特許文献2または特許文献3により公知である。
【0019】
また、本願発明の別の一実施形態は、以下の(c)で表されるタンパク質である。
(c)配列番号1または配列番号2の少なくともいずれかと60%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列において、「配列番号1の410位」、または、「配列番号2の410位」と同等の位置のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されているタンパク質。
【0020】
「配列番号1または配列番号2の少なくともいずれかと60%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列」としては、例えば配列番号3に示される、アスペルギルス・テレウス野生株由来のFADGDHのアミノ酸配列が例示される。このアミノ酸配列は、特許文献1により公知である。
【0021】
本願明細書において、アミノ酸配列の相同性は、GENETYXソフトで比較した値を意味する。例えば、アスペルギルス・オリゼ野生株由来のFADGDHのアミノ酸配列(配列番号1)と、アスペルギルス・テレウス野生株由来のFADGDHのアミノ酸配列(配列番号3)を、GENETYXソフトにて比較分析したところ、63.5%の相同性がある(図1参照)。
また、本願明細書において、例えばあるアミノ酸配列における配列番号1の410位と同等の位置は、GENETYXソフトで配列の一次構造(例えばアラインメント)を比較したとき、配列番号1の410位と対応する位置をもって同等と判断する。必要に応じてさらに立体構造の知見などを参照しても良い。
具体的には、アスペルギルス・オリゼ野生株由来のFADGDHのアミノ酸配列とアスペルギルス・テレウス野生株由来のFADGDHのアミノ酸配列とのアライメントの比較データより、本発明の410位と同等の位置とは、アスペルギルス・テレウス野生株由来のFADGDHの408位のFに相当する。
なお、GENETYXソフトは、GENETYX CORPORATIONから販売されているGENETYX WIN Version 6.1のものを使用した。
【0022】
上記(c)において、配列番号1または配列番号2の少なくともいずれかとのアミノ酸配列の相同性は、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。
【0023】
上記の(a)〜(c)のいずれかで表されるタンパク質において、アミノ酸が置換された位置以外の位置において、さらに、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加(挿入)されたアミノ酸配列からなり、かつグルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質もまた、本願発明の一実施形態である。
【0024】
本願発明のタンパク質は、改変前よりも比活性が向上した改変型FADGDHである。
【0025】
例えば、上記のタンパク質における、410位のAまたはそれと同等の位置におけるアミノ酸置換がVであるタンパク質は改変前FADGDHよりも比活性が向上している。
【0026】
本願において、比活性とは、一定量のタンパク質当たりの活性を意味する。比活性の向上とは一定量当たりのタンパク質当たりの活性が上昇することを意味する。比活性比とは、配列番号2で示される改変型FADGDH(以下、Mut1とも示す。)の比活性の値を1とし、当該改変型FADGDHの比から計算する。これが、表3における比活性比である。この比活性比が高いほど、改変前のFADGDHよりも高い比活性を保持していると判断される。
【0027】
本願において、培養力価とは、D−グルコースを基質とした場合の培養液1mlあたりのGDH活性である。培養力価比とは、配列番号2で示される改変型FADGDHの培養力価の値を1とし、当該改変型FADGDHの比から計算する。これが表1および表2における培養力価比である。この培養力価比が高いほど、改変前のFADGDHよりも高い培養力価を保持していると判断される。
【0028】
なお、本願発明のタンパク質は、上記のタンパク質において、GDH活性を有するものであって、さらに、比活性が向上しているものであれば、410位にアミノ酸置換を有し、さらに、それら以外の部位に1箇所以上(たとえば数箇所)のアミノ酸変異を有するものであっても良い。変異は、1若しくは数個の置換、欠失、挿入、さらにはその組合せであっても良い。
【0029】
本願発明の改変型FADGDHは、好ましくは、比活性が改変前と比べて1割以上向上している改変型FADGDHである。
【0030】
あるいは、本願発明の改変型FADGDHは、好ましくは、比活性が600以上である。さらに好ましくは、比活性が650以上である。
【0031】
比活性の測定方法は、後述のFADGDHの活性測定法とタンパク質濃度を用いて求めることができる。
【0032】
本願発明の改変型FADGDHは、種々の公知の手段で作製することが出来る。
以下に、配列番号1で示されるアスペルギルス・オリゼ野生株由来のFADGDHのアミノ酸配列を他のアミノ酸に置換することで得られる改変型FADGDHの製造法を例示する。製造法は、特に限定されないが、以下に示すような手順で製造することが可能である。
アスペルギルス・オリゼ野生株由来のFADGDHを構成するアミノ酸配列を改変する方法としては、通常行われる遺伝情報を改変する手法が用いられる。すなわち、タンパク質の遺伝情報を有するDNAの特定の塩基を変換することにより、或いは特定の塩基を挿入または欠失させることにより、改変タンパク質の遺伝情報を有するDNAが作成される。DNA中の塩基配列を変換する具体的な方法としては、例えば市販のキット(Transformer Mutagenesis Kit;Clonetech社, EXOIII/Mung Bean Deletion Kit;Stratagene製, Quick Change Site Directed Mutagenesis Kit;Stratagene製など)の使用、或いはポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)の利用が挙げられる。
【0033】
本発明の改変型FADGDHの改変の基になる遺伝子は、特に限定されるものではないが、Aspergillus属由来のFADGDHを用いることが望ましい。さらに好ましくはAspergillus oryzae由来あるいはAspergillus terreus由来のFADGDHであることが望ましい。
Aspergillus oryzae由来のFADGDHとしては配列番号1、または配列番号2で表されるタンパク質が例示できる。
Aspergillus terreus由来のFADGDHとしては、配列番号3で表されるタンパク質が例示できる。
【0034】
本願発明の一実施形態は、上記のいずれかに記載のタンパク質をコードする遺伝子である。
【0035】
改変前のタンパク質をコードする遺伝子として、たとえば、上記の配列番号1で表されるタンパク質をコードする遺伝子としては、配列番号4で表される塩基配列が例示できる。また、上記の配列番号2で表されるタンパク質をコードする遺伝子としては、配列番号5で表される塩基配列が例示できる。また、上記の配列番号3で表されるタンパク質(Aspergillus terreus由来のFADGDH)をコードする遺伝子としては、配列番号6で表される塩基配列が例示できる。
本願発明の遺伝子は、上記改変前のタンパク質をコードする遺伝子の配列において、410位のアミノ酸、あるいはそれと同等の位置のアミノ酸をコードする部分が、他のアミノ酸をコードするように置換されている。
【0036】
本発明の改変型FADGDHをコードする遺伝子は、配列番号4、5または6に記載の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつFADGDH活性を有する蛋白質をコードするDNAである。ここでストリンジェントな条件とは、相同性が高い核酸同士、例えば完全にマッチしたハイブリッドのTmから該Tmより15℃、好ましくは10℃低い温度までの範囲の温度でハイブリダイズする条件をいう。具体的には、例えば一般的なハイブリダイゼーション用緩衝液中で、68℃、20時間の条件でハイブリダイズする条件をいう。本発明において、配列番号4、5または6に記載の塩基配列がコードするアミノ酸配列と50%以上の相同性、好ましくは80%以上の相同性、さらに好ましくは90%以上の相同性、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ配列をコードする塩基配列がストリンジェントな条件に相当すると考えられる。
【0037】
本願発明の遺伝子は、たとえばFADGDHの発現を向上させる目的などで、コドンユーセージ(Codon usage)を変更したものを含みうる。具体的には配列番号1及び2の410位のアラニンをバリンに置換する場合は、配列番号4及び配列番号5記載の塩基配列における1228番目から1230番目のGCCを、GTG、GTT、GTC、GTAのいずれに改変しても良い。配列番号3の408位のフェニルアラニンをバリン に置換する場合は、配列番号6記載の塩基配列における1222番目から1224番目のTTTを、GTG、GTT、GTC、GTAのいずれに改変しても良い。
【0038】
本願発明の一実施形態は、上記の遺伝子を含むベクター、該ベクターで形質転換された形質転換体、該形質転換体を培養し、グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質を採取するグルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質を生産する方法である。
【0039】
例えば、上記のFADGDH遺伝子を発現用ベクター(プラスミド等多くのものが当該技術分野において知られている)に挿入し、適当な宿主(大腸菌等多くのものが当該技術分野において知られている)を形質転換する。得られた形質転換体を培養し、培養液から遠心分離などで菌体を回収した後、菌体を機械的方法またはリゾチームなどの酵素的方法で破壊し、また、必要に応じてEDTAなどのキレート剤や界面活性剤等を添加して可溶化し、FADGDHを含む水溶性画分を得ることができる。または適当な宿主ベクター系を用いることにより、発現したFADGDHを直接培養液中に分泌させることが出来る。
【0040】
上記のようにして得られたFADGDH含有溶液を、例えば減圧濃縮、膜濃縮、さらに硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウムなどの塩析処理、あるいは親水性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、アセトンなどによる分別沈殿法により沈殿せしめればよい。また、加熱処理や等電点処理も有効な精製手段である。また、吸着剤あるいはゲルろ過剤などによるゲルろ過、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーを行うことにより、精製されたFADGDHを得ることができる。該精製酵素標品は、電気泳動(SDS−PAGE)的に単一のバンドを示す程度に純化されていることが好ましい。
【0041】
これらは、例えば、以下の文献に従って進めることができる。
(a)タンパク質実験プロトコール第1巻 機能解析編,第2巻 構造解析編 (秀潤社) 西村善文,大野茂男 監修
(b)改訂 タンパク質実験ノート 上 抽出と分離精製 (洋土社) 岡田雅人,宮崎香 編集
また、以下に例示する方法によって進めることもできる。
【0042】
作製されたタンパク質の遺伝情報を有するDNAは、ベクターと連結された状態にて宿主微生物中に移入される。
【0043】
ベクターとしては、宿主微生物内で自立的に増殖し得るファージまたはプラスミドから遺伝子組換え用として構築されたものが適している。ファージとしては、例えばエシェリヒア・コリーを宿主微生物とする場合にはLambda gt10、Lambda gt11などが例示される。また、プラスミドとしては、例えば、エシェリヒア・コリーを宿主微生物とする場合には、pBR322、pUC19、pKK223−3、pBluescriptなどが例示される。なかでも、pBluescriptなど、クローニングサイト上流にエシェリヒア・コリー内で認識されうるプロモーターを保持するものが好ましい。
また、適当な宿主微生物としては、組換えベクターが安定であり、かつ自立増殖可能で外来遺伝子の形質発現できるものであれば特に制限されない。エシェリヒア・コリーではエシェリヒア・コリーW3110、エシェリヒア・コリーC600、エシェリヒア・コリーHB101、エシェリヒア・コリーJM109、エシェリヒア・コリーDH5αなどを用いることができる。
【0044】
宿主微生物に組換えベクターを移入する方法としては、例えば宿主微生物がエシェリヒア属に属する微生物の場合には、カルシウムイオンの存在下で組換えDNAの移入を行なう方法などを採用することができ、更にエレクトロポレーション法を用いても良い。更には、市販のコンピテントセル(例えば、コンピテントハイDH5α;東洋紡績製)を用いても良い。宿主として、酵母が用いられる場合にリチウム法、エレクトロポレーション法が、また、糸状菌が用いられ場合にはプロトプラスト法などが用いられる。
【0045】
本発明において、FADGDHをコードする遺伝子を得る方法としては、次のような方法が挙げられる。アスペルギルス・オリゼのゲノム配列情報を用い、予測FADGDH遺伝子を見出すことができる。ついで、アスペルギルス・オリゼの菌体よりmRNAを調製し、cDNAを合成する。こうして得られたcDNAをテンペレートとして、PCR法によりFADGDH遺伝子を増幅させ、本遺伝子をベクターと両DNAの平滑末端または付着末端においてDNAリガーゼなどにより結合閉鎖させて組換えベクターを構築する。該組換えベクターを複製可能な宿主微生物に移入した後、ベクターのマーカーを利用してFADGDHをコードする遺伝子を含有する組換え微生物を得る。
【0046】
上記のように得られた形質転換体である微生物は、栄養培地で培養されることにより、多量のGDHを安定に生産し得る。組換え体の選択は、ベクターのマーカーとFADGDH活性を同時に発現する微生物を検索すればよい。例えば、薬剤耐性マーカーに基づく選択培地で生育し、かつGDHを生成する微生物を選択すればよい。
【0047】
FADGDH遺伝子の塩基配列は、Science,第214巻,1205(1981)に記載されたジデオキシ法により解読した。また、FADGDHのアミノ酸配列は上記のように決定された塩基配列より推定した。
【0048】
上記のようにして、一度選択されたFADGDH遺伝子を保有する組換えベクターより、他の微生物にて複製できる組換えベクターへの移入は、FADGDH遺伝子を保持する組換えベクターから制限酵素やPCR法によりFADGDH遺伝子であるDNAを回収し、他のベクター断片と結合させることにより容易に実施できる。また、これらのベクターによる他の微生物の形質転換は、カルシウム処理によるコンピテントセル法やエレクトロポレーション法、プロトプラスト法などを用いることができる。
【0049】
なお、本発明のFADGDH遺伝子は、グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有する限り、該遺伝子の翻訳後のアミノ酸配列の各アミノ酸残基の一部が欠失または置換されるようなDNA配列をもつものでもよく、また他のアミノ酸残基が付加または置換されるようなDNA配列をもつものでもよい。
【0050】
野生株FADGDHをコードする遺伝子を改変する方法としては、通常行われる遺伝情報を改変する手法が用いられる。すなわち、タンパク質の遺伝情報を有するDNAの特定の塩基を変換することにより、或いは特定の塩基を挿入または欠失させることにより、改変蛋白質の遺伝情報を有するDNAが作成される。DNA中の塩基を変換する具体的な方法としては、例えば市販のキット(TransformerMutagenesis Kit;Clonetech製,EXOIII/Mung Bean Deletion Kit;Stratagene製,QuickChange Site Directed Mutagenesis Kit;Stratagene製など)の使用、或いはポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)の利用が挙げられる。
【0051】
形質転換体である宿主微生物の培養形態は、宿主の栄養生理的性質を考慮して培養条件を選択すればよい。多くの場合は液体培養で行い、工業的には通気攪拌培養を行うのが有利である。ただし、生産性を考えた場合に、宿主として糸状菌を使用し、固体培養で行った方が有利な場合もある。
【0052】
培地の栄養源としては,微生物の培養に通常用いられるものが広く使用され得る。炭素源としては資化可能な炭素化合物であればよく、例えば、グルコース、シュークロース、ラクトース、マルトース、ラクトース、糖蜜、ピルビン酸などが使用される。また、窒素源としては利用可能な窒素化合物であればよく、例えば、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、カゼイン加水分解物、大豆粕アルカリ抽出物などが使用される。その他、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カルシウム、カリウム、鉄、マンガン、亜鉛などの塩類、特定のアミノ酸、特定のビタミンなどが必要に応じて使用される。
【0053】
培養温度は微生物が成育し、FADGDHを生産する範囲で適宜変更し得るが、好ましくは20〜37℃程度である。培養時間は条件によって多少異なるが、FADGDHが最高収量に達する時期を見計らって適当時期に培養を完了すればよく、通常は6〜48時間程度である。培地のpHは微生物が発育し、FADGDHを生産する範囲で適宜変更し得るが、好ましくはpH6.0〜9.0程度の範囲である。
【0054】
培養物中のFADGDHを生産する菌体を含む培養液をそのまま採取し、利用することもできるが、一般には、常法に従って、FADGDHが培養液中に存在する場合はろ過、遠心分離などにより、FADGDH含有溶液と微生物菌体とを分離した後に利用される。FADGDHが菌体内に存在する場合には、得られた培養物からろ過または遠心分離などの手段により菌体を採取し、次いで、この菌体を機械的方法またはリゾチームなどの酵素的方法で破壊し、また、必要に応じて、EDTA等のキレート剤及び界面活性剤を添加してFADGDHを可溶化し、水溶液として分離採取する。
【0055】
上記のようにして得られたFADGDH含有溶液を、例えば減圧濃縮、膜濃縮、さらに硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウムなどの塩析処理、あるいは親水性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、アセトンなどによる分別沈殿法により沈殿せしめればよい。また、加熱処理や等電点処理も有効な精製手段である。その後、吸着剤あるいはゲルろ過剤などによるゲルろ過、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーを行うことにより、精製されたFADGDHを得ることができる。
【0056】
例えば、セファデックス(Sephadex)ゲル(GEヘルスケア バイオサイエンス社製)などによるゲルろ過、DEAEセファロースCL−6B (GEヘルスケア バイオサイエンス社製)、オクチルセファロースCL−6B (GEヘルスケア バイオサイエンス社製)等のカラムクロマトグラフィーにより分離、精製し、精製酵素標品を得ることができる。該精製酵素標品は、電気泳動(SDS−PAGE)的に単一のバンドを示す程度に純化されていることが好ましい。
【0057】
本発明において、FADGDHの活性測定は以下の条件で行う。
[試験例]
<試薬>
50mM PIPES緩衝液pH6.5(0.1% TritonX−100を含む)
24mM PMS溶液
2.0mM 2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(DCPIP)溶液
1M D−グルコース溶液
上記PIPES緩衝液20.5ml、DCPIP溶液1.0ml、PMS溶液2.0ml、D―グルコース溶液5.9mlを混合して反応試薬とする。
【0058】
<測定条件>
反応試薬3mlを37℃で5分間予備加温する。FADGDH溶液0.1mlを添加しゆるやかに混和後、水を対照に37℃に制御された分光光度計で、600nmの吸光度変化を5分記録し、直線部分から1分間あたりの吸光度変化(ΔODTEST)を測定する。盲検はFADGDH溶液の代わりにFADGDHを溶解する溶媒を試薬混液に加えて同様に1分間あたりの吸光度変化(ΔODBLANK)を測定する。これらの値から次の式に従ってGDH活性を求める。ここでGDH活性における1単位(U)とは、濃度200mMのD−グルコース存在下で1分間に1マイクロモルのDCPIPを還元する酵素量として定義している。

活性(U/ml)=
{−(ΔODTEST−ΔODBLANK)×3.0×希釈倍率}/{16.3×0.1×1.0}

なお、式中の3.0は反応試薬+酵素溶液の液量(ml)、16.3は本活性測定条件におけるミリモル分子吸光係数(cm/マイクロモル)、0.1は酵素溶液の液量(ml)、1.0はセルの光路長(cm)を示す。


【0059】
本発明における、FADGDHの比活性の測定は以下の計算式に従って求める。
比活性(U/A280)=(活性)/(タンパク質濃度)
ここでタンパク質濃度は分子吸光光度計で、280nmの吸光度を測定することにより求めることができる。また、A280は、波長280nmにおける吸光度値である。

タンパク質濃度[protein]は280nmの吸光度A280を用いると
[protein] = A280/εM [mol/dm
となる。
タンパク質の280nmにおけるモル吸光係数εMは
εM =Trp×5500+Tyr×1490+Cystine×125
より求めることができる。

【0060】
グルコースアッセイキット
本発明はまた、本発明に従う改変型FADGDHを含むグルコースアッセイキットを特徴とする。本発明のグルコースアッセイキットは、本発明に従う改変型FADGDHを少なくとも1回のアッセイに十分な量で含む。典型的には、キットは、本発明の改変型FADGDHに加えて、アッセイに必要な緩衝液、メディエーター、キャリブレーションカーブ作製のためのグルコース標準溶液、ならびに使用の指針を含む。本発明に従う改変型FADGDHは種々の形態で、例えば、凍結乾燥された試薬として、または適切な保存溶液中の溶液として提供することができる。
【0061】
グルコースセンサ
本発明はまた、本発明に従う改変型FADGDHを用いるグルコースセンサを特徴とする。電極としては、カーボン電極、金電極、白金電極などを用い、この電極上に本発明の酵素を固定化する。固定化方法としては、架橋試薬を用いる方法、高分子マトリックス中に封入する方法、透析膜で被覆する方法、光架橋性ポリマー、導電性ポリマー、酸化還元ポリマーなどがあり、あるいはフェロセンあるいはその誘導体に代表される電子メディエーターとともにポリマー中に固定あるいは電極上に吸着固定してもよく、またこれらを組み合わせて用いてもよい。典型的には、グルタルアルデヒドを用いて本発明の改変型FADGDHをカーボン電極上に固定化した後、アミン基を有する試薬で処理してグルタルアルデヒドをブロッキングする。
【0062】
グルコース濃度の測定は、以下のようにして行うことができる。恒温セルに緩衝液を入れ、一定温度に維持する。メディエーターとしては、フェリシアン化カリウム、フェナジンメトサルフェートなどを用いることができる。作用電極として本発明の改変型FADGDHを固定化した電極を用い、対極(例えば白金電極)および参照電極(例えばAg/AgCl電極)を用いる。カーボン電極に一定の電圧を印加して、電流が定常になった後、グルコースを含む試料を加えて電流の増加を測定する。標準濃度のグルコース溶液により作製したキャリブレーションカーブに従い、試料中のグルコース濃度を計算することができる。
【0063】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【実施例1】
【0064】
実施例1 改変型FADGDHの遺伝子の作製
配列番号2の熱安定性が向上した改変型FADGDHをコードする遺伝子(配列番号5)を含む組み換えプラスミドpAOGDH−M76で市販の大腸菌コンピテントセル(E.coli DH5αa;TOYOBO社製)を形質転換し、アンピシリンを含んだLB寒天培地(1.0%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、1.0%NaCl、1.5%寒天;pH7.3)に塗布した後、30℃で一晩培養した。得られた形質転換体をアンピシリン(50mg/ml;ナカライテスク社製)を含んだLB液体培地(1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、1.0%NaCl;pH6.5)を摂取し、30℃で一晩振とう培養した。得られた菌体から常法によりプラスミドを調整した。
【実施例2】
【0065】
実施例2 410位のアラニンをバリンに置換
実施例1で使用したpAOGDH−M76を鋳型として、410位のアラニンをバリンに置換するよう設計した配列番号7の合成オリゴヌクレオチドとそれに相補的な合成オリゴヌクレオチドをQuickChangeTMSite−Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE製)を用いてPCRを行った。続いて、PCR産物で市販の大腸菌コンピテントセル(E.coli DH5α;TOYOBO社製)を形質転換し、アンピシリンを含んだLB寒天培地で37℃、16時間培養した。その後、改変型FADGDHを有したシングルコロニーを、アンピシリンを含んだLB液体培地に摂取し、30℃で一晩振とう培養した。その後、1mlの培養液を摂取し、常法によりプラスミドを抽出した。抽出したプラスミドの当該部位をDNAシークエンサー(ABI PRISMTM 3700DNA Analyzer;Perkin−Elmer製)を用いて特定した。410位のアラニンをバリンに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−M76−A410Vと命名した。
【実施例3】
【0066】
実施例3 410位のアラニンをバリンに置換した改変型FADGDHを含む粗酵素液の調製と培養力価の比較
実施例2で取得したpAOGDH−M76−A410Vで形質転換した大腸菌DH5αをアンピシリンを含んだLB寒天培地で30℃、16時間培養しシングルコロニーを取得した。その後、改変型FADGDHのシングルコロニーをアンピシリンを含んだ5mlLB液体培地に摂取し、30℃で16時間振とう培養した。その培養液の一部から遠心分離によって得られた菌体を回収し、50mMのリン酸緩衝液(pH6.0)中でガラスビーズを用いて該菌体を破砕することにより粗酵素液を調製した。調製した粗酵素液を用いて、上述した活性測定法により培養力価を測定した。表1にその結果を示す。改変前のFADGDH(Mut1)の培養力価は4.4U/ml−bであったのに対して、A410Vの培養力価は8.0U/ml−bに向上した。また、Mut1の培養力価を1とした場合のA410Vの培養力価比は1.8に向上した。
表1は、5ml LB培地/試験管,30℃,16時間培養した時の410位のAをVに置換した改変型FADGDHの培養力価および培養力価比を比較した結果である。
【0067】
【表1】

【0068】
410位のAをVに置換した改変型FADGDHをアンピシリンを含む50ml−1/2LB培地に植菌し、30℃で一晩培養した。その後、培養液を10m3容ジャーファーメンターに調製した6L LB培地に植菌し、30℃で84時間培養し、培養液の一部をサンプリングした。その後、上述した方法で粗酵素液を調製し、培養力価を測定した。表2にその結果を示す。
改変前のFADGDH(Mut1)の培養力価は85U/ml−bであったのに対して、A410Vの培養力価は126U/ml−bに向上した。また、Mut1の培養力価を1とした場合のA410Vの培養力価比は1.5に向上した。
表2は、6L LB培地/10m−ジャーファーメンター,30℃,84時間培養した時の改変型FADGDHの培養力価および培養力価比を比較した結果である。
【0069】
【表2】

【実施例4】
【0070】
実施例4 改変型FADGDHの標品の作製と比活性の比較
実施例3で作製した改変型FADGDHの培養液から培養菌体を遠心分離で集菌した後、50mMのリン酸バッファー(pH6.5)に懸濁し、除核酸処理後、遠心分離して上清を得た。これに硫酸アンモニウムを飽和量溶解させて目的タンパク質を沈殿させ、遠心分離で集めた沈殿を50mMのリン酸バッファー(pH6.5)に再溶解させた。そしてG−25セファロースカラムによるゲルろ過、Phenyl−セファロースカラムによる疎水クロマト(溶出条件は共に25%飽和〜0%の硫酸アンモニウム濃度勾配をかけてピークフラクションを抽出)を実施し、さらにG−25セファロースカラムによるゲルろ過で硫酸アンモニウムを除去し改変型FADGDHの標品とした。
【0071】
上記の方法で410位のAをVに置換した改変型FADGDHの比活性を測定し、比活性比を算出した。表3にその結果を示す。改変前のFADGDH(Mut1)の比活性は593U/A280であったのに対して、A410Vの比活性は686U/A280に向上した。また、Mut1の比活性を1とした場合のA410Vの比活性比は1.2に向上した。
表3は、改変型FADGDHの比活性および比活性比を比較した結果である。
【0072】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明による比活性が向上した改変型FADGDHを利用することにより、グルコース測定試薬、グルコースアッセイキット及びグルコースセンサ作製時の酵素の使用量の低減や測定精度の向上を可能にし、医療関連分野などの産業に貢献すること大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)〜(c)のいずれかで表されるタンパク質。
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、410位のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されているタンパク質。
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、410位のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されているタンパク質。
(c)配列番号1または配列番号2の少なくともいずれかと60%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列において、「配列番号1の410位」、または、「配列番号2の410位」と同等の位置のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されているタンパク質。
【請求項2】
請求項1に記載のタンパク質において、アミノ酸が置換された位置以外の位置において、さらに、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加(挿入)されたアミノ酸配列からなり、かつグルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項3】
請求項1に記載のタンパク質において、410位のAまたはそれと同等の位置におけるアミノ酸置換がVであるタンパク質。
【請求項4】
請求項1記載のタンパク質において、410位のAをVに置換することで得られる、改変前と比較して、比活性が1割以上向上したタンパク質。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のタンパク質をコードする遺伝子。
【請求項6】
請求項5に記載の遺伝子を含むベクター。
【請求項7】
請求項6に記載のベクターで形質転換された形質転換体。
【請求項8】
請求項7に記載の形質転換体を培養し、グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質を採取することを特徴とする、グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質を生産する方法。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれかに記載のタンパク質を含むグルコースアッセイキット。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれかに記載のタンパク質を含むグルコースセンサ。
【請求項11】
請求項1〜4のいずれかに記載のタンパク質を含むグルコース測定法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−55229(P2012−55229A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201789(P2010−201789)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】